人修羅×まどマギ まどマギにメガテン足して世界再構築 作:チャーシュー麺愉悦部
「ここは……何処なの……?」
辺り一面暗闇しか見えない大地の上に立つ悪魔ほむらは己の姿さえ確認出来ない。
星の明かりすらない洞窟の世界の如き暗闇では敵と戦うことすら困難であろう。
<<ダークネスはいいヨネ…抑えつけられてた本当の自分が眠れる場所だカラ>>
アリナの念話が何処からか響いてくるが、居場所は特定できない。
<<誰にも邪魔されずにハートのダークネスと向き合える…アナタもそうでしょ?>>
「まどかを襲わせた連中の後ろにいたのはお前ね……イナンナ!!」
<<イグザクトリー。そろそろアナタとは決着をつけたくてさぁ…死んでくれる?>>
「私を襲いたいのなら私だけを狙いなさい!まどかを狙う必要はないでしょ!?」
<<そうはいかない。あの子はアナタが求める恋人候補でしょ?利用しない手はないワケ>>
「私を引き付けるためにまどかの命を狙った代償は重いわよ…この場で殺してあげるわ!!」
<<それが出来るか見物なワケ。アリナだけがアナタのライフを狙ってるわけじゃないカラ>>
そう伝えられた事でイナンナ以外の悪魔も潜んでいると判断したほむらが集中する。
アリナ以外にも強大な魔力を感じ取った彼女が闇の空を見上げた時、何かを見つけるのだ。
「あれは何…?黒いトーチ…いいえ、黒い太陽……?」
見えたのは青黒く光る巨大な球体であり、暗闇の世界に僅かばかりの光をもたらしてくれる。
闇夜の景色程度の明かりが結界世界にもたらされた時、巨大な存在がせり上がってくるのだ。
<<深い深いダークネスの中、底無しの淵を支配するデビルはね…アナタを殺したいワケ>>
超巨大な闇の渦からせり上がってきたのはワルプルギスの巨大頭部程もある魔王の王冠。
無数の棘で飾られた巨大王冠は見る者を威圧し、その巨体は見る者を絶望させる程である。
「ワルプルギスの夜と同じ…いいえ、もっと大きい!?こんな巨大な悪魔もいるのね……」
漆黒の肌と尖った耳を持ち、真紅の瞳を向けてくる頭部の半分が現れる。
恐ろしい眼光を光らせる頭部の半分だけで巨大な山を見上げる程の圧迫感を放ってくるのだ。
「暗き地獄より再び我は顕現する…ムスビよ、全てはボルテクス界での因縁を終わらすため」
「…新田勇の記憶がお前の正体を教えてくれたわ。お前はアマラ神殿のアルシエルね…?」
「如何にも。ムスビに連なる者よ…貴様の前任者は我の静寂と快楽を邪魔した存在なのだ」
「だから私も殺したいわけ…?お前の快楽の邪魔をしたのは新田勇と人修羅だけでしょ…?」
「貴様の中にも新田勇の邪悪さを感じる…まるで瓜二つだ。貴様も己の殻に閉じこもる者だ」
人目見ただけで暁美ほむらの本質を言い当ててしまう魔王に対して唇を噛んでいく。
眉間にシワを寄せる女は自分の触れられたくない部分に入ろうとする者を許さない女だ。
「いいわ…両方相手してあげる。かつての世界の因縁も…イナンナとの因縁も…終わらせる!」
<<アルシエルを甘く見てるんですケド。彼だってね、魔王クラスのデビルだカラ>>
巨大な黒い太陽をよく見ると小さな人影が見える。
そして次の瞬間、金星の輝きによって強い光が闇の世界に顕現するのだ。
現れた存在こそ東京に現れたイナンナの姿であり、生まれ変わった新しいアリナである。
強い光を放つのは背後で浮かぶ金色の光輪であり、知恵を司る金星や土星の光を生む円環。
それこそがエンキから奪い取ったメーの神話であり、エンキの権威を示す
「さぁ、アリナはここなんですケド?ニートのガッツをアリナに示せるだけの覚悟はある?」
「ニートニートって…やかましいのよ!!私は引き籠りじゃないわ…世界の支配者なのよ!!」
「怒らないで欲しいんですケド?
見栄っ張りな態度は虚勢なのだと見抜いているアリナは嘲笑いながら手招きしてくる。
彼女の態度は挑発であり、それにまんまと意識を持っていかれる愚か者には制裁が襲い掛かる。
「このアルシエルを前にして他の者に意識を奪われるか!!その愚かさ、死を持って償え!!」
巨大な山がついに動き、隠れていた頭部のもう半分がせり上がりながら迫ってくる。
大口を開き、無数の牙が迫ってくる光景はまるで超巨大な津波のようだ。
咄嗟の判断で鴉骨の翼を用いて上空に飛んで避けるほむらに対して空からはアリナの攻撃。
九相図でありアリナの悪魔の耐性を象徴するデスマスクが極大の四属性魔法を放つ。
「くっ!!」
夜のカーテンを展開しても弱点属性が一つ残るのはかつての戦いで確認済み。
展開した夜のカーテンの弱点属性は雷であったため『マハジオバリオン』で焼かれてしまう。
「アァァァァーーーーッッ!!!」
敵全体に特大威力の雷属性攻撃を放つ一撃が決まったことで悪魔ほむらが体勢を崩す。
放った四属性魔法のうち三つは反射されるのだが、アリナのデスマスクがそれを無効化する。
地上に落下する悪魔ほむらだが、下では大口を開けたアルシエルが待ち構えているのだ。
「貴様のマガツヒは香ばしい匂いだ…喰らってくれる!!」
「この程度で私は…倒れはしない!!」
鴉骨の翼から紫色の魔力を放出しながら光の翼を生んだほむらが高速で飛行していく。
飲み込もうとしたアルシエルの一撃を間一髪で回避出来た彼女は高速飛行しながら矢を放つ。
高速旋回しながら射撃してくる魔力の矢の一撃に対して、魔王達はそれぞれの反撃を行うのだ。
「大した一撃だが…我の悪魔耐性は魔法攻撃を減退させる!この程度では我は倒せん!!」
魔法全般に強いアルシエルの悪魔耐性によって無数の矢が直撃しようがビクともしない。
アリナは魔法反射魔法であるマカラカーンを展開して無数の魔力の矢を反射してくる。
反射された魔力の矢が高速で迫ってくる中、飛行しながら体勢を反転させる。
弓に足をかけながら弦を引き絞る扇撃ち状態で放った無数の矢で迎撃したようだ。
「イナンナよ、素早い鳥も疲れれば止まり木を探すものだ。暫く相手をしてやれ」
「何を狙ってるかは知らないけど、任せてくれていいカラ」
黒の魔法少女服が白くなったような服装に変化しているアリナの背中が隆起していく。
白い服を突き破って生えたのはイナンナの黄金の翼であり、バーニーの浮彫を彷彿させる。
バーニーの浮彫は夜の女王を表し、リリス・イナンナ・エレシュキガルを象徴する存在だった。
「ヘブンを支配するのはアリナなんですケド!シリアスネスになったアリナを見せてあげる!」
黄金の翼からも魔力が噴き上がり、光の翼となったことでアリナも高速飛行していく。
背中で浮かぶ光輪と共に飛翔する存在とのドッグファイトが展開され、無数の爆発が起きる。
翼を纏う女魔王達の戦いこそ、バーニーの浮彫となる女神は誰なのかを競い合う光景だろう。
アルシエルの闇の結界内で戦う者達を見つめる闇の支配者の巨大な目が邪悪な輝きを放つ。
「ぐぅ!?な…なんなの…コレ!?私の魔力が…吸われていく!?」
悪魔ほむらを襲った魔法とは吸魔であるのだが、連続した一撃となっている。
アルシエルが用いた魔法とは『龍の眼光』であり、連続魔法を唱える効果を発揮するのだ。
次々と魔力が吸われた事で悪魔ほむらの飛行速度も落ちていく。
そんな彼女に仕掛けるアリナの魔法とは戦闘で用いることがない『トラフーリ』である。
目の前で炸裂させる光玉がフラッシュグレネード効果となってほむらを襲い、アリナを見失う。
「何処に消えたの!?」
「コッチだカラ!!」
声がした上空に視線を向けた時にはもう遅い。
背中の両翼で体を包みながら突進する事で相手の視認を誤魔化し、襲い掛かる時に翼を広げる。
突然翼を開く猛禽類の狩りを真似たイーグルキックが炸裂した事でほむらは地上に落ちるのだ。
「キャァァァァーーーーッッ!!!」
闇の大地が激しく砕かれ、周囲は巨大クレバスが広がる程の被害規模になっていく。
奈落に落とされたほむらであるが、不屈の意思で飛翔しながら地面に立つが片膝をつくのだ。
「ハァ…ハァ…クロノスをまどかの護衛にしたのは失敗だったわね…まんまと分断されたわ…」
「もう遅い!貴様はここで終わる…貴様の地位は我が引き継ぎ、世界を制する魔王となる!!」
「魔王としての地位を奪いたい下克上でもあったのね…そうはいかない、私こそが魔王よ!!」
立ち上がった悪魔ほむらの背中の翼から溢れ出すのは極大規模の侵食する黒き翼。
アルシエルの世界ごと敵を葬り去ろうとするのだが、アルシエルもまた極大魔法を放つ。
「これぞ他の魔王達ですら恐れる我の真の力!!これを受けて瀕死にならぬ魔王はいない!!」
大口を開けたアルシエルが闇の領域の闇を一気に吸い込んでいく。
迫りくる侵食する黒き翼に対してカウンターとして放つ一撃とは『ソルニゲル』である。
「こ、この一撃は……ッッ!!?」
闇の世界全体が光で照らされる程の超巨大爆発が起き、侵食する黒き翼さえも消滅させる。
「チッ!!」
爆発に巻き込まれまいと急速上昇したアリナはソルニゲルの一撃を避けることが出来ている。
しかし地上で立った状態で侵食する黒き翼を展開させた悪魔ほむらはそうはいかない。
核爆発規模の爆発の光が収まった時、光の爆発に弾き飛ばされた悪魔ほむらは倒れている。
「ぐっ……あっ……?」
何が起きたのかも分からない表情をしながら倒れ込む彼女は既に虫の息の状態である。
アルシエルが強大な悪魔であろうと実力なら悪魔ほむらの方が上なのに瀕死にされている。
これこそが万能属性のソルニゲルの恐ろしさであり、敵全体の体力を必ず瀕死に追い込む。
この状態に追い込まれればどんな魔王であっても殺されるしかなく、だからこそ恐れられた。
「こんな……ところで……死ぬ……わけには……」
いくら死を乗り越え続けたほむらであろうと、体力が残りわずかでは立ち上がる事も出来ない。
今の彼女ならアリナの踏み蹴り一つで死ぬぐらい瀕死状態にされているのだろう。
「アラディアとの戦いでも人修羅が助けてくれたんでしょ?男の助けを呼んでみたら?」
爆心地から大きく離れた悪魔ほむらの元にやってくるのはアリナとアルシエルの巨体。
もはや抵抗する余力もなく、立ち上がる命すら残っていない。
絶体絶命の状況になっても彼女は怒りの顔となり、男の助けはいらないと声を出すのであった。
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「暁美ほむらのトドメはアリナが貰ってもいい?」
「構わん。我はその小娘悪魔のマガツヒを喰らい、その地位を奪えればそれでいい」
絶体絶命の状況下であり、勝利を確信しているアリナはおどけた態度で両手を広げていく。
「この期に及んで男の助けはいらない?アッハハハハ!!流石はフェミニスト女だヨネ!」
「なんとでも…言いなさい…男に助けられる私なんて…私じゃない…そんな私は…いらない…」
「最後までフェミニストとしてのエゴに縋りつく。そこまで意固地になる理由は何なの?」
「男は…邪魔者よ…私の恋の邪魔をする…魔法少女達の恋の邪魔をする…消えて欲しいわ…」
「アリナもね、魔法少女社会はレズ社会だと気が付いてた。アナタはそれを守りたいワケ?」
「そうよ…魔法少女の恋愛を守るのは…私とまどかの恋愛を守りたい気持ち…その為に私は…」
「デビルらしい傲慢な価値観だヨネ。今まで女だけで生きてこれたように語ってくる」
「貴女には…いなかったの…?絆を結べる程にまで…大切な…魔法少女は……?」
「……いたけどさ、アリナはソレだけで生きてきたわけじゃない。パパとママにも感謝してる」
アリナも男女家庭で産まれた女であり、性格が明るい幼少期の頃から父親の英才教育を受ける。
アーティストとして最初の一歩を歩めたのは父親のお陰であり、それを彼女は否定しない。
たとえ理不尽に殺され、その死肉をカニバルする羽目になっても、男の献身に感謝するのだ。
「アリナがアーティストになれたのはパパのお陰。娘に
デッサン道具として最初に与えられたのは林檎であり、アリナはデッサンを繰り返していく。
アーティストとしての最初の始まりこそ林檎であり、そんな知恵の果実を象徴する女神となる。
それを今でも覚えているアリナだからこそ、女だけで生きてきたわけじゃないと言えるのだ。
「アリナは男の力で育てられたアーティスト…今でも感謝してる。アナタは違うワケ?」
「私の両親なんて偽物だったわ…男の愛からはぐれた私に残ったのは…まどかへの愛のみよ…」
同性愛に走る若者は環境のせいで同性愛へと導かれてしまうとメイド喫茶の店長は言葉を残す。
暁美ほむらもその例に漏れず、男の愛を知らないまま生きたせいでレズビアンになったのだ。
「ねぇ…最後ぐらい正直に話して。アナタは人修羅に助けられたでしょ?それが男の愛なワケ」
「そんなもの…私は認めない!!私は独りでも戦えるわ…男の力なんて…必要ないのよ!!」
「ハァ…もう頭の病気だヨネ、レズビアンってさ?現実を都合のいいように歪め続けるし…」
「魔法少女に必要なのは…絆を結んだ魔法少女のみよ…男は私達の踏み台になる存在でいい…」
「オーケー、そこまでエゴい我儘を貫きたいならさ……理想と一緒に溺死したらいいカラ!!」
男という存在を相手に
持ち上げたアリナの蹴り足が悪魔ほむらの頭部を踏み砕こうとした時、それは起こるのだ。
<<そこまでだ>>
恐ろしい念話が響き渡った瞬間、アルシエルの闇の世界が啓蒙の光によって満たされる。
「グワァァァァァーーーーッッ!!!」
闇の世界を引き裂く程の強烈な光を前にしたアルシエルが怯み、アリナも目が眩む。
「こ……この光は……まさか……」
闇の世界に表れたのはアリナと同じロードオブザリングとなる魔法陣であり、人が下りてくる。
知恵を司る啓蒙の女神であるアリナさえも凌駕する程の光こそ、オリジナルの啓蒙神の後光。
光り輝く天使の六枚翼を背に持った存在がゆっくりと空から降りてくるのだ。
倒れ込んだ悪魔ほむらの横に立った者とは次元移動によって参上した大魔王ルシファーの姿。
眉間にシワを寄せるその表情は明らかに怒っているのが分かるアリナが叫んでくるのだ。
「ど…どうしてアリナが暁美ほむらを襲うって分かったワケ!?秘密のプランだったのに!?」
「私の部下達は一枚岩ではない…だからこそ常に用心する。私のクリフォトとは監視の牢獄だ」
「こんな奴はもう用済みなワケ!こんな奴なんていなくても…アリナが働いてあげるカラ!」
「それを決めるのは君じゃない、私だ。この子を悪魔にするのには相応の苦労があったのだ」
「アリナのパワーを疑うワケ!?エンジェル軍なんてアリナがいれば恐れる必要はないヨネ!」
「暁美ほむらを気に入らない君の我儘のせいで貴重なハルマゲドン戦力を無駄には出来んのだ」
これ以上の勝手を行うならば容赦しないと無言の圧力を向けてくる大魔王。
アリナの顔にも冷や汗が溢れ出し、逆らえば彼女でも命は無いと諦めることになるだろう。
「アルシエル、お前も勝手な行動をした責任は重いぞ」
「ヌゥゥゥゥ…しかし閣下…このような小娘如きに魔王の座を用意するなど我は納得出来ん!」
「お前も魔王の座に固執するか…ならば用意してやる。シェムハザの席が空いたからな」
「で、では……我もまた魔王としてケテル城の席に迎え入れてもらえるのですかな…?」
「そうしよう、お前の力とて貴重な戦力なのだ。これでお前がここで戦う理由も消えたな?」
「…そのようですな。此度の勝手な闘争の責任として、我は粉骨砕身の働きを示しましょうぞ」
「……期待しているぞ」
闇の穴に沈んでいくアルシエルの姿が完全に消えた時、闇の結界世界も消失していく。
元の世界に戻った景色とは見滝原市の住宅街にある大きな公園だったようだ。
「ハァ……アリナもテンションダウンしちゃったし、帰ろっかな」
「このような勝手な行いは以後、慎みたまえ。我々の脅威は目前なのだ…一丸とならねばな」
「フン…精々その女を利用したらいいワケ。自制心の欠片も無い頑固で我儘な女のようだし♪」
――ほんと、ヒューマンはどいつもこいつも、見たいものしか見ないし、信じないヨネ。
その言葉はマギアレコード宇宙においてもウワサを纏ったアリナが語った言葉。
そしてガイウス・ユリウス・カエサルが残した格言内容でもある。
銀の庭宇宙のアリナも同じ言葉を傲慢極める悪魔ほむらや人類に送ってくるのだ。
彼女はヒューマニズムという価値観こそが傲慢であり、人の堕落なのだと見抜いた者であった。
「バイバイ、暁美ほむら。背中を刺されないよう、震えながら身構えていればいいカラ♪」
宙に浮かび上がったアリナが背中の両翼で体を包み込んだ瞬間、消え去っている。
舞い散る黄金の羽の中、傷ついた悪魔ほむらは大魔王が抱きかかえてくれたようだ。
「助けを呼んだ…覚えはないわよ…」
「安心しろ、君は男に助けられたわけではない。私は男でも女でもないXジェンダーさ」
「どちらでもあり…どちらでもない…そんな性の不特定存在だから…フェミニズムを望むのね」
「君はこれからもナアマと共にフェミニズムを世界に築く者なのだ。今はまだ死ぬ時ではない」
ルシファーの体から回復の光が放たれる。
傷を完全回復させるディアラハンのお陰で悪魔ほむらの傷は完全回復したようだ。
降ろしてもらった彼女は悪魔化を解き、ダブルボタンスーツ姿の大魔王の背中の翼も消える。
そんな中、顔を俯けたままの暁美ほむらから弱々しい声で質問されるのだ。
「ねぇ…ルシファー。この世界は本当に…女の力だけで自立させることが出来るの…?」
「……フェミニズムに疑問が出来たのかね?」
「今でも信じたいけど…まどかやアリナから語られた言葉のせいで…自信がないわ…」
「フェミニズムとは新しい価値観だ…ならば実験し続けよう。挑戦の先にこそ君の理想がある」
「私の……理想……」
「旧来の道徳観では君と鹿目まどかの恋愛は成就しない。道が無いなら築くだけだろう?」
「道を築く…そうよ、その通りよ。まどかを救う道だって…道なき道を切り拓いたのは私よ…」
「挑戦する気持ちが死んだ時こそ君の人生の敗北だったはず。忘れるな…
微笑んでくれたルシファーのお陰でほむらの心も救われたのか同じように微笑んでくれる。
「私ね…貴方に感謝してるわ。レズの恋なんて未だにバカにされるのに…貴方は助けてくれる」
「私は魔法少女の恋愛を守る者だよ。絆を結んだ魔法少女達と存分に
「本当に有難う…そう言ってくれるだけで私は救われるわ。だからこそ貴方の為に戦わせて…」
期待を込めて両肩に手を置いてくれる大魔王の優しさが嬉しいのか、ほむらが抱き着いてくる。
レズビアンを守ってくれる啓蒙理念の象徴である啓蒙の神に縋りつきたい弱さの光景だろう。
そんな彼女を抱きしめてくれるルシファーであったが、口元には不気味な笑みが浮かんでいる。
未来が視える彼が手配しておいた迎えの車が到着し、ほむらを見送ってくれる。
彼女が消えた現場にやってくるのは秘書官を務めさせている擬態姿のゴモリーだったようだ。
「アリナの勝手な私刑を利用して暁美ほむらをさらに懐柔させる…お見事ですわ、閣下」
「これで彼女の忠誠心はさらに増す結果になったというわけだ。ハルマゲドンが楽しみだな」
不気味な表情を浮かべる大魔王の狡猾な罠にかかったマヌケな女に対して高笑いを行う。
しかし直ぐに笑いは収まり、落胆したような表情となるのだ。
「所詮人は感情の生き物か…私がどれだけ知恵を与える機会を用意しても…誰も求めなかった」
「イルミナティの秘密開示も閣下の指示でしたわね…ですが結果は仰られている通りですわ」
「人類に知恵を授けたのは間違いだったのかもしれない…知恵なんて…
踵を返して去っていく大魔王達の上空から現れるのは迎えのヘリである。
ヘリの強風に揺らされる金髪ロングのルシファーの表情は何処か寂しそうでもある。
知恵を求めない、それは知恵の蛇にさえ見向きもしない光景にもなるだろう。
享楽ばかり求める堕落人類を林檎の樹から見下ろす蛇から見れば、人間など家畜同然であった。
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まどかとアリナから語られた言葉によって暁美ほむらは自分の恋愛観に劣等性を感じていく。
それでも他人から間違っていると言われたところで止まらないのが彼女の在り方。
時間渡航の中で魔法少女達から自分の劣等性を指摘されても彼女は自分の道を貫いた者。
その在り方こそが自己完結であり、劣等性を逆手にとって我儘を押し通す道だったのだ。
「恋の対立なんて…ようはエゴとエゴのシーソーゲームね。女を巡るシーソーゲームよ…」
昨日商業区で起きた銃乱射事件の話題で騒然としている学校内にいるのは暁美ほむらである。
まどかから拒絶されたり送迎中に襲われたため、今の彼女は豪華な送迎を取りやめたようだ。
雑多な者達の会話内容など頭にも入らない彼女は昼休みを利用して屋上に昇っていく。
誰もいない学校の屋上に立ち、後ろ髪を風で揺らす彼女は遠い景色の世界に思いを馳せる。
「正しいか正しくないかの話なんかじゃないわ…私の戦いとは私の我儘を貫く道だった…」
それは自分との戦いであり、どんな罪を背負ってでも意思を貫き通すと覚悟した道。
たとえフェミニズムが間違った思想であろうと関係ない。
彼女が求める願いを叶えるためならば、どんな悪事にだって手を染めるのが彼女の道なのだ。
「やっぱり私は…ギロチン台で処刑されるべき罪人かもね。それでもいいわ…突き進んでやる」
求めるものは違っても、暁美ほむらもまた人修羅と同じ覚悟を宿している。
最後には処刑される末路になろうとも世界に求める願いがあり、どんな罪でも背負う者なのだ。
偽街に引き籠った頃のように破滅を望むようになった者の背後から誰かが近寄ってくる。
「ほむらちゃん……」
現れたのはまどかのようだが、オドオドした彼女に対して疲れた溜息が出てくる。
それでも努めて普段の表情を無理やり浮かべた彼女が後ろに振り返ったようだ。
「……何かしら?」
「昨日はその…ごめんね。わたし…キツイ言い方しか出来なかったのが心残りだから…」
「気にしてないわ。貴女にだって貴女の価値観があるわよね…私にも価値観があるように…」
「ほむらちゃんの価値観は尊重したいよ…だけどね…自分だけの価値観だけじゃ生きられない」
「そうかもしれない…他人の価値観に虐げられてきた私ですもの…他人には期待しないわ」
「独りぼっちになっちゃダメだよ…そんな生き方が貴女の幸せだったの…?」
「幸せという価値観だって人それぞれよ。私の幸せは罪深いわ…それでも背負う覚悟はあるの」
きっと自分の幸せは誰からも否定され、ワルプルギスの夜に挑み続けたように敗北し続ける。
それが分かっていても止まらない者、それが魔法少女として生きた暁美ほむらの在り方。
「私ね…きっと出口のない迷路に迷い込んでる。それでもその道を進むのは…願いがあるから」
「そんなのダメ…それだとほむらちゃんが破滅しちゃう!やり直そう…過ちを認めたらいい!」
「それを認めた瞬間…私は破滅するの。だって私の願いは今までの道徳観では得られないもの」
自分の願いを諦めるような女だったら魔法少女としての暁美ほむらなど存在しない。
間違っていても突き進み、破滅しか残らなくても望んだ願いのために命を使い果たす者達。
それこそが魔法少女であり、悪魔となろうと魔法少女としての在り方をほむらは体現する者。
「えっ……?」
近寄ってきたほむらが優しくまどかの両肩を掴んだ後、懺悔をするような顔つきで口を開く。
「私の言葉は届かなくてもいい…否定されたっていい…それでもお願い…どうか私を行かせて」
アダムとエヴァの時代から流れ続ける男女の血潮。
その中にもリリスの呪いは宿り続け、同じ女達に伝染していく。
愛の神秘に取り憑かれた者達は迷い込むだろう、それが迷い続ける恋のラビリンスとなる。
あまりにも業が深い在り方を体現出来る生命、それが人間の生き方なのだろう。
「私はずっとシーソーゲームを続けても構わない…それでもお願い、私達の幸せを守らせて」
愛する恋人と価値観がすれ違ってもいい、すれ違いなら何百回でも繰り返してこれた。
繰り返せば繰り返す程、言葉も思いも通じなくなっていく。
それでも自己犠牲ばかりを貫き通した自己完結の道があった。
それを否定するのは魔法少女としての暁美ほむらの否定であり、悪魔ほむらはそれを認めない。
悪魔になってでも世界のルールに反逆し、目の前の鹿目まどかを取り戻せた道に悔いはない。
「道が無いなら自分で作る…それが私の在り方よ。たとえ破滅しようと…後悔なんてないわ」
方向性は違っても暁美ほむらもまた人修羅と同じく自己犠牲を示す愛の道を貫く者。
愛する人を残す道になろうとも、彼女は世界の男女の在り方に死をもたらす道を行くだろう。
その日以降、
彼女はクリフォトに再び戻り、大魔王と共に女性同士の恋愛が実る世界を築き上げようとする。
鴉の羽があしらわれた紫色のドレスを纏う彼女が己のクリフォト城の玉座に座り込む。
後ろには半月と足りない半分を無理やり機械を詰め込んで形作った満月が表現された巨大絵画。
玉座に座り込んで片足を組んだ彼女が左腕を持ち上げていき、袖からトカゲの使い魔が現れる。
貫かれたトカゲはほむらの血で深紅に染まっており、その形を変化させる。
大きなグリーフシードのような形となり、その中にアンティーク受話器を生み出すのだ。
「……あなたは危険と責任を引き受けられる?」
受話器の向こう側に話しかけると、複数の暁美ほむらの声が響いてくる。
「……この世の呪いと戦える?」
複数の暁美ほむらの声が何と言ったのかは分からないが、本物のほむらは満足げな表情。
「…私から独立した私達、まどか達を支えてあげてね。たとえ私が死んでも…貫き通しなさい」
それだけを言い残した後、受話器の姿から元に戻った真紅のトカゲがドレス内に戻っていく。
既にほむらは帰れない道を行く覚悟を決めた者であり、ルシファーと共に心中する望みを宿す。
命を懸けてでも自分の望みであるコトワリを世界に敷き、破滅しようと願いを貫くのだろう。
蛇は生命を象徴する信仰であり、蛇はオオトカゲとイグアナの共通先祖から進化した爬虫類。
トカゲを表す悪魔ほむらもまた大魔王と同じく己の生命を体現する我儘を押し通せる蛇。
そんな彼女もまた邪悪な三位一体を構築する獣であり、
「私の道は我儘の道…何が正しいかじゃない、自分を体現する覚悟よ。さぁ…始めましょう」
――今宵の夢の幕開けをね。
ミスチルの古い歌を聞いてたら思いついたので描きました。
ワルプルギスの廻天のPV動画に出てる魔法少女姿のほむらちゃんは偽物だと考えるとやっぱしっくりくる気がする。