人修羅×まどマギ まどマギにメガテン足して世界再構築   作:チャーシュー麺愉悦部

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2話 魔法少女

どれだけの時間を彷徨ったのだろうか?

 

何処の街に赴いても不審者扱いされ、その街に居場所を感じられずに去っていく。

 

心無い人間達に絡まれては一方的に痛めつけられてしまうが、彼は無抵抗を続けてしまう。

 

抵抗する気力さえ出てこない彼はお金さえ所有しておらず、路地裏に置き去りにされる。

 

(体の痛みなんて……何も感じねぇ……)

 

人間に痛めつけられた程度では悪魔の体はびくともしない。

 

それでもやり場のない心の苦しみが痛くて堪らない表情をしながら彼は倒れてしまう。

 

体は食べ物を食べなくても動くことが出来る程に丈夫のようだが、悪魔は欲望の生き物である。

 

「悪魔の体でも空腹という欲望だけはついてきやがるか……クソッタレ」

 

公園の水以外は何も口にはしない生活が続き、尚紀の衣服も汚れきっている。

 

何処に向かい、何処で何をすればいいのかも今の彼では分からない。

 

ついには何処かの街の路地裏に座り込んでしまったようだ。

 

「…もう立ち上がって歩く気持ちになれない。歩いて進もうが……何処にも俺の居場所は無い」

 

無くしたくないモノを無くしてしまった悲惨な者、それが嘉嶋尚紀。

 

もう何も信じられないと心が凍り付いた彼に追い打ちをかけるようにして雨が降ってくる。

 

ずぶ濡れになっていくジャケットのパーカーで覆われた顔が怒りによって食いしばられていく。

 

心の中にはどす黒い何かが吹き上げようとしているようだ。

 

「この世界が何であれ……もうどうでもいい!もう俺には……関係ないことだッ!!」

 

やり場のない怒りを叫んでしまうが、通行人は浮浪者の叫びに白い眼差しを向けるのみ。

 

俯いたまま黙り込んでいたが、前方に人の気配を感じて顔を上げていく。

 

差し伸べられているのは左手であり、()()()()()()()()()()()()()()()

 

右手に傘を持った少女が手を差し伸べていたようだ。

 

「大丈夫ですか……?」

 

謎の少女は微笑んだまま彼に語りかけてくれる。

 

全てを失った尚紀の元に新たな運命の螺旋が今、訪れてしまった。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――

 

何処かの学生服を着た少女であるが、その少女はとても美しい見た目をしている。

 

真っ直ぐな前髪にお尻まであるとても長い後ろ髪は金髪であり、両目も青みがかっている。

 

(この女……何者だ?浮浪者みたいな俺を嘲笑いにでも来たのか?)

 

差し伸べられた左手であるが被害妄想に苦しむ彼は右手で払いのけてしまう。

 

「俺に……関わるな」

 

目深く被ったフードの影から見えるのは睨むような視線。

 

彼女は少し困ったような顔をした後、右手に持っていた傘を手渡してくる。

 

「あなたの事が心配です。風邪……ひきますよ?」

 

彼女は強引に傘を渡して微笑んだ後、路地裏から走り去っていく。

 

「おい、待て!こんなもの……俺はいらない!」

 

彼の呼びかけにも応じずに去っていく後ろ姿しか見えない。

 

風邪をひくと他人を心配しながらも自分はずぶ濡れで帰っていく。

 

「……なんてお人好しな女なんだ」

 

苛立ちを感じてしまうが、それでも凍り付いた彼の心に温かさが滲んでくる。

 

「この世界で……初めて人に優しくされた……」

 

立ち上がる気力も出なかった体であったが、力が入ったことで立ち上がってくれる。

 

「こんな傘のほどこしは受け取れない。まだ遠くには行っていないだろう」

 

舌打ちをした尚紀は謎の少女の後を追いかけていくのだ。

 

「見当たらないな……か細い体をしている癖に、思ったよりも動きが早い」

 

彼女を探して辺りを探し続けるが、不意に何かを感じ取る。

 

「これは……悪魔の魔力?いや、違う……ボルテクス界の悪魔とは違う悪魔なのか?」

 

今まで意識するキッカケがなかったせいで気が付かなかったが、たしかに感じている。

 

路地裏に入った前方空間には見慣れない結界が構築されていたようだ。

 

「魔人の結界とは明らかに違うな。今まで見たこともない……」

 

その中で二つの魔力がぶつかり合っているのが悪魔の彼には分かってしまう。

 

傘を分かる場所に置き、結界の中へと足を踏み入れていくのだ。

 

そこは奇妙な空間であり、例えるなら絵本世界の中に現実の置物をぶちまけたような空間だ。

 

明らかに尚紀が見てきた悪魔の結界とは異質な世界であろう。

 

奥から感じる二つの魔力の元に歩いていくと、地面に転がっている無数の何かに気が付く。

 

「なんだ?この手足や頭部をデタラメに繋ぎ合わせたような人形共は…?」

 

頭部パーツも醜悪であり、ホラー映画にでも出てくるような顔つきをしている。

 

「メルヘンな空間なら……可愛らしい人形でも置いとけよな」

 

それは叶わない願いであろう。

 

使()()()達は決して()()を満たすモノを与えないからだ。

 

使い魔達の亡骸を確認していた時、何かを見つけ出す。

 

「鋭利な何かで切断されたような跡が残っている……見たことあるな」

 

切断面を見たことで尚紀は一つの確信を持つことが出来る。

 

その切断面は剣のような道具でつけられるものではなく、風の魔法の類であったのだ。

 

「やはり……この世界にも俺以外の悪魔がいたようだ」

 

彼はまだ見ぬ悪魔の姿を求めながら結界の奥へと足を進めていった。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――

 

「この奥がどうやら結界の最奥のようだ」

 

広大な空間を見れば周りはグロテスクな人形で埋め尽くされている。

 

その中央を見ると一人の少女と魔女と呼ばれる存在を目撃するのだ。

 

「あれは……なんだ?俺が見てきた悪魔とは雰囲気が違う…」

 

まるでグロテスクな水彩画から形が浮かび上がったような醜悪な見た目。

 

およそ生物とは程遠いだろう、悪夢の絵本から飛び出して形になったような怪物なのだ。

 

「あんなモノはボルテクス界やアマラ深界でも見たことが無い……」

 

そしてもう一人の少女に目を向けてみると怪訝な表情を浮かべてしまう。

 

「なんだあの見た目……まるで変身ヒロインのコスプレみたいだな…?」

 

しかし彼女は彼がよく知る魔法とよく似た力を用いて戦っているようだ。

 

「悪魔の風の魔法と同じ類に見える…だがあの魔法の使い方はなんだ?まるで魔法の応用だ…」

 

彼女は体に風を纏わせながら疾風のように駆け巡る。

 

魔女の猛攻を一切受けない程の回避力は歴戦の悪魔から見ても一目置ける存在であろう。

 

「あんな魔法の使い方もあるんだな……待て、あの女は!?」

 

傘をくれた少女と同じ顔をしている事に気がついた彼であったが未だに状況が飲み込めない。

 

「…あの二つは何なんだ?まるで変身ヒロインモノのサブカル世界にでも来たようだな…」

 

彼女は魔女の一撃を潜り抜け、飛翔とまで呼べる程の跳躍を見せる。

 

着地して後ろを振り向く彼女の現在位置は尚紀の手前空間。

 

魔女と対峙する彼女の後ろでは人形の物陰に隠れて様子を見ている尚紀がいるのだ。

 

「くっ……この魔女は体が硬い!魔法が通じない!」

 

(魔女?あの女はそう口にしたのか?)

 

魔女と呼ばれる存在には彼も出会ったことがある。

 

(俺の知っているのは悪魔である魔女……この世界の魔女と呼ばれる存在は違うのか?)

 

この世界の魔女と呼ばれる存在の正体とは、人修羅として生きた男が知る魔女ではない。

 

人形の魔女と呼ばれる存在は悪魔とよく似た存在ではあったが明らかに違う存在だったのだ。

 

「この戦いはあのコスプレ女の決め手に欠ける勝負になるな……どうする?助けるか…?」

 

彼が思考している間にも彼女と魔女の戦いはさらに激しさを増していく。

 

「ハァァァーーッ!」

 

疾風のように跳躍し、魔女の猛攻を潜り抜け人形の魔女の腕に飛び移る。

 

人形の魔女はそれを払いのけようと巨大な手をぶつけて来るが、彼女はそこにはもういない。

 

魔女の背後に回り込み、足の関節部分に右腕を振るい、カマイタチの斬撃を発射。

 

膝関節に当たり魔女の体勢が崩れ、倒れ込んだ。

 

「いける!」

 

既に背後から移動していた彼女は、両腕を交差して持ち上げ一気に背中側まで振り下ろす。

 

魔女の周りから巨大な竜巻が発生し、魔女の巨体が宙を舞い一気に地面に叩きつけられる。

 

「あれだけの質量がある人形です。自重の重さと衝撃でバラバラになるはず・・・」

 

予想通り、人形の魔女は激突した衝撃でバラバラ。

 

彼は彼女の風の魔法を見届けたようだ。

 

「俺も風の魔法は使えるが、あいつほど器用には使えないな……」

 

彼女は安堵の表情を浮かべ、踵を返し彼の元へ歩いていく。

 

「魔女結界が消えたら()()()()()()()も手に入る。ようやく魔力が回復出来ますね」

 

しかし、まだ終わりではない。

 

「えっ……?」

 

バラバラになった魔女の元に意地悪な使い魔達が無数に現れてくる。

 

人形の魔女をデタラメに継ぎ接ぎしていくのだ。

 

「そ、そんな……あれだけ破壊したのに、まだ動けるんですか!?」

 

原型を留めない形で再生されていく。

 

人形の魔女の継ぎ接ぎの隙間から見えるのは人形の内側に通すテンションゴムのようなロープ。

 

それらが無数に飛び出し、彼女を拘束してしまう。

 

「そんな……こんなところで、私は死ぬの……?」

 

人形魔女の関節が逆に向いた右腕が無慈悲に振り下ろされようとしている。

 

その光景に対する彼は選択を迷わないだろう。

 

「俺に力を貸せ……マサカドゥス!」

 

彼の叫びに対し、反応も起こらない状況に対して困惑した顔つきとなる。

 

「馬鹿な!?俺はマサカドゥスを吐き出してなんていないぞ!」

 

かつてのダンテの一撃に貫かれた時、マサカドゥスに何かが起こったのか?

 

それが今の彼の姿と関係しているのかと疑問を感じているのだろう。

 

しかしそれを考えている暇などは無い。

 

(俺は……()()()()()()()()()

 

記憶の中にフラッシュバックしたのはボルテクス界で救えなかった大切な人達。

 

自分への怒りが爆発すると同時に、彼の右手には24個の悪魔の力を感じていく。

 

「マサカドゥスに何が起こったかは分からない……だが、俺にはまだ力がある!」

 

人修羅に宿り、ボルテクス界を共に戦い抜いた力こそ彼を悪魔に作り替えた()()()()である。

 

彼は迷わず最初に寄生されたマガタマ、『マロガレ』を飲み込むのであった。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――

 

無慈悲に持ち上げられる歪な魔女の右腕を見上げ、彼女は死を覚悟する。

 

目を瞑って怯えていたのだが、それは起こるのだ。

 

「え……?私……まだ生きている……?」

 

振り下ろされた魔女の右腕を左手で受け止めるのはパーカーを被った少年の姿。

 

「貴方は……?」

 

魔女の右腕を受け止めている左手は()()()()()()()のようなものが見えるだろう。

 

パーカーで隠れた彼の()()()()()()()が魔女へと向けられる。

 

「よぉ、デク人形。悪趣味もそこまでいくと、むしろ清々しいぐらいに似合うぜ」

 

魔女の右腕を力任せにどかせる。

 

刹那、彼は一気に魔女の懐に踏み込んでいく。

 

鈍化する世界。

 

発光する入れ墨が浮かんだ右手の拳が握り込まれていく。

 

「見せてやる……これが俺の力だ!!」

 

強大なる悪魔の力を用いて一気に右フックパンチを打ち込む。

 

魔女の巨体が宙を舞い、猛スピードで壁に叩きつけられる。

 

彼女があれだけ魔法を浴びせても傷一つつけられなかった魔女の体が粉々となっている。

 

それでも魔女の使い魔達が人形の魔女の元に集まり始め、体を継ぎ接ぎし始めるのだ。

 

「随分と働き者の人形師共だな?だがもう……このボロ人形は諦めな」

 

猛スピードで魔女に向かって駆けてゆく。

 

顔には発光する入れ墨まで浮かんでいく。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、パーカーを押しのけ彼の素顔を表す。

 

パーカージャケットを投げ捨てると同時に大きく跳躍。

 

全身に発光する入れ墨が浮かんだ悪魔は、魔女にめがけて右手を大きく振りかぶる。

 

「終わりだぁ!!」

 

鋼鉄の如き悪魔の鉤爪『アイアンクロウ』によって魔女の体は完全に粉砕されるのだ。

 

「そ、そんな……なんて一撃なの!?魔女結界空間を……引き裂いた!?」

 

尚紀は数々の死線を超えてきた悪魔である。

 

神や魔王とも戦い、コトワリの神々や神霊とも戦った者。

 

大いなる闇に認められた彼の力は究極の悪魔の力であるマサカドゥスが無かろうが問題ない。

 

この程度の存在に後れを取る悪魔ではなかったのだろう。

 

「どうやらコイツは俺の知っている魔女共じゃなかったようだ……」

 

魔女を屠り、彼女の元に歩いてくるのは少年の姿をした悪魔。

 

彼女はただ呆然と彼を見つめている。

 

(魔女でも、魔法少女でもない存在……何者なの?)

 

頭に疑問が浮かび続けるが、これだけは分かるだろう。

 

(私……彼に命を救われたんですね)

 

「おいお前、呆けてんじゃねーよ」

 

「えっ?あ、すいません!それより魔女の結界が消えます!忘れ物がないようにして下さい!」

 

「この結界に何かを残したら…結界ごと消えてしまうということか?」

 

「急いで下さい!」

 

脱ぎ捨てたパーカージャケットを着込み、二人で魔女結界から抜け出す。

 

二人が結界から出てきたのを合図に結界世界は消失していく。

 

彼女は落ちていたグリーフシードを拾い、魔法少女の姿からさっきの学生服の姿に戻る。

 

「………」

 

彼は静かに彼女を見つめ続ける。

 

彼女も言葉が見つからないのか、光る入れ墨が浮かんだ顔と金色の瞳を見つめ続ける。

 

「……行儀のいい光景じゃない。見たくないなら見るな」

 

「えっ…?」

 

彼の喉元から何かがせり上がってくるのが彼女には見えるだろう。

 

口から地面に向けて何かを吐き出し、地面で蠢くのは寄生生物めいたマガタマである。

 

「これは……?貴方は一体……」

 

恐ろしい魔力を感じさせる蠢く虫のように見える物体とは何かを理解する知恵は彼女にはない。

 

「マガタマって言っても……お前には分からないよな」

 

深碧の炎のようなものにマガタマは包まれた後、消えてしまう。

 

彼の右手の中に眠る同じマガタマ達の元へと戻っていったのだろう。

 

「嘘…?光った入れ墨が消えていく…?首裏の角まで首の中にめり込んで隠れていく…?」

 

「見たくないなら見るなと言ったはずだが?」

 

「ご、ごめんなさい……あれ?もしかして、貴方はさっきの路地裏にいた……?」

 

人間の姿に戻った彼の顔とその服装から見て、傘をあげた少年だと彼女は気がついたようだ。

 

用事を済ませた彼は溜息をついた後、その場を去っていく。

 

そのように映ったようだが彼の姿がまた彼女の元まで戻ってきたようだ。

 

その右手には傘が丸められて握られている。

 

「これはお前のものだ。俺には必要ないから返す」

 

強引に傘を突き返す彼の姿を見て、ようやく彼女は微笑んでくれる。

 

「貴方は……私の傘を返すために、わざわざ魔女結界の中に?」

 

「……それはついでだ」

 

バツが悪うそうに頭をかく彼の姿を見た彼女はようやく安心出来たのか、笑顔を向けてくれた。

 




読んで頂き、有難うございます。
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