人修羅×まどマギ まどマギにメガテン足して世界再構築   作:チャーシュー麺愉悦部

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295話 矛盾を超えた者

フランスの哲学者ジャン=ポール・サルトルが残した言葉の中にはこんなものがある。

 

――チェ・ゲバラは20世紀で最も完璧な人間だ。

 

20世紀の革命の歴史におけるイコンとしても扱われたゲバラの格言にはこんな言葉がある。

 

――人間には誰でもその人なりの欠点がある。

 

――私の欠点は誰の目にもわかりやすく、()()()()()()()()()()()

 

ゲバラは英雄として扱われた反面、彼が行ってきたゲリラ破壊活動を非難する人々もいる。

 

犠牲無くして革命など行えないからこそ、平和を望みながら平和を破壊する者となったのだ。

 

その矛盾は東京の守護者として生きる人修羅もまた背負っている。

 

今の彼が戦う理由こそ風見野市に流れ着いた頃の原点の感情であり、将門公との約束でもある。

 

恩人達と交わした約束を貫こうとする彼もまたゲバラと同じ矛盾を抱えており、それに苦しむ。

 

悪魔の力を自分達が守りたかった大切な人々のために使って欲しい。

 

その力を使えば使うほど誰も守れず、多くの命を取り零すしかない現実に怒り狂っていた。

 

<<グワァァァァァーーーーッッ!!!>>

 

皇居の右側にある中央区の八重洲地下街では激戦が繰り広げられていく。

 

東京の地下街で毒ガスを撒き続けたマッドガッサー隊を相手に人修羅が果敢に攻め込む。

 

人間ならば即死する毒ガス空間でも彼には今までの戦場を支えてきたマガタマの力がある。

 

飲み込んだマガタマは『ジェド』であり、毒ガスを無効化しながら戦い続けていくのだ。

 

「ハァ!ハァ!ハァ!!」

 

光剣で溶断されたマッドガッサー達の体が砕け散り、MAGの光となって消えていく。

 

彼らの返り血を浴び続けた人修羅の体は返り血塗れであり、虐殺者時代の姿に返り咲いている。

 

「一体どれだけの人間が死んだんだ…?どれだけの人間を…俺は守れなかった…?」

 

呆然とした表情を浮かべながら周囲に視線を向ければおびただしい数の骸が転がっている。

 

その光景を見るたびに今まで守れなかった人々の骸の光景と重なっていく。

 

「じっとしているわけにはいかない……今は戦い続けなければ!!」

 

東京の地下街を駆け抜けながらマッドガッサー隊を全滅させる人修羅を支えるのが仲魔の姿。

 

彼の移動手段として活躍するのがケルベロスであり、地下街から出てきた彼を背に乗せる。

 

「次は各省庁の解放だ!!この近くには国土交通省と国会がある!!飛ばせ!!」

 

「了解ダ!!」

 

避難民が逃げ惑う地上から移動せず、ケルベロスはビルの壁に飛び掛かり爪を突き立てる。

 

両足で胴体を挟んで固定した彼を乗せた獣悪魔が屋上に飛び出し、次に向かうのは永田町方面。

 

しかし彼らの姿を見つけたのは飛行タイプの悪魔達であり、次々と魔法攻撃を仕掛けてくる。

 

「人修羅ハ先ニムカエ!!我ハヤツラヲ駆逐シテカラ合流スル!!」

 

「分かった!!」

 

ケルベロスから飛び降りた人修羅を見送ることもなく反転した獣悪魔が空の敵を迎え撃つ。

 

高層ビルの屋上を駆けながら一気に跳躍した人修羅がきりもみダイブしながら落下する。

 

体勢を整えた彼がアイアンクローを用いて壁に張り付き、壁を削りながら減速をかけていく。

 

壁を蹴り込んだ人修羅が大空に飛び出し、次々とビルの屋上に着地しては跳躍移動を繰り返す。

 

忍者の如くビルを蹴りながら跳躍移動した彼が国会通りを超えていき、国土交通省に辿り着く。

 

将門の刀を生み出し、ビルの壁に突き立て、体を一回転させながら大きく上に飛び上がる。

 

突き刺さった刀の上に着地した人修羅が地上で警戒を続ける造魔部隊を視認するのだ。

 

「あいつらが革命部隊か……タルトやリズと同じタイプだな。造魔が相手ならやり易い!!」

 

跳躍と同時に刀を引き抜き、舞いながら地上に落ちる刀の柄を掴んだ彼が奇襲攻撃を放つ。

 

「ぐはっ!!?」

 

周囲を索敵していた造魔兵を頭から串刺しにした人修羅が両足で敵の頭部を挟み込む。

 

バク宙する勢いで造魔兵を投げ飛ばしながら刀を引き抜き、着地した彼が刀を後ろに放つ。

 

「がはっ!!?」

 

後方に目掛けて放った突きが造魔兵を串刺しにし、引き抜きながら回転して袈裟斬りを放つ。

 

敵の胴体が真っ二つになるのだが後ろからはマチェーテを引き抜いた造魔兵が仕掛けてくる。

 

「くたばれぇぇぇーーーーッッ!!」

 

袈裟斬りを仕掛けてくる相手の一撃を受け流しながら刃を返す。

 

逆袈裟斬りを放った相手の上半身が切り裂かれ、怯んだ相手に二連続蹴りを放つ。

 

後ろ回し蹴りから続くハイキックが決まった相手がぐらつく中、蹴り足をひっかけて倒しこむ。

 

「アガァァァァァーーッッ!!」

 

倒しこんだ相手にトドメの突きを放って絶命させ、倒れた造魔兵達が砕けてMAGの光と化す。

 

「敵襲だァァァーーーーッッ!!!」

 

迫りくる増援部隊が突撃銃を構えながら一斉射撃を繰り返す。

 

迎え撃つ人修羅は刀の柄を指で高速回転させながら刃の盾とし、次々と銃弾を弾いていく。

 

フルオート射撃をして弾切れを起こした造魔兵に向けて人修羅が斬り込む。

 

「俺が守ってきた東京で好き放題暴れやがって!!全員皆殺しにしてやるーーッッ!!」

 

サイホルスターから拳銃を抜いて射撃してくる相手に目掛けて走りながら銃弾を弾く。

 

一気に跳躍した人修羅が体勢を横倒しに回転させながら前方造魔兵の頭部を蹴り込む。

 

着地した彼の刀は逆手に持たれており、一回転する払い斬りを用いて周囲を刻み込む。

 

<<グワァァァァァーーーーッッ!!>>

 

胴体がバラバラになった敵兵士に気を取られる後ろの造魔兵に飛び後ろ回し蹴りを放つ。

 

蹴り倒して着地した人修羅が一気に動き、建物の壁を蹴り込みながら一回転して着地する。

 

マチェーテで斬り付けようとした相手の背中に回り込んだ人修羅が払い斬りを用いて足を斬る。

 

両断されて倒れ込んだ相手の頭部を踵蹴りで潰し、周囲の敵を一掃するのだ。

 

「はっ!?」

 

飛来してくる風切り音が聞こえた人修羅が背後に振り向きながら刀を斬り上げていく。

 

迫ってきたのはミサイルであり、連続して放つ斬り上げで真っ二つにするが次々と迫ってくる。

 

右薙ぎを放ちミサイルを切り捨てる勢いのまま跳躍した彼がきりもみしながら攻撃を避ける。

 

着地した彼の背後ではミサイルが直撃したことで国交省ビルの壁が大きく砕けるのだ。

 

<<フハハハハ!!人型悪魔を見つけるとはな!丁度いい、貴様から実戦データを貰う!!>>

 

国交省ビルに近寄ってくる巨人を見上げる人修羅の目が見開きながらこう呟く。

 

「オイオイオイ…SF作品から出てきたのか?いや、もう21世紀だし…こんなのも生まれるか」

 

屹立する巨人の全身は複合装甲で構築された機械兵器であり、頭の部分には人の頭部が見える。

 

<ムゥ!?貴様…生体エナジー協会に現れた悪魔ではないのか!?モニタールームで見たぞ!>

 

「だとしたら貴様はあの協会で働いてた連中の生き残りか?それなら生かしておけないな」

 

ロボットの頭部に見える人の部位は頭だけであり、頭から下はロボットと繋がっている。

 

機械音声で喋るしかない者の姿は覚えがないが、協会内部で暴れた杏子達なら知る者だ。

 

巨大ロボの正体とは生体エナジー協会で杏子達からボコられたマッドサイエンティストだった。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――

 

<私は魔法少女共を倒すために生まれ変わった者だ!科学こそが魔法を超えるのを証明する!>

 

「お前は生体エナジー協会で魔法少女を実験材料にした奴だろ?報復されるのはお前の方だ」

 

<やかましい!私の優越感を奪いに現れた魔法少女共もいたのだ!奴らを倒す必要がある!>

 

「杏子からボコられた末にそんな姿になったか?哀れなもんだ。そしてお前の望みは絶たれる」

 

霞の構えを行いながら刀を構える人修羅に対して巨大ロボットが迎え撃つ。

 

<この()()()()()()様に勝てるものか!!魔法が科学に勝てるという科学的根拠は無い!!>

 

「ボルテクス界でも似たような台詞を聞いたことがあるが…俺が魔法の力を証明してやる!!」

 

弱点の頭部を覆うようにしてフェイスガードがスライドしたことでロボットが雄叫びを上げる。

 

15メートルもある全高の巨大ロボが通電式の人工筋肉を稼働させながら武器を構える。

 

<プラズマパワーがみなぎってきたぁぁぁぁぁーーーッッ!!>

 

右腕の代わりとして備わるのはGAU8アヴェンジャー機関砲を流用したもの。

 

足の踵部分に備わるアンカーを下ろして地面に固定したことで反動を抑え込みながら放つ。

 

「チッ!!」

 

一気に加速しながら銃撃を避けるが直撃するしかない国交省ビルは大きく削り取られる。

 

上半身を回転させながら人修羅を追うように薙ぎ払うオオツキが背中の兵器も行使するのだ。

 

背部の六連装対戦車ミサイルが撒かれる中、高速で跳躍した人修羅が空中戦を仕掛けていく。

 

ミサイルの上に次々と飛び移りながら斬撃を仕掛けるが、オオツキは足のアンカーを上げる。

 

射撃を止めたロボット兵器の足裏に備わったキャタピラが動き出し、後方に下がっていく。

 

「野郎!!ロボットアニメみたいな動きをしやがって!!」

 

仕掛けた斬撃をキャタピラ移動で避けたオオツキが左腕を持ち上げながら武器を放つ。

 

巨大マニピュレーターの左手から放つのは指向性エネルギー兵器であり、スパークの光を放つ。

 

<私のプラズマパワーを見せてやる!!>

 

放たれた電撃が迫りくるが、刀を左手に持ち替えた人修羅が右手にマガタマを生み出す。

 

飲み込むのは雷を無効化するナルカミであり、オオツキのプラズマパワーが無効化されていく。

 

<馬鹿なぁ!?科学の力が魔法に負けるはずがない!!貴様…なんのトリックを使った!?>

 

「これはトリックでも何でもない!!魔法の力を象徴する悪魔の力だぁ!!」

 

乗り捨てられた地上の車を潰しながら逃げるロボットに対して人修羅は壁蹴りを駆使して迫る。

 

ビルとビルの間を三角飛びしながら破邪の光弾を放ち、巨体を支える足関節を狙うのだ。

 

<ヌォォォォーーーーッッ!!?>

 

装甲ごと膝を撃ち抜かれた巨大ロボが片膝をつき、大きく跳躍した人修羅が唐竹割りを狙う。

 

<させるかぁぁぁぁーーーーッッ!!>

 

背中のミサイルポッドからミサイルが発射される。

 

真上に向けて飛んできたミサイルに対して人修羅の体勢がきりもみ回転していく。

 

きりもみダイブするような体勢でミサイルを避け、続く二発目のミサイルを両腕で掴む。

 

「ウォォォォーーーーッッ!!」

 

強引にミサイルの飛翔を捻じ曲げた彼がミサイルごと背中に飛びつく。

 

<グワァァァァァーーーーッッ!!?>

 

持ち運ばれたミサイルがミサイルポッドに直撃したことで体中の電子機器が破壊されていく。

 

煙を吹き出しながら沈黙したロボットの上を歩く人修羅がフェイスガードをノックしてくる。

 

試験管に浮かぶオオツキの頭部が恐怖に引きつり、絶対に開けないと叫んでくるのだ。

 

「いいぜ、引き籠ったままでいたいなら……そのまま破壊してやるさ」

 

将門の刀を収納するように消した人修羅が両手をポキポキ鳴らした後、一気に暴れまくる。

 

<や、やめてくれぇぇぇぇーーーーッッ!!!>

 

高速で放たれる両拳の一撃一撃がロボット頭部をボコっていき、殴る速度がどんどん加速する。

 

弱点部位を覆うために一番固くした装甲がベコベコになっていき、オオツキが助けを乞う。

 

「お前に助けを求めた少女達をお前は助けたか?織莉子や那由他の苦しみを万倍にして返す!」

 

振り上げた拳がアッパーカットを放ち、首の部位が破壊されて千切れそうになる。

 

内部の試験管も砕けてしまい、生命維持が出来なくなったオオツキも直に死ぬだろう。

 

「くだらない奴を相手に時間をとられたが……織莉子と那由他の借りを返すことは出来たか」

 

プラズマパワードロボから飛び降りた人修羅が走っていくのだが、巨体の影が彼を覆う。

 

後ろに振り向けば千切れかけた頭部をぶら下げたままのオオツキが右腕を振りかぶっている。

 

<怨み重なる魔法使い共めぇ!!私のプラズマパワーは……魔法になど絶対に負けん!!>

 

巨大な砲身をもつガトリング砲を叩きつける形で人修羅に放つ。

 

咄嗟に両腕を持ち上げた彼がガトリング砲の砲身を受け止めるが激しく大地が砕け散る。

 

「死にぞこないめ!!貴様の劣等コンプレックスごと……俺がたたっ斬ってやる!!」

 

最後の力を振り絞って放った鈍器の銃身が揺れ動き、巨体が持ち上がっていく。

 

<ば……ばかなぁぁぁぁぁぁーーーーッッ!!?>

 

ロボットの巨体がガトリング砲ごと持ち上がっていき、豪快に投げられる。

 

巨体が宙を舞いながら飛ぶ中、左手に将門の刀を生み出しながら人修羅が掛けていく。

 

一気に跳躍した彼が空中を飛ぶロボットの足に飛び移り、抜刀した彼が次々と斬撃を放つ。

 

「ウォォォォーーーーッッ!!!」

 

放たれる連続斬りが次々とロボットの体をバラバラにしながら駆け抜け、頭部に迫りくる。

 

胸元辺りで跳躍した人修羅が刀を両手持ちで構えながら一気に唐竹割りを放つ時がくる。

 

雷魔法のショックウェーブを刀身に纏わせた『雷電真剣』の一撃が叩きつけられるのだ。

 

<科学が……魔法に負ける……化学的根拠は……なっ……>

 

頭部を真っ二つにされたオオツキは試験管ごと両断されており、ついに爆発四散してしまう。

 

「貴様の好きなプラズマパワーで死ねたんだ…極悪人にしては満足のいく死に方だったろ?」

 

ロボットの油に塗れた刀を血払いした人修羅が刀身を一回転させながら背中に回しこむ。

 

左手に持った鞘に仕舞うような形で回転納刀し終えた彼が造魔部隊を相手に戦いに向かう。

 

「力を渇望しようとな…満足など得られない。どれだけ力を求めても…俺は誰も守れなかった」

 

誰かを守ろうとすればする程に誰かを殺していく矛盾に塗れた戦いの世界を尚紀は生きている。

 

彼が背負う矛盾こそゲバラが背負った矛盾であり、世界の国々の司法も抱えている矛盾なのだ。

 

それでも人々は善人に与える殺戮はダメと言いながら悪人に与える殺戮は良いというだろう。

 

その光景こそ卑劣なダブルスタンダードであり、それに支配される彼もまた苦しむのであった。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――

 

飛行タイプの悪魔達を撃退したケルベロスと合流した人修羅は国交省ビルの内部に入り込む。

 

激戦を潜り抜けたことで国交省を占拠していた革命部隊を殲滅することが出来たようだ。

 

次に向かう先とは隣にある国会であり、ケルベロスに跨る人修羅がこう呟く。

 

「…再び国会に訪れるなら政治家として訪れたかった。また俺は国会を戦場にするのか…」

 

「シジマ勢力トタタカッタ時ダッタナ…人修羅ニトッテハ縁深キ場所ダロウ」

 

かつてのボルテクス界の国会議事堂でシジマ勢力と戦った記憶が蘇っていく。

 

しかし今は昔の記憶に浸っている暇もなく、国会議事堂を占拠する革命部隊の殲滅が先だ。

 

現実に戻った彼に対してケルベロスがこう告げてくる。

 

「ドウヤラ出迎エテクレルヨウダ」

 

跳躍しながら見えてくる国会の屋上には占拠している革命部隊の造魔兵が展開している。

 

「隣で派手に暴れていたんだ…連絡ぐらいは届いていたんだろう」

 

「セッカクノ歓迎ダ、派手ニアバレテヤロウデハナイカ!」

 

「言われるまでもない、突っ込め!!」

 

衆議院分館から衆議院の屋上に目掛けて飛び込む悪魔達に対して造魔兵が銃撃を仕掛けていく。

 

大きく跳躍した時、上空を飛ぶ人修羅は国会議事堂の全景を見る事になるだろう。

 

「なんだ……?国会の建物が何かの動物に見える……?」

 

衆議院と参議院、そして中央塔で構成された()()()()()()()()()()()()()()()()()姿()()()()()

 

その光景はまるで梟であり、()()()()()()()()()()ような光景に見えるのだ。

 

何故梟の形を国のシンボルである国会のデザインに取り入れなければならなかったのだろうか?

 

「日本の国会は梟を象徴する建物だったのか…?梟はイルミナティが掲げるシンボルだ…」

 

「…ソレニ、エジプトノ()()()()()()()()()()()()()()()()()ダ。今日ヲ表スコトトナルナ」

 

「オーダー18という数字の意味は…イルミナティが掲げる知恵の梟だったってわけかよ…?」

 

「ソシテ知恵ヲ司ル獣ノ数字デモアル。興味深イ話題ダガ、今ハ目ノ前ノ敵ヲ屠ロウゾ!!」

 

日本は建国当時から知恵の梟の数字を象徴する666の獣を崇拝するカルト結社の植民地。

 

そんな疑問が浮かんでしまう人修羅であるが猛火を潜り抜けたことで思考が戦場と同化する。

 

着地したケルベロスから飛び降りた彼が造魔兵を相手に苛烈な戦いを仕掛けていくのだ。

 

そんな彼らを上空から見下ろす者こそイルミナティ司令塔一族の娘として生きてきた悪魔人間。

 

上空で佇む神馬の上で地上を見下ろすのはルイーザであり、彼らの疑問に答えてくれる。

 

「今頃気が付いたか?世界の国々の政府と我々ユダヤ財閥はな……時代劇の如く癒着するのだ」

 

彼女が時代劇に例えた状況とは()()()()()()()()()()である。

 

政治を司る悪代官と癒着して陰謀を企む越後屋を仕置きに現れる英雄作品は多くあるだろう。

 

しかし現実ではユダヤ越後屋財閥が上であり、ディープステート悪代官はひれ伏す関係だった。

 

「日本は我々ロスチャイルド一族が築いたもの。そして長州ファイブは我々が飼っていた犬だ」

 

近代国家として産声を上げた明治の日本の頃から既に欧米ユダヤ帝国に支配されている。

 

ならば大正から訪れた葛葉ライドウの時代もまたロスチャイルドに支配された時代であった。

 

「過去の時代から続くユダヤ財閥支配への抵抗が何処まで続くのか…見せてみるがいい」

 

過去から続く負の遺産ともいうべき欧州支配の象徴である国会の上で人修羅は戦い抜く。

 

違う世界とはいえ日本という国で産まれた者として国の過去と戦うことは必然なのだ。

 

「死ねぇ!!」

 

突撃銃を構えて至近距離から狙うが、弾道を読んだ人修羅が刀の刃を盾にして弾く。

 

続けて撃たれたライフル弾が刃の腹に当たり跳弾した弾を体に浴び、怯んだ隙を見逃さない。

 

「ゴフッ!!?」

 

造魔兵に目掛けて右薙ぎを放ち、何が起こったのかも分からない兵士の口から吐血が溢れる。

 

胴が切断された相手に目掛けて蹴り込んだ勢いで上半身が千切れ飛び、後続の兵士に当たる。

 

「どんどんかかってこいやぁ!!」

 

吠える人修羅に対して威力が高いライフル弾の跳弾を恐れた造魔兵達が拳銃を抜く。

 

構えて撃つよりも早く彼が踏み込み、刀を収納して消した彼が徒手空拳を用いて銃撃を捌く。

 

「何だコイツの動きは!?早過ぎる!?」

 

構えて射撃しようとする相手の手を両手で掴んで捻じ込み、引き金を引かせて自分を撃たせる。

 

怯んだ相手の腕を掴んだまま引き倒し、後ろの射撃を避けながら掴んだ相手の腕を向ける。

 

「ガハッ!!」

 

掴んだ腕が射撃を続けるため銃撃を浴びて怯む相手の銃を奪い、倒れそうな相手の銃も奪う。

 

クロスする形で構えた人修羅が銃撃を同時に放ち、倒れそうな両名の頭部を撃ち抜くのだ。

 

「くたばれぇ!!」

 

後頭部に狙いをつける相手が引き金を引くよりも早く体勢を一回転させながら振り向く。

 

射撃した相手の腕を右脇で挟み取り、左肘で顔面を殴りつけ、下がった頭部を銃床で殴る。

 

倒れ込んだ相手の後頭部に銃撃を放って射殺した後、両手の拳銃を投げ捨てて刀を生み出す。

 

「…俺に銃は馴染まないな。こいつでいかせてもらう」

 

拳銃を構えた相手の右手を納刀した鞘で弾き、勢いのまま後ろに振り向き抜刀する。

 

背後で銃を構えていた相手の腕が切り落とされ、続けて前の敵を袈裟斬りで斬り倒す。

 

鞘を消した人修羅が刀を下げて構える中、拳銃では心許ないと判断した者達が突撃銃を構える。

 

「そういやダンテから聞かされたな…あいつの兄貴も銃が馴染まない男だったって」

 

不敵な笑みを浮かべながら全身から魔力を噴き上がらせる人修羅の背後に幻影が現れる。

 

その姿は魔人化したダンテの兄の幻影であり、悪魔となったその口元にも不敵な笑みが浮かぶ。

 

「怯むな!!撃ち殺せ!!」

 

跳弾を恐れぬフルオート射撃が放たれるが刀を指で回転させながら刃の盾を用いて弾き続ける。

 

弾切れを起こすまで耐えた人修羅が動き、リロードが間に合わない造魔兵が拳銃を抜く。

 

ワンインチ距離で戦う人修羅は刃を左手で掴み、刀の柄を用いて殴打を狙う。

 

構えた銃を弾き、後ろの敵が拳銃を放つ一撃を刃の腹で弾き、刀の柄を相手の両腕に差し込む。

 

両手で構えた拳銃の間に刀の柄を差し込まれた相手が引き倒され、抜いた柄で顔面を打つ。

 

そのまま払い斬りを用いて相手の首を跳ね落とし、後ろの敵の銃撃を弾きながら斬撃を放つ。

 

「……屋上で歓迎してくれた連中はこれで終わりだ」

 

斬られた胴体が滑り落ちて倒れ込む造魔兵達の横で血払いを行えば周囲にMAGの光が溢れ出す。

 

砕けた敵兵士の光に照らされる男が回転納刀を行い、魔力が消えると同時に幻も消えたようだ。

 

「コチラモカタズイタゾ」

 

横を向けば参議院の屋上で戦っていたケルベロスがやってくる。

 

白い体は返り血塗れであり、激戦を潜り抜けてきた悪魔の貫禄が滲み出た姿といえよう。

 

「後は下の連中を片付けるだけだ、行くぞ」

 

中庭に飛び降りて衆議院に乗り込もうとした時、プロペラの激しい音と強風が吹き荒れる。

 

上を見上げれば攻撃ヘリが集まってきているが、魔力を解放したルイーザに視線が向く。

 

「……ようやく現れたか」

 

攻撃ヘリを従えたルイーザが不気味な笑みを浮かべながら人修羅達を見下ろすのであった。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――

 

貴族衣装を纏うルイーザが被る三角帽子の羽が夜風で揺れる中、彼女が語り掛けてくる。

 

「如何ですか?我々が提供するオーダー18は?悪魔のパーティに相応しい光景でしょう?」

 

主人に噛み付く狂犬のような表情で挑発してくる彼女に対して人修羅の眉間にシワが寄り切る。

 

「貴様の目的は俺のはずだ!!東京の人々は関係なかった!!なのに破壊をもたらすのか!?」

 

「確かに私の目的は陛下との決着を求めることですが…それでも私はロスチャイルドの者です」

 

「ルシファーに飼われた梟め…これも人口削減の光景か!!貴様らにとって異民族は何だ!!」

 

「勿論家畜ですとも。我々ユダヤ人(ゴイ)こそが世界のマスター人種…ゴイム共の命は我々のもの」

 

「地球牧場の牧師を気取りやがって…許せねぇ!!貴様らこそ心が怪物になった魔物共だ!!」

 

「ハッハッ!確かに私は心無きネフィリム…悪魔ですとも。ですがそれは貴方様も同じでは?」

 

「何だと……?」

 

「目的のためなら殺戮を尽くせるのは貴方様も同じです。何人の魔法少女を虐殺したのです?」

 

「そ……それは……」

 

「社会を守るためと虐殺を正当化したのでしょう?貴方様が正当化するなら我々も正当化する」

 

アジェンダ計画とは地球の持続可能性を守るためであり、人口削減とは地球を守る行為。

 

世界を席巻する温暖化や寒冷化などの異常気象を引き起こす原因こそがCO2の排出量である。

 

これを排出する生命の数を抜本的に間引く事は地球を守ることに直接有効だと正当化してくる。

 

「私達も殺戮を正当化出来るし、貴方様も殺戮を正当化してきた。我々と貴方様は何が違う?」

 

「うっ……うぅ……」

 

「全体のためなら命を踏み潰せるのはお互い様です。なのに我々はダメで貴方様は構わない?」

 

貴方の理屈は卑劣を極めたダブルスタンダードなのだと突きつけられた人修羅は言い返せない。

 

彼女が言う通り、誰かを守ろうとすれば誰かを殺してしまう呪われた道を人修羅は生きた者。

 

それはジャンヌ・ダルクのような英雄魔法少女達も同じであり、殺戮を正当化した者達なのだ。

 

「ヒーローだろうがヴィランだろうが、やっていることは変わらない。()()()()()()()です」

 

「俺は…ミイラに成り果てた者なのか…?東京の人々を守ろうとしてきただけなのに…?」

 

「守るものを抱えるのはどちらも同じ。これは戦争の両陣営も同じであり、政治的争いも同じ」

 

「自分は良くて…お前はダメ。こんな矛盾を極めた世界でしか…俺達は生きられないのか…?」

 

「それを意識する者は少ない。殆どの者が正義に盲従しながら自分の破壊行為を楽しむのです」

 

世の中の正しさなど()()()()()()()()()()()()()()()のだと彼女は突きつけてくる。

 

正義や正しさの中身は100%ご都合主義でしかなく、それに踊らされた者達が暴走していく。

 

政治という思想を玩具にして正義棒を振り回し、片方を悪と決めつけて殴る行為を楽しむのだ。

 

「地獄への道は善意で舗装されている。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()よ」

 

「弱肉強食のヨスガに秩序と平和を司る天使が組した理由が分かった…奴らもまた…悪魔か…」

 

博愛を司る天使もまた悪魔に過ぎず、彼らの殺戮行為を目の前で見た人修羅だからこそ分かる。

 

天使もまた自分達の正しさこそが正義であり、正義を守るために虐殺を正当化した悪魔だった。

 

「ハハ……俺達悪魔も…天使でさえも…本質は何も変わらないか。ただの……虐殺者だった」

 

「偏見に支配された者こそが善神勝利一元論に狂うものです。自分の悪に気が付かないままね」

 

俯いたままの人修羅であったが、狂ったような笑い声が響いてくる。

 

「クックックックッ……フハハハハハ……ハーーハッハッハッハッハァーーッッ!!!」

 

不気味な高笑いが響く光景を見守るルイーザに対して将門の刀の先端を向けてくる。

 

「迷いは解けた…秩序を守ろうとした俺は悪魔に過ぎない。()使()()()()()()()()()()()()のさ」

 

「陛下に対して禅問答を仕掛ける無礼を働いた甲斐もあった。これで本気の貴方様と戦える」

 

「礼を言うぜ…ルイーザ。俺は自分の欠点と向かい合えた…だからこそ矛盾さえ受け入れよう」

 

「その御言葉が聞きたかった!私が超えたいのは本物の悪魔となった混沌王陛下なのです!!」

 

「礼を尽くす戦いをくれてやろう。今から俺は人間の守護者だと名乗るのを止める……」

 

――今から俺は……()()()()()()()ぁ!!!

 

「それでこそ悪魔だ!!私が超えたかった目標なのだ!!今こそ私は……貴殿を超えよう!!」

 

腰の鞘から魔剣レーヴァテインを抜いたルイーザが手綱を打ち、地上に目掛けて迫りくる。

 

業火の魔剣を携えた者を迎え撃つ人修羅はマガタマのシラヌイを飲み込んだ後、仲魔に叫ぶ。

 

「行くぞ、ケルベロス!!アマラの底まで堕ちた俺でもついてきた忠義を見せてみろぉ!!」

 

「言ワレルマデモナイ!!我ハ人修羅トシテイキル汝ノ覚悟ヲ見極メル者ナノダァ!!」

 

ケルベロスに飛び乗った人修羅もまた手綱を打つようにして獣悪魔の腹を蹴り込む。

 

合図を受け取った獣が全力疾走しながら屋上から飛び出し、迫りくるルイーザに飛び掛かる。

 

<<ウォォォーーーーッッ!!!!>>

 

すり抜ける者達が斬撃を放ち、空中でぶつかり合う剣の魔力が解放されて周囲を焼き尽くす。

 

不敵な笑みを浮かべるルイーザの魔剣の柄頭には梟の紋章が刻まれており、啓蒙の梟を掲げる。

 

啓蒙を崇めるイルミナティ一族の者だからこそ、梟の主人となるサタンを導く者となるだろう。

 

18は梟を示すヒエログリフであり、大魔王がオーダーする666の赤き獣のための儀式数字。

 

ヒエログリフの18はアルファベットのMとなり、フリーメイソンを表すMとなるのだ。

 

同じように不敵に笑う人修羅の表情には正義のヒーローとしての誇りなど欠片もない。

 

秩序や平和を守る正義のヒーローとて、一皮剝けば天使と変わらない悪魔の如き虐殺者。

 

卑劣なダブルスタンダードを振りかざし、自分の蛮行だけを正当化する卑怯者に過ぎない。

 

ならば()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()だろう。

 

本物の悪魔に戻れた尚紀は誰かのために戦うのを止め、己のために戦う修羅となるのであった。

 




メタルギアライジングのライデンが活人剣を振りかざして人斬りを正当化しても、本質はただの虐殺者なのだと自分の欠点を受け入れて人斬りジャックに戻るシーンは最高にエモいんですよ…。
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