人修羅×まどマギ まどマギにメガテン足して世界再構築   作:チャーシュー麺愉悦部

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297話 紅の修羅

誰かを悪者扱いし、正義のために戦う物語は数多い。

 

しかしそんな正義のヒーロー達は自分自身に目を向けないのが常である。

 

これは現実でも同じであり、誰かを直ぐに悪者にする連中がネットで溢れているだろう。

 

誰かを悪者扱いして戦おうとする者の根幹にあるのは自分自身の欲望を果たしたい願望だ。

 

正義を成して自尊心を満たしたい、周りからチヤホヤされて黒い承認欲求を満たしたい。

 

誰でも自分が悪者扱いされることに対して良い気持ちにはなれないものだろう。

 

どんな時でも人を悪者扱いする人は自分をかばうために他人のせいにするという悪癖がある。

 

誰かのせいにしてしまえば矛先がその人に向けられるため、自分が悪者扱いされることがない。

 

人から責められたり皆から非難されたり哀れな目で見られたくない思いが強くなっていく。

 

自分だけはどんな方法を使っても悪者扱いされたくないと感じ、他責の安心感に浸り続ける。

 

自分の考えや行動が絶対に正しいと思い込んでいる人ほど他人を悪者扱いする原因がある。

 

その人の中では間違っていない認識があるために他の違った意見を悪く見てしまうからだ。

 

否定したり間違いを指摘してくる他人を敵とみなし、悪者扱いするようになっていく。

 

多くの経験をしてきている人や信念を貫く人は自分の中に一つの正解を持っている。

 

その正解と異なることを言う人、行動する人はその人の中では不正解であり悪者となる。

 

このようなタイプの人が悪者扱いするのは相手を自分の正しさに変えたい思いがあるからだ。

 

自分の価値観を分かってもらいたい。

 

自分のことを理解してほしい。

 

その思いが背景にあるため間違ってると指摘したところで変わる程度の人ではないだろう。

 

思い込みによって失敗したりトラブルを抱えない限りは自分が正しいという考えは変わらない。

 

それは心の弱さの表れであり、ネットでもおかしさを指摘しただけで周りは袋叩きにしてくる。

 

それこそがほむらや織莉子が味わった苦しみであり、里見親子や三浦旭が背負った苦しみ。

 

魔法少女の真実を語ろうが日本の政治の支配構造を語ろうが誰もが彼女達を悪者にしてしまう。

 

それだけでなくアリナのように学校社会の堕落を指摘した者でさえ悪者にされて虐められる。

 

またSNSで繰り返される政治の左右の意見を批判する者達でさえ悪者にされて絡まれるのだ。

 

人の悪いところばかり探して人の悪口を言うなどの悪癖がある人ほど自分に自信がない者だ。

 

そのくせ周りに馬鹿にされたくない、出来る人間だと思われたいという見栄の欲求が強い。

 

自分が失敗してしまった時、誰かのせいで自分が失敗した事にして罪を擦り付けてさえくる。

 

心の弱さとプライドが混在して自分の中の感情を処理しきれなくなった時、他責の安心に走る。

 

身の保身に走り、相手が自分の言い分を信用したようだと感じると安堵して心が穏やかになる。

 

そんな連中は責任を背負いたくないだけの()()()()()()()()でしかないのだ。

 

正義の味方も一皮剥けば自分の蛮行を悪者の問題にして擦り付けるだけの無責任至上主義者。

 

戦争で殺戮を繰り返したジャンヌや愛する人を救うためと軍から盗みを働いたほむらも同じ。

 

そして革命で非道を行った者達でさえ正義の名の元に行う非道を悪者側の問題にしてしまう。

 

ならば悪行を善行にすり替えれる正義という概念ほど腐り切ったものはないはずだ。

 

それに気がつけた時、東京の守護者として生きた悪魔は社会正義を捨てる決断が出来るだろう。

 

今の東京で戦う人修羅の姿はもう正義のヒーローなどではない。

 

自分の殺戮行為を正当化せず、相手に問題をすり替えず、己の大罪を背負える悪者となれた。

 

……………。

 

「さぁ、やろうぜルイーザ!どちらが死んでも悪者が死んだだけ…周りの連中は大喜びだ!!」

 

「己の悪行を認めて背負える者こそ本物の悪魔だ!!それでこそ私が超えたい目標なのだ!!」

 

首都高速中央環状線の上を駆け抜けていくのは地獄の番犬と神馬に乗った魔王達。

 

怨霊剣を握る者と魔剣レーヴァテインを握る者とが激しく斬り結びながら己の心を叫び続ける。

 

「イルミナティの大儀など私はどうでもいい!私が欲しいのは私が生まれた一族の繁栄だ!!」

 

ルイーザはロスチャイルドに連なる五家の者だが滅んだドイツの一族の者として生まれた女。

 

初代ロスチャイルドの遺言により秘密を厳守するため近親婚を繰り返した弊害の保険である。

 

近親婚によって死する一族の血を守るため、初代の遺言を破って一族以外の女から生まれた子。

 

そのため本家からは疎まれる分家の娘であり、立場でいえば美国織莉子と同じ者だった。

 

「ドイツのロスチャイルドこそが本家となるべきだ!私はその血をもつ正当な後継者となる!」

 

「一族同士で後継者争いか…俺を倒して何を望む!お前の本音を叫んでみろぉ!!」

 

「私こそがロスチャイルド一族の当主だ!英国のロスチャイルドから本家の地位を奪い取る!」

 

「俺を倒して踏み台にしたい…それがお前の本音か?なら…今度は俺が本音を語る番だな!!」

 

ケルベロスに跨った状態から片手を用いて上に飛び上がると同時に横を走る相手に蹴りを放つ。

 

ルイーザもまた片手を鞍について立ち上がりながら魔剣を持つ腕で回し蹴りを受け止める。

 

互いが馬となる悪魔達の上で立ち、激しい剣戟を繰り返していく。

 

「俺は愛する女と交わした約束のために戦った男だ!だがな…俺の殺戮行為は別の問題だ!!」

 

人修羅の力を風実風華が守ろうとした大切な人々のために使って欲しい。

 

酷く抽象的な約束内容であり、具体的にどのようにして欲しいのかを遺言で残せなかった。

 

別に人殺し以外でもその力を役立たせることだって出来たはず。

 

なのに人修羅がもたらしたのは社会正義の名の元に繰り返された大虐殺でしかなかった。

 

「俺を殺戮者に導いた原因はある!だがそれは関係ない!起爆剤となったのは()()()()()!!」

 

初めて魔法少女を殺戮したのは目の前で無垢な少女が殺されたために爆発した怒り。

 

二度とそんな悲劇を繰り返させないと口に出すが、心を突き動かしたのは常に憎悪と憤怒。

 

自分では義憤なのだと正当化しても、その本質はボルテクス界での人修羅と同じ感情である。

 

人として生きた自分の人生をぶち壊しにした存在への憎悪であり、憎しみを晴らしたい報復心。

 

憎しみを晴らしてスッキリさせたい感情を正義に紐づけながら人修羅は魔法少女を虐殺した。

 

「俺が正義を求めたのは安心が欲しかったからだ!人殺しの外道じゃないと思いたかった!!」

 

仕事や役割を任された時、何とか無事に成功させるために思考を凝らすのは会社員も同じはず。

 

ミスが起こらないように注意深く管理しなくてはいけないとプレッシャーを感じてしまう。

 

その過程で壁にぶつかる事もある。

 

責任感の無い人は壁にぶつかると先ず誰かを悪者にする事で自分の責任から逃れようとする。

 

達成感を得るよりも目の前の壁が鬱陶しく、改善の手立てを考える事をしたくない。

 

自分の立場を悪くせず嫌な事から逃れる最もらしい理由として簡単なのが悪人を作ること。

 

人修羅が社会正義を求めたのは虐殺行為という悪行を()()()()()()()()()()()()()()()だけ。

 

「俺も善悪二元論に呪われた者だ!魔法少女の劣等性を担保にして殺戮を正当化した外道だ!」

 

誰かを守ろうとすれば誰かを殺してしまうという壁にぶつかり、彼は乗り越えられなかった者。

 

それは世界の司法も同じであり、()()()()()()()()()()()()()()でしか秩序を保てていない。

 

犯罪者の拉致監禁はダメで司法が犯罪者を刑務所で拉致監禁する事はOKという矛盾を抱える。

 

自分は良くて、お前はダメ。

 

卑劣極まりないダブルスタンダード行為を人修羅もまた司法と同じく乗り越えられなかった。

 

「正義とは権利に近いニュアンスだ!責任を取らない正義などありえない!!」

 

「ならば貴方様は何を望まれる!?私の魔剣で首を跳ねられる贖罪でも望まれますか!!」

 

「俺が殺されて死んだ者達と遺族が報われるなら構わない!だがそれでは世界は変わらない!」

 

責任を取らない正義など不正義だと信じたからこそ、尚紀は神浜人権宣言を行っている。

 

それによってもたらされる世界の破壊ですら責任となり、それを背負うために政治家を目指す。

 

それでもその道が支配の仕組みによって閉ざされたなら、尚紀はどうやって責任を果たす?

 

「同じ過ちを繰り返させないと俺は悪人を殺してきた!ならば…()()()()()()()()()()()()!」

 

「ならば私の刃で斬り伏せられるがいい!!」

 

魔剣から迸る業火の刃を用いて袈裟斬りを狙うが人修羅は後方の道路に飛び降りる。

 

ケルベロスの長い尻尾を掴みながら高速で移動する道路を滑るがルイーザは追撃を放つ。

 

自分の周囲に展開させた浮遊する魔剣が刺突を狙うようにして後方に飛ぶ。

 

人修羅はアスファルトを蹴り込みながら跳躍し、6本の剣を避けつつケルベロスに乗り込む。

 

ルイーザも馬の鞍に座り込み、互いが猛スピードで環状線を周るようにして駆け抜ける。

 

<ルイーザ様、援護します!>

 

念話が頭に響いたルイーザが後ろに振り向けば攻撃ヘリの群れが迫ってくる。

 

造魔兵達の航空攻撃の巻き添えを喰らうまいと彼女は手綱を打ち、横の道路に飛び移る。

 

後ろを振り向く人修羅の口元には不敵な笑みが浮かび、攻撃ヘリの群れを迎え撃つ。

 

「それでもただでは死なない!!人類を搾取し続ける同じ極悪人共も道連れにしてやる!!」

 

発射された空対地ミサイルに対して人修羅が動く。

 

ケルベロスから跳躍した彼に目掛けて飛んでくるミサイルの群れに飛び移っていく。

 

燃え上がる空に向けて大きく飛んだ殺戮者の目には偽りのない感情が宿っている。

 

所詮自分は闇の悪魔であり、正義の名の元に死の上に死を積み重ねることしか出来ない殺人鬼。

 

敵の血を浴び続けた果てに()()()()()()()()()()でしかないのだと自覚した覚悟の感情だった。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――

 

燃え上がる東京に迫りくるのは偽旗作戦部隊を消すための証拠隠滅部隊。

 

高度一万メートルの上空を飛行してくるのは米軍のグローブマスターIIIの群れである。

 

アメリカ空軍が保有する軍用長距離輸送機の群れと共に進軍してくるのは東京湾に向かう部隊。

 

海底を進んでくるのはオハイオ級原子力潜水艦であり、核搭載潜水艦としても知られている。

 

しかしこの潜水艦は不測の事態が生じた際に核ミサイルで全てを消滅させるための最後の手段。

 

偽旗作戦部隊を消すために地上攻撃を行うのは輸送機部隊がメインなのだ。

 

そんな中、多数の攻撃ヘリ部隊を相手に人修羅は激戦を繰り広げていく。

 

「邪魔だァァァーーーーッッ!!!」

 

ミサイルの群れを飛び越えた人修羅が袈裟斬りを用いて一機のヘリを真っ二つに切り裂く。

 

落下するヘリの側面を蹴り込み、横を飛ぶ攻撃ヘリに取りつくが僚機は構わず攻撃してくる。

 

空対空ミサイルを発射してきた攻撃ヘリに対して人修羅が飛び込む。

 

ミサイルが直撃して撃破されたヘリの爆発を背にしながらミサイルの上に飛び乗っていく。

 

片手を前に向けて風魔法の竜巻を行使。

 

竜巻に飲まれて姿勢制御が効かない攻撃ヘリに対して鞘に刀を収めながら次元斬を放つ。

 

竜巻ごと切り裂かれていく攻撃ヘリを見るルイーザはビルの屋上で念話を送ってくるのだ。

 

<B5シリーズ、リリースコードを使う。ガンマ5・1・イプシロン。認証せよ>

 

「グッ……ゴガッ……リョウ……カイ……グゴァァァァーーーッッ!!!」

 

念話を送られた瞬間、パイロットの造魔兵達の体が酷い痙攣を起こしながら膨張していく。

 

体の内側から破裂するようにしてヘリのコックピットを破壊したのは悪魔化した造魔兵だ。

 

「……タルトやリズもこうなっちまうのかもな」

 

落下する人修羅を背に乗せて受け止めるケルベロスが後ろを見れば飛行タイプの悪魔が迫る。

 

【カマソッソ】

 

マヤ神話の地下にある冥界シバルバーに住まうとされる蝙蝠の悪神。

 

大きな牙と鋭い鉤爪を持った巨大な蝙蝠の姿をしており、ナイフのような鼻をもつ。

 

マヤの双子の英雄の一人、フンアフプの首を跳ねた巨大蝙蝠であった。

 

「ヒャーハハハ!ニンゲンノカタチニサレテキュウクツダッタガ、コレデゼンリョクダァ!!」

 

蝙蝠とは周囲の味方のフリをしながらも裏切る八方美人的な比喩をもつ嫌われた存在。

 

鳥にも獣にも擬態する存在だからこそ便衣兵という偽装兵となり革命市民のフリを行ったのだ。

 

「蝙蝠悪魔が造魔兵共の正体か!!革命市民に擬態したところで貴様らは悪魔でしかない!!」

 

蝙蝠の翼に備わる手には湾曲したショーテルが持たれており、獲物を切り裂かんと迫りくる。

 

迎え撃つ人修羅であったが、猛烈な速度で迫りくる存在に気が付く。

 

「これ以上……帝都を破壊させるわけにはいかん!!」

 

横のビルから跳躍して現れたのはライドウとオルトロスであり、陰陽葛葉が抜刀される。

 

「行クゾ、ライドウ!!遅レタ分ダケ大暴レシテヤレ!!」

 

オルトロスから受け取った炎の魔力を刀身に纏わせたライドウがカマソッソの群れに飛び込む。

 

「ハァァァァァァーーーーッッ!!!」

 

放たれたのは『紅蓮忠義斬』であり、高速で放たれた斬撃が蝙蝠悪魔をバラバラにしていく。

 

<<アギャァァァァァーーッッ!!?>>

 

燃え上がりながら高速道路に落ちていく蝙蝠悪魔が砕け散り、MAGの光と化す。

 

「遅くなってすまない!!」

 

加速するオルトロスが兄のケルベロスの横まで並走してくる。

 

背に乗る人修羅に顔を向けるライドウであったが、彼の顔は俯いたまま返事を返してくれない。

 

「尚紀……?」

 

己を知った悪魔は正義のために戦うライドウに対してどんな顔を向けていいのか分からない。

 

「……今は敵を倒すことだけに集中しろ」

 

「……分かった」

 

後続から迫る蝙蝠悪魔の群れを撃退しながら環状線を駆け抜ける者達に対してルイーザが動く。

 

「私と混沌王様との戦いを邪魔する無粋なデビルサマナーめ……再び立ち塞がるか」

 

貴族服のコートから取り出された道具とはサマナーが用いる召喚管。

 

ルイーザは人修羅と同じく悪魔人間であり、自分のMAGを用いて悪魔召喚を行える者。

 

騎乗しているスレイプニルだけでなく、もう一体を召喚する二体同時召喚が使える者だった。

 

「いでよ…我が子よ。誇り高き狼と呼ばれしその巨体を用いて……敵を飲み込め!!」

 

魔王ロキと融合したルイーザが召喚管を振り抜き、膨大なMAGが放出される。

 

「「なんだ!?」」

 

環状線と並走するようにして走ってくるのはケルベロスやオルトロスを遥かに超える狼の姿。

 

その巨体を用いて主神オーディンを飲み込んで殺した者として知られる存在だった。

 

【フェンリル】

 

北欧神話における誇り高き狼の怪物であり、魔王ロキと女巨人アングルボザの一人息子。

 

手が付けられないため、神々はリングヴィ島においてグレイプニルという鎖で繋いでしまう。

 

ラグナロクにおいては繋がれた鎖は解かれてしまい、フェンリルは狂暴性を発揮する。

 

彼は主神オーディンを飲み込むのだが、オーディンの息子のヴィダルに倒された者であった。

 

<<母上の死闘を邪魔する無礼者め!我が顎に食い千切られるか飲まれるかを選ぶがいい!>>

 

ビルを破壊しながら側面を走るのは全長50メートル、全高20メートルにも上る巨大狼。

 

前の道路からはスレイプニルに跨ったルイーザが魔剣を構えて駆け抜けてくる。

 

「ライドウ、ここが正念場だ!!俺達が死ねば……東京は滅びるしかない!!」

 

「心得ている!!21世紀であろうとこの地は帝都……帝都の守護者として推して参る!!」

 

守護者の剣を振るう者達が互いに覚悟を決めながらそれぞれの戦場へと駆け抜けていく。

 

しかし守護者の剣とは誰かを守ると同時に誰かを殺す()()()()()を抱える殺戮の剣にもなる。

 

陰陽の剣を携えた2人の戦いは矛盾をその手に宿しながらも極限の神域へと進んでいった。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――

 

「さぁ、貴様らの覚悟を私に示すがいい!!私はそれを踏み台にして地上を支配する!!」

 

迫りくるスレイプニルの周囲にレーヴァテインの業火が張り巡らされる。

 

レーヴァテインが放つ炎の結界に飛び込む者は炎の耐性がない限り焼き尽くされるだろう。

 

「ライドウ、ぬかるなよ!!」

 

「分かっている!!」

 

ライドウの肩からオルトロスの頭部に移ったゴウトが掴まりながら前方を見据える。

 

迫ってくる敵に対して先に仕掛けるのはライドウの一撃。

 

ケルベロスよりも前に進み出たオルトロスをすり抜けるようにして接敵した瞬間、火花が飛ぶ。

 

「「チッ!!」」

 

互いに放った袈裟斬りが鍔迫り合いを起こして火花を飛ばす。

 

豪熱の結界でライドウは焼き尽くされるかと思うだろうが、彼は業魔殿で刀を変化させている。

 

シュミットを用いて陰陽葛葉から得られる耐性が変化したことで炎を無効化してくるのだ。

 

鍔迫り合いを互いに受け流し、先に進み出たオルトロスが跳躍する。

 

環状線に目掛けて体当たりを仕掛けてきたフェンリルが道路を砕き、それを飛び越えるのだ。

 

「「ハァァァァァァーーーーッッ!!!」」

 

後続から迫るケルベロスの上では刀を振り上げた人修羅も迫りくる。

 

互いに跳躍するケルベロスとスレイプニル。

 

鈍化した世界。

 

互いの袈裟斬りがぶつかり合い、そのまま受け流しながら地面に着地。

 

前に進み出たケルベロスが右前足の爪を地面に突き立てながらドリフトし、さらに追撃。

 

ルイーザも魔剣を地面に突き立て、それを軸にしながら一気に馬を旋回させて戻ってくる。

 

再び剣がぶつかり合い、後ろに走っていくケルベロスに目掛けてルイーザが追いかけてくる。

 

「私は負けず嫌いでしてね!クローンであろうと私を殺した者は許さない!必ず超える!!」

 

「俺を崇めるイルミナティに飼われた梟のくせに!主人に噛み付こうとするか!!」

 

「組織に忠誠を示したままでは私の無念は晴らせない!!悪魔とは自由を掲げる者だ!!」

 

「その態度は気に入った!!お前は誰よりもCHAOSという概念を体現出来る女だ!!」

 

後ろに振り向き左手から破邪の光弾を放ち続ける攻撃を避けつつルイーザも攻撃を放つ。

 

背中の周囲に翼のように広げながら浮かせている12本の魔剣が切っ先を向けながら射出。

 

次々と迫ってくる剣を避けるが浮遊する剣が周囲を囲むようにして次々と斬撃を放つ。

 

馬上の人修羅は怨霊剣を用いて斬撃を弾くが、前方の変化に気が付く。

 

「ヌゥゥゥゥゥ……ハァッ!!!」

 

片手を前にかざしたルイーザが念波を送って操るのは隣のビルであり、亀裂が入っていく。

 

彼女も超能力魔法を操れる者であり、周囲に浮かす魔剣も超能力魔法で操っているようだ。

 

「クッ!!」

 

中央環状線に目掛けて倒れ込む巨大なビルを飛び越えて地面に着地しながら走り続けていく。

 

後ろからはルイーザも跳躍して飛び移り、追ってくるライドウとオルトロスも跳躍してくる。

 

さらに後ろからはフェンリルが道路に目掛けて次々と体当たりをしながら障害物を砕いてくる。

 

巨大狼は止まれば容赦なく敵を飲み込んでくるだろう戦場を戦士達は駆け抜けていくのだ。

 

中央環状線を一周する形で戦い抜いた者達が渋谷区辺りにまで迫っていく。

 

「ライドウ!我らは後ろのフェンリルをどうにかするのだ!!」

 

「了解だ!!」

 

封魔管を抜いて召喚した悪魔こそ、業魔殿で補充した三体目の仲魔の姿。

 

「全国の皆様!こんにちわであります!!」

 

屹立する巨人こそ、人修羅と同じく阿修羅の名をもつ存在なのだ。

 

【マダ】

 

インド叙事詩マハーバーラタに登場する酩酊者を意味する名を持つ強大なアスラ。

 

創造主プラジャーパティの一人であるチヤヴァナに炎から創り出された存在である。

 

マダはとてつもなく巨大であり、その口は開けば上顎が天に達するとまで言われている。

 

ヴァジュラを振りかざして襲い掛かるインドラも彼に恐れをなして平伏したとされた。

 

「な、なんだこの巨人は!?炎の巨人族の長であるスルトに匹敵する程の大きさだぞ!!」

 

「スルト?ブッブー、大外れ!!私の名はマダ!!間違えた貴方様は罰ゲーム開始!!」

 

50メートルを誇る巨体を持ち、四本の腕と背中には車輪を背負う巨人が剛腕を振り上げる。

 

「ゴフゥ!!?」

 

燃える鉄拳を浴びたフェンリルが倒れ込むが、母親の前で無様を晒すまいと立ち上がってくる。

 

「面白い……かかってくるがいい!!霜の巨人と違い、燃え上がる炎を宿した巨人よ!!」

 

「オーケーベイベェ、今後ともよろしくお願い奉りたい所存!!」

 

網目の焚火台のような頭部をしたマダの頭から業火が噴き上がる。

 

迎え撃つフェンリルであるが横からは跳躍したオルトロスと刀を構えるライドウが迫る。

 

「…シジマを代表した悪魔の一体だったマダまで使役出来るか。あっちは任せても大丈夫だな」

 

「我ラハウシロノ強敵ヲタオスコトニ専念シロ!!」

 

「他を心配している暇などありませんよ!悪魔の千里眼を用いて西の方角を見るがいい!!」

 

ルイーザに促された人修羅が顔を夜空に向ければ彼の顔が驚愕していく。

 

「ま…まさか……東京を焼いたクリスマスの夜がまた起こるのか!?」

 

悪魔の目が遠くの空に見たものとは東京に迫りくる10機のグローブマスターIIIの群れ。

 

貨物室のハッチが次々と開いていき、四つの大型パレットに積まれた積み荷を投下していく。

 

積まれていた積み荷とは長射程巡航空対地ミサイルである。

 

パラシュートが開いたカーゴから次々と空中に発射された巡行空対地ミサイルが東京に迫る。

 

これはアメリカ空軍が開発中のラピッド・ドラゴンであり、輸送機を攻撃機にするものなのだ。

 

一機につき36発の巡行ミサイルを搭載するものが10機の輸送機から次々と発射される。

 

ならば東京に飛来する巡行ミサイルの合計数は360発となるだろう。

 

「これがユダヤ帝国アメリカの植民地でしかなかった……日本の現実なのか……」

 

1959年那覇空軍基地で米軍は核弾頭を装備したミサイルを誤発射。

 

ミサイルは海に落ちて放射能漏れが起きているかもしれないが日本はアメリカに逆らえない。

 

1995年~96年、米海兵隊が150発の25ミリ劣化ウラン徹甲焼夷貫通弾を発射。

 

久米島北東の島々を汚染するが日本はアメリカに逆らえない。

 

米軍機の訓練はドイツやイタリアにおいて地元住民の許可を得てからやっている。

 

アメリカ本土では飛行訓練禁止地域があり、住宅地や猿の生息地は禁止されている。

 

しかし日本において米軍機は平気で訓練している光景から見て()()()()()()()だということだ。

 

「なんて支配地域に生まれちまったんだよ……俺達日本人はよぉぉぉーーーッッ!!!」

 

「オ、オイ!!ドコニ行ク気ダ!!?」

 

ケルベロスから跳躍した人修羅は近くのビルの屋上に着地して全身に魔力を溜め込んでいく。

 

無数の魔弾を全身から放つゼロスビートを用いて迎撃しようとするがルイーザが許さない。

 

「くそっ!!邪魔するなぁ!!」

 

飛来してきた12本の魔剣が襲い掛かってくるが怨霊剣を用いて弾き続ける。

 

それだけでなく高速道路から飛び出たスレイプニルまで屋上に上がってきて襲い掛かっていく。

 

<ライドウ!!俺の代わりに西側の空を迎撃してくれ!!ミサイルの雨が迫っている!!>

 

<な、なんだとぉ!!?>

 

人修羅の念話を受け取ったライドウはマダに向かって迎撃しろと叫ぶ。

 

「なんと!!お空の彼方から飛来してくるのは大量の矢?いや、ミサイル!?」

 

夜空に目掛けて四つの腕から広域業火を放とうとするがフェンリルが突撃してきて倒れ込む。

 

「邪魔はさせんぞ!!この国の首都が滅びるのを大人しく見物していろ!!」

 

「グヌヌ……邪魔立ては許しませんぞぉ!!」

 

ルイーザ達の妨害に合う中、ついに大量の巡航ミサイルが東京に降り注ぐこととなる。

 

<<ギャァァァァァーーッッ!!!>>

 

革命部隊が占拠していた国会や内閣、各省庁や大手メディア等が次々と吹き飛んでいく。

 

<<キャァァァァーーーーッッ!!!>>

 

メディアを占拠する部隊と戦ったタルト達や防衛省の地下壕にいた悪魔少女達が悲鳴を上げる。

 

彼女達は連続したミサイルの大爆発によって生き埋めになるしかない状態となるのだ。

 

<<ヒィィィィーーーーッッ!!!>>

 

ミサイルの狙いはそれだけでなく、東京の主要施設にも次々と飛来して大爆発する。

 

爆発に巻き込まれて死ぬ大勢の人々、瓦礫に飲まれて死ぬ大勢の人々の叫びが木霊していく。

 

「やめろぉぉぉぉーーーーッッ!!!」

 

絶叫する人修羅の目の前で広がる光景こそ、かつての米軍がもたらした東京大空襲の再来。

 

昭和の悪夢が令和で蘇った地獄に錯乱する彼がルイーザから逃げるようにしてビルを飛ぶ。

 

何処か彼女の手の届かない位置にまで移動してゼロスビートを放とうとするが背後が危ない。

 

「ぐはぁ!!!」

 

背中を見せた愚か者を容赦なく斬り捨てたルイーザが彼を飛び越えていく。

 

血を撒き散らしながら落ちていく人修羅が倒れた位置は渋谷区エリア。

 

ここはアリナとほむらが戦っている地域だったようだ。

 

「ハァ!ハァ!ハァ……ッッ!!!」

 

背中から大量に血を流す人修羅が俯けに倒れたままだが起き上がろうとしていく。

 

霞んだ目に映る光景とは魔法少女の虐殺者として東京を生きた頃の記憶の光景。

 

「俺は…誰も守れない…人間達を救えない…悪に堕ちた魔法少女達ですら…救えない…!!」

 

紅に染まった修羅がもたらしたのは大殺戮だけでしかなく、結局は()()()()()()()()()

 

東京の守護者を気取ろうと人間を守れない、魔法少女達でさえ守れない。

 

かつてのボルテクス界と同じく、人修羅は誰も守れない現実に打ちのめされていく。

 

「誰かを…誰かを救わせてくれ…こんな俺でも…誰かを…救わせてくれぇぇぇ……ッッ!!」

 

金色の目から大粒の涙が零れ落ちていく中、爆発が起きた現場でビルが倒壊していく。

 

その光景を見た人修羅の目に映ったのは地上に向けて落ちていく魔法少女の姿。

 

突然体中に力が湧いた人修羅は最後の足掻きとばかりに立ち上がって駆け抜けていった。

 




メガテンシリーズでも屈指のド不幸主人公と言われる人修羅君らしく誰も守れない末路こそ混沌王ルートですよね!
何度繰り返してもまどかも見滝原市も守れない暁美ほむらちゃんと同じ苦しみを与えたい!(虚淵脳)
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