人修羅×まどマギ まどマギにメガテン足して世界再構築   作:チャーシュー麺愉悦部

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303話 サード・インパクト

魔界を妊娠したティアマトに取り込まれた人修羅の体は水の世界へと取り込まれている。

 

そこは羊水の世界であり、ペンタグラムリーダーに敗れて辿り着いた場所と同じ光景に見える。

 

その世界は異次元空間のように広く、球体構造をしていることから宇宙卵を彷彿させるだろう。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()の内側みたいな世界なのだ。

 

赤黒い羊水世界で浮かんでいるのは人修羅の体であり、全身からは血が流れ続けていく。

 

彼の血が混沌の羊水をさらに赤く染め上げていく中、彼の心はこんな言葉を呟いてしまう。

 

(また……ここに辿り着いたか。俺だけでなく…生命は必ず水の世界に辿り着くようだ……)

 

産まれる赤子が羊水の世界で形作られるように生命は必ず水の世界から生み出される。

 

生命の進化の歴史も同じであり、母なる大海から生命は進化して陸上生物になっていく。

 

人造生命を生み出す過程もまた培養液という水の世界で生み出す共通性があるのだ。

 

原初の混沌と大海を象徴する蛇神であるティアマトはそれを体現する神霊なのだろう。

 

(俺は…何処までも敗北者か。どんなに足掻いても誰も守れない…そして捨てられていく…)

 

思い出すのはボルテクス時代から続く敗北の歴史であり、多くの人に去られていく苦い記憶。

 

どれだけ強くなろうと彼は誰も守れず、その手が大切な人々に届くことはなかった。

 

(俺は堕ちるだけの男だ…何処までも堕ちていく…もういい…俺はそういう男なんだ……)

 

自分に与えられた運命に絶望した男の目が閉じられていき、混沌の羊水に沈んでいく。

 

傷ついた悪魔の翼も羊水の世界に沈む度に溶けていき、人の体のみとなる。

 

温かい羊水の世界で体も溶かしきり、再び新しい存在になれたら救われるかもしれない。

 

氷室ラビと同じ絶望の願望に支配されそうになった時、蹄の音が聞こえた気がした。

 

(なん……だ……?)

 

目を開けて体を起き上がらせてみれば、赤く輝く羊水世界の向こう側から近づく存在が見える。

 

<<…炎と光を運ぶ明けの明星となりし男よ。汝の可能性は誰かが決めるものではないのだ>>

 

水の世界でありながら歩くようにして近づいてくるのは大きな馬の姿である。

 

漆黒の体をもち、長く伸びた白髪のたてがみから伸びるのは人修羅と同じ形の一本角。

 

体に浮かぶのは発光する入れ墨であり、まるで人修羅が一角獣になったような見た目なのだ。

 

<おまえは……?>

 

人修羅から念話を送られた一角獣が動きを止め、向かい合うようにして佇んでくる。

 

その姿こそメソポタミアの古代遺跡に描かれた動物のうち、ライオンと対となる一角獣なのだ。

 

現れた者こそ天皇家の家紋や英国王室の紋章、神社の阿吽像のルーツとされる神の一体だった。

 

<<我が名はエンキ。地の王であり知恵と魔法の祖…バビロニアではエアと呼ばれし者だ>>

 

<水の神が負け犬に何の用だ…?わざわざ現れたんだ…俺なんかに…何を期待している……?>

 

<<世界は絶望の洪水によって飲み込まれるだろう。だからこそ人々を未来に運ぶ者がいる>>

 

<まるで預言者ノアだな…俺に箱舟になれとでもいうのか?人類を導く神にでもなれと…?>

 

<<人類を導くにも代償を払わねばならん。多くが死の洪水で死に絶えるが選民は生き残る>>

 

<俺に選定者になれというのか…?唯一神と同じように新たな世界のために生贄を作れと…?>

 

<<代償なくして生は無し。唯一神だろうと契約の天使だろうと汝だろうと定めには抗えん>>

 

<ふざけやがって…人類を救えと言いながら人類に多大な犠牲を払えだなんて…矛盾の極みだ>

 

<<汝が否定出来るのか?悪に堕ちた人を殺し、人を救うという矛盾を行った汝なのだぞ?>>

 

事実を突きつけられた人修羅は何も言い返せなくなってしまう。

 

知らず知らずのうちに唯一神と変わらない独裁者となっていたのが魔法少女の虐殺者なのだ。

 

<俺は唯一神を心の底から憎んだ男だ…犠牲にされる側だった俺達は世界の贄になったんだ…>

 

<<汝も同じことをしている。悪に堕ちた少女達もまた社会の安寧のために汝の贄にされた>>

 

<俺が殺してきた魔法少女達は…俺と同じ憎しみを抱えながら…俺に殺されていったのか…?>

 

<<彼女達とて汝と同じように生きたかったはず。なのに全体を生かすために生贄にされた>>

 

<そうか……そうだよな。ももこが言った通り…俺は神にでもなったつもりだったんだろう…>

 

神として全体秩序を守り抜くその在り方こそ唯一神やヘブライ天使達の在り方そのもの。

 

それは復讐に生きる者も同じであり、気が付けば殺したい程の悪しき存在と同じに成り果てる。

 

全体を救おうとすればする程、人間時代の尚紀達のように救えない者達が生み出されていく。

 

二度と悲劇を生まない社会を作ると蛮行を正当化して実行してきたその姿はミイラそのもの。

 

ならばもう、その男の姿は唯一神やインキュベーターと何も変わらない秩序の虐殺者だった。

 

<なぁ…知恵の神。どうして人類どころか神々でさえ…矛盾を乗り越えられないんだ…?>

 

神でさえ乗り越えられない世界のコトワリである矛盾。

 

どうしてそんなものが世界に存在してしまうのかと問うた時、水の神はこう答えてくれるのだ。

 

<<()()()()()()。最初の宇宙が誕生した頃より変わらぬ世界の在り様なり>>

 

<な…何だと…?矛盾が自然…?矛盾こそが世界…?>

 

<<相反する在り様が同時に存在するものが万物だ。光と闇、善と悪、火と水、男と女だ>>

 

<矛盾こそが世界の在り様……矛盾こそが陰陽なのか……?>

 

<<()()()()()()()。人の頭がこしらえた理論が追いつかないだけのことだ>>

 

論理など宇宙から見たらママゴトのようなもの。

 

矛盾を恐れて頑固になるのも言い訳するのもつまらぬこと。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()と水の神は語ってくれた。

 

<<司法が矛盾しているのも自然であり、唯一神が秩序のために虐殺をしたのも自然なのだ>>

 

<俺や唯一神…それにインキュベーター共は…自然の在り様に従っていただけだったのか…>

 

<<矛盾を受け入れよ、それが守護者の姿だ。守る者とは殺す者…それこそが世界の真理だ>>

 

人修羅の両目が大きく見開いていき、天啓を得たような気持ちとなっていく。

 

世界を構築する万物とは拳法の陰陽理論と同じであり、相反する存在が同時に内包されたもの。

 

知恵の神であり水の神エンキは迷える男を導いてくれたことで彼の心の迷いが消え去っていく。

 

<……俺は矛盾を受け入れる。守護者になりたいと願ったんだ…だからこそ…俺も背負おう…>

 

唯一神やヘブライの天使と同じ覚悟を宿せた者こそ人類の運び手に相応しい神となれる者。

 

自分の目に狂いはなかったと安心したエンキがこう告げてくる。

 

<<もうじき汝は混沌の羊水に溶けて生まれ変わる…ならば我もまた汝の内に溶けようぞ>>

 

原初の神アヌ(大いなる意思)から生まれたアヌンナキ神の一体であるエンキの体が溶けていく。

 

人修羅の体もまた溶けていき、混沌の羊水の中で魔界と同じく生まれ変わろうとしている。

 

人類に知恵を授けたエンキは兄弟神であるエンリルが起こした洪水から人類を救った神である。

 

また人類の言葉を分断して互いに争わせたこともあるエンキ神話こそヘブライ神話のルーツ。

 

旧約聖書のノアの箱舟やバベルの塔とはシュメール神話のエンキが元となった神話なのだ。

 

<<共に螺旋を描こうぞ。我も汝も男神であり、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()>>

 

シュメール人は大地は水で育まれるとしてエンキの水の力と生殖能力を豊穣として祀り上げる。

 

男性の股間にぶら下る陰茎は生殖器崇拝の象徴であり、世界中の神話で神の陰茎が崇拝される。

 

日本においてもイザナギ夫婦は矛という棒を用いて大海を掻き混ぜたことで国と神々を生む。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()であり、一角獣の如き肉棒を股間に持つ男性の神性なのだ。

 

<<俺もまた螺旋を描ける男であり蛇だ。()()()()()()の力…そして()()()()を見せてやる>>

 

混沌の大海に生み出されたのは螺旋を描く巨大な渦であり、赤き海から蛇神が昇ってくる。

 

新たに生み出されたその姿こそ、世界を乖離させる螺旋を描きし知恵の火水(かみ)の御姿。

 

今から始まる神の戦いとは、バビロニア創世記神話である()()()()()()()()となるのであった。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――

 

絶望的な状況の中でも懸命に戦う人修羅の仲魔達。

 

東京湾では悪魔ほむらとイナンナ化したアリナが激戦を繰り広げていく。

 

転生したアリナの力を確認するバアルは天空で佇みながら2人の女神を見守っていくようだ。

 

一方、ティアマトは既に子宮口が全開であり、破水を起こそうとしている。

 

「産まれる…新しい我が子のような魔界が産まれる…ッッ!!この痛みさえも愛おしいぞ!!」

 

もはや世界に起こるサードインパクトを防ぐ手立てはなく、仲魔達の士気も落ちきっている。

 

触手の龍が出産の痛みを表すようにして暴れ狂い、巻き込まれた者達が弾き飛ばされるのだ。

 

「くっ…私はまだ…倒れるわけには…時女の戦いはまだ終わってないのよ……」

 

「無念だ……ここまでだというのか……?」

 

「ちくしょう…尚紀の野郎を鍛え足りなかったか…この程度で音を上げやがって…」

 

「人修羅ヲ信ジルノダ…ッッ!!アノ男ハ神霊カグツチヲ倒シタ男ナノダゾ…ッッ!!」

 

タルトとリズも必死になって主人の名を叫んでいく。

 

その時、仲魔達にとっては希望を形作る螺旋の光となりし一撃が放射されることになるのだ。

 

「ガハッ……ッッ!!?」

 

膨れ上がったティアマトの腹を内側から撃ち貫いた極大ビーム攻撃とは()()()()の一撃。

 

蛇もまた生殖器崇拝の象徴であり、古代日本人が信仰の対象としたのが蛇神なのだ。

 

子宮から漏れ出るはずだった破水が撃ち抜かれた傷口から大量に噴き出す程の光景が広がる。

 

「アァァァァーーッッ!!?痛い!!痛いィィィィ……ッッ!!わらわの中で暴れるなぁ!!」

 

魔界が収められた赤き大海の世界で浮遊するのは新たな人修羅の姿である。

 

発光する入れ墨を纏う体の色はアジア人のような肌色ではなく、白人の肌色をしている。

 

髪や眉毛の色もアジア人の黒髪ではなく、白人と同じプラチナブロンドに変化しているのだ。

 

金色の瞳を宿しているがその目は偉大なる瑠璃を表すラピスラズリの如き青さまでもっている。

 

その姿はまるで()()()()()()()()()()()()()()のようにも思えてくるだろう。

 

<<いくぞ……ティアマト。これこそが……地の王として放つ……大地の力だ>>

 

背中に生み出された新たな四枚翼を一気に広げながら両手を重ねていく。

 

右側の背中に伸びるのは堕天使を表す二枚翼。

 

左側の背中に伸びるのは天使を表す二枚翼。

 

()使()()()()()()()()()()()()()()()()()()が放つ究極の一撃によって次元が振動していくのだ。

 

「ほう…?やはり生きていたか。蛇は不死性を象徴する……簡単には死なない生き物だからな」

 

絶叫を上げながら体が砕けていくティアマトに対してバアルは動かない。

 

計画の要ともいえるティアマトが葬り去られようとしているのに余裕の態度を示すのだ。

 

彼が目にしたいものとは宿敵となるだろう蛇神が放つ究極の一撃の力なのだろう。

 

両腕を前に重ねたまま全身の魔力をティアマトへと流し込む。

 

宇宙にも匹敵する程の異次元空間で大地震が起きていき、子宮にある宇宙卵が砕ける時がくる。

 

「やめてぇぇぇぇーーーーッッ!!わらわの子供を殺さないでェェェェーーーーッッ!!!」

 

我が子を愛する母親としての叫びを上げるティアマトであろうが新たな蛇神は容赦しない。

 

既に彼は矛盾を超えた者であり、守護者として殺す者になれる覚悟が完了した者だ。

 

重ねた腕を頭上に持ち上げていき、一気に左右に振り下ろす時がきた。

 

「ジャッ!!!!!」

 

放たれた一撃とは悪魔ほむらとの戦いで見せた究極の力である()()()()()

 

地の王と一つになった人修羅に相応しい最強の一撃なのだ。

 

星の爆発に匹敵する程の眩い光が宇宙卵内で起き、膨大な光が闇を()()()()()()()

 

<<アァァァァァァァーーーーーーッッ!!!!>>

 

ティアマトの巨体も内側から膨大な光が貫いていき、宇宙卵の殻のようにして砕けていくのだ。

 

膨大な光と暴風で吹き飛ばされまいと悪魔ほむらとアリナは悪魔耐性で暴風を防いでいく。

 

東京の仲魔達も武器を地面に突き立てて堪えようとするのだが吹き飛ばされてしまう。

 

夜の東京を昼間の如く照らし尽くす太陽の如き光を垣間見たアリナは感動している。

 

「ビューティフォー……」

 

太陽の如き光の世界に死と再生の美を感じられたアリナは両指で四角を作りながら観察する。

 

この感動を直ぐ絵にしたいと強い衝動に駆られた事でほむらに対する殺意が消沈したようだ。

 

「なんて膨大な感情エネルギーなの……まるでアラディアが砕けた時のようね……」

 

悪魔ほむらの眼前には砕けたティアマトから放出された膨大なMAGの光が溢れている。

 

膨大なMAGは宇宙へと昇っていき、宇宙を温める膨大な熱に変換されるのやもしれない。

 

しかしバアルが見ている方角は月の方角であり、曇天が吹き飛んだ事で満月が浮かんでいる。

 

牛兜の中で不気味な笑みを浮かべた後、バアルがアリナに念話を送ってくるのだ。

 

<イナンナよ、今日のところは引き上げるぞ。最後の仕上げはルシファーに任せるがいい>

 

<そうしてくれると助かるんですケド。アリナは今直ぐアトリエで絵を描きたい気分なワケ>

 

去る前に悪魔ほむらに振り向いた後、不気味な笑みを浮かべながら片手を水平に持ち上げる。

 

自分の首を掻き切るようにして掌を滑らせた事でその意味をほむらは理解してくれたようだ。

 

「決着をつける時がくるのなら…もしかしたらイルミナティ勢力の中で起こるかもしれないわ」

 

「アナタも来る気があるならアリナは止めない。手近にいてくれた方が手間が省けるヨネ?」

 

バアルと共に瞬間移動して消え去った上空では傷だらけの悪魔ほむらが佇んでいる。

 

消耗した魔力も酷い状態であり、絶対安静期間に入るしかないだろう。

 

それでも何かが気になるのか彼女の視線は生み出し続けられる光に向いたままなのだ。

 

「この膨大な光の中から感じさせてくるのは何なの…?まるで…大魔王の力みたいよ……」

 

宇宙卵を内包したティアマトから生まれた光の光景はまるで古代の賛美歌である。

 

オルペウス教の讃美歌では宇宙卵から最初に生まれるのは()()()()()とある。

 

世界の卵の神話で光が人になった者こそファネス・ディオニュソスと同じ輝きを宿す者だろう。

 

しかし明けの明星の如き光の世界から出現した赤黒き巨体を見た時、ほむらの心が凍り付く。

 

「あ……あ……あれは……一体……?」

 

一方、爆発に吹き飛ばされた仲魔達が起き上がっていくのだが、静香の目が見開いていく。

 

「あれはまさか……嘉嶋さんが神浜の魔法少女達に倒された時に出現した存在なの!?」

 

光の世界から顕現した巨体こそ神浜湾からでも確認出来た程の巨大な存在である。

 

天地を貫く程にまで巨大な魔王はハッキリと形が分かる程にまで実体化していたのであった。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――

 

崩壊した東京の上空に迫ってきていたのはアメリカ空軍の無人偵察機である。

 

爆風が収まる頃合いを予期していたように侵入してきたグローバルホークが撮影を始める。

 

機体には衛星通信アンテナが備わり、リアルタイムでビデオカメラ映像を届けられるようだ。

 

リアルタイム映像は崩壊した東京の光景だけでなく、東京湾で浮く巨大な悪魔も映っている。

 

その映像で魔王の姿を確認出来るのは同じ悪魔かデビルサマナー、そして魔法少女だけなのだ。

 

「ようやく形にしてくれたか…その姿こそが私にとっては新たな半身ともいうべき竜神なのだ」

 

映像を見守るのは席を立ちあがった大魔王であり、他の者達もグラスを持ちながら立っている。

 

グラスには子供の血のように赤い酒が注がれており、サードインパクトの瞬間を祝おうとする。

 

「ティアマトという大海から生まれた新しいサタンの為に、我々堕天使一同が祝福を与えよう」

 

神浜では炎によって輪郭だけを形作った存在だったが、新たな人修羅はそれを実体化出来る。

 

禍々しくも神々しい黙示録の獣の如き七つ頭と四枚翼を持った巨大竜人悪魔の姿なのだ。

 

鎧のような体は黒に染まり、巨大な尻尾と胸元には竜の逆鱗を表すような赤い光が宿っている。

 

両腕の甲にはまるで十字架に打ち付けられた杭のようなものが備わり、掌を貫通している。

 

頭部は人修羅が掲げた赤き社会主義精神の色を体現するようにして紅に染まった七つの首。

 

一本角が生えた鬼のような頭部が胸元の上側に備わり、肩の後ろからは二体の竜の頭部。

 

そして中央を構成する頭部は巨大な一本角と刃物のような複数の角で()()()()()()()のだ。

 

恐ろしくも神々しいその魔王の全高は300mにまで達する程の巨体だった。

 

「尚紀……なのかよ……?」

 

「あれが……あんな禍々しい存在が……本当に尚紀だというのか!?」

 

「アマリニモ次元ガチガウ悪魔ダガ……人修羅ト似タ魔力ヲ感ジサセテクル……」

 

「だとしたら尚紀は無事だったということですね……あぁ、本当に良かったです!」

 

「だけど一向に動こうとしないわね…?何を警戒しているのかしら…?」

 

巨大な魔王の姿と化した人修羅は五感の全てを駆使して状況把握に努めている。

 

見えるのは崩壊した東京、空を飛び交う戦闘機も既に東京を飛び去っている。

 

飛んでいる無人機のビデオカメラごしにだが大魔王の気配を感じているのだろう。

 

<<ルシファー……この程度で終わる貴様じゃないはずだ。貴様の真の狙いは何だ!?>>

 

中央の巨大頭部には口は備わっておらず、一本角が生えた四つの鬼の口から声を上げる。

 

御指名を受けた大魔王は東京湾から遠く離れた豪華客船から念話を飛ばしてくるのだ。

 

<流石は私が磨き上げた赤きサタンだ。見事に輝いてくれたじゃないか…人修羅よ>

 

<<貴様が狙っていた魔界顕現は俺達が阻止した!ここに現れろ……今すぐ俺と戦え!!>>

 

<何を言っている?魔界が顕現するのはこれからなのだよ>

 

<<な……何だとぉ!!?>>

 

念話が切られたため、再び五感を研ぎ澄ませながら周囲の状況を把握しようとする。

 

すると聞こえてきたのは東京の大地の奥底から伝わってくる巨大な振動音だった。

 

「白のマニトゥではダメだったか…やはり黒のマニトゥとして用意したこれを使う時がきた」

 

大きなモニタールームで指揮を執るのはIT大臣の門倉であり、顔には冷や汗が浮かんでいく。

 

オペレーター達が操作しているのは東京の地下を環で繋ぐようにして建造されたILC加速器。

 

電子と陽電子を最高出力で加速衝突させ、宇宙誕生から1兆分の1秒後の()()()()()()()()

 

この巨大施設はILC計画で建造されたものであり、物理学の次世代基幹プロジェクト。

 

2030年代後半の稼働を目指し、世界中の研究者が取り組む計画施設が日本にもあったのだ。

 

「宇宙誕生間もない頃の素粒子の力だ…下手をすれば地球どころか宇宙までも破壊するぞ…」

 

国際金融資本家達は投資家であり、常にリスクヘッジを考えてダメージコントロールする。

 

ティアマトというプランAがダメなら、ILC加速器というプランBで目的を達成させればいい。

 

しかしILC加速器の成功率は高くなく、博打に近いプランであるため恐ろしさが込み上げる。

 

「ルシファー閣下は未来を見通す御方だ…きっと成功出来る…だから用意したのだろう…」

 

決断を下した門倉が加速器の出力を最大にまで上げろと命令してくる。

 

地下トンネル内にあるILC加速器が眩いプラズマを放電していく。

 

「な……何が起きているんだぁ!!?」

 

「東京の大地から浮かび上がるこの漆黒のエネルギーは……まさか……!?」

 

東京に現れた奇怪な現象とは宇宙を表す漆黒がエネルギーとして浮かび上がる光景である。

 

遡る雪のようにして大地から伸びていく漆黒のエネルギーこそが()()()()()()なのだ。

 

光学的に直接観測できないものだが、霊的存在である悪魔達はダークマターが観える。

 

だからこそ恐れおののく程の表情になるのだろう。

 

「ダークマター……我モ初メテミル。コレガアラワレルノナラ……宇宙ガ誕生スルゾ」

 

膨大なダークマターが溢れ出す東京を観測出来る者達は限られている。

 

サマナーであるキョウジもその光景が観えるのか、咥えていた煙草を落としてしまう。

 

隣に立つ女達も驚愕しているが、新しい世界が生まれる光景を見届ける者になるのだろう。

 

そして魔法少女の観測者として存在してきたインキュベーターも見届ける者になる。

 

「…メタトロン様が仰られていた通りだ。世界は新たに生まれ変わる…彼らも役目を終える」

 

埼玉県にある高層タワーの屋上から東京の方角を見守る彼が他県の方角にも視線を向ける。

 

埼玉、神奈川、千葉に集まっているのは数が激減した末に残っていた世界中の魔獣達。

 

屹立した魔獣達もまた自分達の役目が終わる瞬間を見届けにきたのだろう。

 

「魔法少女を魔女にする際に生まれる膨大な熱を失った世界のために用意された獣も消えます」

 

「世界は魔界と繋がることになるのです。これから世界に現れる存在こそが悪魔達なんですよ」

 

「魔獣の役目は悪魔に引き継がれ、魔法少女と戦う存在となる。彼らこそが宇宙の新たな熱だ」

 

「僕が考える理想の熱回収の仕組みこそがキャンプファイヤーです。魔法少女は着火剤になる」

 

「宇宙の新たな薪となる悪魔を効率よく燃焼させるためにこそ、魔法少女は悪魔の生贄にする」

 

「魔法少女のソウルジェムとは人間の魂を表す松ぼっくり…松ぼっくりは天然の着火剤ですね」

 

「宇宙のための供物となれ…魔界の悪魔共、そして魔法少女共よ。()()()()()()()()()()()()

 

インキュベーターの後ろに立っていたのはガブリエル、ラファエル、ウリエル達。

 

彼らもまた世界に起こるインパクトを見届ける者になってくれる。

 

「この恐ろしいエネルギーの胎動は何なの…?呪いよりも恐ろしいエネルギーに観えるわ!?」

 

<これはダークマターだ!東京革命の真の狙いとは世界に変革を起こす死と再生の儀式じゃ!>

 

クロノスの念話を聞いた悪魔ほむらは理解する。

 

まどかの死と再生、ほむらの死と再生の際に生まれたエネルギー規模の現象が生まれるのだと。

 

最後の魔力を絞り出すようにして左手の魔法盾を掲げた彼女が時間停止を行う。

 

時間が動き出した時には悪魔ほむらの姿は東京にはなく、まどかを守りに行ったのだろう。

 

時が止まった世界を観測出来る力を持ったサタンもまた彼女に続くようにして力を行使する。

 

「オイオイオイ!?俺様達に何が起こってるんだぁ!?」

 

「私達を包み込むこの光のエネルギーは一体……!?」

 

「ま、まさか……尚紀!?貴方は私達を東京から遠ざけるために……ッッ!?」

 

光の球体に包まれた尚紀の仲魔達の体が浮かび上がった後、神浜の方角に目掛けて飛んでいく。

 

残された尚紀は原天使サタンとして最後の足掻きを行おうとするようだ。

 

<<やらせないぞ…ルシファー!!東京の地下に隠した貴様の真の狙いを破壊してやる!!>>

 

背中に備わる巨大な四枚翼を広げたサタンがその巨体を飛翔させていく。

 

上空二万メートルにまで上ってきた彼が放つのは至高の魔弾を超える程の一撃となるだろう。

 

聖杭で貫かれた両手を胸の前に掲げながら極大にまで高める闇の光を生みだしていく。

 

宇宙が生まれるビックバンに匹敵する程の力をぶつけてダークマターを消し去ろうとするのだ。

 

両手を縮めながら闇の球体を収束させていき、そして放つ一撃とは『メギドアーク』である。

 

極限にまで収束させた闇の光球を片手に持ったサタンが一気に放とうとする時、邪魔が入る。

 

<<あ……あれは!!?>>

 

後方から飛来してきたのはオハイオ級原子力潜水艦から発射された核ミサイル。

 

自分の半身がどの位置に移動して攻撃するのか先を見通した大魔王が攻撃命令を下したようだ。

 

<<グゥゥゥゥゥゥゥゥーーーーッッ!!!>>

 

核ミサイルが直撃したことで巨大なキノコ雲が昇る程の大爆発が起こる。

 

しかし核ミサイル程度で滅びる原天使ではないのだが、隙を生み出す程度なら十分だった。

 

「新たな世界は()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。新たな円環世界に祝福を」

 

<<世界の道はローマに繋がる!!世界の円環こそが我らCHAOSの支配帝国なり!!>>

 

全員揃って祝杯を上げる堕天使や黒の貴族達が見上げるのは大魔王の後ろにある巨大絵画。

 

そこに描かれていたのは古代ローマ帝国の象徴である赤き大淫婦、()()()()()()()()なのだ。

 

「ククク……ハーハッハッハァ!!私に見せてくれ…魔法少女を好きなだけ喰える世界を!!」

 

狂気の笑みを浮かべる門倉が見つめるモニターの向こう側では極限に高まる加速器が観える。

 

ついにダークマターが世界を塗り潰す程のビックバンとなり、世界が塗り替えられていく。

 

その光景はまるで円環のコトワリや悪魔ほむらが生んだエネルギーで宇宙を塗りたくる光景だ。

 

宇宙に与える三度目のインパクトの光に飲み込まれた人修羅の姿もまた消え去っていった。

 




はい…完全にFateの英雄王のパクリ展開ですね(汗)
神話を色々見ていくと、螺旋を描くギルの宝具がゴッドチ〇ポにしか見えなくなりますな(オベリスク脳)
新たな人修羅君はAUOになれるのか?
次の話で7章は終わりです。
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