人修羅×まどマギ まどマギにメガテン足して世界再構築 作:チャーシュー麺愉悦部
人間の守護者として生きた人修羅は己の全てを神浜に残し、守護者としての人生を捨てる。
自分の全てを真逆にしてでもやり遂げなければならない使命なのだと理解する者もいるだろう。
その一人が彼の盟友となってくれた葛葉ライドウであるのだが、彼の心には未だ迷いが残る。
「オオクニヌシと再会する…我にとっては苦痛だな。大正時代の奴とうぬは戦った間柄なのだ」
石段を登りながらオオクニヌシがおられる奥の院に向かうのはライドウとゴウトの姿である。
道案内をしてくれたちはると別れた彼らはオオクニヌシと静香が待つ場所へと歩んでいく。
しかしゴウトは思うところがあるのかその表情は晴れないようだ。
「オオクニヌシと自分は戦い合った間柄なのか?」
「そうだ。奴は国津の呪いに取り憑かれた狂神として…うぬに襲い掛かってきた存在なのだ…」
「国津の呪い…超力兵団事件の黒幕だったスクナヒコナも国津の呪いに取り憑かれた者だった」
「日の本は国津神が耕して育てた土地…だからこそ天津神とヘブライに蹂躙されたのを憎んだ」
大正時代の頃、どのような理由があってオオクニヌシと殺し合ったのかを聞かされる。
この世を常世に作り替えようとする程の狂神ならば、再び刃を交えることになると告げるのだ。
「しかし…この大国村の光景を見ただろう?この村の光景こそ国作りの原点が宿った光景だ…」
「では…この時代のオオクニヌシは破滅願望に取り憑かれた邪神ではないのだろうな」
「そう願いたいものだ…そろそろ奥の院が見えてくるぞ」
神社の鳥居を超え、オオクニヌシの神域に入った瞬間にライドウ達の体に寒気が走る。
恐ろしい程の殺気が溢れてくる社の中に入ってみると、正座した者達が控えていたようだ。
「オオクニヌシ…それに静香か…」
篝火が焚かれた明かりが灯る社に入り込んだ瞬間、オオクニヌシは床に置いた大和古剣を握る。
「オオクニヌシ様!?」
静香の制止も聞かず、一気に跳躍斬りを仕掛けてきた者に対してライドウは抜刀する。
マントの内側の刀に手を置き、いつでも抜刀出来る備えをしていたため重い一撃を受け止める。
陰陽葛葉と生大刀(いくたち)の刃がぶつかり合う中、鋭い目を向けるライドウが吠えるのだ。
「自分は殺し合いに来た者ではない!怒りを鎮められよ…オオクニヌシよ!!」
「黙れ!!我が盟友スクナヒコナを手に掛けた貴様なんぞが…どうして私の前に顔を出せる!」
「確かに自分はスクナヒコナを倒した者だ…それでも自分は帝都の守護者として戦ったのだ!」
「帝都の守護者だと?ヤタガラスに飼われた狐如きが偉そうに!所詮貴様は飼い狐に過ぎん!」
「我ら葛葉はヤタガラスに飼われることを辞めた!その証拠に奴らの総本山を破壊したんだ!」
「なんだと…?飼い狐に成り果てた葛葉一族共が…ヤタガラスに反逆したというのか…?」
蛇のように獰猛な瞬膜をしたオオクニヌシであったが、後方に飛び退く。
慌てた静香の横に着地したオオクニヌシは大剣を背中に背負う形で仕舞ってくれたようだ。
「我々とて断腸の思いで反逆したのだ…これでも葛葉はヤタガラスに飼われた狐だと言うか?」
「ライドウの言う通りだ。大正の怨恨もあるだろうが…どうか話をさせてくれないだろうか?」
戦意を解いたライドウと話をする気になったのか、オオクニヌシは床に座り込んでくれる。
刀を仕舞ったライドウも彼の前で座り込み、自分達の状況を彼に伝えていく。
「どうやら本当にヤタガラスの敵になったようだ。大正時代の頃の貴様とは事情が違うのだな」
「自分は帝都の人々のために戦った者であり、ヤタガラスのために戦った者ではない」
「ライドウはデビルサマナーとしての矜持を果たしただけなのだ。そこを分かって欲しい」
「フン…いいだろう。かつての怨恨もあるが…今は同じ敵を抱えている者同士というわけだな」
オオクニヌシが片手を上げれば社殿の柱の後ろで隠し身を用いて隠れていた国津神達が表れる。
隠れていたのはナガスネヒコとアビヒコであり、三体がかりでライドウを襲う手筈だったのだ。
「へっ!まさか狐一族がヤタガラスを裏切るとはなぁ?大正時代の頃じゃ考えられなかったぜ」
「我ら葛葉を先に裏切ったのはヤタガラスだ。
「フッ…そうこなくてはな。かつての借りを返したかったが状況が状況だ。歓迎しよう、葛葉」
「ナガスネヒコ、アビヒコ、今は互いに矛を収めよう。自分達は協力を仰ぎに来ただけだ」
葛葉一族とどのように関わるかの判断をオオクニヌシに委ねた兄弟神達が去っていく。
社殿内が重い沈黙に包まれる中、ライドウとゴウトは国津神勢力の協力を嘆願してくるのだ。
「静香から聞かされている…お前達の決起についてな。それについて…問いたい事がある」
「問いたいことだと…?」
「武装蜂起によって日の本の主権を奪い取った軍勢と戦うのはいい…だが民間人はどうする?」
ライドウが問いたい内容とは罪なき者達まで暴力革命の犠牲にするのかという内容である。
未だに甘さが残っていると判断したオオクニヌシは厳しい表情を浮かべながらこう口にする。
「やはりか…大正の頃から貴様は何も変わっておらん。世界の本質を何も理解しないのだな」
「世界の本質だと…?」
「スクナヒコナの超力兵団がもたらした犠牲の光景と同じ景色を生みたくないのだろう?」
「そうだ…自分は罪なき者を守る為に戦った者…国を救う為とはいえ…犠牲を出したくない…」
「世界の本質とは等価交換。大きな買い物がしたいなら相応の代価を払うべきなのだ」
世界の本質について語られたライドウは押し黙ってしまう。
魔法少女として生きた静香も思うところがあったのか顔を俯けてしまうようだ。
「世界は犠牲の上で成り立っている。食事をするため生物を殺し、魔法少女ですら犠牲を払う」
「その通りよ…私達魔法少女だって犠牲を払ってきたわ…それでも叶えたい願いがあったの…」
「葛葉、貴様は
「そ…それは……」
「その力とて荒行という代価を支払って手に入れたもの。世界は常に犠牲の上に成り立つのだ」
「だから罪無き者達ですら殺せるというのか…?それが…生きるということなのか!?」
「そうだ。生きるとは何かを殺すこと…誰にも迷惑をかけない人生など最初から生きられんぞ」
「オオクニヌシ様の言う通りよ。自然と共に生きた私だから分かる…弱肉強食こそ自然の形よ」
かつての尚紀は神浜人権宣言の時にこんな言葉を残している。
迷惑をかけない人間など存在しない。
迷惑を語るあんたは他人に迷惑をかけなかったのか?
他人に迷惑かけといて相手を許さないのか?
いつから日本の迷惑をかけるなが生まれた?
「人間は生きているだけで迷惑だ。これを意識出来なければ…エゴイストにしかなり得ない」
「自分の正しさが優劣を生み…間違っていると誰かを決めつけ…怒りと憎しみを生んでいくわ」
「その末路こそ正義と悪に分断された潰し合いだ。世界とは
「ぐっ…うぅ……」
「葛葉ライドウ、貴様も我々に対して同じことをしてくれたな?その時の気分はどうだった?」
ヤタガラスから護国守護という分かり易い正義のイメージを刷り込まれ、正義の味方となる。
誰かの凶行を勝手に凶行だと判断して間違っていると決めつけながら善悪を生み出す。
そして自分が正義側なら罪無き者を犠牲にする悪は許さんとヒーローごっこを始めていく。
罪無き命を毎日喰らいながら生きてきたというのに、
気持ち良く騙されたかっただけなんだと気が付かされたライドウは酷く狼狽してしまうのだ。
「暴力革命とは政争であり政治だ。政治と道徳は切り離せ…それこそが君主論の教えなのだ」
「博愛や平等では守れないもの…それこそが国家主権であり民族主権。だから私は鬼になる」
「静香ですら自然となれるのに…年長者の貴様は不自然を選ぶ。男として恥を知るのだな」
立ち上がったオオクニヌシと静香が顔を俯けながら震えている男の横を通り超えていく。
心配そうな顔を向ける静香であったが、主神の背中に続くようにして社殿を出て行くのだ。
「ライドウ……」
心配してくれるゴウトであったが、ライドウは自分の信念は間違っていたのかと叫び出す。
「自分は愚か者だ!!
帝都生活で鳴海と共に出かけた洋食屋で食べてきた洋食にも家畜の命は使われてきている。
家畜の命は消費するもので、人間の命は守るべきでは命に貴賤を作る選民主義者でしかない。
その発想こそ天使や悪魔の価値観であり、魔法少女や
それに対して違和感すら感じず、当たり前のように消費してきたのはライドウも同じなのだ。
「何が罪なき者を守り抜きたい守護者だ!!自分は
フェンリルから語られた言葉が脳裏を過り、インキュベーターの在り方も脳裏に浮かんでいく。
彼を含めた人類の在り方とは命に貴賤を作り、家畜の命なら消費していいという選民主義。
その在り方こそ宇宙の熱のために魔法少女の命を消費してきたインキュベーターの在り方。
そして魔法少女の解放を謳いながら人間社会に犠牲を強いた他宇宙のマギウスも同じである。
インキュベーターやマギウスを否定していいのは罪無き命を奪わなかったベジタリアンのみ。
それでも人々は感情や主観だけで善悪を勝手に生み出し、指摘さえ相手の問題にするだろう。
迷惑をかけない存在などいない事にも気が付かず、勝手に善悪の戦いをする結末となるのだ。
拳を強く打ち付けるライドウの目には視野狭窄だった自分に対する悔し涙が溢れていく。
「くそぉぉぉぉぉぉーーーー……ッッ!!!」
正座したまま打ちひしがれていくライドウを見つめるゴウトも黙り込んだままである。
自分達はこんなにも自然の在り方から遠ざかっていたのかと彼らは猛省してしまう。
客観性のない主観性とはこれ程までに成り立たず、人々は自分勝手な世界しか見ていなかった。
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「今までの自分がしてきた戦いとは…
奥の院から降りてきたライドウは田んぼを見下ろせるベンチに座りながら黄昏てしまう。
守るべき命のために戦ってきた自分なのに、他の命は当たり前のように消費して犠牲にする。
そんな人生を生きた事に気が付かされた事で今までの自分は勘違いをしていたのだと理解する。
「うぬのためにそれを伝えられなかった我にも責任がある…お目付け役失格だったな……」
「尚紀の在り方こそが正しいのだろうか…?彼は使命のためなら悪魔になれる男なんだぞ…」
「それはオオクニヌシやスクナヒコナ、それに静香とて同じだ。認めるしかないだろうな…」
「そうだな…弱き者を守る正義の味方など何処にもいない…
自分に自信がなくなってしまった者達であるため近寄ってくる悪魔の気配にすら気が付かない。
空を浮遊しながらやってきたのは村の警備隊の隊長を務める人修羅の仲魔だったようだ。
「デビルサマナーよ、お主は尚紀を知っているのか?人修羅として生きた嘉嶋尚紀を?」
縄文時代の遮光器土偶の姿をしたアラハバキは体のパーツをクルクル回転させている。
返事を返す気力もないライドウとゴウトは黙って頷くことしか出来ないようだ。
「ではお主達も人修羅の仲魔なのだな?我も人修羅の仲魔であったものだ!仲良くしようぞ」
「すまないが…元気が出ない。他を当たってもらえないだろうか…」
「むぅ…何やら悩みこんでおるようだな?そんな時は地底探検に行くぞ!!」
「地底探検だと…?アラハバキよ…うぬは何を企んでいるのだ…?」
「悩みなどスリリングな穴生活を送ったら消し飛ぶ!我と人修羅も穴兄弟生活を送ったのだ!」
「「穴……兄弟……?」」
ドヤ顔を見せようと体をドッキングさせようとした時、膨大な風が収束しているのに気づく。
<<ライドウさんに勘違いされるような下品な言葉は禁止です!アラハバキさん!!>>
「むぅ!?その声は青葉ちか…ヌォォォォーーーーッッ!!?」
繰り出されたのは背後のティターニアとコネクトしながら放つ合わせ技。
マギア魔法のネイチャー・リグレッションは『妖花烈風』となって直撃するのだ。
<<合体属性魔法はやめるのだァァァーーーーッッ!!>>
物理無効耐性持ちなアラハバキであるが属性魔法は弱いため山の彼方にまで吹っ飛んでいく。
呆気に取られたライドウ達の前に現れたのは妖精王夫婦を引き連れた青葉ちかと三浦旭の姿だ。
「あのお馬鹿土偶のジョークで気分を悪くしたのかしら?元気がないわよ、ライドウの坊や?」
「ティターニアか…先程の一撃は見事なものだな?魔法少女と共に魔法を行使出来るとは…」
「ゴウト、私はちかと共に戦う道を選んだの。霧峰村と妖精郷を滅ぼした連中を倒すためにね」
「私もまだまだです…ティターニアさんの力を完全に引き出せる程にまで上達出来てません…」
「それは我も同じであります…オベロン殿を使役させてもらえてるのに…情けないであります」
「旭、悩むなとは言いませんが自己嫌悪はいけません。成長する気力さえ生まれないのですよ」
「旭…君が三浦旭なのだな?君については静香から色々と聞かされている…苦労したのだな…」
「ライドウ殿…気遣ってくれて感謝するであります。ですがライドウ殿もどうしたのです…?」
事情を説明されたちかと旭は気晴らしだと言って散歩に連れて行ってくれる。
連れていく場所とは山間にある開けた場所にそびえるソメイヨシノの樹である。
林道を歩きながらも無言の態度を示すライドウの悩みに対して旭はこんな話を持ち出すのだ。
「ライドウ殿、人はなぜ死ぬと思いますか?」
「人がなぜ死ぬかだと…?」
マントの中で腕を組んで考えてみるが、当たり前の現象過ぎて特に意識した事が無い。
寿命で死んだり病気で死んだり、誰かに殺されたり事故や災害で死ぬという答えを返す。
「我は霧峰村の猟師…だから命の死と共に生きてきた。自然の中にこそ弱肉強食があるのです」
猟師として生き物の現実的な死という現象を一般人よりも多く経験してきた三浦旭。
だからこそ彼女の死生観は自然の在り方そのものになっている。
「一般人以上に死というものを経験してきた我はこう思うのです」
猟師として生命を奪っていると、
普通は生活のことばかり人は考えるだろうが、死に触れる職業の者達は死を真剣に考える。
「我も涼子殿から仏教を教わります。その死生観や根拠を聞くと我は納得するのであります」
死んだらどうなるか?という概念を学べる学問など宗教以外に存在しない。
「
星座を形作る恒星の輝きとて核融合反応であり、水素という燃料を使い果たせば死ぬ。
人も寿命という燃料を使い果たせば死ぬ存在であり、だからこそ子孫を残そうとするだろう。
「我らは何処からきて、何処に行くのか?何故?という概念については科学は答えられません」
化学はHowには答えられるが、Whyには答えられないもの。
どのように生物が死を迎えるかを説明することなら出来る。
しかしなぜ生物が死を選ぶようになったのかを説明することは科学では出来ない。
憶測的な意見は化学者の数だけあっても、それを証明出来る根拠などないのだ。
「なぜ人は死ぬのか…難しいテーマだな。科学のように答えを見出すことも出来んか…」
「我の死生観はきっと…久兵衛殿と同じです。人の死とは
宇宙を温める使命をもつ契約の天使インキュベーターとはエントロピーを守る者。
熱力学では3つの法則があり、これをキュウベぇは維持するために存在してきた天使である。
1 エネルギー保存の法則。
2 エントロピー増大の法則。
3 エントロピーは絶対零度に対して0の法則。
高いところにあるボールを落とした場合、高いところにあるだけでエネルギーが存在する。
落ちる瞬間や落ちた瞬間にもエネルギーが発生し、これがエネルギー保存の法則なのだ。
「生命とは生まれた瞬間にエントロピーがどんどん減っていく。
「使った分だけ減っていく…それがエネルギー保存であるエントロピーの原則か…?」
「ライドウさんは海岸で砂遊びをしたことがあります?あれがいい例ですね」
ゴウトを抱えているちかが語るエントロピーのイメージ例とは砂の城。
作った瞬間は芸術作品ともいえるくらい立派でも、いずれは風化して崩れ、平らな砂浜になる。
砂の城が完成された瞬間がエントロピーが1番低くなった状態だと語ってくれるのだ。
「エントロピーとは混沌、雑然という意味です。整然とした砂の城はエントロピーの減少です」
生まれてから死ぬまでがエントロピーの減少なら、エントロピーを増やす増大の法則もある。
自然現象においてエントロピーは増大に向かうというのが宇宙の決められたルール。
増大させるにはどうするか?それは
「感情論的には認めたくありませんが…キュウベぇさんの理屈は理に適ってるんですよ…」
「自然の世界で生きてきた我とちか殿だから感じるのでしょう…
宇宙の始まりであるビックバンは無限に近いエネルギーの誕生である。
その後、宇宙空間が広がり続けることでエネルギーの密度的なものが薄まる。
薄まることでエントロピーが増大し、星や生命が生み出されていく。
壊して雑然とした混沌に戻すには人間の存在こそが必要とされてきたのだろう。
石油や天然ガス等の資源を次から次へと使い続ける存在である人間こそがエントロピーを生む。
「君達はそんな発想でいいのか…?契約の天使にその命と魂を消費されてきたんだぞ…?」
「我らとて食事によって弱き命と魂を消費してきた者達。
「そ…それは……その……」
「なのにキュウベぇさんだけを悪者にするなんて…私には出来ません。卑劣なダブスタですし」
何気ない消費活動という名の生活の中でこそキュウベぇと同じエントロピーがある。
「なぜ人は死ぬのか?我はこう思うのであります……」
――宇宙的な死への貢献行動が人間の存在理由であり、
人は死ぬために生きている。
それこそが自然と共に生きた三浦旭と青葉ちかの出した答え。
自然の中で生きる生命達の死が人間を生かし、人間の死もまた次の生命を活かす糧となる。
人間もまた自然の一部だったのだと語れる程にまで彼女達は自然になれた者達。
しかし不自然を選んでしまう葛葉ライドウの心は釈然としない。
「君達の考えは分かった…それでも自分は割り切れない…人を愛するからこそ犠牲に出来ない」
「ライドウ殿を見ていると猟師として駆け出しの頃を思い出します。命を奪いたくなかった…」
「私だって生き物の解体はダメでした…だけど猟師達から聞かされた話で迷いは解けました」
「我々は命を殺して喰らう者…人間です。それは魔法少女だって同じであります」
魔女や魔獣を殺し、グリーフシードやグリーフキューブを消費する事で魔法少女は生きられる。
人間の食事も同じであり、悪魔達とてMAGを食事として消費するために人を襲うのだ。
人間も魔法少女も悪魔でさえも自然の一部であり、自然の循環。
だからこそ恐れるのではなく、共存したいのだと彼女達は語ってくれるのだ。
「ライドウ…この子達こそデビルサマナーの鏡なのやもしれん。悪魔もまた自然の一部だ」
「自分は偏見に支配されてきたというのか…?悪いイメージばかりに縛られていたのか…?」
「その偏見感情が優劣や善悪を生み…差別を生む。我はそれの犠牲となったのです…」
人間だって弱い家畜の命を殺して消費してきたというのに、人々は魔法少女を悪者扱いする。
魔法少女も魔女や魔獣の命を殺して消費したのは事実だが、人間だってそれは同じはず。
社会に害を成す害獣を殺し、ジビエにして食べる行為と同じことを魔法少女はしてきただけ。
互いに生きているだけでどちらも命を奪う存在だというのに、魔法少女だけが悪者にされる。
これこそが偏見の恐ろしさであり、偏り切った価値観こそが差別と戦争を生む。
人間、魔法少女、悪魔、契約の天使、全てが等しく虐殺者であり命の消費者である悪魔存在。
全てはエントロピーの増大法則に沿って生きているだけの存在でしかない。
これこそ世界を創造した神の力であり、偉大さに気づいた科学者も宗教に目覚める者が多い。
それに気が付かされたライドウはマントの内側で握り締めている陰陽葛葉が震えているのだ。
(陰陽の刀を振るってきた自分なのに…均衡すら保てていなかった。なんと恥ずかしい…)
三浦旭を差別した人間達と同じ価値観を国津神達に向け、ライドウは戦ってきた者。
そんな自分の在り方を酷く恥じてしまう中、旭達がライドウに見せたかった樹の元に辿り着く。
開けた場所に立っていたのは村の人々からも愛されてきたソメイヨシノの樹がそびえていた。
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「…青々とした葉になってしまったが、いずれ秋になれば枯れ葉となり散っていくか」
ソメイヨシノを見つめるライドウであったが、どうしてここに連れてこられたのかを理解する。
「桜とは死を表す花であります。短い美しさも死にますが…また新しい花を咲かせるのです」
「死と再生…それこそがこの花には込められてます。だからこそ時女一族の家紋なんですよ」
「散るために生きる…死ぬために生きる…それこそが時女一族であり…生命の在り方か…」
「星も人間もいずれは死ぬ…だけど次に繋げるために死ぬんです。それこそが時女なんです」
「我ら葛葉一族とて気持ちは同じだ…守護者として死のうとも…次に繋げたかったのだ」
「我々はそれで構わない…望んで進んだ道の末路だ。しかし…罪無き人々は違うんだ…」
「自分達だけが特別であり、責任がある。そんな風に考えていた時期が私にもありました…」
「それは
<<その通り。それこそが永遠に変わらぬもの…万物のコトワリじゃ>>
女性の声が聞こえた方角とはソメイヨシノの樹であり、樹が語り掛けてくる。
驚く表情を浮かべるライドウとゴウトであるが、魔法少女達は驚きはしない。
彼らに会わせたい国津神がいたからこそこの地に連れてきたのだろう。
ソメイヨシノの樹の内部から顕現してきた国津神こそ、オオヤマツミの娘に当たる存在。
表れたのは天孫降臨によって地上に降り立った天照大神の孫と結婚して子を残した女神。
ニニギノミコトとの間に三柱の子をもうけ、神武天皇の曾祖母にあたる神であった。
【コノハナサクヤ】
日本神話に登場する国津神であり、オオヤマツミの娘である。
イワナガヒメを姉にもち、その名は桜の花のように咲き栄える女性という意味があるようだ。
八百万の神々の中でも特に美しい女神とされ、火中出産の説話から火の神でもある。
火山である富士山に祀られるようになった国津神であった。
「我が名はコノハナサクヤ。14代目葛葉ライドウよ、多くを学ぶことが出来たようじゃな?」
「おぉ…なんという美しい国津神なのだ?ここに来たのは彼女を我らに会わせるためだったか」
ピンクの桜をあしらった短い着物を纏い、美しい緑の長髪には桜の花飾りが咲き誇っている。
桜の枝のような杖を持ち、浮遊しながらライドウの前に下りてくるのだ。
「この世は空であり空虚、変わらぬものなどない。命とは咲き誇り、そして散るために在る」
コノハナサクヤがライドウに語り聞かせるのは自分の神話の話である。
天照の孫であるニニギノミコトはオオヤマツミから二人の娘を結婚相手として贈られる。
絶世の美女のコノハナサクヤは嬉しいのだが、イワナガヒメは父に似て恐ろしい見た目の女神。
恐怖したニニギノミコトはオオヤマツミにイワナガヒメを返すのだが、それで怒りを買う。
岩のように強靭な生命力を持つイワナガヒメを娶ればニニギノミコトは永遠の命を得られる。
そう言われてもニニギノミコトはイワナガヒメを拒絶したため人間と変わらない生命となる。
木の花が咲き誇るように繁栄はするだろうが、その
これにより天皇家の者は神のような永遠の存在にはなれない人間に堕ちたと言われていた。
「天皇家とて花のように散る定めを負った一族であり、人間もまた花のように散るべきじゃ」
「花のように生き…花のように散る…それこそが人であり…宇宙という自然の一部…」
「人の命は滅ぶために生まれたもの…それに固執するのは
観念や精神、心などの根底的なものは物質であると考え、それを重視してしまう。
だからこそ人間という物質を失うことに辛さや悲しみを生み、それは執着心に成り果てる。
その末路は国際金融資本家達のような唯物主義者の道であり、富や命という物質に縛られる。
死ねば全てが用済みとなるものに縛られた果てに拝金主義に幸福まで感じる堕落を生むのだ。
「人々は死んだとしてもそれは始まりに過ぎない、その魂は業によって次の再生に至るのじゃ」
<<だからこそ、私達は鬼となって国を焼く者達。罪無き命もまた国を生む花の種となる>>
聞こえてきた声に振り向けば、やってきたのは旭とちかを追ってきた土岐すなおの姿である。
「私達の道はインキュベーターと同じとなるでしょう…それでも私達は自然の在り方を選ぶ」
「この者もまた旭やちかと同じく自然を受け入れた者。わらわを使役する覚悟を背負う者じゃ」
旭とちかは妖精王夫婦を使役する召喚者となり、すなおはコノハナサクヤを使役する者となる。
大国村のサマナー達から鍛えられた魔法少女達は既に立派なサマナーになっていたようだ。
「時女の家紋である四葉桜紋を象徴されるコノハナサクヤ様を使役する覚悟は出来ております」
「すなお、そなたは時女に近い一族の者。四葉桜紋を象徴するわらわを使いこなしてみせよ」
「心得ております。時女の象徴の力をもって…私は静香の敵を焼き尽くす者となりましょう」
頷き合う魔法少女の姿を見つめていたライドウであったが、ついに観念したのか認めてしまう。
「認めよう…自分は愚かだった。
弱者を守ると言いながら弱き家畜の命を食事として消費してきた葛葉ライドウもまた虐殺者。
弱者を守ると言いながら東京の戦いの中では命に優劣を作り、犠牲を強いた選民主義者。
その在り方こそインキュベーターであり、彼だけでなく全ての人間が同じ穴の狢に過ぎない。
それを認めるのが怖くて憎い存在に全ての問題を擦り付けていただけなのだと認めたようだ。
「自分とて救うべき人間を選んだ選民主義者…君達を否定する権利など…自分にはないのだ」
「ではライドウよ…オオクニヌシ達が行う決起を認めるというのだな…?」
「そうだ…たとえ守護者失格と罵倒されようとも…自分も罪を背負う。尚紀のようにな…」
「そうか…それもまた強さというものだな。弱い者達はそれを認めず…相手を悪にするのみだ」
「そんな価値観が三浦旭を差別する根幹だった。ならば…自分はそのような価値観など捨てる」
「ライドウ殿……」
彼の決心が嬉し過ぎて涙ぐんでしまう旭の横にいるちかがハンカチを渡してくれる。
魔法少女の真実を叫んでも誰にも受け入れてもらえず、悪にされた苦しみが救われたのだろう。
「あぁ…理解し合える人と巡り合えるのは…こんなにも希望を感じられるのでありますね…」
希望を運んでくれたライドウのために旭は笑顔を浮かべながら手を差し伸べてくれる。
ライドウも優しい微笑みを浮かべた後、硬い握手を交わしてくれるのだ。
「永遠に続く死と再生の螺旋を知り、その先にある新たなる景色を目指すのじゃ…葛葉よ」
決断する覚悟の力を示したことでコノハナサクヤもライドウを認める者となってくれる。
ちかとすなおも集まって手を置いていき、心を一つにすることが出来たのであった。
鬼滅の刃見た事ないんですけど、曲の夢幻は好きなんですよね。
それを聞いてたらふと思いついた話を投下しておきます。