人修羅×まどマギ まどマギにメガテン足して世界再構築   作:チャーシュー麺愉悦部

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300話 5月1日の悪夢

一年前の東京において、人修羅は自らの政治思想を完成させるために大虐殺を起こす。

 

東京の魔法少女社会においてはワルプルギスの夜の惨劇として刻まれた事件である。

 

5月1日はワルプルギスの夜として世界でも有名であり、同時にイルミナティが生まれた日。

 

アダム・ヴァイスハウプトが南ドイツのババリアで創設したのが5月1日なのだ。

 

ワルプルギスの夜はハロウィンとも繋がりがあり、元々は古代ケルト人の祝い儀式。

 

暖気の始まりがワルプルギスの夜であり、寒気の始まりがハロウィンという表(・)裏(・)一(・)体(・)の(・)関(・)係(・)だ(・)。

 

古代ケルトを実質的に支配したのがドルイド教であり、両方の祭りが悪魔崇拝と関りが深い。

 

それら悪魔を崇拝する者達が立ち上げたお祭りこそがワルプルギスの夜とハロウィンなのだ。

 

古代ケルトのドルイド祭りの日に生まれたイルミナティによって何が世界にもたらされたのか?

 

それは無神論、無政府主義、社会主義、共産主義の源流ともいえる世界の破壊思想。

 

特権階級無き労働者の祭典として扱われた5月1日こそ、世界を地獄に変えたおぞましい日。

 

その光景が出現したのが今の東京であり、啓明結社が起こした虐殺の歴史に匹敵する程の地獄。

 

一年前をなぞるようにして人修羅はサタンとなり、目の前の敵を全て殺し尽くす悪魔となる。

 

彼らの戦場は既に数えきれない程の人間の血で埋め尽くされ、ハロウィンの起源を彷彿させる。

 

本来のハロウィンは血(・)み(・)ど(・)ろ(・)の(・)不(・)気(・)味(・)な(・)儀(・)式(・)であり、悪魔に生贄を捧げるお祭り。

 

イルミナティ聖誕の5月1日こそ10月31日のハロウィンとも繋がりが深い地(・)獄(・)門(・)であった。

 

……………。

 

「ヒィィィィーーーッッ!!ダメだ姐さん!でっかい巨人とドラゴンが暴れてて近寄れねぇ!」

 

東京脱出の合流地点として選んだ場所は東京湾に面しており、そこは既に戦場となっている。

 

飛行して江東区にまで飛んできたかりん達の直ぐ近くでは巨大悪魔達が大乱戦を繰り返す。

 

合流地点にした聖探偵事務所近くに停泊させてある船もいつ巻き込まれるか分からない状態だ。

 

「諦めちゃダメなの!私は最後まで諦めない…ハロウィンの魔法少女として希望を持つの!!」

 

「俺もハロウィンの悪魔だけど…今日のこの地獄こそが本来のハロウィンの在り方なんだホ…」

 

「えっ……?どういう意味なの…ランタン君…?」

 

江東区から東京に視線を向けるランタンは燃え上がる景色を見ながら灯りを持ち上げる。

 

鬼火を象徴するランタンこそハロウィンの炎であり、目の前の東京のように燃えていく。

 

「ハロウィンの起源はドルイド教のサウィン祭…悪魔に生贄を捧げる血みどろのお祭りだホ…」

 

「ハロウィンもドルイド連中が生み出したものなら…ワルプルギスの夜と同じ悪魔崇拝かよ…」

 

「そんなの嘘なの!私が愛したハロウィンはワルプルギスの夜みたいな邪悪な存在じゃない!」

 

「生贄に選ばれたのは人間や家畜…とくに子供が選ばれたホ。ウィッカーマンに入れるために」

 

御園かりんが今まで口にしてきたトリックオアトリートを本来の意味にすればこうなる。

 

トリック=厄介ごと、悪巧み、悪行、たくらみ、策略。

 

トリート=もてなし、おごり、ごちそう、特別な楽しみ。

 

生(・)贄(・)を(・)捧(・)げ(・)な(・)い(・)と(・)悪(・)い(・)こ(・)と(・)が(・)起(・)こ(・)る(・)。

 

これが本来のトリックオアトリートの意味であり、それを恐れた人々が生贄儀式を繰り返す。

 

ワルプルギスの夜もハロウィンも共に邪悪なルーツがあり、キリスト教がそれを隠してきた。

 

本来のハロウィンの内容を聞かされたかりんの両膝が崩れ落ち、大声で否定してくる。

 

「そんなのデタラメなの!ハロウィンは子供を救うお祭りなの!私の心を救ったお祭りなの!」

 

「…知らぬが仏とはこのことだホ。真実を知ったなら…もう仏の顔で楽しむことは無理だホ…」

 

「悪魔は必ず化(・)け(・)の(・)皮(・)で(・)武(・)装(・)す(・)る(・)…姐さんが信じてたハロウィンも化けの皮だったんですよ…」

 

「嘘なの…!!こんな地獄の光景が本当のハロウィンだったなんて……嘘だと言ってよぉ!!」

 

「啓明結社が生まれたのはワルプルギスの夜の日…ハロウィンとも繋がるドルイドの日だホ…」

 

「だとしたらアリナは…ワルプルギスの夜とハロウィンを求めて啓明結社入りしたのかよ…?」

 

知りたくもなかった歴史の裏側を突きつけられたかりんが泣き喚きながら地面に蹲る。

 

「やだやだぁ!こんな怖いハロウィンよりも楽しいハロウィンをアリナ先輩とやりたかった!」

 

「かりん……」

 

「姐さん……」

 

愛した先輩の覚悟のために送り出した彼女であるが、未だに未練を引きずっている。

 

泣き喚く彼女を慰めることも出来ない悪魔達の元へと走ってきたのはレナ達だったようだ。

 

「かりんちゃん!!無事だったんだね……良かったよぉ~~……」

 

「ちょっとアンタ達!レナの仲間を泣かせてたでしょ!?ぶん殴るわよ!!」

 

「お、落ち着くホ!それよりも他の連中はどうしたホ?俺達だけしか集まってないホ…」

 

レナ達はパールヴァティについて説明してくれる。

 

彼女はミサイルが降り注いだことで生き埋めとなっただろう仲魔達の救出に向かったようだ。

 

「早く東京から出て行こうよ!こんなの戦争だよ…もう私達がどうにか出来る次元じゃない!」

 

「かえでの言う通りよ!レナ達なんて魔法が使えてもただの子供よ…こんな光景狂ってる!!」

 

「俺もこいつらの意見に賛成だホ!ところで…船の操縦を任されてるリズはどうしたホ…?」

 

彼女もタルト達と同じく生き埋めになったため、この場の者では船が操縦出来ない。

 

大人しく待つしかない状態であったのだが、ライドウとスルトの戦いが激しくなっていく。

 

四つの爪に持たれた龍玉の一つである水の龍玉が光り、口から放つのは極雹ビーム攻撃。

 

「ヌォォォォーーーーッッ!!!」

 

弱点属性を浴びたスルトの巨体が倒れ込み、脱出用の船を停泊させている船着き場を襲う。

 

「う……嘘でしょ……?」

 

両膝が崩れて放心状態となるレナが見た光景とはスルトの巨体で船着き場が潰される光景。

 

後から合流したライドウは誘導した場所に脱出手段を用意してたとは気が付かなかったようだ。

 

「そ……そんな……私達……どうやって東京から脱出したらいいの……?」

 

両膝が崩れ落ちた者達が絶望していき、ソウルジェムの濁りが急加速していく。

 

慌てて彼女達の穢れを吸い出すジャックコンビ達の顔も絶望しており、激しく混乱するのだ。

 

「オレ様達はどうしたらいいんだよ…?このまま東京と運命を共にするしかないのかよぉ!?」

 

「人修羅達を信じるしかないホ!言われた通り…合流地点で待ち続けるしかないホ!!」

 

絶望によって打ちひしがれている魔法少女達を絶望死させないよう奮闘していく悪魔達。

 

それはライドウが使役するコウリュウも同じであり、周りを気にする余裕など欠片もない。

 

「ハァ…ハァ…流石はラグナロクを象徴する炎の巨人だ…我を相手にここまで戦うとは…」

 

「コウリュウよ!ライドウから得られるMAGも残りわずかだ!次の一手で勝負をつけよ!」

 

コウリュウの頭部の上で片膝をついているライドウは度重なる悪魔召喚によって疲弊している。

 

ただでさえ負担が大きい二体同時召喚に加え、強大な悪魔を使役するのは無茶が過ぎたのだ。

 

「流石は四神の長だ…その力に敬意を示し、我が最強の一撃をもって焼き尽くそう!!」

 

燃え上がるレーヴァテインを天に掲げたことで天を貫く程の業火が伸びていく。

 

赤き夜空の曇天を貫いた炎が収まった時、世界を焼き尽くせる程の隕石が降り注ぐのだ。

 

『ラグナロク』が迫る中、傷ついたまま天空を舞うコウリュウは絶体絶命となってしまう。

 

そんな中、援軍として駆けつけてくれる存在が空から舞い降りてくれるのだ。

 

「ライドウさんはやらせない!!」

 

現れたのは傷を癒した静香であり、ホウオウに乗ったまま最大出力の一撃を放つ。

 

斬り払うようにして放った剣から生み出されたのは東京の空を覆う程の紅蓮の結界。

 

炎を吸収する結界を張り巡らされたことで燃え上がる隕石の雨が次々と防がれていく。

 

「時女静香!!助太刀に感謝するぞ!!」

 

「こっちは任せなさい!!あの巨人を倒さないと…大勢が殺されてしまう!!」

 

「静香も戦ってくれている……自分だってまだやれる!!」

 

最後の力を振り絞ったライドウが陰陽葛葉を構える。

 

最後の輝きとばかりに刀身からMAGが噴き上がり、コウリュウに力を与えてくれるのだ。

 

「スルトよ!貴様は世界を破壊する巨人!土徳を司る龍神として…貴様だけは滅ぼそう!!」

 

生まれ育った土地を愛する土徳を司るコウリュウの三本角が神々しい光を発していく。

 

「こ…これは一体ッッ!!?」

 

海に立つスルトの周囲に描かれた魔法陣とは太極図であり、眩い光の結界を生み出す。

 

「クワァァァァァァァァァァ!!」

 

雄叫びを上げるコウリュウが放つのは『太極光輪』であり、極大万能属性魔法がスルトを焼く。

 

「バカなァァァーーッッ!!炎を司る我が…我が…焼き尽くされるだとォォォォーーッッ!?」

 

天を貫く光の魔法陣の中で藻掻き苦しむスルトの巨体が消滅していき、その巨体が砕け散る。

 

天に伸びる光と共に膨大なMAGを放出させていく光景を見るライドウが後ろに振り向く。

 

MAGの光を背に陰陽葛葉の刃を振り抜いた後、鞘に仕舞ったようだ。

 

「尚紀……後は任せる。自分もまだまだ……未熟者だ……な……」

 

倒れ込んだライドウはコウリュウにMAGを供給する力を失うが、仲魔はサポートしてくれる。

 

「ゴウトよ…もはや東京はこれまでだ。他の仲魔達が地上にいるなら我の背中に乗せるがいい」

 

「かたじけない…コウリュウ。我らも精一杯だった…周りを助ける余裕などなかったのだ…」

 

決着がついた光景を見た静香も微笑むのだが、神浜で出会った魔法少女達の魔力を感じとる。

 

「この魔力は水波さんと秋野さん…?それに御園さんもいるみたいだけど…?」

 

地上に降りるようホウオウに頼んだ静香が向かうのは尚紀が合流地点として選んだ場所。

 

絶望に打ちひしがれていた魔法少女達の元に空から現れたのは懐かしい者の姿であった。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――

 

混沌王の力を解放した人修羅と魔王ロキの力を全開にしたルイーザは上空で戦っている。

 

両者共に翼から魔力を噴射させてブースター加速したことで地球を飛び越えているのだ。

 

成層圏を超えた地球の周囲で激しく剣戟を繰り返す者達が念話を飛ばし合う。

 

<素晴らしい…素晴らしいぞ!!これ程までの存在こそ…我らが求めた黒き救世主だ!!>

 

宇宙空間の氷微粒子を搔き集めて放つ氷結魔法攻撃は人修羅に対して一切通用しない。

 

マサカドゥス化したマロガレの魔法耐性を超えられないと判断した彼女は万能属性魔法を放つ。

 

次々と放たれるメギドラオンの光が核爆発のように広がる中、メギドを超えた者が迫りくる。

 

<それ程までに俺を求めるか…イルミナティと黒の貴族を支配するエグリゴリ連中は…>

 

身体を一回転させながら背中の外側の両翼を折り畳み、開くと同時にゼロスビートを放つ。

 

放たれた無数の魔弾に対して翼を広げたルイーザは回避行動をとりながらフレアをばら撒く。

 

後方に目掛けてメギドラを無数にばら撒いてホーミングする魔弾を防ぐが上を見上げる。

 

<ハァァァァァァーーーーッッ!!!>

 

回避軌道を呼んでいた人修羅が一気に迫り、右手から放出した光剣でスティンガーを狙う。

 

上空から迫る相手に目掛けて剣を切り上げ、冥界波を放つがルイーザの両目が見開いていく。

 

<馬鹿な……こんなことが……>

 

彼女が放つ物理魔法の一撃ではマサカドゥスの耐性を超えられず、物理無効で防がれる。

 

打つ手がなくなってしまった彼女であるが刃の剣身を向けながら刺突を受け止めてくる。

 

しかしスティンガーは隙を生じぬ二段構えの剣技であり、さらに連続突きが放たれていく。

 

<グワァァァァァーーーーッッ!!!>

 

高速突きのミリオンスタッブを防ぎきれず体と悪魔の翼が次々と貫かれていく。

 

宇宙の真空空間に己の血をばら撒きながら浮かぶ者に対してさらに刺突を行う時がくるのだ。

 

<まだだぁーーーーッッ!!>

 

流血を撒き散らしながらも回避行動を行って刺突を避けたルイーザが人修羅を押し出す。

 

地球に目掛けて落ちる彼の背後から斬りかかってくる者に対して振り向きざまに斬撃を放つ。

 

刃がぶつかり合い鍔迫り合いを起こしながら互いが大気圏に突入していく。

 

<俺を相手に勝ち目がなかろうと抗うか?それでこそだ……それでこそ自由の戦士だ!!>

 

<フフッ…クローンと同じく私も貴方様の生贄になるのだろう。それでも意地を貫く!!>

 

赤く燃え上がりながら地球に落ちてきた彼らは成層圏近くで翼を広げながら飛翔していく。

 

互いが流星の如き移動を行いながら空中で激しい剣戟を行う度に衝撃波が生み出される。

 

これ程までの戦いを地表で行っていたなら東京は壊滅する程の戦場なのだ。

 

「たとえ敗れたとしても…私の死が貴方様をさらに磨き上げる!そのためなら喜んで戦おう!」

 

背中側に展開させてある12本の魔剣を放ち、人修羅の周囲を回転していく。

 

迎え撃つ彼が動きを制止した瞬間、12本の魔剣が一気に刺突を狙ってくる。

 

「スゥゥゥゥ……ハァッッ!!!」

 

居合の構えを行う人修羅が目を閉じ、カッと開いた瞬間に抜刀は終わっている。

 

一回転する円運動によって放つ時空烈閃によって周囲に斬撃の線が浮かび上がっている。

 

迫りくる12本の魔剣は真っ二つになりながら砕け散り、地表に目掛けて落ちるのだ。

 

「フッ……後は捨て身で戦うのみか」

 

納刀し終えた人修羅に目掛けて一気に突っ込んでいき、刹那五月雨斬りを仕掛けてくる。

 

迎え撃つ人修羅は居合状態から無数の斬撃を放ち、空の上で互いの斬撃がぶつかり合っていく。

 

「「ハァァァァァァーーーーッッ!!!」」

 

無数の斬撃線が浮かび上がっては消えていく激しい剣戟空間。

 

ぶつかり合う刃と刃が眩い煌めきを空に生み出す。

 

他の悪魔が割って入ろうものなら細切れになる程の斬撃戦を制したのは人修羅なのだ。

 

「がっ……ッッ!!!」

 

振りかぶった両腕に一閃が決まったことで両腕が切断されて落ちていく。

 

武器も腕も失ったルイーザに目掛けて刀の柄を握り込んだまま右フックを放つ時がくる。

 

「がふっ!!!」

 

殴り飛ばされた彼女が高速で地上に落ちていき、東京湾を超えながら地上に叩きつけられる。

 

倒れた場所は靖国神社の北側にある東京ドームであり、グラウンドを激しく砕いている。

 

天井の屋根を突き破って舞い降りた人修羅が地面に着地した後、こう告げてくるのだ。

 

「…お前も一族から虐げられた末に狂った者だというなら…やり直すつもりはないか?」

 

正義を振りかざして虐殺の限りを尽くした人修羅が学んだこととは結果論の弊害。

 

相手を知る努力をしなかったからこそ悪の魔法少女達を差別し、殺戮の限りを尽くしてしまう。

 

だからこそ、たとえ裏切られる末路になっても一度ぐらいは相手を信じてみたい。

 

それが彼なりの反省から導き出した答えだったが、それを受け取るかどうかは相手次第だ。

 

「クックックッ……ハハハハハ……ハーーハッハッハッハッハッ!!!」

 

貴族風の三角帽子も外れて血を大量に流す頭部が持ち上がっていく。

 

その顔は女なのかと疑ってしまう程にまで醜く歪み、憤怒の形相で罵倒してくる。

 

「私は自分の悪など認めた上で悪行を背負ってきた!それをやり直せだと?何様のつもりだ!」

 

自分の覚悟に泥を塗りたくるような惰弱な優しさに激怒したルイーザが立ち上がってくる。

 

両腕を失い、武器すら失った彼女であるが息を切らせながらも叫んでくるのだ。

 

「他人を信じるな!!疑わなければ我々の餌だ!!悪行を行う者なら容赦なく殺すがいい!!」

 

「それでは魔法少女の虐殺者の頃と変わらない!俺は…俺はもう……ッッ!!」

 

「正解など他人が勝手に生み出すものだ!!悪を背負える程の覚悟があるなら何故迷う!?」

 

「俺もまた…選民主義を貫き通せというのか…?ユダヤ民族やヘブライの天使のように…?」

 

「全てを救う治世など我々だろうが唯一神だろうが不可能だ!そしてそれは貴方様も同じだ!」

 

大きく開けた口から氷の息が溢れ出し、噛み付いて咥えたのは氷の息で生み出した氷剣。

 

たとえ満身創痍であろうとも、ルイーザの心の剣は未だに折れてはいないのだろう。

 

容赦なく殺すがいいと背中を押してくれた悪者の覚悟を受け止めた人修羅が左手の刀を消す。

 

「詫びさせてくれ…ルイーザ。お前の覚悟に泥を塗るような優しさなど…必要なかった!!」

 

両腕で舞うような演舞を見せ、腰を落としながら右手を前に、左手を下に向けて構える。

 

その構えはかつてルシファーに操られたペンタグラムのリーダーだった女の拳法の構えなのだ。

 

「お前の複製や背後にいた啓明結社に操られて死んだ魔法少女の無念…その身に刻んでやる!」

 

極限の殺気が爆発した人修羅の獰猛な顔を見たルイーザは思い出してしまう。

 

資料でしか見た事がなかった魔法少女、チェンシーを思わせる程の凶悪な顔となっている。

 

血に飢えた荒ぶる黒龍と化した男の覚悟ならば啓明結社と混沌の未来を託せるはず。

 

そう感じられたルイーザが目を瞑って微笑んだ後、カッと両目が開いた瞬間に飛び出す。

 

「いくぞォォォォーーーーッッ!!!!」

 

自分の全てを出し尽くす斬撃が決まるよりも先に浴びたのは掌底の一撃。

 

吐血して氷剣を落としたルイーザの胸部に決まった発勁によって胸骨の全てが砕けてしまう。

 

「デヤァァァァァァーーーーーッッ!!!」

 

後退った相手に崩拳の一撃がさらに決まり、弾き飛ばされた女の背後にまで飛翔して回り込む。

 

「ウォォォォォォォーーーーッッ!!!」

 

蹴り飛ばしては高速で移動し、また蹴り飛ばしては移動して次々と連続蹴りを決めていく。

 

影も映らぬ程の高速蹴りこそチェンシーを象徴する無影脚を表せる程の蹴り技なのだ。

 

「終わりにしてやる!!!」

 

弾き飛ばされた先に回り込んだ人修羅のサマーソルトキックが顎に決まる。

 

全身の骨と臓器が破壊された女がドームの天井を砕いて飛んでいく中、人修羅は刀を生む。

 

「死ぬがいい……ルイーザ!!!」

 

腰を落とし居合の構えを行う人修羅の体から深碧の魔力が噴き上がり、強大な波動を放つ。

 

全身から放たれた波動がドームだけでなくその上空まで包み込んだ時、刹那の現象が起きる。

 

無数の斬撃線が静止した時間の中で生み出された後、波動領域に存在する全てのものを断つ。

 

その中にはルイーザの身体も入っており、ドーム球場に立った男が納刀を行う。

 

動き出した世界で起こったのはルイーザだけでなくドーム球場まで細切れとなる光景なのだ。

 

「混沌の未来に……栄光……あ……れ……」

 

全身が切り裂かれて頭部だけとなった女がそう呟いた瞬間、頭部も細切れと化す。

 

バラバラになった彼女の肉片が弾け飛び、膨大なMAGを夜空に向けて放出させる末路となる。

 

それを見送るようにして空を見上げる人修羅は最後にこんな言葉を送ってくれるのだ。

 

「こんな形で出会いたくなかった…それでも…お前のお陰で俺も悪者になれる覚悟が得られた」

 

深碧の魔力が彼の背後に形作った悪魔の影こそ、スパーダの子でありながら悪の道に進んだ者。

 

魔人化したバージルの幻影が消えるのだが、その口元には微かだが笑みが浮かぶ。

 

消え去るバージルの幻影は理解しているのだろう。

 

目的のためなら大虐殺者になれる者だからこそ自分が宿ったのだと分かった末に消えていった。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――

 

人修羅達の死闘を見物していたのは軍事衛星から届く映像や監視カメラ映像を見つめる者達。

 

それを肴に宴を楽しむ黒の貴族やエグリゴリの堕天使、それに大魔王達の姿なのだ。

 

奥の席で座りながら両腕を机に置いたまま組んでいるルシファーの横にはルキフグスもいる。

 

J・ロスチャイルドと融合した彼こそが現在のロスチャイルド一族の当主である。

 

ドイツ家系の唯一の生き残りであったが謀反を企む女が死んだことでほくそ笑む顔をしていた。

 

「…あの子は役目を果たしてくれた。サタンを導く梟としての役割こそが存在理由だったのだ」

 

「私もせいせいしておりますよ。そのために彼女をエグリゴリメンバーに加えたのですね?」

 

「その通りだ。使い捨ての道具であったが、道具は主人の役に立ってこそ価値が生まれる」

 

「私にとっては憎たらしい女でしたが…我らの混沌王殿を磨くに足りる石ころでありましたね」

 

騒がしい状況が続いていたのだが、悪魔である堕天使達の表情が突然変わってしまう。

 

まだ悪魔入りを果たせていない黒の貴族達は何事かと心配しながら大魔王に顔を向けていく。

 

「フッ……遅い到着じゃないか。しかし、ちゃんと予定数は確保出来ているようだ」

 

大魔王達がいる豪華客船の横を通過していくのは世界を変革させるために用意した生贄の群れ。

 

100体に上るマニトゥの群れは大魔王達を無視しながら東京湾を目指していく。

 

死ぬまで飢える彼らが求めるのは絶望の感情エネルギーであるマガツヒのみ。

 

それが膨大に生み出されているのが地獄の戦場と化した東京なのだから無理もないだろう。

 

「彼らの体内に埋め込んだ爆弾の威力で全てのマニトゥを処理出来るのだろうな?」

 

「問題ありません。一体を実験として爆破出来た成果もありますのでご安心下さい」

 

「そうか。では…後はサードインパクトが世界に起こる光景を共に見届けよう」

 

一方、レナ達と合流出来た静香はホウオウに乗りながら他の者達の救出に向かっている。

 

タルト達も無事なようであり、みたま達もセイテンタイセイが掘り出してくれていたようだ。

 

彼女達を乗せれるだけ乗せた後、合流地点に運んでいたのだが膨大な魔力に気が付く。

 

「な……何が迫ってきているの?東京湾の向こう側から……?」

 

恐怖で顔が引きつってしまう静香と同じ表情をしているのは合流地点に運ばれた者も同じだ。

 

「この魔力はたしか…生体エナジー協会で倒したマニトゥのもので間違いない…」

 

「それと同じ魔力が並んで近づいてきているわ…しかも数は……100体も感じさせてくる」

 

「天に不測の風雲、人に不意の禍福は常なり。これから先…何が起こるか俺様も分からねーぞ」

 

「悪魔に祈る神はいませんが…それでも、こんな状況だと何かに縋りつきたくなりますね…」

 

「わたくしも戦いたいですけど…サマナーからMAGを供給されなければ難しいですわね…」

 

恐怖を感じているのはタルトやクーフーリン達だけでなく、他の悪魔少女達も同様である。

 

「ヒィィィィーーーーッッ!!レ…レ…レナちゃん……東京湾を見て!!」

 

「な…な…何なのよ…あの大怪獣軍団は…?こんなのもう…終わりじゃない……ッッ!!」

 

レナとかえでが肉眼で見える程にまで近づいてきたのは浮遊したマニトゥの群れ。

 

その数は100体であり、それらが東京で暴れればもはや誰も生き残れない。

 

「ここまでか…アリナに騙され…ユダにも騙された愚かな自分には…相応しい最後だな…」

 

「十七夜…諦めちゃダメって言いたいところだけど…流石にもう…ダメかもしれないわね…」

 

「諦めるな…みたま、十七夜さん!アタシ達は殺される最後の瞬間まで…希望を信じるんだ!」

 

「ももこさんの言う通りです!ボク達は諦めません…最後は皆で笑い合える未来を信じます!」

 

「あたしはもう…死ぬことは許されない。帰りを待つやちよやみふゆ達のためにも諦めない!」

 

「観鳥さんも必ず生き残る!!ジャーナリストになる夢があるんだ…最後まで諦めないよ!!」

 

東京湾に入り込んできたマニトゥの群れに対して一歩も引かない覚悟を示す少女達。

 

そんな者達だけでなく東京から溢れる絶望の感情さえも喰らおうとする者達が雄叫びを上げる。

 

<<ソウル!!エナジー!!クラウ……スベテヲクラウッッ!!!>>

 

迫りくるマニトゥの群れに気が付いたのは人修羅も同じであり、東京湾に飛び出そうとする。

 

超高速で飛行する彼に目掛けて同じように飛んでくる存在が現れたことで急停止してしまう。

 

「き……貴様はまさか……ッッ!!?」

 

「……久しいではないか、人修羅?ボルテクス界のマントラ軍本営の屋上で出会って以来か?」

 

浮遊しながら道を塞ぐのはバアル神モロクであり、彼から発する魔力で正体を突き止める。

 

「やはり貴様は……ゴズテンノウなのか!!」

 

「如何にも。我はゴズテンノウであり……バアルである」

 

一気に懐に入り込んで勝負をつけようと拳を振り上げるが、カウンターの一撃を浴びる。

 

「グワァァァァァーーーーッッ!!!」

 

マサカドゥス化したマロガレの物理無効を貫通する程の右ストレートパンチを浴びてしまう。

 

一気に弾き飛ばされた人修羅の体が東京の街を砕きながら足立区方面に弾かれてしまうのだ。

 

宙に浮かびながら後ろに振り向いたモロクが黄金の牛兜の内側で不気味な笑みを浮かべていく。

 

「さぁ……やれ、ルシファー。世界を変革させる神霊を召喚するために」

 

100体のマニトゥの全てが東京湾に入り込んだ時、ルシファーは仕上げを行う命令を下す。

 

「……今だ、起爆しろ」

 

大魔王の命令によってすぐさま起爆コードが認証されたことでそれは起こってしまう。

 

<<ガッ………ッッ!!!?>>

 

100体のマニトゥが内側から一斉に大爆発していき、眩い閃光と爆風が迫りくる。

 

<<キャァァァァーーーーッッ!!!>>

 

東京湾に面した江東区で陣取っていたため爆風の直撃を浴びた少女達が事務所ごと吹き飛ぶ。

 

まさか迫りくる大怪獣軍団が突然自爆するなど誰も予想だにしていない状況だったのだ。

 

膨大な爆風を浴びてもびくともしないモロクは爆発が収まった光景を目にするだろう。

 

東京湾の海水まで巻き上げられて大きな穴が開いた東京湾と、空に上る膨大なMAG。

 

そのMAGの量たるや、悪魔ほむらが誕生する時に生み出されたエネルギーに匹敵する程なのだ。

 

「30年かけて搔き集めた魔法少女達の絶望エネルギーだ…魔界を生む母を召喚出来るだろう」

 

世界中の生体エナジー協会が30年かけて拷問を繰り返した末に絞り出した絶望エネルギー。

 

それらを吸収してエネルギーの器として用意したのが量産型マニトゥの存在理由。

 

役目を終えたマニトゥ達の器は破壊されたことで東京に膨大な絶望エネルギーを運んでくれた。

 

ならばその絶望エネルギーを利用しなければならないだろう。

 

風穴が開いた東京湾に大量の海水が流れ込む中、浮かび上がるのは召喚魔法陣。

 

東京湾を覆い尽くす程の巨大な魔法陣が生み出されていく光景が広がっている。

 

巨大魔法陣に吸い寄せられる膨大なMAG。

 

それらを媒介にして、ついに魔界を生む神霊がこの地に顕現する時がきたのだ。

 

5月1日を表すワルプルギスの夜とはハロウィンと同様に悪魔崇拝を表す日。

 

召喚された神霊もまたワルプルギスの夜と同じく恐怖の女神として顕現するのであった。

 




アラディアな円環女神様や、ゴズテンノウなバアルをキャラとして使ったのには理由があるんですよね。
真女神転生3でボスキャラバトルが出来なかったのが非常に不満だったので人修羅と戦わせたいなーという思いから使っております(汗)
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