人修羅×まどマギ まどマギにメガテン足して世界再構築   作:チャーシュー麺愉悦部

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304話 ゴッドエンペラー

鹿目まどかと暁美ほむらが起こしたインパクトに匹敵する程のビックバンが世界に起こる。

 

影響を受けるのは次元壁であり、ダークマターが宇宙を侵食する度に亀裂が走っていく。

 

ほむらがもたらした宇宙改変の光景のようにして世界に亀裂が走って砕けてしまうのだ。

 

世界が闇に飲み込まれた時、世界に光の熱を与えてきた魔獣達は存在が消滅してしまう。

 

宇宙意思を務める唯一神から役目を終えた者達として全ての魔獣は処分されていく。

 

そして世界に出現していくのは砕けた次元壁の向こう側からやってくる悪魔となるのであった。

 

……………。

 

世界に光が戻った頃、サード・インパクトの中心地となった都市の姿は何処にも見えない。

 

海水ごと消滅した東京は元の海に戻るようにして水流が激しく流れていくのみ。

 

破壊された東京で逃げ惑う人々の姿ももう何処にも見えない。

 

彼ら、彼女達もまた新しい宇宙を誕生させるための生贄として東京ごと消滅したのだろう。

 

その光景を放心状態のまま見届けてくれたのが絶望の使者となった氷室ラビの姿である。

 

両膝が崩れたまま東京があった方角を見つめる彼女が佇むのは千葉ポートタワーの屋上だ。

 

見えたのは東京都26区が消滅した光景であり、円形に削り取られている恐ろしさだった。

 

「……日本の地図の形を修正しなければならない程の凄惨な光景だな」

 

顔面蒼白で震え抜くラビの肩で佇むハクトウワシの姿をしたサンダーバードは淡々としている。

 

この絶望の光景が分かっていたのか動揺一つ浮かべる様子がない程の無機質さを表すばかり。

 

しかし自分が保護するラビは歳相応の感情が爆発したのか現実崩壊を起こす程の表情だった。

 

「……一体……どれだけの人々が……死んだの……?」

 

「東京の人口は1200万人規模の都市。避難出来た者もいるが一千万人以上が死んだろうな」

 

「神浜市の総人口の三倍以上の人々が死に絶えるだなんて……私は夢でも見ているの……?」

 

「これは現実だ。世界を支配する金融マフィアにとっては人口削減の達成目標にすら届かんぞ」

 

「狂人共よ……啓明結社を支配する悪魔共は!!こんな地獄……神様が許すはずがない!!」

 

「縋ろうとする唯一神とて共犯者だ。この地獄こそ…世界を魔界に変えるための儀式なのだ」

 

「世界を魔界に変える…?これからの世界に……一体何が起こるっていうの……?」

 

「無論魔界と同じ光景だろう。力ある悪魔共が弱き者共を喰らい尽くす弱肉強食の世界となる」

 

縋ろうとした唯一神も堕天使達とグルであり、世界はマッチポンプによって魔界にされる。

 

そう語られた時、氷室ラビの心が完全に壊れてしまったかのようにして狂った笑い声を出す。

 

「フフフ……アハハハ……アハハハハハハハハ……ッッ!!!」

 

狂気の笑い声を上げ続けるラビのソウルジェムが急速に濁っていく。

 

しかし絶望死させてくれないサンダーバードが口を開けて絶望の穢れを吸い出してしまう。

 

絶望死すらさせてくれない者の冷酷さこそ、ホワイトメン化したラビに必要な力でもあるのだ。

 

「結局…私達が希望を持つ程…敵わない存在によって翻弄され続け…苦しみ続けるのか……」

 

瞳のハイライトが完全に濁り切った彼女が立ち上がり、世界の絶望を受け入れると宣言する。

 

「神浜を救った希望の光は絶望に抗えなかった…その証拠にあの黒き悪魔の姿も何処にもない」

 

ダークマターに飲み込まれたサタンの姿もまた東京と同じように消え去っている。

 

希望すら飲み込む程の黒き絶望の力こそが世界を蹂躙していくのがこの世の現実だった。

 

「諦念の元…全ての魔法少女と人間達は虚無へと導かれるべきよ。滅びこそが救済だった……」

 

「ようやくホワイトメンとして完成してくれたな。我々も動く時がくる…絶望を利用するのだ」

 

「フフッ…これだけの絶望が世界を覆うんですもの、世界に絶望した魔法少女達を導けるわね」

 

「世界を消滅させるに足る無限発電炉を攻略するには戦力が必要だ。捨て駒として使うがいい」

 

不気味な笑みを浮かべるラビと無機質なサンダーバードの姿が消えていく。

 

東京の地獄を見届けた者の姿が消えた時、東京湾に異変が起きるのだ。

 

海水で満たされた東京湾に浮かぶのは超巨大な蜃気楼であり、それが実体化していく。

 

天を貫く巨大な塔の姿はまるでSF作品に登場する高軌道エレベーターを彷彿させる規模なのだ。

 

天を目指して塔を建造したのが聖書に描かれた()()()()()の神話。

 

人類が塔を建造し、神に挑戦しようとしたので神は塔を崩したとするのが一般的な解釈だ。

 

しかしユダヤ古代誌ではバベルの塔の物語は大洪水を引き起こした()()()()()だと解釈する。

 

もしそれを実現するために出現した巨大な塔ならば、そこには唯一神への復讐者が集うだろう。

 

具現化した超巨大な塔こそ新たなバベルの塔となりし悪魔の居城。

 

海面に見えるのは超巨大なドッグであり、繋がる上部は天にまで伸びた高層ビルを彷彿させる。

 

超巨大ドッグに向かって進んでいくのは大魔王と堕天使達が乗り込む豪華客船。

 

甲板にまで出てきた者達が天を見上げながら懐かしそうな眼差しを浮かべていくのである。

 

「これで仮りの住処とはお別れだな。私の玉座として相応しい城こそが魔界の()()()()なのだ」

 

ケテルとはヘブライ語で()()を意味し、セフィロトにおける第一のセフィラを表す名称である。

 

メタトロンが守護するセフィロトの領域と同じ名称をもつ魔界の城こそが大魔王の居城なのだ。

 

「新生ケテル城こそが()()()()()()()となり、世界政府となる統一機関となりますな、閣下」

 

ルシファーの傍に控えるルキフグスも満足げな表情をしながら新しい世界を祝福していく。

 

クリフォトの樹とは邪悪の樹と呼ばれ、セフィロトを真逆にしたようなデザインである。

 

セフィロトと同じくクリフォトもそれぞれ対応する領域があり、この塔にも内包されていた。

 

「世界は魔界と一つになった…表層が繋がったことにより魔界で控える私の軍勢も集うだろう」

 

「いよいよですな…我ら魔王と魔神が結集した時こそ…光と闇の最終戦争が始まるのです」

 

「この戦争は絶対に負けられん…そのためにこそ…人修羅という私の半身を生み出したのだ」

 

大魔王の船が巨大ドック内にある軍港に入った後、新生ケテル城が胎動を始めていく。

 

巨大な塔の城のシステムが全て起動したことで地球の成層圏を飛び越えた領域が輝きを放つ。

 

塔の最上部に存在するのは地球の成層圏の中間圏辺りから枝分かれした三本の塔。

 

それらの一つ一つに巨大な城が建造されており、サタンと呼ばれる大魔王が君臨するのだろう。

 

城壁で繋がり合うようにして連結された三つの城の中央には神殿が備わっている。

 

ピラミッドを構成する神殿が邪悪な光を放っていき、三つの塔の中央に巨大な目を生み出す。

 

生み出されたのは縦に開く燃えるような単眼であり、巨大なプロヴィデンスの目を構成する。

 

三つの塔と城が生み出す形とはトライアングルであり、イルミナティピラミッドとなるのだ。

 

バベルはアッカド語で()()()()を表し、塔の最上部こそが神社の鳥居と同じく神域となる。

 

単眼の目は摂理を表し、神の全能の目として()()()()()()()()()()()()()となるだろう。

 

東京湾に再び出現したのはペンタグラムが屹立させた光の塔と同じく天の支配者を表すもの。

 

今ここに悪魔の()()殿()が世界に顕現したことでCHAOS勢力は地球の支配者となるのであった。

 

……………。

 

「……すまない、将門。俺は東京を救えなかった……お前との約束を……守れなかった」

 

東京は26区だけでなく西側には村もいくつか点在しており、そのうちの一つに彼はいる。

 

かつては東京の景色を見渡せただろう山の中で立つのは墓石の前にいる尚紀の姿なのだ。

 

目の前にあったのは移転用の新しい将門の首塚であり、仲魔を救う時に送り出していたようだ。

 

坂東宮戦の際にバアルが破壊したのは古い首塚であり、新しいものが建造されていたのである。

 

新たに産まれ直したため全裸姿であるのだが、背中の翼で編まれたコートを纏っている。

 

右側にある悪魔の翼で編まれたコートであるが新たに生えた天使の翼は衣服を形成していない。

 

そのため片翼の天使のような姿となった彼が片膝をつきながら墓前の前でこう語っていく。

 

「マサカドゥスを与えてくれた義理を果たせなかった…約束を反故にした俺を呪うがいい…」

 

墓石に懺悔を行うのだが新しい首塚は何も語り掛けてはくれない。

 

将門と四天王達の魂は怨霊剣へと受け継がれたことで魂の入ってない仏像のようなものだった。

 

コートに備わるフードで隠れた頭部の口が怒りと無念を表すようにして食いしばられていく。

 

「あらゆる存在は単独では成り立たない…それは悪魔だって同じだ。俺達だけでは…勝てない」

 

震える右手を握り締めた後、立ち上がった尚紀が東京の方角に視線を向ける。

 

そこにあったのは消滅したかつての東京の姿であり、新たなバベルの塔が屹立している。

 

それを見上げる彼は決断を下す言葉を残すのだ。

 

「…俺は何度だって塔を昇る。その頂きにこそ…超えなければならない俺の試練があるんだ…」

 

かつてのボルテクス界に存在したカグツチ塔の如きバベルの塔の頂きに上る覚悟を彼は決める。

 

踵を返した彼が去っていく方角は東京の方角でも神浜市や見滝原市の方角でもない。

 

何処に行くのか定かでない者が残したのは、関東の守護神として東を見守れる墓石だけだった。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――

 

東京が崩壊した日から二カ月が過ぎた頃の7月1日。

 

黙示録の赤き獣を表す7という数字となる今日この日こそ新たな世界の支配者が生まれる日。

 

現在の尚紀はバチカン市国南東端にあるローマ・カトリック教会の総本山にまで赴いている。

 

今日の戴冠式のために世界中のグローバルエリート一族もバチカンに赴いている状況なのだ。

 

「麗しい御姿です…サタン様!このわたくしめの最高傑作ともいえる儀式礼装で御座います!」

 

大きな鏡の前で媚びを売るのは人間に擬態した姿のアドラメレク。

 

大鏡の前に立つのは儀礼用の赤き刺繍マントを纏う尚紀が立っており、鏡を見つめていく。

 

その顔つきは氷のように冷たく、およそ人間らしい表情をしていないロボットのようだ。

 

「今日この日こそ古代ローマは蘇る!()()()()()()()()()()()()!金星の神が輝く日です!」

 

古代ローマ帝国はバビロンの大淫婦とも呼ばれており、バビロンとはバビロニアを表す。

 

バビロニアとメソポタミア文明における重要な神はイナンナであり、国家神規模の金星神。

 

しかしキリスト教の旺盛によってその地位を奪われ、堕落の悪魔として貶められた神でもある。

 

淫婦とは性的な堕落を意味するものであり、性交渉を宗教儀礼としたメソポタミアに繋がる。

 

イナンナ、イシュタル崇拝がそれであり、大淫婦バビロンのイメージソースになっていく。

 

古代ローマの崩壊もまた政治の汚職と不正、皇帝が頻繁に交代するなど堕落で自壊したのだ。

 

「フン……堕落で滅びた古代ローマが再び蘇るなら、その末路は歴史をなぞるかもな」

 

戴冠式に出席するため外に待たせてある馬車に向かう尚紀の後ろをアドラメレクもついてくる。

 

サタンの衣装係りを務める彼は側仕えも任されているようだ。

 

市内にある屋敷の前では尚紀を護衛するために参列したスイス衛兵達が出迎えてくれる。

 

周囲は厳戒態勢の如く静まり返っており、戴冠式を行う大聖堂の周囲は人払いがされたようだ。

 

八頭の馬に引かれて移動する黄金の馬車の周囲は護衛用の黒塗り装甲車が固めている。

 

レッドカーペットの向こう側にある馬車の前では12人の男達が直立不動で敬礼していた。

 

「さぁさぁ、戴冠式にエスコートする馬車にお乗りください。道ながら市内の案内でも…」

 

馬車に乗り込む尚紀の後ろからアドラメレクも乗り込もうとするがスーツ姿の男達が止める。

 

12人のスーツ姿の男達は尚紀に仕える直属の者達であり、アドラメレクを押しのけてくる。

 

「人修羅殿の護衛は我々が責任をもって行う。そなたはついてこなくて良いぞ」

 

「な、なんだとぉ!?私は大魔王様からサタン様の側仕えを命じられている者なのだぞ!!」

 

「関係ない、貴様は必要な時だけ人修羅殿の側仕えとしての仕事を行え。それ以外は近寄るな」

 

威圧的な殺気を放つ12人の男達が生み出すのは仏教武器の数々。

 

明らかに人間ではない存在達が人修羅直属の部下として動いているのだ。

 

「くっ…十二神将共め!!覚えていろよ!この件は大魔王様に報告させてもらうぞ!!」

 

怒り心頭のまま屋敷に戻っていくラバ悪魔など眼中にない尚紀を乗せた馬車が発進していく。

 

十二神将と呼ばれた者達も護衛の装甲車に乗り込んで車列を作りながら大聖堂を目指す。

 

ラグジュアリーな高級馬車の車内で座る尚紀の前の席では2人の男達が座っている。

 

「…奴には気をつけろ。汝の行動を監視するスパイなのだろう」

 

「そんなところだろうな…ヘラヘラした気に食わない奴だが奴の腹黒さには気づいている」

 

「油断なさるな、人修羅殿。我らはヒュドラの口の中にいるも同然…いつ喰われるか分からん」

 

「覚悟の上だ。すまない…アスラ王、アタバク、お前達だけでなく十二神将まで付き合わせて」

 

「我らアスラ神族の覚悟は伝えたはず。我らアスラは大魔王打倒のために結集した軍勢なのだ」

 

アスラ王とはヴィローチャナの別名であり、アタバクは十二神将を率いるアスラ神族の重鎮だ。

 

アスラ神族と合流した人修羅はアスラを率いるリーダー的存在になれたのだろう。

 

大聖堂を目指す中、ローマ・カトリックの総本山市内に視線を向ける尚紀は呟いてくる。

 

「悪魔の俺がキリスト教の総本山で戴冠式かよ……悪い冗談としか思えないな」

 

「ここをキリストの仲間の地だと思うな。カトリックはな…()()()()()()()()()()()()()()()

 

バビロンの大淫婦は現在進行形で警鐘を鳴らされており、その堕落こそがローマ・カトリック。

 

組織や祭祀が発展してゆく過程で祭祀や慣習に古代バビロニア由来の偶像崇拝を取り入れる。

 

不品行、惑わしが数多く取り込まれることとなり、教会自身が破滅を導く存在となっていく。

 

バビロンの悪習を引き継ぐ者にまで堕ちたカトリックでは児童虐待事件が頻繁に起きている。

 

児童性的虐待は生贄儀式のようだとローマ法王は言葉を残し、抜本的な組織改革を求めていた。

 

「キリスト教がローマを飲み込んだのではない、ローマがキリスト教を飲み込んだのだ」

 

「獅子身中の虫…ローマはキリストの仲間になる演技を行い、内側を乗っ取ったのでしょう」

 

「ローマの内側をゲルマン人に乗っ取られたようなものか…()()()()()()()()()()()()()()

 

バチカン市内でも至る所に聖職者の銅像と並ぶ子供の銅像が飾られている。

 

その銅像の形とは聖職者が子供の陰部に触れるものや聖職者の股間を子供に押し付けるもの。

 

胸糞悪い堕落のバチカンに連れてこられた尚紀であるが、凍り付いた表情は微動だにしない。

 

この程度で感情を揺さぶられているようでは使命を果たせないからこそ心を凍らせてきたのだ。

 

そうこうしているうちに車列は大聖堂にまで近づいてきている。

 

尚紀のために戴冠式を行う場所として選ばれたのはサン・ピエトロ大聖堂である。

 

ここはフランク王カールの戴冠式が行われた地であり、彼がローマ皇帝となった地であった。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――

 

大聖堂の前に敷かれたレッドカーペットの横では世界中の政官財で君臨する者達が列を成す。

 

人払いが行われた市内であるが世界の1%を占めるダボス階級の者達は参列を許可されたのだ。

 

多くの者達が固唾を飲んで見守る中、黄金の馬車がレッドカーペットの前で止まる。

 

直立不動で儀礼用の銃を持っていた衛兵達が馬車の扉を開けた時、多くの者達が歓声を上げる。

 

現れたのは七つの首をもつ竜が刺繍された赤きマントを纏う者。

 

儀礼用の剣を腰に携えた彼がレッドカーペットを歩きながら大聖堂にまで進んでいく。

 

厳戒態勢が敷かれた大聖堂周囲であるが人込みの中に紛れるようにして尚紀の側仕え達が潜む。

 

一人は黒のドレスを纏うマダム銀子であり、もう二人は和泉十七夜と美国織莉子の姿なのだ。

 

男性用の正礼装を纏う十七夜の横では白のドレスを纏った織莉子が立ち、銀子の部下を務める。

 

周囲の者達が訝しんでしまうのは日傘を差す十七夜と織莉子の姿であろう。

 

吸血鬼となった十七夜は日光に弱いのだが、織莉子まで日傘を差す理由とは何か?

 

それを語る暇もなく尚紀の姿が大聖堂の中へと入っていき、参列者達も中に入るのだ。

 

「…行きましょう、貴女達。我らの主人が神皇陛下になられるその瞬間を共に見届けましょう」

 

「はい…銀子様。美国君、君も早く中に入るといい。我々にとって日光は天敵なのだ」

 

「そんな私達が太陽神となられた尚紀さんの側仕えを務めることになるなんて…皮肉ですね」

 

「フッ…自分は不退転の覚悟を決めている。太陽神に滅ぼされる末路となろうと自分は構わん」

 

「私も同じ覚悟ですよ、この命は尚紀さんのものなのです。共に行きましょう、和泉お姉様」

 

姉妹のような関係性となった十七夜と織莉子も銀子の背中に続くようにして大聖堂に入る。

 

石を掘ることで膨大な装飾が施された大聖堂の内部は巨大であり、見る者達を圧倒する。

 

奥にあったのは聖ペテロの司教座であり、背後は天空を舞う天使達が飾られていたようだ。

 

「……ようやく、この時が訪れてくれたわ」

 

明けの明星の如き世界を舞う天使達の像を背後にして座るのは赤い宮廷ドレスを纏う瑠偉。

 

ブロンドヘアーの長髪を金色のヘアネットで左右に纏め上げ、赤いベールを頭に被っている。

 

顔は不気味な髑髏マスクで隠されており、その姿はまるでバビロンの大淫婦そのものだ。

 

「ほんと、アートになるシーンだヨネ…。ルイ・ダヴィッドのように絵画を残してあげるカラ」

 

聖ペテロの司教座の左右には人間に擬態したまま礼装した魔王や魔神達が立っている。

 

その中にはイナンナとなったアリナの姿も存在しており、黒い宮廷ドレスを着ているようだ。

 

「…ただの庶民だった男が皇帝の地位に就くなんてね。まるでナポレオンの再来だわ…」

 

アリナが立つ左側の反対側には紫色の宮廷ドレスを纏う悪魔ほむらも立っている。

 

どうやら彼女もまた堕天使側に寝返る選択をしたようだが、今はそれどころではない。

 

静粛にせよとマイク音声が英語で流れたことで聖堂に集まった者達が沈黙していく。

 

豪華な両開き扉が開かれたことで新しい皇帝となる者が進入してくるのだ。

 

司教座から立ち上がった瑠偉が宙に浮かびながら大理石の地面に着地してこう呟く。

 

「…これが私にとって、金星の女神としての最後の役目ね。さぁ、こちらに来なさい」

 

髑髏の仮面を外して隣のルキフグスに渡した瑠偉の元へと尚紀は歩いてくる。

 

黙示録の赤き獣の如きマントを揺らしながら歩いてくる彼の脳裏には様々な思いが巡っていく。

 

かつて漆黒の龍ともいえただろう魔法少女は世界の女帝になろうとしたが力及ばず敗れ去る。

 

そして平将門もまた新皇となって日本を救おうとしたが力及ばず敗れ去る。

 

そんな者達の魂が宿っている男が今、世界に君臨する新たな皇帝になろうとしているのだ。

 

(…俺は継ぐ者としてここにいる。俺の中に宿った魂達よ…見届けるがいい)

 

同僚としてではなく、真の役目を果たすために立つ瑠偉の前に来た彼が立ち止まる。

 

かつての尚紀ならば怒りを爆発させながら斬り込む状況だが、彼は殺気すら生み出さない。

 

従順なロボットのような態度を見せる男の姿に満足した表情を浮かべる彼女が語り掛けてくる。

 

「新しいサタンとなった貴方には相応しい位が必要よ。だから貴方のために戴冠式を行うわ」

 

「……好きにしろ」

 

近づいてくる者が横から現れ、視線を向ければローマ法王がやってくる。

 

全身が震え抜く法王が両手で持つ赤いクッションの上には用意された王冠が置かれている。

 

世界三大権威を表すローマ法王とてイルミナティを支配する黒の貴族の飼い犬に過ぎない。

 

かつての教皇はバチカン機関紙において、こんな爆弾発言を残している。

 

自分はかつて出身国のアルゼンチンでナイトクラブの用心棒をしていた。

 

用心棒のほかにも床の清掃や化学研究所での実験に携わっていたこともあると打ち明けた。

 

世界を代表する権威が()()()()()()()()()()()()()()

 

これこそが黒の貴族達の力であり、世界の権威すら彼らが選ばなければなれないもの。

 

だからこそ黒の貴族達と融合した魔王達は世界の権威を決める資格があるのだろう。

 

「さぁ、人修羅。私のために跪きなさい」

 

大魔王は自分に対して絶対の忠誠を誓って見せろと言ってくる。

 

戴冠式など名ばかりであり、ローマ法王と同じく飼い殺しにするために王冠と権威を授ける。

 

その光景は飼い主が飼い犬に豪華な首輪を与えて忠誠を誓わせるようなものだろう。

 

それでも尚紀は言われた通りに片膝をつき、首を垂れてしまうのだ。

 

「いい子ね……そのままでいなさい」

 

ローマ法王から王冠を受け取った瑠偉が両手で持ち上げながら衆目に晒していく。

 

「バビロンにおける金星の女神として、明けの明星として、世界を制する皇帝権威を授けるわ」

 

星の神として皇帝を選ぶのは天命であり、地上で生きる者達は誰も逆らえない。

 

ゆっくりと王冠を被せられたことで人修羅は世界を支配出来る皇帝となるだろう。

 

この光景こそヨハネ黙示録そのもの。

 

赤い竜と獣が象徴するものとは十本の角と七つの頭。

 

王冠は一本角を表現する部位から回り込むようにして角が伸びている形状をしている。

 

中央の一本角の下にはルシファーを象徴する石であるエメラルドが備わっているのだ。

 

海の中から現れる赤き獣とは大海を象徴した神霊の羊水世界からやってきた者を表すだろう。

 

「そしてこの杖を受け取りなさい。この()()()こそが力と王座と権威を表す証明になるの」

 

右手に生み出したものとは、かつてのボルテクス界で老紳士を演じてた頃に持っていた杖。

 

鉄の杖の上部には銀の山羊頭が形作られた装飾杖であり、赤い竜の権威となるだろう。

 

黙ってそれを受け取った尚紀が立ち上がり、後ろに振り返る。

 

大勢の者達が拍手喝采してくる中、彼の横に立った大魔王がこう告げてくるのだ。

 

「さぁ…彼らに示しなさい。ローマ帝国の皇帝が蘇った証として……貴方が形作るのよ」

 

促された尚紀が右手を持ち上げていき、そして形作るのはハンドサイン。

 

生み出されたハンドサインとは山羊頭を示すコルナサインであり、反キリストを掲げる印。

 

Everyone!Caesar was revived!(皆の者!カエサルは蘇った!)

 

<<Long live Caesar!(カエサル万歳!!)>>

 

鳴り止まぬ拍手の洪水の中、離れた位置から拍手を送るのは銀子と十七夜と織莉子である。

 

しかし銀子は拍手を止めてしまい、辛そうな表情を浮かべながら心の中でこう呟いてしまう。

 

(この光景こそが()()()()()()()()()()よ…。あの御方達こそが…()()()()()()()だった)

 

王冠を被った赤き獣となって初めて黙示録の獣は完成するだろう。

 

その光景は赤き竜の背中から降りた大淫婦が竜の頭に王冠を授ける光景そのものだ。

 

ついに混沌王はCHAOS勢力に返り咲くことになってしまう時がきた。

 

かつてのデビルハンターの前に立った悪魔の軍勢を率いる魔界の王として君臨するのだ。

 

新たなルシファーとなる者こそグノーシス主義者達は人類の父なのだと高らかに叫ぶだろう。

 

人類の父こそが天空の神であり、世界を支配する地の王となると叫ぶだろう。

 

「……もう未練も迷いもない。俺はこの道を進み切ってみせるさ……」

 

世界支配の象徴となったバベルの塔の最上部に屹立するケテル城こそが彼の居城となるだろう。

 

天の玉座に座る者は漆黒のダブルボタンスーツを身に纏い、ドラゴン騎士団のマントを纏う者。

 

その者の横に控えるのはケルベロスとセイテンタイセイ、そしてリズ・ホークウッドの姿。

 

「……テメェは最悪の選択をしたぜ。それでも進んでいけるのが……テメェだったな」

 

「セタンタとタルトに全てを託してきた…私ももう未練はない。貴方と共に覇道を進むわ」

 

「人修羅ヨ…何者ニナッテモカマワナイ。ソノ可能性ヲ見極メサセテモラウゾ」

 

明けの明星を表す大きな飾りが備わる天の玉座で君臨する混沌王は何も答えてはくれない。

 

これから血の海を築く魔王となろうとも彼は凍り付いた心のまま踏み越えていくだろう。

 

今の人修羅こそ大魔王ルシファーが求める理想の悪魔であり、CHAOSを率いる資格をもつ者。

 

その者を表す言葉は様々に生まれていくだろうが、共通して語られる概念は二つあった。

 

――()()()()()()()()

 

――()()()()()()()()

 

天を支配する神皇は人類の父と呼ばれていき、闇の覇王として生きていくのであった。

 

 

真・女神転生 Magica nocturne record

 

 

 

 

To be continued




東京は滅びる、だってメガテンなんだもの(お約束)
まぁ、まどマギやマギレコ舞台の街が無事ならいいですよね!
やっとこさ伏線回収として人修羅君を魔人皇帝なマジンカイザーに出来ましたね。
頭に王冠をパイルダーオンしてこそマジンカイザーですよ(信念)
これで7章は終わりです。
次回が最終章となりますので御縁がありましたら宜しくお願い致します。
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