人修羅×まどマギ まどマギにメガテン足して世界再構築   作:チャーシュー麺愉悦部

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320話 世界を支配する者達

ケテル城の均衡の間は異様な熱気に包まれている。

 

白黒の高級大理石に並ぶ対面席に座った魔王達が殺気だっているせいであろう。

 

外の宇宙空間を映す映像式の巨大窓の明かりが入るため、怒りの形相が分かるはずだ。

 

「…アスタロトとリリスの代わりとなるのがこのような小娘共とはな。気に喰わないな」

 

最初に口を開いたのは右席に座るベリアルであり、隣のネビロスも頷いてくれる。

 

ベリアルとネビロスに同調を示す態度を見せるのは悪魔ほむらの隣に座る太った貴族風の男だ。

 

「我もベリアルと同じ気持ちだ。魔王に転生してもらった恩もあるが、それとは別問題だ」

 

「アリオク…アリナが生み直してあげたってのに、随分な態度なんですケド?」

 

【アリオク】

 

猛々しい獅子を表し、炎に燃えるたいまつと血の滴る斧を持つ蝙蝠翼を生やした堕天使。

 

エノクの守護天使ともされ、地獄に堕とされてからは復讐を司る魔王となった存在である。

 

体に牙と鱗のある醜く太った巨人姿はマイケルムアコックの小説に登場する混沌の王を表した。

 

「然り。吾輩も気に入らないな…魔王の座に座る者ならば相応の覚悟を示して欲しいものだ」

 

対面席の向こう側に座っている王冠を被った王様めいた魔王も敵意を向けてくる。

 

「まぁまぁバエル殿、落ち着いて。美しい女性魔王が増えてくれる…私は大歓迎ですけどね」

 

「アドラメレク…貴様は美人悪魔に甘過ぎるぞ。同じバアルの名を持つ魔王として恥を知れ」

 

【バエル】

 

バアルがユダヤ教徒によって悪魔へと身を落とされた際に生まれた様々な魔王のうちの一柱。

 

同じ起源をもつベルゼブブと並び、ユダヤ・キリスト教において大きな力を持つ魔王である。

 

ソロモン72柱の魔神の中でも有名であり、66の軍団を率いる存在だ。

 

その姿は剣を携えた人間、猫、カエル、蜘蛛、またはそれらを合成した姿となるとされた。

 

「小童娘であろうとも我はアマラ深界において悪魔ほむらの実力を見届けた者。力は疑わない」

 

他の魔王達と違って悪魔ほむらの実力を認めている魔王もいる。

 

真紅の鎧と外套で身を包む魔王こそ、七つの大罪のうち色欲を司る魔王なのだ。

 

【アスモデウス】

 

ゾロアスター教のアエシュマを起源に持つとされ、アスモダイという名でも呼ばれる魔王。

 

ソロモン王72柱の魔神にも数えられ、牛、羊、人の三つの頭を持つ異形としても語られる。

 

聖書のトビト記においては一人の女性を巡って熾天使ラファエルと戦った魔王でもある。

 

ラファエルとの戦いでエジプトの奥地に幽閉されたことから両者は因縁深い間柄であった。

 

「私もバエル様の意見に賛成ね~。リリス様の領域を司る女なら…私も覚悟が見たいわ~」

 

暁美ほむらの隣に座るナアマは不気味な笑みを浮かべながら隣の彼女を挑発してくる。

 

今の彼女は擬態した状態であり、目上の者達に配慮するよう上品なドレス姿をしているようだ。

 

「私の覚悟が見たいというのはどういう意味かしら?なんなら…今直ぐ戦ってもいいのよ?」

 

「そういう意味じゃないわよ。力ではなく、魔王としての在り方に対する覚悟が見たいわけ~」

 

「力ではなく魔王としての私の在り方を…どうやって推し量ろうというのかしら…?」

 

「それについてはアリナにいい提案があるんですケド」

 

周囲の者達の視線がアリナに集まったことで彼女の口元にも不気味な笑みが浮かんでいく。

 

「このしみったれた会議が終わったらパーティがあるんでしょ?その場を使わせてもらうカラ」

 

ロスチャイルドの当主を吸収したルキフグスに視線を向けたアリナがウインクしてくる。

 

彼女が何を狙っているのか理解したルキフグスの口元にも不気味な笑みが浮かんだようだ。

 

「それならイナンナ様にお任せしちゃおうかしら?何せ…貴女様はバアル様のお気に入りだし」

 

「…我は気に入らないがな」

 

左の対面席の上座の手前に座る大男が重い口を開いていく。

 

青い肌をした巨漢であり、ボサボサの黒髪の下に纏う貴族服の上には虎の外套が備わっている。

 

その者こそバアル・ゼブルであったモロクが貶められた悪魔存在として語られてきた代表格。

 

地獄の副王にして大魔王ルシファーの右腕を長年務めてきた偉大なる蠅王の御姿なのだ。

 

【ベルゼブブ】

 

七つの大罪のうちの暴食を司る魔王であり、サタンやルシファーとも同一視される大悪魔。

 

バアル・ゼブルのゼブルをゼブブ(蠅)にすり替えられたため蠅の王、糞山の王にされた存在。

 

モロクが唯一神との戦いで敗れて地獄に堕ち、四肢を千切られた肉塊から生まれた悪魔である。

 

ベルフェゴール、バエル、アドラメレクもモロクの肉塊の中から生まれた魔王となっていく。

 

バアルの名を持つ魔王達の長兄のような存在こそがベルゼブブであったようだ。

 

「フン、()()()()()()()()()()()()フライキングの庇護なんて、アリナはいらないカラ」

 

恐れ知らずのアリナが口に出した言葉によって天の会議場の空気が凍り付く。

 

魔王達の顔に冷や汗が吹き出す程の恐ろしい禁句を彼女は口に出してしまったのだろう。

 

「……貴様、もう一度言ってみろ」

 

「何度でも言ってあげるカラ。アナタなんて、オリジナルになれないフェイカーなんですケド」

 

憤怒の形相を浮かべたベルゼブブが席を立ち、全身から極大の魔力を噴き上がらせていく。

 

同じ列の席に座るシェムハザとアザゼルの顔も恐怖に慄くが、隣のマステマは楽しんでいる。

 

(フッ…面白い状況だ。この場で同士討ちしてくれようものなら…私も楽しめるのだがねぇ)

 

魔王のフリを行う潜入諜報員のマンセマットにとって、魔王達の同士討ち程楽しい光景はない。

 

眉間にシワを寄せるアリナとベルゼブブが睨み合っていた時、奥の扉が開く音が聞こえる。

 

「…皆様方、静粛に。ルシファー閣下達がお目見えになりますぞ」

 

ベルゼブブの隣に座るのは僧侶姿のアスラ王であり、彼の言葉に反応した者達が奥に振り向く。

 

16体の魔王達が顔を向けるのは双頭の竜の絵画が飾られた王の階段である。

 

多色の大理石と金色に塗られたブロンズ像で飾られた宮殿階段の扉から現れた者達が出てくる。

 

現れたのは大魔王ルシファーの姿であり、続くようにして人修羅とモロクの姿も現れていった。

 

────────────────────────────────

 

「フゥ~…ナイスタイミングじゃったわい。危うく天の会議場が血の海になるとこじゃったぞ」

 

胸を撫で下ろすベルフェゴールが目にするのは新たな皇帝陛下となられた混沌王の御姿である。

 

ルシファーと同じ漆黒のダブルボタンスーツを纏い、赤いネクタイとスーツチーフを纏う姿。

 

その上にはエリザ・ツェリスカから譲り受けた赤きドラゴン騎士団のマントを纏っている。

 

抜刀しやすいよう左肩に掛けるようにマントを纏う姿はユサール驃騎兵のように優雅である。

 

混沌王はベルゼブブの列における上座に座り、バアル神はルキフグスの列における上座に座る。

 

大魔王は両者の中央の王座に座ったことで天の会議場に魔王達が集うことになったようだ。

 

「皆の者、魔界より馳せ参じてくれたことに先ずは礼を言う。今日集まってもらったのは……」

 

会議進行を行う大魔王の言葉を遮るような形でモロクがこんな言葉を吐き捨てる。

 

「酷い臭いだ。まるで()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()で世界の采配を行うのか?」

 

モロクが口に出した言葉とは明らかにベルゼブブを侮辱する言葉であり、場内が凍り付く。

 

しかしアリナだけはバカ受けしたのかゲラゲラ嘲笑う声が会議場に響いていくのである。

 

「…堪えろ、ベルゼブブ殿。我らは殺し合いに来たのではない」

 

隣に座るアスラ王が蠅王を窘めるのだが、耐え切れない程の侮辱によって体が震えていく。

 

巨漢のベルゼブブが座れるぐらいの大きな椅子の肘掛けがひび割れる程にまで握り込まれる。

 

オリジナルのバアルであるモロクの侮辱の言葉に対して明らかな劣等感を感じているようだ。

 

「…くだらない煽り合いをする会議場なのか?だったら俺は帰らせてもらうぞ」

 

殺気だった空気すら何も感じない人修羅の表情は機械のように冷たく、冷淡な態度を示す。

 

「モロク…ベルゼブブに対する不満は飲み込んでおけ。我らは最終戦争が控えている立場だぞ」

 

「フン…仕方あるまい。さっさと始めろ」

 

大魔王に窘められたモロクは黄金の牛兜の中で押し黙ったまま会議の光景を傍観するのみ。

 

彼の心にはベルゼブブに対する憎しみが宿っており、蠅王の存在こそが自分の名を貶める象徴。

 

魔王だけでなく人間だって自分の名前をウンコマンにすり替えられたら激怒するのは自然な話。

 

モロクにとって糞山の王という蠅王そのものが疎ましく、己を侮辱される悪魔概念であった。

 

「節理の目を通して確認した天使軍の規模は強大だ。我らも結束して対処しなければならない」

 

対面席の中央に備わるホログラム映像装置に映し出された3D映像には恐ろしい光景が映る。

 

そこには100億を越える大艦隊が映し出されており、もはや宇宙が黒く見えない規模である。

 

「彼らの目的はこの星のイレースだ。そうなれば…我らが築いた楽園は崩壊してしまうのだ」

 

「これらの軍勢に対処するため、ティアマトのMAGを用いて新たなる神霊を召喚しております」

 

ルキフグスが机に備わるパネル装置を操作すれば宇宙を映し出す窓の映像が月に切り替わる。

 

そこに見えたのは月を遥かに超える程の巨大な龍神が白く発光する影が映っていたようだ。

 

「これこそが神霊クズリュウの真の姿。神話通りティアマトの死骸は世界を産む力なのですよ」

 

「かつて俺が倒したクズリュウを遥かに超えた姿だ…これが本当のクズリュウだというのか…」

 

「一つ一つの首が地球に巻き付くヨルムンガンド規模だな…まさに星の龍脈が龍になった姿だ」

 

「モロクを召喚した魔法陣を再利用して顕現させた。真クズリュウを用いて天使を迎え撃つ」

 

「このクズリュウを移動戦艦として利用し、俺達は太陽系の外から現れる天使軍と戦うか…」

 

天使軍の旗艦サイズを遥かに超える程の龍が九つも繋がり合った神霊こそが悪魔軍の切り札。

 

ティアマトは同じ蛇神を生み出すために利用された末に滅ぼされたのだろう。

 

「天使軍は既に地球で潜伏しております。捜索を続けておりますが…発見には至ってません」

 

アマラ経絡を利用して地球に辿り着いた熾天使部隊の行方についての説明が続いていく。

 

清聴しているマンセマットの口元には不敵な笑みが浮かんでいくようだ。

 

(どこを探そうとも無駄なことだ…選民を運ぶコロニー船は太古より砂の底にいるのだからな)

 

来るべきハルマゲドンに対処するため、それぞれの魔王の役割を通達していく。

 

「それぞれの合意が得られたことで最終戦争の会議は終了とする。次の議題まで小休止しよう」

 

世界意思決定会議場は選ばれた魔王しか立ち入れないため、酒の給仕を行う者は見当たらない。

 

そのため移動した者達が用意されていた酒棚から自由に酒瓶を取り、用意されたグラスに注ぐ。

 

しばしの談笑が続いていたようだが、人修羅は喉を潤す酒すら飲まずに星の世界を見物する。

 

眼下に見える地球の光景に思いを馳せていた時、近寄ってくる者が現れたようだ。

 

「この場にいるということは…貴方も全てを捨ててきたようね、人修羅?」

 

現れたのは悪魔ほむらであるのだが、彼女の態度はかつての仲魔としての態度ではない。

 

七つの試練の時に殺し合った間柄に戻ったような敵意を向けてくる表情をしている。

 

「ほむら…お前に何があったのかはもう聞かない。お前の道を行くがいい…俺は俺の道を行く」

 

「私は誰のためにも戦わない、自分のために戦う女よ。他者と組するのは利用出来る時のみね」

 

「それが本来のお前の在り方だったな…いいだろう。精々俺達悪魔を利用するがいい」

 

「私は求めるコトワリが出来たの。そのコトワリを成就するのにここは役に立つ…利用するわ」

 

「イニシアチブを取りたいようだけど、足元を掬われる気がするんですケド、暁美ほむら」

 

近寄ってきたのはアリナであり、不敵な笑みを浮かべながらオーバーに両手を広げてくる。

 

「アナタのコトワリは酷く脆弱だし矛盾している。そんな奴について行くデビルはいないカラ」

 

「な、なんですって!?」

 

「アナタはアナタに都合がいい百合だけを欲しがるけど…アリナ達は()()()()()()()()()()()

 

「そうだ…俺達の力と意思は世界に向いている。己の内側しか見ない惰弱な女など用はない」

 

敵意を向けてくる者達がほむらに向き直り、宣戦布告をするようにして挑んでくる言葉を送る。

 

「俺とアリナが求めるのは選民主義…ヨスガの世界。己の内で完結する家畜など蹂躙してやる」

 

「ワールドはパワーを表現するためにある…内の快楽しか求めない奴なんて()()()()()()()()

 

人修羅の右腕に両腕を絡めつけてくるアリナが彼にもたれながら悪魔ほむらを挑発する。

 

「アナタが求めるものにはパワーなんてない、堕落だけ。精々アリナ達に利用されたらいい」

 

「イニシアチブをとるのは俺達だ。精々足元を掬われないようにな…ムスビの如き我儘な女め」

 

「くっ…言わせておけば調子に乗って!見てなさい…私の求めこそが力なのだと証明するわ!」

 

怒り心頭の表情をしながら去っていく悪魔ほむらを2人は黙って見送ってくれる。

 

彼の顔を見つめるアリナは安心した表情を浮かべながらこう言ってくれるようだ。

 

「東京で語った覚悟を体現してくれて安心したんですケド。それでこそ、ヨスガデビルだヨネ」

 

「この世界に流れ着いた俺の在り方こそヨスガだ…もうそれを否定しない、この道を進み切る」

 

「アナタの中にはLAWとCHAOSの両方が宿ってる…弱肉強食こそCHAOSでありLAWなワケ」

 

「誰かを殺す代償を支払い続ける道…それが世界のコトワリだ。ならば両方を受け入れよう」

 

「アナタこそが至高天の玉座に座る者になるのか…アリナが座る者になるのか…楽しみだヨネ」

 

人修羅の腕を放したアリナが寂しそうな笑顔を浮かべた後、自分の席に戻っていく。

 

ヨスガを司る彼女だからこそ、人修羅と共に在り続けることは出来ないのだと覚悟している。

 

ヨスガとは強者が世界を統べる道であり、力の王になれる者はただ1人のみ。

 

かつてのボルテクスで繰り返されたコトワリの戦い同様、()()()()()()()()()()()()()()()()

 

────────────────────────────────

 

「我々が行う地球管理の道筋とは、第三次世界大戦への道筋になるだろう」

 

悪魔軍の新たな支配皇帝となった混沌王の所信表明演説が会議場で行われていく。

 

人修羅と初めて出会った魔王達は彼の力は疑わないが、内面や信念について知りたがっている。

 

本当にこの者を大魔王と並ぶ程の混沌王として認めるべきなのか、それを測りたいのだろう。

 

だからこそ人修羅は世界に対する要求を皆の前で示し、世界支配者たるは誰なのかを問うのだ。

 

「我々は食とエネルギー、金融と情報を支配する者達だ。その力を用いて世界を不安定にしろ」

 

食糧危機が演出され、電力不足、エネルギー問題が発生し、基軸通貨の主導権争いを起こす。

 

その後は全てのシステムが統合され、ドルが紙切れになることも想定済みの世界大戦を起こす。

 

「主権国家体制の廃止、世界政府による一元管理、人民個々全てを我々が情報管理するべきだ」

 

政治・経済・社会制度・行動・思想の一元管理体制を築き上げる必要があると人修羅は語る。

 

「全ての者を電子ID管理する。巨大クラウドを稼働させ、ジュネーブデータベースで管理しろ」

 

人修羅が望む世界の構造改革は5つの柱によって構築されていると語っていく。

 

1 全ての既成政府の廃絶とイルミナティの統括する世界単一政府の樹立。

 

2 私有財産と遺産相続の撤廃。

 

3 愛国心と民族意識の根絶。

 

4 家族制度と結婚制度の撤廃と子供のコミューン教育の実現。

 

5 全ての宗教の撤廃。

 

これら5つの行動横領が元になり、生まれたのが後の共産主義である。

 

これはイルミナティ創始者アダム・ヴァイスハウプトが掲げた行動横領でもあるのだ。

 

イルミナティの教義は共産党に受け継がれたという歴史根拠を示す部分にもなるだろう。

 

かつて共産主義を掲げた人修羅の望みとアダム・ヴァイスハウプトの望みは一致したようだ。

 

「有能な者がそれ以下を支配する世界統一政府こそがバベルの塔に収められ、我々が管理する」

 

労働者を守るという共産主義理念など()()()()()()()()()()

 

その中身はユダヤが掲げた選民主義であるエリート主義。

 

共産主義の世界も資本主義世界と変わらず、エリート達が弱者を食い物にする弱肉強食世界。

 

それらを争わせて戦争ビジネスをしたのが20世紀で繰り返された東西冷戦の裏構図だった。

 

「我らこそ世界を築く偉大なる建築悪魔集団。()()()()()()()()()こそ我らを表すシンボルだ」

 

<……鎌と槌と単眼の精神ですって?何のことかしら?>

 

<イルミナティのシンボルであり、共産党のシンボル。そのルーツは()()()()()()()()のだ>

 

隠し身の技術で姿を消しているが悪魔ほむらの左腕には魔法盾であるクロノスが備わっている。

 

時の翁であるクロノスから念話で語られるのは啓明結社が用いてきたシンボルの解説だった。

 

<摂理を表す単眼は天空の神を表し、鎌とは土星を司るワシの鎌と愚息のゼウスの雷霆を表す>

 

<私の部屋の振り子に過ぎなかったあのアダマスの鎌が…啓明結社と共産党のシンボル…>

 

<槌とは単眼の鍛冶神を表し、愚息の雷霆を作ったサイクロプスを表す。()()()()()()()()()

 

<日本のイッポンダタラも単眼の魔物…鍛冶職を担う悪魔は古くから単眼の神が多いのね…>

 

<フリーメイソンの資料にも摂理の単眼と鎌と槌は紹介される。内容はこのようなものだ>

 

――全てを見える眼、太陽、月と星が従う者。

 

――そして慎重な看護の下でも彗星は厳しい革命を実行し、人の心臓の最も深い部分に広がる。

 

――私たちのメリットに従って報酬を与えます。

 

<皮肉なものね…宗教を根絶しようと企む連中がギリシャ神話やローマ神話カルト共だなんて>

 

<奴らは人こそ神として民衆に教授し、ヒューマニズムで宗教を焼く。人は悪魔の群れと化す>

 

<その悪魔の群れを操る存在こそが単眼を掲げる啓明結社を支配する魔王達だということね…>

 

<人を堕落させ、エリート主義を生み、支配者達は天に辿り着いた。お前はその場にいるのだ>

 

<分かっている…それでも私は世界に求める理想があるの。だからこそ…こいつらを利用する>

 

<気をつけろ…慈善団体のフリーメイソンを支配する奴らの目的とは、()()()()()()()()()()

 

クロノスに促された悪魔ほむらが会議場に飾られている絵画の一つに視線を向けていく。

 

そこに飾られていたのは()()()()()()()()()()()()寓話的な構成をした絵画内容である。

 

フィレンツェのピッティ宮殿にあるピエトロ・ダ・コルトーナ彫刻の版画と同じもののようだ。

 

<慈善団体の皮を被った()()()()()共は金をばら撒き、企業・銀行・貿易を牛耳る仲魔を生む>

 

<ファスケス…ファシズムの語源の言葉ね。権力者に付き従う売国護衛官を生む連中のようね>

 

金で買われた売国犯罪者共は外国を内側から破壊するのに最も役立つ存在である。

 

飾られている絵画とは世界各国の政府を支配するディープステートを表す絵画だったようだ。

 

<奴らの甘言に惑わされるでない。たとえお前さんの理想が同じでも…奴らと同じになるな>

 

<私に命令しないで…私は誰の命令も認めない…それこそが…私が掲げるサタニズムの道よ>

 

<強情な女め……忠告はしたからな、好きにするがいい>

 

鹿目まどかとの恋愛が認められる世界を熱望する悪魔ほむらとはフェミニズムを掲げる女魔王。

 

その愛情はポリコレを望み、共産主義理念である博愛と道徳で世界の歴史と伝統を破壊する。

 

世界の保守派の者達にとってはあまりに恐ろしい女こそ、新たなるリリス(百合)になれる者。

 

悪魔ほむらが悪魔崇拝結社の指導者的立場に立つのも自然な光景なのかもしれない。

 

(この娘もコスモポリタニズムという猛毒に侵された末に…()()()()()()()()()()()()()()()

 

近代史の潮流とは地上の悪の存在を隠したり軽視するなど、悪に対する寛容が叫ばれてきた。

 

この精神こそが共産主義の理念であるコスモポリタニズム精神である。

 

悪と対話を計るなどと言い、決して強力なまでに悪に対処しようとしない。

 

これが今日の自由主義、人文主義というヒューマニズムがもたらした世界の病気。

 

人文主義の魅力は()()()()()()()()()()()()()というもっともな主張にある。

 

問題はこのような人文主義が聖書に書かれた堕落の悪魔達がもたらした文化と合致する部分だ。

 

(小娘…お前もカナンの女共と同じく悪魔に誘惑され、世界を真逆にしろと叫ぶ者となった…)

 

隣の席にいるアザゼルとシェムハザ率いる堕天使軍団がもたらした堕落こそがカナンの文化。

 

彼らはカナンの女達に魔術や悪魔文化を伝え、堕落の忌み子であるネフィリムを産ませていく。

 

ネフィリムは()()()()()()()()()()、殺し合いを好むだけでなく殺した者を喰らう者となる。

 

彼らによってカニバル文化がカナン地域に根付き、周辺で暮らす者達は恐怖のどん底に落ちる。

 

その光景はまるで世界の保守派達が悪魔主義を掲げる左翼団体を恐れる光景と酷似するのだ。

 

(小娘が求める同性愛を認めない者達に対する憎悪心と凶暴性…まるで()()()()()()()()()()

 

堕落を求めたネフィリムは唯一神がもたらした洪水で殺され、監視者として天使達を派遣する。

 

ミカエル率いる監視者達の中にいた天使こそ、魔王マステマに擬態したマンセマットだった。

 

「…以上が、俺が求める世界に対する要求だ。清聴してくれて感謝する」

 

悪魔皇帝となった混沌王が語った所信表明演説を拝聴していた魔王達が拍手を送ってくれる。

 

拍手を送るアリナが横を向けば顔を俯けたままの悪魔ほむらが見えたようだ。

 

バアル神モロクもまた沈黙した態度をしており、微動だにしない姿で悪魔ほむらを見つめる。

 

彼らが求めているのは煮え切らない態度の悪魔ほむらに対する覚悟の儀式。

 

それを実行に移す地獄の機会はもう直ぐ訪れることになるだろう。

 

「彼の望みこそ私が世界に求める望みの数々。皆の者、彼こそが私の代理人に相応しい皇帝だ」

 

大魔王ルシファーもまた混沌王を認める言葉を言ってくれるが、バアルは沈黙したままだ。

 

彼と戦ったバアルは人修羅の内側にある悪魔としての器量を試したいと企んでいるのだろう。

 

<…イナンナよ、我に提案がある>

 

<言わなくても分かってるんですケド。アリナの望みもきっと…アナタと同じだカラ>

 

<流石だな、それでこそヨスガを継ぐ者だ。会議が終わった後の祝いの席を利用するぞ>

 

<オーケー、フフッ♪楽しくなってきたんですケド♪>

 

魔王達の会合はこれにて終了となり、席を立ちあがった者達がパーティ会場に向かっていく。

 

「アスラ王、貴様は祝いの席に出席しないのか?」

 

「…我は僧侶だ。肉食も酒も嗜まない身だ」

 

「フン…つまらん男め」

 

ベルゼブブの誘いを断ったアスラ王は席に座ったままであったが、人修羅に顔を向ける。

 

冷たい機械のような表情を崩さなかった人修羅であったが、そんな彼に警告してくるようだ。

 

「魔王達の祝いの席こそ…カナン族にもたらした悪魔文化の光景だ。参加するなら心せよ」

 

「…大丈夫だ、問題ない。一番いい料理を頼んでやるさ」

 

「その覚悟…後で後悔するなよ。魔王達は汝の化けの皮を剥ごうと仕掛けてくるはずだ」

 

「それを乗り越えてこそ信頼を勝ち取れる。フェーズ1は俺の支配基盤を固めることだ」

 

「そうであった…ではフェーズ1をこなしてくれ。それが完了した後はフェーズ2に移行する」

 

「了解だ。俺もそろそろパーティ会場に行かせてもらおう」

 

席を立ちあがった人修羅も会議場を後にする。

 

独り残されたアスラ王も席を立ちあがった後、宇宙が映し出された窓の前に立つ。

 

後ろ手を組みながら地球を見下ろす彼の顔は憂いに満ちており、申し訳ないと呟くようだ。

 

「この世全ての悪を汝に背負わせることになる…皆の未来ために辛い道を選んでくれた男だ…」

 

水の神を宿した人修羅の心は既に絶対零度にまで凍り付き、微動だにしない覚悟を宿している。

 

しかしそんな彼の心を動揺させようとバアル神は極悪非道の行為をやらせてくるだろう。

 

人修羅と悪魔ほむら、両者とも望む目的がある。

 

それを果たすためには己の全てを悪魔に作り替えられる程の覚悟が問われる道となるだろう。

 

世界を支配する者達と共に歩む道こそ地獄であり、半端な覚悟で立てる領域ではなかった。




唐突に始まる蠅王虐め!ベルゼブブは憤慨する!
まぁ聖書でも形骸化した魔王なんですけど、これにはちゃんと理由も用意しております。
蠅王も決断しなければならない時がくるやもですね。
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