人修羅×まどマギ まどマギにメガテン足して世界再構築 作:チャーシュー麺愉悦部
人修羅が国交省ビルで戦いを始めた頃、上空には天津神族達の姿が現れている。
アメノトリフネの甲板で地上を見下ろすのは三体の天津神であり、フツヌシが口を開きだす。
「…ヤタガラスの使者達は任務を果たしてくれた。次は我らの番ぞ」
「表の天皇が消えた今、人修羅こそが日の本の皇帝地位につかなければならぬ」
「分かっている、そのために切り札の如意宝珠を預かっているのだ」
タケミカヅチの手には宝珠が握られており、神通力を宝珠に与えれば龍を制御出来るだろう。
「ルシファーとなる男が太陽となるか…因果なものだ。儂にとって暁の神は仇敵であったのに」
「それは我とて同じ。ルシファーは金星のアマツミカボシでもある…奴とは戦った間柄なのだ」
「土星は旧支配神の星でありサタンとルシファーは同一存在。金星は太陽を司る土星となれる」
「有翼の蛇が太陽となる……まるでアステカの太陽神ケツアルカトルのようだな」
古代メキシコのアステカ文明においてケツアルカトルは
創造神オメテオトルの子の一体であり、他の兄弟神と交代で世界を創造した存在である。
自らを傷つけて現在の人類を生み出し、人々に文化を伝授した知恵の英雄的側面をもつ。
生贄を嫌い、人々にやめさせようとしたがテスカトリポカに敗れてしまう。
破れたケツアルカトルは
「極東の日の本で産まれた男が人修羅となり…羽毛ある蛇として太陽神に返り咲くか…」
「嘉嶋尚紀という日本人としてあの男は生まれたと聞く。あの男の前世とは…まさかな…」
「興味深い話題であるが、今は議論の時間ではないぞ御二方。今は任務に集中するべきだ」
「そうであったな、オモイカネ。それでは行ってくるとするか…」
「日の本は太陽が昇る国…この地こそが太陽信仰が生まれる神国なのだと世界に知らしめよう」
地上に飛び降りようとするタケミカヅチとフツヌシであったが、オモイカネが後ろに振り向く。
「待て、御二方。どうやら…招かれざる客が空から来たようだ」
彼らも後ろに振り向いて千里眼を用いれば遠くの空に見えたのはコウリュウである。
横にはホウオウも飛んでおり、彼らの上に乗っているのは葛葉ライドウと時女静香なのだ。
「…現れたか、裏切り者共め」
「時女一族の者まで横にいる…どうやら厄介な連中を合流させてしまったようだな」
迫りくるライドウがコウリュウに命令を下し、顎を広げた龍の口から眩い放電現象が生まれる。
「相手は天津神族を代表する者共だ!手加減は無用、撃ち滅ぼせ!!」
「そうさせてもらおう!!」
先んじてコウリュウが仕掛けた一撃はショックウェーブであり、極太の雷ビームが迫りくる。
迎え撃つのはオモイカネであり、巻物で編まれた右腕を振るえばマカラカーンを行使する。
アメノトリフネ全体を魔法反射フィールドが覆うことで雷ビームを反射するのだ。
「チッ!!」
反射された雷の一撃であるが天空を司るコウリュウは雷の龍神であるため攻撃を吸収して防ぐ。
迎え撃つようにしてアメノトリフネも魔法を行使。
巨大な船体が暴風を生み出し、鷹の形をした船首の口から暴風放射を仕掛けていく。
真空刃の一撃が迫るがコウリュウもまた暴風を生み出して風の一撃を相殺するのだ。
「目の前のコウリュウに気を取られるでない」
「分かっておる、奴らが囮を務めていることぐらいはな」
タケミカヅチとフツヌシが空を見上げれば高速で飛来するホウオウが迫りくる。
「霧峰村で殺された人々の無念……時女一族を代表する私が晴らしてみせる!!」
静香が構えるのは新たな力となったアメノオハバリであり、刀剣の神が形となった大和古剣。
イザナギの剣を振るう静香の姿を見た天津神族の目が見開き、本気となったフツヌシが動く。
「貴様!!なぜ我らが高祖神殿の御剣を所有しておる!?」
浮遊させる大和古剣を回転させながら上空に目掛けて冥界破を放つ。
イザナギの剣を構える静香もまた古剣に魔力を纏わせながら極大の衝撃波を放ってくる。
冥界破とデスバウンドがぶつかり合ったことで衝撃波が対消滅する中、静香が飛び降りる。
アメノトリフネの甲板に着地した静香が燃え上がる魔力を纏いながら憤怒を顔に浮かべるのだ。
「バカな…貴女様は天津神側の女神!どうして時女一族に肩入れなどするのです!?母上!!」
驚愕しているのはタケミカヅチであり、新たな静香が持つ剣こそ彼の母神が形となったもの。
<<…我が子よ、これは天命なのです。イザナギ神は望んでおられます…古き日輪を断てと>>
その言葉が意味するのは天津神族を見捨てるものであり、古き神話の終わりをイザナギは望む。
役目を任された者こそ時女一族当主であり、二つに切り裂かれた日輪を掲げる時女静香だった。
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巨大な和船の形をしたアメノトリフネの甲板で睨み合う両雄であるがオモイカネがこう告げる。
「目の前の娘も脅威であるが…葛葉ライドウも迫っている。我は葛葉を相手しよう」
「葛葉ライドウの相手は儂も行く。奴と儂は縁深い関係でな…是が非でもケリをつけたい」
「縁深い者であろうと容赦はいらぬ。では我らは行く…武運を願うぞ、タケミカヅチ」
浮遊したオモイカネとフツヌシが迫りくるコウリュウとライドウに目掛けて勝負を挑む。
静香と向かい合うタケミカヅチの顔には冷や汗が滲んでおり、新たな彼女の力に戦慄している。
「この魔力…忘れるはずがない。どういう事だ…なぜ貴様からヒノカグツチの力を感じる!?」
巫女服のような新たな衣装を纏う静香こそヒノカグツチと融合したことで悪魔となった者。
その目には悪魔を表す金色の目が宿っており、怒りによって眉間にシワが寄り切っているのだ。
「私は魔法少女であることを捨てた悪魔…そしてヤタガラスを捨てた女…全ては復讐のために」
「ヒノカグツチと融合して悪魔人間となったのか!?母上の力を用いて奴を殺したのか!!」
「ヒノカグツチ様は私に復讐の炎を授けてくれたわ…そして、日の本を焼き払う炎さえもね」
「解せぬ!そのような小娘に付き従う必要などないのです!我々の側に来てください…母上!」
<<断る。私の所有者はイザナギ神であり、イザナギ神の求めこそが私の求め…覚悟なさい>>
母神から拒絶ともいえる念話が送られたことでタケミカヅチは母神と決別する覚悟を決める。
「天津神族を裏切るか……ヤタガラスに反逆する女に与して!!この裏切り者共がぁ!!」
「裏切ったのはそっちが先よ!!時女一族はヤタガラスに献身を続けたのに…見捨てたわ!!」
「貴様らの中にいた女がヤタガラスの秘密を嗅ぎ回ったのがそもそもの原因。お門違いだ」
「それ以前より先に所属する退魔師一族を貴方達は見捨てていたでしょ!罪を認めなさい!!」
「葛葉ライドウから聞かされたか?我々とて苦渋の決断なのだ…全体を生き残らせるためのな」
「ヤタガラスだけが生き残って…献身を続けた私達は死ねというの!?絶対に許さないわ!!」
巫女服の白衣の裾が魔力に呼応するようにして揺れ動き、炎とも花弁ともいえる裾が火を放つ。
憤怒の業火が甲板を焼いていき、炎の結界とも呼べる業火の空間を生み出す。
飛び出そうものなら神であっても炎の壁に焼き尽くされてしまうだろう。
「たとえ神子柴から支配されようと…私達巫は日の本のために戦った!誇りを持ってきた!!」
時女一族の愛国心は本物であり、ヤタガラスに尽くす道こそが護国守護だと信じてきた。
その献身を踏み躙るかのようにして米軍や自衛隊と共に霧峰村を焼いたのはヤタガラスなのだ。
「それをお前達は踏み躙った!どんな理由があるにせよ…私達はそれを許すつもりはない!!」
「だから日の本を破壊する側になるか?その頭と腹に見える不敬な飾りがそれを示す覚悟か!」
静香のポニーテールの飾りと腹の帯の下にぶら下る飾りとは日輪を真一文字に切り裂いたもの。
天津神から見ればその飾りはアマテラスと天皇家に反逆する意思を示す国賊そのものに映る。
「私は新しい太陽を掲げるわ…ヤタガラスが守る太陽ではない…違う太陽神を求める覚悟よ!」
「真一文字に切り裂いた日輪を捨て…新たな太陽を掲げる覚悟が形となったのが母上の剣か?」
「この剣は私の母の剣でもある…時女一族の当主を受け継いだ者として……お前達を斬る!!」
明けの明星の如き飾りがついたイザナギの剣を霞の構えで向けてくる女に対して武神も動く。
右手に雷の剣を生み出し、下段の構えを行いながら本気の力を解放するのだ。
「日の本を築き上げた天皇家とヤタガラスに弓引く国賊め……国家反逆罪で死刑にしてくれる」
「献身に報いてくれずゴミのように使い捨てる御上に忠誠を尽くすぐらいなら…国賊で十分よ」
「貴様が新たな太陽を求めようが、我らが先に新たな太陽を手に入れる。そのための人修羅だ」
「人修羅…?それじゃあ…イザナミ様が仰られていた新たな天空神は嘉嶋さんだったの…?」
「それを知ることなく貴様は死ぬだろう。ヒノカグツチと母上が相手なのだ…全力でいくぞ!」
戦いが始まれば静香の頭は戦場と一体化し、復讐の業火を心に纏いて駆け抜ける。
迎え撃つ武神もまた甲板を蹴り込み、190cmの巨体から繰り出す剛剣が振るわれるのだ。
時女一族の献身とは国と民を愛する心。
女の一族は夫を愛する妻の如く日の本に献身を与え、体も心も傷物にしながら死んできた。
それなのに国は彼女達の献身を裏切り、故郷も一族の者達も焼き尽くす地獄を与えてくる。
愛という自己犠牲を捧げてきた時女の女達は護国守護という夢幻に惑わされて死んでいく。
名も無きまま散りゆく宿命だとしても、闇に光を求めるために女達は戦い抜くのであった。
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「皇帝権威を表す伝説の神龍よ、故あってお主らを塞ぐ」
左手の杖を掲げて放つ魔法は『マハブフバリオン』であり、巨大な氷塊の槍が次々と降り注ぐ。
宙を飛ぶコウリュウは体から大放電を放つが雷の一撃を浴びせても巨大な氷塊を砕ききれない。
激しく波打つコウリュウが氷塊を避け続ける中、龍の頭部に立つライドウは片膝をつく。
「振り落とされるな、ゴウト!!」
「分かっておる!それよりも…厄介な奴が現れたようだぞ…」
コウリュウの周囲に吹き荒れる雷と暴風を神剣で切り裂いてきたのはフツヌシである。
あぐらをかいた状態で飛翔してきた者があぐらを解きながらコウリュウの頭部に着地する。
その手には浮遊させて操っていた大和古剣が握られており、二刀流で仕掛けてくるのだ。
「…久しいではないか、葛葉。コドクノマレビト事件以来のように感じるのぉ?」
懐かしい者を見るような目を向けてくるフツヌシであるがライドウは覚えがない。
超力兵団事件を超えた者であるが、アバドン王事件やコドクノマレビト事件を知らぬ者なのだ。
「…お前も自分の仲魔だった悪魔なのか?」
「如何にも。かつては小童のヨシツネと共に戦場を駆けたものよのぉ」
「フツヌシよ…我々は戦い合うしか道はないのか?かつては同胞であったというのに…?」
「我は天津神であり、日の本を支えるヤタガラスを守る神。歯向かうならば容赦はせんぞ」
「うぬはそれでいいのか!国とは民あってのもの!皇帝と側近だけで成り立つものではない!」
「ゴウトよ、我々とて苦渋の決断だった。民や尽くしてくれた一族を見捨てる事は容易でない」
「護国守護とは何なのだ!?民の安寧を守ることが護国守護ではないのか!?」
「時と場合による。平和な世であればそれでいいが…乱世となればそうもいかん」
「自分はヤタガラスからこう伝えられてきた…民無くして国は無しだと!!」
「それもまた一つの正解だ。しかしな…正解が一つだけでは世界は成り立たないのだ」
「戯言を!!信念をコロコロ変えるようでは正義の味方失格だぁ!!」
「では葛葉…例えてやろう。隔絶された地で暮らす葛葉一族に大量の移民が来ればどうなる?」
「大量移民だと……?」
「葛葉の里は小さい…食べさせられる人間は限られている。なのに多くの人を助けるのか?」
「そ……それは……」
「多くの人を助けようとすれば一族の者達まで飢えていき、誰も助からなくなっていくのだ」
人助けは尊いものでも許容範囲を超えれば助けようとした人達まで犠牲になり、誰もが死ぬ。
登山の遭難も同じであり、沈没しかけた潜水艦の水密扉を閉めて兵士を切り捨てるのも同じ。
生き残るために必要なコラテラルダメージであり、トロッコ問題は感情で判断出来ない。
鬼畜外道な選択もまた必要な行為であり、悪いイメージの中にも人々を救う可能性がある。
そう突きつけられたライドウには大きな迷いが植え付けられてしまい、酷く混乱するのだ。
「
「ならば我々はどうなる…?切り捨てられた我々のような人々の無念をどうする気だぁ!!」
「詫びる言葉は許されん。貴様らの尊い犠牲によってヤタガラスは存続出来る……感謝しよう」
「感謝だけで死ねなどという理屈は認めない!!我々にだって尊厳はある…生贄にはならん!」
陰陽葛葉を抜刀して構えるライドウを見据えるフツヌシは目を細めていく。
見えるのは刀の鍔に描かれた陰陽であり、陰陽を掲げる者に対して落胆の色を見せる。
「まだまだ若いな、葛葉。偏った正解だけに依存する者がよくも陰陽の鍔を掲げられるものだ」
フツヌシもまた双剣を構えた時、互いが暴風となる程の剣戟を生み出していく。
「今の貴様はまるで略奪者だ!限りある救いを独占する者達に怒りながら奪おうとする者だ!」
「助けを求めて何が悪い!!貴様らだけが救われるなんて認めない!全員救われるべきだ!!」
「移民と同じ理屈をほざくか!貴様の理屈を実行すれば世界の国々は移民に潰されると知れ!」
登山で滑落した者が助けを呼ぼうと別の登山者は見捨てる決断を下さねば自分も滑落して死ぬ。
沈没しかけた潜水艦で助けを求める兵士のために水密扉を開ければ全員が溺死してしまう。
人助けという尊い正解だけで片付けられるほど世の中は甘くない。
そう突きつけられるのは静香も同じであり、タケミカヅチの猛攻の中で禅問答を仕掛けられる。
「
「だから時女一族を見捨てたの!?殺された里の人達は助けを求めたというのに!!」
「全てを救う治世など不可能だ!!愛国主義を掲げる貴様は移民を救うことが出来るのか!?」
「そ……それは……」
「国は土地を耕した土着の者達のものだとぬかした時点で…貴様も選民主義者でしかない!!」
「わ…私達も…ヤタガラスと同じでしかなかったの…?」
「極右のナチスが掲げたナチズムとはそういうものだ!貴様も我らも同じ穴の狢でしかない!」
ミイラ取りがミイラに成り果てていたのかと強い迷いに支配された者の脇腹を蹴り込む。
「がはっ!!」
ミドルキックが炸裂した静香の肋骨が砕けながら弾き飛ばされて倒れ込む。
「母上…貴女様も分かっているはず。誰かを救うのは同時に誰かを殺す陰陽でしかないのだと」
剣を甲板に突き立てて立ち上がろうとする者に問いかけた時、アメノオハバリが語り掛ける。
<<それは重々承知しています。我らも貴方達も誰かを救うと言いながら誰かを殺す者です>>
「我らの殺戮はダメで、自分達は構わない?卑劣なダブスタを振りかざされますか?母上様?」
<<死と再生は表裏一体…
立ち上がった静香が剣を構え直し、不敵な笑みを浮かべながらこう告げてくる。
「国を守るために戦った私達だけど…それだけでは足りないと知ったわ。だからこそ悪になる」
「ハハハハハハ!!これで
フランス国旗やイルミナティ理念である平等や博愛精神だけでは救えないものもある。
人助けや人類愛とは真逆の答えを示す者達は社会悪にされ、差別主義者にされるだろう。
この手口を使う政党こそが共産党であり、人類愛と平和を掲げながら移民に国を潰させる。
多文化共生の名の元に地域は侵略され、文化も民族も言語も何もかもを乗っ取られるだろう。
その光景こそが21世紀のヨーロッパ移民問題の地獄であり、日本も同じ末路となる。
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「自分だけを正当化する卑怯者でありたくない…だからこそ!!同じ悪となって民を救う!!」
悪の道に進む覚悟を示すためにこそ、忌み子として生み出されたヒノカグツチの力を解放する。
霞の構えで構えるイザナギの剣から国生みの業火が噴き上がり、周囲が灼熱地獄と化すのだ。
「よくぞ申した!!その潔さに免じて華々しく散らせてやろうぞ!貴様の家紋と同じくな!!」
巫女服の白衣に備わった四葉桜紋の如く花として散らせてやるとタケミカヅチが力を解放する。
右手の雷の剣から極大の雷が迸る中、互いが踏み込みながら剣戟を交え合う。
火龍撃と雷龍撃の一撃が互いの剣を通して迸り、アメノトリフネの甲板を焼いていく。
既に船全体にまで業火が燃え広がっており、帆の代わりに備わる巨大な翼も燃えていく。
海上交通の神としても知られるタケミカヅチの船であろうがこのままでは墜落するだろう。
燃え上がる黒煙の中で激しい火花が飛び交う中、左手の宝珠を強く握り込んだ武神が肘を放つ。
「ごふっ!!」
右側頭部を打ち付けて静香が怯むが、体勢が崩れる勢いを利用しながら片手を地につける。
「ぐふっ!!?」
逆袈裟斬りを避けながら放つのは低空回し蹴りであり、タケミカヅチの顎を蹴り飛ばす。
脳が激しく揺さぶられて後退る武神に目掛けて猛る静香が吠えるのだ。
「悪となったからには手段は選ばない!!憎い神子柴の技…使わせてもらうわよ!!」
月面宙返りをした彼女がタケミカヅチの背後に回り込み、剣を持ったまま相手の体を掴む。
そのまま上に跳躍した彼女がきりもみ落下しながら放つ技とは神子柴が得意とした飯綱落とし。
忍者として生きた神子柴から伝授された必殺の投げ技に対して武神が放つのは大放電である。
「キャァァァァーーーーッッ!!!」
体から放電現象が生まれた瞬間、静香の全身が感電しながら両腕を放してしまう。
武神と共に倒れ込んだ静香であるが、タケミカヅチが怒りの形相をしながら立ち上がってくる。
「我こそが天孫降臨神話の交渉人であり前線指揮官だった武神!!小娘如き何するものぞ!!」
立ち上がろうとする静香の顎を蹴り飛ばす形で弾き飛ばし、船首の方角にまで飛んでいく。
「ぐっ……うぅ……」
鷹をモチーフにした船首像の後ろに倒れ込んだ静香に目掛けてトドメを刺そうと迫りくる。
「ヒノカグツチの力とて小娘では扱いきれなかったようだな?炎の神になりきれん紛い物め」
右手の剣を振り上げて首を跳ねんとする者が近寄ってくる中、静香が勝負をかけてくる。
「どうかしらね…?私の炎はね…イザナギの剣だけでしか生み出せないものではないのよ…」
「ほう?ならば貴様に宿ったヒノカグツチの炎はどのように振るわれるのだ?見せてみろ!!」
歯を食いしばりながら立ち上がる者の強がりなど気にもしない武神が斬撃を放つ。
左手に握られたイザナギの剣で雷の刃を受け止めた時、静香が右手を背中に回しこむ。
右手が握った武器とは帯に差された七支刀であり、ライドウが返してくれた時女一族の家宝。
背中から引き抜く形で取り出した七支刀に備わった七つの切っ先が炎を生み出していくのだ。
「悪鬼浄滅の炎よ!!時女一族が掲げた炎よ!!その力を示せ!!」
『紅蓮真剣』と化した七支刀が膨大な炎の刃を生み出しながらタケミカヅチに斬撃を放つ。
「ヌォォォォーーーーッッ!!?」
巨大な炎の刃が振り落とされそうになった時、左手に握っていた如意宝珠を掲げてしまう。
宝珠を用いて炎の斬撃を受け止めてしまったことで亀裂が入っていく。
「し……しまったぁぁぁぁぁーーーーッッ!!!?」
静香に宿ったヒノカグツチの力に耐え切れず、如意宝珠が砕けてしまう末路となるのだ。
慌てふためくタケミカヅチに対して跳躍した静香が船首像である鷹の頭部に着地する。
七支刀を振るって炎を消しながら収納するようにして消した後、抜刀術の構えを行う。
「たとえ人々から悪と罵られても…私達は時女の矜持を捨てない。私達が報われなくても!!」
船首像を蹴り込んで一気に飛び込む静香が放つのは『朧一閃』であり、武神に迫っていく。
顔を俯けたままのタケミカヅチの首を跳ね落としそうになった時、ついに武神が動く時がくる。
「この……戯けがぁぁぁぁぁーーーーッッ!!!!」
宝珠を握っていた左手からも雷の剣が生み出されたことで二刀流の構えを行う。
彼が放つ一撃とは『大雷電忠義斬』であり放たれた抜刀術の刃に剣が触れた瞬間、天が唸る。
「アァァァァーーーーッッ!!!?」
斬撃と同時に轟雷を直撃させる必殺技が決まったことで静香の全身が焼き尽くされていく。
「これで我らは切り札を失った!貴様の所業は日の本を終わらせる一撃となったのだぁぁぁ!」
「ゴフッ!!!!」
右手の雷の剣が静香の腹部を貫き、盛大に吐血した女の内臓を雷で焼きながら持ち上げていく。
「この国賊がぁぁぁぁぁ!!我の前から消え失せろォォォォーーーーッッ!!!」
豪快に投げ飛ばされた勢いで雷の剣が抜け落ちる中、静香はアメノトリフネから叩きだされる。
大きく飛ばされながら地上に落下していくのだが、それは燃え上がるアメノトリフネも同じ。
高度を保てない船の船体が亀裂を生み出し、砕け散ってMAGの光となるのも時間の問題なのだ。
<我らは切り札を失った!!これ以上の戦闘は無意味だ!!撤退するぞ!!>
タケミカヅチの念話がフツヌシとオモイカネに届いた瞬間、彼らも動揺の色を顔に浮かべる。
「勝機だ、ライドウ!!」
慌てていたフツヌシに斬り込むライドウが陰陽葛葉を切り上げたことで剣神の左腕を切断する。
「ぐっ!!?」
咄嗟に右膝をライドウに打ち込んで怯んだ彼から距離を離すようにして空中に飛び上がる。
浮遊するフツヌシの横にはオモイカネが佇むように飛んでおり、忌々しい表情を浮かべていく。
「このオモイカネ……一生の不覚。タケミカヅチの援護を行うべきであった……」
「今更そんなことを言っても無駄なことだ……我々も撤退するしかあるまい……」
コウリュウから離れていく天津神であったがフツヌシが最後に振り向いてこう告げてくる。
「葛葉よ、我らの道は違えている。次に会うことがあるならば……決死の覚悟で現れよ」
姿を消す三体の天津神達が東京を去った後、東京湾に墜落したアメノトリフネが砕け散る。
膨大なMAGを夜空に昇らせる中、ライドウは静香がどうなったのかが心配のようだ。
「あの娘を信じるしかあるまい…ヒノカグツチの力を手にしたあの娘は悪魔の体をしている」
「悪魔のタフさを信じてやりたいが…相手はタケミカヅチだ。重症を負っているやもしれん…」
「それでも我らは東京を守りに来た者だ。戦士として生きるあの娘も覚悟は出来ているだろう」
「静香…どうか生き残っていてくれ。君が逃げ延びた大国村で帰りを待つ者達が悲しむぞ…」
静香の無事を信じるしかないライドウは東京に辿り着いたことでコウリュウから飛び降りる。
召喚管に龍神を仕舞った彼が召喚するのはモー・ショボーであり、掴まって地上に下り立つ。
再び召喚管を抜いて使役したのはオルトロスであり、彼の背に乗ったライドウが駆け抜ける。
彼らが向かう戦場の地こそ人修羅とルイーザが激戦を繰り広げる地であった。
……………。
「あれが…タケミナカタ様の両腕を切り落とした武神の力…本当に…強かったわ……」
墜落した静香が倒れ込んでいるのは東京に隣接するさいたま市の彩湖近くにある林の中。
全身が焼かれて異臭を周囲に撒き散らす彼女は死にかけており、今すぐ回復する必要がある。
「まだ死ねない……私にはまだ……使命が……」
立ち上がる力も残っていない彼女の腹部からはおびただしい血が流れ続けている。
そんな中、彼女の耳に誰かが近寄ってくる音が聞こえたために顔を向けていく。
「君!!しっかりしろ!!」
走り寄ってきたのは自衛隊に所属するゴトウ一等陸佐であり、彼女を抱き起す。
彩湖近くのグリーンパークには第一師団の指揮所が設けられていたため彼が気が付いたようだ。
「あなたは……?」
「私のことなどどうでもいい!それよりも君が危険だ…今すぐ救護隊の連中を呼んでくる!!」
<<その必要はないぞ、心優しき者よ>>
空から舞い降りてきたのはホウオウであり、静香の横で着地する。
勿論ただの人間に悪魔の姿が見えるはずもないが、回復魔法で癒される静香の姿は分かる。
「な……何なのだ……これは一体……?」
ディアラハンを用いて体を完全回復させた静香が起き上がり、ゴトウに礼を言ってくる。
「本当に有難うございます。その姿は自衛隊の人みたいだけど…東京を救いに来てくれたの?」
「そ……それは……その……」
機密であるため作戦内容を民間人に喋るわけにもいかないゴトウであるが悔しそうにしている。
それを察してくれた静香が首を横に振り、彼のために優しい言葉をかけてくれる。
彼女の言葉が嬉しかった彼の口元が微笑み、互いに自己紹介を行ったようだ。
「貴方も護国守護を貫きたいけど命令が許してくれない…それに苦しむ人じゃないかしら?」
「君には分かるのか…?私の無念が……?」
「私も貴方と同じ矜持を持って戦った愛国者…だけど御上に裏切られて…今では追われる身よ」
「自分をテロリストだと自衛隊の者である私に言っていいのか?君を放置出来なくなるぞ」
「考えて、ゴトウさん。国の平和とは民のためにあるの?それとも民を搾取する連中のもの?」
それを問われたゴトウは押し黙ってしまうが、それでも顔を上げたゴトウがこう言ってくれる。
「無論……民のためにある。平和とは得体の知れない政府のものではない…民の安寧のものだ」
そう言ってくれたのが心から嬉しい静香が彼の手を両手で掴みながら勧誘してくる。
「貴方も憂国の烈士になれる資格があるわ!この作戦が終わったら必ず大国村に来て!」
憂国の烈士として生きる静香と意気投合することになった者は覚悟を決めることとなるだろう。
国に捧げてきた忠義の精神では民を救えないと理解した彼もまた反逆者の道に進むのであった。
7章で時女一族触ってないので何処かで活躍機会を設けたいと思ってたので描きました。
これで僕が描くゴトウさんも戒厳司令の道に進めますな。