人修羅×まどマギ まどマギにメガテン足して世界再構築   作:チャーシュー麺愉悦部

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307話 鷲鳥不群の末路

「男は度胸ぉぉーーッッ!!悪魔は酔狂ぉぉーーッッ!!」

 

結菜に目掛けて突撃を繰り返しながら屋敷で暴れまくるキンキの攻撃が次々と放たれる。

 

彼の攻め方は物理バカ一代と言わんばかりに魔法を使わず、物理系の技で攻めてくるのだ。

 

対する結菜は物理攻撃を潜り抜けながら隙をついて棘付き棍棒でキンキを殴打していく。

 

「効かねぇな~!!そんな華奢な体で振り回す棍棒の一撃なんざ…くすぐったいだけだ!!」

 

「なんて強靭な体をした鬼悪魔なのよぉ!?」

 

キンキの物理耐性は物理無効程でなくとも強靭であり、攻撃力の一割程度しか与えられない。

 

悪魔の強大な力である貫通スキルを所有していない結菜では彼の物理耐性を超えられないのだ。

 

「そらそらどうした!魔法少女は魔法を使うんだろぉ!悪魔の攻撃魔法みたいにやってみろ!」

 

巨大な薙刀を振り回しながら結菜に襲い掛かるキンキに対して防戦一方になっていく。

 

攻撃を避ければ自分の家が砕かれていき、彼女の人生の思い出と共に壊されていくのである。

 

「キャァァァァーーーーッッ!!!」

 

薙ぎ払いの一撃を棍棒で受け止めるが勢いを殺しきれず、両開きの扉を突き破っていく。

 

弾き飛ばされたのは屋敷の玄関ホール内であり、二階のバルコニーから大理石に落とされる。

 

激しく叩きつけられた彼女の頭部からおびただしい出血が流れていく中、必死に立ち上がる。

 

「そんなに魔法少女の魔法が見たいというなら…見せてあげるわぁ。代金は高くつくわよぉ」

 

駆け抜けながら迫りくるキンキが入口の天井を頭で砕きながらホール内に現れる。

 

一気に跳躍して放つ一撃とはヤマオロシであり、豪快に振りかぶった薙刀が叩き落とされる。

 

結菜は回避行動を取ることもなく迫りくる刃で両断されたように見えた時、それは起こるのだ。

 

「ぐはぁ!!?」

 

薙刀の刃を頭に叩きつけた筈なのに自分の体にダメージが入っていることに驚愕する。

 

後退るキンキは何が起きたのかも分からない表情をしながら片膝をつく中、結菜が口を開く。

 

「これが私の固有魔法である()()()()よ。私に与える攻撃は全て対象を変更出来るわぁ」

 

「なるほど…悪魔の反射魔法みたいなもんか。仕組みさえ分かれば怖くねぇな…」

 

「反射ぁ…?その程度のもんじゃないわよぉ」

 

何を思ったのか結菜は棘付き棍棒を振りかぶりながら玄関ホール内の柱を殴りつける。

 

盛大に砕けた柱の一撃が対象変更されたためキンキの背中に強烈なダメージが入ってしまう。

 

「なんだこりゃあ!?まるで呪いの藁人形みたいにダメージを相手に擦り付けれるのか!?」

 

「距離が離れた分だけ魔力消耗は高いけどぉ…お陰様で私の守りは鉄壁なのよぉ」

 

攻撃を加えれば対象変更されるし、鍔迫り合いでさえ加わった一撃を相手に与えられる。

 

しかし対象変更はあくまで対象を変更するだけであり、物理攻撃ならば物理攻撃を返すだけ。

 

キンキの物理耐性は強大であり、物理攻撃を対象変更しようが有効打にはならないようだ。

 

「へっ!魔法少女の魔法も侮れないようだが…戦う相手との相性が悪かったようだぜ?」

 

立ち上がったキンキが首をゴキゴキ鳴らしながら余裕の表情を浮かべてくる。

 

「そ…そんなことって……あれだけの攻撃を対象変更して擦り付けたのに……」

 

体が金属のように固いという彼の逸話は本物であり、物理で攻める結菜は相性が悪過ぎるのだ。

 

「鉄壁の守りだとか言うけどよぉ、どうして最初から固有魔法を使ってこなかったんだぁ?」

 

「そ…それは……」

 

「なるほど、読めたぜ。テメェはどうやら魔力が心許ない状態のようだなぁ?」

 

彼の読み通り、結菜は今まで魔力回復出来なかったこともあり、ソウルジェムが穢れている。

 

父親が死んだことも穢れに追い打ちをかけており、既に限界が近い状態で戦っていたのだ。

 

「もう一度やってみろ!テメェがいくら擦り付けてこようが、少し痛い程度なんだ!!」

 

薙刀を大きく振りかぶりながら魔力を刀身に込めていく。

 

大技を放つのだろうが結菜はもう固有魔法を行使する余力がない。

 

「さぁ、絶望しろ!!テメェの思い出の家と一緒に壊れちまいなぁ!!」

 

薙ぎ払って放つ衝撃波とは烈風波であり、棘付き棍棒を構えて防御するが弾き飛ばされる。

 

「アァァァァーーーーッッ!!!」

 

背にしていた家まで破壊される程の広域衝撃波を放たれたことで結菜は瓦礫に埋もれてしまう。

 

「チッ…大人げなく本気を出しちまったか?生きててくれよぉ、ソウルジェムを喰いたいんだ」

 

玄関ホール部分を残して屋敷は跡形もなくなった状況の中、薙刀で瓦礫を押しのけていく。

 

微かに魔力を感じられる方角に行けば埋もれた結菜が見つかったことで掘り出してくれるのだ。

 

「ぐぅ!!!」

 

首を掴んで持ち上げられた彼女はもはや抵抗する余力も残っていない。

 

「さぁ、選べ。このまま服をひん剥かれて犯されるか、死ぬまで切り刻まれるかをなぁ」

 

「最低のクズめ!!魔法少女を強姦しようだなんて…かつての魔獣の方が億倍マシよぉ!!」

 

「魔界の悪魔のモットーを教えてやる、それはエンジョイ&エキサイティングだ!覚えとけ」

 

「悪魔なんかに魔法少女の尊厳を凌辱されるぐらいなら…死んだ方がマシよぉ!!」

 

「そうかい?オレのイチモツで貫かれるのが嫌なら…お望み通りこっちをくれてやる!!」

 

短く持たれた薙刀の刃が結菜の腹部を貫いてしまう。

 

「ゴハァ!!!」

 

大きく吐血する結菜であるが薙刀の刃を掴みながら鬼の形相を見せてくる。

 

「絶対に殺す…殺してやる…貴様ら悪魔だけは…絶対に…殺してやるぅぅぅーーッッ!!!」

 

結菜の胸元で輝く菱形のソウルジェムが復讐の業火のような光を放つ。

 

同時に彼女の血濡れた頭からは鬼の如き一本角まで伸びていく。

 

「テメェ!?何をする気だぁ!!」

 

薙刀の刃を掴んだ両手から血が滴り落ちる中、拘束した相手に用いるのは最後の攻撃。

 

魔法少女達が大切な仲間を守る時にのみ使う自爆魔法を行使しようとするのだろう。

 

「私と一緒に死ねぇぇぇぇぇーーーーッッ!!!」

 

戦慄した顔つきのキンキに目掛けてついに自爆魔法が行使されようとした時だった。

 

「グワァァァァァーーーーッッ!!?」

 

突然キンキの全身が燃え上がり、薙刀を結菜ごと手放した彼が地面を転がり回る。

 

地面に倒れ込んだ彼女は腹部に刃が突き刺さったままだが自爆して死ぬことは回避出来たのだ。

 

「見つけたぞ……悪魔ァァァーーーーッッ!!!」

 

悲鳴を上げながら地面を転がる悪魔に迫るのは結菜の仲間の1人である大庭樹里の姿。

 

「よくも樹里サマの家族も家も壊してくれたなぁ…テメェらはウェルダンじゃ済まさねぇ!!」

 

持たれた魔法武器とは火炎放射器のようなものであり、容赦なく引き金を引く。

 

「消し炭になるまで焼いてやらぁぁぁぁぁーーーーッッ!!!」

 

怒りの業火が噴き上がり、地面に倒れたキンキにさらに追撃を放っていく。

 

キンキは物理耐性は優れているが他の四属性魔法の耐性は弱く、炎魔法は十分効く。

 

魔法攻撃を得意とする大庭樹里とは相性が良く、容赦なく攻め滅ぼそうとしていくのだ。

 

「これで…勝ったと…思うなよ…いずれ…オレの兄弟鬼共も現れる…死ぬまで…追われるぞ…」

 

「上等だぁ…樹里サマも腹を括ってんだよ。殺し合いの煉獄にでも何でも進んでやらぁ!!」

 

汚物は消毒とばかりにトドメの一撃を浴びせていく。

 

燃え上がるキンキの体が砕け散り、MAGの光となったことで魔法少女達が勝利することになる。

 

「……これが魔石ってやつか?」

 

砕けたキンキの場所にあったのは数個の魔石であり、2人分はあるだろう。

 

急いで結菜の元にまで駆け寄った樹里がソウルジェムに魔石を掲げてみる。

 

するとグリーフキューブを超える勢いで穢れを急速に吸い出していき、完全に取り除く。

 

腹に突き刺さったままの薙刀を力任せに引き抜いた後、片膝をつきながら手を差し伸べる。

 

その表情は勝利したというのに敗北者のような顔つきであり、大切なものを失った顔だった。

 

「……樹里、もしかして……あなたの家族も……?」

 

「……ああ、駄目だったよ」

 

「…………そう」

 

掴み起こしながら肩を貸してあげる樹里に支えられながら結菜は崩壊した屋敷から去っていく。

 

キンキは物理バカであり、異界を構築するのも下手糞だったため取り込んだ屋敷は本物なのだ。

 

最後に後ろを振り向いた結菜は悲しそうな顔をしながらこう呟く。

 

「……さようなら、私の大切な思い出の地」

 

悲しみの復讐鬼は暖かな陽だまりを捨て、血煙舞う死の荒野へと進んでいく。

 

その光景を見届けた擬態姿の鳥悪魔も飛び立ち、キンキの死を悪魔達に伝えるのであった。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――

 

「アオ……あなたの家族もダメだったのね…」

 

鉄骨が剥き出しの建設現場の屋上に集まっているのは悪魔から生き残れた二木魔法少女達。

 

青髪の長髪を左右に分けて括った笠音アオはへたり込んで泣きながら悲報を伝えてくれる。

 

招集を掛けられた煌里ひかるの顔も真っ青になっており、いつ家族が殺されるかと恐怖する。

 

「…悪魔は魔獣とは比べ物にならねぇ脅威だ。樹里サマ達魔法少女の弱点を先に突いてくる…」

 

「相手の生命線ともいえる社会環境を壊せば私達は追い詰められる…悪魔は賢しいわねぇ…」

 

「グスッ…ヒック…わたしが悪いの…わたしが親の傍にずっといたら守れたのに…ごめんね…」

 

「アオ…それは現実的に不可能よ。私達魔法少女はただの学生…学業がある以上は…」

 

「学校だって家族が学費を支えてくれたから通えたのよ!だけどもういない…どうしよう…」

 

再び泣き崩れてしまったアオがワンワン泣いていく中、決断を下した結菜が決意を語る。

 

「私達魔法少女は……もう普通の人生を生きられる世の中じゃないわぁ。覚悟を決めましょう」

 

「樹里サマもそのつもりだ。竜ケ崎も殆どやられた……これは生き死にを掛けた生存闘争だな」

 

「どうしようっての…?もしかして…学校も行かずに戦い続ける日々を生きるの…?」

 

「学校で授業を受けている最中に襲われる危険は犯せないし…通わせてくれる親もいないわぁ」

 

「住む家はどうするのよ!?お金はどうするのよ!?社会から隔絶しながら生きろっての!?」

 

「住む家にお金だぁ?そんなの人間共から奪えばいいじゃねーか?」

 

赤いメッシュのかかった黒髪ロングを風で揺らす樹里は不敵な笑みを浮かべながら告げてくる。

 

その提案を聞いたアオは血の気が引いたような顔をしながら罵倒してくるのだ。

 

「わたし達は山賊略奪団になれっていうの!?ゲームなら真っ先に殺される雑魚の人生だよ!」

 

「ゲームの敵キャラみたいになっちまおうが構うもんか。そうしなきゃ生きられねーし」

 

何処までもリアリストな樹里と結菜は現実を受け入れたようだがアオは未だに理想に浸る。

 

ヒーローごっこしながらも日常に戻れた頃に帰りたいと泣く中、結菜が肩に手をおいてくれる。

 

「私達は運命共同体よぉ…家族よりも濃い血の繋がりを作りましょう。私に貴女を守らせて」

 

「結菜さん……」

 

「生きるも死ぬも共になる…そんな姉妹の絆を築き、悪魔と戦い続ける…命が燃え尽きるまで」

 

「樹里サマも賛成だ。悪魔に怯えて生きるなんざごめんだね…殴られたら殺す生き方がしたい」

 

微笑みを浮かべる結菜と樹里を見たアオは涙を拭いて立ち上がった後、こう告げてくれる。

 

「うん…そうしよう。わたし達は姉妹になる…これからも宜しくね、姉さま…姉ちゃん…」

 

3人が手を取り合う中、ずっと黙り込んだまま震えているひかるに顔を向けていく。

 

「ひかる…貴女にはまだ家族がいるでしょう?どうにかして家族と一緒に避難すれば…」

 

「……いいえ、ひかるもついて行くっす」

 

「ひかる……」

 

「何処にいても悪魔に追われるぐらいなら家族は捨てるっす。そうすれば家族は生き残れる…」

 

「それでいいの…?貴女まで山賊のような生き方をさせないといけないなんて…」

 

「ひかるは結菜さんについて行くっす!お願いだから…ついて行かせて欲しいっすよぉぉぉ…」

 

辛い決断に耐え切れなくて両膝が折れたひかるまで泣き崩れてしまう。

 

現実的判断をしようとも家族というライフラインを失う人生を生きるのが怖くて堪らないのだ。

 

そんな彼女に駆け寄ってくれた者達が抱きしめ合いながら誓いを立てることになる。

 

「もう寂しいまま怖い思いは誰にもさせない…私達は血よりも濃い絆で結ばれた姉妹になるの」

 

「みんなを支えるためなら樹里サマはどんな汚れ仕事だってやってやるから…安心してくれよ」

 

「姉さま達が支えてくれるなら…わたしだって支えたい!一緒に行こうよ…ひかる!!」

 

「グスッ…エッグ…みんな優しくて…心が強くて…ひかるは…もう怖くないっす!!」

 

人間として生きた人生を捨て、悪魔に復讐を誓う者達の一団が結成されることになっていく。

 

彼女達は二木市で生き残りを探していき、見つけた魔法少女達も姉妹の輪に加えてくれる。

 

そんな者達で協力しながら強く生きていこうと立ち上げた集団こそが()()()()()()()()()

 

二木市で巻き起こった悪魔の血の惨劇を生き残った者達の人生は過酷を極めるのであった。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――

 

それからの紅晴結菜達の人生は文字通り山賊略奪団と変わらない人生を生きていく。

 

家族というライフラインを失った彼女達は強盗団の如く人間社会から金品を盗んでいくのだ。

 

魔法の力を用いた犯罪行為に対する警察は手の施しようがなく、警官の中には死人も出ている。

 

犯行現場を通りかかったパトカーの警官達はパトカーごと焼き尽くされて焼死していたという。

 

目撃者となった民間人まで刺殺されたり撲殺されて頭が陥没している死体も続出しているのだ。

 

彼女達の生き方はまるで狂犬時代の佐倉杏子のようであり、生き残るために魔法で悪行を働く。

 

悪魔だけでなく魔法少女まで人間社会の敵となった社会情勢の中、人々は恐怖地獄に陥るのだ。

 

もし魔法少女の虐殺者だった頃の人修羅が通りかかったなら彼女達は容赦なく殺されただろう。

 

それでも彼女達とて本心から望んで山賊に成り果てたわけではない。

 

悪魔に追い詰められてライフラインを失ったからこそやむを得ない事情があるのだろう。

 

仕方ないで済ませる連中を絶対に許さないと虐殺の限りを尽くした頃の人修羅はもういない。

 

山賊のような社会悪もまた社会悪に成り果てる原因があったのだと彼は知った者なのだ。

 

そんな人修羅であるが彼の姿は神浜で目撃されたのを最後にして消息を絶っている。

 

彼女達の凶行を止められる日が来るとしたら、それは悪魔に殺された時だけかもしれなかった。

 

……………。

 

「……生き残るためとはいえ、ミイラ取りがミイラに成り果てるなんて……笑えないわぁ」

 

二木市を捨てた結菜達は悪魔からの逃避行を続けながらも何処かの地方都市で生きている。

 

深夜のビジネスホテルの屋上ではソウルジェムを生み出して悪魔を探る結菜がいるようだ。

 

下の階ではベットに入って睡眠をとる樹里とアオとひかるの姿が見える。

 

長女となる結菜が夜の見張り番を務めてくれるから彼女達は寝込みを襲われる心配がない。

 

しかし結菜の目の下には酷いクマが浮かんでおり、日中でも長女としてろくに寝てない様子。

 

心配してくれる義妹達であるが結菜は気丈な態度を見せながら彼女達を導こうとする。

 

それでも払ってきた代償はあまりにも大きく、新たに失ってしまった少女達を思っていく。

 

「あれから私達は悪魔に狙われる国中の魔法少女を集めようとした…だけど悪魔は追ってきた」

 

かつて結菜が率いていた虎屋町に属していた鈴鹿さくやも彼女達の輪に加わった1人。

 

生き残ってくれていた貴重な魔法少女として結菜は快く彼女を受け入れてくれる。

 

しかし二木市に現れだした悪魔の数は膨大であり、劣勢に立たされた彼女達は街を捨てていく。

 

最初の逃避行を続けていた頃、その惨劇は起きてしまう。

 

「私が迂闊だった…悪魔に擬態能力があるだなんて…キュウベぇは語ってくれなかった!!」

 

魔界から新たな獣がやってくるという事しか伝えていなかったせいで犠牲者が生まれてしまう。

 

さくやに近寄ってきた子供が木に引っ掛かった風船を取って欲しいとせがんでくる。

 

ちょっと行ってくると結菜達の元を離れて林の中に行ってしまったのが運の尽き。

 

陸上部の選手だったさくやが大きく跳躍して風船を取ってあげた後、子供の頭を撫でてくれる。

 

その心優しさに付け込んだ擬態悪魔は彼女が後ろを振り返った瞬間、彼女に襲い掛かっていく。

 

悪魔の魔力が背後に現れたと気が付いた瞬間、彼女の上半身は悪魔にマルカジリされていた。

 

「ごめんなさい……さくや……それにらんか……私が弱かったばかりに……」

 

大庭樹里を慕う智珠らんかも結菜達と共に逃避行を選んだ者の1人。

 

流されやすいタイプで芯の弱い性格をしている彼女は樹里に縋りつきながら逃げていく。

 

アオとはグループ時代の敵同士であるのだが、生き残る事が先決だと互いに矛を収めたようだ。

 

そんな彼女だったが追手としてやってきた悪魔との激戦の末に命を散らしている。

 

現れたのはキンキの兄弟鬼であるスイキであり、兄弟の仇として襲われているのだ。

 

氷結魔法を得意としたスイキの絶対零度地獄によって絶体絶命となった時、らんかが動く。

 

凍結した体が砕けようともUFOキャッチャーのような武器を用いて自分ごと悪魔を拘束する。

 

そして彼女はソウルジェムを用いて至近距離の自爆に巻き込む形でスイキを撃退したのだ。

 

「らんかを失ってしまったアオも精神が不安定だわ…元よりあの子は罪人にはなれない子よ…」

 

憎んでいた子が命を懸けてまで自分を守ってくれた光景を見たアオは自己嫌悪に陥っていく。

 

独りで携帯ゲーム機を遊ぶ時にはもっと仲良くしてあげるべきだったといつも口にしている。

 

グループ時代から理不尽な者からの搾取に苦しんできた彼女は悪魔に搾取されたくないという。

 

それでも心の何処かで悪魔に殺されたら楽になれるのかもしれないと諦めが浮かんでいるのだ。

 

「私達は生き残らなければならない…それが私達の戦いよぉ。だけど誰も信用出来ないわぁ…」

 

悪魔共を追い詰めようと足掻いてきたが、追い詰められているのは自分達の方だと怖くなる。

 

人間社会に略奪行為までして社会からも追われる立場になった彼女達は四面楚歌の状態なのだ。

 

「フフッ…独りで自問自答ばかりするようになってしまったら、あの子達を心配させるわねぇ」

 

独りで抱え込む不安を口に出すのを止めた時、人の気配を感じ取る。

 

ソウルジェムから棘付き棍棒を生み出した結菜が武器を構える先にいたのは少女の姿である。

 

ミニスカートの上にはパーカーを纏っており、フードで頭部を覆う少女が顔を上げていく。

 

三日月の光に照らされた人物の正体とは素性を隠した時女静香であったようだ。

 

「…何者なのぉ、貴女は?魔法少女の指輪は無いようだけど…只者じゃないわねぇ…」

 

「夜分遅くにごめんなさい、驚かせてしまったなら謝るわ。私は時女静香という者よ」

 

「時女さんねぇ……一体何の用があって私の前に現れたのかしらぁ……?」

 

「時女一族の分家筋が情報網を張るこの街まで来てくれたお陰で…貴女達の活躍は届いてるわ」

 

分家から届いた情報とは地方都市において悪魔を相手に勇敢に戦う魔法少女がいるというもの。

 

その活躍は鬼人の如き戦いぶりであり、護国守護のために役立てないかという提案報告だった。

 

「不躾だけど貴女達の社会的な情勢も調べさせたわ。どうやら私達と同じく追われる者なのね」

 

「気に食わないわぁ…嗅ぎ回られるのは大嫌いなのよぉ。要件だけを言ってから消えて頂戴…」

 

「そうね…怒らせちゃうわよね、分かったわ。私の要件とは貴女達の力を護国救済のために…」

 

「断るわぁ」

 

即答された事で流石の静香も不機嫌となり、パーカーを両手で押し上げながらこう返す。

 

「分かるわ…誰も信用出来ないんでしょ?私だって国から追われた者…貴女の気持ちは分かる」

 

「だったら今すぐ消えて欲しいわぁ。私達はね…生き残るだけで精一杯なのよぉ…」

 

「悪魔から逃げられる場所なんて何処にもないわ。メディアどころか国さえも支配してるのよ」

 

「…悪魔の存在を知っている上に魔法少女ですらない。貴女…一体どんな存在なのぉ…?」

 

警戒心を爆発させた結菜が魔法少女姿に変身してしまう。

 

一本角に巻き付ける形でソウルジェムのネックレスを身に着けた者が鬼の形相を浮かべてくる。

 

しかし彼女よりも先に仕掛けたのは起きていた樹里であり、火炎放射器の炎が迫っていく。

 

迫りくる業火でさえ涼しい表情を浮かべる静香が右手をかざしながら炎を受け止めるのだ。

 

「おい…何なんだよコイツ!?樹里サマの炎を…喰っちまってるのかぁ!!?」

 

業火を噴射し続けるのだが炎の世界に浮かぶ静香の人影は微動だにせず炎を吸収していく。

 

噴き上がる業火が収まった時、炎の世界から現れたのは火の神となった静香の姿なのだ。

 

「これで証明されたわねぇ…貴女は魔法少女じゃないわぁ!私達を殺しに来た悪魔よぉ!!」

 

「違うわ!私だって元々は魔法少女……」

 

「だーまーりーなーさァァァーーーーい!!!」

 

取りつく暇もなく襲い掛かってくる結菜の表情は悪魔に対する憎しみを爆発させる醜さ。

 

棘付き棍棒を豪快に振り回しながら襲ってくるが静香は軽やかな回避で避けていく。

 

続く樹里の回し蹴りをバク転で避けた静香が連続バク転を決めながら跳躍する。

 

忍者の如き俊敏な動きで屋上に入る入口の屋根に着地した静香が叫んでくるのだ。

 

「話を聞いて!このままでは貴女達は悪魔に包囲されて殺される!貴女達を助けたいのよ!!」

 

「どうせ私達を捨て駒にしたいんでしょ?それに悪魔なんかについて行くぐらいなら殺すわぁ」

 

「どうして信じてくれないの!?疑うのも大切だけど…信じる気持ちも大切なのよ!!」

 

「悪魔なんか絶対に信じないわぁ!!騙し討ちばかり仕掛けてくる連中なんて死んでしまえ!」

 

疑いの感情が極まれば加害者にしかなりえない。

 

今の結菜の姿が魔法少女の虐殺者時代の嘉嶋尚紀の姿と重なっていく。

 

結菜達には常盤ななかのような敵を見分ける固有魔法がないため疑心暗鬼に支配されるのだ。

 

「歴史は繰り返すのね…嘉嶋さんだけの問題じゃない、みんなが陥る心の病気だったのよ…」

 

説得を諦めた静香は帰る前に最後の言葉を送ってくれる。

 

「時女一族は日の本を悪魔から守る一族…全体を救うためにこそ貴女達は戦ったんでしょ?」

 

「全体の奴隷になるぐらいなら個を貫き通してやるわぁ。私達の個とは悪魔への報復心よぉ」

 

「…気が変わったなら大国村を探してみて。そこでなら…追われる貴女達は匿ってくれるわ」

 

「大国村ねぇ…覚えておくわぁ。悪魔共の住処みたいだしぃ…虐殺しに行ってやるからぁ」

 

諦めた表情を浮かべた静香が大きく後ろに跳躍してビルから飛び降りていく。

 

鳥に擬態していたホウオウが彼女を受け止める形で舞い上がり、夜空の彼方に消えていく。

 

見送ることしか出来ない樹里は舌打ちした後、結菜に振り向き心配そうな顔を浮かべてしまう。

 

「よく言ってやったな、姉さん。だけど無理し過ぎだろ…酷いクマで美人が台無しなんだ」

 

「大丈夫よぉ…貴女達の安眠は私が責任を持って守ってあげるからぁ…」

 

「そんなんだから樹里サマは心配で夜もグッスリ眠れないんだよ。少しは頼ってくれよな?」

 

はにかんだ笑みを浮かべてくれる義妹の思いやりが嬉しいのか、結菜も疲れた笑みを浮かべる。

 

それでも静香が語った言葉は現実を言い当てているものであり、酷い焦燥感に支配されていく。

 

(私達は誰も頼らない…誰も信じない…だってそうしないと…悪魔共に殺されてしまうから…)

 

この時は誰も頼らないで生きていけるのだと無根拠に信じてしまう。

 

人間も魔法少女も変わらない生き物。

 

人は感情と思い込みの世界しか見ない、エゴに塗れた偏見生物なのであった。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――

 

鬼悪魔達に包囲された結菜達は最後の戦いを繰り広げていく。

 

「殺してやる!殺してやる!!殺してやるーーーッッ!!!」

 

懸命に火炎放射器の業火を浴びせていくが、フウキは風の魔法を操りながら炎を逸らす。

 

フウキも四鬼の一体であり、キンキとスイキの仇討ちに現れた妖鬼の一体なのだ。

 

「貴様らは我ら鬼を敵に回した者共だ。楽に死ねると思うなよ」

 

最大出力で火炎放射器を浴びせる中、炎の渦を真一文字に切り裂く何かが飛んでくる。

 

「あっ……らっ……?」

 

お腹の辺りから大量に血が流れているのが不思議なのか、樹里は右手でお腹に触れてみる。

 

彼女の体は真空刃によって切断されており、追い打ちをかけるかまいたちが飛んでくる。

 

「樹里ーーーーッッ!!?」

 

風の渦に飲み込まれた樹里の体が細切れとなっていき、円環のコトワリに導かれてしまう。

 

「イヤァァァァーーーッッ!!!」

 

鬼悪魔達に捕らえられたアオは豊満な体をしているせいで鬼悪魔達を興奮させてしまう。

 

精神が不安定な彼女は魔石を用いても穢れが強まるばかりであり、全開戦闘が出来ない者だ。

 

魔法少女服を引き裂かれたアオは赤面しながら大粒の涙を零していく。

 

「俺様が先だぁ!!」

 

「ずるいぞ!!俺が一番槍をもらうんだよぉ!!」

 

仲間割れを始めていく鬼達を震えながら見つめるアオの脳裏に浮かぶのは搾取し続けた者の姿。

 

「わたしはもう搾取されたくない…理不尽に搾取されるばかりなら…もう終わりでいい…」

 

下着姿のままソウルジェムを握り込んだアオが結菜に顔を向けてくれる。

 

「だ…ダメよアオ!!お願いだから早まらないでぇ!!」

 

「余所見をするな!!貴様の相手は我なのだぞ!!」

 

四鬼の長男であるオンギョウキが振るう半月型の刃が結菜の背中を大きく切り裂く。

 

倒れ込みそうになる中、アオの最後の光景を目にすることになるだろう。

 

「ごめんね……姉さま……」

 

握り締めたソウルジェムが眩い光を放ちながらアオと共に自爆してしまう。

 

包囲されていた廃工場ごと爆発したため結菜と鬼達は工場の外まで弾き飛ばされていくのだ。

 

「ぐっ……うぅ……」

 

何体かの鬼は爆発に巻き込まれて死んだようだが、オンギョウキとフウキは健在の様子。

 

結菜も最後の力を込めながら立ち上がろうとするのだが、彼女の名を呼ぶ声が聞こえる。

 

「ごめん……なさいっす……結菜……さ……ん……」

 

後ろに振り向けば外で戦っていたひかるの悲惨な姿が見えてしまう。

 

「アッハハハハ!!アタシの刃に切り刻まれて美しい姿になったじゃないか!」

 

紫色の肌をした鬼の女こそがヤクシニーであり、混乱魔法を浴びせられた者が刻まれている。

 

四肢切断されてダルマにされたひかるのソウルジェムを掴んだヤクシニーが一気に飲み込む。

 

「クゥゥゥゥ……!!絶望に染まった魔法少女のソウルジェムこそ!悪魔の美容に最適だね!」

 

もはや絶望しかないのだと悟った結菜が狂った笑い声を上げていく。

 

鬼の武器を地面に突き立てた鬼の魔法少女は最後の戦いに赴くのだろう。

 

「悪魔なんか最低の存在よぉ…だけど武人としての気概が僅かでもあるなら…私と戦いなさい」

 

一騎打ちを所望している者の挑戦を受けようとフウキが動くが、彼の肩をオンギョウキが掴む。

 

「我が行く。少女であろうと同じ鬼の道を進んだ者だ…妖鬼の長として引導を渡してこよう」

 

全身黒ずくめの装束を纏い、夜叉のような仮面を身に着ける忍者めいたオンギョウキが動く。

 

新月によって光も届かない暗闇の中、互いが武器を構えていくのだ。

 

「鬼の道を進んだ魔法少女よ、汝はこの世の真実が見えたか?」

 

「ええ……見えたわ。私達魔法少女にあるのは……絶望だけなんだとね」

 

張り詰めた殺気が場を凍り付かせる中、先に動いたのはオンギョウキ。

 

「行くぞ小娘!!鬼の道を進み切った者として我も技を尽くそうぞ!!」

 

半月型の刃が両方に備わる槍を豪快に回転させた後、四体の分身を生み出す。

 

四体の分身が一気に動いて斬撃を仕掛けるが、結菜は固有魔法の対象変更を用いる。

 

四体の分身が繰り出す斬撃を全て相手側に変更したことで質量攻撃を全て消し去る。

 

しかし背後にいたオンギョウキこそが本物であり、囮に魔法を使った彼女は最後を迎えるのだ。

 

「これで終わりだぁ!!」

 

首を跳ねんと横薙ぎを放った瞬間、突然眩い光が生み出される。

 

夜の世界を光で包み込む程の光景が生まれた後、紅晴結菜はこの世から消滅していたのだ。

 

「……最後の魔法攻撃をしくじった時、汝の心は絶望に飲まれたか」

 

ソウルジェムが絶望に飲まれて砕けたことでオンギョウキに殺される前に彼女も死んでしまう。

 

迎えに来てくれた円環のコトワリの表情は悲しみに包まれているが、結菜は首を横に振る。

 

自分を貫いて死ねたのだからいいのだと言わんばかりの顔をしながらまどかの手を取ったのだ。

 

この世の存在の全ては()()()()()()()()()()()()

 

自然の循環は全てが繋がり合わなければ機能しない。

 

国や企業とて多くの人の繋がりがなければ機能せず、それは魔法少女達とて同じだろう。

 

もし紅晴結菜達が少しでも悪魔達を信じてくれたなら、結果は違ったのかもしれない。

 

それでも彼女達は魔法少女だけで生きていけるのだとエゴを貫いた末、滅びたのであった。

 




新たなメガテン世界になったまどマギは難易度マストダイ(必ず死ぬ)設定にされている気がする(汗)
救いがない絶望の庭を紹介するつもりで三話は描こうと思ってたので、次回からは人修羅君の話を描こうかと思います。
単独では成り立たないってのはメガテンでも同じですな、人修羅君が単独でボルテクス界を彷徨おうものならマタドール大先生にパトられること確実ですぞ。
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