人修羅×まどマギ まどマギにメガテン足して世界再構築 作:チャーシュー麺愉悦部
人修羅は工作員としてイルミナティ勢力の中に入り込み、神の権威を用いて人脈を創り出す。
築き上げたのはドラゴンファミリーと呼ばれる勢力であり、フリーメイソン内部の派閥となる。
密教を主体とする勢力であり、死んで神仏となる思想はユダヤカバラ思想と通じているだろう。
ファミリー連中が求めているものなど私欲塗れであり、人修羅の求める思想とは真逆なもの。
ダボス階級と共に成り上がった彼らが望むのは黒の貴族のように悪魔転生を果たす欲望である。
大金持ち連中が望む願望など古今東西から変わらず、中国の始皇帝と同じく永遠の命と繁栄。
混沌王に忠義を尽くせばいずれ彼の恩恵によって神々の世界に立てるのだと信じているのだ。
それを見透かしている人修羅とアスラ王はファミリー連中のことをゴミクズ同然に思っている。
それでも彼らの財力と人脈、そして秘密力は強力であり、計画の要として利用する時がきた。
……………。
「揃いも揃って食いついてきたようだな…ダボス階級共とそのおこぼれでのしあがった犬共め」
「私達が不死を与える用意が出来たと言えば目を輝かせながら尻尾を振る…愚かな連中よね」
現在の人修羅達はニュクスが大邸宅を構えているギリシャに訪れている。
ギリシャは彼女のお膝元であり、ここから彼女の信仰とビジネスの輪が世界に広がったようだ。
「お前の人脈のお陰で大勢のダボス階級連中と繋がりを持てた…改めて礼を言うぞ」
「全ては今夜のためだった気がするわね…金の犬共と付き合い続けるのも苦労してきたわ…」
「その甲斐もあった…全てはお前が俺の味方をしてくれたお陰だ。その努力を無駄にはしない」
ぞくぞくと屋敷の中に入ってくる富豪達を窓から見つめる者達の口元には不敵な笑みが浮かぶ。
屋敷の執務室の扉をノックする音が響き、中に入ってきたのはモイライ三姉妹達である。
「お母様、パーティ会場の準備は整っております」
「ありがとう。彼らをパーティ会場に案内してあげなさい、クロト、ラケシス、アトロポス」
モイライ三姉妹はニュクスから産まれた女神達であり、他にも多くの神々を産んでいる。
ギリシャ神話にとってニュクスの存在は極めて重要な位置を占める夜の女神なのだ。
「それにしても驚きましたわ…ニュクスお母様まで混沌王様の元で仕えていただなんて…」
「私だって娘達も来てくれるとは思ってなかった。こちら側に参加してくれて本当に嬉しいわ」
「ボルテクス界での因縁もあるけど…アタシは気にしてないよ。過去は過去、今は今さ」
「シジマに組する者としての役目のために戦ったけど…あの時は本当にごめんなさいね…」
「気にするな、俺だって怒っていない。お前達の力は戦った俺だからこそ理解しているさ」
「モイライ三姉妹の名に恥じない戦いを混沌王様のために捧げるわ。期待してて頂戴ね♪」
「クロトお姉様は調子がいいですこと。オベリスクでは彼の事を情夫にしようとしたくせに♪」
「ア、アトロポス!?その話はもう口に出さないで…恥ずかしくて顔から火が出そうよ!!」
プンスコする長女をからかう三女であり、次女はオーバーに両手を広げながら首を横に振る。
三人揃えば姦しいだけでなく、その力強さも理解している者達がこう告げてくる。
「俺達の秘密集会に感づいている魔王共もいるだろう…警戒を怠るなよ」
「娘達よ…今日をしくじるわけにはいかないわ。運命を紡ぐ者としての責務を果たしなさい」
<<了解です。全ては混沌王様の勝利という運命のため、私達姉妹は力を尽くします>>
白と赤と黒のドレスで色分けされた姉妹達がハモリながら深々とお辞儀をしてくれる。
息がピッタリな姉妹達を見送った後、人修羅は窓に視線を向けながら半月の明かりを見る。
半月を見ている彼が思い出すのは悪魔ほむらの姿であり、彼女と戦った日の記憶を思い出す。
「あの夜もこんな半月だったな…いずれは魔王となったほむらとも戦わなければならない…」
「彼女はクロノスを味方にしている…同じガイアから産まれた兄妹神なのに敵対するとはね…」
「ほむらに時間停止を授けているのは奴だ…その力は侮れない。だからこそお前の娘達がいる」
「クロノスに対抗するなら私の娘達は強力な力となるわ。同じ時間神同士の戦いとなるわね…」
「同じ神族同士で潰し合いをさせなければならないな…すまない。それでも…期待しているぞ」
「ギリシャの神々は身内同士で潰し合うのが常なのよ。負い目を感じる必要はない、安心して」
席を立った人修羅も赤いマントをなびかせながら部屋を出て行く。
彼に続くようにしてニュクスも執務室から出て行き、会合を守る防衛部隊の指揮を執るのだ。
その様子を外の木々の枝で見つめていたのは黒と白の蝙蝠達であり、飛び立っていく。
屋敷の中庭にある噴水広場に座っていた少女達の片手に留まるようにして着地したようだ。
「今夜の会合の中にはスパイが潜んでいます…私の予知夢が教えてくれました」
「その場で未来予知をする力は得られなくとも、予知夢を入手した君の力を疑いはしないさ」
座っていたのは常闇の騎士となった和泉十七夜と白夜の淑女となった美国織莉子の姿である。
彼女達は人修羅とニュクスの護衛として参じており、警備部隊に所属する者として働く者達。
だからこそ会合の秘密を守り抜く者として侵入者を八つ裂きにしたくてウズウズしている。
「今宵は月の明かりが強い…こういう夜は無性に血が見たいと感じてこないか…美国君?」
「私も同じ気持ちです、和泉お姉様。私の中にもお姉様の体に宿る獰猛な血が巡ってますね…」
「嘉嶋さんの敵は全て排除する…血塗られた道こそ…我々夜の魔物達に相応しい戦場だろうな」
鉄仮面から赤い眼光を光らせた十七夜が蝙蝠化し、片目を真紅に光らせる織莉子も蝙蝠化する。
無数の蝙蝠となって飛び去っていく者達は予知夢で見えたというスパイが表れるのを待つのだ。
秘密会合の場となったパーティ会場にはドラゴンファミリーの面々が雁首揃えて座っている。
その前に現れたのは混沌王とアスラ王とマステマであり、拍手が起こる中で椅子に座り込む。
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不気味な雰囲気を醸し出しながら伝えてくる人修羅の言葉によって皆が動揺していく。
彼らの席の後ろには大型スクリーンが備わっており、映像記録が映し出されていくのだ。
その内容を見せられる者達の顔は血の気が引く程の驚愕さを浮かべた後、阿鼻叫喚となった。
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世界の1%を占めるダボス階級の者達ならば、その1%はどれだけの人間達の数となる?
地球人口は2019年で77億人もの人間達が生きている。
ならばそれの1%数で計算するならば7700万人規模となるだろう。
世界には13のザイオンが存在しており、それこそがハルマゲドンの戦火を生き残るヘイブン。
ヘイブンで収容出来る人間の数は一都市につき1000万人であり、合計は1億3000万人。
これは後の人口増加に備えるために調整された数字であり、これ以上は定員オーバーとなる。
ダボス階級の者達とその手下として動くディープステート一族、それに仕える奴隷達。
それだけの人数を収容したとして、ダボス階級以外の富豪達を収容する余裕はあるのか?
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ルシファーが望んだアジェンダ計画における聖域とは僅かな者達にしか用意されていないもの。
世界中のフリーメイソンメンバー達ですら余分な命として間引かれることが計画されている。
それだけでなく、ダボス階級の者達ですら4000万人までしか収容されないという。
ダボス階級の4000万人、ディープステートを3000万人、そして奴隷は6000万人。
これが世界中のザイオン都市に収容出来る人数計画であったと突きつけられていく。
師匠の命を代償にしてでも突き止めた者だからこそ、大魔王に対して反逆を促そうというのだ。
彼らが用意した証拠の数々に真実味を感じた者達の表情が憤怒に歪み、怒声を撒き散らす。
怒声の言葉の数々とは我々の忠誠心を裏切った大魔王とバアル神に対する憎悪の叫びである。
「
CHAOS勢力の代表となるべき者は誰かを問われた時、会場の者達が一斉に叫び出す。
<<
我先にと混沌王に忠誠を叫び出す裏切り者達を見守る人修羅の口元には不気味な笑みが浮かぶ。
(愚か者共め…何かに縋りついた時、そいつは自由とかけ離れる。貴様らも自由を捨てた者だ)
ダボス階級の者達やそれに連なる富豪ですら我が身可愛さに迷える羊の群れに成り果てていく。
そうなっていく人間の弱さに気が付いている人修羅だからこそ、彼らを導く牧師となるだろう。
(こ…これは不味いぞ……直ぐにバアル様に報告に向かわねば……)
皇帝万歳と叫ぶ者達の横をすり抜けるようにして一部の者達が秘密会合の場を抜け出していく。
ダボス階級の者に擬態していた男達とは人修羅を信用しないバアルが差し向けた悪魔なのだ。
大慌てしながら玄関ホールを駆けていく男達であるがホール内の異変に気が付く。
「な、なんだ!?」
豪華な玄関ホールの二階部分から飛び降りるように飛翔してくるのは黒と白の蝙蝠の群れ。
玄関の入口前で実体化していくのは常闇の騎士と白夜の淑女の姿なのだ。
「……こいつらで間違いないのか?」
「間違いありません。予知夢で織ったスパイ共の外見と一致します」
「そうか…では狩るとしよう」
殺気を爆発させる吸血鬼姉妹に対してスパイ悪魔達も正体を曝け出す。
異界に飲み込まれる2人が目にした存在とはエグリゴリの堕天使に連なる悪魔達なのだ。
【ベテルギウス】
道化た態度を行う悪魔、または大物悪霊として語られる存在。
蠅や巨大なモンスターなどに変身する能力を持ち、派手に騒ぐのを好む。
ベテルギウスは元々はオリオン座を構成する恒星の一つの名であった。
【オリアス】
ソロモン王の72柱の悪魔であり、馬に跨り、腕と尻尾が蛇のライオンとして描かれる。
占星術に明るく、人間を思い思いの姿に変身させるという。
また地位や階級を与える役目も担っているとされた。
「グゥゥゥゥ…我々の邪魔立てをするか、小娘悪魔共!!派手に殺されてーよーだなぁ!!」
構築された異界とは大邸宅の外であり、見上げる程の巨大モンスターが叫んでくる。
蛇の体に大きな手足が生え、頭部は白の長髪を持ち、その目は獰猛である。
耳の代わりに蝙蝠翼が生えた存在が奇声を上げながら威嚇するのだが、隣の悪魔が制止させる。
「クックッ…まぁ待て。手ぶらで帰るのも癪だからな…裏切り者に目に物見せる材料が欲しい」
美しい吸血鬼姉妹の豊満な体を吟味するのはオリアスであり、邪悪な笑みを浮かべてくる。
魔界の馬に跨った獣人であり、右手には医術の象徴であるアスクレピオスの杖を握っている。
「貴様らは何だと言うのだ?言ってみろ」
「私と和泉お姉様は混沌王に忠誠を誓う者達…魔法少女であることを捨て、悪魔となった女達」
「魔法少女共だったか…どうりで美しい小娘だと思った。だからこそ…貴様らを改造したい」
「な、なんだと……?」
「私は医術を司る悪魔だが…もっぱら改造を好む医者だ。貴様らを改造して我々の刺客とする」
「下種め…貴様らのような汚物共が銀子様の敷地に足をつけているだけでも反吐が出る!!」
「さぁ…おまえたちを でくにんぎょうに かいぞう してやる!!」
攪乱させようと馬を走らせるオリアスを追うようにして十七夜は無数の蝙蝠となって飛翔する。
残されたのは織莉子とベテルギウスであるが、彼女は不敵な笑みを浮かべていく。
「ようやく…悪魔となった私の力を解放させるのに相応しい敵と出会えたわ。楽しみましょう」
「舐めてんじゃねーぞ…糞アマァ!!土産なんぞ一体で十分だ…テメェは臓物を撒き散らせ!」
「あら?臓物を撒き散らして死にたいというオーダーをしてくるの?だったらそうしてあげる」
「余裕ぶっこいてんじゃねぇぇぇぇ!!ぶっ殺してやらぁぁぁーーッッ!!」
手足が生えた巨大蛇が襲い掛かってくる中、織莉子の全身から魔力が噴き上がっていく。
クドラクの濃い血を与えられた吸血鬼の彼女の力は和泉十七夜に匹敵する程であろう。
周囲に生み出されていくのは発光する白い蝙蝠達であるのだが、その形が変化していく。
変化した形とは魔法少女時代の武器であった浮遊する水晶と似ているのだが、蝙蝠翼が備わる。
「フフッ…吸血鬼としての力の形は…まるでキリカのようね。だからこそ使いこなしてみせる」
離れ離れとなった大切な魔法少女仲間を思う彼女は呉キリカと共に戦ってきた魔法少女。
だからこそキリカの荒々しい戦い方を知っており、
右手を持ち上げていく彼女が拳を握り締めた後、獲物を引き裂くために手をかざすのであった。
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赤黒い魔力を放つ十七夜と違い、織莉子は青白い魔力を放ちながら蝙蝠水晶を放つ。
冷気を纏いながら飛翔する彼女の魔法には悪魔の氷結魔法が宿っているのだ。
「ヌゥゥゥゥゥーーーーッッ!!!」
全体に氷結属性の魔法を放つ『マハブフーラ』に対してベテルギウスが突っ込んでくる。
氷結した蝙蝠翼が鋭利な刃物となって体を切りつけていく光景はまるでキリカの魔法武器。
鉤爪の如き鋭さで次々と切り裂かれても迫ってくる巨体が豪快に押し潰しを狙ってくる。
「手ごたえがねぇ……何処に消えやがったぁ!?」
踏み付けられたと思った織莉子の体は霧化しており、堕天使の周囲が濃霧に包まれる。
<<体が大きいことを後悔するがいいわ。ジワジワとなぶり殺しにしてあげる>>
濃霧に包まれる空間に突如として強風が巻き起こり、巨大な竜巻となっていく。
「グォォォォォーーーーッッ!!?」
悪魔の風魔法である『ザンダイン』の暴風とかまいたちが次々と堕天使を刻んでいく。
反撃として放つのはマハラギであるのだが、彼女は業魔殿で炎無効耐性を継承させられた者。
「ば、馬鹿なぁ!?吸血鬼は炎が弱点じゃねーのかよぉ!!?」
業火を撒き散らしても濃霧の中から織莉子を引きずり出せないため、ベテルギウスは焦り出す。
闇雲にマハジオを放ち続ける中、濃霧が収まっていく。
「ゲゲェ!!?」
巨大な頭部の目の前に出現したのは真紅の瞳を輝かせる織莉子の姿。
獰猛な力が溢れんばかりの彼女は右腕を大きく振りかぶり、彼女らしからぬ一撃を放つ。
「グハァァァァーーーッッ!!!」
人間の大きさしかない織莉子に殴りつけられた巨大なモンスターが弾き飛ばされていく。
吸血鬼としての力だけなら織莉子は十七夜を超えているのかもしれない。
技と魔法の十七夜、力と魔法の織莉子。
彼女らにはクドラクの血が流れているのだが、引き継いだ力はそれぞれ別な特徴があった。
「ままま……待ってくれぇ!!降参だ…降参するから勘弁してくれぇ!!」
命乞いをしてくるベテルギウスが地面に頭をつけながら謝罪してくる。
無様な姿を晒す堕天使に対して思わせぶりに悩む姿を見せる織莉子だが、怒りの形相と化す。
「私は魔王達の狂宴を見せられた者…あの地獄に並んだのは惨殺された魔法少女達の料理…」
両手をポキポキ鳴らしながら迫ってくる織莉子であるが、敵の間合いに入り過ぎている。
「かかったなぁ!!アホがぁ!!」
突然顔を持ち上げたベテルギウスの両目が一気に瞬膜と化す。
放たれたのは魅了魔法のマリンカリンであるのだが、クレオパトラ程の一撃ではない。
クドラクの悪魔耐性を引き継ぐ織莉子は魅了無効とまではいかなくとも耐性があるのだ。
「…そうやって魔法少女を相手に騙し討ちばかりを仕掛けるだけの卑怯者め。許せないわ」
「アギャァァァァァーーッッ!!?」
振り上げた右手の爪が獰猛なまでに鋭くなり、放つ一撃とはアイアンクロウ。
最初の一撃で右耳の翼を引き裂かれ、左手の一撃で左耳の翼を引き裂かれる。
彼女が放つ獰猛なアイアンクロウの一撃の威力はキリカが放つヴァンパイアファングそのもの。
激痛によって暴れるベテルギウスの返り血が織莉子の白いドレスを汚す。
返り血に染まる織莉子の狂気じみた顔はまるで戦闘狂のキリカの姿と酷似して見えるだろう。
「今夜は月の明かりが強いわね…こういう夜は無性に…血が飲みたくなるわ」
痛みで仰け反った堕天使の胴体に目掛けて再びアイアンクロウを放つ。
「グギャァァァァァーーーーッッ!!?」
蛇の腹が引き裂かれたことで臓腑が飛び出し、大量の血が噴き上がる。
大量の血を被ってしまった織莉子のドレスにはもはや白い部分は残っていない。
紅に染まったドレスを纏う吸血鬼の姿こそ、
バートリーは召使の女達を残虐に拷問して殺し、生き血の風呂に浸かったとされる存在なのだ。
「悪魔の血でも渇きは癒せる…私は人間を襲う吸血鬼ではないわ…悪魔を襲う女吸血鬼よ…」
吸血魔法を用いて周囲の血液を全て平らげていく織莉子が両手を持ち上げていく。
貪欲なまでに悪魔の血を喰らう事で青白い水晶蝙蝠達まで赤黒い光を放っていくのだ。
「キリカ……私に力を貸して」
全身から赤黒い魔力を噴き上がらせた織莉子が両手を持ち上げながら水晶蝙蝠を操る。
「許されない罪を負っても…この力で世界を救う!!」
無数の水晶蝙蝠達がベテルギウスの巨体を囲うようにして高速回転。
暴風と氷結魔法を用いて氷の嵐を放つ一撃こそ彼女が放つマギア魔法『ヴァンパイアレイ』だ。
「こん…な…小娘…なんかに…堕天使が…破れる……なん……て……」
腹が破れたベテルギウスの体が氷結し、さらに竜巻の暴風で巨体を砕いていく。
砕け散った体から溢れ出すMAGが夜空を昇っていく光景の中、織莉子はこう呟いてくれる。
「私達の世界は傷つけさせない…そのためにこそ…私は吸血鬼として…生きていく…」
悪魔の生き血に染まった女吸血鬼の道もまた常闇の騎士となった女吸血鬼と同じ道。
彼女達の道とは血煙舞う世界であり、可憐な魔法少女が生きるのは似合わない地獄であった。
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「ぐはっ!!!」
馬から蹴り落とされたオリアスに対し、蝙蝠状態から実体化した十七夜が槍を構える。
「自分も貴様を改造してやろうか?もっとも自分は素人だ…バラバラにされても怒るなよ」
「く、くそ…小娘悪魔如きが粋がりおって…伏兵を用意しておいて正解だったな…」
杖をつきながら立ち上がったオリアスが片手を指に咥えて指笛を鳴らす。
すると屋敷に入る門の向こう側で待機していた悪魔の群れが飛翔しながらやってくる。
地上に下りてきた悪魔達に囲まれてしまう十七夜であるが、その口元には不敵な笑みが浮かぶ。
「雑魚共をいくら用意しようが無駄なこと…腐肉の海となるまで…槍に突き立ててやろうか!」
全身から赤黒い魔力を放ちながら槍を地面に突き立てる。
飛び掛かってくる悪魔の群れを襲うのは冥暗の断罪であり、次々と串刺しにされていく。
<<アギャァァァァァーーッッ!!!>>
十七夜の周りは地面から出現した槍だらけとなり、悪魔達は串刺しにされたまま晒される。
その光景はまるでドラキュラのモデルとなった串刺し公が行う伝説の凶行シーンであろう。
彼らが撒き散らす悪魔の血を吸血魔法を用いて体内に吸収しながら十七夜は旗槍を広げる。
広がったのは人修羅を表す赤旗であり、666の黒き蛇を表す三つ巴紋が備わっているのだ。
「大淫婦を表すローマ帝国はローマ皇帝の手で滅ぶ…自分はその道を共に築く小竜となろう」
「ドラキュラを気取る小娘吸血鬼なんぞに…私が負けてたまるかァァァーーッッ!!」
胸や腹を貫かれたまま串刺しとなった悪魔達が最後の抵抗とばかりに魔法を放とうとする。
しかし吸血鬼達とは違う恐ろしい魔力が顕現したことにたじろぎ、そちらに視線を向けるのだ。
「…私の屋敷を荒らす無礼な侵入者共め。よほどタルタロスに堕とされたいと見える」
モイライ三姉妹を引き連れて現れたのはニュクスであり、吸血鬼達もニュクスに礼を行う。
「グゥゥゥゥ…貴様らの裏切り行為を隠しておけると思うなよ!最後に勝つのはバアル様だ!」
「勿論勝つまで油断するつもりはないわ。夜の静寂を破った罪は重い…奈落に堕としてあげる」
黒のダブルボタンスーツの上から纏う白のコートを娘達に預けた後、銀子は悪魔化していく。
その姿はボルテクス界で見かけたニュクスの姿ではなく、より好戦的な夜の女神と化すのだ。
「私は死を司る神々や復讐と戦争を司る神々を産んだ夜の女神…戦う時には戦える女なのよ」
夜を表す黒革ボディスーツの上には黒のローブを纏い、胸元を広げた奥には宇宙が見える。
死神のような白仮面を身につけたニュクスが纏う『闇夜のドレス』に内包された宇宙が広がる。
宇宙空間に囚われてしまった悪魔達に襲い掛かるのは死を表す死神の姿なのだ。
<<や……やめてくれぇぇぇぇ……ッッ!!!>>
表れた巨大な死神とはタナトスと呼ばれるニュクスの息子。
鎖で連結された棺桶を背後に浮遊させ、髑髏のような兜を纏う巨人が断罪の刃を放つのだ。
広がった宇宙が収束していき、ニュクスの胸の世界へと戻っていく。
残されたのは女悪魔達のみであり、スパイとして現れた男悪魔達は全員夜の魔物に葬られた。
……………。
「…これでドラゴンファミリー連中はルシファーとバアルに反逆する勢力とする事が出来た」
「金の犬共であっても所詮は人間…感情からは逃れられない。彼らの報復心を利用しましょう」
「奴らの報復心は連中だけでなくフリーメイソンそのものを飲み込む…分割統治は成ったな」
「分割統治こそローマの支配手口…その手口を
「毒を以て毒を制す…俺達は全員
「世界の大富豪組織を乖離させた手腕はお見事よ。それでこそエンキ神と呼ばれた貴方だわ」
屋敷から去っていく富豪達を二階バルコニーから見送るのは人修羅と銀子である。
夜の静けさが戻った光景を見つめる人修羅は夜風によってマントを揺らしながら呟いてしまう。
「人はこんなにも権威に盲従するか…大魔王やバアル…それに俺…どいつもこいつも脆弱だな」
「人なんて神という権威に振り回される羊でしかないわ。なのに自分だけは特別だと思い込む」
「個の確立を阻害する存在こそが…俺達のような神の権威だ。ならば俺は権威など必要ない」
「貴方にとって権威は道具。利用するだけ利用した後は…ゴミのように捨てるつもりでしょ?」
「その通りだ。権威や権力の奴隷になどなってたまるか…職業等も含めて道具に過ぎない」
日本の芸術家の中にはこんな言葉を残した者がいる。
――本職?
仕事とか肩書きとか役割とか、そんなものに囚われる権威主義など御上万歳な家畜の発想。
社長だの国会議員だの専門家だの、そんな社会的肩書に盲従する羊の如き醜さに囚われるな。
自分はこう思う!ということが本職であり、命を懸けて誇りある仕事、本職を体現する。
それこそが人間という肩書なのだと言葉を残した人物と同じ信念を人修羅は語るのだ。
「権威だの権力だの一つに限定されず、もっと広く人間全体として生きる…それが俺の自由だ」
「だとしたら…貴方は何者なの?自分はどんな存在なのだと胸を張って語れるの?」
「俺の肩書が何なのかと聞かれたら…こう答えよう。
混沌王と呼ばれようが人修羅と呼ばれようがエンキと呼ばれようが、嘉嶋尚紀はただの人。
人として生き、人として何が出来るのかを命を懸けて追及しようと足掻く者。
「俺は自分の真理を証明するためなら命も懸ける冒険家でありたい。権威の奴隷などごめんだ」
「貴方の在り方はチェ・ゲバラね。キューバ革命で手に入れた権力さえ捨てて戦う道を選んだ」
「ゲバラと同じく最後は破滅しか残らなくても…俺は自分の信念に忠実に生きる人間となろう」
踵を返して部屋に戻ろうとするのだが、人修羅が立ち止まる。
「ど、どうしたの……?」
心配する銀子の言葉も遠くなる程の眩暈に襲われた事で彼の体が倒れ込む。
大慌てしながら彼を抱き起す銀子に対して、弱々しい声のまま心配するなと言ってくれる。
「心労が祟ってきたようだ…悪魔の肉体であろうと心は人間…心の痛みは体にも響いてくる…」
「直ぐに休んで頂戴!後の事は私達が行うから…どうか御自愛下さい!!」
銀子の肩を借りながら人修羅は部屋に戻っていく。
それでも彼の目には迷いも弱さもなく、己の破滅が待っていようと自由を体現する者となろう。
神だの悪魔だの混沌王だのと肩書の枠に自分を閉じ込めてしまう在り方を彼は許さない者。
人間を人間たらしめる他の要素が削ぎ落とされてしまっては本質的な生き方ではない。
自分の中に毒をもつ、自分の中に振り子をもつ、死ぬまで自分に厳しく在る。
アクティビストという権力をひけらかす独裁者では終わらない、肩書は一つだけではない。
それぞれの自由をもつ人間であるべきだと信じる彼こそが自由の伝道者となってくれるだろう。
人間全体として仕事と人生を全うする在り方を体現する者こそ、混沌王と呼ばれる人修羅。
その在り方こそ
拙作に登場させてるのにバトルシーンを描けてなかった織莉子ちゃんとニュクスのテコ入れが必要だと思って描いてみました。
人修羅君も真女神転生DSJのタダノヒトナリさんのように人間として最後まで足掻きたい生き方を体現する。
そんな混沌王もまた真女神転生4に登場した混沌王サナトのような永遠の若者ですよね!