人修羅×まどマギ まどマギにメガテン足して世界再構築   作:チャーシュー麺愉悦部

302 / 404
301話 死と再生の女神

クババとはシュメール文明の中で王の名前を記録した王名表の中で唯一の女王を起源とする。

 

ク・バウ女王こそがクババと言われており、その名はメソポタミア文明で広く浸透していく。

 

古代都市カルケミシュの守護神、インドでは大地母神として崇められた存在である。

 

手にはザクロが握られ、ローマの博物学者がザクロをカルタゴの林檎と呼んだそうだ。

 

キリスト教ではザクロは希望や不死の象徴などとしても描いており、豊穣や多産の象徴である。

 

クババは禁断の果実を持つと同様に知恵を与える神と言われた所以かもしれない。

 

現在のトルコにあたる古代都市カルケミシュで守護神として祀られているキュベレも同一存在。

 

古代ギリシャやローマでは知恵の保護者として信仰が広がっていき、大地母神となったのだ。

 

クババがキュベレに変容した古代アナトリアでは隕石や立方体の石が神体として祀られていく。

 

そして生まれたブラックキューブ信仰は世界各地に存在を確認出来る宗教的重要存在である。

 

イスラム教のメッカではブラックキューブを祀り、カアバと呼びながら信仰しているのだ。

 

そんなクババの姿を彷彿させる魔法少女こそがアリナ・グレイ。

 

彼女はクババを象徴する立方体を魔法武器とし、その魂の色はルシファーの第三の目の輝き。

 

第三の目は宗教用語で魂の座を表し、彼女のソウルジェムもルシファーになりえる魂だった。

 

「ルシファーが失った第三の目と同じエメラルドの輝きを持った魔法少女よ、覚悟はいいな?」

 

青白い光によって暗闇が照らされた空間こそ邪教の館の心臓部である悪魔合体施設。

 

白煙が昇る中央には繋がり合う三本の柱が立っており、生贄となる者達が捧げられるのだ。

 

「この時をずっと待っていた……アリナが魔法少女を超えられる瞬間を待ってたんだヨネ…」

 

ほむらに撃たれて千切れた右腕からは未だに血が大量に流れ落ちていく。

 

回復を拒んだアリナの顔も青ざめており、息も絶え絶えだが力強い眼差しを浮かべたままだ。

 

「それじゃあ、私は右の柱に上っておくわね。貴女も早く上ってきなさい」

 

アリナと融合する決断をしたキュベレが飛翔しながら右の柱の上に立つ。

 

「ねぇ……フルフルも合体材料として使って欲しいんですケド」

 

「その老いぼれ悪魔も浮かばれるだろう。主人を守って死んだ上で、主人と一つになれるのだ」

 

悪魔合体を執り行うバアルが片手を持ち上げれば左手に持った頭部が浮かんでいく。

 

山羊の頭部は左側の柱の上に置かれるようにして転がったようだ。

 

「三体の物質を悪魔にするには生(・)贄(・)合(・)体(・)を用いる。アリナ、貴様は生贄の台座に載ってもらう」

 

「アハハ…アリナはデビルに捧げられるサクリファイスなワケ?ほんと…ハロウィンだヨネ…」

 

「代償無くして生は無し。天才芸術家として生きた貴様なら、この言葉の意味は分かるな?」

 

「アリナはアーティストとして代償を払ってきた…タイム、労力、あらゆる代償を払ってきた」

 

「契約の天使も世界を延命するために魔法少女という代償を支払ってきた。これが世界構造だ」

 

「そうだヨネ…ワールドは代償を払ってばかり。料理も家畜のライフが代償で支払われる…」

 

「代償を払い、糧としてこそ人や世界は強くなる。戦士達が敵を屠り、強くなれたようにな」

 

「ワ(・)ー(・)ル(・)ド(・)の(・)本(・)質(・)は(・)弱(・)肉(・)強(・)食(・)構(・)造(・)…食物連鎖こそがライフを強くし、ワールドを支えたワケ?」

 

「それこそがヨスガであり、ヘブライの天使がヨスガに与した本質。世(・)界(・)と(・)は(・)選(・)民(・)主(・)義(・)な(・)の(・)だ(・)」

 

「デビルもエンジェルもワールドと同じ…だからこそアリナもワールドのコトワリに従うカラ」

 

ヨスガの本質を理解し、世界のコトワリとして受け入れるとアリナは誓う。

 

そんなアリナに宿ることが出来た橘千晶の魂も誇らしい気持ちとなっていく。

 

<アリナ、私は貴女に宿れて本当に良かったわ。貴女こそが…私のヨスガを継ぐ者なのよ>

 

「アナタのヨスガはワールドの本質。誰がヨスガを否定しても、コトワリには抗えないヨネ」

 

<その通り。力を表現することは世界を表現することなの。貴(・)女(・)も(・)ま(・)た(・)世(・)界(・)と(・)な(・)る(・)の(・)よ(・)>

 

千晶も決心がついたのか、アリナの体から出て行くこともなく共に生贄になると言ってくれる。

 

「かつてのヨスガを率いた女の魂と、その者を背負う女よ。新たなる悪魔誕生を…見届けよう」

 

バアルが片手を向ければアリナの体が浮かび上がっていく。

 

三本の柱の奥にある生贄の柱の上に彼女が載ったことで邪教の館が怪しい儀式を開始するのだ。

 

暗い巨大空間に佇む柱の上空に暗雲の如き雲が生み出されていく。

 

青白く光る円陣が空に浮かんだことで三本の柱が光を放っていく光景が広がるのだ。

 

そして生贄として選ばれたアリナは新たなる転生を果たすための代償を支払う時がくる。

 

「がはっ……ッッ!!?」

 

人体で五芒星を描く状態で寝かされたアリナの体を柱から生み出された槍が貫いていく。

 

魔力の槍が次々とアリナの体を串刺しにしたことで周囲は林檎のような赤い鮮血を生み出す。

 

林檎は輪切りにすれば五芒星が生み出される食べ物であり、彼女も死(・)を(・)用(・)い(・)て(・)林(・)檎(・)を(・)表(・)現(・)す(・)る(・)。

 

林檎とは知恵の象徴である禁断の果実であり、アリナもまたクババを表す存在となるのだ。

 

「リバースの前にデスがある…リバースの前にデスがある…リバースの前にデスがある…」

 

意識が朦朧とするアリナの命が消えていく。

 

しかしその表情は心の底から喜んでいるようにも見えるだろう。

 

南津涼子と同じく仏教的価値観の彼女にとって死とは新たな始まりであり、喜びの瞬間だった。

 

「フッ…アハッ…ハハハハハハハ……アッハハハハハハハハハハッッ!!!」

 

狂気の笑い声を上げていくアリナの体が蒸発するようにして分解されていく。

 

それはフルフルの頭部も同じであり、横の柱に立つキュベレも同じ運命を辿るだろう。

 

「さぁ、私と一つになる者よ。見事に咲いてみせなさい…貴女もまた明けの明星となる女よ」

 

キュベレの体も分解されたことで漆黒の粒子となっていく。

 

三体から生み出された粒子が上空の円陣に吸い込まれていく光景をバアルは見守り続ける。

 

「貴様は美の星である金星を求めた者だ…クババのルーツとは金星のイナンナなのだ」

 

クババやエジプトのイシスはどちらも知恵の女神であり、金星の女神がルーツと言われる。

 

その金星を司る女神こそがシュメール神話のイナンナであり、天の女主人と言われた大地母神。

 

「クババであるキュベレの名はメソポタミアにおいては土星を表す。クロノスの妻と同じだ」

 

古代ギリシャにおいてキュベレは時の翁であるクロノスの妻、レアと同一視されている。

 

知恵、立方体、金星、土星、全ては明けの明星へと繋がる神秘のキーワードなのだ。

 

「死と再生の女神となりし女よ、貴様もまた人修羅と同じくロ(・)ー(・)ド(・)オ(・)ブ(・)ザ(・)リ(・)ン(・)グ(・)となるがいい」

 

ロードオブザリングという異名をもつ土星はサタンの星であり、キュベレもまたサタンである。

 

そして新たに生まれる悪魔もまたサタンであり、マスターテリオンになる資格を持つだろう。

 

<<アリナは……自分の美を実現するために……デビルを着込むワケ……>>

 

上空の円陣から極大の雷が三本柱の屋上へと落ちてくる。

 

膨大な白煙の中に生み出されていたのは大きなブラックキューブの形。

 

<<ワールドのライフは強者のもの……アリナこそが強者……それを表現していく……>>

 

ブラックキューブが内側から開きだし、中から眩い閃光が広がっていく。

 

<<アリナこそがヨスガ、アリナこそがパワー、アリナこそがスターオブビューティー>>

 

ブラックキューブが広がりきった形とは悪魔ほむらが掲げる逆(・)十(・)字(・)架(・)の(・)形(・)。

 

その中央で佇む者の魔法少女服は白くなり、死んで新しい存在になるという死(・)に(・)装(・)束(・)を(・)表(・)す(・)。

 

亡くなった人だけでなく結婚でも白装束を身に纏うのは新しい人生を始める死の儀式のためだ。

 

<<アリナはね、アリナの美を表現出来るなら…アリナ自身でさえアートに出来る女だカラ>>

 

現れた女の頭はまるで山羊の皮を剥ぎ取り、白く染めてベールにしたようなものを被っている。

 

解体した鹿そのものを頭部に被っているとも言えるだろう。

 

鹿の頭部をしたベールにはかつてのソウルジェムに似たエメラルド宝石がぶら下がっている。

 

まるでルシファーが失った第三の目を表現するための宝石のようにも思えるだろう。

 

その者の背後には明(・)け(・)の(・)明(・)星(・)を(・)表(・)せ(・)る(・)程(・)の(・)強(・)い(・)光(・)を(・)生(・)む(・)光(・)輪(・)が浮かび上がっていた。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――

 

「うっ……うぅ……?」

 

東京都と隣接した埼玉県のさいたま市で目が覚めたのはキョウジである。

 

起き上がって周囲を見渡せば人目につきにくい駐車場の一角に停めてある車内だったようだ。

 

「目が覚めたかしら?ミスターキョウジ?」

 

「心配だからついてきて正解だったわね。あんな地獄に放置してたら空爆でお陀仏だったわ」

 

目が覚めた場所とはヤタガラス総本山を襲撃した時に使っていた軽装甲車のような車である。

 

運転席と助手席に座りながら顔を向けてきたのはレイ・レイホゥとナオミだったようだ。

 

「私のイシスが貴方を助けて隣の埼玉県まで運んでくれたのよ。傷ついた体も回復させたわ」

 

「……どうやって俺の居場所を見つけ出せたんだ?」

 

「スーツの襟の裏にGPSシールをあたしが張り付けておいたから居場所を探知出来たのよ」

 

「フン……余計なことをしやがって。礼は言わんぞ、頼んだ覚えはないからな」

 

「相変わらず可愛げのない奴……それで?あんたの目的は果たせたわけ?」

 

「シドは仕留めてきた。俺の目的は果たせたし、後は人修羅共の問題だ。俺の問題ではない」

 

「東京を救いに行っても一銭の稼ぎにもならないなら…あんたは見捨てる男だったわね」

 

「それに私達が戦場となった東京に赴こうともどうにもならない…自衛隊と戦争になるわ」

 

「そうよね…未だに東京の周囲は自衛隊の大部隊に包囲されている…行けば戦闘になるわよ」

 

「そういうことだ、俺達はさっさとずらかるぞ。外には野次馬共も大勢いるだろうからな」

 

撤収する前に外で一服してくるとキョウジは車の扉を開けて外に出る。

 

駐車場の向こう側では近隣住民が悲鳴を上げながらも東京の方角を見物し続けている。

 

スーツから新しい煙草の箱を取り出して封を切り、一本咥えて紫煙をくゆらせながらこう呟く。

 

「フン…首都が燃えようが自分達のケツに火が点いてないなら対岸の火事か…俺も同じだがな」

 

何処までも事なかれ主義な日本人が政治を放置し続けた結果、東京は米軍から攻撃されている。

 

それが分かるキョウジは東京が滅びるのも日本人達の自業自得なのだと考えているのだろう。

 

そんな時、近くの建物の屋上で東京を見物していたイシスが翼を広げながら着地する。

 

「…貴方も感じているのでしょう?東京湾の方角から現れる無数の悪魔達の魔力を?」

 

「…ああ、感じている。東京を終わらせるだろう強大な悪魔の姿を人目見てから帰るつもりだ」

 

「それだけでは終わらないと思う。東京に行った時に感じたわ…私と同じ性質の女神の力をね」

 

「貴様と同じ性質の女神だと…?」

 

「あの魔力がクババだとしたらその力は強大よ。私と同じくイナンナをルーツにする女だから」

 

「関係ないことだ。回復してもらったとはいえ俺はMAG切れだからな。無策で飛び込みはせん」

 

「5月1日のこの日こそ…死と再生が世界にもたらされる。イナンナは死と再生の女神なのよ」

 

「5月1日…アッカド神話だけでなく北欧神話でも重要だ。オーディンが死んだのもこの日だ」

 

「ルーン文字を生み出すためにユグドラシルの樹に逆さ吊りになったまま己の槍で死んだ日ね」

 

「ワルプルギスの夜に合わせてオーダー18を決行した真の狙いとは世(・)界(・)の(・)死(・)と(・)再(・)生(・)なのか?」

 

「そうだと思うわ…東京湾からやってくる悪魔共がそれを行うのかしら…?」

 

「それを見極めた後、俺は撤収する。世界がどうなろうが俺には関係のないことだ」

 

何処までもドライな男に対して大きく溜息をつくイシスであるが、憂いは強くなるばかり。

 

彼女は感じているのだろう。

 

自分のルーツとなる女神が東京に顕現することになるのだと。

 

それを人目見ておきたいと考えていた時、東京の方角から凄まじい閃光が生まれたのであった。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――

 

「どういうことなの…?どうして東京湾から現れたマニトゥ共が全員自爆したのよ…?」

 

膨大な爆風は東京湾周囲だけでなく東京にまで押し寄せてきている。

 

爆風によって東京の街も人々も壊滅的打撃を受けている状況だが悪魔ほむらは無事な様子。

 

夜のオーロラを展開して爆発を反射したことで攻撃を無効化させていたようだ。

 

<…刮目して見るがいい、暁美ほむら。ついに魔界を産む神霊が降臨する時がきた>

 

クロノスの念話の内容を聞いた彼女は爆発が収まった光景を空の上から見物していく。

 

「な…何なの……?東京湾に広がっていく、あの巨大な魔法陣は……?」

 

マニトゥ共から生み出された膨大なMAGを吸い上げ続ける召喚魔法陣が明滅を繰り返す。

 

全身に恐怖が走る程の魔力顕現を感じた悪魔ほむらの顔に冷や汗が生み出されていく。

 

「この魔力…あまりにも巨大よ!!円環のコトワリ程でなくとも近いぐらいの魔力規模だわ!」

 

<現れる神霊こそ古き世界に死を与え、新たな世界を再生させる女神なのじゃ>

 

「現れる存在は…死と再生の女神だというの…?」

 

<5月1日であるワルプルギスの夜こそ死と再生の日。古き世界を破壊し、新たな世界を産む>

 

かつての鹿目まどかや暁美ほむらのように世界を塗り替える程のインパクトを与える女神。

 

その存在がついに顕現することになるのだ。

 

「こ……これは……まさか……ッッ!!!」

 

東京湾に出現した存在はまるでかつての救済の魔女を思わせる程にまで巨大である。

 

天地を貫く程にまで巨大なその全長は高度1万5千mにまで達している。

 

雲の世界を突き抜けるその巨体はあまりにも醜悪そのもの。

 

青紫の巨大な全身には六つの乳房が備わり、背中からは無数の大蛇を思わせる触手が伸びる。

 

異形はそれだけでなく、胴体から上はさらに胴体が生えたような形であり頭部を形成する。

 

首から生えた上半身には両腕は備わっておらず、腹部は子宮を思わせる見た目なのだ。

 

首のない超巨大な女の体に四肢切断された女性の体が頭部として備わっているようだ。

 

<<ヒッヒッフー……ヒッヒッフー……>>

 

出産の痛みを緩和するためのラマーズ法で呼吸を始める存在こそ魔界を産み落とす神霊。

 

体のお腹は大きく膨れ上がっており、もう直ぐ出産が始まるような状況である。

 

出産が辛いのか両膝を曲げて東京湾に浸かっていることから本当の全長はさらに巨大だった。

 

【ティアマト】

 

古代バビロニア神話に登場する原初神の一柱であり、上半身は女性、下半身は蛇の姿をもつ。

 

大海の神格化であり、夫であるアプスーと共に多くの神々を生み出した存在である。

 

産まれた若い神々が夫のアプスーを殺したことでティアマトは激怒し、大戦争となってしまう。

 

強大な呪力と11体の怪物を率いた彼女に対して天空神アヌや知恵と水の神エアも震え上がる。

 

しかしエア(エンキ)の息子であるマルドゥクは果敢に彼女に立ち向かい、彼女を打ち倒す。

 

その巨大な亡骸によって天地の様々なものが形成されたため、死と再生を表す女神だった。

 

「ん……?この魔力は……まさか……」

 

高度1万5千メートル付近の顔を下界に向けてみる。

 

見えたのは空中に浮かんでいるバアル神であり、敬意を示すのか黄金の牛兜を脱いでいる。

 

銀髪の長髪が風で揺れる中、褐色肌の美しい顔を天に向けながら不気味に笑う。

 

その者を見た瞬間、ティアマトの脳裏に忌まわしいマルドゥクの姿が浮かんでしまう。

 

呪わしいマルドゥクと瓜二つの牛神を見たことで陣痛の痛みを超える程の憎しみを生む。

 

バアルという名はマルドゥクを表すベルと同じであり、ど(・)ち(・)ら(・)も(・)主(・)を(・)表(・)す(・)牛(・)神(・)の(・)敬(・)称(・)だ(・)っ(・)た(・)。

 

「マルドゥク……マルドゥクゥゥゥゥーーーーッッ!!!!」

 

天をつんざく程の奇声を上げながら激怒したティアマトの背中の触手が暴れ狂う。

 

東京湾の海底を貫き、次々と東京の大地を貫通しながら地上を破壊していく。

 

もはや東京の滅びは決定したも同然だと判断したデモニカ部隊の指揮官は最後の命令を受ける。

 

「了解しました、西大臣」

 

人間に擬態したまま大臣を務めるアザゼルからの命令を受けた司令官が残酷な命令を下す。

 

<<助けてくれぇぇぇーーッッ!!死にたくないぃぃぃーーーーッッ!!>>

 

東京を囲む自衛隊のバリケード前では焼けただれた姿で群がる東京の人々が暴れていく。

 

もはや隔離することは不可能となった暴徒の群れに対して強制排除許可が下りたのだ。

 

<<ギャァァァァァーーッッ!!!>>

 

96式装輪装甲車に備わった40mm自動榴弾銃やM2重機関銃が次々と発砲されていく。

 

日本人を演じながらも日本に帰属意識を持たないパイナップル軍の兵士達も撃ちまくる。

 

ゲート前は阿鼻叫喚の地獄と化し、もはや生き残れる東京の人々はいないだろう。

 

「クックッ…東京で起こった惨劇は偏向メディアの切り取られた映像だけで演出されるのだ」

 

ゲートに群がっていた暴徒の群れを排除し終えた後、デモニカ部隊の司令官は撤収命令を下す。

 

後は米軍と自衛隊の隠蔽工作部隊が上手くやってくれるだろうと思いながら去っていくのだ。

 

上空では電子戦機であるグラウラーが飛んでおり、ハードポイントに電波妨害装置が備わる。

 

電波がなければただの板切れなスマホを持つしかない東京の人々は虐殺の証拠を残せないのだ。

 

この世の地獄の光景を空に浮かびながら見つめる悪魔ほむらの脳裏に浮かぶのはかつての記憶。

 

ワルプルギスの夜の暴風によって壊滅した見滝原市の光景が今の東京と重なるようだ。

 

「私は出来ない約束はしない女よ…。悪魔の私でさえ東京は救えない…私は私のために戦うわ」

 

多くの時間渡航を超えては大勢を見捨てるしかなかった彼女だからこそ己の限界を知っている。

 

正義の味方を気取りながら私は皆を救ってみせる!などと己惚れた傲慢など言えない者なのだ。

 

「私の手はこんなにも小さい…だから人々どころか…まどかさえ救えなかった負け犬なのよ!」

 

負け犬のように時間渡航を繰り返すしかなかった無念と悔しさが溢れ出した彼女が動く。

 

残された魔力を全開に出来る悪魔の姿に変化した彼女がカラスの羽を広げながら飛ぶ。

 

超高速でティアマトに迫ろうとした瞬間、恐ろしい魔力がもう一体現れたことに気が付く。

 

「お……お前は……ッッ!!?」

 

次元移動するかのようにしてティアマトの前方の空域に出現した存在が突然現れる。

 

その存在とは、獅子の頭部をもったパズスの片手の上に立つ明けの明星の姿であった。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――

 

マニトゥの大爆発によって巨大な爆風が生み出されたことで江東区は壊滅している。

 

魔法少女や悪魔達も建物ごと吹き飛ばされたことで海にまで叩きこまれたようだ。

 

「レナ!!かえで!!しっかりしてくれよ……お願いだから目を開けてくれぇ!!」

 

全身が焼け爛れているが悪魔のタフさで耐えきったももこが抱えるのは仲間達である。

 

レナとかえでも全身を焼かれたことで死にかけている状態なのだ。

 

「かりん!こんなところで死んだら許さないホ!お前を救えないなら俺は地獄逝きだホ!」

 

「お願いだから目を開けてください!姐さぁぁぁーーーーん!!!」

 

かりんを抱えるジャックコンビであるが彼女の体も焼け爛れており意識がない。

 

「八雲……自分など捨てていけ。せめて君と十咎達だけでも……」

 

「バカなことを言わないで!私は貴女と一緒に神浜に帰りたいから東京に来たのよ!!」

 

炎無効耐性をもつ十七夜は無傷だが泳げないため、焼け爛れたみたまが彼女支えてくれている。

 

それはかなえやメルや令も同じであり、クーフーリンやタルト達が彼女を抱えているようだ。

 

「待ってて皆!わたくしが傷を癒してさしあげますわ!」

 

炎属性を吸収する耐性をもったパールヴァティは無傷であり、宙に浮く彼女が回復魔法を使う。

 

ティターニア程の回復魔法ではないが、メディラマを行使されたことで全員の傷が癒えるのだ。

 

「へっ……傷は癒えたけどよぉ、目の前にいる天を貫く巨大な化け物はどうするんだぁ…?」

 

「無論…武人として殺されるまで戦いたい。しかし彼女達まで巻き込むわけには……」

 

「そうだな…死ぬのは俺達男だけでいい。それが古今東西の戦場ルールってもんさ…」

 

どうするべきか悩んでいた時、天を舞うコウリュウが空からやってくる。

 

巨大な龍の体を海に着水させたことで流されそうになる者達に対してゴウトが叫んでくる。

 

「皆の者!この龍の背中に乗るがいい!ライドウももはや限界だ!この場は撤退するぞ!」

 

ゴウトの叫びが聞こえた者達であるが尚紀を残して逃げるべきか迷っていく。

 

そんな者達の心が分かっているのか、上空で戦う人修羅は全員に念話を送ってくれる。

 

<俺は置いていけ!お前達は今直ぐ東京から脱出しろ!!>

 

<そ、そんな!尚紀さんはどうする気なの!?>

 

<俺は最後まで東京で戦う…誰も守れない負け犬だけどよ…最後まで意地を貫かせろ!!>

 

魔界を産むまでティアマトを守るようにして人修羅と戦うバアルとの戦いは激しさを増す。

 

もはや念話を送る余裕もなくなったため、彼の最後の頼みを聞き入れるしかないようだ。

 

筋斗雲を呼び出して飛び乗ったセイテンタイセイが少女達をコウリュウの背中に運んでくれる。

 

神浜組の少女達は全員乗り込んだようだが、セイテンタイセイ達がこう告げてくるのだ。

 

「俺様達は尚紀の援護に行ってくる。あんな奴でも可愛い弟子なんでな……最後まで支えたい」

 

「私も尚紀に忠誠を誓った騎士だ。彼のためなら喜んで命を使い果たそう」

 

「私とタルトも付き合うわ。私とタルトの新しい主人のためにこそ…私達の剣はあるの」

 

「皆さんは先に神浜に戻って下さい。ランタンさんとリパーさんは彼女達をお願いしますね」

 

「パールヴァティ、テメェはこいつらについていけ。お前もまだ病み上がりだからなぁ」

 

「全く…久しぶりの再会だというのに貴方達らしいですわね。昔から不器用な男達ですわ」

 

クーフーリン達の覚悟を受け取った神浜の少女達は頷くことしか出来ない。

 

彼女達は彼らを残して飛び立つこととなっていく。

 

「よっしゃあ!!東京で暴れまくるあの触手みたいな龍共を退治しに行こうじゃねーか!!」

 

「コラ、悟空!!私達だけ海を泳がせてずるいじゃない!私とタルトも雲に乗せなさいよ!」

 

「悪いがリズ、こいつは一人乗りなんだよ。定員オーバーだからキリキリ泳いでいけ!!」

 

地獄であろうと笑いながら移動する緊張感のない者達の元まで飛んでくるのは静香である。

 

彼女も最後まで戦う決断を下した者であり、ホウオウの背中にクーフーリン達を乗せるのだ。

 

東京の地に立った者達の元へとケルベロスも駆けつけたことで彼らは戦場へと駆けていく。

 

「行くぜお前らぁ!!オラオラオラァーーーーッッ!!」

 

「クランの猛犬と地獄の番犬を恐れぬ龍ならば、かかって来るがいい!!」

 

筋斗雲に乗ったセイテンタイセイとケルベロスに乗ったクーフーリン達が先陣を切っていく。

 

タルトとリズも全力を持って彼らを援護し、静香はホウオウを操りながら空で戦う。

 

「私は日の本を守る一族の女よ!東京を守れなかったこの無念…必ず叩きつけてやる!!」

 

大地を砕きながら現れる巨大触手の如き龍の群れを相手に人修羅の仲魔達は激戦を繰り広げる。

 

そんな者達の光景を見下ろすのは氷室ラビとサンダーバードの姿であるのだ。

 

「あれが…あんなものが世界に生み出されるだなんて…もう全てが御仕舞いよ……」

 

「この戦いを見届けよ…そして絶望を極めるがいい。サードインパクトが起こる時がきたのだ」

 

彼女達と同じように戦場を見下ろすのはケルベロスとの戦いを生き残ったスレイプニル。

 

主人を殺されてしまったがこの馬は感じているのだろう。

 

本当の主人であるオーディンがこの地に顕現する時が近いのだと分かっているのだ。

 

前足を大きく上げた後に空に向かって駆けていきながらスレイプニルは東京から姿を消す。

 

残されたのは戦う意思を曲げない戦士と、その者達に死を与えんとする死と再生の女神だった。

 




容赦ないメガテンこじつけがマギレコキャラに襲い掛かる!
やっとホーリーアリナを登場させられましたねぇ、300話もかかるとはキャラ増え過ぎ問題ですよね(汗)
ナオミ殺しで有名なティアマト登場なんですけど、デザインは真女神転生5よりもストレンジジャーニー等の旧デザインが好きなんですよねぇ。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。