人修羅×まどマギ まどマギにメガテン足して世界再構築   作:チャーシュー麺愉悦部

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290話 常闇を照らす光明

互いが譲れない覚悟を示すため、苛烈な剣舞を行っていく。

 

「ヤァァァーーーッッ!!!」

 

銀の剣で斬り込むももこに対して十七夜は槍の柄を用いて次々と斬撃を打ち払う。

 

打ち払った槍を引いて石突きで刺突を仕掛けるがももこは潜り抜ける形で避ける。

 

向こう側に進み出た彼女は剣を構えながら動き、十七夜も動く。

 

互いが円を描く形で歩いていたが同時に動く時が来る。

 

「タァァァァーーーッッ!!!」

 

連続斬りを柄で弾き、右切り上げの一撃を槍で止める。

 

柄を蹴り込む形でももこの剣を弾いた十七夜は打ち上げた柄を右手で掴みながら打つ。

 

斬撃を叩き落とされたももこに対して一回転する勢いを用いて顔面に柄を打ち込むのだ。

 

「グフッ!!?」

 

大きく弾かれたももこが不屈の意思で立ち上がろうとするが左足からは出血が酷い。

 

それでも意地を貫くかのようにして攻め込んでくるのだ。

 

「正義の世直しなんて暴力団と変わらない!自分達の悪行をさも善行のように見せかける!!」

 

「革命は常に社会悪から始まるもの!だがな…結果だけ切り取って悪だとするのは偏見だ!!」

 

「たとえそうだとしても…暴力を撒き散らす存在を憎んだからこそ正義を求めたんだろ!?」

 

「ミイラ取りがミイラになったことなど自覚している!!革命とは復讐でもあるのだぁ!!」

 

斬撃を槍の柄で受け止めながら叫んでいたが十七夜が攻め込む。

 

柄を回しこむ形で相手の剣を下に落とし込み、引き抜いたももこの唐竹割りに反撃を打つ。

 

石突きで腹部を突かれた彼女は後ろに大きく後退りながら片膝をつく。

 

「盲目的に秩序に従い!どうして生活が苦しくなるかも分からず搾取されてきた復讐なのだ!」

 

回転を加えながら跳躍して放つ柄の一撃をももこが剣で受け止める。

 

受け止めたまま立ち上がろうとするが左足から一気に血が吹き出し、力が抜けてしまう。

 

上半身が崩れた彼女に向けて槍を叩き落とす形で首裏に打ち込む。

 

「ぐはっ!!」

 

再び片膝をついた彼女に刺突を狙うが払い斬りを避ける形で後ろに引くのだ。

 

「革命は弱者達の復讐か…だとしたら十七夜さん…その道の末路は尚紀さんと同じとなるよ…」

 

社会の平和を守ろうとした人修羅は平和とは真逆の暴力を用いて世直しを続けた者。

 

その末路は自分の理想が壊れていた現実であり、愛する人達すら失う悲劇。

 

それでも暴力という恐怖政治を用いて東京の魔法少女社会に秩序を作れた実績はある。

 

しかし恐怖政治を敷こうとも、魔法少女達は共食いの如き潰し合いしか生まなかった。

 

「理不尽には抵抗する…それは否定しない。だけどね…抵抗の仕方に問題があるんだ!!」

 

「自分も人修羅様と同じ末路になれるならば本望だ!自分はあの御方を敬愛する者だからな!」

 

「抵抗するなら非暴力、非服従を貫けよ!デモ活動でもストライキでもやればいいさ!!」

 

「デモ活動ならフランス革命前もされてきた!それでも王や貴族は応えない!()()()()()()!」

 

草の根活動を続けようと圧倒的権力と扇動力をもつ国家と資本家を相手に戦えるものではない。

 

西側メディアが草の根運動を好意的に扱っても、それは黒幕に操られた人工芝運動でしかない。

 

カラー革命のような大衆運動は破壊が自己目的化するのみであり黒幕の狙い通りに成り果てる。

 

公式プロパガンダに逆らう本当の草の根運動はメディアから悪にされ、誹謗中傷されてしまう。

 

真の自由を求める者達は()()()()()()()西()()()()()()からテロリストと罵られる現実がある。

 

大政翼賛とは第二次大戦時代の全体主義独裁体制であり、官民が統一されて全体主義を成す。

 

そうなれば国を監視するメディアは変わり果て、自由を捨てて広報機関に成り果てるのだ。

 

「十咎…君と自分は平和な社会を愛してきた…だがな…()()()()()()()()()()()()()()()だ?」

 

「平和や秩序は…誰のためにあるものかだって…?」

 

「民衆達の幸福のためか?それとも民衆を死ぬまで搾取する寄生虫の支配構造維持のためか?」

 

「そ……それは……」

 

「国家に逆らわなければ確かに社会は平和だ。だがな…その影で多くの弱者達が飢え死にする」

 

「う……うぅ……」

 

「自分達は暴力で人々を犠牲にする悪だ…だが国に逆らわず人々を搾取させる君達も悪なんだ」

 

保身に走ろうとも社会に反逆しようとも、何処かで名もなき者達が犠牲にされていく。

 

ならばどちらを選んでも悪にしかならないのだと十七夜はももこに伝えてくれる。

 

「自分は平等を信じる者だ…時代に適応出来ない虫けらは死ねという…優生学は認めん!!」

 

斬撃を槍の柄で弾く勢いを利用した後ろ回し蹴りがももこの側頭部を蹴り込む。

 

きりもみ回転しながら倒れ込んだももこに対して一気に仕掛けるために跳躍する。

 

「さぁ…君はどちらを選ぶ!?自分達を悪だと罵る前に…君達の悪い部分にも意識を向けろ!」

 

魔法戦を得意とする吸血鬼姿に変化した十七夜の両手から赤黒い波動が放たれていく。

 

その光景が見えるももこは悪魔の力によって彼女の念動力を可視化出来ている状態でもある。

 

防衛省の周囲にまで放たれた念波に触れた攻撃ヘリや壊されたバギーの数々が宙に浮くのだ。

 

「君の覚悟を試そう……これが社会変革を求める悪魔の抵抗力だぁ!!」

 

十七夜の周囲に浮かび上がった兵器の残骸が高速回転していき、ももこに目掛けて放たれる。

 

超能力魔法の一撃が迫る中、迷いを浮かべながらもヴァンパイアハンターは剣を鞘にしまう。

 

「ははっ…アタシもまだまだ偏見を克服出来ないね。十七夜さんの答えもきっと正しいんだよ」

 

腰を落として居合状態となったももこが左手の親指で剣を押し抜く。

 

「だけどね…アタシの答えだって正しい!だからこそ…譲るわけにはいかないんだぁ!!」

 

迫りくる質量攻撃に対して放つのは刹那五月雨斬りであり、前方空間に無数の斬撃線が浮かぶ。

 

斬撃線に触れたバギーの数々がバラバラになっていくが後続から攻撃ヘリが迫りくる。

 

一気に跳躍したももこが攻撃ヘリに突進して斬撃を放つ。

 

逆袈裟斬りの角度で真っ二つになった攻撃ヘリの後ろ側から現れたのは十七夜の姿。

 

質量攻撃は囮であり、自ら飛び込んで飛び蹴りを放つのが狙いだった。

 

「「タァァァァーーーーッッ!!!」」

 

高速で迫る飛び蹴りを胸部に受けたももこの胸骨が砕けるが反撃として右回し蹴りを放つ。

 

十七夜の左側頭部に決まった一撃が脳を激しく揺さぶり、平衡感覚を失った彼女が落下する。

 

倒れ込んだ少女達が歯を食いしばりながら立ち上がろうとするのだが、みたまが叫んでくる。

 

「もうやめて……お願いだからやめて頂戴!!このまま続けたら…どちらも死ぬわ!!」

 

「それは出来ない相談だな…八雲。自分は譲れない…十咎だって譲れないんだ…」

 

「その通りだ…みたま。だからさ…アタシを信じて欲しい…」

 

「ももこ……十七夜……」

 

ふらつきながらも立ち上がった両名が顔を向け合うが、憎しみの眼差しを送ってはいない。

 

互いが全力を尽くす戦いはノーサイドでありたいと願う彼女達の気持ちが表れているのだ。

 

「奇妙なほど健全とした時間だったな…正義も悪もない…スポーツのような一体感を感じた」

 

「同じ気持ちだよ…十七夜さん。きっとどちらも正しいんだ…だからこそ…最善を尽くす」

 

「フッ……そんな言葉を送られたら自分は君を憎めないじゃないか」

 

「これが憎しみを超えた戦いなのかもね…こっちの魔封は解けている、お互いに全力を出そう」

 

意見が合わないからといって相手を嫌うことなどしてはならない。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()からだ。

 

間違いを続けてきた者だからこそ和泉十七夜も弱い者だと十咎ももこは理解している。

 

否定する、悪口を言う、怒る、喚く、論破する、他者をコントロールしようとする。

 

そんな連中はただの不安な者であり、自分が不安で堪らないから他者の意見を支配したい。

 

あなたのため、社会のため、正義のため。

 

そんな概念を裏返せば()()()()()()()()()()()()()()()()にしかならないと理解している。

 

人の為と書いて偽と読む文字にしかならず、本当に強い者は偉ぶらないし強がらない。

 

異なる相手の意見すら頭ごなしに否定せず、共に在ろうとする心の余裕こそが強さなのだ。

 

「行くよ…十七夜さん。間違いながらでもいい……一緒に生きていこうよ」

 

――心の潔白を愛する者、その言葉の上品な者は王がその友となる。

 

純白のシスターとなった今のももここそ、聖書の箴言における第22篇11節を体現している。

 

共に生きたいからこそ、次に放つ一撃で決着をつけると互いに全力を発揮するのだ。

 

「ハァァァァァァーーーーッッ!!!」

 

全身から念動力を放ち、かなえ達が打ち倒した造魔兵の死体が宙を浮いていく。

 

それらの死体が圧縮されて潰されていき、おびただしい血液が十七夜の頭上に集まっていく。

 

「奴らは革命を望む人間なんかじゃない…悪魔だ。もしかしたら…君達の方が正しいのかもな」

 

選んだ道の全てが間違いであったとしても、人々の平等を信じて戦う信念だけは捨てない。

 

その覚悟を背負う十七夜が放つのはブラッディ―・ルーラーの一撃。

 

「間違いは人生の宝だよ…十七夜さん。アタシも何回も間違ってきた…それでも大切な経験だ」

 

ももこもまた全身から光を放ちながら巨大な十字架の武器を生み出し、抱え込む形で構える。

 

魔力が大きく注ぎ込まれた武器が青白く光り、柄の下部分がエネルギー兵器のように光り輝く。

 

浄化の光を収束して放つオープン・エクソシズムバスターを放つのだ。

 

「勝っても負けても怨みっこなし……それでいいよね?」

 

「うむっ…それで構わない。いくぞ……これが自分の全てを込めた一撃だぁ!!」

 

大量の血液が大きな球体のように頭上で固まり、構える腕を支えながらマギア魔法を放つ。

 

迎え撃つ者もまた浄化の光を収束させた極太レーザービームの光を発射する。

 

「「ウォォォーーーーッッ!!!」」

 

極限にまで高まった互いの全力の一撃が周囲の地面を砕いていき、庁舎ビルの窓も砕け散る。

 

両腕で顔を覆いながらも親友達の覚悟を見届けるみたまは最後まで目を開けてくれるのだ。

 

光が収まっていき、見えた景色にいたのは大きく弾かれて倒れ込んだ者達の姿。

 

「フッ……見事だ、十咎。それでこそ……八雲の自慢の仲魔だ」

 

「十七夜さんだって…流石だったよ。クドラクなんか超えるぐらいの…熱い信念の力だった」

 

決着はついたがボロボロの姿に成り果てた者達の元へと仲魔達が駆けてくる。

 

倒れた自分を心配して支えてくれた時、神浜にいた頃の温もりを十七夜は感じたのであった。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――

 

「……いいのかい、サマナーさんよぉ?オレはまだやれるぜ」

 

「彼女達の実力は分かった…私は仲魔を無駄に消耗させて犠牲にはしない主義なんだ」

 

戦いを見届けたユダは使役していたナーガラジャを屋上に戻しており、召喚笛の中に仕舞う。

 

彼の後ろには既に迎えの輸送ヘリが待機しており、いつでも東京から脱出することが出来る。

 

それでも彼は出発を後らせるようヘリのパイロットに頼み込む。

 

ユダがヘリの中から持ち出したのはスピーカーとしても使える音響兵器であったようだ。

 

「十七夜…派手にやられたみたいだね?」

 

「うむっ…十咎は十分強かった。君もうかうかしてたら彼女に追いこされるぞ…雪野君」

 

「フフッ♪それはそれで楽しみだよ」

 

かなえに膝枕してもらっている十七夜が上半身を持ち上げていき、メルと令に顔を向ける。

 

「安名…観鳥君…君達には世話になりっぱなしだ。東の長と呼ばれても…大したことはないな」

 

「そんなことないです…ボクは何度も十七夜さんに助けられました!だから助けるんです!」

 

「支え合ってこその仲間だよ、十七夜さん。その気持ちは悪魔になっても変わらない」

 

「悪魔としての仲魔か…自分は人殺しの虐殺者だ…それでも…仲魔と呼んでくれるか…?」

 

「十七夜…前にも言っただろ?魔法少女の虐殺者として生きた尚紀だってやり直せてるんだ」

 

「尚紀さんと一緒にやり直しましょう、十七夜さん。ボク達は人殺しでも差別はしません」

 

「問題は吸血鬼になった十七夜さんだね…神浜に帰ってもどうやって生きればいいのかな?」

 

「心配ない、観鳥君。自分は吸血鬼として悪食だ…人間だろうが悪魔だろうが飢えを満たせる」

 

「悪魔の血を吸うことでも乾きを癒せるんですね?それなら悪い悪魔で飢えを満たせますよ!」

 

「それよりも…家族や職場の仲間達に合わせる顔がないな。本当に…待ってくれているのか?」

 

全員が笑顔を浮かべながら頷いてくれたことで十七夜の目に涙が浮かぶ。

 

殺戮者と成り果てた吸血鬼の自分にも帰れる場所があるのが嬉しくてたまらないのだ。

 

そんな彼女の元へと歩いてくるのはみたまに肩を貸してもらいながらやってくるももこの姿。

 

右手でサムズアップを見せてくれる彼女のために精一杯の笑顔を浮かべてくれたようだ。

 

かつての仲間に戻れた時、ヘリポートからスピーカーで拡声されたユダの声が響き渡る。

 

「帰れる場所があるというのはいいものだな、十七夜君。しかし…君達を生かしては返せない」

 

全員が庁舎A棟の屋上に視線を向ければ風でマントを揺らすユダの姿が見えるのだ。

 

「ユダさん…教えてくれ!この暴力革命は本当に日本や世界に平等をもたらす戦いなのか!?」

 

「勿論だとも。暴力革命後の世界はワンワールドとなる…複数のものが一つに収束する」

 

「複数のものが…一つに収束するだと…?」

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()。その象徴こそが君達の姿なんだよ…十七夜君」

 

「悪魔になった自分達の姿が…平等の象徴だと…?」

 

「人間、魔法少女、悪魔、力の不均衡で格差と差別が生まれる。ならば違いなど消えればいい」

 

「ま…まさか…暴力革命後の世界とは…()()()()()()()()()()()()()()()のことか!?」

 

「その通りだよ。魔法少女達は悪魔に喰われて一つとなり、()()()()()()()()()()()()()()()

 

「ふざけるな!そんなものは自分が求める平等世界じゃない!悪夢のような魔界そのものだ!」

 

「我々フリーメイソンは二ムロデ崇拝者。彼の悲願だった世界統一とは悪魔の世界を築くこと」

 

「騙していたのか…罪を償いたい自分の気持ちを利用して…騙していたのか……ユダさん!!」

 

「君達魔法少女はもっと他人の言葉を疑うべきだ。そんなんだから契約の天使に騙されたのさ」

 

怒りと悔しさで涙が溢れ続ける十七夜であるが立ち上がる力は残っていない。

 

それはももこも同じであり、みたまが肩を貸さなければ十七夜と同じく倒れ込むだろう。

 

「貴様にだって大家族がいるのだろう!?その人達まで悪魔に変えようというのかぁ!!」

 

「私の家族は選民としてザイオンに移れる。世界の魔界化はザイオンには関係のない話だ」

 

「ならば…人類の悪魔化とは何だというのだぁ!!?」

 

「そのための準備もこの暴力革命には込められている。だが君達がその光景を見ることはない」

 

マントの下に着ているスーツのポケットから取り出すのはキャロルJが用いたものと同じ道具。

 

サマナーのMAGを練り上げる力を秘めた蟲毒の丸薬と同じ成分の道具なのだ。

 

「私は家族の未来のためなら悪魔になれる者だ…その覚悟を君達に見せようじゃないか」

 

ケースから取り出した丸薬を飲み込んだユダが首にぶら下げたサックスを吹き鳴らす。

 

五芒星が刻まれたサックスから膨大なMAGが吹き上がり、術者のMAGまで吸い上げていく。

 

「な……なんて強力な魔力なんだ……」

 

「一体何が現れるっていうんですかぁ!?」

 

恐怖しながら悪魔召喚を見つめていた時、眩い光が生み出される。

 

目を瞑って光を堪えた悪魔少女達が目を開けた時、愕然とする光景が生み出されたのだ。

 

<<これこそが私の覚悟だ!!悪魔に取り込まれようとも…私は組織に尽くす者となる!!>>

 

防衛省の庁舎ビルに巻き付く形で顕現したのは巨大な蛇神であり、変わり果てたユダであった。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――

 

【ヴァスキ】

 

インド神話に登場する蛇神ナーガの王であり、ナーガラジャの一体である。

 

地下世界パーターラの支配者であり、都ボーガヴァティーを治める人面の蛇神のようだ。

 

長大な胴体と猛毒を持ち、仏教にも取り入れられ八大龍王の一つとして語られた神であった。

 

「あ……あぁぁぁぁ……」

 

へたり込むメルや顔を青くする令が見上げるのはサマエルに匹敵する程の巨大な蛇神。

 

巨大な人面頭部と六本の腕、装飾された腕輪や首輪、兜を纏ったヴァスキが伸び出てくる。

 

儀式広場の上空を覆うようにして巨大な胴体が伸びてきて地上を見下ろしてくるのだ。

 

「世界は破壊され混沌の海へと帰る。再生には必ず死が必要であり、それこそ君の望みだろ?」

 

「確かに自分は破壊の果てに平等を求めた……それでも世界の滅びなど望んではいない!!」

 

「そうだとしても我々の理想を選んだのは君なんだ。契約の天使の契約を受け入れたようにね」

 

「くっ…どうして自分達魔法少女は想像力が足りないんだ…?何度も騙されてしまうんだ…?」

 

「それはね…見たいものしか見ない、信じない偏見感情がそうさせるんだ。人間達も同じくね」

 

「貴様らの本当の狙いを言え!!東京の暴力革命の真の狙いとは何なんだ!?」

 

「冥途の土産に教えよう…新しい世界を産んでくれる神霊をこの地に顕現させるためなのさ」

 

「新しい世界を産む神霊だと……?」

 

「その御姿を君達は見る事はないだろう。ここで君達は死に、混沌の乳海で新たな再生を望め」

 

騙されてきた怒りの感情に突き動かされるようにして立ち上がろうとするが十七夜が倒れる。

 

「くそっ……十七夜さんとの戦いでアタシももう……限界だよ……」

 

「観鳥さん達も同じかも…連戦に次ぐ連戦を超えてきたんだ…流石にガス欠だよ……」

 

「やちよ達の元に十七夜を連れて帰るって約束したのに…あたしはまた死んでしまうのか…?」

 

絶望の表情を浮かべる悪魔少女達を混沌の乳海に沈めるためにヴァスキの腕が動いていく。

 

二本の手が印を結び、口を大きく開けながら腐食性の猛毒を大量に撒き散らそうとする。

 

もうダメかと思われた時、赤い夜空から高速で飛来してくる存在が現れるのだ。

 

「諦めてんじゃねーぞ!!俺様達の仲魔ならガッツを見せてみやがれぇぇぇぇーーッッ!!」

 

現れたのは筋斗雲に乗ったセイテンタイセイであり、大きく伸ばした如意棒を打ち下ろす。

 

「ぐはっ!!?」

 

ヤマオロシの一撃を頭部に浴びたヴァスキの兜がへしゃげながら上半身が儀式広場に倒れ込む。

 

「死ぬ瞬間まで足掻いてみせろ!無様に逃げてもいいから生き残れ!それが戦いってもんさ!」

 

「悟空さん……任せてもいいんですか?」

 

「ああ、任せときな。テメェらは早く逃げやがれ!!」

 

「彼の覚悟を無駄には出来ないわ!私はももこを連れていくからそっちは十七夜をお願い!!」

 

立ち上がった仲魔達は動けない者達を連れながら防衛省の大本営地下壕跡へと逃げていく。

 

筋斗雲に乗りながら彼女達を見送っていた時、膨大な冷気がヴァスキの体から生み出される。

 

「チッ!!」

 

絶対零度を放たれる前に空に逃げるセイテンタイセイを狙うようにして体を起こす。

 

「グゥゥゥゥ…招かれざる客が来たようだな!相手をする時間はあまりない…一気に決める!」

 

迎えのヘリが近くにいるため膨大な毒ガスを空に吐くことが出来ないヴァスキは魔法で攻める。

 

万能属性のメギドラが次々と夜空で炸裂するが、高速で飛ぶセイテンタイセイが反撃に移る。

 

「手数だけは多いようだな?だったら数で翻弄してやるさ」

 

片手で体毛の一部を抜き取った彼が息を吹きかける。

 

宙を舞って落ちていく毛の一本一本がセイテンタイセイとなり、ヴァスキに襲い掛かっていく。

 

身外身(しんがいしん)の法か!!」

 

如意棒を振り上げるセイテンタイセイ達がヴァスキに迫る中、六本の腕が大きく広げられる。

 

「ヌォォォォーーーーッッ!!!」

 

次々と繰り出される『ヒステリービンタ』や『狂いかみつき』の一撃を分身達が潜り抜ける。

 

<<オラオラオラァーーッッ!!!>>

 

セイテンタイセイ達が繰り出す全体攻撃によってヴァスキの体が打ちのめされていく。

 

「おのれぇぇぇぇーーーーッッ!!!」

 

ビルに巻き付いた下半身を地上に下ろしたヴァスキの体が庁舎ビルを囲うように回転する。

 

乳海を掻き混ぜる大マンダラ山のような動きを行いながら放つのは『まどろみの渦』なのだ。

 

「ぐっ!?状態異常魔法か……こいつは……不味いぜ……」

 

睡眠や幻惑を受けたセイテンタイセイ達に向けて放たれるのは巨大な張り手の一撃。

 

薙ぎ払われるようにして直撃を浴びた分身達が消し飛ばされる程の力を示す。

 

「トドメだぁ!!」

 

本体にも豪快な張り手を浴びせようとするが、セイテンタイセイはテトラカーンを行使。

 

物理反射によって自分のヒステリービンタを浴びたヴァスキが庁舎A棟に目掛けて倒れ込む。

 

「うわぁぁぁぁぁーーーっ!!?」

 

ヘリポートで待機していた輸送ヘリはヴァスキの巨大頭部に潰されながらビルと共に瓦解する。

 

「貴様ぁぁぁーーッッ!!あくまでも私の邪魔立てをしてくるかぁ!!」

 

「当たり前だ……俺様は神をも恐れぬ天界一の暴れ猿なんだぁ!!」

 

ヴァスキの叫び声がした方角に目掛けて伸ばした如意棒を振りかぶる。

 

気合を溜め込みタルカジャをかけ続けて最大火力となった一撃を用いて勝負に出るのだ。

 

「じゃあな、蛇神!!一足先に混沌の乳海に逝って…アムリタでも醸造してやがれぇ!!」

 

振り抜かれた一撃は八相発破であり、極大の衝撃波がヴァスキの体を飲み込んでいく。

 

<<こ……こんなところで……死ぬわけには……私にはまだ……かぞく……が……>>

 

原型を留めない程にまで消し飛ばされる一撃が防衛省を飲み込んでいく。

 

庁舎A棟の後ろにあった庁舎ビルまで破壊し尽くす程の衝撃波によって敷地内は壊滅するのだ。

 

「ハァ…ハァ…危なかったな。危うく乳海攪拌(にゅうかいかくはん)のように巻き付かれて磨り潰されるとこだった」

 

幻惑状態が解けたセイテンタイセイが筋斗雲から飛び降りる。

 

地上で見つけたのは一枚の写真であり、写っていたのはユダと大家族の姿のようだ。

 

「何が家族だ…東京の人達にだって家族はいたんだ。理不尽に奪うならテメェも奪われろ…」

 

因果応報を喰らわせてやった彼が写真を破り捨てた後、大本営地下壕跡の方角に顔を向ける。

 

整備された防空壕の中では座り込んだ悪魔少女達がいる。

 

ヴァスキの魔力が消えたことで勝利したのだと分かったかなえ達が笑顔を浮かべていく。

 

しかしその中で独り笑顔を浮かべる気力もない十七夜は壁にもたれながら顔を俯けていた。

 

「十七夜……」

 

ももこの大怪我を回復魔法で癒すメルの元から離れて十七夜の元へと来たみたまが片膝をつく。

 

目線を合わせながら心配してくれる彼女に対してか細い声が響いてくるのだ。

 

「自分はな…貧しいながらも家族と過ごせた日々が愛しかった。だから献身を続けてこれた…」

 

貧乏ながらもそれなりに暮らせたが父親の大怪我によって和泉家は大黒柱を失ってしまう。

 

支える娘は総菜屋でバイトしたり、そこがダメになればメイド喫茶で働いたりもしてくれた。

 

「育ち盛りの弟に腹いっぱいご飯を食べさせてあげたい…それでも…生活は困窮するばかり…」

 

働いても働いても生活が豊かにならないのは財務省がもたらした政策が原因だと聞かされる。

 

それを知った彼女は欧米資本家に支配された官僚と政治家に憤怒を感じたからこそ戦ったのだ。

 

「自分の気持ちは他の低所得者層と同じだ…格差を生む国政を憎むはずだ…だから戦った…」

 

それなのに待っていたのは裏切りであり、彼女が信じた平等など啓明結社は与えてくれない。

 

世界のメディアを資本で操るユダヤ財閥の手口と同じく、切り取られた情報だけで操られた。

 

「なのに…自分には平等が与えられない…どれだけ献身を捧げてきても…奪われるばかり…」

 

政府やブラック企業に献身を続けてきても報われず、薄給と高い税金で酷使されて社畜と化す。

 

国が救ってくれると根拠もなく信じても、労働監督署は民営化させられ資本に売られてしまう。

 

救われない社畜と同じように濁った目を浮かべる彼女の心もまた擦り切れてしまったようだ。

 

「十七夜……私達はもしかしたら……()()()()()()()()()()なのかもしれないわ」

 

「幻だって……?」

 

「平等なんて概念…本当にあるの?人間は生まれも見た目も格差がある……自然なことなのよ」

 

「そ、そんな……それじゃあ……平等を信じて戦った自分や……東の魔法少女達は……」

 

「……幻に操られていただけ。聞こえのいい概念に誘導されながら…ただの暴徒になったのよ」

 

平等という概念を信じてやまなかった十七夜の心は残酷な現実によって再び砕かれてしまう。

 

涙が止まらない彼女は嗚咽を堪えきれなくなり、大粒の涙を浮かべながら泣いてしまうのだ。

 

「自分達は愚かな道化だぁ!!東の人々も…魔法少女も…幻に操られた大馬鹿者だったぁ!!」

 

泣き喚く十七夜に声を掛ける言葉も浮かばない者達が顔を俯けてしまう。

 

それでも同じ東の者としてみたまが彼女を抱きしめながらこう言ってくれたのだ。

 

「たとえ平等がなくてもね…抵抗権はあるわ。弱い動物だって強い動物に脅かされたら戦うわ」

 

「グスッ……ヒック……たとえ格差が自然であっても……抵抗することは……正しいのか…?」

 

「自分の生存権を脅かされて奪われてしまうなら戦えばいい…貴女達の抵抗は無駄じゃないわ」

 

「八雲……八雲ぉぉぉぉ……ッッ!!!」

 

抱きしめ合いながら泣いてしまう者達がこれからどう生きるべきかを語っていく。

 

「人は何処までも彷徨う者…だからこそ導く者が必要なの。きっと尚紀さんが導いてくれるわ」

 

「エッグ…ヒック…自分は人修羅様について行く…何処までも…嘉嶋尚紀様について行く……」

 

格差や差別に苦しみ続ける者達には希望の光が必要だ。

 

希望の光明が無ければ彼女達の心は常闇に包まれながら破滅願望に支配されて死んでしまう。

 

それこそがブラック企業や独裁日本政府に絞られながら絶望死していく日本人達の辛い現実。

 

死が救いと自殺する日本人の数は世界六位であり、日本は極めて病んだ国に成り果てている。

 

このままでは日本人は絶滅危惧種になり、その穴は移民が埋めて日本は乗っ取られるだろう。

 

フランス革命前の地獄の時代に戻った日本には光明となる太陽の如き存在が必要だ。

 

その光となってくれるかもしれない存在こそ、常闇の女達が求める嘉嶋尚紀という光であった。

 




これでソウルハッカーズ組のダークサマナーは全員退場させられましたね。
後はアリナとほむらのバトルやら、人修羅&ライドウとオリキャラのバトルやらの流れで7章は終わる予定です。
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