人修羅×まどマギ まどマギにメガテン足して世界再構築   作:チャーシュー麺愉悦部

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326話 クリシュナの暗躍

これは魔法少女の世界に人修羅が流れ着くよりもずっと前、平成間もない頃の出来事である。

 

その頃からオオクニヌシは秘密結社を相手に戦う準備をしていたのだが召喚者が老衰する。

 

大正時代から共に生きてきた軍属サマナーはオオクニヌシに国の未来を託し、死亡するのだ。

 

彼の元に結集した国津神や憂国の烈士達ではあるが、それでもオオクニヌシは勝てないという。

 

「我らが戦うべきなのは日の本だけではない…世界が相手となる。ならば手段は選べん…」

 

新たな村長を任されたアビヒコの屋敷に集まった神々に対してオオクニヌシは提案する。

 

その内容を聞かされたアビヒコとオオヤマツミは血相変えた顔つきで止めてくるのだ。

 

「汝は正気なのか!?クリシュナの封印を解放するということがどれ程の狂気か知らんのか!」

 

「奴は違う世界において全人類を抹殺した末に新宇宙を生み出そうとした狂神なのだぞ!?」

 

「知っているとも…奴の神霊を解放する事が如何に危ない橋なのかは理解しているつもりだ」

 

「理解しているならばやめるのだ!この世界に流れ着いた奴の神霊はアークに封印しておけ!」

 

クリシュナを危険視するオオヤマツミが語るのは違う世界で起きた出来事の記憶。

 

神々として違う世界の戦いにも召喚されるため、オオヤマツミ達は彼の存在を知っているのだ。

 

「LAWだろうがCHAOSだろうが奴には関係ない!奴はグノーシス主義に取り憑かれている!」

 

違う世界に現れたクリシュナが求めたものとは人類を殺し、()()()()()()()()()()()()()()

 

唯一神が作った宇宙も人類も邪悪であり、全てを破壊することが人類の救済だと信じた狂神。

 

その思想こそグノーシス主義であり、唯一神に対する反逆を望んだ末に世界の破壊を望んだ者。

 

そんな破壊神を顕現させてしまったら同じ悲劇が繰り返されるやもしれないだろう。

 

「下手をすれば…啓明結社連中はクリシュナを崇拝しながら長として取り込むやもしれん!」

 

「奴を制御することなど不可能なのだ!いくら戦力不足でも…奴に頼ることだけは反対だ!」

 

「ならば他に対案でもあるのか?我々だけで…どのようにして海の向こうで戦争をする?」

 

それを問われたオオヤマツミとアビヒコが黙り込む中、アビヒコの弟が口を開きだす。

 

「いいんじゃねーか、封印を解放しても?出たとこ勝負も嫌いじゃねーし」

 

「ナガスネヒコ…貴様は賛成するというのか!?クリシュナを解放することに!?」

 

「オレ達は日の本の神…外国で影響を与えられる存在じゃねぇよ。だがクリシュナは違うだろ」

 

「ナガスネヒコの言う通りだ…外国で戦争をするならば莫大な準備がいる…奴の権威が必要だ」

 

「インド人は中国人と並び、地球で最も多い民族。そいつらに影響を与えられるのは大きいぜ」

 

「言わんとしていることは理解出来るが…奴が再び世界の破壊を望んでしまえば終わりだぞ…」

 

「啓明結社が望む人口削減が達成され、テクノロジー支配まで完成する。その世界も地獄だぞ」

 

「同じ地獄を望む連中をぶつけあってみるのも悪くねーだろ?毒は毒を制するのさ」

 

オオクニヌシの決断に対して他の対案を用意することも出来ない者達が渋々頷いてくれる。

 

その者達の決断を受け取ったオオクニヌシはクリシュナが封印された地に向かう事になる。

 

神田の社とは神田明神であり、オオナムチやスクナヒコナ、それに平将門を祀る社。

 

この領域には異界を構築するエリアもあり、平将門と共にクリシュナを封印する神がいるのだ。

 

古井戸の一つに飛び込んだオオクニヌシの前に広がった景色とは超巨大な鍾乳洞空間。

 

青白く光り輝く鍾乳洞の奥に向かえば大きな池が表れたようだ。

 

「おお、オオクニヌシよ!久しいではないか!!」

 

巨躯の体をしたオオクニヌシから見れば蟻の如き存在が語り掛けてくる。

 

池には天乃羅摩船(あまのかがみぶね)に乗った小人がおり、手に持ったオールを振って存在をアピールしている。

 

彼こそ一寸法師のモデルであり、オオクニヌシの国作りを助けた相棒のような神だった。

 

【スクナヒコナ】

 

神産巣日(カミムスビ)神の子であり、造化三神の一柱。

 

海の彼方から小人の姿で現れ、オオクニヌシと共に国作りをした存在である。

 

オオクニヌシに助力する中で医療・温泉・酒造り等に多くの功績を残す。

 

だが国造り半ばで粟島の粟の茎によじ登り、茎の弾力で跳ね飛んで常世の国に行った神である。

 

「久しいな…スクナヒコナよ。私がここに赴いた理由については薄々気が付いているのでは?」

 

「ま…まさか…封印の様子を見に来たのではなく…クリシュナの封印を解きに来たのか!?」

 

「その通り。奴の力が必要なのだ…そしてお前の力もまた必要とする。今こそ共に立つ時だ」

 

「では…拙者は封印任務を解かれる事になり、貴殿と共に再び戦う日が来たのだな?」

 

「うむっ…再び力を借りることになる。共に新たな国作りを始めていこうぞ」

 

「その言葉が欲しかった!一か八かの賭けではあるが…拙者は貴殿に全賭けしようぞ!」

 

小人のスクナヒコナが高らかに杖を掲げる。

 

同時にオオクニヌシ用の小舟も出現したことでそれに乗り込み、池の中心部に向かうのだ。

 

巨大な球体の前に立ったオオクニヌシの横には神通力で船ごと空を飛ぶスクナヒコナがいる。

 

「成せる有れば、成せぬもある…我が眼界では成せりと言えぬ所存。それでもやるのか?」

 

「無理は承知…世界と戦争をしようというのだ…我々もまた…大きな代償を払おうぞ!」

 

両目がカッと開いたオオクニヌシが右手にマガタマを生み出して球体に掲げる。

 

するとアークと呼ばれる球体が鼓動するようにして青白い光を放っていく。

 

青白い光は大きな池に広がっていき、波紋のように浮かび上がるのは幾何学模様の光景だ。

 

アークと呼ばれる存在とは大きな球体ではなく、この空間そのものがアークだったのだろう。

 

幾何学模様の光が球体に集まっていき、吸い込まれる形で光が収まっていく。

 

球体を見ればひび割れが生じていき、中からは怨念めいた言葉が響いてくるのだ。

 

<<おのれ……おのれぇぇぇ……おのれぇぇぇぇぇぇ………ッッ!!!>>

 

球体から噴き上がる煙が形を成していき、美丈夫を思わせる存在を形作る。

 

しかし彼の美しさは憤怒によって歪んでおり、かつての怒りを爆発させてしまうのだ。

 

<<ボクの願いも…新宇宙も…ぬばたまの夢にした憎き者共め…許さんぞぉぉぉ…ッッ!!>>

 

アークの起動装置であった球体が激しく砕け散る中、オオクニヌシは背中の剣を抜く。

 

土煙の中から現れた存在こそ、かつての世界で人類と宇宙を破壊することを計画した存在。

 

多神教連合の中心的存在だったクリシュナであった。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――

 

「……あれから30年か。月日が経つのも早いものだね」

 

大空を飛ぶのは巨大な霊鳥の王冠の上で佇むクリシュナであり、帽子を片手で抑えている。

 

彼が乗る霊鳥こそヴィシュヌの乗り物であり、仏教においては八部衆の迦楼羅(かるら)になった存在だ。

 

【ガルーダ】

 

ヒンズー教におけるヴィシュヌの乗り物であり、炎の様に光り輝き熱を発する神鳥。

 

人の胴体と四肢、鷲の頭部・翼・爪を持ち、顔が白、翼が赤、全身は金色に輝く鳥人間である。

 

ナーガ族の奴隷になった母ヴィナターを救う為に不死酒アムリタを天界から奪う。

 

インドラ達に見つかればその強大さで神々を蹴散らしてしまう程の強力な存在である。

 

最終的にヴィシュヌの説得に応じてその乗り物になり、アムリタの力で不死を得た霊鳥だった。

 

「ヴィシュヌ様…我は未だに解せません。何ゆえ東のナーガ共と共闘する決断をしたのです?」

 

「今のボクはクリシュナだ。世界は唯一神が生んだ牢獄…檻に閉じ込められたボク達は囚人さ」

 

「失礼しました。クリシュナ様はナーガ神族にも寛容なようですが…我にとっては嫌悪の対象」

 

オオクニヌシは蛇神でもあるナーガであり、ガルーダに連なる霊鳥は蛇を嫌う存在。

 

彼の神話では一日に一匹はナーガを屠る存在として語られる程にまで蛇神を憎む霊鳥である。

 

これは鳥が蛇を食べる行為を神話になぞらえたものと考えられ、ガルーダは蛇の害毒を呑む者。

 

呑む(グル)が転じてガルーダという神名となり、竜退治の象徴として崇拝された者なのだ。

 

「君は厳しい鳥だな…その頑固な性格が災いした事でボルテクス界の人修羅とも敵対したか?」

 

人修羅を指摘されたことでガルーダは黙り込む。

 

彼はボルテクス界において人修羅と共に一時期は旅をしたこともある仲魔だった者。

 

しかし彼は人修羅の中に蛇神の気質を感じた事で反目し、彼の元を去った存在なのだ。

 

「ボルテクス界での出来事は語って欲しくないですな…我にとっては苦い記憶なのです…」

 

「ボクは利用出来る者ならばナーガであっても利用する。()()()()()であるアナンタのように」

 

かつてクリシュナが世界と人類を破壊した末に新宇宙を築こうとした時に利用した蛇神がいる。

 

それこそがシェーシャとも呼ばれるアナンタであり、創世と終末を象徴するナーガラジャ。

 

ヴィシュヌはアナンタの上で瞑想する程にまで飼い慣らしており、ガルーダと同じ立場だった。

 

「ボクが流れ着いたこの世界も唯一神に支配された檻の世界…今でも破壊したいと思っている」

 

「ならば何ゆえ世界革命などに協力するのです?唯一神の檻の世界を存続なされるのですか?」

 

「…ボクはオオクニヌシからこんな言葉を送られたんだ。唯一神の世界を()()()()()()だとね」

 

……………。

 

「どういう意味なんだい…?ボクが唯一神の世界を不安に思う腰抜けだとでも侮辱する気か?」

 

アークから解放されたクリシュナは怒りの形相を浮かべながらオオクニヌシ達を睨みつける。

 

ヴィシュヌの化身が放つ圧倒的なまでの魔力に対してスクナヒコナは戦々恐々とした顔つき。

 

しかしオオクニヌシは微動だにせず、彼に対して客観的な意見を言える胆力があるのだろう。

 

「疑いと用心に支配され、損失を被るまいと慎重に計画する者よ…真に危ないのはどっちだ?」

 

「真に危ないのはどちらかだって…?ボクと唯一神を比べようというのかい…?」

 

「不安は災難を察知して予防する安全装置ではない、()()()()()()()()()()()

 

オオクニヌシが語るのは魔法少女の虐殺者となった人修羅のような守護者の危険性である。

 

彼はこの世界の魔法少女の在り方を信じずに憎み、暴力によって世直しを実行した者。

 

虐殺の果てに新たな秩序と平和が得られると信じた彼の行動理念もまた不安から生まれたもの。

 

魔法少女を信じてしまったから人間の尊い命を犠牲にしたことで疑いが極まった者である。

 

疑いが極まれば加害者にしかなれず、その在り方こそかつてのクリシュナなのだろう。

 

「疑うことも大切だが…信じることも大事なのだ。その均衡を保つのは至難の業だがな…」

 

「信じることの大切さをボクに説く君の方こそ…誰かを信じられなくなったように見えるね」

 

「その通り…私もまた疑いを極めた者だ。そんな私が信じる気持ちを説くべきかは疑問だがな」

 

「矛盾しているぞ、オオクニヌシ。ボクが疑うのはダメで、君は誰かを疑ってもいいのかい?」

 

「卑劣なダブルスタンダードを振りかざしているのは承知している…それでも私はな…」

 

――この世界が好きだ、滅びてほしくない。

 

何もかも自分で背負い、何とかしなきゃと思うから苦しくなる。

 

自分一人で展開できることは一つもない。

 

必ず誰かや何かと繋がって起こり、全てを動かしているのは世界。

 

その力を信頼して委ねると思いがけない救いや出来事に恵まれるだろう。

 

自分が生きるこの世界と友達になる努力をするべきなのだとオオクニヌシは語ってくれる。

 

その姿こそ国作りの神の在り方であり、壊れてもやり直せると信じて国作りをする者の姿。

 

今年の稲作が病気でダメになろうと、また来年の稲作を信じてやり直し続ける。

 

大地に根を下ろし、世界と共に生きる在り方こそ神々が人類に見せるべきなのだと語るのだ。

 

「神として大地に根を下ろす在り方を人類に示す…それがボク達神々の在り方…」

 

「創造性は獲得するものではない、()()()()()。生あるものすべてに備わる輝きなんだ」

 

「オオクニヌシの言う通りだ。我らは神としての原点…初心に帰るべきなのだろうな」

 

目の前の物、その模様や質感、目の前の人、その声、動き、表情。

 

すぐ傍の殆どに気づかず、感じずにいたことに驚くだろう。

 

「何もかも生きてそこにいる。世界はずっと新鮮だ」

 

「唯一神が生み出した檻の世界ですら…新鮮な世界に作り替えられると信じてるのかい?」

 

「その通りだ。田んぼが病気でダメになったら、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「地力を回復させるために田んぼを焼く事はあっても田んぼを消滅させる国作りなどありえん」

 

日本の国作りを象徴する二体の神々から神の在り方とは何かを伝えられた者に迷いが浮かぶ。

 

そんなクリシュナに対して剣ではなく手を差し伸べようとするオオクニヌシがいる。

 

疑うことと信じること、相反するその両方を求めてバランスを保つ道こそがNEUTRALの道。

 

矛盾こそ水の如き変化だと言われたクリシュナは真剣な眼差しを浮かべながらこう告げる。

 

「いいだろう…もう一度だけ世界を耕そう。人類が唯一神の支配から解放されるか見届けよう」

 

「信じた末に再び裏切られたならば…私も止めはしない。存分に世界を破壊するといいさ」

 

「その前にやるべき戦いがある。拙者とオオクニヌシは世界を支配するCHAOS勢力と戦う」

 

「LAWだろうがCHAOSだろうが世界を支配する連中には愛などない。ならば耕してみせよう」

 

「世界の火となり水となる…それこそが神であり火水(かみ)。そんな在り方を共に貫こうぞ」

 

神とは何なのか?それを示すためにオオクニヌシとクリシュナは互いに手を取り合うだろう。

 

こうしてこの世界にも多神教連合が再び組織されることになっていった。

 

……………。

 

「神としての原点を求める…そのためにクリシュナ様は東のナーガ組織と手を組まれたか…」

 

「創世の神ヴィシュヌとして…ボクはこの世界を耕そう。奇しくも今回で10回目の顕現だ」

 

「ヴィシュヌ様が10回目の顕現を果たす世界こそ堕落に蝕まれた世界…まさに今の世です」

 

「アバタールとしてのクリシュナの姿のままで何処まで世直しが出来るのか…見極めて欲しい」

 

「喜んで。白馬に跨る騎士としてのクリシュナ様の白馬となりて我は蛇共を喰らいましょうぞ」

 

<<クリシュナよ、この世界は次のカルパに向かうための眠れる卵かもしれないのだぞ?>>

 

隣の上空から念話が送られてきたことでクリシュナが視線を向ける。

 

そこにいたのはガルーダと並走するように天を駆け抜ける甲冑馬に跨る黄金の騎士。

 

甲冑馬は東京黙示録事件の時にルイーザが乗っていたスレイプニルであり、跨るのは本物の主。

 

全身を覆う金色の鎧の頭部にはフルフェイスの兜が備わり、左目部分には青い炎が咲いていた。

 

【オーディン】

 

北欧神話の主神であり、隻眼の老人の姿で描かれる戦争と死と魔術の神である。

 

知識と戦力を象徴する英雄達の魂を集めるのに非常に貪欲かつ陰湿な性格をしている存在だ。

 

知識を得る為に自らの片目を差し出す程、彼は知恵を求めずにはいられない者。

 

必中の槍グングニルと増殖する黄金腕輪ドラウプニルを持ち、スレイプニルを愛馬とする。

 

フギンとムニンというワタリガラスに世界中を回らせ、様々な知識を獲得する者だった。

 

「世界革命など新たな世界の誕生を妨げる行為だと…かつての卿ならば答えたはずだがな?」

 

「かつての世界においてボクと共に多神教連合を支えた神よ…何が言いたい?」

 

「今の卿を見ていると腑抜けのように思える。蛇の理屈に惑わされたか?」

 

「オーディンよ…ボクが求めるものとは世界に捧げる愛なんだ。それは自己犠牲の光景だ」

 

「なればこそ新たな世界のための人柱として人類そのものを自己犠牲させたかったはず」

 

「そうだとも…それが正しいと今でも思っている。それでもね…もう一度だけ試したい」

 

「革命という業火によって焼き払われた世界の後、人類の堕落は治療出来るか試したいのか?」

 

「唯一神と悪魔にその魂を弄ばれるしかない人類は…本当に自立を求められるかを…試したい」

 

「試す者としての道…それはルシファーの道でもある。やはり蛇に惑わされたと見えるがな」

 

「ボクの救済計画はかつての世界で水泡に帰した…ならば()()()()()()()のもいいだろう」

 

ずっとうまくいかない時は勇気を出して逆をする。

 

いつも話すなら聞き、聞くなら話す、動くなら待ち、待つなら動く。

 

気づかぬ壁は自分自身、パターンを破れば状況が変わるもの。

 

魔法少女の虐殺者としての人修羅も魔法少女と共に生きる逆転を選んだ事で人生が好転する。

 

逆を選んでみるのも中庸の精神であり、正解を一つだけにする独裁とは違う在り方を示す。

 

それこそが中庸の道を成せる本物の自由であり、人類も神々も守るべき価値あるものだ。

 

「…一理ある。我も知恵を求めて考えあぐねた時は武芸に励む逆転をさせたら好転したものだ」

 

「矛盾などボク達神々は恐れるべきではない。世界とは最初から光と闇で矛盾しているんだ」

 

「その通りだな…無礼を詫びよう。我々神々とは神であり悪魔…矛盾を体現する存在だった」

 

「我らは召喚された時点で時の流れに身を置く者達。ならば世界に求めるものは力で築こう」

 

この世界に召喚された神々として個の確立を体現する者達の眼下には獲物となる施設が見える。

 

そこはアメリカの石油精製施設に見えるが偽装された生体エナジー協会でもあるのだ。

 

「オーディンを召喚したお陰で搔き集めたMAGも底を尽いた。再び貴様らから頂戴するよ」

 

「フフッ…我らに気づいた混沌の悪魔と従者共が大騒ぎを始めたようだな」

 

迎撃態勢を行う暇も与えんと手綱を打つオーディンが一気に地上に向けて駆け下りていく。

 

ガルーダを操るクリシュナも命令を放ち、超巨大な鳥人間が両腕の翼を広げる。

 

曇天から雷鳴の嵐が吹き荒れていき、ガルーダのくちばしからも業火が溢れ出すのだ。

 

「薙ぎ払え、我がヴァーハナよ」

 

空からは次々と轟雷と業火が吹き荒れ、石油精製施設が大爆発していく。

 

地上に下り立ったオーディンはこの施設の責任者を務める堕天使悪魔と対決する。

 

クリシュナとオーディン、かつての多神教連合の重鎮達が相手では分が悪過ぎるだろう。

 

応戦した堕天使悪魔はオーディンに打ち取られ、MAGタンクはガルーダに奪われるのであった。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――

 

欧米で暴れ回った多神教連合の神々が陣を張った場所とはオリンピック発祥の地。

 

ギリシャのオリンピアはゼウス信仰の聖地としても知られる有名な観光地である。

 

オリンピア遺跡群の開けたエリアに描かれているのは六芒星の魔法陣。

 

深夜の暗闇を怪しく照らす魔法陣の外で詠唱を行う召喚者とはクリシュナのようだ。

 

「我は汝を召喚する。バアルに連なるゼウスよ…汝の供物として魔法少女の感情を捧げよう」

 

クリシュナの背後に立つ巨大なガルーダが大型MAGタンクを両腕の翼で圧し潰す。

 

中から溢れ出した膨大なMAGこそ、拷問死させた魔法少女達から搾り取った神への供物。

 

それらは牛神バアルに捧げられるべきものであるからこそ、同じ牛神の系統もまた喜ぶだろう。

 

魔法陣に吸い込まれる膨大なMAGが召喚魔法陣をさらに輝かせていく。

 

膨大な突風が巻き起こる中、防衛用の魔法陣すら構築せずに召喚を続ける者が叫ぶのだ。

 

「我が求めに応じて可視の姿となり、従順として我に語れ…ゼウスよ!!」

 

明滅を続けた魔法陣が一気に光を放ち、辺りには膨大な白煙が巻き起こる。

 

片手で帽子を押さえながら白煙の向こう側を見つめる召喚者であったが、不敵な笑みが浮かぶ。

 

<<だーーれが、俺様に向かって従順になれだぁ!?この無礼者がぁぁぁぁーーッッ!!>>

 

白煙の向こう側から一気に飛び込んできた存在が右腕を振りかぶる。

 

その両腕に備わる大鎌こそ、フリーメイソンを象徴する単眼のサイクロプスが鍛造した神具。

 

世界を一撃で熔解させ、全宇宙を焼き尽くすといわれる雷霆ケラウノスの一撃が迫るのだ。

 

「フンッッ!!!」

 

クリシュナの前に割って入ったのはオーディンであり、グングニルを用いて雷霆を受け止める。

 

大地が激しく砕け散る中、浮遊したクリシュナが拍手を送りながら歓迎してくれるようだ。

 

「オーディンを相手にして片膝をつかせるとは流石はゼウスだね。歓迎しよう」

 

片膝をつきながらも帯電したケラウノスを受け止め続けるオーディンが一気に槍を持ち上げる。

 

弾かれた大鎌の隙をついて薙ぎ払いの一撃を放つがゼウスは後方に跳躍して避けたようだ。

 

「よぉ、クリシュナ!俺様もこっちに来てやったぜ。だがなぁ…テメェの舎弟じゃねーからな」

 

「勿論だ、ボク達多神教連合の間に上下関係など存在しない。同じ目的を持った同士の間柄さ」

 

「そういう事ですわ、お父様。お願いですからケラウノスの魔力を収めてくださいませ…」

 

両手を腰に当てながらふんぞり返っているゼウスの元に近寄ってくるのはアルテミスである。

 

「我が娘よ!俺様もこっちに来てやったぜ。先に召喚されて合流していたようだな?」

 

「わたくしだけでなく、この世界に蔓延るワクチンの病魔で覚醒した同胞達も合流してますわ」

 

「未知の病魔のワクチンなんぞ打ち込むバカが獣の病を患って悪魔になる…マヌケな光景だな」

 

「いつの世も人を最も多く殺す武器こそ毒ですわ。ですがそのお陰で我々は戦力が整うのです」

 

「違いねぇ。そういう訳で…俺様達も合流するぜ。長くこっちにいたんだし拠点はあるよな?」

 

「この30年間でボクはインド人達の信仰とネットワークを手にした。世界中に拠点があるよ」

 

「ならそれを利用しながら俺様達はギリシャ神話の同胞達を集めさせてもらうとするか」

 

「ボク達にMAGを提供するサマナーも世界中から集めてあるが…魔法少女は味方に出来ないね」

 

「だろうなぁ…俺様達と魔法少女は太古の時代から反目し合う間柄だったから期待出来ねーな」

 

「彼女達は古より悪魔に対する偏見の塊。まぁ、それだけの事をしてきたのは悪魔の方だがね」

 

「わたくしを崇拝してくれた時期もありましたが…現代の魔法少女は別の女神を崇拝してます」

 

「円環の女神になったアラディアか。いい加減娘として認めてやれよ?戦力になってくれるぜ」

 

「そ、それとコレとは話は別です!わたくしはあんな偽神話の女神など娘とは思いません!!」

 

「まぁ、テメェは処女神だからなぁ。そもそも娘が生まれてたら神聖がなくなっちまうわな」

 

「お、お、お父様!?そんなことをこんな場で申さないでくださいませ!!恥ずかしいです!」

 

赤面しながらプンスコする娘に対して地雷を踏んだかと頭を掻きだすゼウスは娘に甘い親バカ。

 

そんな風に思えたのが可笑しかったのか、地上に下りてきたクリシュナが微笑んでくれる。

 

「我が多神教連合はギリシャの神々を歓迎しよう。時期に多くの同胞達も駆けつけるだろう」

 

「我のフギンとムニン、それにバイブ・カハ三姉妹を放っているから道案内はしてくれる」

 

「戦力が整い次第、我々は世界中の政府に対して革命戦争を仕掛けるつもりだが…問題もある」

 

「獣の病に侵され、悪魔になった者達も一枚岩ではない。我らの招集に応じない者も大勢いる」

 

「残念だがオーディンの息子のトールもその一体だ。彼は啓明結社側に寝返ってしまったよ…」

 

「あの愚息はボルテクス界においてヨスガ思想に目覚めた者…いずれは刃を交える事になるな」

 

「それにインドの富豪から聞いた話では…啓明結社側にアスラ神族が加わったと聞かされた…」

 

「アスラ神族か…デーヴァ神族の主神であるテメェにとっては厄介な軍勢だろうなぁ?」

 

「その通り…デーヴァ神族の主神としてアスラ神族との決着をボクは望む。蹴散らしてやるさ」

 

ヴェーダ神話においてはデーヴァ神族とアスラ神族とで分かれて対立を繰り返す間柄である。

 

デーヴァは現世利益を司る神々とされ、人々から祭祀を受け、引き換えに恩恵をもたらす神々。

 

アスラは倫理と宇宙の法を司る神々であり、恐るべき神通力と幻術を用いて賞罰を下す神々。

 

アスラもリグ・ヴェーダの初期においては同じデーヴァであったが分断されることになる。

 

デーヴァ信仰が盛んになるにつれてアスラ信仰は衰え、末期には悪魔にされたようだ。

 

「所詮アスラなど仏教に拾われなければ悪神だった連中だ。本物の神の力を思い知らせてやる」

 

この世界においてもデーヴァ神族とアスラ神族の対立は解消されず、いがみ合う間柄である。

 

アスラのリーダー的存在となった人修羅の存在でさえクリシュナは憎む確執があるのだろう。

 

「積もる話もあるでしょうけど、そろそろ移動なさいません?ここも派手に壊れたことですし」

 

「聡明なお嬢さんの言う通りだ。乱暴者が派手にやってくれたせいで騒ぎに気付かれたようだ」

 

遠くから聞こえるパトカーのサイレンが近づいてくる中、慌てたゼウスが文句を言ってくる。

 

「ちょ…俺様のせい!?あんな警察連中なんざ片付けてギリシャのリキュールを堪能しに…」

 

「ダーメ―でーす!地上の観光なら革命戦争が終わった後で堪能してくださいませ!」

 

「お、おい、引っ張るなって!?至高神の俺様が警察相手に逃げるなんざ笑いもんだぜ!?」

 

「今は隠密に事を進める時期だからね。啓明結社に気が付かれる前に闇の中に潜むしかない」

 

「待ってくれぇーーっ!!俺様のリキュールが遠のいていくぅぅぅーーッッ!!」

 

巨大なガルーダの背に連行されたゼウス達一行はクリシュナとオーディンと共に去っていく。

 

彼らは世界中で潜伏しながら革命の日の為の準備を進めていくのだろう。

 

それでも啓明結社と世界中のディープステート政府を率いる大魔王勢力と戦うのは不利だろう。

 

それでもデーヴァ神としてのプライドが許さないのか、クリシュナはアスラを憎むのであった。

 




明けましておめでとうございます、今年も拙作を読んで頂けたら本当に感謝しか御座いません。
真女神転生4のクリシュナの登場ですが、まだフリンに斬り殺され足りないのかどす黒いクリシュナのままですな(汗)
人修羅君が持つ将門の刀にトラウマが蘇りそうな予感(汗)
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