人修羅×まどマギ まどマギにメガテン足して世界再構築   作:チャーシュー麺愉悦部

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330話 魔女狩り

相手の言い分をよく調べないまま悪のレッテルを貼り、大虐殺を実行した歴史がある。

 

それこそが中世魔女狩りであり、これは人間心理によって生み出される同(・)調(・)圧(・)力(・)現(・)象(・)だ(・)。

 

未だに比喩的な意味合いで用いられる魔女狩りこそ、悪魔少女や魔法少女達を苦しめている。

 

中世魔女狩りは女性だけでなく男性も犠牲となり、告発されれば国家権力に裁かれてしまう。

 

酷い拷問によって社会悪だと認めざるを得ない状況にまで追い込まれた悲惨な歴史。

 

全てはバアル崇拝から子供達を守るものであったが、無関係な者まで殺される現象となるのだ。

 

無実の個人に対する不合理な集団的攻撃は何故生まれてしまうのか?

 

権力の異端尋問がエスカレートして魔女狩りを行った説を支持するのは今では少数派である。

 

恐怖政治や平民のガス抜きのために行ったとする説。

 

魔女の財産を没収して教会の利益と出来るため、積極的な魔女狩りを民衆達にやらせた説。

 

これらはどれも一定の説得力がある一方で反証も多く、決定的な証拠にはなり得ないもの。

 

では中世魔女狩りという社会現象はどのような原因で生み出されてしまったのか?

 

その根本的な人間心理を実行する者達こそ、社会悪を許さない独善的な民衆達の光景だった。

 

……………。

 

尚紀が残したペレネルの屋敷に向かうため、工匠区から移動した悪魔少女達は中央区に入る。

 

人目が付かない場所を移動するしかない者達は屋上を跳躍移動するからこそ見つかってしまう。

 

「逃がさないわよ!同じ悪魔の力を見せてあげるわ!!」

 

大剣を構える魔法少女の刀身に炎が燃え広がりながら一気に薙ぎ払い攻撃を放つ。

 

迫りくるマハラギに対してメルを背中に背負うかなえは武器を用いて防ぐことが出来ない。

 

そのためももことみたまが盾となり、銀の剣と死神の大鎌を用いて火球を切り裂いていく。

 

「どうしてアタシ達の言葉を信じてくれないんだ!?アタシ達はキミ達の味方なんだよ!!」

 

「そうやって信じ込ませようって魂胆なんでしょ!?魔法少女の魂が食べたい悪魔共め!!」

 

斬り込んできた大剣魔法少女の斬撃を受け止めたももこは武器を押し込み、頭突きを放つ。

 

鼻骨を砕かれて鼻血を撒く魔法少女が怯んだ隙を狙うが刀を持った魔法少女が割って入る。

 

「やらせないよ!!」

 

振り抜かれた刀を避け、互いに連続斬りを仕掛け合い、鍔ぜり合う時にももこが肩をぶつける。

 

弾かれた相手に目掛けて投げた剣を逆手に持つ形で握ったももこがダッシュ跳躍。

 

横回転のきりもみ体勢から袈裟斬りを放つが刀魔法少女は斬撃を受け止めてくる。

 

新入り魔法少女といえど戦いの経験は積み重ねてきた者達であり、一筋縄ではいかない。

 

そんな相手に群がられては死の力を解放出来ない八雲みたまも苦戦するしかないのだ。

 

「私達が何をしたっていうの!?貴女達のソウルジェムの穢れを綺麗にしてきたじゃない!」

 

「黙れ悪魔め!!悪魔は魔法少女の尊厳を蹂躙する上で…化けの皮まで纏って騙してくる!」

 

跳躍斬りを仕掛けてきたショーテル娘がみたまの体を切り裂く。

 

しかし彼女の体が霧散しながら消えてしまったため、ショーテル魔法少女は辺りを警戒する。

 

「キャァーッ!?」

 

屋上を照らすライトに浮かんだショーテル魔法少女の影から飛び出したみたまが反撃を放つ。

 

大鎌の柄を利用して足払いを行い、倒れ込んだ魔法少女に吸魔を仕掛ける。

 

ソウルジェムから魔力を奪われた事で戦闘出来ない程にまで魔力を消耗させたようだ。

 

(言われもない差別を浴びせられる…また繰り返されてしまうのね…)

 

みたまの脳裏に浮かぶのは神浜東西差別時代の頃の苦しみ。

 

あの頃の彼女も東の者だというだけで西側住民達から酷い差別と虐待を与えられてきたのだ。

 

「人間の頃からそうだった…どうして人々はあたしに対して悪のレッテルを貼りつけてくる!」

 

メルを背負ったまま新入り魔法少女達の攻撃を避けつつ蹴りを放つかなえが吠える。

 

彼女もまた東の者達と同じく第一印象だけで不良扱いされながら暴力を振るわれてきた者。

 

だからこそみたまと同じく過去の苦しみが纏わりつき、繰り返される差別に苦しむのだ。

 

「アタシ達は魔法少女の味方なんだ!どうしたら信じてくれるって言うんだよ!?」

 

「だったら今すぐ自害しなさい!それが出来たら信じてあげるわよ!!」

 

「極論しか言えないのか!?何でお前達は…他人を平気で差別出来るんだぁぁぁーーっ!!」

 

鍔ぜり合った刀の刃を剣の刃を用いて回転させて払い込み、左裏拳を顔面に放つ。

 

殴り飛ばした相手に気を取られていた時、背後からは別の魔法少女が跳躍攻撃を仕掛けてくる。

 

魔法のウォーハンマーが迫っていた時、誰かが割って入り込んだ事で頭を割る一撃を止める。

 

「ここは私達で食い止めます!十咎さん達は何処かに避難してください!!」

 

現れたのは神浜魔法少女社会の長を務める常盤ななかであり、二刀小太刀で戦槌を受け止める。

 

レナとかえでも飛び込んできたため乱戦状態となっていくのだ。

 

「ももこちゃんはやらせないよ!!」

 

「かえでさん!貴女は騙されているのよ!悪魔は魔法少女の敵なのよ!!」

 

「敵じゃないもん!ももこちゃん達は元魔法少女…私達と同じ魔法少女だったんだからぁ!!」

 

「だから何だってのよ!?魔法少女だって悪魔にされちゃったら…狂ってしまうんでしょ!!」

 

「勝手に決めつけてんじゃないわよ!レナはももこを見てきた…ももこはレナの味方だから!」

 

戦槌魔法少女の側頭部を蹴り飛ばしたななかが後ろに振り向き、早く逃げろと言ってくれる。

 

「ななかちゃん…あの時に殺しそうになったアタシなんかを…信じてくれるんだね…」

 

「誰だって失敗して当然です。一度の失敗で貴女の全てを判断はしません…信じてますから」

 

微笑んでくれたななかの気持ちが嬉しかったのか、涙ぐむももこが手をかざしてくれる。

 

髪飾りの白椿の中に見えるソウルジェムの穢れを吸い出し、魔力を回復させてくれたようだ。

 

「行きましょう、ももこ。常盤さんやレナちゃん達の思いを無駄にしてはダメよ」

 

「……分かったよ、みたま」

 

ビルから跳躍して地上に下りた者達の盾となる魔法少女達に対して他の者達が武器を構える。

 

「気持ちよく騙されたい連中なんかには…もうついて行かない!私達は独立させてもらうわ!」

 

「落ち着いてください!フェミニズム騒動の時と同じ偏見に支配されてはダメですよ!!」

 

「うるさい!男社会は信じてあげてもいいけど…悪魔だけはダメ!悪魔は本物の脅威だから!」

 

「私達の邪魔立てするつもりなら容赦しないわ!3人だけで来た事を後悔させてあげる!!」

 

<<誰が三人だけだって?>>

 

突然送られてきた念話に驚く新入り魔法少女達の前に落ちてきたのは試験管である。

 

砕けた試験管からマグネシウムの光が生み出され、眩い光で目が眩む。

 

「ナイスアシストだよ!都先輩!!」

 

目が眩んだ魔法少女達に対して隣ビルで魔法武器を構えるのは綾野梨花である。

 

化粧品道具のような見た目のマジカルコンパクトを用いて放つのは威力を弱めたマギア魔法。

 

「最後の一撃、撃っちゃってもいい?行っくよー!」

 

コンパクトの鏡に光が収束していき、放たれたのはマギア魔法の『キラ盛りビーム』である。

 

<<ギャァァァァァーーッッ!!?>>

 

威力を弱められたとはいえ、極太ビームを浴びせられた魔法少女達は悲鳴を上げていく。

 

熱湯風呂で体中が火傷するぐらいのキラ盛りパワーを浴びせられたために倒れ込むのだ。

 

「おーっし、そろそろクライマックスだー!もう一発いっとこーっ!」

 

「だ、駄目ですよ梨花ちゃん…!これ以上撃ったら…その…彼女達が死んじゃいますから…」

 

「テヘペロ♪あたしの魔法は手加減するのが難し過ぎてさぁ…きびついんだよねぇ」

 

「アタシも喧嘩は得意じゃないし、魔法の加減も難しいが…助太刀にきてやったぞ!」

 

「わ…私達は…悪魔の味方です!怖い悪魔がいたとしても…全員が怖い存在じゃ…ないです!」

 

中央区で活動する都ひなの、それに綾野梨花や五十鈴れんも跳躍してレナ達と合流してくれる。

 

呻きながらも立ち上がってくる新入り魔法少女達は鬼の形相で叫んでくるようだ。

 

「何を信じるべきかは私達が決める…私達は悪魔を狩るデビルバスターとして生きていく!!」

 

「フェミニズム騒動の時に私が語った言葉を思い出して!自分の前提を疑ってください!!」

 

「うるさいんだよ!アンタ達はアタシ達を悪魔に売りたい連中よ…許さないんだからーっ!!」

 

再び襲い掛かってくるデビルバスター達に対して武器を構える古参の魔法少女達。

 

乱戦を繰り返す中、集団ヒステリーの恐ろしさを常盤ななかは再び経験するだろう。

 

歴史とは連続性であり、歴史を作る人間達の無知な善意が悲劇を生むのであった。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――

 

中世魔女狩りの根本的な原因として有力な説があり、それが集(・)団(・)ヒ(・)ス(・)テ(・)リ(・)ー(・)説である。

 

当時はキリスト教の宗教観の変化やペスト等の天災も起こり、様々な事件が民衆を苦しめる。

 

その中で人々の不安が募り、何(・)か(・)し(・)ら(・)の(・)吐(・)け(・)口(・)が(・)必(・)要(・)だ(・)っ(・)た(・)のだろう。

 

魔女狩りのターゲットとなったのは知人がおらず、孤立しがちな女性である。

 

彼女らは反撃の手段を持っておらず、そうした連中を狩ることで人々は精神的な安定を求める。

 

第二次大戦後にアメリカで吹き荒れた赤狩りも同じであり、東西冷戦の社会不安があったのだ。

 

ならばパンデミック社会となった21世紀でも条件は同じであり、人々は吐け口を求めていく。

 

その犠牲となったのが悪のイメージの代表格ともいえるだろう悪魔達であった。

 

「ここまで来れば追手は巻けたかもしれないね…」

 

「そうだといいんだけどね…かなえさん…」

 

中央区から去ったももこ達は路地裏を利用しながら移動を繰り返す。

 

夜になっても外をうろつくのは武装したマスク自警団であり、絡まれたら無事ではすまない。

 

連中が通り過ぎるのを確認してから移動を行うため、中々移動が出来ない状況なのだ。

 

そんな時、立ち止まったももこに対してかなえとみたまが振り向いてくれる。

 

「畜生…何でアタシが責められなきゃならない…何で逃げ隠れしなきゃならないんだ…」

 

悔しさのせいで体が震えているももこを見つめるみたまとかなえは彼女の苦しみが分かる。

 

「アタシは何も悪い事なんてしてない…なのに何で…悪者にされなきゃならないんだぁ!!」

 

拳を強く壁に叩きつける彼女は顔を俯けたまま無念を吐き出してしまう。

 

「これが差別される苦しみだったんだね…こんな苦しみをみたまや十七夜さんは背負ってた…」

 

「ももこ……」

 

「差別される側になってやっと気がつけた…どうしてアタシは街を変える努力をしなかった…」

 

十七夜と戦った時に語られた言葉の数々が今のももこの気持ちを代弁してくれている。

 

魔法少女時代の頃から政治や社会問題に触れてこなかった自分を恥じ、改めて尚紀に感謝する。

 

彼がいてくれたお陰で神浜東西差別を乗り越えられたのは事実だったのだから。

 

<<おお~~い!!みんな~~っ!!>>

 

夜空から念話が響き渡り、上を見上げた者達が飛来してきた魔法少女達を見つける。

 

現れたのは神浜では数少ないサマナー魔法少女の御園かりんであり、お供達もついて来ている。

 

「見つけられて良かったの!もしかして皆もデビルバスターを名乗る連中から襲われたの…?」

 

「その様子だと…かりんちゃん達も襲われたようね…」

 

「そうなんだホ…俺やリパーはかりんを騙して魂を喰うために付きまとう奴だと襲われたホ…」

 

「酷い差別をくらっちまったけどよぉ…まぁ、オレ様達は悪魔だし…差別されるもんだよな…」

 

「逃げ出してきちゃったけど…何処に行けばいいかも分からないの…困ってるの…」

 

「だったらかりんちゃんも私達と一緒に逃げましょう。避難先を見つけられたの」

 

「尚紀の屋敷に逃げ込めば匿ってくれる。令は先に逃げ込んだから後はあたし達だけなんだ」

 

「わ、分かったの…私達もついて行くの!それより…十咎先輩とメルちゃんは大丈夫なの…?」

 

かなえの背中で未だにグルグル目をしているメルや顔を俯けたままのももこを心配してくれる。

 

そんな仲魔に心配かけさせまいと顔を上げたももこは頷いてくれたようだ。

 

「差別されるのは悔しい…だけどアタシはあの子達を殺さない。きっと分かってくれるよ…」

 

屋上移動は目立つため地上移動を行う者達がかりんに対しても変身を解けと言ってくれる。

 

今のももこ達は学生服姿に戻っており、目立つのを極力避ける努力をしているのだろう。

 

かりんも魔法少女姿から学生服姿となり、ジャックコンビはそのままついて行こうとする。

 

通りに顔を出して自警団に見つからないように移動しようとした時、呼び止められるのだ。

 

「おい、お前達?マスクを身に着けてないじゃないか?今の時代を分かってないのか?」

 

「あっ!?」

 

やってきたのは武装したマスク自警団であり、彼らは殺気だっている。

 

「テレビぐらい見てるだろ…?今の日本がどれだけ苦しい状況なのか分からないのかぁ!!」

 

「そうだそうだ!東京を破壊され…天皇陛下が崩御され…未知の病魔だって猛威を振るう!!」

 

「今の時代こそ日本人の団結が求められているんだぞ!ガキでもな…御国に従う義務がある!」

 

バットやゴルフクラブで武装している連中が武器をちらつかせながら威嚇してくる。

 

それに対して前に出たみたまが都ひなのから得た知識で論戦を仕掛けようとする。

 

「マスクは感染予防に効果は無いわ!トラップしたウイルスを再拡散させるだけなのよ!」

 

「おい?小娘が反ワクチン派の理屈を持ち出してきたぞ?こいつもバイオテロリストだろ?」

 

「間違いないぜ!マスクマナーを疑う連中こそ反ワクチン派だからなぁ!」

 

「吐き出したウイルスでさえマスクのせいで再吸引する!そのせいで胸膜炎になっちゃうの!」

 

尚紀から魔法少女達を託された都ひなのは科学者として知恵を求める努力をしてくれている。

 

そのお陰で尚紀がいなくとも魔法少女達は未知の病魔騒ぎが如何におかしいかが分かるのだ。

 

「ネットのデマ情報に踊らされる中二病か?それとも本当にバイオテロリストか?どっちだ?」

 

「厚労省はワクチン接種やマスク着用の義務化はまだしてないのよ!?これは違法行為よ!!」

 

ワクチン接種やマスク着用を強要された場合、強要罪が成立する。

 

また店の利用でワクチン接種の可否などで利用停止処分を下した場合、信用棄損罪が成立する。

 

「日本国憲法11条にはこうあるわ!国民は全ての基本的人権の享有を妨げられないとね!」

 

「うるせーんだよクソアマァ!!」

 

バットを持った男が激怒した事でみたまを殴りつける。

 

「あぐっ!!?」

 

咄嗟に左腕で防御したが物理耐性を持つ女悪魔ではないため弾き飛ばされてしまう。

 

倒れ込んだみたまに駆け寄ったももこが怒りの形相を浮かべながら叫んでくれる。

 

「お前ら…みたまの言葉が理解出来ない程にまで思考停止してるのかよぉ!!」

 

「お前らみたいな反社共が日本を滅ぼす!ネットのデマに踊らされるクズ共め!!」

 

「デマだなんてどうして分かる!?お前は一度でも検証したことがあるのかよ!?」

 

「専門家様やSNSの有名インフルエンサー様が仰られる事が間違ってるわけねーだろ!!」

 

「お前らみたいなデマ屋共は救いようのないバカ共だな!低能過ぎて笑えてくるよ!」

 

「お前らが信じてるデマが日本を滅ぼす!この最低なクズ共めぇ!!」

 

痛いところを少女達に突かれたワクチン推進派達が激怒して暴言を吐きだしていく。

 

これはれっきとした名誉棄損罪であり、処罰されるべきはワクチン推進派のほうだ。

 

それでも御上とメディアを味方にしているワクチン推進派は恐れもせずにスマホを取り出す。

 

「お、おい!?何で勝手に撮影してくるんだよぉ!?」

 

「お前らは反ワクチン派テロリスト認定だからな?SNSでお前らの存在をばら撒いてやる」

 

「人のプライバシーをSNSで勝手に流すだとぉ!?何処まで恥知らずなんだぁ!!」

 

「うるさい!!御国に従わないクズ共なんざ…処罰されて当然なんだからなぁ!!」

 

肖像権の侵害、プライバシーの侵害、信用棄損、業務妨害、あらゆる犯罪行為をやってくる。

 

虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて人の信用を毀損させるという刑法233条である。

 

犯罪を犯す者達が正義を気取り、何もしてない少女達の未来を破壊しようとしていく。

 

それに業を煮やした女がメルを背中から降ろし、震えるかりんに預けた後、近寄っていくのだ。

 

「ぐはぁ!!?」

 

バットでみたまを殴りつけた男は顔が陥没する程の力で殴り飛ばされる。

 

殴りつけたのはかなえであり、拳を返り血で濡らす彼女が恐ろしい表情を向けてくる。

 

「上等だ…あたし達を悪者にしたいなら…すればいい。あたしも遠慮はしてやらない…」

 

「お、おい!!バイオテロリストが襲ってくるぞ!?仲間を呼べぇ!!」

 

「だ、駄目よ…かなえさん!!私は大丈夫だから…早く逃げましょう!!」

 

「アタシもかなえさんと一緒に戦う…尚紀さんの大切な人達を傷つける奴は…許さない!!」

 

「ももこまで熱くなっちゃダメよ!差別されるのは慣れてるから…早く行きましょう!!」

 

左腕に痣が残るみたまに手を引っ張られるももことかなえ達が逃げ出し、かりん達も続く。

 

必死に逃げるしかない彼女達は被害者であり、それでも周囲の者達は加害者に仕立て上げる。

 

それこそが神浜東西差別で苦しめられてきたみたまや十七夜達の苦しみ。

 

同じ経験をさせられた西側住民のももこは悔し涙を流しながら喚いてしまうのだ。

 

「くそぉぉぉ…アタシ達は被害者なんだ…何も悪くないのに…どうしてこうなるぅーッッ!!」

 

人が最も残酷になる時は悪に染まった時ではない、真偽はどうあれ正(・)義(・)側(・)に(・)な(・)っ(・)た(・)時(・)だ(・)。

 

自分達は正しいという免罪符を手に入れたのだから、加虐のブレーキが壊れてしまう。

 

社会正義という名の棍棒で悪人にした者達をめった打ちに出来る快楽こそが不満の吐け口。

 

それこそが大衆娯楽化した正義の中身であり、それがどんな根拠に裏付けられるかも考えない。

 

求めているのはただの娯楽であり、嘲笑いや暴力すら人は娯楽にしてしまえる悪魔同然の存在。

 

そんな人間心理こそが中世魔女狩りの悲劇を推進した一番の原因だとする説が有力だった。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――

 

同調圧力が強まると、どれだけ理性的であっても場の空気に逆らうことは出来なくなる。

 

むしろ理性的であるほど場の空気に逆らって自分が不利になることを避けようとするものだ。

 

魔女狩りが盛んだった頃でも理性的な人もいただろう。

 

それでも弁護に入ると自(・)分(・)ま(・)で(・)悪(・)者(・)扱(・)い(・)さ(・)れ(・)か(・)ね(・)な(・)い(・)と口をつぐみ、悪の一部と化す。

 

こうしたことが積もり積もって惰性的に続いていったのが中世魔女狩りだった。

 

「くっ…新入り魔法少女達でさえ厄介なのに…今度は狂った自警団共まで追ってくる!!」

 

逃走ルートで地上を選んだことを激しく後悔するももこ達を追ってくるのは自警団の群れ。

 

<<バイオテロリストを逃がすなーっ!!日本を滅ぼさせはしないからなーっ!!>>

 

連絡された事で他の自警団連中まで合流してきたため、ももこ達は窮地に陥っていく。

 

「た、助けて欲しいの!!怖い人達に襲われてるのーっ!!」

 

魔獣や悪魔に襲われた事はあっても人間の群れに襲われた事が無いかりんは涙ながらに叫ぶ。

 

それでも道行く人達はマスクもつけない非国民に対して無視する態度を決め込んでいく。

 

「畜生…なんて薄情な連中なんだ!!オレ様達は見えてないけど…姐さんが襲われてるのに!」

 

「この光景こそ魔女狩りの光景だホ…歴史とは連続性…時代が変わっても人間は変わらんホ…」

 

「もう我慢ならねぇ!姐さん達を襲う人間共の首なんざ…オレ様が掻き切ってやる!!」

 

「それだけはダメなの!私達は人間社会を守る正義の魔法少女なの!!」

 

「その姐さん達を反社扱いしながらテロリストだって叫んでくる連中なんですよ!?」

 

「悔しいのは分かってる…それでも私はマジカルかりん!人々を守る魔法少女なの…っ!!」

 

「かりんも辛い立場だホ…もしかしたらアリナの奴も…こんな目に合わされたのかホ…?」

 

「かりんちゃんも頑張れ!もう少しで尚紀さんの屋敷につくよ!!」

 

「私が令ちゃんに連絡しておいたわ!槍一郎さんにも伝わってるから頑張って!!」

 

「はいなの!!」

 

北養区の道を駆け上りながら尚紀の屋敷の前に辿り着く。

 

門の前では観鳥令とタルトが立っており、早く中に入れと手を振ってくれている。

 

大慌てで門の内側に入った後、令とタルトは門を勢いよく閉めるのだ。

 

<<バイオテロリスト共を出せ!!感染拡大を広げる反社共を警察に突き出してやる!!>>

 

武装した自警団達が門の前で佇み、武器で門を叩きながら犯罪者を出せと叫んでくる。

 

そんな正義バカ共に対してスーツ姿のクーフーリンとお付きの者達が近寄ってくるようだ。

 

「警察に突き出されるのはお前達の方だぞ?」

 

「何だとテメェ!?テメェもテロリストを匿う犯罪者として通報されてーのかぁ!!」

 

「マスクをつけないバイキン共を駆逐するのは社会正義だ!従わない奴らは反社共だぁ!!」

 

「どうせ連中もワクチン接種してねーんだろ!!俺達だけに苦しませて連中は楽をする!!」

 

「ワクチン接種は社会への思いやりだ!打たぬ輩は非国民で十分なんだぁ!!」

 

「バカな連中め。日(・)本(・)は(・)ワ(・)ク(・)チ(・)ン(・)接(・)種(・)を(・)世(・)界(・)一(・)行(・)っ(・)て(・)き(・)た(・)…(・)な(・)の(・)に(・)陽(・)性(・)者(・)は(・)世(・)界(・)一(・)な(・)ん(・)だ(・)ぞ(・)?(・)」

 

クーフーリンからそう伝えられた事で怒れる自警団達に動揺が広がっていく。

 

「貴様らの努力は何なんだ?進め一億火の玉にでもしたいのか…戦前のように?」

 

「だ…黙れ低能野郎!テメーもデマを信じ込むマヌケのようだな?俺達には御上がついてる!」

 

「国民投票で改憲が認められた日本だ…その可能性はある。だがな、まだ法整備中だ」

 

横に振りむいたクーフーリンが利用するのは尚紀も世話になったお抱えの弁護士達である。

 

弁護士達から詳しい法律を聞かされた事で正義を気取ってるだけの者達の顔が青ざめる。

 

通報されたら犯罪者にされるのは自分だと理解した者達に対して屋敷の主人が怒鳴ってくる。

 

「貴様らの中にももこ達のプライバシーを侵害した者がいる…さっさと写真を削除しろ!!」

 

「ヒ、ヒィィィィーーーーッッ!!」

 

我先にと逃げ出した撮影犯に続くようにして自警団達も蜘蛛の子を散らすように逃げていく。

 

見送る事しか出来ないクーフーリンは顔を俯ける中、屋敷の前に立つ少女達はホッとする。

 

「なんて醜い光景なんですか…これが本物のジャンヌが経験させられた魔女狩りなんですね…」

 

「皮肉なものだな…」

 

「えっ…皮肉とはどういう意味ですか…クーフーリン?」

 

「私はな…尚紀から聞かされてきた。魔法少女は魔獣だけでなく魔女とも戦った者だと…」

 

「そんな彼女達が…今度は魔女狩り被害を受けてしまう…なんて酷い皮肉なんでしょう…」

 

「魔法少女は因果によって滅びてきたと聞かされてきた…その運命は…変わらんのだな…」

 

21世紀に生きる我々とて中世魔女狩りなんて大昔の事だと笑うことは許されない。

 

社会空気に対抗して正論を述べるのは勇気のいることであり、必ず社会制裁が待っている。

 

第二次大戦時期の日本の歴史を漫画にした作品の主人公一家を襲ったのも魔女狩り光景。

 

それに学校や企業社会などでも同調圧力塗れだというのは何処かで見た事があるはず。

 

「日本人を動かすのは人じゃなく空気…自立してないから空気が変われば皆が付和雷同になる」

 

「日本人は社会空気で自分の道を勝手に舗装する…その結果地獄になっても責任はとらない…」

 

「それが戦前の日本人達の姿であり…21世紀の日本人達の姿でもあるのだろうな…」

 

「そんな者達に正(・)論(・)を(・)言(・)え(・)ば(・)逆(・)に(・)激(・)怒(・)さ(・)せ(・)て(・)し(・)ま(・)う(・)…真実なんて…人は求めないのですね…」

 

あまり賢くない人は、自分が理解出来ない事については何でもけなす。

 

フランスの貴族、モラリスト文学者のフランソワ・ド・ラ・ロシュフコーの格言を口にする。

 

「尚紀…お前から託された願いは必ずやり遂げる。何があっても…私は彼女達を守り抜く」

 

人間は誰しも社会人である以上は周(・)り(・)の(・)評(・)価(・)を(・)気(・)に(・)す(・)る(・)も(・)の(・)。

 

大多数がある方向に流れそうな時に、それはおかしいと思っても周りの評価が恐ろしい。

 

だから沈黙を選んで悪の一部になってしまう者達だらけなのが学校や企業社会で生きる者達。

 

企業が間違った方向に行ったとしても、多数派についていれば個人的責任は分散される。

 

利に敏い人間ほど同調圧力には抗するのではなく、巻かれる方が得だと考えてしまう。

 

この同調圧力からの脱却を個人に任せるのは酷というもの。

 

組織として全会一致は承認しないなどの工夫を凝らす。

 

多数派に対して反論する者を用意するなどの手法を用いない限り、個人では集団に勝てない。

 

その光景はまるで虐めであり、多(・)数(・)決(・)と(・)は(・)虐(・)め(・)そ(・)の(・)も(・)の(・)。

 

そんな社会の病に苦しめられた者こそが鹿目まどかの運命を変えようとした暁美ほむらである。

 

何百回もの時間渡航の果てに絶望を繰り返した彼女は、最後の時間軸でこんな言葉を残した。

 

――真(・)実(・)は(・)伝(・)わ(・)ら(・)な(・)い(・)。

 

――もう誰にも頼らない。

 




魔女狩りの歴史と同調圧力の怖さを調べて描いてみると、原作ほむらちゃんがどんだけヤバイ苦しみに苛まれてたのかが良く分かる(汗)
交わした約束忘れないよ~なんて気軽に歌える状況じゃないぞ(汗)
こんな地獄をほむらちゃんに与える虚淵大先生にはほんと参りますね…ボクもやるけど。
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