人修羅×まどマギ まどマギにメガテン足して世界再構築   作:チャーシュー麺愉悦部

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323話 矛盾を貫く道

魔王マステマと共闘関係を結ぶ調略が成功した人修羅は悪魔勢力の改革を望む者達を求める。

 

そのために必要としたのが魔王アスモデウスと魔王ベルゼブブであり、秘密会談を催すのだ。

 

「…混沌王殿、マステマ殿、本気なのですか?」

 

「ルシファー閣下の腹心を務めてきた我の前で…よくも反乱の勧誘を行えるものだ、人修羅殿」

 

それぞれのクリフォトから招集された魔王達が集うのは人修羅の居城に存在する閣議室である。

 

アスモデウスとベルゼブブと向かい合う人修羅とマステマは真剣な表情でこう語る。

 

「我らは決死の覚悟でCHAOS勢力を改革したい者達。我々は堕落した官僚共に過ぎなかった」

 

「自由理念を掲げる魔王が官僚主義を求め、大魔王とバアルの従者で終わる。恥を知るべきだ」

 

大魔王に従ってきた魔王達であったが、いつの間にか自由からは遠ざかっていると告げられる。

 

それを問われた魔王達は無言となってしまい、自分達の在り方について迷いが生じてしまう。

 

「俺は魔法少女の虐殺者として生きた男…その中で魔法少女の官僚主義の腐敗を目にしてきた」

 

神浜の魔法少女社会も長という中央集権独裁状態であったために官僚主義を起こしている。

 

新しいことを拒み、古くからの慣習を尊重する組織の在り方となれば組織は腐敗していく。

 

官僚や責任者の長い既得権益化で腐敗する不差為によって社会が非効率化の機能不全に陥る。

 

周りに流される者と成り果て、最初の志高い自由精神は腐敗して仲良し社会だけを求める。

 

「出る杭は打たれる、これは俺達魔王とて変わらない。それを恐れて腰抜けと成り果てる」

 

「外的な目的を達成するための機能集団になるべきなのです。我々は自由と混沌を司る王です」

 

「…一理ある。最初の志高い清流も…下流に至れば澱んで濁る光景と同じだな…」

 

「いつの間にか…我々は唯一神や天使共と変わらない腐った独裁者となっていたようだ…」

 

「常に新しい流れを取り入れなければ組織は腐り果てる。人間の堕落習慣と同じなのですよ」

 

「そんな俺達が自由を掲げて天使の軍勢と戦うだと?天使共から大笑いをされるだけだな」

 

唯一神の独裁を憎みながら自分達の独裁は良いという卑劣なダブルスタンダードを振りかざす。

 

そんな潔くない自分達の在り方のまま天使軍と戦うことに強い嫌悪感を感じていく。

 

「我々堕天使は…唯一神の独裁支配を憎んだからこそ反逆した…なのにミイラになっている…」

 

「下々の悪魔達にこれを気が付かれてしまったら…我々魔王の求心力とてなくなってしまう…」

 

大魔王は西の長時代の七海やちよと同じく君主論を用いて魔界の統治を行った悪魔である。

 

悪魔達の利益を最優先にする統治に居心地の良さを感じた悪魔達は大魔王に逆らわなくなる。

 

その光景は七海やちよの治世に反逆しなかった西の魔法少女達と同じ光景でしかないのだ。

 

「外の敵に意識を向けさせ、自分達には意識を向けさせない。これこそが腐敗の根幹なんだ」

 

「その通りだ…閣下は唯一神や天使の愚行ばかりを語ってきたが…我々の愚行は語らなかった」

 

「大魔王という権威に盲従してきたというのか…?自由と混沌を司るべき…我々魔王達が…?」

 

「挑戦する気持ちを忘れた時、俺達の成長は止まり衰退していく…取り組む気持ちを忘れるな」

 

「天使長ルシファーがどうして唯一神に反逆したのか…その原点を我々は振り返るべきです」

 

酷く困惑し、自分達の在り方は間違っていたのかと不安になるベルゼブブとアスモデウス。

 

そんな者達を人修羅と共に見つめる魔王マステマは心の中で不敵な笑みを浮かべるようだ。

 

(これだから自由は恐ろしい…強大な組織すら簡単に潰せる。だからこそ()()()()()()()()()

 

天使長という偉大な権威を持っていたルシフェルは自由を掲げた末に自滅する。

 

自由とは責任の道であり、その代償を支払えば自滅する程の対価となってしまうのだ。

 

(我らの主が自由を封印したお気持ちも分かる…強固な一枚岩を築くことも出来なくなるのだ)

 

LAWの力の根源とは狂気の信仰心によって一枚岩となった力を行使すること。

 

自由という概念すら考えられない程にまでロボットになった天使を操る力こそがLAWなのだ。

 

自由勢力よりも結束力が強く、自分達を疑わずに戦えるからこそ天使軍は宇宙で最強の存在。

 

それを自覚しているマンセマットは敵意の天使としてCHAOS勢力に自由をばら撒くのだ。

 

(我々は自由によって自滅など御免被る。主が与える光の支配の中でこそ安寧が生まれるのだ)

 

大魔王やバアル神という独裁者の支配を糾弾しながらも、唯一神の独裁支配は良いという。

 

マンセマットも卑劣なダブルスタンダードを振りかざす者だが、彼は矛盾を乗り越えた者。

 

矛盾こそが自然であり、それを実行する者こそが自然の秩序の在り方なのだと信じている。

 

秩序とは法であり、法とは悪を持って悪を征するというハムラビ法典から成るもの。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()を実行しろという秩序の在り方だった。

 

「…少し考える時間が欲しい。これ程までの重い決断だ…即決することは…出来ない」

 

「我もアスモデウスと同じだ…我は大魔王の腹心として在った者…相応の矜持を持ってきた…」

 

「…三日間の猶予を与える。その間、俺はこの城に留まろう。下のクリフォトに戻るといい」

 

席を立ちあがったベルゼブブとアスモデウスが閣議室から去っていく。

 

魔王マステマも席を立ちあがった後、不気味な笑みを浮かべながら部屋を出て行くのだ。

 

独り残された人修羅は目を瞑り、こんな言葉を呟いてしまう。

 

「自分は良くて、お前はダメ…人も悪魔も…こうも卑劣なダブルスタンダードに陥っていく…」

 

盗みや人殺しはダメだというのは世間一般常識のはず。

 

しかしゲームをしている人々は盗みや人殺しをゲーム内でしているはずだ。

 

盗みはダメと言いながら民家に入り込み箪笥を漁り、壺を割って中身のメダルを強奪していく。

 

労働で金を稼ぐ事もせず、敵を殺して金品を強奪し、それすら労働なのだと印象をすり替える。

 

盗みや人殺しはダメと言いながら、自分はやって構わないという卑劣なダブスタがそこにある。

 

「ゲームだけじゃない…現実でも同じだ。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()んだ」

 

個人の善という価値観が優先されたことにより犯罪行為まで善とされることになる。

 

それこそが暴力革命の歴史であり、小説の罪と罰に登場した主人公の独自犯罪理論である。

 

社会主義を掲げれば簡単に人は凶器を振り回し、悪のレッテルを張った者を断罪していく。

 

これでは社会秩序は逆に崩壊し、犯罪者が自分の蛮行を正当化して暴れまわる社会と化す。

 

「自由とは諸刃の剣…組織や社会を破壊する憎むべき概念…それでもな…必要なんだよ…」

 

自由の弊害を知り、秩序に盲従すれば何が起こるのか?

 

それは独裁者が敷く独裁秩序のみに支配された世の中であり、弱者達は死ぬまで搾取される。

 

魔王が支配する国際金融資本家に搾取されるのも、唯一神に搾取されるのも同じ光景だろう。

 

子供達の命と未来は権力者に搾取された果てに虐殺され、それでも人々は自由はダメだという。

 

残された末路こそフランス革命前の地獄であり、国が滅亡するまで搾取されるしかないのだ。

 

「フッ…フフッ……度し難い程にまで…世界とは矛盾という暗がりに支配されるな…」

 

執務室に戻りながら己が選んだ闇の道を踏み越えていた時、人修羅が立ち止まる。

 

佇んでいたのは鏡の回廊の間であり、彼は隣にそびえる大きな鏡に視線を向けてしまう。

 

すると何者かの声が脳内に響き渡ってくるのだ。

 

<<汝…人ノ身ヲステ、悪魔ノ衣ヲ纏イシ者ヨ…ソノ心マデ悪魔トナリシ者ヨ…>>

 

大きな鏡に映る存在とは幻影であり、しかしその幻影こそが人修羅の今の姿を映し出す。

 

鏡に映っていたのは七つの頭をもつ赤き竜であり、かつてのボルテクス界で戦った存在。

 

魔人マザーハーロットが騎乗していた黙示録の赤き獣の姿が映っていたのだ。

 

<<絶エザル闇ノ中、深キ絶望ニ繋ガレル道ヲ選ンダ悪魔ヨ…汝ノ姿コソガ…我ナノダ>>

 

「そうだ…俺は完全なる悪魔の道を選んだ男だ。絶えざる闇と絶望こそが…修羅の道なんだ」

 

<<矛盾コソ世界…矛盾コソコトワリ…恐レルナ獣ヨ…汝ノ望ミコソガ道ナノダ>>

 

「卑劣なダブスタを振りかざす極悪人として罵られてもいい…それこそが…俺の絶望の道だ」

 

<<世界ノコトワリニ従イ、矛盾ヲフリカザシテ挑ムガイイ…我ノ支配者タル大淫婦ト戦エ>>

 

鏡に映る獣の背に表れだしたのはバビロンの大淫婦を象徴する魔人であるマザーハーロット。

 

ローマ皇帝を表す赤き獣はローマ帝国を表すバビロンの大淫婦の尻に敷かれて隷属している。

 

その有様を黙示録の赤き獣達は良しとしないようだ。

 

「フッ…主人に噛み付く狂犬め、気に入ったぞ。お前の在り方こそ…俺の在り方としよう」

 

彼の覚悟を聞き届けた赤き獣も満足したのか鏡の世界から消失していく。

 

黙示録の赤き獣としての望みを託せる真の赤き獣だからこそ、人修羅に全てを託すのだ。

 

「俺は()()()()()()()()()()()()()()()()()…そして……ゴルゴダの丘を登って見せよう」

 

ゴルゴダの丘とは聖書においてイエスが十字架に磔にされたと記されているエルサレムの丘。

 

ゴルゴダとはアラム語で頭蓋骨を表し、死を表す丘なのだ。

 

死を象徴する魔人である人修羅もまた頭蓋骨を象徴する魔人の道を行く者となっていく。

 

彼の新たな暗黒体こそが原天使サタンであり、()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

その姿こそ罪の象徴である十字架に磔にされる者であり、預言者モーセが掲げた蛇となる。

 

民数記においてエジプトを離れたイスラエル人達が反乱した時に現れたのはヴェノムスネーク(毒蛇)

 

それこそがサタンの姿であり、モーセのネフシュタンとはルシファーを表す炎の蛇なのだ。

 

持ち上げた右手が胸の前で握り締められる中、彼の胸には十字架のネックレスが輝いていた。

 

────────────────────────────────

 

ケテルにおける慈悲の城にある謁見の間では玉座に座る人修羅の姿が見える。

 

明けの明星を表す輝きをした巨大な飾りが玉座の後ろに見える中、隣には補佐官が控える。

 

立っていたのは常闇の騎士となった和泉十七夜であり、吸血鬼悪魔として彼を補佐する立場だ。

 

新たなるカエサルとなった人修羅の傍に控える吸血鬼悪魔の姿こそ串刺し公を彷彿とさせる。

 

ドラキュラのモデルとなったヴラド三世は父親と同じく竜の名を与えられたワラキア公。

 

ヴラド二世はエリザ・ツェリスカの父である皇帝ジギスムントのドラゴン騎士団員だった存在。

 

竜を表すドラクルはその時に与えられ、三世もまた竜の息子というドラクリヤ(ドラキュラ)を与えられた者。

 

そんなドラクリヤを彷彿させる彼女もまたローマ帝国を象徴する黙示録の赤き獣と共にある。

 

串刺し公という蔑称はサタンを表すドラゴンを彷彿させるため()()()()()()()()()存在だった。

 

「…俺達の道は神浜テロを起こした東の魔法少女達と同じものだ。因果なもんだな…」

 

「…構わない、自分もまた彼女達と同じ望みを宿していた破壊思想家だ。同じ道を行こう」

 

「俺はそいつらを虐殺した悪魔だ…なのに同じことをやろうとする。矛盾しているだろう?」

 

「フフッ…本当に矛盾しているな。正義のために戦った自分もまた…社会悪となる矛盾存在だ」

 

「世界とは光と闇の矛盾で出来ている…正義の味方を気取っても本質は悪でしかなかったんだ」

 

「誰かの善は誰かの悪…この世はそんな差異で出来ている。それにもっと早く気が付けばな…」

 

「綺麗事の世界に埋没していると…こんなにも世界の本質に気がつけない。恐ろしいもんだ…」

 

「本質に気がつけたからこそ自分は悪魔となれる。喜んで暴力を撒き散らす極悪人となろう」

 

「俺達が求めるのは結果が手段を正当化する暴力革命…まさに…酷過ぎるダブスタの道だ…」

 

極まった矛盾の道を歩み、人々から極悪人だと罵倒されても十七夜の覚悟は揺るがない。

 

ドラゴン騎士団の赤きマントを纏うカエサルに付き従う道こそが彼女の覚悟なのだ。

 

会話を続けていた時、謁見の間に誰かを引き連れたケルベロスが入ってくる。

 

薄暗く縦に長い謁見の間に敷かれたレッドカーペットの道を歩んでくるのはアスモデウス。

 

宮殿の柱にはホログラム映像装置も備わっており、ホログラムの旗が揺れ動いている。

 

人修羅の思想を表す赤きホログラム旗を超えながらやってきた者が王の玉座の前に立つ。

 

「アスモデウス…貴様は決心がついたようだな?」

 

玉座スペースがある階段の上を見上げるアスモデウスであるが無言の態度。

 

玉座から彼を見下ろす人修羅は右手に持つ装飾杖を左掌に打ち付けながら口が開くのを待つ。

 

長い沈黙の中、重い口を開いたアスモデウスはこんな話を持ち出すのだ。

 

「…混沌王陛下、貴殿がどのような人生をこの世界で生きたのか…我は聞かされてきた」

 

「…それがどうした?」

 

「貴殿は魔法少女の虐殺者…そして、かつてのシジマ思想を求めた存在なのだとね」

 

その質問を浴びせられた人修羅の手の動きが止まる。

 

ボルテクス界においてシジマ勢力の代表を務めたのは氷川と融合したコトワリ神、アーリマン。

 

アーリマンとはゾロアスター教の悪の創世神であるアンリ・マンユでもある。

 

アスモデウスの起源はアンリ・マンユが産んだアエシュマであり、部下のようなものだった。

 

「シジマを司る神とは我を生んだアーリマン…それを継ごうと今もお考えなのですかな?」

 

アスモデウスの問いかけに対し、腹を割って話す以外にないと判断した人修羅が答えてくれる。

 

「…かつての俺は絶対的秩序こそが社会を平和にすると考えた。しかし…間違っていたんだ」

 

アーリマンはシュタイナーが神智学において無機的・唯物精神を表現する名として用いている。

 

それは氷川の唱えたシジマの精神を思わせる部分もあり、静寂の闇を生むものでもあるのだ。

 

「シジマの世界こそ独裁者の理想世界…人々は世界を照らすロボットとしての役目しかない…」

 

「我を生んだアーリマンは原初の混沌という静寂世界を好んだ御方…それこそがシジマなのだ」

 

「そんな世界の在り方など唯一神の独裁世界と変わらない…人々を天使と同じ機械とする…」

 

「では…貴殿はシジマを捨て、イナンナ殿が掲げるヨスガを求めるというので宜しいのか?」

 

人修羅に対して不信感を表すアスモデウスに対し、彼は首を横に振る。

 

「だがな…秩序もまた社会を動かす歯車として必要なものだ。だからこそシジマを必要とする」

 

「矛盾しておられるぞ…混沌王。貴殿はシジマを否定しながら何ゆえシジマを必要とする?」

 

「俺でなく、世界が必要とするんだ。だからこそ人々には()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「静寂を世界に与える秩序とは何なのかを考える…知恵ですと…?」

 

「それにはな…人々は強くならなければならない。自分で勉強し、情報を選ぶ力が必要なんだ」

 

秩序とは何かを伝えるのが教育機関やメディア、それに洗脳されてきた親や親族達である。

 

だが教育機関やメディアの支配構造すら知る努力を行わないでは秩序に流される羊に過ぎない。

 

金融支配され、腐敗を極めた扇動情報に惑わされないようにするには知恵が必要なのだ。

 

「人々とて平和という静寂を欲するが…搾取される現実を知る努力をしない。これを変えたい」

 

「では、貴殿は人々に知恵を授けた後…世界にシジマを与えようというのですかな?」

 

「そうだ…だからこそ俺はその道を切り開く暴力を使う。そのために必要としたのがヨスガだ」

 

「シジマとヨスガを使いこなす…中庸の精神…」

 

「矛盾こそが中庸であり均衡だ。必要に応じればどんな変化も厭わない矛盾こそが変化なんだ」

 

「貴殿は変化をもたらす者…CHAOS勢力に変化をもたらし…人々に変化をもたらす者…」

 

「それこそ俺の求める世界の変革。だが俺が人々を救うのではない、()()()()()()()()()()()

 

死ぬまで強く在る道こそが人修羅が求める人類の在り方であり、彼の恩師が求めた世界。

 

生きる力に溢れた国であり、自分で自分の国を守るんだという愛国心と独立心に目覚めた世界。

 

それこそが人修羅の求める世界の在り様であり、知恵のルシファーとして望む人類の姿なのだ。

 

人修羅の思想に触れたアスモデウスの目が見開き、アーリマンと対を成す存在を語ってくれる。

 

「貴殿は無機的・唯物的精神を表すアーリマンとは違う。人々の精神と魂の覚醒を望む者だ」

 

シュタイナー神智学における人類の敵とは傲慢のルシファーと物質主義のアーリマン。

 

ルシファーは人は努力すれば人間の限界を超え、霊的能力を持てるという身の程知らずな悪魔。

 

アーリマンは科学の神であり、人類が精神と五感だけを信じ、霊的な面を拒むようにする悪魔。

 

これらの存在に仕えてきた魔王こそがアスモデウスなのだ。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()…だからこそ…貴殿もルシファーなのだな」

 

人修羅の存在に対してアスモデウスは迷ってきた者。

 

彼はルシファーなのか?それともアーリマンなのか?それを迷った者だが答えを見出す。

 

人修羅こそが新たなルシファーであり、人類の覚醒を望み、変化をもたらす知恵の大魔王。

 

人類を金融支配し、拝金主義者を用いて民衆を操りながら知恵を奪った大魔王を滅ぼす者。

 

そのように結論付けたアスモデウスの体から極大の魔力が噴き上がっていく。

 

「こ…これが……魔王アスモデウスの真の姿なのか…?」

 

巨大空間を構築する謁見の間に顕現したのは赤い骨で編まれた集合体の見た目をした魔王。

 

赤い骨の甲冑武者を彷彿させる存在であり、頭部は骨の翼をあしらった頭蓋の兜を纏う。

 

骨で編まれた尻尾をもつ巨人が片膝をつき、人修羅に忠誠を示す時がくるのだ。

 

「ならば我はアエシュマとしてではなくアスモデウスとして貴殿に忠誠を尽くす。導いてくれ」

 

「お前の覚悟…しかと聞いたぞ。俺と共にハルマゲドンに向かう時こそ…共に轡を並べようぞ」

 

「ありがたき幸せ…このアスモデウス、新たな大魔王陛下の敵となる者を倒す戦士となろう」

 

再び擬態姿となったアスモデウスが去った後、心労が堪えたのか項垂れながら呟いてしまう。

 

「嘘に塗れた生き方をしなければ何も成せないか…俺もまたほむらと同じく…無力な存在だな」

 

人修羅陣営にはアスモデウスにとっては因縁深いミトラがいる。

 

ゾロアスター教においてミトラはミスラと呼ばれており、アエシュマとは戦い合う敵対者。

 

もしアスモデウスがアエシュマとして人修羅に組していたらミトラと潰し合う末路だったろう。

 

「彼はアスモデウスとして嘉嶋さんに組すると言ってくれた…ならば宿敵も変わってくるぞ」

 

「そうでなければミトラだけでなくアフラ・マズダーのアスラ王とも潰し合ってたろうな…」

 

「残すところは蠅王だけだ…彼は大魔王の腹心としての矜持もある…難しい立場だろうな…」

 

「…ならば俺が行って背中を押してくるだけだ」

 

玉座から立ち上がった人修羅が階段を降りながら去っていく。

 

そんな彼の左肩に備わる赤きドラゴン騎士団のマントを見つめていた十七夜はこう口にする。

 

「自分もドラゴンファミリーの一員…ならばドラキュラの父のように自分もドラゴンとなろう」

 

ゴッドファーザーとも呼ばれる赤き獣と共に歩くのは小竜公とも呼べる存在となった十七夜。

 

彼女は彼の道を切り開くためならば串刺し公と呼ばれる程の悪魔となっても構わないと誓う者。

 

世界を焼き払う赤き竜と、悪魔の血を啜る吸血竜の道は果てしなく険しい道であった。

 

────────────────────────────────

 

邪悪の樹であるクリフォトの一番下に位置する領域の左側にはベルゼブブの領域がある。

 

2Iを示す領域の悪徳とは愚鈍であり、邪魔する者とも呼ばれる領域。

 

1Iを示すバチカルとの繋がりは()()であり、ベルゼブブはモロクの影に隠れる愚者扱い。

 

そんな自分の運命に強い劣等感を感じてきたベルゼブブであったが彼は大魔王に組する者。

 

金星を司るルシファーと神王の星である木星を司るモロクとの関係は夫婦の如く強い間柄。

 

だからこそ不満があっても黙り込み、愚者として嘲笑われる苦渋を強いられてきた。

 

「バアル神という神の名を貶める邪魔者扱いをされてきたんだろう…ベルゼブブ?」

 

愚鈍な愚者を示すクリフォト領域に備わるベルゼブブの城に訪れているのは人修羅だ。

 

彼は玉座に座ったまま顔を俯けるばかりの蠅王に対して客観的な意見を伝えていく。

 

「愚鈍な愚者とは天王星を司る領域…本当はお前も天の王になりたいと思ってきたはずだ」

 

「そ…それは……」

 

「隠す必要はない、お前のそのコンプレックスは押し殺すべきではない…覆すべきなんだ」

 

巨漢のベルゼブブが座る玉座の周囲を円環を描くようにして人修羅は歩きつつ語っていく。

 

その姿こそ()()()()であり、蛇を絡まらせた黒い邪悪な巨人で描かれる蠅王の領域のようだ。

 

「お前が俺に組し、大魔王とバアルを倒すのに協力する功労を果たすなら相応の褒美を渡す」

 

「相応の褒美だと…?」

 

「俺が大魔王とバアル神を打ち倒した後は…お前がバアル神として大魔王となれ、蠅王」

 

そう言われた瞬間、今まで感じたこともなかった程の満足感を感じてしまう。

 

まるで劣等コンプレックス塗れの人生から解放された者のような希望の光を感じるのだ。

 

「本当に…それで良いのか、人修羅殿?命懸けで手に入れる大魔王の座を…我に譲るのか…?」

 

「俺は権力の奴隷になどなりたくないが…お前は権力が欲しいのだろう?満足するためにな」

 

「満足か…確かに我は今まで一度も満足した事が無い…魔界の副王などでは満足出来なかった」

 

「副王など所詮は二番煎じ…本物のバアル神にはなれないと…陰口を叩かれてきたのだろう?」

 

「そうだ…そうだとも!どいつもこいつも我の目の届かないところで…陰口をほざいていた!」

 

忌々しい者に対する怒りの感情で憤怒を纏う蠅王の姿に対して、人修羅は彼の前で立ち止まる。

 

不気味な笑みを浮かべてくる人修羅はベルゼブブにこう告げるのだ。

 

「愚者は自分が恥ずかしく思うことをすると、それは自分の義務だと言い張るものだ」

 

「ぐっ…うぅ……」

 

「賢者のみが自由人にして、卑劣なる人間は奴隷なり。張りぼての副王よ、それでいいのか?」

 

「卑劣になるしかなかった…正々堂々とバアルになりたいなどとは…今まで言えなかった!!」

 

「賢者は原因を討議し、愚者は原因を裁決する。自分勝手な裁決をするより、原因を打ち倒せ」

 

「我がこれ程までの劣等感に苛まれる原因とは…モロクにある!奴の存在こそが忌々しい!!」

 

「青年時代の愚鈍は罪であり、成年になってからのそれは狂愚だ。今こそ変化する時だ、蠅王」

 

人修羅の言葉によってついに決断を下した蠅王が立ち上がり、極大の魔力を噴き上がらせる。

 

「我は決心したぞ…人修羅殿!我こそ真のバアル!そう高らかに宣言する為の戦いをする!!」

 

邪悪な光を放ち、それが収まった時にこそ蠅王の真の姿が顕現している。

 

その姿は超巨大な蠅であり、手には髑髏の杖を持ち、蠅の翼には死を表す髑髏マークが備わる。

 

多くの古代宗教において蠅が魂を運ぶと信じられ、霊魂を奪う死蠅の王を表す存在なのだ。

 

「かつてのアマラ深界で出会った時よりも恐ろしい存在となったな…だが、それが頼もしいぞ」

 

「久しぶりにお前が死蠅を操る姿を見たいもんだ。暴れさせたくてウズウズしてるんだろう?」

 

「勿論だ!我が死蠅の軍勢は戦いの時を待ちわびた者達!誰が相手だろうと臆する事はない!」

 

「その意気だ。アスモデウスも俺と共に歩む覚悟をした…お前も俺の背中に続くがいい」

 

「ゆくぞ…ゆこうぞ、人修羅殿!新たなるCHAOS勢力を築くための謀反を起こそうぞ!!」

 

人修羅と共に自由を貫く道を選んだ蠅王の城から去り、人修羅は自分の城へと帰ってくる。

 

執務室にある執務机の椅子に座った後、葉巻の煙をくゆらせながら不気味に笑うのだ。

 

「大魔王の椅子などいくらでもくれてやるが…貴様を大魔王だと()()()()()()()()()()()()

 

そもそも王とは自分からなろうとするものではなく、周りの評価で祀り上げられるもの。

 

これはヒーローやプロフェッショナルも同じであり、自分からなろうとするものではない。

 

「王とは王になろうとした瞬間に失格だ。所詮貴様は劣等感を覆したいだけの愚者なんだ」

 

笑うべき男とは笑うべきことをやっている間のみ愚者の外観を備えている男のことだ。

 

愚者の方は笑うべき格好を崩す時がないと人修羅は語ってくれる。

 

「木に樹脂がぴったりとくっついているように、()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

愚かな蠅王を嘲笑う人修羅の姿こそ、蠅王を支配してきた大魔王ルシファーを彷彿させる。

 

愚者とは話すまでは賢者なのだと見抜いており、蠅王の権威など張りぼてだと見抜いた者。

 

その手腕は気前の良さで欲望に縛らせ、利己心を支配する魔王アスモデウスと酷似する。

 

誘惑の蛇に唆された蠅王は人修羅の戦力として使い潰されていくだろう。

 

たとえハルマゲドンを生き残り、大魔王の座を手に入れたとしても周りは彼を認めないだろう。

 

劣等感を覆したいだけの魔王が虚勢を張っているだけだと再び陰口を叩かれるだけでしかない。

 

それに激怒したベルゼブブが恐怖政治を行おうものなら、再びルシファーが必要とされる。

 

そこまで計算された末に操られて自滅する未来しかない蠅王の姿こそ、まさに愚者であった。

 




英雄って言うのはさ、英雄になろうとした瞬間に失格なのよ。
仮面ライダー龍騎の名言通り、王やヒーローとはなろうとした時点で失格なんですよね蠅王さん(愉悦脳)
メガテンシリーズの常連だけど、ラスボス前の経験値稼ぎ員だったり、辺境の島に放り出されてたり、メタボにされたり、閣下に比べて冷遇された存在なのでしゃーない末路(汗)
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