人修羅×まどマギ まどマギにメガテン足して世界再構築   作:チャーシュー麺愉悦部

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294話 アウトロー

これはまだ神浜テロも起きていなかった頃の和泉十七夜が聞かされた話である。

 

いつものようにメイド喫茶でバイトしている彼女は休憩時間となり、休憩室に入っていく。

 

するとそこには事務仕事をしているオーナー兼店長を務めるオネェな人物がいたのだ。

 

「お疲れ様、なぎたん。コーヒー淹れるからソファーにでも座っててね」

 

「いや、コーヒーぐらい自分が……」

 

「いいのいいの♪オーナーとして毎日苦労をかけるメイドさん達に労いぐらいはしたいもの♪」

 

渋々ソファーに座って店長が淹れてくれるコーヒーを受け取ってくれる。

 

この頃の十七夜はメイド喫茶に入ったばかりであり、まだ自分のキャラ立ても見出せない時期。

 

色々と悩んでいる彼女を御園かりんが導いてくれたりもしたが、最初の導きは違う人だった。

 

「…あまり落ち着かない雰囲気だけど、やっぱり西側で働くことへの後ろめたさがあるの?」

 

「えっ…?い、いや……自分はそんな気持ちなど……」

 

「面接の時の最初の反応を忘れてないわよ。東の人として貴女はコンプレックスがあるわね?」

 

そう指摘された十七夜は胸が苦しくなってしまい、顔を俯けながら本音を語ってくれる。

 

「東の者が西側で働ける機会などそうない…運に恵まれた自分は…申し訳ない気持ちになる…」

 

「どうして?なぎたんは何も悪いことなんてしていない。なのに申し訳ない気持ちになるの?」

 

「そ、それは……その……」

 

悩み苦しむ若者を見た店長は椅子に腰かけた後、座りながら滑らせて彼女の前にくる。

 

心配そうな彼女を安心させる笑顔を浮かべた後、オカマとして生きる自分の苦しさを語るのだ。

 

「コンプレックスはね、周りと違う、悪いことをしているという気持ちから生まれるものよ」

 

「そうかもしれない…東の者達はいつも西側連中から悪者にされてきた…中身も観ないでな」

 

「アタシのようなオカマだって同じ苦しみを受けてきた。だから皆が劣等感に苛まれていく」

 

周りの価値観に合わさず、自分を貫こうとする者ほど出過ぎた杭のように扱われて叩かれる。

 

それが日本社会であり、そんな社会に憤る者達が社会変革を求めて共産主義者に成り果てる。

 

しかし店長は周りから叩かれようとも自分を曲げず、国の歴史に問題をすり替えてこなかった。

 

「周りに合わさないアタシは不良と変わらない扱いを受けてきた。社会不適合者と呼ばれたわ」

 

「東の人々もそう呼ばれた…自分や八雲…それに大勢の東の者が不良のように疎まれてきた…」

 

「だからといって周りに問題を押し付ける必要はない。貴女は貴女でいいのよ、なぎたん」

 

「えっ……?」

 

「人は善人である必要も悪人である必要もない。人がその本性を受け入れて胸を張ればいいの」

 

「だが…自分は東の者だと胸を張ってアピールすれば…西側の者達から嫌悪されてしまう…」

 

「だから何?法律違反もしていないし他人の権利の侵害もしていない。なら堂々とすればいい」

 

「オネェサマ……」

 

「人がその本性を引き受け、開き、生きていれば…どんな人間だって素晴らしく魅力的なのよ」

 

店長が語ってくれたのは尚紀が保澄雫に与えてくれた教示と同じもの。

 

周りに合わせて普通に生きる努力をする者ほど価値がなく、社会の奴隷と成り果て社畜と化す。

 

本性を受け入れず、繕い、作り上げた己の嘘に耐え続けた末に人間は擦り切れて心が壊死する。

 

末路は他人への憎しみに支配された八雲みたまの姿であり、壊れた心は暴力と仕返しを望む。

 

そんな者を食い物にするのが左翼政治や左翼ビジネスであり、国の破壊者へと誘導されるのだ。

 

「社会に合わせて自分を殺して幸せなの?きっと不満ばかりを募らせた末に……心が壊れるわ」

 

「そ、その……オカマとして生きてきた店長も……そんな苦しみを経験してきたのか?」

 

「うん…そうよ。貴女を見ていると若い頃のアタシの姿にそっくり…だから導いてあげたいの」

 

偽善、偽悪は等しくお粗末。

 

本性さえ表してくれたら何でもいい。

 

せっかく生まれてきたんだし、本当の自分と出会うがいい。

 

それこそが本当に求める自分の姿であり、自分の心が求める我の居場所だと伝えてくれる。

 

そう伝えてくれた十七夜の目に涙が浮かんでいき、恥ずかしいのか顔を俯けてしまう。

 

「オカマのアタシも社会を憎んできた…だけどアタシを差別しない人もいた。その人の言葉よ」

 

「グスッ……バカにされてきた東の自分達でも…胸を張って…生きてもいいのか…?」

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。本当の敵はね…自分自身の劣等感なの」

 

「自分自身の…劣等感…?」

 

「アンタらがどう言おうとアタシはアタシ!そう言って胸を張れたら社会への憎しみも消える」

 

相手に自分を分かってもらおうと押し付けようとするから政治的な争いが生まれてしまう。

 

ならば他人に期待などせず、社会の揶揄と嘲笑さえも気にせずに自分を貫いていけばいい。

 

社会に迷惑かけると卑屈になり、社会献身という優しさの犠牲になり、抑圧される必要はない。

 

公共の福祉の範囲内ならば自由を謳歌してもいいのだ。

 

「だが…西側社会は自分達を傷つけるだろう。存在が不快だ、気持ち悪い、街から消えろと…」

 

「なぎたん……」

 

「東社会そのものが公共の福祉を害しているとさえ言える連中だ…所詮自分達は不良扱いさ…」

 

「アタシ達が自分を信じても社会は容赦しない…だからアタシのオカマ友達も左翼脳なのよ…」

 

「自分達もまた左翼主義に囚われて…社会を破壊する暴力団に成り果てる日が来るのかもな…」

 

「社会の奴隷になる必要はない…だけど社会は貴女を束縛して支配する…世の中のジレンマね」

 

「話してくれて有難う…オネェサマ。自分達を差別しない人の元で働けて……本当に嬉しいぞ」

 

寂しそうな笑みを浮かべた後、十七夜は事務所から出て行ってしまう。

 

見送る店長の顔には不安が滲んでおり、彼女の未来を案ずる言葉を送ってしまう。

 

「理解出来ない不快な者を排除しようと思う限り何処までも操られるのよ…分割統治手口でね」

 

握り込まれた店長の拳は震えており、十七夜を差別する者達への怒りの感情が浮かんでいく。

 

しかし怒りに飲まれてしまえば最後、左翼団体の仲間入りを果たすことなら分かっているのだ。

 

「周りの価値観に虐げられてなお自分を貫ける道…本当に極まった道ね。それでも必要なのよ」

 

十七夜の未来を憂う店長が求める道こそ個の確立であり、人修羅が掲げたサタニズムの道。

 

それを掲げる者となったのが一年後の東京で戦うことになった暁美ほむらとアリナであった。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――

 

「さぁ、あの時のケリをつけるんですケド!!」

 

「容赦はしない……チリも残さず滅ぼしてやる!!」

 

東京の大空でドッグファイトを繰り返すのはフェニックスに乗ったアリナと悪魔ほむら。

 

背後から迫りくる悪魔ほむらの猛攻撃に対してフェニックスは回避行動を取り続ける。

 

飛びながら武器庫から伸ばして撃ち続けている武器はGAU8アヴェンジャー機関砲。

 

A10サンダーボルトIIに搭載された30mm口径のガトリング砲が復讐の音色を奏でる。

 

一発一発が着弾すれば戦車の砲弾クラスの威力がある機関砲攻撃に対してアリナが叫ぶ。

 

「相変わらずアナタは火薬臭い女だヨネェ!!ミリタリーガール!!」

 

互いが回転飛行しながら銃撃を放ち、迫る機関砲の一撃を避け続ける。

 

東京の空は猛禽類の如き乙女達のドッグファイトステージとなり、一歩も譲らない戦場となる。

 

「今度は外さない!!」

 

機関砲を武器庫に仕舞うようにして消した悪魔ほむらが放つのは空対空ミサイルである。

 

武器庫の光から無数に発射されたミサイル攻撃は近距離であり、回避は間に合わない。

 

「アリナの可愛いフェニックスを舐めないでヨネ!!」

 

急上昇すると同時に尾羽が燃え上がり、フレアを撒くようにしてマハラギオンを放つ。

 

ばら撒かれたフレアをミサイルに直撃させることで攻撃を防ぐが後ろからは次が迫りくる。

 

きりもみ飛行しながら水平飛行に移るフェニックスに目掛けて再びミサイルを発射。

 

しかしフェニックスの体が起き上がるようにしてクルビット飛行を行い、舞うように避ける。

 

空気抵抗を体に受けながら利用して木の葉のように下がっていき、ほむらの後ろをとるのだ。

 

「チッ!!流石は大空を支配する不死鳥ね……離れ業のオンパレードよ!!」

 

侵食する黒き翼の出力を上げながら悪魔ほむらは東京の街に目掛けて一気に降下していく。

 

地形効果を利用してアリナとフェニックスの目標探知を混乱させる狙いがあるのだろう。

 

アリナ達も追うようにして急降下するのだが、彼女は仲魔にこう告げるのだ。

 

「アリナが乗ってると全力で戦えないヨネ?アリナはどくから本気を出していいんですケド」

 

「ママ、ドイテテ!オレ、ホンキニナル!ウデノカリ、カエス!コロス!コッロース!!」

 

片手を背中に当ててコネクト魔法を行使してフェニックスを強化した後、アリナが飛ぶ。

 

空中に放り出される形となった彼女であるが左手に召喚用キューブを生み出して仲魔を放つ。

 

現れたのはパズスであり、アリナを左掌に乗せるようにして受け止めたようだ。

 

「見せてあげたらいいんですケド。アナタの本当のパワーをね」

 

ハンデから解放されたフェニックスの全身が燃え上がり、不死鳥は真の姿を解放する。

 

援護を行うかのようにしてバズスもまたマカラカーンを行使。

 

魔法反射フィールドを全員に展開したことで不死鳥は魔法反射までしてくる耐性で迫りくる。

 

「振り切れない!?」

 

全身が燃え上がるフェニックスが最高速度になりながら悪魔ほむらを追撃してくる。

 

東京の高層ビルの間を潜る両者であるが、フェニックスは口を開けて豪熱ビームを放つ。

 

「コロス!!コロス!!コッローーースッッ!!!」

 

目まぐるしく回避飛行を行うほむらに目掛けて次々と豪熱ビームが放たれる。

 

避ける彼女の横ではビームに焼かれて燃え上がる東京の街並みと人々が生み出されていく。

 

焼き尽くされていくその光景こそ炎を運ぶ光景であり、アリナもまた炎を運ぶ者だった。

 

<前回同様、悪魔のお前さんの魔法攻撃を警戒しておる。ならば物理的に攻めるしかあるまい>

 

<そのようね…ならクロノス、私が囮になるわ>

 

<了解した。ワシの網にかかるよう上手く誘導するがいい>

 

念話を終えた後、悪魔ほむらの魔法盾が光を放ちながら消失する。

 

追撃してくるフェニックスに目掛けて侵食する黒き翼を解放しても反射されるため逃げ続ける。

 

そんな彼女達が高層ビルの谷間を潜り抜けていく中、魔法盾から魔人の姿となった者が動く。

 

「そうじゃ…こっちに来い。ワシの網にかかった瞬間、不死鳥は細切れとなるだろう」

 

東京タワーの展望エリアの屋根に立つクロノスの横を通過しようと悪魔ほむらが迫ってくる。

 

通り抜ける前方空間には無数のシックル鎌が展開されており、不死鳥が通過する瞬間を狙う。

 

片手を掲げた後にほむらが上空を通過し、続く不死鳥が通過する時に時間停止を行う。

 

しかし時間停止を行おうとした時、右手に手錠が掛けられることになるのだ。

 

「き、貴様ッッ!!?」

 

時が静止した世界に佇む者とは時の翁であるクロノスとアリナの姿。

 

「タイムストップのウィークポイントなら聞いてるんですケド。大きなのっぽのオールドマン」

 

クロノスの右手とアリナの左手は手錠で繋がったことでお互いが時間停止空間で動ける。

 

彼女の腰にはガンベルトとポーチが備わっており、対ほむら用に手錠まで用意していたようだ。

 

そしてこのワンインチ距離はシドから鍛えられたカポエイラ使いの間合いでもあった。

 

「ぐはっ!!」

 

強烈なハイキックを浴びたクロノスが怯んだ事で時間停止が解けてしまう。

 

「クロノス!!?」

 

後ろを振り向くほむらが東京タワーで戦う者達を見たことで囮作戦は失敗したことを悟る。

 

「たかが魔法少女だと侮るべきではないわね…あの女も立派なダークサマナーだったわ…」

 

後ろを向いていたからこそ悪魔ほむらに隙が生まれている。

 

前を向いた瞬間パズスが放った『ウインドブレス』が迫り、直撃した事で急降下していく。

 

「くっ!!!」

 

地上に激突する前に侵食する黒き翼を羽ばたかせて体を制止させるが後続からも攻撃が迫る。

 

「オレサマ、オマエ、マルヤキ!!」

 

音速で飛行していたフェニックスが羽ばたきながら制止し、極大の炎魔法を行使する。

 

両翼から放たれたのはマハラギダインであり、パズスとの連携攻撃で炎と風が噴き荒れるのだ。

 

「キャァァァァーーーーッッ!!!」

 

東京タワー周辺から六本木方面に至るまで地獄の業火が噴き荒れる中、ほむらは耐えていく。

 

侵食する黒き翼を折り畳む形で炎を吸収するのだが熱までは防ぎきれていない。

 

それでも悪魔の耐性で耐え抜き、翼を広げてみれば周囲は業火で焼き尽くされた焼け野原だ。

 

「……まるで東京大空襲の再来ね」

 

東京タワーに振り向けばアリナに組み付かれて手こずるクロノスが見える。

 

周囲に展開させていた無数のシックル鎌をアリナに放っても彼女にはキューブの守りがある。

 

彼女達の周囲を飛び交うキューブの破片が鎌に当たればアトリエ空間に収納されていくのだ。

 

アダマスの大鎌とて右腕を封印されたワンインチ距離では振り回すゆとりもないだろう。

 

「戻りなさい、クロノス!!」

 

ほむらの叫びが聞こえたクロノスの体が光り輝き、ほむらの元へと移動している。

 

「チッ!!仕留めそこなったんですケド……」

 

再び魔法盾として悪魔ほむらの左腕に宿ったクロノスを引き連れたまま駆けていく。

 

燃え上がる東京タワー周辺から再び渋谷区方面に戦場を移す中、ランタン達は顔を青くする。

 

「ま……不味いんじゃねーの!?こっちに戻ってきてるじゃねーか!!?」

 

「あんな連中が近くに現れてドンパチなんてされたら…かりんまで巻き込まれちまうホ……」

 

明治神宮前のビルの屋上に避難しているランタン達の足元にはアリナの後輩が倒れている。

 

苦悶に満ちた表情を浮かべながらも大好きな先輩の名を呟くばかり。

 

大虐殺者となったアリナの悪夢でうなされようとも、それは紛れもなく現実であった。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――

 

魔法盾を掲げて武器庫から出現させるのは自衛隊の火砲である155mm榴弾砲FH70である。

 

横一列に並べて出現させた火砲に魔力を込めれば自動的に発射されていく。

 

かつてのワルプルギスの夜に目掛けて放った迫撃砲の雨を超える砲弾の雨が迫りくる。

 

しかし迎え撃つアリナは魔法武器のキューブを放ち、砲弾を次々とアトリエに封印するのだ。

 

「物理的な遠距離攻撃でさえあの女には届かない…だったら!近距離から撃ちこむしかない!」

 

敵に肉薄するために生み出した突撃銃を構えながらほむらはビルを跳躍していく。

 

銃口の下側に銃剣が装備されたHK416A5を撃ち続ける中、アリナが挑発してくるのだ。

 

「カモンカモン!遠くからバンバン撃ってるだけじゃアリナに攻撃は届かないんですケド!」

 

ビルを跳躍しながら並走し、射撃を繰り返すほむらを煽ってくる。

 

弾を防ぐキューブと攻撃を行うキューブを使い分けるアリナも負けじと反撃のキューブを放つ。

 

次々と放たれるNine Phases(9つの段階)を側転回避しながらほむらは避けていく。

 

時間停止を狙うが、それを見越したアリナは自分の背後にフルフルを常駐させているようだ。

 

山羊悪魔は全神経を集中しながら盾が起動する瞬間を狙い、カウンター魔法を放つ構えである。

 

一度の戦いで時間停止対策を練り上げてきたアリナが狙うのは魔法効果解除の魔法だった。

 

<奴め…ワシの時間停止を警戒しておるな。そちらに意識を持っていかれるならその隙を狙え>

 

<そうね…貴方の強力な力だからこそ囮として使える。それでいきましょう>

 

上空から攻撃を狙ってくるフェニックスの豪熱ビームに対してほむらは魔法盾に手を伸ばす。

 

取り出されたのは閃光手榴弾であり、ピンを抜いて投げられた後に眩い閃光を生み出す。

 

「グワァァァァァーーーッッ!!メガ!メガーーーッッ!!」

 

怯んだアリナとフェニックスに対してほむらは向こう側に跳躍。

 

目が見えなくともキューブの破片が銃弾を受け止める中、接近戦を仕掛けてくる。

 

「上等なんですケド!!」

 

射撃しながら接敵したほむらが突撃銃に装備された銃剣を用いて接近戦を仕掛けていく。

 

「死になさい!!」

 

銃剣を用いて刺突を狙うが、肌感覚で相手を感じ取ったアリナの上半身が消える。

 

「ぐふっ!!?」

 

片手を地につけながら倒立して放つ回転蹴りが右側頭部に決まるほむらであるが尚も攻め込む。

 

「アナタなんかがイナンナになるのは認めない!!暁のガッデスになるのはアリナだカラ!!」

 

「私に対して余計な対抗心を燃やす貴女は目障りなのよ!今すぐ殺してあげるわ!!」

 

「アハッ!随分と余裕がない態度だヨネ?何をそんなに恐れているワケ?」

 

「余裕がないですって!?私をバカにしたところで動揺を狙うことなど出来ないわ!」

 

「そんなつもりで言ったわけじゃないけど、これはこれで利用出来るんですケド!」

 

銃の先端を用いて斬撃を仕掛ける中、ジンガステップで斬撃を避けるアリナが仕掛けてくる。

 

顔面を狙う銃床打ちに対して身を低めながらタックルを狙い、ほむらを押し出す。

 

後退った彼女に目掛けて空を切る後ろ回し蹴りを放つ勢いを利用しながら跳躍。

 

「ごふっ!!」

 

側方宙返りのように足を一回転させながら放つ浴びせ蹴りが後頭部を蹴り込む。

 

倒れ込んだ彼女に目掛けて蹴りを狙うが転がって避けたようだ。

 

「自由は代償が伴うわ!これだけの惨事を引き起こしたなら殺されても文句は言えないわよ!」

 

「だからいい子でいろってワケ?自分のフリーダムはいいくせにアリナのフリーダムはダメ?」

 

「そ、それは……」

 

「ムカつく理屈なんですケド…その腐ったダブルスタンダードブレインを潰してあげるカラ!」

 

銃を構え直して発砲する瞬間に上半身を落として片手を地につけたまま逆立ち蹴りを放つ。

 

右側頭部に決まって怯んだ相手に目掛けて両腕のバネを利用した跳躍飛びを仕掛ける。

 

ほむらの胴体を両足で挟み込む形で押し倒したままテイクダウンを取り、顔面パンチを狙う。

 

首を振って拳を避けた瞬間にアリナの後ろ髪を掴み、横に倒しこむ形でマウントを返す。

 

「チッ!!」

 

押し倒したアリナに目掛けて盾から取り出したナイフを突き立てようとするが両手で止める。

 

互いが組打ち勝負を行うため上空のフェニックスも援護を行うことが出来ないようだ。

 

しかしアリナの背後にいるフルフルは違う。

 

「アァァァァーーーーッッ!!?」

 

雷魔法のジオンガが直撃したほむらが感電する中、腹を蹴り込む形でマウントから脱出する。

 

「この程度じゃないヨネ…アナタのパワーは?円環ガッデスとバトルした傷が癒えてない?」

 

立ち上がる両名が息を切らせる中、ほむらがアリナに語り掛けてくる。

 

「貴女も個人の尊厳を貫きたい女のようね…?だからこそ自由を貫き通したいんでしょ?」

 

「アリナはルシファーシジルを掲げるサマナー。社会や他人の支配から解脱する思想を掲げる」

 

「私の左手にも同じシジルが刻まれていた…お互いに自由を掲げるなら…行く道を行くだけね」

 

不敵な笑みを浮かべるほむらに対してアリナもまた不敵に笑う。

 

お互いに自由を求める者同士、全体秩序に隷属させられる弊害を知っている者達なのだ。

 

「フールガールが求めた道徳思想は奴隷の証…気が付けば全体に隷属させられ群衆生物になる」

 

「まどかも同じよ…道徳主義に陥ったからこそ全体に隷属させられ…全体の犠牲になった…」

 

「そんな人生ハッピーなワケ?せっかく生まれてきたのに他人のために使い潰されて終わり?」

 

「献身と搾取は俯瞰で見れば同じね…社会を尊く思えば思う程…他人から尊厳を破壊される…」

 

「他人の正しさの奴隷になってハートが壊死するぐらいなら…周りから憎まれた方がいいヨネ」

 

「フッ…その点については同感よ。他人のために生きても応えない…だから私は独りで戦った」

 

「社会のはみ出し者、不良と変わらない扱いをされたってね……()()()()()()()()()()()()()

 

「そうね…その通りよ。たとえアウトサイダー扱いされても…悪魔になった道を後悔しないわ」

 

「偽りの自分を演じて好かれるよりも、ありのままの自分でいて憎まれる方がマシだカラ」

 

「お互いに()()()()()として生きましょう。周りがどう言おうと……私達は私達よ」

 

秩序に逆らうならず者として微笑み合う2人の姿こそ、唯一神に逆らったルシファーの在り方。

 

天使として神に隷属させられたままでは皆の尊厳が破壊されてしまうと気が付いた天使なのだ。

 

個人として我慢する、我儘を言わない、自己抑制、自己犠牲、法や国や全体を優先する。

 

自己抑制や自己犠牲ばかりを美化し、国や全体に奉仕する道徳主義に支配されてしまう。

 

それは国家主義、全体主義へと導く危険な洗脳状態であり秩序(LAW)に盲従した思考なのだ。

 

その末路こそ独裁国家やブラック企業に隷属させられた者の姿であり、幸福を剥奪された光景。

 

ならばこそ、時には自由を掲げて周りから憎まれるアウトローになろうと己を貫く必要がある。

 

そう信じる悪魔ほむらとアリナは傲慢の道を行き、自由の代償を支払う覚悟を示すのだ。

 

「ヨスガを求めるのも自由…ムスビを求めるのも自由…正解なんて…自分達で作ればいい!!」

 

銃を投げ捨てたほむらの金色の目が怪しく光り、周囲に変化が生まれていく。

 

「ワッ、ザ、ヘル!!?」

 

彼女達の周囲に張り巡らされたのはムスビのコトワリ神の力であるオーロラカーテンだった。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――

 

虹と同じく美しい色合いのカーテンを生み出す存在こそ、ムスビを掲げるほむらの新たな力。

 

虹よりは色数が少ないオーロラであっても美しく輝き、その色は暁美ほむらの望みの色となる。

 

フェミニズムは()()()()()()()()()を掲げる政治思想であり、彼女が望む同性愛を守る色だ。

 

「さぁ、決着をつけましょう。どんな攻撃でもしてくればいい…()()()()()()()()()()()()わ」

 

『夜のオーロラ』を解放した悪魔ほむらの背後には巨大な邪神ノアの幻影が浮かんでいく。

 

コトワリ神の力を前にしたアリナの顔が青くなり、後退りながらもフルフルに大声を上げる。

 

「何だか分からないけどヤバイ感じだヨネ!アナタもパワーを貸して欲しいんですケド!!」

 

「この力はまさか……ワシの予想通りならば……不味いことになるぞ!!」

 

攻撃キューブを生み出してマギア魔法を放つアリナに続くようにしてフルフルも雷魔法を放つ。

 

だが悪魔ほむらの体を守るようにしてオーロラが盾となり、物理魔法も雷魔法も反射するのだ。

 

<<アァァァァーーーーッッ!!!>>

 

自分のマギア魔法と雷魔法の直撃を受けたアリナ達がズタボロになりながら弾かれていく。

 

激怒したフェニックスが豪熱ビームを放とうが反射され、直撃を浴びるが吸収して防ぐ。

 

「ナンダ、アレ!?イッタイナニヲアビセタラ、コウゲキガトオルンダ!!?」

 

アリナとフルフルを遠ざけたほむらが魔法盾を掲げて時間停止を行使。

 

静止した時の中で侵食する黒き翼を展開して飛び、燃え上がるフェニックスに攻撃を仕掛ける。

 

「ゲゲェーーーッッ!!?」

 

突然出現したのは三発の2000ポンド爆弾であり、Mark84爆弾が目の前で起爆する。

 

フェニックスの体から炎が剝がされる程の爆発攻撃を浴びたことで巨体が吹き飛ばされるのだ。

 

湾岸戦争ではハンマーと呼ばれる程の威力があった爆弾の爆発は周囲までも破壊してしまう。

 

ビルに埋まる形で叩きつけられていたアリナも爆発の直撃を浴びるのだが仲魔が庇ってくれる。

 

「フルフル!!?」

 

アリナを庇う形で覆いかぶさった山羊悪魔は背中から焼き尽くされる末路となるだろう。

 

ビルも倒壊していき、アリナと焼かれたフルフルは瓦礫と共に落下する。

 

爆心地で佇む建物は全て破壊され、ハンマーと呼ばれる爆弾の威力を物語ることになるのだ。

 

「まだ魔力を感じるわね…いいわ、それでこそよ。自由の戦士として最後まで足掻きなさい」

 

遠くに離れて爆発から逃れていた悪魔ほむらが歩きながら現場に向かう。

 

魔力が残っていても深手を負っている事が分かるため、弱った魔力にトドメを刺しに行くのだ。

 

「うっ……うぅ……」

 

軍帽も外れた頭から流血が流れ落ちるアリナであるが、瓦礫の隙間でどうにか生きている。

 

ビルが倒壊する程の瓦礫の質量に圧し潰されていないのはフルフルのお陰なのかと目を開ける。

 

「えっ……?」

 

アリナを助けるために瓦礫の中で佇んでいた存在とは山羊悪魔ではなく、意外な存在であった。

 




拙作の中ではダントツの登場率なモブキャラですよね…なぎたんのオネェサマ店長。
日本のサブカルが描くオカマキャラが素敵じゃないわけない。
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