人修羅×まどマギ まどマギにメガテン足して世界再構築 作:チャーシュー麺愉悦部
東京を包囲する自衛隊の秘密部隊をサポートする形で配置されたのが東部方面隊である。
防衛大臣直轄の東部方面隊に所属する第一師団の指揮を執るのはゴトウ一等陸佐。
彼に率いられる普通科連隊の兵士達は東京に人を寄り付かせないよう交通誘導員となる。
しかし目の前で首都が攻撃されているのに交通誘導をやらされる現実に憤慨しているのだ。
「何故ですか!?何故首都を奪還するために攻め込むことが許されないのです!?」
第一師団の指揮所で檄を飛ばすのはゴトウであり、連絡相手は防衛大臣を務める西大臣。
有事の際の上級指揮となる陸上総体に話を通してもダメだったため大臣に連絡をとったのだ。
「ゴトウ一等陸佐、本作戦を担当するのは君達の部隊ではない。大人しく交通誘導を行え」
見滝原市政治行政区に新しく設けられた防衛省ビルの地下には中央指揮所が設けられている。
そこで本作戦の指揮を執る西大臣は椅子に座りながらゴトウの連絡を受けているようだ。
「目の前の東京には避難民が大量にいるのですよ!?どうして避難させることも出来ない!?」
「テロリストが何処に潜んでいるか分からん現状では民間人に偽装している可能性が高いのだ」
「だからといって全ての民間人を包囲して隔離するでは……大勢の死傷者を出してしまう!!」
「コラテラルダメージとして受け入れる必要がある。革命部隊は誰一人逃がすわけにはいかん」
「死ぬのは我々兵士だけでいい!!燃える東京にいるのは日常を生きてきた民間人なのだ!!」
「感情だけで判断するのは現場指揮官として失格だ。大局を見る必要があるのだよ」
「自衛隊は我が国の安全を守ることが使命とされている!国の安全とは民を守ることなのだ!」
「それは重々承知している。君達の部隊が向かわなくても日米の部隊が強力して制圧に向かう」
連絡を切られたゴトウは師団のテント内にある椅子に座り込み、顔を手で覆ってしまう。
心配そうに見つめる部下を手で払いながら外に出し、無念の気持ちを言葉に出すのだ。
「我々自衛官は…誰を守るために厳しい任務に励んできたのだ?政府か…?それとも民か…?」
侍精神を重んじるゴトウもまた忠義の精神を国と自衛隊に捧げてきた武人。
だが忠義の精神を捧げてきても上の判断を信じられなくなってしまい、迷いに支配されていく。
「武士道とは古来より忠義なる絶対の心得がある…だが、主君が道を外した時…如何にする?」
中国・前漢時代の歴史家、司馬遷が書き残した史記を読んだことがある彼はこう口にする。
「折檻諫言…主君の暴走を諫めるには…臣下が命を懸けて主君を止めねばならん…」
武士道を貫き主君に忠義を尽くそうとも、主君が暴走したならば止めなければならない。
しかしその道は忠義の道に背く行為であり、武士道精神に反する裏切り行為。
自衛官として侍として、忠義の精神に支配されるゴトウは苦しみ抜いてしまうのだ。
「私が死んでも政府が名君になってくれるならそれでいい…だが、そんな保障が何処にある?」
ゴトウが思い出すのは
三島由紀夫・森田必勝らが部隊に決起を促す演説をするのだが、与する自衛官はいなかった。
日本を支配する米国脅威を叫ぼうとも寄らば大樹な者に絶望した三島は割腹自殺を行ったのだ。
「他人に期待しても応えさせる義務も責任も用意出来ない…ならば自由意志で隷属を選ぶか…」
どれだけ国の支配構造を叫ぼうとも、それを理解するには前提知識が必要である。
前提知識もない者達にいくら叫ぼうと応えてなどくれないし、揶揄と嘲笑を浴びせられるのみ。
これこそが暁美ほむらや美国織莉子、それに観鳥令や三浦旭達が苦しんできた現実。
そして魔法少女達が真実を語りたくても語れなかった原因でもある。
真実を叫ぼうとも周りはそれを理解する前提知識など学んでくれない、だからこそ差別された。
「誰も真実なんて興味はない…望むのはパンとサーカスという毎日の生活とガス抜きだけか…」
ゴトウは軍事だけでなく政治も学んだ者であり、日米安保が偽りに塗れているのも知る者だ。
このまま偽りに塗れた日米同盟に支配されながら欧米ユダヤ帝国に搾取されるだけなのか?
そんな風に国を憂う者となったゴトウもまた憂国の烈士となれる覚悟を宿せる者かもしれない。
それでも三島事件の歴史がある以上、自分が決起を起こそうとも誰も彼には応えないだろう。
「正しいことを言えば死罪を与えられるのが諌言の歴史…それでも…誰かが止めねばならん…」
独裁国家やブラック企業の暴走を止めるには臣下となる下々の者達の決断と団結が必要になる。
しかしそれは裏切り行為でもあり、全体秩序を裏切る社会悪として処罰される道なのだ。
頭を抱え込んでしまうゴトウは自衛官として武人として悩み抜く。
忠義の精神とは得体の知れない政府に捧げるべきなのか?
それとも助けを乞う民にこそ捧げるべきなのか?
武士道とは死ぬことと見つけたりならば、誰のためにこそ武人は死ぬべきなのか?
その答えを出そうと苦悩するゴトウの姿は別の世界のテンプルナイトと重なって見えてくる。
そのテンプルナイトとはメシア教を裏切ってでも民を守ろうとした体制側のザインであった。
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政治の中枢である皇居の周囲から少し離れた渋谷区方面ではジャックランタンが空を飛ぶ。
代々木公園の上空を飛びながらアリナの姿を捜索する中でも街の炎が気になるようだ。
「ヒホ…まるで戦争だホ。こんな凶行が出来る連中に加わったアリナを見つけるのかホ…?」
これだけの大惨事となれば死傷者の数は神浜テロを遥かに超えることなら分かるはず。
だからこそジャックランタンはアリナの説得よりもかりんの説得を重視したいようだ。
「これだけの所業をしたなら…人修羅に殺されちまうホ。アリナは諦めるしかないホ…」
せめてかりんだけでも生き残らせたいと考えていた時、アリナの魔力を感じ取る。
顔を向ける方角は渋谷区の井の頭通り方面であり、彼は慎重に向かうことになるのだ。
「アリナに見つかったら殺されちまうホ…かりんが現れたら合流して…尻尾を撒いて逃げるホ」
かりんを見つけ次第説得して尚紀が指定した合流地点に向かった後に共に脱出する。
それが最善だと判断したランタンは非情にも東京の人々を見捨てようとしているのだ。
それが善行に繋がるかは分からず、悩み苦しんでしまうがランタンの答えは決まっている。
人間も悪魔もその力には限界があり、全てを救うことなんて出来ないと知っているのだろう。
そんな中、アリナとフェニックスの魔力の元へと向かってくる魔力に気が付く。
「西側から近づいてくる魔力は……かりんとリパーかホ!?」
ランタンと同じように東京の夜空を飛んでいるかりんとリパーは顔を青くするばかり。
見下ろす地上はどこもかしこも炎が昇っており、上空には飛行タイプの悪魔が大勢いる。
「こんなのって……酷過ぎるの…。まるで……この世の地獄なの…」
「姐さん…ここはもう戦場だ。いつ撃たれるか分からない場所に来たって意識した方がいい…」
「こんな酷いことをやっているの…アリナ先輩となぎたんは…?だとしたら…私は……」
アリナや十七夜と出会った時、どのように説得すればいいかも分からなくなってしまう。
大きな迷いに支配されているからこそ急接近してくる悪魔の群れに気が付かないのだ。
「ヒャッハー!!美味そうな魔法少女を発見伝!!」
「そのソウルを俺達に狩らせろ!!俺の腹の中に入って冥界に行こうじゃねーか!!」
「抜け駆けしてんじゃねーよ!!誰があの小娘のソウルを喰らうかは早い者勝ちだぁ!!」
夜空を駆けながら迫ってくるのは黒いローブを纏いながら馬に乗り、鬼火を操る悪魔達。
猟犬の亡霊まで引き連れた悪魔の群れは東京の人々に死を撒き散らす存在であった。
【ワイルドハント】
猟犬の幽霊を引き連れた亡霊の一団であり、姿を見た者は冥界に連れ去られるという。
天候の不安定な夜中に灯りを掲げて空や荒野を駆けており、欧州に広く伝わる存在のようだ。
永遠に休めない猟師集団であり、地獄から現れて黒い犬や馬などを駆りながら人々を襲う。
夜の外出者を引き込む悪霊であり、死者の群れを率いる神々の軍勢が元となった悪魔だった。
「ま、不味いですぜ……姐さん!!ボーっとしてる場合じゃないっスよ!!」
「えっ?ええっ!!?なんか……怖い群れが迫ってくるの!!」
「あれはワイルドハントの連中だ!!捕まったら姐さんの魂は冥界まで持ち逃げされる!!」
「それは困るの!私にはまだ…やらなきゃいけないことがあるから!!」
死霊となった猟師達が鬼火を纏った弓矢を構えて次々と放ってくる。
青い鬼火を纏う矢には呪殺の力が宿っており、当たれば即死しかねない一撃なのだ。
「しっかり掴まってるの!!」
急降下して矢の雨を避けるかりんに目掛けて死霊となった猟犬の群れまで迫ってくる。
猟犬と狩人の群れに追われるかりんであったが、それを助けたのはランタンなのだ。
「グハァ!!?」
「な、なんだぁ!!?」
手に持たれた灯りから放たれたのはマハラギであり、無数の火球がワイルドハントに直撃する。
「かりんはやらせないホーーッッ!!」
空から現れたランタンに目掛けてワイルドハント達が襲い掛かっていく。
「ランタン君!?」
「あの野郎…東京までオレ様達を探しに来てくれたのか!流石だぜ!」
「お前を探しに来たわけじゃないホ。かりんを探しに来ただけだホ」
「そんなこと言うなよーっ!?オレ様達は仲魔じゃねーかーっ!!」
「お前はトラブルの種だホ。だけど…最低限かりんを護れたようだし、そこは評価するホ」
「ごめんなさい…ランタン君。私……その……」
「今はその話をしている場合じゃないホ!こいつらをどうにかしないと殺されちまうホ!」
協力して戦うことになったかりん達であるが、彼女の力はワイルドハントには通用しない。
「ダメなの!こいつらには睡眠魔法が通じないの!」
「あたりめーだ!俺達は寝る間も与えられない永遠の悪霊と成り果てた猟師達なんだ!!」
「この呪いは俺達猟師にとってはある意味祝福かもなぁ!さぁ、狩り殺されるがいい!!」
高速飛行しながらも逃げきれないかりん達は絶対絶命のピンチに陥ってしまう。
そんな時、それは舞い降りるのだ。
「この魔力は……まさか……!?」
ワイルドハント達が上空を見上げれば巨大な炎の翼を広げた悪魔が飛来してくる。
<<ウォォォーーーーッッ!!?>>
飛来してきたフェニックスが翼を羽ばたかせれば強風が吹き荒れ、狩人達が吹っ飛ばされる。
「キャァァァァーーーーッッ!!?」
かりん達も風魔法を浴びたせいで強風で飛ばされていき、渋谷109ビルの屋上に倒れ込む。
「うっ……うぅ……」
傷ついた体を持ち上げて空を見上げれば不死鳥が羽ばたいており、彼女はこの悪魔を知る者だ。
「……フールガール」
フェニックスの背に乗る者とは彼女の探し人であり、ダークサマナーとして東京を破壊する者。
現れたのはアリナであり、蔑みの眼差しを送りながら夜空で君臨するのであった。
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渋谷109の屋上を睨むアリナであるが、邪魔立てをする者に対して悪魔達が怒鳴ってくる。
「邪魔しに来やがったのか!?いくらアリナさんであっても容赦しねーぞ!」
「アナタ達のターゲットは別なワケ。魔法少女の相手なんてしてないで東京を破壊すればいい」
「テメーの命令なんて知ったことか!俺達はシドの旦那の指揮下にいる悪魔なんだぞ!!」
「さっきコマンドポストから連絡がきたんですケド。クソマスターがロストしたってね」
「まさか…そんなバカな…!?ダークサマナー最強のシド・デイビスが…やられたのか…!?」
「ユダやマヨーネとも連絡がつかない以上は…全員やられちゃったと考えてもいいんですケド」
動揺を浮かべるワイルドハント達に対してアリナが命令を下してくる。
「デビル達の指揮権をルイーザから一任されたのはアリナなワケ。だから命令するんですケド」
「チッ……了解した。引き続き東京の人間共を始末しに向かうさ……」
忌々しい表情を浮かべながらも手綱を打ち、ワイルドハント達が他の地域に向かっていく。
残されたアリナは地上を見下ろしながら眉間にシワを寄せる顔を浮かべたようだ。
「…本当のアリナをわざわざ見に来るために東京に来たワケ?おめでたいんですケド」
「アリナ先輩!!今すぐやめるの!!」
「何をやめて欲しいワケ?」
「東京を破壊するのをやめるの!!どれだけの人達を殺戮すれば気が済むわけなの!?」
「まだまだこんなもんじゃ終わらないんですケド?それを見に来たんでしょ?」
「そんな訳ないの!!私はアリナ先輩を止めたくて東京に訪れたの!!」
「アミューズメントパークで叫んでた言葉通りなワケ?だったら…そこで見ていればいい」
アリナに促されたフェニックスが高速で飛び立ち、ループ飛行しながら攻撃コースに乗る。
狙うのは渋谷109に隣接する文化通りであり、地上には多くの避難民達が逃げ惑う。
そんな地上に目掛けて空爆を仕掛けようというのだ。
「や……やめてぇぇぇぇーーーーッッ!!!」
長い尾羽が燃え上り、地上に目掛けてフレアをばら撒くようにしてマハラギオンを放つ。
<<ギャァァァァァーーッッ!!!>>
無数のフレアが撒かれたことで燃え上がっていく大勢の民衆の中には女子供まで混じっている。
地面で転がりながら絶命していく地獄の光景を見せられたかりんは両膝を崩してしまう。
「そんな……そんなぁぁぁぁぁ……」
燃え上がる地上の光景を涙ながらに見せられる中、横のランタンが重い口を開いてくれる。
「…これで分かったはずだホ。アリナはかりんが考えているような人間なんかじゃないホ…」
「姐さん…今回ばかりはランタンの意見に賛成だ。あいつを殺してでも止めないと大勢が死ぬ」
「やだ……やだやだ!!アリナ先輩はそんな人じゃない……優しい先輩なのぉぉぉーーっ!!」
「現実を見るホ!目の前の地獄を生み出した女が優しい先輩?現実逃避もいい加減にするホ!」
「アリナ先輩は悪い組織に操られているだけなの!!望んでやっているわけじゃないの!!」
「姐さんは聞こえないんですか…アリナの高笑いが?心底楽しんでいるような笑い声が…?」
フェニックスを操りながら空爆を繰り返すアリナは大声で笑っている。
<<サイッッッコーーーッッ!!アーーーハハハハハハハッッ!!!>>
弱者達が燃え上がりながら死んでいく光景を喜ぶアリナの体の中に宿る千晶もまた喜んでいる。
彼女達の望みこそ弱肉強食思想のヨスガであり、イルミナティ思想であるエリート主義。
羊に過ぎない
そこには倫理観など欠片もないユダヤの優生学があり、牧場経営気分で弱者を間引く姿なのだ。
「決断する時ホ…かりん。お前は大好きな人を優先するあまり…民衆に犠牲を強いる者かホ?」
「姐さんが決断してくれるなら……オレ様は喜んでアリナの首を搔き切りに行きますぜ?」
「私は……私はぁぁぁぁぁ……」
渋谷区一帯を飛び回りながら空爆を続けたために地上は火の海と化している。
大勢の人達が燃えながら炭化していく地獄の光景を生み出した者が空を飛びながら現れるのだ。
「これで証明出来たヨネ?アリナがどういう存在なのかってことが?」
109ビルの屋上に備わるイベントスペースに飛び降りてきたアリナがステージの屋根に立つ。
下を見下ろすアリナの表情には決別の感情が宿っており、我が道を行く信念が宿っている。
その光景はまるでボルテクス界の再現であり、人修羅を見下ろす千晶の姿でもあったのだ。
「…アリナはパワーを求めた。魔法少女では得られなかったドリームを叶えるパワーを求めた」
「その光景が……この地獄だというの……?」
「腐り果てたままアナタと楽しく過ごして終わりたくない。そのためのマイウェイだカラ」
「アリナ先輩は……私と一緒に生きたくないの……?」
未だに大好きな先輩に縋りつこうとする後輩を見せられたアリナの顔に落胆の表情が浮かぶ。
「…アリナが魔法少女になるために自殺した頃、アナタが見舞いに来てくれたヨネ?」
彼女が語ってくれたのは入院時代のアリナのために持ってきたマジカルきりんの漫画である。
読みたくもない漫画を持ち込まれて辟易していたが、後輩は彼女のために用意してくれた。
渋々読んでしまったのは自分を心配してくれたかりんの気持ちが嬉しかったからだろう。
「アナタが魔法少女を続けてきたのはコミックヒロインになるため。なら…今のアナタは誰?」
御園かりんを試すためにこそ、彼女は後輩と共に生きていた頃と同じ試練を与えようとする。
「孤高の変身ヒロインなの?それとも周りに依存するあまり自分の原点さえ捨てれる人なの?」
孤高の変身ヒロインに憧れて魔法少女活動を始めた頃、彼女はももこ達とチームを組んでいる。
独りぼっちは寂しいからと
その姿は学生の頃に見てきた堕落した者達であり、そんな連中と同じになった女を憎んだのだ。
「アナタが欲しいのは原点なの?それとも…アリナが大嫌いな絆を求める馴れ合い社会なの?」
地面に両手をついたまま震えるばかりの後輩であったが、それでも譲れない気持ちがある。
「私ね…気分屋だから直ぐ周りに流される。そんな時はいつだってアリナ先輩が導いてくれた」
「御園かりん……」
「デッサンだって私は出来ていると思っても間違ってた時…アリナ先輩が導いてくれた…」
ゆっくりと立ち上がるかりんの目元は魔女の帽子のつばによって隠れている。
それでもその奥には力強い信念の目が宿っていることなら先輩は分かってくれているのだ。
「私はね…ダメな私を導いてくれたアリナ先輩が大好き。だけど……
顔をゆっくり上げていくかりんの力強い眼差しを受け止めるアリナの口元が微笑んでいく。
「イグザクトリー。ならもう一度聞かせて欲しいんですケド……今のアナタは誰なの?」
「今の私はアリナ先輩の後輩であり……悪を許さない孤高の変身ヒロインでもあるの!!」
右手に大鎌を生み出した彼女が大鎌を回転させながら担ぐ形で構えてくる。
「我こそは正義の怪盗マジカルかりん!何度も救ってくれた恩人を助けるために戦う者だ!!」
かりんの覚悟を受け取ってくれた仲魔達も頷き合い、アリナと戦う覚悟を示す。
彼女の帽子には五芒星を示す星の飾りが存在しており、五芒星とは悪魔を封印する意味がある。
悪魔の道に進もうとする恩人と戦ってでもそれを止めたいという気持ちの表れにもなるだろう。
迎え撃つアリナもまた右手を持ち上げていき、手の甲を向けてくる。
右手に嵌められた黒革手袋の甲には逆五芒星が描かれており、御園かりんとは対極を表す。
誰にも支配されず流されず、我が道を貫きながら支配から脱するという自由を掲げる者となる。
その道こそ暁の星となるルシファーを表し、人修羅が掲げたサタニズムの道にもなるのだ。
「オーケー……御園かりん。今のアナタの覚悟だけは……百点あげてもいいんですケド」
「アリナ先輩はアリナ先輩がなりたい者になればいい!我もまた我がなりたい者となる!!」
「上出来なんですケド!方向性は違っても…アリナとアナタは似た者同士だヨネ!!」
左手も持ち上げて構えるアリナのハンドサインはコルナサインであり、悪魔崇拝者だと示す。
悪魔と戦う正義の怪盗もまた大鎌を構えながら跳躍して正義の武器を振り上げる。
お互いに求める神秘主義の形は違っても、憧れを真似て極めたい気持ちはどちらも同じ。
だからこそ彼女達は全力をもって戦い合うだろう。
――――――――――――――――――――――――――――――――
東京郊外にある豪邸で武力革命が起きるのを待っていた暁美ほむらも行動を起こしている。
しかし彼女は行く手を遮る強大な悪魔の力によって東京に向かうことが出来ない状態なのだ。
「チッ!!でかい図体のくせに素早いわね!!」
高度一万メートルでせめぎ合う霊鳥に目掛けてほむらは魔法盾を掲げる。
周囲に浮かぶ光の中から飛び出す空対空ミサイルが迫る中、巨大な霊鳥もまた魔法を行使。
周囲に発生した竜巻の壁にぶつかったミサイルが次々と切り裂かれて爆発するのだ。
「やはりアラディアとの戦いで消耗した魔力が回復していないようだな?」
巨大な霊鳥の口元に不気味な笑みが浮かび、悪魔ほむらを殺そうとしてくる。
【ジュターユ】
インドの叙事詩ラーマーヤナに登場する巨大な鳥の王であり、老齢のハゲタカの姿をしている。
ガルーダの子供とも甥とも言われる存在であり、象の鼻に比肩する長さの硬い鉤爪を持つ。
ラーヴァナとの戦いにおいては善戦したが剣で翼を切り落とされて死ぬ末路となった。
「そこを退きなさい!!私はお前の相手をしている暇はないのよ!!」
「ならば力を示すがいい!!本来の力ならばここまで苦戦する程のものではないはずだ!!」
ジュターユはルシファーが配置させていた悪魔であり、悪魔ほむらの壁として使われる駒。
しかし悪魔ほむらが十分な力を示せないようなら食い殺しても構わないと仰せつかっている。
だからこそジュターユは本気で悪魔ほむらを殺そうとしてくるのだ。
何時間も空中戦を続けていたため魔力消耗を感じる悪魔ほむらは勝負をかけようとする。
<これ以上無駄な魔力消耗や武装消耗は避けたいわ、一気にいくわよ>
<最初からそうしておれば良かったのにのぉ。アラディアを倒せて慢心しとりゃせんか?>
<黙りなさい!私に油断なんてものはないわ…格の違いを見せつけてやりましょう!>
<それは構わんが…
魔法盾を掲げた悪魔ほむらが時間停止を行使。
周囲の時間が静止したことにより特大の爆弾を武器庫から出現させてハゲタカに与えるのだ。
「こ、これは!!?」
時間が動き出した時、目の前に出現していたのはMOABと呼ばれる大規模爆風爆弾。
核兵器を除くと米軍が保有する爆弾の中では最大級で最強の破壊力がある爆弾が起爆する。
<<グォォォォォーーーーッッ!!!>>
至近距離で爆発させられたことで全長300メートルを超える超巨大ハゲワシが崩壊していく。
地上で起爆すればキノコ雲が昇る程の爆弾を行使出来たのは高度一万メートルだからこそだ。
「ハァ……ハァ……手こずらされたわね」
爆発から離れた位置で宙を浮くほむらが地上を見下ろす。
下の東京では大火災が全域に広がっており、多くの命が燃え尽きていくのが分かる。
「ここは東京…私にとって最初の故郷。それでも偽りでしかない…今の私の故郷は見滝原市よ」
偽りの人生を与えられた東京を彼女は憎悪しており、命を懸けて守るに値しないと感じている。
だからこそ今の悪魔ほむらは誰のためにも戦わない者となり、自分の目的のために力を振るう。
悪魔の力を行使するべき獲物を発見した彼女は侵食する黒き翼を用いて地上に向かうのだ。
「我儘な道を生きると貴女は言ったわね?だったら自由の代償を支払わせてあげるわ」
今の彼女が求めるものは鹿目まどかとの幸福な人生であり、
だからこそ目の前の敵は全て滅ぼし尽くすために悪魔の力を用いるものと成り果てる。
その在り方は傲慢であり、傲慢の罪を象徴する暁のルシファーそのものに感じられるはずだ。
知らない間にほむらは傲慢に支配され、愛する人達以外は全て利用するものだと考えている。
その在り方こそがムスビであり、自己完結を基本としながら他人を利用する矛盾に支配される。
思考の蛸壺という閉じた価値観でしか世界を認識しなくなった悪魔ほむらもまた脆弱な存在。
いずれ彼女もムスビを啓いた勇同様、己の矛盾によって弱者に成り果てるやもしれなかった。
メガテンのゴトウさんの元ネタは三島由紀夫だってのはメガテニストの間では知られた設定だと思います。
僕が描くゴトウさんもどうなることやら…(汗)
アリナちゃんもほむらちゃんもこのままいくとド不幸にしかならんやもしれん(汗)