人修羅×まどマギ まどマギにメガテン足して世界再構築   作:チャーシュー麺愉悦部

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337話 多神教連合との会合

人修羅達の世界革命計画におけるフェーズ2の山場は超える事が出来ている。

 

ドラゴンファミリーに集うダボス階級の者達やそれに連なる富豪達に報復心を植え付けたのだ。

 

自分達の献身は裏切られたと知った者達は人修羅の望みを果たすために行動を開始していく。

 

その段階こそが計画におけるフェーズ3の段階であり、フェーズ2同様に慎重さが求められる。

 

各国の政官財に強い影響力を与え、ディープステートという世界の国賊達にも支配力が及ぶ。

 

表向きは未だ大魔王やバアル神の味方のフリを行いつつも、彼らは着々と革命準備を行うのだ。

 

「道は我々が見つけるか、作るかだ。ハンニバルの言葉同様…俺達もここまで道を作れている」

 

「誰も通ったことのない道を私達は突き進んでいる…何処に辿り着くかも分からない道をね…」

 

「今まで道がなかったのなら俺達が道を作るまでだ。人生と同じく、切り拓く覚悟が必要だな」

 

ドラゴンファミリーの者達が行っていく準備の報告書に目を通しながら語るのは人修羅である。

 

報告書はアナログなものであり、デジタル機密をハッキングされる危険を避ける。

 

便利なIT技術には穴があるという事を知っているのは彼の世話をしてきた聖丈二のお陰だろう。

 

「ニュクス、この段階まで進めたならば…そろそろ多神教連合との会合を望むべき時期だ」

 

「そうね。世界革命の為の整備をしたとしても…彼らとの足並みが揃わなければ意味がないわ」

 

「パールヴァティと連絡を取る段取りを行え。俺は多神教連合に対する対策会議を行う予定だ」

 

「了解したわ。彼女が上手く多神教連合の神々を説得出来ればいいのだけれど…」

 

「多神教連合の指揮を執るのはヒンズー教の主神だと聞いている。ならば彼女が適任だろう」

 

ケテルの慈悲の城にある執務室から去っていく人修羅を見送るニュクスは行動を開始する。

 

暫くした後、パールヴァティから連絡が届いてくれる。

 

多神教連合の指揮を執るクリシュナを説得する事が出来たというが、危険もあると伝えられる。

 

クリシュナは修羅を表すアスラ神族を憎むデーヴァ神族の主神であり、今でもアスラを憎む神。

 

会合を持ちかけた時は激怒したが、盟友シヴァの妻パールヴァティだからこそ説得出来たのだ。

 

「会合の場所は多神教連合に組するオオクニヌシの村か…下手をすれば袋叩きにされかねない」

 

「ならば我らアスラ神族も共に行こう。デーヴァの連中が仕掛けてくるなら迎え撃つだけだ」

 

「アタバク、それはダメだ。魔王の中には未だに俺達を警戒する者がいる…大勢では動けない」

 

「やむを得まい、ここはアスラ神族を代表して我と人修羅の両名で行くべきだな」

 

「無理を言って会合の場を用意してもらった俺達だ…せめて誠意ある態度を示さなければな…」

 

「し、しかし…デーヴァの連中はアスラを憎む神々…不意打ちをされたら我々は瓦解するぞ!」

 

「アタバクよ、人修羅の身は我が必ず守り抜く。我々の錦の御旗である彼を死なせはせん」

 

慈悲の城にある閣議の間に集まったアスラ神族達は彼らの覚悟に対して渋々頷いてくれる。

 

こうしてアスラ神族とデーヴァ神族連合との会合の場が開かれる時がくるのだ。

 

「フッ…まるで鏡を見ている気分だ。すまないが俺の影武者としての任務を頼むぞ」

 

「分かっている。しかしなるべく早く戻ってくれ…我の擬態とていつ見破られるか分からん…」

 

黒のトレンチコート姿をした人修羅と僧侶姿のアスラ王の前に立つのはもう一人の人修羅の姿。

 

彼に化けているのは太陽神の継承を行ったミトラスであり、影武者の役目を担ってくれる。

 

「必ず戻ってくる…それまではニュクスと共に大魔王達の目を上手く誤魔化しておいてくれ」

 

執務室を去っていく本物の混沌王の背中に対し、影武者を務める皇帝とニュクスが礼を行う。

 

将門公の魂を継いだ人修羅だからこそ、彼もまた将門公と同じく影武者を用いる者だった。

 

────────────────────────────────

 

大国村での会合の知らせは村で暮らす時女一族にも伝わっており、村の門の前に集まっている。

 

久しぶりに尚紀と会えるかもしれないせいか、魔法少女達はソワソワしているようだ。

 

「よ、ようやく我も嘉嶋殿と出会えるのですね…!あぁ…心臓がドキドキするであります…」

 

「そんなに緊張しなくてもいいですよ、旭さん♪だけど…彼の体のことは本当に心配ですね…」

 

「白人みたいな外見に変化したなんて信じられないけどなぁ…だけど尚紀は悪魔の体だし…」

 

「私達のような魔法少女とは違う苦しみを抱えていると考えるのが…自然ですね…」

 

喜んでいたと思ったら心配顔になってしまう面々の横では顔を俯けたままのちはるがいる。

 

そんな彼女の横にいる静香が肩に手を置いた後、元気づけるようにして微笑んでくれるようだ。

 

「何を考えてるか分かるわ、ちゃる。聖探偵事務所が大変な時に傍にいなかったのが辛いのね」

 

「うん…私なんかを未来の職員として迎えてくれる大切な職場なのに…私は守れなかった…」

 

「嘉嶋さんはちゃるを責めたりしない。貴女に謝って欲しいと私に頼むぐらい大切な後輩なの」

 

今でも大切な後輩だと思ってくれていると信じている静香のお陰でちはるは顔を上げてくれる。

 

笑顔を向けてくれる静香のために彼女も空元気な態度で応えてくれた。

 

「俺が何だって?」

 

<<へっ……?キャァァァァーーーーッッ!!?>>

 

背後に現れたのは門の悪魔であるオルクスであり、異次元から現れたのは人修羅達の姿である。

 

それでも今の彼は彼女達が知っている嘉嶋尚紀としての表情を浮かべてくれる。

 

「久しぶりだな…お前達。霧峰村が燃やされた時…傍にいてやれなくて…本当にすまなかった」

 

白人の姿になっても彼は彼なのだと分かるのは未だに時女一族を大切にしてくれる言葉のお陰。

 

その言葉を聞けた女達の目に涙が溜まっていき、ちはる達は駆け寄りながら抱き着いてくる。

 

「先輩……尚紀先輩!!会いたかった…本当に…会いたかったよぉぉぉぉ……ッッ!!」

 

「嘉嶋さん…!!私達…本当に辛かったんです…それでも私達を忘れないでくれて嬉しい!!」

 

「尚紀…この馬鹿野郎!菩薩のような自己犠牲ばかり求めやがって…少しは自分を労われよ!」

 

「尚紀さん…貴方に会いたかったんです!やっぱり貴方は…私を助けてくれる大事な人です!」

 

「家族が犠牲となった報いは必ず俺が用意する…金融資本家とディープステートに叩きつける」

 

涙を流すちはるにすなお、それに涼子とちかの体を両腕で抱きしめてくれる。

 

ようやく再会出来た者達の嬉しい気持ちが分かる静香も涙ぐみ、隣の旭も貰い泣きしてしまう。

 

そんな若者達の光景を見守るのは僧侶姿のアスラ王であり、後ろのオルクスに念話を送る。

 

<水入らずの時間を与えてやりたいが…今は状況が状況だ。いつでも動ける準備をしておけ>

 

<分かっている。ここからでも殺気が伝わってくるからな…村の中には既にデーヴァ共がいる>

 

<この魔力は忘れもしない…我らアスラ神族にとって最大の敵となったヴィシュヌとシヴァだ>

 

<それにゼウスやオーディンの魔力まで感じる…襲われれば最後…我らとて危ういぞ…>

 

<我々アスラとて元はデーヴァであったが…時の流れは残酷だ。我々は悪神にされたのだ…>

 

アスラ神族とデーヴァ神族が共存する時代を描いた最古のリグ・ヴェーダ時代は遥か遠い昔。

 

今の関係性はアスラとデーヴァの戦いを描いた叙事詩、マハーバーラタとなっているのだろう。

 

移動手段であると同時に逃走手段でもあるオルクスはいつでも動けるよう隠し身で姿を隠す。

 

人修羅にも移動を促そうとするのだが、空に視線を向けてみれば何かがやってくる。

 

<<見た目が変わろうと魔力は変わらんな!久しいではないか~我の穴兄弟よぉぉぉぉ!!>>

 

「この素っ頓狂な声はまさか……」

 

空から現れたのは人修羅の仲魔としてボルテクス界を生きたアラハバキである。

 

しゅたっと着地した彼は遮光器土偶の体を三つに分解しながらクルクル回り、喜びを表す。

 

「久しぶりだな、アラハバキ。静香から聞かされている…お前はこの村の守り神なんだな?」

 

「その通り!本当ならもっと早くお主達と再会出来たのだが…お主達をビックリさせたくてな」

 

「ビックリさせたいだと?ていうか…近くに寄ってたなら顔を出しに来いよ」

 

「そう言うな!お主も魔法少女世界に流れ着いたせいで…色々溜まっておるのだろう…?」

 

「た…溜まっているって…何がだよ…?」

 

「隠しても無駄だ!アマラ深界で我とブイブイ言わせてた時期からお主は穴狂いなのだから!」

 

突然そんな言葉を言うものだから場が凍り付き、魔法少女達の目が点になってしまう。

 

少女達の前で穴狂いという誤解されかねんワードを叫ぶ仲魔に対して怒りマークが頭に浮かぶ。

 

「こちらでも飛び込みたくなる程の大穴を我が掘ってやった!猛る想いを共に突っ込もう!!」

 

「アマラ深界のカルパ移動の穴を俺が利用してきたのはな…マッカが欲しかっただけだぁ!!」

 

体をドッキングさせた瞬間、盛大にぶん殴られたことで再びアラハバキがかち上げられていく。

 

<<貫通スキルを宿した拳で殴るのはやめるのだぁぁぁーーッッ!!>>

 

物理無効のアラハバキであったが、貫通スキル持ちの人修羅に殴られたら無事では済まない。

 

山の彼方に飛んでいくアホを見送るのはオーバーに両手を広げながら下りてくる妖精達である。

 

「本当に久しぶりね…貴方の事情を聞かされた時…もう私の知ってる貴方じゃないと思ったわ」

 

「ティターニア…また会えて嬉しいよ。それにオベロン…静香達を守ってくれて感謝する」

 

「礼には及びません。我が妻がボルテクス界で世話になったのです、貴方の友は私の友ですよ」

 

現れたのは妖精王夫婦であり、変わり果てた人修羅の体を抱きしめてくれる。

 

「こんな姿に成り果てた上で体まで痩せ切っている…かつて以上の苦しみを抱えてきたのね…」

 

「変わり果てた俺でも以前のように接してくれて俺も嬉しい…これからも彼女達をよろしくな」

 

抱きしめ合う仲魔達の光景に水を差すことを心苦しく思いながらもアスラ王が近寄ってくる。

 

会合の場に向かうため彼の言葉に頷く尚紀だが、南津涼子はアスラ王が気になる様子。

 

「なぁ…このお坊さんは誰なんだ…尚紀?あたしはどっかでこの人を見てきたような気が…」

 

「こいつは奈良の大仏様だ。俺と共に阿修羅会を創設した不動明王の真の姿…大日如来さ」

 

そう言われた瞬間、頭の中がスパークしたのか石のように固まってしまう涼子である。

 

彼女も仏教徒だと尚紀が伝えるとアスラ王である大日如来は笑顔のまま合掌してくれるのだ。

 

「アートマンを求めし修行者よ。汝が得ようとするのは真我か?無我か?己に問い続けよ」

 

「あ…あわ…あわわわわわ!!ああ、あたしはまだ…アートマンを見つけてませーん!!」

 

ビターンと倒れ込んだ涼子はあまりの神々しさのせいかグルグル目のまま気を失ったのである。

 

彼女を運び出す旭とちかを見送った後、心配そうな顔をしているちはる達に顔を向けてくれる。

 

「積もる話もあるだろうが…後にしてくれ。俺達が訪れた目的なら知ってるんだろ…?」

 

「う、うん…だけどね、多神教連合の神様達…なんだか凄く…怖い臭いがするんだよぉ…」

 

「全身から殺気まで感じさせてくる程の怒りを内包させる存在達は…奥の院で待っています」

 

「私が案内するわ。私も多神教連合の一柱となったヒノカグツチとして…会合を見守ります」

 

静香の背中についていく尚紀達を見送る魔法少女と妖精王達も不安そうな顔つきになっていく。

 

この会合は一筋縄ではいかず、下手したら村を焼き払う神の戦になりかねないと恐怖していた。

 

────────────────────────────────

 

「…ボク達を呼びつけておいて、君達は重役出勤かい?いい御身分じゃないか…アスラ共?」

 

奥の院であるオオクニヌシの社殿に入った瞬間、敵意を剥き出しにする者達の視線が集まる。

 

座布団の上に座っていたのはクリシュナ、シヴァ、ゼウス、オーディン、パールヴァティ。

 

オオクニヌシは会合の席を用意する者として彼らの横に座っており、静香も座れと促す。

 

オオクニヌシの横の座布団に正座しながら座り込む静香は前の空間に視線を向ける。

 

戦々恐々としながらも向かい合える位置に用意された座布団に座り込む尚紀達がいたようだ。

 

「他ならぬパールヴァティの頼みだからこそ来てやったんだ…つまらない会合ならば許さない」

 

「お前がクリシュナか…そして隣にいるのはシヴァなのか?随分と…オシャレな擬態姿だな?」

 

ヨガの坐禅を組んだ姿をしたシヴァの頭部は長い黒髪をドレッドヘアーのように纏めている。

 

無数の蛇を頭部に纏うようにも見え、金色のサングラスの下はヒップホップファッション。

 

破壊神であると同時にダンスの神でもあるシヴァらしい見た目なのかもしれない。

 

「フフッ♪わたくしの夫はね、オシャレなクリシュナに負けたくないって頑張ったのよ♪」

 

シヴァの隣にいるのは明るい色を取り入れたヒップホップファッションを纏うパールヴァティ。

 

妻の口の軽さに対して赤面しながら溜息をついたシヴァは瞑想状態を止めてしまう。

 

「オイオイ、俺様の服装は目に入らねーのかぁ?ド派手さと優雅さを兼ねた逸品なんだぜぇ?」

 

あぐら座りの擬態ゼウスは白と黒の高級スーツを見せながらドヤ顔を浮かべてくる。

 

そのゼウスの隣に座るのはオーディンであるのだが、擬態姿は魔術師めいた老人の姿なのだ。

 

「擬態の服装談義をしにきたわけではない。くだらない会合になるのなら我は帰らせてもらう」

 

「もう!つまらないですわ!殺伐とした空気を明るくしてあげようと思いましたのに~…」

 

「気を遣わせてすまないな、パールヴァティ。お前の尽力に感謝する」

 

「デーヴァの主神の誇りを掲げる彼らを促すのは苦労しましたわ。だからこそ無駄にしないで」

 

「話を戻そう。それで…?君達アスラ共はボク達デーヴァ神族に対してどんな話を持ち込む?」

 

返答次第では襲い掛かってくる程の敵意を剥き出しにしてくるクリシュナ。

 

言葉を選ぼうとする尚紀達も黙り込んでしまう。

 

「ボクはね…今日の会合は勝機だと考えてる。CHAOS勢力の重鎮共の首を跳ねるチャンスさ」

 

「アスラ神族、テメェらは大魔王陣営に組した神族共だ。言うなれば俺様達の敵になるんだぜ」

 

「然り。ノコノコとやってきたのはCHAOS勢力の皇帝とくる…狙わない手はないはずだ」

 

話し合いなどどうでもいい、本当の狙いはお前達の首級をあげること。

 

そう突きつけてくる多神教連合に対する尚紀の顔には冷や汗が浮かんでしまうようだ。

 

「お前達の本音は分かった…ならば俺達の首と並ぶ程の恩恵をお前達に与えるしかないようだ」

 

「ほう…?CHAOS勢力の皇帝と我らデーヴァ神族の憎き悪神の首級と並ぶ程の恩恵かい?」

 

興味を示したクリシュナに対して、意を決する尚紀は人なるアスラとしてこう頼み込む。

 

「多神教連合よ…俺達と共に大魔王とバアルを倒してくれ。残された世界は…お前達に託そう」

 

そう伝えられた時、場の殺気が収まっていく。

 

眉間にシワを寄せていたクリシュナであったが意外な提案を受けたことで態度を軟化させる。

 

「大魔王勢力に組するくせに大魔王の首を跳ねるためにボク達を必要とするのかい…?」

 

「オマケに啓明結社共を滅ぼした後の世界を俺様達に譲るってかぁ?テメェらはどうする?」

 

「俺達には勝者の栄光など必要ない。世界の金融支配を終わらせた後は…天使軍と戦うさ」

 

「我らは汝らが支配する新たな世界を守る盾となろう…ハルマゲドンのために命を捧げよう」

 

彼らの譲歩内容に対する多神教連合の重鎮達は顔を向け合いながら怪訝な顔つきになる。

 

「それではボク達側の一方的な有利となる譲歩内容となるね…君達はそれでいいのかい?」

 

「俺様達の庭を守るためにハルマゲドンで命を散らそうって献身ぶりはな…逆に怖くなるぜ」

 

「貴様らは本当にそれで良いというのか?誉れある混沌王、それにアスラ神族の王よ…?」

 

「俺達は権威も権力も興味はない。俺が求める残された世界の形とは…個の確立した世界だ」

 

「個の確立した世界…?」

 

「人々が真に独立し、自分達の手で国や地域を形作れる力強さ…それを育ててやって欲しい」

 

「君の望みは分かったが…どうして君自身でそれを成さない?どうしてボク達を信用する…?」

 

「クリシュナ…いや、ヴィシュヌ。お前も気が付いているだろ…この腐り切った世界の病を…」

 

それを問われたクリシュナは目を瞑りながら頷いてくれる。

 

彼が思い出すのはこの世界に顕現した後に見てきた世界の腐り切った在り様。

 

支配者は理性を欠くようになり、不公平に税金を徴収するようになる。

 

支配者はもはや崇高であることや被統治者を保護することを義務だと思わなくなる。

 

七つの大罪や復讐が普通に行われ、人々はお互いに強い憎しみをあからさまに示すようになる。

 

人々は快楽に溺れ、正当化出来ない殺人について考え始め、それが悪いことだと考えなくなる。

 

セックスは社会的に容認されるものと見なされ、セックスこそが人生の喜びとされてしまう。

 

善意が衰えていき、犯罪が飛躍的に増加し、人々は直後に破るためだけに誓いを立てる。

 

男は自分達の仕事のストレスが大きいことを自覚し、仕事から逃亡するため引き籠っていく。

 

「為政者は金融支配され…愚民はパンとサーカスとなり…金とセックス至上主義者になった…」

 

「恐ろしいよな…まるでワイマール共和国時代のドイツが世界中で溢れ返ったような地獄さ…」

 

「ユダヤに国を乗っ取られ…ばら撒かれた堕落によって人民の倫理観が崩壊した退廃時代か…」

 

「退廃、堕落、ポルノ、レズビアン等の同性愛…21世紀の先進国で溢れ返っているはずだ…」

 

「それを推奨させてきたのが君達CHAOS勢力だ。なのに君はそれを憂うというのかい…?」

 

「俺の恩師はな…かつてのボルテクス界でこう言ってくれたんだ…」

 

安らぎばかり求める皆の無責任で、我儘な振る舞いがとても嫌だった。

 

誰も気がついてはいない、それは幸福なんかじゃなく、ただ怠惰になってるだけ。

 

競い合うこととか、強くなることとか、誰も求めないし、必要もなくなっていた。

 

「かつての世界もそんな堕落で満ちていた…だからこそ俺の恩師は破壊と再生を望んだんだ…」

 

「その人の気持ち…ボクは分かるよ。かつてのボクも世界に絶望し…破壊と創世を望んだ者さ」

 

「でも、全てが終わったわけではない。創世はその途中…次の形はまだ……決められていない」

 

アスラである人修羅の気持ちを重く受け止めてくれたのはデーヴァ神族の主神。

 

腕を組んで考え込むクリシュナであったが、沈黙を続けていたオオクニヌシが口を開きだす。

 

「日々、我々は会得してきたが、毎瞬…何かを失うものだ」

 

名誉を失う、仕事を失う、財産を失う、大切な人を失う。

 

「しかし失ってなどいない…どんな時でも必ず新たな経験や機会への種を得ているはずだ」

 

ただ嘆くのなら未知なる果実を取り零している。

 

獲得に目を向ける時、生はさらに豊かになるだろう。

 

「人間は学べると私は信じたい…だからこそ…私は世界の破滅を望むことを止めた者なんだ」

 

「オオクニヌシ……お前……」

 

「学びは一人一人がオリジナル。目的地は同じでも、みんな違った道を通る」

 

歩く道が同じに見えても、踏みしめる大地はみんな違う。

 

本当の学びは教科書や常識、人の話からは得られない。

 

日々泣き、笑い、ぶつかり、悩む。

 

その中に誰もが問いと答えを持っているだろう。

 

「私はそんな人々が生きられる世界を耕したい…そのためなら…世界を焼き払ってみせようぞ」

 

「フッ…昔のお前が嘘のようだな、オオクニヌシ?俺もそう思うぜ」

 

「一度世界が破壊されたならば…人々は嫌でも自立しなければならん。そこにこそ成長がある」

 

「資本家がもたらす世界という認識と常識の檻から飛び出し、もう一度荒地の荒野を耕すか…」

 

「へっ、もう一度人類の原点をやり直させてみるってのも…悪くはねーんじゃねーか?」

 

「作物を生み出す田畑を人々は耕し、天に対して豊穣を祈願する…我々()()()()()()()()()

 

「金と性交、権威や権力、勝ち組と負け組、そんなものにしか価値を見出せない時代が終わる」

 

「資本主義とそれに共謀した共産主義の消滅か…大切だったのは金でもエリートでもない…」

 

――自分達で強く生きていこうと死ぬまで努力し、互いを支えながら共に生きる人間達なんだ。

 

あらゆる物の真の価値、どんな物でもそれを獲得しようとするにあたって費やすもの。

 

それは獲得するための労苦と骨折りである労働。

 

土地の私有化にも資本の蓄積にも先立つ、原初的な黄金時代には資本主義など存在しない。

 

久遠のあけぼの状態で価格づけや分配を決定したのは一生懸命労働する人間達の姿なのだ。

 

「御先祖様の姿が私にも浮かんでくる…一生懸命働いて生きる世界に資本主義なんてない!」

 

時女一族という隔絶された地で一生懸命働いてきた者達は独立して生きてこれた者達。

 

そこに資本主義を持ち込んだのは神子柴であり、それがあったせいで上下の支配が生まれる。

 

それに気がつけた時女静香だからこそ、神々の思いと同じ気持ちになってくれるのだろう。

 

「バラモンは学ばれる事なく、クシャトリヤは勇敢ではなく、ヴァイシャは公平でなくなった」

 

今まで沈黙を続けていたシヴァが重い口を開きだしたことで迷うクリシュナが振り向いてくる。

 

官能的な欲望(カーマ)だけを求める信奉者は全ての人から心の制御を奪い取る…ならば我らは戦おう」

 

「シヴァ…君はまさか……」

 

「奇しくも今回で10回目の転生を迎えたヴィシュヌよ…今こそカリ・ユガとなる時がきたな」

 

全員の視線がクリシュナに集まった事で覚悟が決まったのか帽子を脱いで立ち上がってくれる。

 

「アスラ神族よ…君達の献身と犠牲を無駄にはしない。そのためにボクは新たな秩序となろう」

 

「その言葉が聞きたかったよ、カリ・ユガ。どうか俺達の代わりに…人々を導いてやってくれ」

 

「そう呼ばれるにはまだ時期尚早だね。ボクが本物のカリ・ユガとなれるか…見届けて欲しい」

 

尚紀も立ち上がってクリシュナの元に近寄りながら手を差し伸べてくれる。

 

互いに固い握手を交わし合う者達の表情がようやく和らぎ、微笑んでくれるのだ。

 

「アスラ神族よ…我らはそなた達と共に戦おう。リグ・ヴェーダの時代が蘇るのだ」

 

「その言葉が聞きたかったぞ…シヴァ。我らは世界革命の補給線を整備する…軍備は任せよ」

 

立ち上がったシヴァとアスラ王も手を差し伸ばしながら固い握手を交わしてくれる。

 

パールヴァティと静香も拍手を送ってくれるし、ゼウス達も顔を見合わせながら頷く。

 

こうして多神教連合とCHAOS勢力に潜伏するアスラ神族は同盟関係を結ぶことが出来たのだ。

 

山の上に留まっていたガルーダに乗って去っていくクリシュナ達を見送る者達がこう告げる。

 

「人修羅、よくぞクリシュナ達を説得してくれた。私はな…お前の力も必要だと考えていた」

 

「よしてくれ、オオクニヌシ。お前の言葉がなければクリシュナ達は動かなかっただろう」

 

「その通り。我らアスラ側に出来たのは後の世界を彼らに譲る譲歩だけしかなかったのだから」

 

「それでもよくやってくれた。これで我らの戦力は大きく飛躍する…これなら世界と戦えるな」

 

「お前の村にも連絡員を用意して欲しい。静香なら適任だと思うが…どうだ?」

 

「喜んで承るわ!あぁ…嘉嶋さんがいてくれなかったらきっと…私達は世界と戦えなかったわ」

 

「よかろう、静香を連絡員として用意しておく。軍備が整ったならば彼女に報告してくれ」

 

用事を済ませた事で急ぎ帰路につこうとするのだが、人修羅の体がぐらついていく。

 

「嘉嶋さん!!?」

 

酷い眩暈に再び襲われた彼が倒れ込み、大慌てした静香が彼を抱き起してくれる。

 

「…人修羅よ、今夜はこの村で休め。汝の体も心も想像以上に消耗している…先のためにもな」

 

「バカ言え…俺の影武者を務めているミトラスだって…いつ正体がバレるか分からないんだ…」

 

「それでも一日の猶予ぐらいはあるだろう…かつての友と共に夕餉を囲み、心と体を癒すのだ」

 

渋々頷いてくれた人修羅に肩を貸す静香と共にアスラ王達は歩き去ろうとする。

 

それでも最後に聞いてみたいことがあったのかオオクニヌシはこんな質問をするのだ。

 

「アスラの者達よ…本当にお前達は全てを捨ててもいいのか?それがアスラの在り方なのか?」

 

それを問われた時、立ち止まった人修羅とアスラ王は彼の質問に対してこう語ってくれる。

 

「我らアスラはアムリタを得られないため不死・不滅ではない。滅びゆく神々なのだ」

 

「俺達は自らに想像を絶する厳しい苦行を課す者達。全ては後の人々に善政を残すためだ…」

 

「我らは執着心という概念を克服している。故に我らは無我であり…仏教を掲げる勢力だ」

 

それだけを言い残したアスラ達を見送るオオクニヌシは微笑みながらこう語っていく。

 

「アスラの意味は主であり、神を表すデーヴァと同じ。根っこはどちらも同じ本質を宿すか」

 

民のため自らに峻厳を課し、我欲を抑える均衡を保ち、誰よりも犠牲となる慈悲を貫く。

 

そんなアスラ神族もまた王の素質を宿し、善政を築ける存在なのだと理解してくれる。

 

「デーヴァにしてアスラ達よ…お前達の犠牲は無駄にはせん。オオクニヌシの名に誓ってな」

 

リグ・ヴェーダにおいてはヴァルナとなるアスラ王、ミトラとなるミトラスが描かれている。

 

この二神にしてデーヴァでありアスラなのだと記されているのだ。

 

ならばアスラ王とミトラスから太陽神を継承した人なる修羅もまたデーヴァにしてアスラ。

 

肯定的な側面をデーヴァが、否定的な側面をアスラが代表するという陰陽合一存在達である。

 

アスラを悪神にしたのはインドであり、イランでは最高神として祀り上げられている。

 

神も悪魔も地域によって見え方が変わり、水の如く変化し続ける火水(かみ)なのであった。

 




人修羅君をアスラサイドで描いていくと、ヒンズー教で描かれたアバタールチューナーにボス修羅君として現れたのも納得なんですよね(トラウマ脳)
真女神転生5のボス修羅君は対策してれば勝てるけど、アバタールチューナーのボス修羅君は対策完全でもリアルラック頼みとか流石はJRPGで1~2位を争う鬼畜ボスですな(汗)
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