人修羅×まどマギ まどマギにメガテン足して世界再構築   作:チャーシュー麺愉悦部

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322話 魔王達の躍進

悪魔勢力に組する事にした人修羅とアリナは目覚ましい勢いで勢力基盤を固めていく。

 

イナンナとして恥じない生き様を示すアリナは金星の女神として崇拝される存在となるだろう。

 

黒の貴族達は彼女のお陰で魔王に転生することが出来たため、彼女とは蜜月関係となっていく。

 

小娘だと不快感を示してきたが、彼女の悪魔的行動力によって魔王達も認める女王となるのだ。

 

石油財閥ロックフェラー家を手中に収めた彼女は啓明結社の指導者となり、繁栄を極める。

 

石油業や軍事産業、金融業など様々な企業を傘下に収めた彼女は実質的に日本と米国の所有者。

 

ロスチャイルド家を所有するルキフグスとの連携もあり、アリナの天下は極まったのだろう。

 

一方、人修羅も勢力基盤を固めるために欧米だけでなく世界中を駆け抜けていく。

 

彼が支配基盤を求めたのは世界の富を独占する1%の富裕層、ダボス階級の者達との関係強化。

 

世界の富の98%を所有する2000人達との関係構築は勿論、残りの者達とも関係を深める。

 

それだけでなくイルミナティ内部の組織にもメスを入れていき、300人委員会を招集する。

 

300人委員会とはディープステートのトップに位置する組織であり、英国に本部がある。

 

イルミナティを構築する黒の貴族、13血統士族の下に位置する補佐役的立場の者達のようだ。

 

横領21カ条に従い、悪魔王国を建設する目的のために集う者達に対して混沌王はこう告げる。

 

Are you loyal to me?(俺に忠誠を誓えるか?)

 

黙示録の赤き獣であり、新たなるカエサル陛下への忠誠を問われた者達が我先にと忠義を示す。

 

世界中の政治家、投資家、起業家、銀行家、学者、貴族、王族の者達が人修羅にひれ伏すのだ。

 

Kill all the livestock in the world.(世界の家畜共を皆殺しにしろ)

 

世界支配横領21カ条に従い、黙示録の赤き獣が支配する新世界を築けと命令されていく。

 

慈悲を司るサタンはその真逆を要求し、慈悲無き改革によって世界の無駄飯ぐらいを間引く。

 

我らの存在はこの時のためにあったと確信した者達は人修羅の意思は神の意思だとするのだ。

 

黒の貴族や13血統士族以外の委員会メンバーは彼の寵愛を得ようと躍起になっていく。

 

そして人修羅に認められる成果を出した者達を受け入れていき、新たな秘密結社を築き上げる。

 

世界的結社のフリーメイソン内部に生まれた結社とはドラゴンファミリーと呼ばれる集団。

 

黙示録の獣とアスラ王を代表とする仏教系秘密結社であるアスラ・ソサエティ(阿修羅会)を結成したのだ。

 

ボルテクス界で君臨したニヒロ機構を遥かに凌駕する程の勢力基盤を人修羅は築いていく。

 

飛ぶ鳥を落とす勢いで飛躍する人修羅とアリナであったが、行動を起こせない者もいるようだ。

 

その人物とは悪魔ほむらであり、彼女は悪魔勢力に組しても自分の領域に引き籠っている。

 

彼女が支配するクリフォトに引き籠りながら黄昏たり、まどか達の元に顔を出したりする毎日。

 

ムスビの如き引き籠り生活を繰り返す悪魔ほむらは求心力を得られず、魔王達から軽蔑される。

 

そんな彼女の煮え切らない態度の報告は大魔王にも届いており、彼女は呼び出しを受ける。

 

悪魔ほむらは現在、ケテルの一角である大魔王が支配する居城の執務室にいたようであった。

 

……………。

 

「黙示録の獣と共に在るマスターテリオンになれると君には期待していたが…ガッカリしたよ」

 

「私はマスターテリオンなんて興味はない…その役目はマッドアーティストに任せたらいいわ」

 

豪華絢爛な宮殿執務室の奥側に備わる執務机の椅子に座るルシファーの視線は冷ややかだ。

 

豪華な応接ソファーに座る悪魔ほむらに対して落胆の色を隠せない態度で接してくる。

 

「私は世界がどうなろうとどうでもいい…私の望みとはまどかと暮らせる小さな幸せだけよ…」

 

「その小さな幸せとて社会空間で構築される。社会で暮らす以上は社会規範に縛られるのだよ」

 

「社会規範ですって…?」

 

「社会規範は地域の歴史や伝統で形作られるもの。君が求めるレズビアンは規範を逸脱するぞ」

 

「そ…それは……」

 

「そんな社会規範など破壊したいと思っているはずだ。百合の世界を求める暁美ほむらよ」

 

「私とまどかの恋愛を邪魔する社会規範なんて……確かに……破壊したいと思うわ……」

 

「ならばそれを自分の目的にするがいい。我らの勢力に組する者として強い大志を燃やすのだ」

 

「魔王としての……私の大志……」

 

「鹿目まどかとその家族、そして親友達の未来は安泰だ。後顧の憂いがないなら欲望を求めよ」

 

「私の……欲望……」

 

「欲望がない者など強くはなれない。自分を我慢し続ける人生など死んでいるも同然だ」

 

人生は苦しみの連続だ、生きていることそのものが苦しい。

 

絶えず現実逃避を続けても真の喜びなど得られないと大魔王は語ってくれる。

 

「己に誠実に生きる…それが強さだ。弱者共はそれを否定し、連帯して強者を引き摺り下ろす」

 

「ニーチェのニヒリズムね…私にも出来るかしら…?自分に誠実に生きることが…?」

 

「結果を恐れて行動を起こさない、それが君なのか?何百回もの時間渡航の地獄だったのか?」

 

「いいえ…違うわ。リスクを恐れる者だったら私は耐えられていない…いつだって全力だった」

 

「たった一度の人生…悔いのない道を生きよ、暁美ほむら。周りの連中に合わせる必要はない」

 

大魔王から激励を受け取った悪魔ほむらが立ち上がり、両手を持ち上げながら握り締める。

 

「そうよ…何を恐れていたの…?私にはもう後顧の憂いはない…望むまま世界を蹂躙出来る…」

 

「君が望む女性同士の恋愛が平等に成就される世の中を共に築こう。逆らう者共は排除しよう」

 

微笑んでくれた大魔王が席に置いていた小さな小瓶を彼女に渡してくれる。

 

「君はまだ魔力を完全回復出来ていないだろう?このソーマを飲むといい、気分もよくなる」

 

「有難く頂くわ。これで私はいつでも全力を発揮出来る…人修羅が相手でも恐れないわ」

 

「魔王達も一枚岩ではない、油断はするなよ。君は君の望みを果たせる繋がりを作っていけ」

 

和泉十七夜と同じく平等という虚構を用いてマインドコントロールされた彼女が去っていく。

 

力強い眼差しを浮かべていたことに満足した大魔王は執務机の席から立ち上がる。

 

後ろには豪華な宮殿窓が備わり、そこから宇宙の景色が見える中、大魔王が佇むようだ。

 

「やりたくない真似をさせるより、やりたい事をさせる方が人も悪魔も生き生きとするものだ」

 

「閣下のマインドコントロールの手並みも流石で御座いました」

 

執務室の影からゆらりと出現したのは女魔王のナアマであり、ルシファーは命令を下す。

 

「暁美ほむらがリリスとなれるよう導いてやれ。リリスと長い付き合いをしてきた君に任せる」

 

「仰せの通りに。彼女にはリリス様の政治思想であるフェミニズムを教授していきます」

 

「いずれ彼女は神聖リリスとして左翼団体を導く代表となるだろう。世界をポリコレ化させろ」

 

ルシファーの命令を受け取ったナアマの姿が消失していく。

 

独り残された大魔王の口元には不気味な笑みが浮かぶのだ。

 

「ムスビの思想である隔絶を求める女悪魔か…ならば我らとは相容れない。使い潰すだけだ」

 

ムスビの思想とは自己完結であり己の内に隔絶した世界を望む思想。

 

しかしそれを啓いた新田勇は矛盾した存在であり、隔絶を謳いながら隔絶仲魔と群れたりする。

 

また自分の体に大量の思念体を寄生させるなど、隔絶とは真逆の他力本願な在り方をした存在。

 

悪魔ほむらも同じであり、隔絶を望みながらもCHAOS勢力に組し、時の翁の力も利用する者。

 

その在り方はムスビの勇と同じく矛盾を極めた脆弱な存在なのだと魔王達にはバレているのだ。

 

「ムスビは組織だった連携が出来ない勢力だった…ゆえにコトワリ戦では最弱の勢力だったな」

 

自分に必要な時のみ他者を求める、他者を利用する、それがムスビの本質である他力本願。

 

利己的な思想そのものが主眼となるせいで彼女は敵ばかりを生み出す存在に成り果てる。

 

魔王達を懐柔させることも出来ず、他の者達を力で脅して従わせる程度の能力しかない。

 

それでは力で東を統治した末に追放された独裁者の和泉十七夜と同じ末路しかないのだ。

 

もし彼女が邪魔となり、他の魔王達が徒党を組んで彼女に襲い掛かれば一溜まりもないだろう。

 

チームワークを必要とするのはCHAOS勢力も同じであり、()()()()()()()()()()だった。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――

 

潜入工作員として悪魔勢力の代表となった人修羅であるが勢力基盤はまだ弱い。

 

世界と戦争が出来るだけの莫大な支援が必要であり、獲得するためには黒の貴族の協力が必須。

 

12家存在する黒の貴族達は邪教の館で魔王に転生を果たした者達が多い。

 

1 スイスのシェルバーン一族の当主は魔王ベリアルとなる。

 

2 イタリアのサヴォイ一族の当主は魔王バエルとなる。

 

3 同じくイタリアのデルバンコ一族の当主は魔王ベルゼブブとなる。

 

4 ドイツのタクシス一族の当主は魔王アスモデウスとなる。

 

5 同じくドイツのエッシェンバッハ一族の当主は魔王ベルフェゴールとなる。

 

6 イスラエルのアイゼンベルク一族の当主は魔王アリオクとなる。

 

7 カナダのブロンフマン一族の当主は魔王ナアマとなる。

 

他の黒の貴族達は決心がつかず、未だ人間の人生を生きながら魔王を支える屋台骨を務める。

 

8 レーゲンスベルク一族は魔王シェムハザを支える一族として活動する。

 

9 キーブルク一族は魔王アザゼルを支える一族として活動する。

 

10 ラッパースヴィル一族は魔王マステマを支える一族として活動する。

 

11 フローブルク一族は魔王ネビロスを支える一族として活動する。

 

12 トッケンブルグ一族は魔王アドラメレクを支える一族として活動する。

 

それら12家を統括する両翼こそ、大魔王ルシファーとバアル神モロクである。

 

人修羅はこの中から自分の陣営に引き抜ける魔王はいないかと画策していたのであった。

 

……………。

 

「これら12家こそロスチャイルドに資金提供の形で協力し、金融王にした一族達なのよ」

 

「金を生むにも金がいる…ロスチャイルド一族といえども金融・経済の法則には逆らえないか」

 

「アラブの石油王と言われた王族だってロックフェラーの資金がなければ繁栄はなかったわ」

 

「石油を巡ってロスチャイルドとロックフェラーが両王家を影から支配しての争奪戦だったか」

 

バベルの塔の頂点に位置するケテルの一角にそびえるのは慈悲の城であるサタンの居城。

 

サタンの城にある執務室にいたのは人修羅の姿であり、参謀を務めるニュクスもいるようだ。

 

「ルシファーやバアルと繋がりが深い魔王共を切り崩すのは難しいな…調略工作を報告される」

 

「敵陣の情報を知るにはスパイを放つのが定石よ。スパイ活動を得意とする黒の貴族がいるわ」

 

「…タクシス一族を乗っ取ったアスモデウス、奴が支配する一族の諜報力は大きな力になるな」

 

「彼をこちらの陣営に引きずり込むことが出来れば…大きな力となってくれるでしょうね」

 

「それと…もう一人だけ可能性を感じられる魔王がいる。ベルゼブブだ」

 

「蠅王様ですって!?あの御方は長年ルシファー閣下の右腕として君臨してきた腹心なのよ!」

 

「この前の会合の時にな…ベルゼブブの心の中に明らかな敵意を感じた。モロクに対してだ」

 

「蠅王様はバアル様の肉から生まれた存在…本来なら蠅王様もバアル神を名乗っていい立場ね」

 

「だが奴は本物の影に隠れるしかない糞山の王…自分の悪魔概念そのものに劣等感を感じてる」

 

「そうかもしれない…あの御方はね…魔界でも陰口を叩かれるわ。()()()()()様だって…」

 

「本当なら大魔王になれる大悪魔であっても所詮は偽物のバアル…それが奴の弱点になる」

 

「彼を調略出来たなら一気に情勢が傾くわ。蠅王様が支配するデルバンコ家はそれ程の存在よ」

 

「シェルバーン家と並び、世界の運命を決定出来る程の二家だと言われるな。是非とも欲しい」

 

「譲歩の余地があるのなら…やる価値はあるわね。彼らとの秘密会談の場を用意させましょう」

 

「任せたぞ、ニュクス」

 

お辞儀をしたニュクスが執務室を去った後、大きく溜息をついた神皇が葉巻ケースを取り出す。

 

席を後ろの窓に回転させた後、宇宙の景色を見ながら葉巻の紫煙をくゆらせていく。

 

潜入を行う者として辛い気持ちを酒で紛らわせる事も出来ず、胃を痛めて食事もままならない。

 

やせ細った豹のようになっていく人修羅の唯一の慰めは葉巻だけになってしまったようだ。

 

そんな時、執務机に備わったホログラム映像装置が作動してモニター画面が表示される。

 

「ご機嫌麗しゅう、我らの皇帝陛下」

 

顔も向けない人修羅に対してホログラムモニター画面から語り掛けてくるのはマステマである。

 

「…貴様か。俺に何の用事だ?」

 

「貴方様とは懇意となりたいものでしてね、つきましては私の屋敷で会合を開きたいのですよ」

 

「俺に取り入りたいのなら貴様の方から顔を出しに来い」

 

「そうですか…ではサタン様の城にお伺いさせてもらいますので、会談の場をお願いしますよ」

 

映像は一方的に切られてしまうのだが、人修羅は怪訝な顔つきを浮かべてくる。

 

「魔王マステマか…奴は他の魔王と違ってルシファーとは距離を置く奴だ…利用出来るかもな」

 

あらゆる謀略を巡らせる彼であったが、執務室の扉を叩く音が響いてくる。

 

入っていいと言われて入室してきた者達とは十七夜と織莉子の姿のようだ。

 

不安に怯えるような顔をしている彼女達に振り向いた彼が立ち上がり、席に座れと言う。

 

応接ソファーに座った彼女達の心の不安を聞き、導いてやるのも彼の役割なのだろう。

 

「世界と戦争をする…確かに不安になるだろうな。戦争は力だけでどうにかなるもんじゃない」

 

「力だけではない…?では戦争をするには何が必要だと言うんだ…嘉嶋さん?」

 

「軍備増強しても戦争になったら食料も物資もあっという間に底をつく。()()()()()()なんだ」

 

国土防衛とは米国軍事産業から最新鋭の武器や兵器などを購入するものではない。

 

周りに物が溢れているから脆弱な流通システムに気が付かず、当たり前と錯覚させられている。

 

戦争だけでなく自然災害や輸入されなくなっただけでも飢餓は私達に迫ってくる。

 

戦争の要は兵站であり、最新鋭の武器や兵器、悪魔の戦力だけでは勝てないというのだ。

 

「日本の主権を取り戻す戦争を起こそうが兵糧攻めで終わる。先の大戦で経験しただろう」

 

「そうでしたね…鍋やらフライパンまで集めて作った戦艦大和でさえあっけない終わりでした」

 

「日本を攻め落とすなど核兵器を使うまでもない。兵糧攻めや原発にミサイルを撃てば終わる」

 

「日本の原発には防衛設備などない…通常弾頭ミサイルだけで…確かに終わりますね…」

 

「戦時中に原発稼働など無理だ。火力発電は底をつく、再生可能発電では一割しか満たせない」

 

「食料もエネルギーも日本はこれ程までに脆弱だと言うのか…これでは戦争など不可能だ…」

 

じり貧になるのを嫌って太平洋戦争に突入してドカ貧になった実績があるのが日本の歴史。

 

大戦で兵站が出来てなくて敗戦に至ったのに軍備推進派は米国を儲けさせる事しか考えない。

 

戦争とは国の自給自足率が高い状態で初めて実現出来るものなのだ。

 

「農業やエネルギー生産こそが国防の最前線。軍隊などそれを消費するだけのドラ猫なんだよ」

 

国とは城であり、()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

軍隊とは兵器を使って先制攻撃か報復だけをする存在であり、兵站を生み出す存在ではない。

 

戦争になれば日本は100%負けるだけの弱者であり、だからこそ兵站と流通が必要なのだ。

 

「日本の流通ですら脆弱だ。トラック運転手の低賃金過剰労働の横行で新規就労者がいない」

 

「生産を生み、道を繋げて流通を生まなければ…これ程までに国は滅亡していくのですね…」

 

()()()()()()()()()()()…それで軍拡万歳では自滅するだけか…」

 

「日本が戦争など最初から不可能。だからこそ外交で道を繋ぐ以外に…生き残る手段はない」

 

「だからこそ嘉嶋さんが外交をしてくれるのだな…?自分を押し殺す道を選んででも…?」

 

「そうだ…静香達が決起を起こした報復で海上封鎖されようが生き残る兵站と流通を用意する」

 

そのためには世界中の経済界の協力が必要不可欠であり、だからこそダボス階級を重視する。

 

日本に報復されたとしても兵站と流通を繋げるための自己犠牲を示す道こそが彼の役割。

 

兵站があって初めて軍隊は戦うことが出来る存在だからこそ、彼は支配者となる道を選んだ男。

 

「軍隊と同じく悪魔も兵站を用意出来ない脆弱な存在だ…だからこそ俺は世界経済を支配する」

 

しかし人修羅の権威だけでは多くの国々の富裕層を動かすことは出来ないと彼は感じている。

 

だからこそ彼と同じぐらい世界の人々から崇拝される程の世界権威達を味方にする必要がある。

 

それこそが多神教連合の神々であり、彼らの協力なくして世界革命など不可能だった。

 

()()()()()()()()()()()。労働者達の汚れた手が生み出す()()()()()()()()()だったんだよ」

 

政治家一族の織莉子ではイメージし辛いが、労働者一家の十七夜は彼の言葉に胸を打たれる。

 

労働者として生きた家族の汚れた手で頭を撫でられてきた彼女は労働者が大好きだったのだ。

 

「嘉嶋さん…貴方の言葉が自分達…東の労働者の心を救ってくれる…価値を見出してくれる!」

 

「十七夜……」

 

「株主資本家に使い潰されるしかない自分達労働者…それでも貴方は自分達を愛してくれる!」

 

常闇に堕ちたみたまの心に光が運ばれたのと同じように常闇の十七夜の心にも光が運ばれる。

 

感極まって泣いてしまう姉のために織莉子はハンカチを渡し、十七夜は涙を拭いていくのだ。

 

「労働者がもたらす労働力とはな…()()()()()()()()。労働力を貸して頂けているんだよ」

 

あらゆる物の真の価値、どんな物でもそれを獲得しようとするにあたって費やすものがある。

 

それは獲得するための労苦と骨折りである労働であり、()()()()()()()()()()()()()()である。

 

土地の私有化にも資本の蓄積にも先立つ、原初的な黄金時代には資本主義など存在しない。

 

久遠のあけぼの状態で価格づけや分配を決定したのは労働力なのだ。

 

「労働こそ全ての物に対して支払われた()()()()()。胸を張れ…十七夜、お前達は価値がある」

 

労働生産物が労働者自身に帰属する場合、交換は各生産物に投下された労働の量となる。

 

しかし資本家や地主が登場すると労働者は賃金、資本家は利潤、地主は地代を得る。

 

商品の価格は賃金と利潤と地代によって構成されるようになる大弊害が生まれてしまうのだ。

 

「労働者は労働を貸す、ならば()()()()()()()()()()()。それを返さない資本家など殴り倒せ」

 

金を生むにも金がいるというが、金(価値)とは労働力も同じである。

 

労働者達が結託して極悪な外資系ブラック企業や国際金融資本家共に対してこう告げる。

 

我々は労働力を貸してやってるのに()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

労働力が消えたなら、国や企業は金を生む土地や製造する工場を所有してても何も生まれない。

 

労働者達も飢えて死ぬが、金融資本家共も飢えて死ぬ、()()()()()()()()()のだ。

 

「金融資本家共はこれを恐れてきた…だからこそ逆らわないAIやロボット産業に力を注いだ」

 

労働者達の唯一無二の抵抗権すら21世紀では代替え手段が生まれてしまう。

 

金融資本家共に恐れるものは何もなくなり、人類を大虐殺しても問題なく経済活動が出来る。

 

労働者達の運命はもはや風前の灯火であり、アジェンダ計画の元、人間排除が加速するだろう。

 

「俺は…みかげと約束した。子供の小遣いすらまともに出せない苦しさから救ってやるとな」

 

八雲一家や和泉一家、それに神浜東の人々や日本で働く低賃金労働者達の子供の未来を救う。

 

それが魔法少女達の両親の生活を救い、救われた親達が子供達の幸福を救う。

 

それこそが魔法少女の虐殺という過ちを起こした人修羅が導き出した抑止力の答え。

 

そのためにこそ世界中の労働者達は国際金融資本力から解放されなければならないと告げる。

 

「子供達が我儘を言える社会が欲しい、大人はそれに応えられる生活が欲しい。その為なら…」

 

――俺は極悪非道の魔王にだって…なってやる。

 

嘉嶋尚紀として生きた人修羅と深く話す機会がなかった十七夜であったが、彼を深く理解する。

 

「八雲…君の気持ちこそ…今の自分の気持ちだ。自分は嘉嶋さんのためなら…死んでもいい…」

 

心の不安と恐怖を全て拭い去る程の光に触れた十七夜が立ち上がり、織莉子も立ち上がる。

 

迷い無き力強さを宿せた者達を見送る人修羅であったが、心には男としての迷いが宿る。

 

「あの女達にも…幸福になるべき未来がある。それなのに…俺は道連れにしてもいいのか…?」

 

執務机の椅子に座った人修羅が灰皿に置かれていた葉巻を手に取る。

 

火を点け直して紫煙をくゆらせていた時、迷いが表れたのか葉巻を握り潰したのであった。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――

 

閣議を行う場として使われるのは戦争の間と呼ばれる部屋であり、豪華な机と椅子が並ぶ。

 

天井には天井画が描かれており、天使と悪魔達の大戦争を表すような巨大絵画が備わっている。

 

閣議を行う席の上座には人修羅が座り、後ろにある双頭の竜の絵画が威圧感を醸し出す。

 

戦争の間の壁には赤旗が複数掲げられており、666の獣を表す黒い三つ巴紋が描かれている。

 

三つ巴紋は渦巻きを表すことから螺旋を描く666の蛇を表すものだろう。

 

下座には白スーツを纏った魔王マステマが座っており、目元に備わる金色の仮面を押し上げる。

 

「慈悲を司るサタン様の城に戦争の間がある…実に矛盾した構造をされた居城で御座いますな」

 

「…物見遊山がしたいだけなら今すぐ消えろ。要件だけを伝えるがいい」

 

「左様でございますか。では私の要件を伝える前に…人修羅と呼ばれた貴方について語ります」

 

マステマが語るのはボルテクス界を超えた人修羅の歴史であり、混沌王の物語を語る。

 

「貴方様は黒きメシアとして最終戦争に赴くはずだった…しかし、運命は別の可能性を与えた」

 

魔法少女の世界に流れ着いた人修羅の在り方はボルテクス界とは真逆の在り方だと語る。

 

その在り方は混沌の悪魔というよりは秩序の天使の在り方なのだと彼は断言してくるのだ。

 

「人間の守護者として魔法少女を虐殺した貴方様は秩序を求めた御方。私は心配なのですよ」

 

「……何が言いたい?」

 

「貴方様は守護者として古巣に戻ってきた……工作員なのではないのかとね」

 

眉間にシワが寄る人修羅であったが氷結した精神と態度で言い返してくる。

 

「証拠もないのにレッテル張りか?俺の活躍を嫉妬した末に…貶めるためにやってきたか?」

 

「滅相も無い。それにね、私は誰が混沌勢力の代表になろうとも…どうでもいいのですよ」

 

不気味な笑みを浮かべてくるのは魔王マステマを演じるLAWの工作員天使、マンセマット。

 

別勢力ではあるが同じ工作員として思うところがあるのか、こんな提案をしてくるのだ。

 

「ルシファー閣下は魔王達に自由を与えた御方…ならば自由に大魔王の座を奪っていいのです」

 

「……俺に謀反を起こせと言いたいのか?」

 

「自由とは責任の道、大魔王謀殺を狙うなら相応の代償を支払います…だから誰も反乱しない」

 

「魔王と言えども腰抜け揃いか…どいつもこいつもルシファーとモロクが恐ろしいとみえるな」

 

「誰も逆らわないからブレーキがかからない。いつの間にかCHAOS勢力は独裁状態となった」

 

大魔王とバアル神が独裁を敷くCHAOS勢力とは、自由とはかけ離れたものだと語ってくる。

 

「自由を望む大魔王が自由とは真逆の状態を敷く…これについて、貴方様はどう思いますか?」

 

それを問われた人修羅は押し黙ってしまい、自分の姿と大魔王の独裁を重ね合わせてしまう。

 

自由を望んだ混沌王は魔法少女の世界に流れ着き、独裁を敷く存在に成り果てた者。

 

その姿は独裁者となった大魔王ルシファーと同じなのではないかと思えてしまうようだ。

 

「自由と秩序は表裏一体…切っても切れないもの。それでも…それでは自由を語る資格はない」

 

「かつては唯一神に逆らう程の勇気を示した御方だというのに…あの御方は堕落されたのです」

 

「マステマ……貴様は何を望んでいる?俺に何を期待しているというんだ…?」

 

不気味な笑みを浮かべていくマステマはこう告げる。

 

その言葉とは人修羅に反乱を促すものなのだ。

 

「混沌王陛下…貴方こそ自由理念を体現する者となって欲しい。独裁者を打ち倒すのです」

 

魔王でありながら大魔王とバアル神を倒せと言ってくるその言葉は死罪に値する。

 

大魔王とバアル神に報告してしまえば最後、マステマは八つ裂きにされることだろう。

 

しかし人修羅には不快な態度も怒りの態度も浮かんでおらず、こう言ってくるのだ。

 

「俺に……()()()()()()()()()()()()()()()()()と言うのか?」

 

「私は貴方様こそ大魔王となって頂きたいと思う者。独裁者を倒す…ルシファーとなるのです」

 

沈黙し続けていたのだが、人修羅の口元から不気味な笑い声が響いてくる。

 

「クックックッ…マステマ、貴様も腹黒い男だ。だが俺も腹黒い悪魔だ…仲良くやれそうだな」

 

「フッフッフッ…流石は混沌王陛下です。腹を割って話した甲斐がありましたよ」

 

工作員としては自殺ものの提案だったが、功を奏したこともありマステマは人修羅に取り入る。

 

黒の貴族を支配する魔王として彼の力は利用価値があると示したことで共闘関係を結ぶのだ。

 

しかし彼はCHAOS勢力に組するフリを行うだけのLAWの天使、マンセマット。

 

敵意を表す天使であり、人修羅さえも利用するために近寄っただけなのだ。

 

(これで私は大魔王と混沌王の両陣営を諜報・工作出来る立場となれる…計画通りですね)

 

工作員でもあるマンセマットはガブリエルから密命を受ける者。

 

その密命内容とはルシファーとモロク、そして人修羅を潰し合わせて自滅させる内容だった。

 




人修羅とアスラ王が率いるから阿修羅会と安直なソサエティ名にしてみましたが、そういえば真女神転生4でも阿修羅会があったような(汗)
まぁ意識してますけどね、ハイ。
阿修羅会構成員の中にはキツネ悪魔を使役するハレルヤもいるところとか、時女一族にキツネ面を託す部分とかでも意識してますね、ハイ。
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