人修羅×まどマギ まどマギにメガテン足して世界再構築   作:チャーシュー麺愉悦部

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327話 クレオパトラの野望

21世紀はIT時代となり、カーストに縛られない職業が与えられたことでインド人は飛躍する。

 

世界の長者にインド人達も名を連ねるようになり、世界的な資産家も多い。

 

そんな者達の崇拝を集められたクリシュナは欧米にも拠点をいくつか所有しているようだ。

 

フランス、ドイツ、ベルギーに囲まれたルクセンブルクに向けてガルーダは飛翔していく。

 

「美しい国ですね。森林や渓谷といった大自然に守られた天然要塞の中に城や街が見えますわ」

 

「ローマ時代以来の要衝であり、強さと美観を兼ね備えた街並みだね。あそこの屋敷がそうだ」

 

「拠点についたらさっさと飯にするぞ。俺様は魔力が強くても燃費が悪いタイプだからなぁ」

 

「行儀が悪いですわよ、お父様…」

 

マイペースなギリシャの神々の態度に微笑むクリシュナがガルーダを屋敷の庭に下ろしていく。

 

欧州鉄鋼の最大手企業のインド人会長が所有する屋敷に下りてきた者達を出迎える者がいる。

 

インド風の青と金で彩られたゴージャスドレスを身に纏うのはヴィシュヌの妻のようだ。

 

「おかえりなさいませ、クリシュナ様」

 

「ただいま、ラクシュミ。今日も変わらず美しい姿だ」

 

「フフッ♪お上手ですわね♪ギリシャの神々もよくぞ多神教連合にいらっしゃいました」

 

人間に擬態していようともヴィシュヌの妻の姿は麗しく、ゼウスですら息を飲む程なのだ。

 

【ラクシュミ】

 

ヒンズー教における中心的な女神の一柱であり、ヴィシュヌの妻。

 

乳界撹拌の際に生み出された多くの生物や財宝と共に乳海の泡から生まれてきた女神である。

 

多くの神々やアスラが求婚する中、彼女は迷わずヴィシュヌを選んだという。

 

幸運の女神であり、ヴィシュヌが化身する時はラクシュミも共に対応する姿に転生する。

 

仏教にも取り込まれ、吉祥天とも呼ばれていた。

 

「紹介しよう、ボクの妻のラクシュミだ。今は化身の姿をしているが女神の姿にもなれるよ」

 

「ほうほう?コイツがヒンズー教の中でも評判のラクシュミか?どうだい?今夜は俺様と…」

 

下半身にだらしない父親に対して娘のアルテミスが勢いよく足を踏み付けてくる。

 

「アギャァァァァァーーッッ!!?」

 

地面が激しく砕ける程にまで蹴り込まれた事でゼウスは片足を持ちながら痛がるようだ。

 

「無礼をお詫びする。怖いオーラを出してる旦那様に噛み付かれる前に部屋に案内して欲しい」

 

「承知しましたわ。誰か、この御方達を部屋まで案内してあげなさい」

 

手を叩けばラクシュミの従者を務めるアプサラス達がゼウス親子を案内してくれる。

 

「こいつらも中々に美しいじゃねーか?クリシュナの野郎はハーレムでも築いてやがるのか?」

 

「彼は16000人もの妃がいると言われる程ですからねぇ…お父様と似ているかも?」

 

「おいおい、俺様がそんだけ妃を用意なんぞしたら…妻のヘラが世界を滅ぼしちまうぜ」

 

「違いないですわ。あら…?この魔力と酒臭さは…まさか…」

 

屋敷の奥から匂わせてくる酒臭さの主が浮遊しながらやってくる。

 

その手には数々のワインが握られており、主神を宴に誘うために現れたのだろう。

 

「おお、ゼウス様にアルテミスもこちらに来られたか!私は先に合流させてもらってましたよ」

 

「ディオニュソスじゃねーか!テメェも先に参加していたようで景気がいいじゃねーか!」

 

サイケデリックなボディペインティングを施した美丈夫こそ、若きゼウスの名を持つ神。

 

【ディオニュソス】

 

ギリシャ神話の豊穣とブドウ酒と酩酊の神であり、ローマ神話ではバッカスと呼ばれる。

 

ゼウスの子にして神の座を得た者とされ、オリュンポス十二神の一柱とされる酒の神。

 

元来は集団的狂乱と陶酔を伴う東方の宗教の神格で、特に熱狂的な女性信者に崇拝されている。

 

秩序を重んじる体制に疎まれたが、徐々に受け入れられた末にギリシャの神格の一つとなった。

 

「戦が始まるまでは屋敷のワインセラーで酒を楽しむ日々を過ごそうかと思ってましたよ」

 

「相変わらずの酒臭さ…近寄っただけでこちらまで酔いが回りそうだぞ、ディオニュソス」

 

「アルテミスよ、そなたも酒を愛するのです。今夜は久方ぶりの再会を祝して宴会ですぞ!」

 

<<コラーッ!ハーベストな恵みを乱暴に飲み散らかすのはダメですわよ!!>>

 

少女のような声が屋敷の奥から響いてきたことでゼウスは困り顔を浮かべてしまう。

 

浮遊しながらやってきたのは豊穣の稲と実りを司る籠いっぱいの野菜の数々を持った金髪少女。

 

そしてこの少女はゼウスの姉であり、近親婚までして娘を生んだ姉さん女房でもあるのだ。

 

【デメテル】

 

オリュンポス十二神の一柱にも数えられる大地の豊穣を担う女神。

 

弟のゼウスの間に娘のペルセポネを産むことになるが、ゼウスの兄であるハーデスに奪われる。

 

ペルセポネに思いを寄せたハーデスをけしかけたのはゼウスであるが、姉は悲しみに暮れる。

 

豊穣を司る彼女が仕事を放棄したせいで地上と神界が大寒波と不作に覆われたようだ。

 

慌てた神々は娘のペルセポネを一年のうちの半分は返し、半分は冥界に連れ帰る事になる。

 

こうして一年のうちペルセポネが冥界に帰ってしまう時期が秋と冬になると言われていた。

 

「姉上まで来てたってのかよ…参ったぜ」

 

「ゼウス!この酔っ払いを叱ってやってくださいな!毎日毎日酒ばかり飲んでますのよ!!」

 

「酒は命の源であり、悪魔にも活力を与える神聖な神酒!飲んであげねば無礼であろう!」

 

「アルコール依存症の言い訳など耳にタコができるぐらい聞きましたわ!飲みすぎ禁止!!」

 

「そんな~!!飲酒を禁止されてしまったら私は…私は…干からびて滅びてしまうーっ!!」

 

金髪ポニーテール娘に対して土下座しながら飲ませてくれと哀願してくるディオニュソス。

 

こんなのがオリュンポス十二神の一柱なのかと白い眼差しを向けてくるアプサラス達である。

 

「お父様…猛烈なまでにギリシャの神々の神格が堕ちていく光景な気がしますわよ…」

 

「ま、まぁまぁ、今夜は硬い事を言いっこなしにしようや?せっかくの再会なんだからよぉ?」

 

「貴方がだらしないから白い眼差しを向けられるのです!主神としてシャキッとしなさい!」

 

「ハッ…ハハ…デメテル様の説教コースになりそうな流れですわね…」

 

「勘弁してくれよ……オイ……」

 

屋敷の方が騒がしい光景を見守るクリシュナとラクシュミであったが、妻が報告を行うようだ。

 

「ほう?オオクニヌシからそんな報告があったのかい?」

 

「パールヴァティがこちらの陣営に来てくれるそうよ。久しぶりに彼女と再会出来るわね♪」

 

「ボクも嬉しいよ。後は夫のシヴァもこちら側に来てくれたら…もはや勝ったも同然だろう」

 

「シヴァ様を召喚するには膨大なMAGが必要です…覚醒者の中から生まれる気配はないですね」

 

「また生体エナジー協会を襲撃する必要がありそうだが…今夜は君と一緒に寝させてもらうよ」

 

<<あらあら?お熱い夫婦仲を見せつけられちゃうと、私も妬けちゃいますわ>>

 

声がした方向に振り向いてみると妖艶な衣装を纏う女性がオーバーに両手を広げている。

 

気配を感じさせずに現れた存在こそ、多神教連合におけるエジプト陣営の代表者のようだ。

 

「やぁ、クレオパトラ。君の美しさも素晴らしいと思うよ。まるで夜空に輝くイシスのようだ」

 

【クレオパトラ】

 

古代エジプトの女王の名として知られる女性であり、世界三大美人の一人として有名である。

 

クレオパトラとはギリシャ語で父の栄光を意味し、彼女はクレオパトラ七世に当たる人物。

 

プトレマイオス朝はギリシャ人の家系であったので彼女は白人のような金髪と色白の肌である。

 

政争で弟に敗北した末にガイウス・ユリウス・カエサルと出会ったことで彼を魅了する。

 

彼だけでなくアントニウスも魅了したことから魔性を司る程の美と話術をもった女王だった。

 

「お世辞はいいですわ。ところでクリシュナ…CHAOS勢力の皇帝の話は聞いているかしら?」

 

「勿論だ、新たなるカエサルが生まれたと聞いている。その件で君に頼みたいことがある」

 

「…私をCHAOS勢力に送り込み、皇帝陣営の内部情報を流す工作員にしたいのね?」

 

「激しい政争の世界を生きてきた君だからこそ頼みたい。かつての獅子同様にして魅了しろ」

 

「フフッ、良くてよ。私も新しいカエサル陛下に興味津々だったの…手筈は整えてね」

 

クレオパトラと別れたクリシュナ達であったが、ラクシュミは彼女が気になる様子である。

 

「新たなカエサルに近づきたいのは我々を助けるためでしょうか?それとも生前の怨み…?」

 

「…エジプトはローマに飲み込まれて属領となった。彼女にとって…ローマは怨敵でもある」

 

「そのローマ帝国から国を守るためとはいえ…自分の人生すら犠牲に出来た人ですものね…」

 

「結婚したくないハゲ皇帝や将軍の子まで産まされる羽目になったんだ…恨みは相当なものだ」

 

「彼女は蛇の如く敵陣に入り込み…そして男を猛毒にしてしまう。そんな彼女もナーガですね」

 

「蛇とは共食いをする生物…だからこそ彼女は喜んで工作員になってくれるのだろう」

 

「大バビロンを司るローマ帝国に再び潜り込み…そして今度こそ勝ちたいのでしょうね…」

 

夜空の雲の隙間からクレオパトラを照らす月明かりが降り注ぐ中、美しい金髪を夜風が揺らす。

 

金髪ロングヘアーの彼女の肉体は豊満であり、極薄の布で編まれた衣装は目のやり場に困る。

 

しかしそれは目的達成に必要な装いであり、彼女は目的のためなら色香を武器とする魔性の女。

 

「ローマめ…悪魔崇拝民族め…我がエジプトを踏み躙り…国に悪魔崇拝を根付かせた罪は重い」

 

獰猛なコブラの形をしたサークレットの下に見える顔の眉間にシワが寄り切ってしまう。

 

怒りに震える右手の形が変化していき、肘から先が獰猛な五匹のコブラに変化していく。

 

束ねた鞭のようにしなる右腕を豪快に振り抜き、怒りの突風が巻き起こるのだ。

 

「全ては二ムロデから始まった…世界を最初に征服した奴の文化はエジプトまで飲み込んだ…」

 

――金髪をもつ我らセム系を憎むハム系人種こそが世界のセム系民族を大虐殺したかったのだ。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――

 

ギリシャ語でセムはエフとしており、エジプト神話では太陽神ラーの子シューとして記される。

 

またフランス国王ルイが太陽王を自称したのもセム系子孫であることを主張したためだ。

 

エジプトのファラオはヘブライ語で長髪を意味し、先住のエジプト人達は短髪をしている。

 

セムは長髪だったばかりでなく金髪であり、セム系によってエジプト文明が築かれている。

 

クレオパトラの美しい金髪もセムの子孫の証であり、だからこそハム系黒人を憎むのだろう。

 

「セムの子孫であるアメンホテプ四世の死後に刻まれた碑文にはこう記されているんだ」

 

寝室に戻ってきたクリシュナは妖艶な寝間着に着替えているラクシュミに語り掛けてくる。

 

寝酒を飲みながら彼はクレオパトラの内に宿る憎しみの原因を語ってくれるのだろう。

 

「アメンホテプ四世の功績とはね…二ムロデやナアマを崇拝する神官の殺人儀式を止めた事だ」

 

彼は二ムロデやナアマ、バビロン出の彼女の従者によってもたらされた殺人儀式を禁止した者。

 

神官達は淫らな狂宴(オルギア)、幼児の生贄を再開しようとアメンホテプ四世を殺害したという。

 

「何世紀にも及ぶエジプト史を通じて神官共が記した内容はね…セムを侮辱する内容ばかりさ」

 

豚、小人等と憎しみの内容を記してきたのはセムが二ムロデを処刑した事が原因である。

 

「二ムロデ評判はバベルの塔を建設し始めた頃から悪くなり…ノアの子のセムが倒しましたね」

 

「セムは二ムロデの体を切り刻み、バビロンの邪教寺院に送り付けて恫喝してやったんだ」

 

性的狂宴や幼児の生贄、カニバルを行えばこのように裁きを受けると邪教徒を相手に恫喝する。

 

その光景を突きつけられたハム系の邪教徒達は表立って狂宴を行わず、地下に潜伏するのだ。

 

セムの権力の前に神官達は以後、禁じられた狂宴を秘密の集会所だけで執り行うようになる。

 

組織外の者には知る事が許されない、知れば殺される儀式で結束した秘密結社の誕生だった。

 

「二ムロデは自業自得の末路ですわ。彼はマルドゥク、ベルと呼ばれる程のモロクの化身です」

 

「彼の支配以降…バビロンは堕落と肉欲の象徴となり、民族虐殺の慣習までもたらしたんだ」

 

「祖父のハムでさえ多種と性交し、混血種を世界にもたらした上でナアマに誘惑された者です」

 

「彼女の説得に負けた末、殺人儀式、カニバルを実践してきた…その犠牲者達こそ白人なんだ」

 

「白人を殺して食べる事で子孫に優生形質が表れるとナアマに吹き込まれた凶行でしたわね…」

 

「彼ら黒の一族はフェニキア人となり、ヴェニスの商人となり、金融を支配して世界を制した」

 

邪教徒達は二ムロデの肉片を形見として木立ちや聖地に密かに持っていき、肉片を崇め奉る。

 

これが神秘主義カルトの始まりであり、秘密結社がその教義を世界中にばら撒く事になるのだ。

 

その光景こそ()()()()()()()()()()()()()()()であり、()()()()()()()()()()()()()事になる。

 

「過去三千年間の人類史とは、セム系白人とハム系の浅黒い人種との戦いの歴史だったんだよ」

 

「ハムの子孫に金融職をやらせたキリスト教の失態ですわね…彼らが世界を蹂躙するのです…」

 

「クレオパトラもまたセム系白人としての誇りが宿っている…だからこそ彼女は戦うのだろう」

 

預言者ノアの息子達の中でもっとも完成された息子こそがセムである。

 

彼は以後の全ての文明の土台となる資質、勇気、建国の願望などを残した文明的アダム人。

 

セムの息子はペルシャ帝国の祖、アッシリア王国の祖となっていくのだ。

 

一方、ハムの子孫のカナン人は文明を破壊するためのサタン的衝動と神への反逆を望む。

 

「カナンの遺言こそが現在も動いている世界秩序…カナン程の邪な存在は許されないんだ…」

 

「だからこそクレオパトラはアメンホテプ四世のように戦う道を選んだのでしょうね…」

 

「ヒュドラの口の中に彼女を放り込むのを申し訳ないと思っている…それでも…必要なんだ」

 

暗い話を切り上げて夫と久しぶりにベットを共にしたかったのだが、夫は寝息を立てている。

 

クレオパトラの身を犠牲にしかねない決断が堪えたのか深酒してしまい、寝落ちしたようだ。

 

そんな夫の心労を支える妻は毛布をかけてあげた後、こう口にするだろう。

 

「彼女独りだけでCHAOS勢力に行かせるわけにはいかない…誰かを彼女の護衛にしないと…」

 

<<ならばその役目、我が引き受けようぞ>>

 

恐ろしい念話が聞こえたラクシュミは窓のカーテンを開けてみる。

 

見えたのは屋敷を囲う城壁なのだが、城壁の門が振動を始めていく。

 

日干し煉瓦で組まれた城門が突然開かれ、異次元空間を構築するようにしながら渦を巻く。

 

煉瓦の城門も崩れていく中、城門と一体化しているかのような悪魔の頭部が顕現するのだ。

 

<我もまた混沌王殿に謁見を賜りたいと思っていたのだ。だからこそ我が彼女を支えよう>

 

城門と一体化している悪魔の口は異空間に繋がる門であるため念話で意思疎通を図ろうとする。

 

<オルクス…貴方もまた失楽園においては混沌王の僕の一体だったわね。お願いするわ>

 

【オルクス】

 

古代イタリアのエトルリアで信仰された死をもたらす魔神。

 

エトルリア人の墳墓や壁画にはこの悪魔の巨大で恐ろしい姿が描かれていたという。

 

ローマ神話でプルートやディース・パテルなどの冥界神と同一視されていた。

 

暫くした後、屋敷の主人を務めるクリシュナ崇拝者の富豪が混沌王との謁見の機会を用意する。

 

「みんな、見送りに感謝するわ。それじゃあ…行ってくるわね」

 

上品な白と黒のスーツを身に纏う人間姿に擬態したクレオパトラが歩き去っていく。

 

見送る神々に見守られながら彼女はオルクスの異空間を通して現地に向かうのであった。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――

 

オルクスが開いた異次元の道を歩いていくクレオパトラであるが、思い出の世界に浸っていく。

 

彼女が思い出す記憶の世界にいたのは円環の魔法少女として現れたエボニーの存在である。

 

「生前の私は無力な女だったわね…魔法少女の力に頼らなければ人々を魅了する力もなかった」

 

かつてのクレオパトラはメト一族という魔法少女を抱え込む一族を政争に利用してきている。

 

エボニーは孤児であり、メト一族に拾われた事で魔法少女にされ、王家に仕える事になるのだ。

 

クレオパトラはかつての時女一族同様にして魔法少女の願いを政争に利用してきた女なのだ。

 

「私の魅了は侍女を務めさせたエボニーの力だった…本当の私なんて…ちっぽけだったのよ」

 

<<我の世界で己の罪を独白するとは…自信の無さが表れだしたのか?>>

 

「そうかもしれない…私の美しさは魔法少女の魔法で整形させたもの…()()()()()()()()()…」

 

<<それ程までに虚飾に塗れた女であったか…だからこそ今度は本当の力を求めたわけか?>>

 

「そうよ…毒針で無様に死んだことで…私は本当に望んだ自分自身に出会うことが出来たのよ」

 

地獄に堕ちる程の罪を犯してきたクレオパトラの魂を拾ってくれたのは金星の輝きをもつ女神。

 

その存在こそエジプト文明よりも古い原初の文明であるシュメールのイナンナだったのだ。

 

「あの御方に拾われた私の魂は子宮の世界で生み直して頂けた…本当に欲しかった美を得たの」

 

<<コンプレックス塗れの人生が終わった末に…美の女神に生み直してもらえるとはな…>>

 

「私を見なさい…この美しいセムの金髪と豊満な肉体…これこそが本物のクレオパトラなのよ」

 

セクシーポーズをとるクレオパトラであるが、かつての自分の姿が脳裏を過り、顔をしかめる。

 

布で顔を隠さなければならない程の醜い顔、ファラオ一族の象徴としての金髪ですらない黒髪。

 

豊満な体とて魔法少女の魔法という整形がなければ崩れ落ちるしかなく、魔法に依存する末路。

 

だからこそメト一族を利用してエボニーのような少女達を生贄にしながら政争してきたのだ。

 

「死してなお三大美女としての誇りを持つのが私なのよ。鬼女になろうとも私は男を魅了する」

 

<<悪魔に魂を売ってまで得たその美の力…混沌王を相手にどこまで通じるのか…見物だな>>

 

「見てなさい…エボニー。私はもう貴女なんて必要ない…私は私の美の力で勝利を掴み取るわ」

 

力強い決意を胸に秘めながら出口の光に進んでいくクレオパトラであるが、オルクスは訝しむ。

 

魔法少女に頼らない美を得たというが、今度は美の女神の力を借りた末に生まれ変わっている。

 

その美しさとて借り物でしかなく、()()()()()()()()()()()()()()()に不信感を持つのだ。

 

(ローマ帝国という強力な力の庇護でしか生きられなかった女か…まさに他力本願そのものだ)

 

異次元から去っていく彼女を見送るオルクスにとって、彼女の背中は酷く小さく見えた。

 

……………。

 

現在の人修羅はベリアルとネビロスから城に招待されたことでスイスに訪れている。

 

ネビロスが所有する城の広大な庭に放たれたのはソウルジェム指輪を奪われた少女の姿。

 

「いや……やめて……お願いだから……許してェェェェーーーーッッ!!」

 

「ハッハッハッ!早く姿を隠さなければ撃ち殺されてしまうぞ?脱兎の如く逃げるがいい!」

 

「楽には殺さないようにしてあげるから♪倒れ込んだらアリスが皮を剥いであげるからね~♪」

 

「ヒィィィィーーーーッッ!!!」

 

半径100mを超えれば死ぬため、全力で逃げる事も許されない少女を狩る魔王のスポーツだ。

 

「混沌王陛下、猟銃の扱いはレクチャーしましたが……自信のほどはありますか?」

 

「フン……銃は俺には馴染まないが、全力で逃げる事も出来ない兎程度ならば狙い撃てるさ」

 

泣き叫ぶ魔法少女に対して猟銃を持ったベリアルやアリス達が愉快に笑いながら狩猟する狂気。

 

それを人修羅もやらされるしかなく、工作員として魔王に恥じない残酷さを披露したようだ。

 

急所を外しながら撃たれた少女は倒れ込み、後は持ち帰られてアリスに皮を剥がれるだけ。

 

狩猟成果の歓談に参加しない人修羅は客人が訪れる予定であり、城の庭で待っているようだ。

 

「貴様がクレオパトラか?かつてのカエサルと同じく……俺にも取り入りに現れたようだな?」

 

ハンター衣装を纏う人修羅が座るガーデンテラスの前にいるのはクレオパトラの姿である。

 

片膝をつきながら礼節を示す彼女に対して厳しい視線を送るばかり。

 

人修羅の隣には従者の織莉子も立っており、同じくクレオパトラに対して不信感を募らせる。

 

残酷な魔王を演じるしかない心労のせいで心に余裕が欠片も無い男に取り入るのは難しいはず。

 

それでも話術と美声だけは長けたクレオパトラは笑顔を浮かべながら魔性の力を発揮するのだ。

 

<尚紀さん…気をつけて。あの女の体から放たれる香炉のような甘い匂いには魔力を感じます>

 

織莉子からの念話に頷く人修羅も甘い匂いを感じている。

 

白のスーツ姿から妖艶な衣装姿になったクレオパトラは美女としての毒牙を用いるつもりだ。

 

「新たなるカエサル陛下、貴方もまたガイウスやアントニウスのように堕としてみせましょう」

 

立ち上がった彼女の全身から放たれる魔性の匂いが周囲の景色まで変質させていく。

 

甘いピンク色の空間で妖艶なポーズを浮かべるクレオパトラの影がセクシーポーズを見せる。

 

魅了耐性がない者を魅了し、攻撃力や防御力まで奪って骨抜きにする『ファイナルヌード』だ。

 

かつてのエボニーを超える程の魅了魔法が発揮された事で織莉子の体に異変が生じる。

 

「ぐっ……うぅ!!」

 

全体に魅了を放つファイナルヌードに対して織莉子は魅了状態になってしまう。

 

クドラクの悪魔耐性である『奈落のマスク』で状態異常に耐性があっても無効化は出来ない。

 

「あぁ……なんて美しい女性なの。彼女の願いは何でも叶えなければならない……」

 

男だけでなく女まで魅了する程の美しき恐ろしさであるが、人修羅には通用しない。

 

彼は常時マサカドゥスを纏う悪魔耐性であり、即死魔法や状態異常は全て無効化出来る者。

 

「……くだらない魔法で俺を支配出来るつもりで来たのか?当てが外れたようだな」

 

「なっ、なんですって!?私の魅了魔法が……通用しないなんて!?」

 

驚愕するクレオパトラに対して不甲斐ない従者のために左手からアイテムを出現させる。

 

行使したのはディスチャームであり、単体の魅了を回復する道具のお陰で正気を取り戻す。

 

「俺をかつてのカエサルと同じ扱いで来たのなら…愚かな女だ。俺に色仕掛けなど通用しない」

 

「私の美しさが通用しない男だなんて…もしかして貴方様は……ホモですか!?」

 

突然の爆弾発言が飛び出し、流石の人修羅と織莉子も目が点になってしまう。

 

「ローマ皇帝の中には男色家もいましたわ…まさか人修羅様までハドリアヌス帝のように…」

 

「ま、待て待て!何を急に勘違いを始めていやがる!?」

 

「まぁ…言われてみれば尚紀さんって、魔法少女と浮いた話も出てきませんし…もしかして?」

 

「織莉子まで何を言いやがる!?俺はノーマルだ!!」

 

「だったらどうして私の魅了にかからないのよ!?私って…そんなに魅力がない女なの!?」

 

「そういう問題じゃねーよ!?くそっ…調子だけは狂わせてきやがる厄介な女め…」

 

女達に振り回される中、その光景が愉快だった悪魔が巨体を顕現させてくる。

 

隠し身の技術を用いてクレオパトラの背後に控えていたのはオルクスだったようだ。

 

<お初にお目にかかる、混沌王殿。我が名はオルクス…クレオパトラ共々力になりに来た>

 

<バカでかい城門の悪魔と美女が俺に取り入りに来たようだな…貴様らは俺に何をもたらす?>

 

<貴殿の障害となる存在ならば全てを飲み込み、または魅了して支配する力を提供しようぞ>

 

オルクスの異次元空間に飲み込まれた者は冥界に連れていかれるか亜空間にばら撒かれる。

 

そうなれば強大な悪魔であろうとも帰ってこれないだろうし、クレオパトラの魅了も強力だ。

 

腕を組んで考え込んでいたが、彼女達を受け入れると言ってくれた。

 

「俺は内外に敵を多く抱える者だ。だからこそ多くの戦力を必要とする…期待しているぞ」

 

「承知しましたわ。このクレオパトラ…貴方様の敵を魅了し、骨抜きにしてさしあげますわ」

 

<我が冥界門は再び混沌王殿と共に在る。失楽園のようにな>

 

「エジプトは常にローマと共に在ります。その点を考慮し…今度こそ寛大な待遇を期待します」

 

人員の采配を任せる参謀のニュクスの元にも行けと言われたクレオパトラ達が去っていく。

 

残された者達であるが、織莉子は何かが気になったのか思ったことを口にしてしまう。

 

「最後のクレオパトラさんの表情…何だか悲しそうな顔つきに見えましたね…」

 

「あの女はガイウスに捨てられた女。遺言状の中には子を後継者の皇帝にする記載はなかった」

 

「新たなカエサルとなった尚紀さんに対しても…見捨てないで欲しい気持ちもあるのですね…」

 

「俺に取り入りに来た別勢力の工作員やもしれない。情に惑わされる程…俺は甘くないぞ」

 

「アレクサンドロス大王以来のプトレマイオス朝を蘇らせたい思惑もあるのでしょうね…」

 

「俺を利用して野望を成す女か…俺もまたルシファーを利用している…似た者同士かもな」

 

何か大きな事を成そうとする時、人は()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

金が無ければ金融資本家を頼り、ビジネスを広げるために経済界の集まりに迎合するものだ。

 

他力本願という悪いイメージばかりに縛られてはこの世の本質は見えてこないだろう。

 

この世は弱肉強食であり、生き残るためには強力な力を利用しなければならないのだ。

 

勿論そこには罠もあり、強大な力を借りる者は貸す人の奴隷となるしかないのであった。

 




真女神転生5の舐めプしてるボス修羅君なら魅了出来たでしょうが、全開マサカドゥスモードの混沌王が相手ではクレオパトラも補欠要員でしょうな(汗)
二次創作でもクレオパトラのファイナルヌードに魅了される人修羅ネタが度々あったと思いますし(汗)
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