人修羅×まどマギ まどマギにメガテン足して世界再構築   作:チャーシュー麺愉悦部

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悪魔の政略闘争編
319話 万魔殿に集う魔王達


後輩と今生の別れをしたアリナは悪魔合体を用いて己自身を魔王に作り替える道を選んだ者。

 

自分の求める美の極致を体現するため、そして悪魔ほむらを超えるための覚悟を示す。

 

高過ぎる代償を払った末に彼女はバアル神と並ぶ程の魔神としての道を生きることになるのだ。

 

神皇となった人修羅の姿を見届けてくれた彼女は現在、欧米で生活を送っている。

 

彼女は豊穣の女神として黒の貴族と接触してきた者であり、彼らは彼女に敬愛を示してくれる。

 

まだ悪魔化が済んでいない黒の貴族達は彼女に対してあらゆるお布施を与えてくれてきた。

 

目の前に積み上げられる程の財宝を女神に捧げてくれる貴族達であったが、アリナはこう言う。

 

Not enough at all.(全然足りないヨネ)

 

知恵のキュベレや橘千晶と融合した事で高い知性を得たアリナが語った言葉とは拒絶である。

 

王座に座る女神に対して転生を求める対価とは、この程度では釣り合わないと言ってくるのだ。

 

動揺を浮かべる黒の貴族達に対して要求するのは己の全てを女神に捧げられる程の覚悟。

 

アリナ自身が己の全てを捧げた末に悪魔の道を生きたように、黒の貴族らも覚悟を試される。

 

宮殿に集まった者達が動揺を繰り返す中、いの一番に覚悟を示した者がいた。

 

I give everything to you!(私は全てを貴女様に捧げる!)

 

叫んだ者とはロスチャイルドと並ぶイルミナティの司令塔一族であるロックフェラー家の当主。

 

彼は熱心なブラックキューブ崇拝者であり、クババを崇拝してきた者として最大の覚悟を示す。

 

You are the leader of our family!(我が一族を導く貴女様こそが当主です!)

 

ロックフェラー家の当主の覚悟を聞いたアリナの口元に不気味な笑みが浮かんでいく。

 

Okay. I'll re-create you.(OK。アナタは生み直してあげる)

 

こうしてロックフェラー家の当主はアリナが所有する子宮の館である邪教の館に招かれる。

 

生体エナジー協会の会長であるシェムハザとも繋がりを持てたアリナは用意した悪魔を用いる。

 

「アナタはアリナの僕にしてあげるカラ」

 

悪魔合体が行われる眩い光景を目にするのは邪教の主となったアリナとシェムハザの姿である。

 

「おぉ……素晴らしいぞ。生まれ変わった気分はいかがかな?ロックフェラーよ?」

 

眩い光が収まった白煙の世界から歩み出てきたのは十メートルはあろうかという巨人の姿だ。

 

「…素晴らしい、素晴らしいぞ!これこそ神秘主義の体現…そして…私は……だ…れ……?」

 

悪魔の知恵を手に入れたお陰で日本語が喋れるようだが目の前の悪魔は酷く混乱していく。

 

「私は…ロックフェラー?いや…違う…我は…我は…矮小な人間などでは…ない…ッッ!!」

 

突然両膝が崩れた巨人が頭部に纏う兜ごと頭を地面に叩きつけながら苦しんでいく。

 

その光景を見守るのはアリナとシェムハザであり、シェムハザは落胆したような言葉を吐く。

 

「どうやらロックフェラーの自我は崩壊するようだ。まぁいい…一族ならばアリナが引き継ぐ」

 

「さぁ、そんな弱いヒューマンなんてブレイクしてヨネ。アナタもヨスガデビルなんだカラ」

 

ひとしきり苦しんだ後、ゆらりと持ち上がっていく巨体から鬼神の言葉が呟かれていく。

 

「そうだ…我はヨスガを求めた悪魔…我こそがトール…我こそが…アース神族の戦神だ!!」

 

右手を天に掲げる巨人が生み出した神具こそ、北欧神話に名高き雷神を表す戦鎚であった。

 

【トール】

 

北欧神話における主要神の一柱であり、大神オーディンの息子であるアース神族の有力者。

 

トールは北欧神話だけでなくゲルマン人の信仰に根差した神であり、農民階級から信仰される。

 

個としての戦士の在り方としてはオーディン以上にバイキング達からも崇拝を受けた存在。

 

雷や天候、農耕を司り、 ミョルニル(トールハンマー)を武器にして戦う戦神であった。

 

「そなたから感じるぞ…ヨスガの鼓動をな。それにかつての魔丞殿と同じ程の強き魂を感じる」

 

「アナタの感は当たってるんですケド。アリナの中にはヨスガの千晶の魂も宿ってるんだヨネ」

 

「それだけではない…この力はまさにイナンナ…ではそなたは魔丞殿であり、イナンナ殿か?」

 

「イグザクトリー。アリナこそヨスガ…パワーオブパワーをワールドに与えるガッデスだカラ」

 

「おぉ……ならば我もそなたに続こう。我もまたボルテクスにおいてヨスガを求めた者なのだ」

 

白マントを纏い、金の胴鎧を纏い、下半身はブーツに白いふんどしという漢らしい巨人が跪く。

 

筋骨隆々の戦神を従えるアリナこそ、橘千晶から魔丞の地位を引き継ぐに相応しい光景なのだ。

 

「新たな魔丞の誕生を私も祝福しよう。そしてアリナ、お前こそが新たなロックフェラーだ」

 

「丁度良かったんですケド。グレイって苗字を捨てちゃったせいで…バランスが悪かったし」

 

「これからはアリナ・ロックフェラーと名乗れ。イルミナティの13血統連中には伝えておく」

 

「我の内には吸収した男の知識もある。新当主となったそなたを支え、一族の舵取りをしよう」

 

「それは任せるんですケド。アリナはアーティストであって、ビジネスウーマンじゃないカラ」

 

こうしてアリナはロックフェラー家の新当主となり、一族の守護神となってくれる。

 

ロックフェラー家の覚悟に続きたいと黒の貴族達も次々とアリナに迎合する態度を見せていく。

 

こうしてアリナの発言力は悪魔勢力の中でも強大なものとなり、勢力基盤を固めるのであった。

 

……………。

 

「ママン……じゃない、魔丞様。食事をお持ちしました」

 

執事服を着た擬態姿のアティスが入った部屋とは高層ビルのフロアを解放したアトリエ空間。

 

現在の彼女が暮らしている場所とはアメリカのニューヨークにある超高層ビルの一室。

 

ロックフェラー・センターとして知られる超巨大ビル街の内にあるコムキャストビルにいる。

 

ロックフェラー家が住んでいた56階の5600号室で生活していたようであった。

 

「テキトーに置いといて」

 

世界最大の石油財閥グループの当主となった女だというのに今の彼女は作業着姿をしている。

 

脚立の上に昇りながらペイントブラシで色を塗るのは巨大絵画であり、戴冠式の光景であった。

 

「それにしてもママン……」

 

「そのママンはやめてヨネ。アリナの中には確かにクババがいるけど、アリナはママじゃない」

 

「そうですか…それにしても何ゆえ商業ビルに住まわれるのです?郊外の屋敷もあるのに…」

 

「クリエイターは刺激が欲しいワケ。豪華な鳥籠で暮らしてたって刺激は得られないカラ」

 

「まぁ、今の魔丞様は万魔殿の最高宮廷画家でも在らせられますし…街に出たいのでしょうな」

 

絵具塗れの作業着姿でやってくるアリナがワゴンに置かれた瓶入りオレンジジュースを飲む。

 

用意されたチキン・サンドイッチを圧し潰しながら豪快に齧りつき、さっさと食事を済ませる。

 

「…もう肉食も出来るようになられたようだ。あれ程の惨劇を味わったというのに強い御方だ」

 

「アリナのハートにはもうウィークポイントは無いんだヨネ。弱さは克服出来たカラ」

 

「左様ですか……ところでマ……」

 

「マ……?」

 

不機嫌な顔を向けてくるアリナにビビり散らすアティスは大慌てしながら言い直す。

 

「い、いやいや!魔丞様にお伝えしなければならない連絡があったので報告するであります!」

 

慌てたせいで口調が再び乱れだしたアティスから受ける報告とは招集命令である。

 

「アリナが魔王にクリエイトしてあげた連中が雁首揃えて集まる会合にアリナまで行くワケ?」

 

「魔丞様はバアル様と並ぶ程の魔王で在らせられることをお忘れですか?私も偶に忘れますが」

 

失礼極まりない義理の息子に対してペイントブラシで顔を塗りたくる制裁を浴びせていく。

 

顔が虹色になってしまったアホから背を向けた彼女は苛立ちを見せながらも了承してくれる。

 

「まぁいいんですケド。ケテルキャッスル内部の美観もチェックしておく必要があったし」

 

「プライベートジェットは用意しておりますのでお急ぎくだされ。後それとですね……」

 

「まだあるわけ……?」

 

「偶にはコカトライスを使役してあげるで御座る。出番が無くて苛立っている様子アル」

 

「ハァ…統一性の無いアナタの口調に付き合ってたらアリナまで口調が変になるんですケド」

 

超高層ビルの窓際に立ったアリナが摩天楼都市の夜景を見つめつつも片手を持ち上げていく。

 

「誰もがアリナこそヴィーナスだと叫ぶ程の輝きを示していく…あのフェイカーには負けない」

 

悪魔ほむらに対抗心を燃やす彼女こそ金星を司る古の女神、イナンナだと自らを呼称する者。

 

天の女王として天地魔界を統べる者として認められ、光り輝く空の女王となる野望を燃やす。

 

天の女王の称号は古代を通して多くの異なる女神にも用いられてきた。

 

イナンナはこの称号を最も多く与えられた神であり、シュメールではニン・アンナと呼ばれる。

 

天の女王は聖書でも触れられ、バアルの妻アナトやアシュトレト、イシュタルとして語られる。

 

カナン地域の神々を崇拝するユダ族は約束の地から去らせるとエレミヤ書に残されていた。

 

<<キーッ!!我に窓拭きなんぞやらせる貴様なんぞイナンナではない!()()()()()だ!!>>

 

掲げた右手の前にいたのは超高層ビルの屋上フロアの窓拭きをやらされるデカラビアである。

 

どうやらアリナのオヤツを盗み食いしたのがバレたため罰を受けている最中のようだ。

 

「ハァ!?アリナはイナンナなんですケド!次もアスタロトって言ったらデリートするカラ!」

 

「ルーツは同じだろうが!エグリゴリの堕天使にこんな仕置きを浴びせるとは敬意が足りん!」

 

「デザートを勝手に食べた報いなんですケド!それにね…アリナの口臭は臭くないカラ!!」

 

「歯磨きも忘れるぐらい創作に没頭した末に眠るような女神こそ!口臭が酷いアスタロトだ!」

 

窓を通して睨み合う者達を見守るアティスも虹色の顔をしながら困り顔を浮かべてしまう。

 

魔王アスタロトとは皇帝ルシファー、君主ベルゼブブに次ぐ三強と呼ばれる強大な悪魔である。

 

巨大なドラゴン、あるいはドラゴンに似た獣に跨り、口からは毒の息を吐き出すという。

 

その起源はカナンのアシュトレトやイシュタルとされ、最古のルーツはイナンナだった。

 

<<コケーッ!!喧嘩シテナイデ出カケルゾ!イナンナハドラゴンノ背中ニ乗ルベキ神ダ!>>

 

ビルの屋上から念話を送るのはコカトライスであり、翼を広げながらバタついている。

 

鶏のような見た目であるがれっきとしたドラゴンであり、だからこそイナンナと共に在るのだ。

 

<それってさぁ…イナンナはライオンよりもドラゴンが似合うアスタロトだと言いたいワケ?>

 

不穏な念話が返されてきたコカトライスの全身から冷や汗が浮かんでいき、石のように固まる。

 

どんなお仕置きをされるか分からないため、迂闊に彼女を怒らせるわけにもいかないようだ。

 

<アリナはパズスに乗って出かけるカラ。アナタは留守番しておいてヨネ>

 

使役されたパズスの掌に立ったアリナを見送る仲魔達が夜空を見上げていく。

 

掌の上で喧嘩を続けるアリナとデカラビアを見ていたアティスはついこう言ってしまうのだ。

 

「性的儀式を司るママンと共にあるのは子宮を表す五芒星の悪魔…いいコンビなのでしょうな」

 

「マタ留守番カヨーッ!!フェニックスダケ見セ場ヲ作レテズルイゾーッ!コケーッ!!」

 

こうしてアリナ達一行は再び東京跡地に戻ることになっていく。

 

彼女達を乗せたプライベートジェット機が向かう地こそ、東京湾に出現した万魔殿であった。

 

────────────────────────────────

 

東京湾に出現したのはSF作品で使われる高軌道エレベーター程もある超巨大な塔である。

 

それを視認出来ない民衆ではないだろうが、何故か塔の姿を認識出来ていないようだ。

 

原因は巨大幻惑装置であり、邪悪な樹と言える塔の周囲は禍々しい六本の塔が構築されている。

 

六本の塔が描く形とはゲマトリアにおいて666を司る六芒星であり、バリア装置にもなる。

 

有事の際には塔を覆う障壁となり、平時の際には民衆の認識を惑わす幻惑装置になるようだ。

 

塔の情報を伝えられているのは一部の者達だけであり、許可が下りれば塔にアクセス出来る。

 

アリナが乗ったプライベートジェット機が降りていくのは超巨大ドッグ内にある空軍基地。

 

軍港と併設された空軍基地だけでなく、奥側には潜水艦ドックや造船所まで見える。

 

この超巨大ドック内だけでかなりの規模の軍隊を駐留させる基地機能があったようだ。

 

「フン、ビッグな穴倉の上に育ったクリフォト見学に出発なんですケド」

 

「懐かしい…かつてのケテル城とは違っても面影がある。もっとも近未来改修されたようだが」

 

護衛機が二番・三番滑走路に着陸していく中、アリナを乗せた飛行機は一番滑走路に下りる。

 

作業着を着ていたアリナであったが、仕立て人達が用意した黒のダブルボタンスーツ姿である。

 

ターミナルに近い一番滑走路に立ったアリナ達が向かうのは塔にアクセスするための昇降口。

 

高級リムジン車の車列を載せた巨大エレベーターが一気に塔を昇っていく。

 

大魔王達の居城を支える塔は下層部、中層部、そして神域である上層部と構造が分かれている。

 

下層部までがダボス階級等の人間達が利用出来る区画であり、そこから上こそ魔王達の領域。

 

「ここが中層部を構築する最初のクリフォトのようなんですケド」

 

「クリフォトは十の階層で分かれているのだ。ここは十の階層のうち、一番最初の領域だな」

 

アリナ達一行はクリフォトを進み、ケテルまで昇る直通エレベーターへと車列は走行していく。

 

この領域は物質主義を表すような摩天楼の煌びやかさだけでなく下層の貧民街まで構築する。

 

日本人にも馴染み深いイメージの勝ち組、負け組という概念が詰まったおぞましい領域なのだ。

 

「ケテル城まで昇る前にクリフォトの階層について我がレクチャーしてやろう」

 

「クババの知恵があるから知ってるけど…まぁ、語りたいならお好きにドーゾ」

 

ヘルメティック・カバラの流れを汲む魔術思想においては邪悪の樹は十個の殻球に分かれる。

 

1つ1つに対応する悪魔と悪徳が存在し、クリフォの番号の前には虚数単位を示すIが備わる。

 

1Iはバチカルである無神論を表し、サタン、ルシファー、モロクがこの領域を司る。

 

2Iはエーイーリーである愚鈍を表し、ベルゼブブがこの領域を司る。

 

3Iはシェリダーである拒絶を表し、ルキフグスがこの領域を司る。

 

4Iはアディシェスである無感動を表し、この領域をアリナが司る予定のようだ。

 

「ちょっと…それってもしかして…アリナをアスタロト扱いしている気がするんですケド!?」

 

「しょうがあるまい!アスタロトが現れんのだから…イナンナの貴様が乗っとればよかろう!」

 

「それは悪くない提案かも。クリフォトの中にあるアリナのアートシティ…ワクワクするヨネ」

 

「他にはこのようなクリファーが存在しているのだ」

 

5Iはアクゼリュスである残酷を表し、アスモデウスがこの領域を司る。

 

6Iはカイツールである醜悪を表し、ベルフェゴールがこの領域を司る。

 

7Iはツァーカブである色欲を表し、バエルがこの領域を司る。

 

8Iはケムダーである貪欲を表し、アドラメレクがこの領域を司る。

 

「9Iのアィーアツブスは不安定を表すが…名前の通り現在は担当悪魔がいない不安定状態だ」

 

「リリスが担当してた領域なんでしょ?あの女悪魔は人修羅に倒されたし…空席なままなの?」

 

「我が聞いた話ではな…その領域は悪魔となった暁美ほむらに任せる案が浮上しているのだ…」

 

「あの女までクリフォトを司る存在になるなんて…まぁ、アリナより下の領域だからいいけど」

 

「悪魔ほむらはレズビアンを渇望する女だと聞いている…ならば百合を表すリリスに相応しい」

 

「暁美ほむらがリリスの後釜になるっていうなら文句ないカラ。イナンナはアリナだけでいい」

 

暁美ほむらは鹿目まどかに捧げる愛を求めた少女であり、彼女もまたI(あい)を表す存在。

 

そんな彼女だからこそ大魔王はクリフォトの一部を司る存在にしようとしていると語っていく。

 

「最後の10Iはキムラヌートである物質主義を表し、ナアマがこの領域を支配しているぞ」

 

「ああ…あの色ボケ女デビルね…」

 

<<呼んだかしら?>>

 

「「へっ?」」

 

上を見上げればリムジン車のサンルーフから顔を覗かせている女悪魔がいる。

 

美しい金髪美女が笑顔を向けてくるのだが、彼女の顔の半分は醜悪な仮面を身に纏う女だった。

 

────────────────────────────────

 

【ナアマ】

 

ヘブライ語で楽しい、愉快を意味する存在であり、ゾハル書に登場する女悪魔。

 

ユダヤ教神秘主義を記したゾハル書では大天使サマエルの妻の一人として登場する悪魔である。

 

彼女はリリスと同じように子供達に癇癪を起した存在として知られている存在なのだ。

 

カインがアベルを殺害した後、アダムは130年間エヴァから離れる生活を送る。

 

この間にリリスとナアマが彼に近寄り、人類にとって疫病となる悪魔の子供を産んだとあった。

 

「コラ!ナアマ!突然現れてはビックリするではないか!」

 

「アッハハ!ごめんなさいね~デカラビア。ヒトデの先端で屋根を突き破りそうになった~?」

 

真ん中分けにした金髪ロングをした美しい女悪魔の衣装は男達を虜にする程の露出狂である。

 

しかし彼女の体は半分が醜悪な悪魔の形をしており、胸から下はドールボディを彷彿させる。

 

漆黒の翼をもつナアマは美しさと醜さを同時に併せ持つ女悪魔だったようだ。

 

「アリナ達は上に行く途中なんですケド。邪魔だから消えてヨネ」

 

「連れないわね~イナンナ様?せっかく美しい悪魔の肉体を私に与えてくれた母神様なのに~」

 

「アナタ…元々男だった存在でしょ?トラニーチェイサーの変態に好かれても嬉しくないカラ」

 

ナアマに転生したのは黒の貴族の一員だった男であり、彼は美女になりたい願望を持った変態。

 

その変態願望をアリナに捧げたことで望んできた女悪魔に転生することが出来たようだ。

 

「これでも感謝してるのよ~?女の体でセックスするとさぁ…男の時よりも興奮するから♡」

 

「楽しんでるようで良かったんですケド。アリナのためにもっとセックスを楽しんでヨネ」

 

「モチのロンよ~♡性愛を司るイナンナ様のために…もっとサバト儀式を広げないとね~♪」

 

「性交こそイナンナであるアリナを崇拝する儀式。気持ち悪い奴だけど祝福してあげるカラ」

 

イナンナは性愛の女神の起源であり、イナンナ崇拝を行う女神官は神性娼婦と呼ばれてきた。

 

性的エネルギーは女神の秘儀と最も深く関連しており、セックスこそが神の御技とする。

 

男女の両極性が再統合される儀式こそが性交であり、真の意味で練金術的な公式となる。

 

()()()()()()()()()錬金術の公式こそセックスであり、()()()()()()()()()()()()()だった。

 

「行儀が悪い態度で接するよりも日を改めて出直すがいい!我らはケテルに用事があるのだ!」

 

「私も上に呼ばれてるのよね~先に行ってるわ。後でお茶しながら色々お話ししましょうね♪」

 

漆黒の翼を羽ばたかせたナアマが車列を超えながら上の階に昇るエレベーターに向かっていく。

 

残された車列もクリフォトの上階に昇る巨大エレベーターに乗り込んで出発するのだ。

 

「バチカルなケテルキャッスルに昇る前に…アリナのクリフォトを見ておきたいんですケド」

 

「また悪い癖が出始めおったな…どうせ自分好みの芸術都市にしようと企んでいるのだろう?」

 

「当然なんですケド。気に入ったらクリフォトに引っ越しを考えてもいいヨネ」

 

「程々にしておけよ…今日は引っ越しを考えるために来たのではないのだからな…」

 

遅れたら何を言われるか分からんと汗が浮かぶデカラビアなど気にも留めない態度を見せる。

 

そんなアリナがクリフォトの第二層を超える頃には日も沈む時間となったようだ。

 

「クァァァァーッッ!!完全に遅刻ではないかーっ!!焼きヒトデにされたら呪ってやるぞ!」

 

「ビビらないの。重役出勤ぐらい出来る立場になったつもりなんですケド?」

 

クリフォトの二層を超える専用エレベーターに乗り込んだ者達が一気に大気圏を超えていく。

 

見えてきたのは成層圏を超えた領域にそびえる三つの城の巨大なシルエットだったようだ。

 

「あれがケテルキャッスル…それぞれのタワーは至高天を支える三本柱を表すって話だヨネ…」

 

「峻厳のモロク、均衡のルシファー、慈悲のサタンを表す。我らが向かうのは均衡の城だ」

 

「フフッ、フーリガン揃いの魔王連中を纏めていく大魔王の手腕を拝見するんですケド」

 

均衡の城の内部にまで繋がっていた巨大エレベーターから降りてくる車列が進んでいく。

 

城の内部は重力制御が行き届いており、地上と同じように移動が出来るようだ。

 

城の内部にあった駐車場に停車した高級リムジン車の中からアリナとデカラビアが出てくる。

 

護衛の者達を引き連れて城の内部を歩いていく中、アリナはウキウキしながら見物していく。

 

「流石は大魔王キャッスル…いい趣味だヨネ。飾ってるのは聖書絵画ばかりな点は不満だけど」

 

豪華なレッドカーペットの道を進んでいた時、何やら酷いいびきが聞こえてくる。

 

「な…何なの、この酷いいびきは……?」

 

「この酷いいびきはまさか……ちょっと待っていろ」

 

デカラビアが入った場所とは豪華なトイレであり、盛大にノックする音が聞こえてくる。

 

何回もノックするものだからトイレの中の者が怒り出し、デカラビアの悲鳴が聞こえてくる。

 

暫くすると水が流れるような音が響いてきた後、誰かが現れたようだ。

 

「いや~便座が温かいとつい眠りこけてしまうもんじゃ!それはそうと…お主は誰じゃ?」

 

「覚えてないワケ?アリナが魔王に作り替えてあげた黒の貴族の一員だったくせに」

 

「おお、そうじゃったそうじゃった!いやー歳をくうと物忘れが激しくてのぉ…いかんいかん」

 

立派な白髭を生やした禿頭の老人であるが、アリナと同じく人間に擬態した姿をしている。

 

好々爺な雰囲気を感じさせる老紳士であるが、それは己の怠惰を邪魔しない者に対しての態度。

 

もし彼の怠惰を邪魔する無礼者が現れたならば魔王として牙を突き立てる狂暴さもあった。

 

「ワシの名はベルフェゴール。もしかしてお主が新たなイナンナ殿かな?初めましてじゃのぉ」

 

「ハァ……フルフルを思い出すぐらいのボケジジィなんですケド」

 

【ベルフェゴール】

 

ユダヤ・キリスト教の悪魔であり、七つの大罪においては怠惰を司る大悪魔である。

 

その前身はモアブ人の神バアル・ペオルであり、ペオルは邪悪な儀式の裂け目や割れ目を表す。

 

儀式は姦淫を伴うものであり、ヘブライ人はこれに惑わされて崇拝したと聖書に記載される。

 

彼は怠惰だけでなく性愛も司る悪魔であり、占星術では性愛を司る金星の悪魔とみなされた。

 

「アナタもアリナと同じスターと性愛を司るビックデビルなんだから、シャキッとするワケ」

 

「なーに、年寄りな見た目でも股間は未だにギンギンじゃ!まぁ…マーラには劣るがのぉ」

 

「あれに勝てるビックコックなんて宇宙に存在しない気がするんですケド…」

 

「見るところ、お主も重役出勤じゃな?ワシの場合はトイレで眠りこけ取っただけじゃがのぉ」

 

「ところで…ヒトデなデビルを見なかった?アナタを呼びに行ったと思ったんだけど…」

 

「デカラビアか?奴はワシの眠りを妨げた罰としてキツイ仕置きを与えてやったがのぉ」

 

豪快に笑い飛ばすベルフェゴールに対して呆れた態度を浮かべるアリナが指を鳴らす。

 

護衛の者達がトイレに入り込んだ後、タンカで運ばれるベコベコなデカラビアが現れたようだ。

 

ひょんなことからベルフェゴールと共に会議場に行くことになったアリナは回廊を進んでいく。

 

「ここが……魔王達が集う会議場なワケ?」

 

「その通り。ここで決まった事が啓明結社を通して世界に拡散する。世界意思決定会議場じゃ」

 

「フフッ♪天空の会議場こそ天の女主人であるアリナに相応しい場所なんですケド」

 

豪華な両開き扉の横には生体認証装置まで存在しており、アリナが右手をパネルに置く。

 

すると装置からスキャンの光が生み出されていき、イナンナの生体認証を解析していく。

 

本人だと認証されたことで両開きの扉が開くのだが、中はとんでもない厳重な構造だ。

 

次々と強化防壁まで開いていく何重もの守りを構築した通路の奥こそが世界意思決定場だった。

 

「大勢集まってるようだけど…大魔王やバアル、それにサタンの姿が見えないんですケド?」

 

悠々と会議場に入り込んできたアリナに対して豪華な対面席に座る者達が威圧の眼差しを送る。

 

そんな魔王連中の脅しなど涼しいアリナは会議場空間に視線を向ける態度で応えるのだ。

 

「ワーオ…これってさぁ…()()()()()()()だヨネ…?」

 

アリナが目にしたのは会議場の壁面を覆う程の巨大タペストリーに描かれた光景。

 

そこに描かれたのはフランスにあるタペストリーである貴婦人と一角獣と同じもの。

 

貴婦人と共に存在する獣こそ獅子と一角獣であり、英国王室や天皇家の家紋と同じ構成だ。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()なのだろう。

 

視線を対面席の一番奥に向ければ三つの王座が並んでおり、その奥の壁にも巨大な絵画がある。

 

そこに描かれた絵画とは双頭の竜を表現するものであり、広げた翼には数々の紋章盾が並ぶ。

 

紋章盾に描かれたシンボルは黒の貴族達の家紋であり、赤き竜に従う一族を表すもの。

 

双頭の竜こそが黙示録の獣を表す存在であり、赤き獣こそが世界の支配者だと示す絵画だった。

 

「……ボサっとしてないで座ったらどうなの?」

 

対面席の手前から二番目に座っている人物とは暁美ほむらであり、紫色のスーツを纏っている。

 

悪魔ほむらもまた世界意思を決定する魔王としての権利を持つ存在だからこそ並ぶ者なのだ。

 

「……言われなくても分かってるんですケド」

 

舌打ちしたアリナは暁美ほむらに目もくれずに奥の席に向かっていく。

 

四番目の席に座ったアリナであるが、周囲の魔王達は不気味な視線を送るのみ。

 

「……大魔王閣下達の御到着はもう少しかかる。それまでは皆様方、ゆっくりしてください」

 

大魔王の側近を務めるルキフグスの言葉があったようだが、魔王達は眉間にシワを寄せていく。

 

世界意思決定機関とも言える天の領域に現れた小娘悪魔達が気に喰わない様子なのだろう。

 

敵意を向けてくる魔王達の圧力に対して、アリナとほむらの顔には冷や汗が浮かぶのであった。




真女神転生5ヴェンジェンスで追加されたセクシーナアマいいですよねぇ。
僕の股間のマーラが地獄突きしたくなるようなデザインが好きだったので何処かで突っ込みたかったんですよ。
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