人修羅×まどマギ まどマギにメガテン足して世界再構築   作:チャーシュー麺愉悦部

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29話 炎のクリスマス

足立区、山手線と続く無差別テロ事件の連鎖は連日のように報道されていく。

 

警察の捜査も難航し、東京は不穏な空気に包まれていくようだ。

 

だが政治やニュースに興味が無い者達も多く、TVに映る事件も対岸の火事となってしまう。

 

月日も変わり、クリスマスがもうすぐ訪れる時期の聖探偵事務所では別の事件に着目が起こる。

 

「SNSに不穏な投稿だと?」

 

「ええ、これを見て」

 

丈二が外出している中、尚紀は瑠偉の後ろでPCモニターに映るSNS画面を見つめる。

 

「今年のクリスマスは、空から素敵な黒いサンタが現れて、プレゼントをばら撒くだと?」

 

「直接的犯行声明ではなく何が起こるか分からないという表現を使うのは十中八九魔法少女よ」

 

「連中は秘密主義だからな。魔法なんて文言を入れても不特定多数から馬鹿にされて終わる」

 

「警視庁のサイバーポリスも事件性がある書き込みでないと動かないわね」

 

「英語による犯行声明か…ペンタグラム連中の中に英語を喋る奴らがいる」

 

「この投稿を調べるとしたら丈二が詳しいと思うわよ」

 

「なんだ、俺がどうかしたのか?」

 

外出から戻った丈二が二人の後ろに回り込んでモニターを見つめる。

 

「丈二、この呟きを投稿した奴を調べたい」

 

「内容からみて事件性がある投稿だな…テロ事件が起きてるし警戒心を持って構わないと思う」

 

「IPアドレスの捜査を行いたいんだが、何かツテはあるか?」

 

「友人の中にネット犯罪に詳しい弁護士がいる」

 

「これは俺からの依頼で構わない。プロバイダーへの照会を頼みたい」

 

「分かった。テロ事件で大勢亡くなったんだ…これ以上連中の好きにはさせないさ」

 

後日、弁護士が動いてくれる事になるだろう。

 

民事上の請求権を行使したが発信者情報開示は民事上の問題であり断られる。

 

その場合は裁判上の請求手続きとなり、これも弁護士が動いてくれたようだ。

 

「情報開示内容が届いた。どうやらこの投稿はネットカフェからの投稿みたいだぞ」

 

「場所は分かるか?」

 

「勿論だ。住所はここに書いてある」

 

メモを受け取り、探偵の尚紀はネットカフェに赴く。

 

「ああ、覚えている。その日の利用客の中でな、妙な姿をした外国人少女が来店したよ」

 

「どんな少女だ?」

 

「片言の日本語を喋ったがネットゲームを始めだしたら悪辣暴言を店内に撒き散らしやがった」

 

「それだけか?他に何か気がついた事とかはないか?」

 

「そうだな…クリスマスがどうとか言ってた気がしたが、英語だし内容はよく分からなかった」

 

「店長、掃除をしてた時に横を通ったんすけど、ゲームを始める前の彼女はSNSやってました」

 

「SNS…クリスマス…やはりここで犯行声明を投稿したようだな」

 

尚紀は退店して考えを巡らせていく。

 

「恐らくはアリスと名乗った奴の投稿だな。空から何をばら撒く…?」

 

アリスと遭遇した時、自分の頭に降り注いできたモノを思い出した彼は顔をしかめる。

 

「空爆の類なのか…?だとしたら空が開けた場所、そしてクリスマスに関わる通り…」

 

スマホを取り出してクリスマスデートスポットを調べていく。

 

「京六本木ヒルズの通りが怪しいな…あそこは昔からカップルや家族連れが大勢集まる」

 

24日を後日に控えた彼の足取りが早くなる。

 

「ペンタグラム連中は魔法を秘匿しない…大量殺人を行う目的はなんだ?俺への挑発か…?」

 

感情が直ぐに荒れていき、右手が握り締められながら怒りと殺意が撒き散らされていく。

 

最近の尚紀は怒りの感情を制御する事が難しくなっているようだ。

 

「今度こそ必ず先に見つけ出す…産まれてきた事を後悔させてやる!!」

 

 

12月24日の夜。

 

六本木ヒルズタワー前のけやき坂通りは美しいイルミネーションで彩られる。

 

ヒルズ周辺は高級ブランドショップが軒を連ねる都会の一等地のようだ。

 

「今年も変わらない光景だな…千晶や勇と訪れた事もあったよ」

 

今日一日をかけ、周辺をくまなく捜索してみたがペンタグラムの影は見つからない。

 

ヒルズビル玄関近くにあるベンチに座り、考えを巡らせていく。

 

「奴らは転送魔法が使える…後手に回るしかないのが辛いな…」

 

俯いていた顔を上げればクリスマスを楽しむカップル達の姿が大勢見える。

 

去年のクリスマスの時期に戦った魔法少女の姿が悪魔の脳裏を過ってしまうようだ。

 

「…悲しい魔法少女だったな。あの子も愛する人と共に…この輪に加わりたかったろうに…」

 

残酷な運命に弄ばれた少女に思いを馳せていた時、耳をつんざくスピーカー音声が響いてくる。

 

<<Gentlemen!(諸君!)Have I been a good boy?(いい子にしてたかな~?)>>

 

耳鳴りがする程の拡声された声に反応した悪魔が立ち上がる。

 

ヒルズビル屋上展望台を見上げれば、そこにはアリスとアイラの姿。

 

音響非殺傷兵器(エルラド)をスピーカー代わりに使っているようだ。

 

「……ウルサイオト」

 

横のアイラは電子防音イヤーマフを貸してもらって頭に被る。

 

<<Black Santa's coming for you!(黒いサンタが来てくれるぞ)Have fun,(楽しんで!)it's Christmas on fire today!(今日は炎のクリスマスだ)>>

 

「あいつら…何をする気だ!?」

 

悪魔は夜空の彼方に目線を向ける。

 

そこには戦争映画でも見たことがあるだろう黒い機影の姿があった。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――

 

高度8000メートル上空に発生したのは巨大なワームホール。

 

そこから現れるのは黒く巨大な凶鳥の姿。

 

海洋生物にも見える特徴的な全翼をしたステルス戦略爆撃機B2スピリットである。

 

21機しか製造されていない米国のステルス爆撃機が同盟国の空を飛ぶ。

 

「あれが…アリスが言っていた…黒いサンタか!?」

 

爆撃機コックピット内には米国空軍パイロットと兵装担当士官の姿が見える。

 

二人とも洗脳魔法によって支配されているようだ。

 

Prepare to attack.(攻撃準備)

 

Copy that.(了解)

 

けやき坂通りに向けて爆撃アプローチが行われる。

 

Active radar activation.(アクティブレーダー作動)Open the hatch.(ハッチを開け)

 

右側ウェポンベイが開き、爆弾槽が露出。

 

回転式ランチャーに納められた爆弾とはMk84と呼ばれる2000ポンド級爆弾。

 

湾岸戦争においてハンマーと呼ばれる程の破壊力と爆風半径をもつ。

 

Bomb drop.(爆弾投下)

 

六発のハンマーが次々と落下し、精密爆撃が地上を襲う。

 

「やめろぉぉぉぉぉーーーーッッ!!!」

 

尚紀は悪魔化して通りに向かって全力で走る。

 

周りに見られようが遠距離魔法行使で止めようとするが間に合わない。

 

それよりも早く滑空音が近づき、次の瞬間には地上が地獄と化してしまう。

 

「グワァァーーーーッッ!!?」

 

連鎖する大爆発が地上に起こり、悪魔は爆風に飲み込まれてしまう。

 

地面を揺るがす爆発と轟音、巨大な黒煙、建物の倒壊、致死的な破片が撒き散らされる。

 

両腕で顔を覆い、足で踏ん張りながら耐えるが倒壊するビルの瓦礫で下敷きとなっていく。

 

Me~~rry~~Christmas!!(メェェ~リィィクリッスマァァース)Ha--hahahahahahahahaha--!!!(ヒャーハッハッハッハッハ)

 

地上の惨状を見下ろすのは恐ろしき笑みを浮かべる外道に堕ちた魔法少女。

 

地上に広がってしまったのは巨大クレーターの光景。

 

爆撃によって六本木ヒルズ周辺は甚大な被害と化す。

 

周囲に建つ大型商業施設やビルも倒壊し、地獄と化している。

 

ヒルズビルも爆風に晒され、窓ガラスの大半が砕け散る無残な姿だった。

 

「くっ……」

 

瓦礫を押し退けて姿を見せる悪魔が周りを見渡すのだが、凍りつく程の衝撃を浴びる。

 

「あっ……あぁ……」

 

瓦礫に潰された人々、原型を留めない死体、破片と土煙、そして業火。

 

蠢き苦しむ人々の声も無く、全員痛みを感じる暇も無かったようだ。

 

「誰かぁ!!誰か生きている奴はいないのかぁ!!?」

 

必死になって瓦礫を押し退けていくが、惨たらしい死骸しか見つからない。

 

そんな中、一組の家族連れだと思われる死骸を見つける。

 

「…………」

 

人間の形を失った三人家族を見つけた悪魔は声も出せずに震えていく。

 

頭部と両足を失った子供の死骸に覆い被さる両親のように見える悲惨な現場なのだ。

 

呆然とした表情を夜空に向けると巨大ワームホールに収納されていくステルス爆撃機が見える。

 

悪魔の両膝が崩れてしまい、目の前の損壊が激しい子供の死骸が重なって見えてしまう。

 

かつて頭部を破壊された少女と重なって見えた事で再び守れない無力さに打ちひしがれる。

 

「一体……どれだけの人間が死んだ…?どれだけの人生が…魔法少女に奪われた…?」

 

炭化した死骸の手を両手で掴み、握り締めていく。

 

両手に塗れる黒灰、それを強く握り込む時、憤怒の雄叫びが上がる。

 

「アリスゥゥゥゥゥーーーーッッ!!!!」

 

両目の金色が魔法少女の血に飢える真紅の瞳と化す。

 

彼の叫び声はスカイデッキにいるアリス達にも響いてくる。

 

Nice shout out, lover!(いいシャウトね、色男)Try to get this far(ここまで来てみな)

 

弾かれたようにして悪魔は走り出し、ヒルズの屋上を目指す。

 

「魔法少女と呼ぶのもおぞましい!!貴様には地獄すら生温い!!」

 

ペンタグラムとの戦い、それは手段を選ぶ余裕すら与えられない地獄の戦場なのであった。

 

 

瓦礫を超え、ヒルズビルに隣接するミュージアムコーンに向かう。

 

「ヒルズビルのガラスを雷魔法の応用で上る事は出来ないか…殆どが砕けてやがる」

 

倒壊しかけたミュージアムコーン内部に入り、窓ガラスが散乱した通路を進む。

 

ヒルズビル内部に進んでいる時、違和感に気がつく。

 

「おかしい…今日はクリスマスで人が多いはずなのに、逃げ惑う人間と出くわさない…?」

 

ここまで進む過程でも逃げ惑う人々を見かけなかった事に違和感を感じ取る。

 

「いや…今はあの魔法少女を殺すのが先だ!」

 

迷いを払い、エレベーターホールのボタンを押す。

 

エレベーター内に入り、一気に52階へと上昇する。

 

52階センターアトリウムに到着し、外に出た悪魔を迎えた存在達とは?

 

「…こいつらも操られてるのか!?」

 

クリスマスを楽しんでいた大勢の人々が悪魔を出迎えている。

 

その衣服には戦争映画などで見かける恐ろしい道具が備わっているようにも見えるだろう。

 

「人間爆弾か!?」

 

観光客や従業員達が身につけさせられているのはTNT爆弾。

 

体中に粘着テープで固定され、右手には起爆用スイッチが有線接続される。

 

イスラム過激派テロリストが用いた自爆テロ手法と同じであろう。

 

「ワナニカカッタネ」

 

It's a big explosion.(派手に爆発しな)

 

虚ろな目をした民衆達が集団で駆けてくる。

 

悪魔に接敵した瞬間に自爆する構えでは当身を打ち、気絶させる手段は使えない。

 

「くそっ…!!」

 

鈍化する世界。

 

走り迫る人間爆弾。

 

瞬時に状況判断した悪魔は左手を掲げてかつての世界で使った道具の一つを出現させる。

 

<<ギャァァーーーッ!!?>>

 

スタングレネードを投げたのかと見紛う程の激しい閃光が辺りに広がる。

 

この道具は『くらましの玉』と呼ばれ、戦闘から離脱する際に用いられてきた逃走手段。

 

人々が視力を取り戻した頃には彼の姿は消えている。

 

「洗脳されていても、眩い光で目が眩む反応は同じで助かった」

 

洗脳された人々を超えてチケット売り場を進み、スカイデッキに上るエレベーターへ向かう。

 

屋上に辿り着き、電気設備や空調設備が並ぶ階段を登っていく。

 

大きな非常用ヘリポートで悪魔を待ち受けていた魔法少女の姿が目に入ってくる。

 

「キタワネ、アクマ」

 

そこに立つのはアイラだけであり、ヘリポートには高熱で溶けた跡が見える。

 

「ジコショウカイマダ…。ワタシ、アイラ・チャクラバルティ」

 

「俺が殺す奴の名前など、どうでもいい!!アリスは何処だぁ!!」

 

ボードウォークを見渡すがアリスの姿は見えない。

 

「フフ…アノコ、チカクニイルヨ」

 

空港で聞いた事があるだろう、ジェット機の轟音が響いてくる。

 

「ワタシ、アマリタタカウノトクイ、チガウ。ダカラ、アリスニマカセル」

 

I'll take care of the rest,(後は任せな)Ira.(アイラ)

 

<ウン、マカセタ>

 

ソウルジェム同士の念話を交わした後、転送魔法陣を背後に生み出す。

 

「待てっ!!貴様にはチェンシーの居場所を…」

 

「タタカウアイテ、ワタシジャナイヨ。ジャアネ」

 

アイラの姿は魔法陣に入り込み、消え去っていく。

 

次にアイラが現れるのは先程通り超えたヒルズビルシティビューが見える下層エリア。

 

ここでアリスの援護を行う段取りのようだ。

 

「この轟音…ビルの側面から昇ってくる!」

 

轟音を放ちながら現れる戦闘機の姿が見えてくる

 

You're looking good!(いい顔になったわね)You look so good I want to hold you!(抱かれたいぐらい素敵)

 

垂直上昇して現れた戦闘機はF35ライトニングIIである。

 

ステルス性能を持つ西側諸国最新のJSF(統合打撃戦闘機)なのだ。

 

Come on, Jack of Hearts.(さぁ、ハートのジャック)Let the trial begin!(裁判を始めよう)

 

単座コックピット内にはヘルメットディスプレイを装備したアリスがいる。

 

「…高そうな棺桶をフル装備で用意してきたか」

 

This is the beast mode of this plane!(これがこの機体の獣の姿さ)

 

ハードポイントには空対地・空対空ミサイル、それに爆弾や機関砲ポッドが並ぶ。

 

Show me how you die!!(お前の死をあたしに見せろ)

 

高熱をジェットエンジンから噴き出し、ホバーリングしながら機銃掃射してくる。

 

反応した悪魔は側面跳躍し、片手をつく側転を行いながら着地すると同時に黒衣を脱ぎ捨てる。

 

「ここでケリをつけてやる!!」

 

Let's go!!(行くぜ!)

 

回転ノズルを垂直から真後ろに向けながら一気に加速する。

 

地上を焼き払うライトニングの名を持つ鋼鉄の鳥との戦いが始まるのだ。

 

展望台で援護を行うアイラは席に座り、飲みかけジュースを飲みながらガラス越しに観戦する。

 

「マフィアノオシゴト、イソガシイケド…ソロソロ、チェンシー、アバレタイコロダヨネ」

 

彼女に操られた大勢の民衆達が後ろを進んでいく。

 

人間爆弾が悪魔の戦場へと放り込まれる時が訪れようとするのであった。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――

 

スカイデッキに向けて空爆のアプローチを行う。

 

ヘルメットバイザーに投映される機体情報によって機体全体が透かして見える。

 

まるでフライトシューティングゲームの一人称視点であろう。

 

I love it!(最高!)It's a video game now!(テレビゲームそのものね)

 

光学式照準システムにより赤外線とレーザーを使用しての目標捕捉を行う。

 

バイザーに映し出された地上目標に対して空対地ミサイルの発射態勢に移るが光弾が迫る。

 

Whoa!(おっと!)

 

屋上から悪魔が放つのは破邪の光弾の一撃。

 

操縦桿を握るアリスはバレルロール回避を行って回避してくる。

 

Tsk!(チッ!)

 

空爆のタイミングを逃し、屋上を飛行通過していく。

 

「この高さなら遮蔽物は無い!一気に攻めさせてもらう!!」

 

両手を広げながら全身に魔力を溜め込み、両腕を抱え込む姿勢となる。

 

体勢を起き上がらせながら両腕を広げ、纏った光を放つ一撃とは『ゼロスビート』である。

 

放出された無数の光弾の雨がホーミングレーザーのようになりながら敵機を追う。

 

You licked me!!(舐めやがって!)

 

アフターバーナー全開で上昇するが魔弾の雨も猛追してくる。

 

速度は魔弾の方が早く撃墜されるかと思われた時、前方空間にワームホールが開く。

 

目標を見失った無数の魔弾が空の彼方に飛散してしまうようだ。

 

「後ろか!!」

 

悪魔の背後の空に発生したワームホールから飛び出た戦闘機から放たれるのは空対地ミサイル。

 

悪魔は居合の構えを行い、背後に振り向くと同時に放たれるのは死亡遊戯の一撃。

 

Are you serious!?(マジかよ!)

 

光速で迫る光の斬撃がミサイルを切断し、手前上空で爆発する。

 

上空を戦闘機が通過し、再び爆撃のアプローチに移る。

 

宙返り飛行を行い、高高度から爆弾投下態勢を行うだろう。

 

「何だっ!?」

 

迎え討つ構えをしていた悪魔だったが、スカイデッキ入り口から迫る人影に目を向ける。

 

次々と走ってくるのは先程の人間爆弾共であり、驚愕するしかないだろう。

 

「くそっ!逃走道具を使っても…ここじゃ逃げ場がない!!」

 

空から投下されるのはジェイダム(JDAM)精密誘導爆弾。

 

それと同時に迫りくるのは、人間の守護者が守るべき命達の群れ。

 

「く…来るなぁぁーーーッ!!!」

 

接近した人間爆弾達が起爆スイッチを押し、次々と爆発する。

 

落下してきた爆撃も合わさり、スカイデッキが大爆発を起こす。

 

爆発の振動によって下の階のガラスに亀裂が入っていく。

 

「テンジョウ、キシミダシタネ。ココモアブナイ」

 

援護を続ける事を諦め、転送魔法陣を生み出すアイラ。

 

「アリス、ガンバッテネ。ワタシ、マキゾエイヤダカラ、カエルネ」

 

後は全てアリスに放り投げ、薄情にもアイラは去っていくのであった。

 

 

「…I've always wanted to do this, you know.(これがしたかったんだ、あたし)

 

上空を旋回し、スカイデッキの炎上光景を心から楽しむアリス。

 

I wanted to use humans to fight a war.(人間を使って戦争がしたかった)That's why I joined the Pentagram.(その為にペンタグラム入りした)

 

アリスの脳裏に忌まわしい過去の記憶が蘇っていく。

 

彼女の父親は浮気が酷く、いつも母親と喧嘩ばかり。

 

そのせいで母親はいつもアリスを虐待してくる。

 

夫が他の女のところに行くのは可愛くないお前のせいだと体罰を浴びせられる毎日が続く。

 

不思議の国のアリスと名付けられた彼女だが、彼女は自分の可愛さに自信がなかった少女。

 

だから父親は出て行ったのだと小さいながらも自責を感じて自虐的になってしまう。

 

精神を病んだ末にドラッグ廃人となった母親の姿は今でも脳裏を過る時があるようだ。

 

母親が壊れて親戚に預けられようとするのだが誰も引き取ってくれない。

 

米国はリーマンショック以降は国内不況であり、生活費を重くする親戚などいらないという。

 

That's when ......(そんな時に…) ......that perverted bastard showed up.(あの変態野郎が現れたんだ)

 

いい歳して独身の親戚の男がアリスの保護者として名乗りを上げてしまう。

 

その男の好きなものはポルノぐらいしかない性的倒錯した変態ロリコン男だったようだ

 

親戚中から嫌われていた男がどうして幼い彼女を引き取ったか?

 

その理由を思い出すだけでアリスは苦しみの記憶とおぞましい感触が子宮に溢れ出す。

 

<<Oh,(ああ)wonderfully pretty, Alice!(素晴らしく可愛いよアリス)I can't stop cumming!(勃起が収まらない)>>

 

アリスを引き取った男の目的とは、彼女を性的な玩具にするためである。

 

預けられた初日にレイプされたのに誰も助けてくれなかったようだ。

 

<<That's my favorite!(君こそ僕の好みだ)You're my Alice!(君こそ僕のアリスだ)>>

 

I hated myself for feeling pleasure even though it was rape.(レイプなのに気持ちよくなる自分が嫌だった)

 

それでも養育者であるロリコン男がいなければ彼女は生活出来なかった子供に過ぎない。

 

いつしかレイプに対しても恭順し、素直に奉仕するアリスには褒美が与えられていく。

 

ゲーム、映画、ジャンクフードなどが軟禁された彼女が唯一楽しめた娯楽である。

 

そんな性奴隷人生を強いられるうちに抑えられない暴力性を彼女は纏っていく。

 

親の理不尽を壊せる気分に浸るために暴力ゲームや暴力映画を愛するようになってしまう。

 

そんな頃の彼女は一つの妙案を思いつく。

 

正当防衛法を利用してレイプ犯を殺す計画なのだ。

 

レイプ中に暴れて逆上したレイプ犯が銃を持ち出した時に射殺する。

 

彼女は開放されたが、勿論近隣住民から通報されて警察に逮捕される結果となるだろう。

 

裁判の陪審員を味方につけれた事もあり、計画通りに無罪を獲得。

 

自由になれたアリスには理想が芽生えていく。

 

それは暴力ゲームの主役みたいな人生を生きたいという狂人の如き理想である。

 

暴力や戦争ゲームを楽しんできたのなら、それを人間社会に向けて実行したいと願う女と化す。

 

You can shoot and kill people walking by,(歩く人間を撃ち殺し)and take their money.(金を奪える)

 

――I want to eat up all my desires.(欲望を食らいつくしてみたい)

 

――Is that what you want?(それが君の願いかい?)

 

Weapons are good .....(武器はいい…)can destroy a world with no one to protect it!(誰も守ってくれない世界を壊せた)

 

全てを壊し、全てを玩具にし、世界に復讐する。

 

彼女を守ってくれなかった社会に対して今度は自分が暴力を振るう番だと狂人へと堕ちていく。

 

それこそがサイファーを求めた彼女の理想の形。

 

自分の狂った夢を実現するために彼女はペンタグラムメンバーとしてここにいるのであった。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――

 

瓦礫の山となり燃え上がるスカイデッキ。

 

下の階にまで崩れ落ちた悪魔の姿が瓦礫を押し退けて現れる。

 

全身傷だらけとなりながらも憤怒の表情を夜空に向けていく。

 

You're still alive?(まだ生きてたか?)I'll finish you off next time!(次で終わらせる!)

 

再度の爆撃アプローチを行う敵に対して低い言葉が呟かれる。

 

「……殺してやる」

 

迫る敵機を睨む悪魔は左手にくらまし玉を生み出す。

 

次の瞬間、六本木ヒルズから強烈な光が放出されるのだ。

 

Gaaaah!!!(ギャァァァーーッ!)

 

バイザーに映し出された閃光によって強烈なダメージを目に負ってしまう。

 

空間識失調となり、操縦桿操作が乱れた事で機体の角度が下がっていく。

 

<<Pull Up(上昇せよ)>>

 

GPWS(対地接近警報装置)の音声がコックピット内に響き続ける。

 

Damn it!!(くそっ!)

 

勘を頼りに操縦桿を操作しながら機首を上にアップさせる。

 

ヒルズビルにぶつかりそうになった機体が上昇し、回避する事が出来たようだ。

 

Fuck, fuck, fuck!!(クソクソクソ!)

 

光量で傷ついた両目から涙が溢れ続ける顔をアリスは晒している。

 

機体が空を飛び続け、ヒルズビルから南東に向かっていく。

 

「…I'm starting to see it.(見えるようになった)I'm gonna kill that man!!(あの男はぶっ殺す)

 

そんな時、近くに悪魔の魔力を感じ取る。

 

What the hell!?(何だ!)Why are you showing up in this place!?(どうしてこんな場所に現れる)

 

ヘルメットバイザー映像に映し出された戦闘機の背中には悪魔の如き復讐者がいる。

 

「お前を殺してやる…ッッ!!!」

 

雷魔法の応用によって機体に張り付いていたのは悪魔の姿。

 

下に落ちそうな戦闘機がビルに接敵した際に飛び移ったようだ。

 

Oh, my God!!?(なんだとぉ!)

 

機体を空中回転させながら振り払おうとするが悪魔はびくともしない。

 

「貴様に理不尽に殺された…人間達の恐怖を刻んでやる!!」

 

悪魔の全身からショックウェーブが放電されていき、戦闘機を包み込む。

 

Ahhhhhhhhhhhhhhhhhhhh!!!!(キャァァーーーッッ!)

 

コックピットの電子機器が次々と火花を吹いて壊れていく。

 

ヘルメットも放電で破壊され、アリスは脱ぎ捨ててしまう。

 

電子制御を失った機体の機首が下がっていきながら落下していく。

 

Fuck you!!(くそったれ!)

 

射出座席をベイルアウトさせる装置を作動させる。

 

キャノピーが内蔵火薬で大きく外れるが射出座席が作動しない。

 

Why!?(なんで!?)

 

座席を打ち出す推進装置がショートしているのだろう。

 

ハーネスを外し、席から立ち上がりながら迫りくる悪魔に振り向く。

 

mother---fucker----!!!(クソ野郎ぉぉーーっ!)

 

HK416アサルトライフルを二丁取り出しながら構える。

 

Die, die, die, die, die!!!(死ね死ね死ね死ね死ねぇ!)

 

弾丸を撃ちまくるが、防ぎもしない悪魔が迫ってくる。

 

右手からは光剣が放出される時、アリスの死が訪れるだろう。

 

I'm ...... I'm!!(あたしは…あたしは!)

 

「……終わりだ、糞魔法少女」

 

右薙の一閃が放たれる。

 

Oh, ......?(あっ……?)

 

アリスの胸から下が切断され、切り落とされた一部が地上に落下していく。

 

胸から下が残ったアリスの一部を乗せた戦闘機から悪魔は跳躍。

 

右掌に生み出した炎魔法の火球が投げつけられた事で機体は大爆発したようだ。

 

戦闘機の破片が東京湾へと撒き散らされる中、東京湾を一望出来る公園に着地する。

 

その表情は勝利の余韻など欠片も見つからないはず。

 

踵を返し、公園を去っていく悪魔を見かけた者達は恐怖におののいてしまう。

 

「ヒィ!!?」

 

「な、何なのよ…あの恐ろしい顔した入れ墨男は!?」

 

周囲を行き交っていた人々が彼の顔を見て戦慄するのも無理はない。

 

その顔、吐息、それら全てがペンタグラムと名乗る魔法少女達の命に飢えているからであった。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――

 

Am I going to die at .........?(あたし…死ぬのか…?)

 

運送会社の倉庫の裏に倒れ込んだ無残なアリスだが、辛うじて息がある。

 

魔法少女は本体であるソウルジェムを破壊されない限りは即死しないようだ。

 

しかし即死規模の外傷を受けたためかソウルジェムが急速に濁っていく。

 

Am I going to be an ...... asshole witch?(あたし…糞な魔女になるのか)

 

絶望によって死を迎えようとしていた時、何者かがやってくる。

 

Looks like you got beaten up pretty badly, Alice?(派手にやられたようね、アリス)

 

眼鏡を怪しく輝かせるのはペンタグラムのマッド・サイエンティスト魔法少女の姿。

 

その後ろにはヘルメットとガスマスクで頭部を覆い隠すゴーレム達が屹立している。

 

Rebecca ......?(レベッカ…?)You ......!!(貴様…!)

 

口元が歪みながら笑みを浮かべる魔法少女が指を鳴らす。

 

すると二体のゴーレムがアリスに近づいてくる。

 

What the hell are you doing!?(何を…するんだよ!)

 

Don't worry, I'll help you.(大丈夫、私が助けてあげる)

 

グリーフシードが使われて延命処置が施される。

 

軽くなったアリスの髪の毛を掴みながらゴーレムが持ち上げてくる。

 

マッドサイエンティストの手下の姿を見れば自分も同じにされると分かるだろう。

 

Oh, no!(嫌だ!)I don't want to be a monster!!(怪物になんてなりたくない)

 

I'll give you a body that's very American♪(アメリカ人らしい体にしてあげる)

 

レベッカは倉庫の横に止められた運送用小型冷凍車に乗り込む。

 

ゴーレム達はアリスの髪の毛を掴んだまま後ろに乗り込み、発進していくのだ。

 

近くで現場を見守っていたのはキュウべぇであり、ペンタグラムについて疑問を感じてしまう。

 

「ペンタグラム…彼女達は何を目的にしているんだろう?」

 

捨てられたグリーフシードを拾った後、キュウべぇは回収していく。

 

「それに、この街で感じてしまうこの神々しき霊力は……まさか?」

 

端末に過ぎないインキュベーターの脳裏に始祖の記憶がフィードバックされる。

 

その存在とは感情がない彼らでさえも崇拝してしまう存在の記憶。

 

全宇宙を統べる光の秩序を司る存在であった。

 




読んで頂き、有難うございます。
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