人修羅×まどマギ まどマギにメガテン足して世界再構築 作:チャーシュー麺愉悦部
理不尽な現実のせいで誰も守れず、誰もいなくなった深夜のメイド喫茶は酷い荒れ模様である。
キャバクラのように酒を提供しない純粋なメイド喫茶だったのに酒瓶が多く転がっているのだ。
「ヒック…アタシ達庶民なんて…金融エリート共から死ぬまで搾取されて…殺されるだけよ…」
ワインを瓶ごとラッパ飲みしているのは十七夜の恩人である店長だった男である。
飲み切ったワインを乱暴に捨てて瓶を割ってしまう男の心は絶望によって壊れてしまう。
「与党の政策ブレインを務める外国人共はね…
日本の中小企業は合併が望ましく、国の中小企業の半分は潰れるべきだと外国人が言ってくる。
グローバル資本家は未知の病魔を利用して中小企業等を統廃合した末に資金注入で支配する。
スポンサーとして自分達の傘下に加えられれば日本の労働者達は外国スポンサーの家畜と化す。
このように惨事を利用して利益を得る手口の事を
「政権与党の最高顧問の男はね…競争力のない中小企業は潰れればいいと言葉を残してるわ…」
中小企業を潰せば経済が発展するという狂論を政権与党の最高顧問が語る国、それが日本。
日本の雇用の70%は事業所の99%を占める中小企業に依拠してるというのに潰せとくる。
大企業の設備投資もこれらが生む個人消費によって支えられているというのに潰せとくるのだ。
「中小企業を潰せば雇用と個人消費と設備投資を全て悪化させるのに…欧米の命令で潰される」
弱肉強食淘汰に任せれば経済は発展するという清算主義を振りかざす暴論で日本は蹂躙される。
倒産、廃業、失業によって自殺者の山を築く末路なら誰でも分かることだろう。
「クソ経団連共だけが儲かっている仕組みはね…企業努力じゃないの。租税回避の特権なのよ」
経団連グループ企業の収益が高いのは消費税の払い戻しや租税回避などの
日本の政官財が結託して悪事を働く成果でしかなく、経営努力や生産性とは全く関係ない。
エリートが言う淘汰とはただの詭弁であり、目的は自分達の金儲けと弱者抹殺でしかないのだ。
「暴論で破壊される日本の倫理道徳と経済社会の共生関係…国の選挙はあっても民意はないわ」
矢部内閣から八重樫内閣に政権交代しようが、やってきたのは前の総理の政策引き継ぎばかり。
民営化、規制緩和、自由貿易を柱とするグローバル化路線を継承し続けている。
野党政権時代の総理大臣が残した言葉通り、日本の総理大臣に権限などない。
重要法案は日米合同委員会で決定されると公言する内容通り、日本に主権など存在しないのだ。
「内閣の顔ぶれが誰になろうが外資という司令塔は不動なのよ…トランスナショナルの怖さね」
国際金融資本家は国の思惑など遥かに超えた
国会は民意を汲み上げる機能を持たず、国民を騙しながら高過ぎる給料でぼろ儲けしたいだけ。
「政権与党のクソ最高顧問をやってる第92代総理大臣が言った有名な言葉があるわよね…」
――お前は2000万円持ってないのか?俺なんて飲み代が2000万円だぞ!
国は年金の不足を補うために2000万円貯蓄しろという。
しかし年収200万円未満が1000万人を超え、三世帯に一世帯は貯金無しが日本である。
勤労者の40%がボーナスも退職金もない非正規という惨状の上で暴論を吐いた男なのだ。
「米国議会も国際金融と多国籍企業の資金工作で動く…こいつらが日本の法律を決めるのよ…」
国民代表が民意を集約して政治に反映させる議会制民主主義など日本にも世界にも存在しない。
あるのは多国間に跨る金融と企業が
グローバル・ガバナンスこそが世界の真実であり、これこそが世界のワンワールド化だった。
「アタシがメイド喫茶なんて始めた本当の理由はね…日本と世界の真実に絶望したからなの…」
自責の念を吐き出すようにして過去を独白していく男の表情は懺悔にも似ている。
「アタシなんかが政治を知ってもどうにもならない…だから皆で楽しく現実逃避したかった…」
母子家庭で暮らしも楽ではなかった男は同じ生活苦の女性達と共に生きたいと願っていく。
彼のメイド喫茶に集められたメイド達は東西に関係なく生活が苦しい者を集めてきたのだろう。
その中でも一番生活が苦しかった和泉十七夜はとくに心配しており、彼女を守りたかったのだ。
「だけど…間違ってた。現実逃避してたって…若者達の未来は…絶望しか残らないもの!!」
彼の心の中に噴き上がっていくのは義憤の怨念。
社会的弱者の家庭で産まれてしまった少女達の人生を守り抜きたい愛こそが心を爆発させる。
「ぐっ!!?がっ……ッッ!!?」
突然苦しみだした店長が席を立ちあがり、胸を抑え込みながらふらついてしまう。
「体が……熱い!!心が……熱い!!アタシの中に…獰猛な獣が…入ってくる!!!」
魔界から流れてきた悪魔の悪霊に取り憑かれた店長の体が膨張していく。
全身の肌が黒ずみながら毛深くなっていき、筋肉が膨張しながら両手足も巨大化する。
髪の毛は金色になりながら伸びていき、顔も狼のようになっていくのだ。
「パッションが……みなぎるぜェェェェーーーーッッ!!!」
獣人化した店長が雄叫びをあげながら獣の手で服を破り、黒ずんでたくましい胸板を曝け出す。
靴やズボンも獣の足によって突き破った悪魔が金髪をオールバックにキメながら叫ぶのだ。
「ピュタン、ドゥ、メ-ルド達よ!!このアタシが本物の自由民主主義を体現してやろう!!」
史上最凶糞レベルに限定して使われる非常に最低なフランススラングを叫ぶ獣が不気味に笑う。
フランス語を交えながら腐敗政治と戦う意思を示す獣悪魔こそ、ウェアウルフそのものだった。
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「ヒィィィィーーーーッッ!!?ば…ばば……化け物ォォォォーーーーッッ!!?」
神浜の高級住宅街では血煙が吹き荒れている。
衆議院議員総選挙が控えているこの頃、国政入りを目指して出馬を表明した男の家は血の海だ。
屋敷の玄関ブザーが深夜に鳴らされ、不信に思いながらも玄関を開けた妻は惨殺。
異界を構築して屋敷全体を飲み込んだ狼男は鼻歌を歌いながら息子も惨殺。
返り血塗れになりながら男の部屋に入り込んだ獣悪魔が怒りのオーラを出していく。
「夜分遅くに失礼するぞ、今日は税金泥棒議員の頭蓋で乾杯がしたくて訪れたのだよ」
「しゃ…喋れる狼男なのかぁ!?まるで…ウェアウルフじゃないかぁ!!」
「エグザクトゥマン!フランスではね、ウェアウルフはルーガルーと呼ばれるのだ」
【ルーガルー】
ライカンスロープとも呼ばれる狼男であり、北欧神話にも原型が残る狼悪魔。
ヘロドトスの歴史にあるネウロイ人についての一年に一度狼になるという記述がある。
医学的記述としてはローマ帝国末期に人が獣化する現象が初めて症候群として紹介されたのだ。
先天的に狼男へ変身を行うタイプもいるが、呪いによって後天的に狼男になるケースもある。
呪いをかけられてルーガルーになった者は人や狼だけでなく様々な動物に変化する悪魔だった。
「まるでギリシャ神話のゼウスがリュカーン王を魔法で狼に変身させた祝福だと思わないか?」
「夢の存在じゃないんだな…?その返り血は何なんだ!?私の妻と息子はどうした!!?」
「勿論殺したぞ?国民の血税で豪遊したいだけの詐欺師共を止めない連中は同罪なのだよ」
日本の国会議員の給料は世界一高い。
世界の国会議員の給料と比較しても桁外れであり、年収は手当をつければ四千万円とくる。
選挙で嘘を垂れ流して議員の椅子さえ手に入れれば国会で寝ていようが数千万円手に入るのだ。
「給料が高いから文句があるわけではない、国民の信任を裏切り、役目を放棄した罪が問題だ」
物腰が柔らかい貴族風紳士を演じる悪魔であるが、その目は正体を隠せていない。
獰猛な眼は獲物を捕らえており、他の獣悪魔同様にして獲物を引き裂くてウズウズしている。
「妻と息子は関係ないだろ!!私を殺しに来たのなら…私だけ殺せばいいだろう!?」
「この世の悪は悪人だけではない、無知を選ぶ善人達の沈黙も悪に加担するもの、許されんぞ」
キング牧師が残した言葉を信じる者が両手を鳴らしながら迫ってくる中、その眼が瞬膜と化す。
「今宵はセボンな国賊の血肉を用いて!遅いディネを楽しむとしよう!!」
「や……やめてくれぇぇぇぇぇーーーーッッ!!!」
獰猛な狼男に飛びつかれた男は両手の鋭い爪で引き裂かれながらバラバラにされていく。
国賊の内臓を全て摘出したルーガルーは心臓を貪り食った後、こんな言葉を呟いてしまう。
「政治と金の癒着をする者は時代劇の如く成敗されるが…もっとカッコよくいけばいいのだが」
時代劇ヒーローのような優雅さが足りないと悩むルーガルーは国賊の首を背骨ごと抜き取る。
背骨を持ちながら引っこ抜いた首を戦利品として持ち帰り、頭蓋の盃で乾杯するのだ。
「グローバル越後屋共に支配された悪代官共は震えていろ、今からアタシは人狼団となろう」
第二次大戦末期のナチス・ドイツにおいて連合軍を相手にゲリラ戦を行ったのが人狼団である。
ドイツ国防軍を支援するSS傘下の突撃部隊であり、連合軍に協力的な政治家を抹殺したのだ。
「憎悪こそ我らの掟!!復讐こそ我らの合言葉!!極右の怒りを思い知れ!!売国者共よ!!」
極右を掲げたナチスの人狼団が叫んだスローガンを叫ぶ男の姿はまるで和泉十七夜の姿である。
極左を掲げた彼女もまた神浜市議会議員の汚職と不正に怒りを燃やしながら惨殺しているのだ。
極右も極左も行きつく先は独裁者であり、邪魔者を暴力で蹂躙しながら社会正義を語っていく。
その光景こそLAWとCHAOSの悪魔達がもたらす光景であり、秩序も自由も行き過ぎれば地獄。
ドストエフスキーが残した言葉通りイデオロギーに取り憑かれれば最後、邪悪な悪霊と化す。
正義や道徳という見えないラッピング箱に隠された概念を崇める者達は気づかないだろう。
自分達の方こそが邪悪な悪者に変わっているという事が分からない者達は悪魔そのものだった。
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業魔殿とヴィクトルを紹介してもらった十七夜は深夜に起きた末に黙って外出していく。
「…悪い子に育って本当にすまない。それでも自分は吸血鬼…夜の世界でしか生きられない…」
家族は彼女が用いた睡眠魔法の影響を受けたせいで深い眠りに入っており、誰も気が付かない。
吸血鬼として血を求める人生しか生きられない女は悪魔の血を求めて夜の街を彷徨うのだろう。
血のように赤い満月が夜を照らす中、蝙蝠の一群が神浜の北を目指しながら移動していく。
(悪魔として気持ちが昂る…悪魔は月の影響を受けるという八雲の話は本当なのだろうな…)
空から地上を監視していると強大な悪魔の魔力を感じ取る。
聞こえてきたのは北養区にある高級マンションの屋上から発せられた狼の雄叫び。
(東京黙示録事件から生まれた新世界は悪魔の庭となったのだろう…ここが自分の戦場だ)
高級マンションまで飛んでいった蝙蝠の一群が屋上で人型を形成しながら十七夜の姿となる。
現れた少女を見るのは頭蓋の盃で食後のワインを堪能していたルーガルーなのだ。
「な……なぎたん……なの……?」
驚愕した表情を浮かべる狼男が動揺のあまり頭蓋の盃を落としてしまう。
「なぜ自分のことをその名で呼ぶ…?自分は狼悪魔の知り合いなどいないのだぞ…?」
「そうよね…こんな姿に成り果てたんですもの…アタシだって…気づかないわよね…」
「そのオネエ口調は…まさか……オネェサマだというのかぁ!!?」
十七夜まで驚愕した表情を浮かべながら震えていく。
大切な恩人がなぜ自分と同じ悪魔に成り果てたのか全く理解が追いつかない様子なのだろう。
「…どうやら貴女も悪魔のようね。魔法少女がいる世界ですもの…不思議じゃないわ…」
「どういうことなんだ…どうしてオネェサマが悪魔になれる!?その返り血塗れの姿は何だ!」
「アタシに与えてくれた世界の呪い…いいえ、祝福なのかしら?気が付いたらこうなってたの」
「オネェサマはワクチン接種した日から体調を崩したと聞いた…まさかワクチンのせいか!?」
「そうかもしれないし…今となってはどうでもいい。この力のお陰でアタシは世直しが出来る」
悪魔の世直しと聞かされたことで十七夜は店長が何をしてきたのかを理解する。
彼もまた彼女と同じく日本の腐敗政治に憤り、虐殺の限りを尽くしてきたのだ。
「アタシは日本を欧米に売る売国奴を許さない…全員血祭にした上で頭蓋で酒盛りしてやるわ」
「自分もな…神浜市政の腐敗に憤り…虐殺をした者だ。自分はオネェサマを否定出来ない…」
「フフッ…まるで平将門の乱が起きていた時代と同じね。中央政府と地方政府は腐ったのよ…」
右手の甲を見せるようにしながら右腕を持ち上げていく。
ルーガルーの右手の甲に刻まれていたタトゥーとはヴェアヴォルフである人狼団の旗章なのだ。
「同じ悪魔であり、国を憂うなぎたんに提案するわ。アタシと一緒に人狼団を築きましょう」
「国を相手にゲリラ戦でも展開しようというのか…?だが自分も東京テロの首謀者の1人だ…」
「なら猶更勧誘してあげる。国の秩序を恐れない自己犠牲精神が必要よ…一緒に戦いましょう」
自分を守り抜いてくれた店長の元でまた働けるチャンスが訪れてくれる。
しかし十七夜は顔を俯けたまま震えてしまうが、絞り出すような言葉を送ってくれるようだ。
「仲魔達に救われ…神浜に戻ってきた時…もう一度家族と出会えた。家族の大切さに触れた…」
「そう…それが戻ってきてくれた本当の理由だったのね。そして…家族団欒が愛しかったのね」
「家族は自分が大好きだと言ったカレーを用意してくれた…その光景は…他の一家もあるんだ」
「代償を支払わずに目的を達成しようだなんて、まるで
「国を救いたいと思い自分も覚悟を決めた者だ!だが家族が愛しい…他の人達も同じはずだ!」
「だからこそ家族の未来を守るために自己犠牲を行うの。そのための覚悟だったんでしょ?」
「自分達だけの家族が救われて…他の家族は犠牲にするだなんて…ただの選民主義なんだ!」
「世界とは選民主義。民の生活を守るために外国を排除する…それでしか守れない現実がある」
「それではな…魔法少女達を騙して世界の生贄にしようとしたインキュベーターと同じだ!!」
「そのインキュベーターとかいう魔法少女の妖精さんもね…自然のコトワリに従った者なのよ」
「自分の理屈は不自然だというのか…?世界に在りもしない虚構を求めているというのか…?」
「平等という虚構と同じものよ。平等や博愛では現実を守れない…それが理想論の弊害なのよ」
理想論というあるべき論はどうして人々から嫌われるのか?それには理由がある。
あるべき論という理想論の弊害とは、
お客様は平等に扱うべき!と叫んでもVIPと一般人ではどうしたって格差が生まれるのが自然。
理想や義務に盲従する理想主義者は強い説得力があるせいで強制に近い形で周りに押し付ける。
端的に言えば正義の押し売りが理想主義であり、会社でも現実問題に全く対処出来ていない。
理想論の正体とは
宗教に対してアレルギーを持つ日本人は理想主義者への嫌悪感が強く、だからこそ嫌われる。
そんな理想主義者になった者こそがマギアレコード宇宙で生まれた可能性の魔法少女だった。
「理想主義を掲げたソ連時代のトロツキーも追放されたわ…現実問題に対処出来なかったから」
「理想を追い求めていては現実を覆せない…だから誰かの愛しい家族さえも…犠牲に出来る…」
「それが決断であり、トロッコ問題よ。
「七海の社会治世は正しかった…彼女は現実を受け入れて…自分は理想を周りに押し付けた…」
自分が東の魔法少女社会から追放されたのは必然だったのだと理解するのだが、異変が起きる。
「ぐっ…!?がっ……ッッ!!?」
突然苦しみながら片膝をつく店長の様子が変化していき、紳士風の口調を喋り始める。
「かつて世話をしてきた者としての自我が強まったようだが…君はもう直ぐ悪魔になるのだよ」
「き…貴様は一体!?自分の店長はどうした…?貴様に宿った自分の恩人はどうなったぁ!?」
「君の大切な恩人こそがアタシなのだよ。守ってきてやった恩をそろそろ返してもらおうかな」
邪悪な笑みを浮かべながら舌舐めずりするルーガルーは十七夜の豊満な体を見つめてしまう。
「肉付きがいい女だ…アタシのセボンなディネとして、その血をアペリティフにしてやろう!」
豪快に雄叫びを上げるルーガルーが襲ってくると判断した十七夜であるが迷いに支配される。
「自分はオネェサマとは戦いたくない!そんな獣悪魔なんかに負けないでくれぇ!!」
「無駄なことだぞ吸血鬼!人狼も吸血鬼もキリスト教に貶められた者同士、派手に踊ろうか!」
人狼と吸血鬼は人を襲う存在として嫌われた悪魔であるが、元々は民間伝承を拠り所にする。
日本でも狼はマカミのように崇拝されたが、人里が広がれば人を襲うようになり呪われた存在。
殺し合う関係性ではなかったはずなのに殺し合う事になったメイドの心は苦しみ悶えていった。
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「さぁ、貴女の血肉をシル・ヴ・プレ!!夜の狩人としてお互いに血肉を求め合おうぞ!!」
雷を纏う狼と化したルーガルーが右手を構えながら放つのはジオンガである。
咄嗟に構えた十七夜もまた雷魔法のジオンガを放ち、互いの雷放射がぶつかり合う。
赤黒い雷と青白い雷がぶつかり合う中、互いの一撃が対消滅してしまうのだ。
「ほう…?流石は吸血鬼ですね。魔法戦は得意のようだ…」
「雷魔法は得意分野だ。同じ属性攻撃で攻めてくるならば迎え撃つだけだぞ」
「大した自信だ。では、これならどうだぁ!!」
両腕を構えながら大きく口を開き、全身の魔力を雷に変換しながら極大の一撃を狙う。
「この一撃は……いかん!!」
咄嗟に霧化した彼女の空間に目掛けて放たれたのは『スフレデクレール』の一撃。
敵単体に特大威力の雷撃属性攻撃を放つ一撃であるが実体を消されたら攻撃は当たらないのだ。
<<今度はこっちの番だ!!>>
極太雷ビームを凌いだ十七夜の霧が雷元素の霧となり、敵を覆った空間に目掛けて雷を放つ。
全体に雷撃攻撃を放つマハジオンガ空間となったのだが、ルーガルーはビクともしない。
「効きませんねぇ!雷を纏う狼として、雷を無効化することぐらい朝飯前ですよぉ!!」
雷撃無効耐性をもつルーガルーが拳を固めながら一気に地面を砕く。
彼の物理火力は凄まじく、それを与える『物理プレロマ』によって物理スキルも強大なのだ。
激しく砕けたビルの屋上から噴き上がった突風によって霧が吹き飛ばされてしまう。
「チッ!!」
霧が霧散する前に実体化して空中を飛ぶ吸血鬼姿の十七夜は周囲を警戒していく。
屋上が完全破壊される程の土煙が舞う中、一気に飛び出してきた人狼が右手を振りかぶる。
「ヴァ、トゥ、フェ-ル、フ-トル!!」
フランス語でくたばれと叫ぶ者が放つのは『虚空爪檄』であり、広げた赤黒い外套を切り裂く。
「うわぁぁぁぁぁぁぁーーーーッッ!!?」
浮遊力を失った十七夜が地上に目掛けて落下するが、地上に叩きつけられる前に弾け飛ぶ。
無数の蝙蝠になって逃げようとする者を跳躍しながら追う者が口から雷撃を放ち続ける。
高級住宅街を覆う異界空間を逃げる中、開けた路地裏に逃げ込んだ十七夜が実体化していく。
表した姿とは物理攻撃を主体とする常闇の騎士の姿であり、旗槍を構えながら迎え撃つ。
「ハッハッハッ!人狼を相手に接近戦ですか?いくら吸血鬼の剛力でも分が悪いですよ?」
「オネェサマの意識を取り戻すまでは歯向かって見せる…この首を喰らいたいならば来い!」
「ヴィアン、シュア!その美しい首を齧り取り、血肉を貪らせてもらうぞぉ!!」
体を揺らしたと思ったら目にも止まらぬ速さで動くルーガルーに翻弄される十七夜。
残像が残る程の移動速度を前にした彼女の動体視力でさえ人狼の動きを完全に捉えきれない。
「これ程までのスピードを持っているのか…人狼と呼ばれる悪魔共は!?」
「アタシが特別強いだけですよぉ!!」
姿が複数人に見える程にまで高速化したルーガルーの分身達が一気に飛び込む。
放つ一撃とは『狂乱の剛爪』であり、次々と繰り出される連続攻撃が十七夜の体を切り刻む。
「グワァァァァァーーーーッッ!!!」
鎧と鉄仮面を砕かれ、全身が血塗れになりながら倒れ込む者に対して人狼が大きく跳躍する。
住宅街の屋敷の屋上に立ったルーガルーは再び極大の雷放射を浴びせようとするのだろう。
「グフフッ!ピュタンを丸焼きにして豪勢なディネを頂こう!それがいい、そうしよう!!」
満月の影響なのか人狼は興奮しており、言葉遣いも紳士とはかけ離れたものになっていく。
売春婦だと馬鹿にするフランス語を浴びせられたメイドさんは涙を流しながら叫んでくる。
「やめてくれ…オネェサマ…!貴方は差別を憎んだ人だ!他人を平気で傷つけられない人だ!」
「オレサマニ命令スルナ!!ディネハディネラシク、オレサマノ腹ノ中ニハイッテシマエ!!」
もはや獣悪魔としての自分を隠さなくなった者がトドメの一撃を放とうとする。
そんな中、同じ獣悪魔に跨った魔法少女が現場に目掛けて迫ってくる。
「人の残酷さを知ってる貴方だからメイド喫茶を開いたんだ!そんな貴方について行きたい!」
「クダラン泣キ落トシナド無駄ナコトダァ!!シネェェェェェェ!!!」
ついに極大雷撃放射を放とうとした時、後方から迫ってくるのは無数の光の刃である。
「ヌワァァァァァァーーーーッッ!!?」
両足を切断した一撃によって人狼が倒れ込み、悲鳴を上げながら喚き散らす。
彼の足を切断したのは光玉から伸びた光剣であり、オラクルレイと呼ばれるマギア魔法である。
<今です!!獣悪魔にトドメを放ってください!!>
聞いた事もない魔法少女の念話が送られてくるが、泣き叫びながら念話を返してくる。
<出来ない!!オネェサマは差別に苦しむ自分を救ってくれた…家族と同じぐらい愛してる!>
<代償無くして生はないわ!貴女が愛する家族が暮らす街を守るためにこそ…代償を払って!>
そう言われた十七夜の目がカッと開き、無数の蝙蝠化を用いて人狼の元に飛んでいく。
人型を成した彼女が旗槍を構える中、最後の抵抗とばかりに両手の爪を地面に突き立てる。
「ソノ首……クワセロォォォォーーーーッッ!!!」
地面を引っ掻く勢いを利用して飛び込んできた人狼に対して、メイドさんは涙を零していく。
「ごめんなさい……オネェサマ。それでも自分は……家族とこの街を愛してる!!」
魔力を込めた旗槍の刃を地面に突き立て、放つ一撃とは冥暗の断罪。
地面から次々と伸びてくる魔力の槍に貫かれた人狼はついに倒されることになっていった。
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「…ミイラになるって分かってたけど、なってみたら辛いものね……なぎたん」
常闇の騎士に膝枕されているのはズタボロとなった人狼であり、意識は店長に戻っている。
「こんなんじゃ…フェミニストと変わらない…理想を押し通すために…暴力に頼ったわ…」
「オネェサマ……」
「梨花ちゃんに顔向け出来ないわね…怒りと憎しみを正当化した時点で…加害者になるのよ…」
体が砕けていくルーガルーの元に近寄ってきたのはケルベロスに乗った美国織莉子である。
彼女は予知能力を持った魔法少女であり、北養区で騒ぎが起こるのを知っていた者。
ルーガルーの臭いに感づいたケルベロスと共に独断で加勢に現れてしまったようだ。
「誰かは知らないけど…貴女が魔法少女なのね…?助かったわ…なぎたんを殺しかけたし…」
純白のドレス風な魔法少女服と四角い帽子に薄いベールを纏う織莉子も片膝をついてくれる。
「私の力ではきっと…貴方を殺しきれなかったと思うの。辛い役目を彼女に押し付けたわ…」
「いいのよ…アタシの可愛いメイドさんに殺されるなら…オーナーとして…本望よ……」
十七夜に顔を向けると目から大粒の涙が止まらないため、人狼の頭部に涙が落ちてしまう。
「自分は…オネェサマに救われた東の者だ…神浜ヘイト条例の時だって助けてくれたのに…」
「あの時からね…ただの人間としての自分の力の限界を感じてたわ…だから悪魔になったのね」
「どうして悪魔の力に頼ってまで世直しを望んだ!?自分達の仲魔になる道もあったのに!!」
「貴女達の輪に加わりながら楽に過ごしたってね…現実は変わらない。現実逃避になるだけよ」
「だからといって…悪魔の力に身を委ねてまで…世直しを望む必要なんて…ないはずだぁ!!」
体が砕けていく恩人に縋りつき、死なないでくれと喚き散らす。
その姿は子供時代の十七夜であり、出産に向かう母親に行かないでと縋りついた頃の姿なのだ。
「貴女のためにこそ語ってあげる…
「相反する存在は……同時に存在している……?」
「力を恐れないで…台所の包丁だって人間を殺す力よ…だけどそれを恐れたら生活出来るの?」
「……出来るはずがない」
「矛盾を恐れないで…悪人と変わらない正義の暴力もね…司法には無くてはならないものなの」
「うむっ…自分だって東の長だった頃は…それが無ければ東を統治することは出来なかった…」
「悪魔を恐れないで…悪魔なんて台所の包丁と同じよ…使い手次第で…活殺自在なのよ……」
「悪いイメージにばかり引き寄せられて…自分は見失っていたのか…現実を変える可能性を…」
「世の中を変えるなら綺麗事は通用しないわ…もし貴女も世界の変革を望むなら…覚悟なさい」
最後の力を振り絞りながら右手を持ち上げていく店長の手を十七夜は両手で掴んでくれる。
「差別も戦争もくだらないわ…世界には愛が必要よ…自分の心を押し殺す程の…ラブが…ね…」
「嫌だ……いやだぁ!!死なないで……死なないでくれぇ……オネェサマ……ッッ!!!」
「ラブ…アンド…ピース……平和を望むなら……自分を殺す…愛を…貫き…なさ……い……」
ついに体が砕け散った店長のMAGが夜空に昇っていく。
「オネェサマァァァァーーーー……ッッ!!!」
人食い人狼のイメージとは程遠い、優しいMAGの光に包まれる十七夜が絶叫してしまう。
隣の織莉子も貰い泣きしてしまい、佇むケルベロスも顔を俯けてしまうのだ。
ひとしきり2人で泣いてしまうが、それでも泣き腫らした顔になった十七夜が口を開きだす。
「……有難う、君。オネェサマの最後を共に見届けてくれた…大切な魔法少女だな」
「グスッ…本当に優しくて…強い人でした。貴女のオネェサマのお陰で私も覚悟が出来ました」
「えっ……?覚悟が出来たとは一体……?」
立ち上がった者達が自己紹介を始めていく。
織莉子も尚紀に救われた者であり彼を愛する者だと分かった十七夜は同士の眼差しを浮かべる。
そんな彼女に織莉子は内密にでも神浜に訪れた真の目的を語っていく事になるだろう。
「…いいのか、美国君?自分と同じ悪魔になる道は二度と戻れない道…君の仲間も心配するぞ」
「今の弱い私ではあの子達を守れない…あの子達は命懸けで私を守ったわ…今度は私の番なの」
未来予知を駆使して見つけ出した悪魔になれる力とは、吸血鬼となった和泉十七夜の能力。
彼女はクドラクの血を色濃く受け継いだ後継者であり、クドラクそのものと言えるだろう。
だからこそ彼女もまたクドラクと同じく仲魔を増やす能力が備わっているのだ。
「分かった…君の覚悟を受け止めよう。大事な事だから聞くぞ……君は処女なのか?」
そう言われた織莉子は赤面してしまうが、恥ずかしがりながらも頷いてくれる。
「資格と覚悟は十分だな……ならば、首元を見せるがいい」
ケープを纏った白いドレスの首元を広げたことで織莉子の美しい首筋が露出する。
それを見た途端、十七夜の中に宿る獰猛なクドラクの血が急激に高まっていく。
今宵は満月であり、悪魔の精神を高ぶらせる月齢の日。
獰猛な吸血鬼としての衝動を抑えきれなくなった十七夜が大きく口を開けて牙を見せる。
「受け止めるがいい…呪われた吸血鬼の血を!!そして自分達は…
身長が低い十七夜は尚紀と同じ身長もある織莉子の首筋に噛み付くために背伸びする。
「ぐっ……ッッ!!!」
両手で両肩を抑え込まれたまま首筋に噛み付かれたことで織莉子の顔は苦痛で歪んでいく。
十七夜の牙からはクドラクの血が分泌されていき、織莉子の体に宿っていくのだろう。
吸血鬼の血の影響を強く受けた織莉子が倒れ込む中、彼女を御姫様抱っこした者が去っていく。
「……我ノ背中ニ乗セルガイイ。行キ先ハ業魔殿ダロウ?コノ娘モ日ノ光ヲ克服シナケレバナ」
「助かる…。美国君もまた嘉嶋さんのために人生を捨てる覚悟だ…自分も彼女の覚悟に続こう」
「……ソウカ。後ハアノ男ガ戻ッテクルダケダナ…」
こうして和泉十七夜と美国織莉子は吸血鬼姉妹としての契りを結ぶことになるだろう。
いずれ嘉嶋尚紀も重大な決断をした後、全ての人のために別れを言いに戻ってくるはずだ。
全てを捨てて去っていく男の前に立った者達こそ吸血鬼姉妹達の姿となるだろう。
その時の織莉子は片目が隠れる程に髪が伸び、魔法少女衣装も変わった純白の吸血鬼姿だった。
まさか名前すら公式に用意されなかったマギレコモブキャラをここまで持ち上げ、最終章で晴れ舞台まで用意するとは…。
読めなかった…このリハクの目を持ってしても(汗)
さて、これで織莉子ちゃんもファイナルバージョンになったことだし、悪魔化する魔法少女は打ち止めだと思われますね。