人修羅×まどマギ まどマギにメガテン足して世界再構築 作:チャーシュー麺愉悦部
2010年に死去したアメリカの有名な歴史家はこう告げる。
反抗的な市民は問題ではありません。
問題なのは世界中の人々が指導者の指示に従ってしまうこと。
その従順さが原因で何百万人もの人々が殺されていることです。
問題は世界中の人々が貧困や飢餓や愚民化、戦争や残虐行為に直面しても従順であること。
軽犯罪者で刑務所が溢れ返る一方で凶悪犯罪者が国の指導者になっている現実。
にも関わらず、それでも世界中の人々が従順であり続けていることです。
彼が残した言葉の光景が神浜でも起こってしまい、魔法少女達は愚民から虐待されてしまう。
治安維持法となる政令によって魔法少女達の指導者まで犯罪者として強制収容所行き。
反抗的な市民を痛めつけたのは外国資本政府を自国の代表政府だと信じ込んでいる愚か者達。
彼らの従順さが犯罪国家の嘘に気が付いて反抗した少女達を地獄に落す。
その光景こそまさに第二次大戦時代の光景であり、地獄への道は無知な善意で舗装されていた。
……………。
「やちよやみふゆ…それにひなの達は…本当に連れ戻せないのか!?」
必死の形相を浮かべながらクーフーリンの執務机に両手を叩きつけるのは雪野かなえの姿。
隣にいるメルも痛めつけられた者であるが、彼女の回復魔法で魔法少女達の傷は癒えている。
それでも心の傷まで癒えるはずもなく、無力な自分達に絶望しながら涙目になっているのだ。
「弁護士達の話では難しいそうだ…今の日本は戦時下だ…戒厳令下である以上、独裁状態だ…」
「だったら…あたしがやちよ達を連れ戻す!彼女達は何処の刑務所に収監されてる!?」
「ただの刑務所なんかじゃない…日本が秘密裏に用意していたという強制収容所なんだぞ…」
「その…強制収容所っていうのは…どんな刑務所なの…?」
「戦争時における敵性外国人や反政府主義者を強制的に収容する施設…通常の刑務所じゃない」
現在あるもので有名なものとしてはグァンタナモ基地や、中国の新疆ウイグル再教育キャンプ。
他には北朝鮮の罪人強制収容所も有名であり、再教育という名の拷問施設だと言ってくる。
その中で生き残れる者など僅かであり、殆どの者達は命を落とすと苦しそうに伝えるのだ。
それを聞かされたかなえとメルの両膝が崩れてしまい、かなえは拳を地面に叩きつける。
「あの時あたしも18歳以上だと手を上げた…それでも警官はあたしを高校生だと認識した…」
「無理もない…お前は16歳の姿から変われない悪魔な上で…女子高生服まで着てたんだぞ…」
「やちよ達はあたしの人生を救ってくれた恩人なのに…助けられずにいる…悔しいんだ…!!」
うつぶせ状態のまま拳を叩きつけることしか出来ない者のためにクーフーリンが立ち上がる。
涙をポロポロ零すかなえとメルの肩を優しく掴んだ後、こう言ってくれるのだ。
「安心しろ…尚紀が守ろうとした魔法少女達を殺させはせん。不快だが連中の流儀に合わせる」
「えっ……?どういう意味…?」
「奴らは金で国すら売れる拝金主義者だ…ならば賄賂が有効だ。身代金を払おうじゃないか…」
「そ…そこまでの事をしてくれるんですか…?ボク達の人生を守るために…?」
「それが尚紀の意思だ。強制収容所職員には入管の鬼畜職員だった者も多い…殺させはせん」
日本の入国管理局職員は鬼畜と評判であり、捕らえた外国人がいつ自殺するかで賭け事をする。
そんな職場にいた連中から拷問され、その果てに自殺する末路になどさせないと言うのだ。
それを聞かされたかなえとメルの涙が嬉し涙になっていき、クーフーリンに抱き着いてくる。
「ありがとう…こんなあたしなんかの為に尽くしてくれて…グスッ…本当にありがとう…!」
「ヒック…エッグ!ボク…悪魔になれて良かった…尚紀さんや槍一郎さん達と出会えたから!」
「これから厳しい時代になる…その為の備蓄を尚紀は用意していた。これを魔法少女に伝えろ」
尚紀の屋敷から去っていくかなえ達を見送ってくれるのはクーフーリンとタルト達。
これから先が怖くて堪らない造魔は横に振りむき、魔法少女達の先について聞いてきたようだ。
「戒厳令下である以上、軍部の独裁状態だ。軍法による統治が行われるため刑事も民事もない」
「国に逆らった時点でその場で射殺されても不思議じゃない国家状態ということですね…」
「警察や公安は昔の秘密警察としての権限を与えられ、反政府主義者を根こそぎ逮捕出来る…」
「ワクチンを打たない魔法少女達は即座に通報され…政治警察に連行されてしまう…」
「こんな状態で子供が抵抗を続けるのは不可能…尚紀達が世界を変えるまで隠棲するしかない」
「そのために屋敷の地下に大量の水と食糧と日用品、非常発電用ガソリンがあったんですね…」
「この未来を予期していた尚紀が前もって用意してくれたんだ…ここが最後の駆け込み寺だな」
「誰が屋敷に攻めてこようと私とメイド達が相手をします!尚紀の意思を果たすために…」
暗雲立ち込める空を見上げるクーフーリン達には先の悲劇が分かっている。
これから先、多くの魔法少女達が犠牲となっていき、尚紀の屋敷が最後の砦になるのであった。
――――――――――――――――――――――――――――――――
あの事件以来、常盤ななかが塞ぎ込んでしまったせいで真実を伝える啓蒙活動は頓挫する。
かつての長達や後輩の面倒見がいい梓みふゆまで失ったせいで少女達は精神的支柱を失う。
その事件は瞬く間に神浜の魔法少女社会に広がっていき、絶望していくのだ。
それだけでなく、ついにワクチンによる病魔被害が神浜魔法少女達を襲う時が来る。
「ヒィィィィーーーーッッ!!?」
大東区の団地街で暮らす新入り魔法少女の一家では悲劇が起きている。
ワクチン接種で自己免疫疾患を患い、重い病魔のせいで仕事も失った両親が魔物化するのだ。
覚醒者となった父親はラクシャーサとなり、母親の方はカーリーの同族のヤクシニーと化す。
【ダーキニー】
日本においては人間の内臓を食すことを好む凶悪な夜叉であり、カーリーの眷属。
大黒天よって解脱させられ改心し、クンダリニ・ヨガの女神として神格化されたという。
しかしこのダーキニーは解脱する前の人食いダーキニーであった。
「ムカつくねぇ…国も職場もムカつくよ…アタシらから多額の税金を奪い…薄給で働かせる!」
「そんな連中は全員皆殺しだぁ!!ヒャーハッハッハァ!!」
複数の人間の頭部をイメージさせる冠を被るダーキニーがラクシャーサと共に剣を構える。
剣が向けられるのは腰を抜かして座り込み、震えるばかりの新入り魔法少女の姿なのだ。
「なんで…?どうしてお父さんとお母さんが…悪魔になっちゃうのよぉ!!?」
「手始めにそこの魔法少女から殺してやろうかぁ…美味そうな内臓と魂をしてるようだしぃ…」
「先に魂から喰っとけよ。魔法少女の体が円環に導かれちまうからなぁ」
「うるさいねぇ、それぐらい分かってるって」
双剣を交差して構えたダーキニーが迫ってくる。
パニック状態の新入り魔法少女は変身して抗うことも忘れながらこう叫んでしまう。
「みかげ…やっぱりアタシらは正しかった…悪魔なんて……信じるべきじゃないんだぁ!!」
そう叫んだ後、その首は跳ね落ちている。
転がった死体の左手を剣で切り落とし、左手ごとソウルジェム指輪を喰らっていく。
その後は団地街の美味そうな獲物も悠々と殺そうとしたようだが八雲姉妹に見つかってしまう。
姉妹達の活躍によって二体の悪魔を仕留めたようだが他にも大勢の犠牲者が生まれていく。
「ぐっ……うぅ!!体が…熱い…眩暈が…酷くなる……!!」
「なんなの…コレ…?ワクチンを打ったはずよ…どうしてこんなに…体が苦しいの…!?」
「だ…大丈夫なの…?ただでさえ恐ろしい世の中なんだから…無理しないでいいよ…?」
常盤ななかと袂を分かつ事になった新入り魔法少女達のメンバーの体に異変が生じていく。
彼女達はワクチン接種会場にいた少女達であり、体の変化に戸惑ってしまう。
既に彼女達の体はワクチンのせいで不妊化されており、子供を産めない体にされている。
その上で蟲毒の丸薬成分が感情を支配していき、飢える感情が膨大なMAGを練り上げてしまう。
そんな魔法少女達の体に取り憑くのは魔界から流れてくる女悪魔達の悪霊。
キュウベぇに魂を抜かれた抜け殻の体に入り込み、その肉体を媒介にした覚醒者と化すのだ。
「「あ……ら……?」」
体が突然内側から膨張しながら肥大化する仲間達を見た新入り魔法少女達が悲鳴を上げていく。
<<ヒィィィィーーーーッッ!!?>>
何が起きてるかも分からない魔法少女の前で膨れ上がった肉塊が悪魔の形に変化していくのだ。
完成された悪魔の手にはソウルジェムが持たれており、肉体を奪った悪魔が食べてしまう。
「クゥゥゥゥ!!若い女の魂の味は格別だねぇ!おまけに若い体のお陰で肌が若返ったよ!」
「ほんとよねぇ♪私達のような女悪魔が取り憑く先を選ぶなら…魔法少女の体がいいわ♪」
【マナナンガル】
フィリピンのシキホル島に伝わる魔女。
上半身と下半身を切り離し、背中に生やした蝙蝠の翼で飛び、人間を襲って吸血するという。
【ヴィーヴル】
フランスに伝わる蛇のような体と蝙蝠のような翼を持ち、ワイアームに似た人型ドラゴン。
種族すべてが牝であり、額に美しいガーネットをはめ込んだ女性の姿で現れるという。
地底や城跡などに住み着き財宝を隠し持っていると言われ、入り込む人間を襲う女悪魔だった。
「まだ食い足りないねぇ…ちょうど若い魔法少女達がいてくれるんだ!エキスを吸わなきゃ!」
裸の女の体をしてるが上半身と下半身が別々に動くマナナンガルが一気に襲い掛かる。
「ギャァァァァァーーッッ!!?」
顔半分が鱗で覆われたマナナンガルの口から長い舌が伸び、拘束した魔法少女の口に入れ込む。
体の内臓を内側から吸い尽くされる魔法少女の見た目がシワシワの風船のようになっていく。
「ヒィィィィーーーーッッ!!」
逃げ出す他の魔法少女の頭上から下りてきたのは体の半分が竜人の姿をした女悪魔。
金髪をした女性と黒髪をした竜人の体がドッキングした見た目のヴィーヴルが襲い掛かる。
赤い翼膜を持つ右腕が頭部を掴み、ドラゴンの剛力で握り潰してしまう。
死んだ魔法少女達のソウルジェムを奪って食べた彼女達は次の獲物を求めて飛び立つのだ。
覚醒者になった家族や魔法少女達から襲われるデビルバスターズはついに崩壊していく。
最後の生き残りが傷ついた体のまま向かう先とは魔法少女の長である常盤ななかの家である。
魔法少女の魔力を感じ取ったななかは布団から飛び起き、寝間着姿で深夜の中庭に飛び出す。
「なんて酷い傷なんですか……しっかりしてください!!」
懸命に回復魔法をかけるのだが既に失血死寸前であり、最後の言葉を伝えようとする。
「デビルバスターズはもう…終わりです…私達は悪魔を侮ってた…貴女達は…死なないで…」
それだけを言い残した最後の生き残りが力尽き、円環に導かれる光だけを残す。
新入り魔法少女達を守れなかった無力な長としての自分に絶望していく常盤ななかが叫ぶ。
「ごめんなさい……誰も守れない無能な長で……ごめんなさいぃぃぃぃ……ッッ!!」
誰も守れない人修羅と同じ苦しみを抱えてしまった彼女は誰もいない中庭で泣き叫ぶ。
残すところは古株の魔法少女達だけであるのだが、その者達にも既に魔の手が迫っている。
「仕方なかった…仕方なかった…だってワクチンを打たない人はオーディションに行けない…」
深夜の暗い自室のベットの上で三角座りしながら顔を埋めてるのは牧野郁美である。
アイドルを目指す魔法少女だがオーディション条件に接種証明が必要であり、接種したようだ。
「くみ…諦めたくない…こんな地獄の世の中になっても…アイドルになる夢を捨てたくない…」
彼女はもう直ぐ二十歳になる頃であり、年齢的に十代のライバル達と比べられるのは辛い立場。
このままオバサンになっていき、いい歳こいてアイドルになるオバサンだと言われたくない。
その焦りが早まった行動を生んでしまい、周りが止めてもワクチンを接種したのだろう。
「だけどパパもママもワクチンを接種してから体が壊れてる…くみも…壊れちゃうの…?」
自己免疫疾患になった両親の介護生活となり、アイドルの夢を捨てるしかなくなる。
重い副反応によって彼女も高熱が収まらず、焦りの気持ちが心の中で激しい飢えを生む。
「やだ…それだけは嫌…くみのために願いを使って魔法少女になって死んだ…ゆみの為にも…」
知らない間に体の中に膨大なMAGが生まれており、それを狙う悪魔の霊が取り憑く時がくる。
「えっ……?」
何かが体に入り込んだ違和感を感じた瞬間、信じられない程の激痛が体を襲う。
堪らずベットから転がり落ちた彼女が悶え苦しみながら呻き声を上げていく。
「ぐっ…あぁぁぁ!!くみの中で何かが暴れてる…くみが…くみで…無くなっちゃう…っ!!」
牧野郁美の肉体を媒介にした悪魔の霊が彼女の肉体を自分好みに変質させていく。
女悪魔の見た目と近かった郁美の両目が白人の青色になり、髪の色も金髪化していく。
肌の色もコーカソイドになっていき、牧野郁美であるはずなのに外国人の姿に成り果てる。
まるで白人化した尚紀のような現象が起きていく中、彼女の家に向かってくる存在がいるのだ。
「ごめんね…父さん…母さん…家出同然のまま出て行って…それでも…迷惑かけられない…」
尚紀がプレゼントしてくれたキャスケット帽を目深く被り、マスクを身に着けるのは観鳥令。
背負った大きな鞄には私物が詰められており、尚紀の屋敷に逃げ込もうとしている。
彼女は現実でもネットでも反政府活動をしてきた者としてマークされており、逃げ出したのだ。
「観鳥さんが行方不明扱いになれば両親のマークも外れてくれる…そう信じたい…けど…」
共謀罪の成立によって無関係な両親ですら政治犯として逮捕されかねない。
それが恐ろしくて堪らない彼女は不安で体を震えさせながらも親しい魔法少女の元に行く。
東の者である自分でさえ懇意にしてくれた郁美も誘おうとしていたようだが異変に気が付く。
「この叫び声はまさか……牧野チャン!?」
家の前で郁美の叫び声が聞こえた令は深夜であっても玄関の呼び鈴を鳴らし続ける。
それでも郁美の両親はワクチン接種の後遺症で寝たきりとなり、娘の元に向かう力もない。
「仕方がないね…空き巣同然の行動だけど…背に腹は代えられない!!」
家の窓を破って部屋に侵入するために後ろに下がった後、一気に跳躍する。
屋根の上に飛び移る頃には叫び声は収まっており、暗い部屋の中で陽炎めいた人影が動く。
「くみは……くみは……くみって……誰……?」
記憶障害が起きている彼女が大きな鏡で自分の姿を確認してみる。
自分が知っている存在は映っておらず、若くて可愛い白人美少女の姿が映っているのだ。
「違う…私は魔法少女なんかじゃない…人間でさえない…私は…もっと大きな存在……」
<<アイドルになりたいんでしょ?だったらさ、人々から崇拝される女神様になろうよ♪>>
自分の内側に宿った悪魔から念話が響き渡った時、自分のアイデンティティが壊れてしまう。
「私は神様のように愛されるアイドル…うん、そうだよ!私は神様で偶像なアイドルなの♪」
魔法少女からの脱却を求めた郁美が左手に持つソウルジェムをあろうことか飲み込んでしまう。
悪魔化した肉体の中でソウルジェムは砕け散り、牧野郁美だった魂が悪魔の肉体に宿っていく。
鏡の前でカワイイポーズをとっていた時、助けに来た女悪魔の声が聞こえてくる。
「牧野チャン!!」
「へっ?」
部屋の窓の向こう側から令が叫んでいるのだが、覗き魔と勘違いされた事で叫ばれてしまう。
「キャァァァァーーッッ!?この変態女ーーッッ!!」
「えっ…?うわぁぁぁぁぁぁぁーーーーッッ!!?」
投げつけられたヘアブラシが窓を砕き、令の顔に命中したことで屋根から転げ落ちていく。
地面で倒れ込みながら痛がっていると空中に浮いた牧野郁美だった存在が舞い降りてくる。
彼女の姿が悪魔変身のように変化していき、北欧の民族衣装風の姿に変化していく。
その姿は赤ずきんちゃんのようであり、左手の籠には黄金の林檎が沢山詰まっているのだ。
「コラーッ!着替え中の私を覗き見しようだなんて悪い子ね!ロキみたいになっちゃうぞ!!」
「え…ええと…牧野チャン…なの…かな……?」
「牧野?ちがうちがう♪私はイズン…黄金の林檎の管理者であり、永遠の若さを与える神よ♪」
呆然とした表情でマスクと帽子を外す令の目の前でアイドルのようなダンスを始めていく。
ステップを刻み、片腕を振って踊っていたが恥ずかしくなったのか腕をプラプラさせてくる。
はにかんだ笑みや声は牧野郁美であるが、感じさせてくる魔力は完全に悪魔であった。
【イズン】
北欧神話のアース神族の女神であり、詩の神ブラギの妻として黄金の林檎の管理人でもある。
若くしなやかで子供のように無邪気に歌い、世界に満ちた苦痛や争いに悩まされない。
絶世の美女として知られるフレイヤと並び、アースガルズで最も美しい女神と評される。
一部を除き神とて不老不死ではない北欧神話の世界において重要な役割をもつ。
イズンの黄金の林檎によって北欧の神々は不老不死となる、アムリタの如き林檎の力であった。
「イズンだって…?ち、違うよ!!牧野チャンは牧野郁美なんだ!自分が分からないの!?」
「牧野郁美って…別人の名前で呼ばれても…ピンとこないかな~?私はイズンだし?」
「悪魔に体を乗っ取られた…?こんな悪魔変身の方法もあるのかもしれない…思い出して!!」
「貴女も私と同じ悪魔のようだけど…なんだか死神の匂いがするし、関わりたくないかも~」
イズンの両肩を掴みながら血相変えてガクガク揺すってくるものだから女神も困り顔になる。
そんな時、夜空から舞い降りてきた鴉を見た事でイズンの表情が明るくなっていく。
「イズンよ、そなたもこちらに召喚されたか。オーディン様が御待ちだぞ」
「モリーアンじゃない!良かった~知ってる神が来てくれて。招集に応じる為に来ちゃった♪」
現れた鴉から不気味な黒煙が噴き上がり、黒煙が晴れると立っていたのは黒騎士女性の姿。
【モリーアン】
バイブ・カハ三姉妹の一人であり、モリガンとも呼ばれる死と戦いの女神。
背が高く膝まである金髪ロングであり、青い肌の上は漆黒の鎧を纏い、美しい女戦士である。
破壊と情欲を司り、クーフーリンに想いを寄せて近づいたが拒まれたので死の呪いをかける。
後のアーサー王伝説において魔女モルガン・ル・フェイのモデルになったともされた。
「私がここで召喚されるって、よく分かったね?」
「その…偶々見つけたのだ。ええと…気になる奴を見つけてな…つい長居してしまったから…」
「え~?モリーアンが気になる人ってまさか…ウフフフフ♪」
「それ以上は詮索しないでくれ…」
「勝手に話を進めないで!返してよ…牧野チャンを返して!観鳥さんが知ってる人を返して!」
今にも泣きそうな表情で叫んでくる令を見つめるイズンであるが、目を瞑って首を横に振る。
「残念だけど、それは出来ないよ。だって彼女はね…偶像になりたい女の子だったんだから」
「確かに牧野チャンはアイドルになりたかった…だからって…女神になりたかったわけじゃ…」
「彼女は私を受け入れてくれた、だから私はイズンなの。これから私は神々の戦争に行くの」
「そんなの勝手だ!この家には牧野チャンの家族もいる…彼女は両親の宝なんだ…返せ!!」
「あの子は両親の介護人生よりもアイドルになる道を選んだ子…本当に薄情な女の子だよね?」
「それは…その……」
郁美の切実な気持ちがそれ程追い詰められていたのを知らなかった令も言葉に詰まってしまう。
それでも両親にとって宝物だった郁美のためにイズンは最後の慈悲を与えてくれるのだ。
「…モリーアン、少しだけ待ってて。この体をくれた女の子のために…最後の親孝行をさせて」
「……手短にな」
少しした後、家の中に侵入していたイズンが戻ってくる。
「病魔に侵されたこの家の人達に私の林檎を食べさせた後に眠らせたわ。病魔も治ると思う」
「ワクチン後遺症すら治療出来る程の力を持ってる女神だったなんて…信じられない…」
「それでもね、今回だけだよ?不老不死の力は有限なの…林檎の力が切れたら病魔も戻る」
「その有効期限はどれぐらいなの…?」
「あの人達が寿命で死ぬ分ぐらいは持つと思う。だから安心してね」
漆黒のハイレグアーマーを纏うモリーアンの傍に行くイズンに対して膝が崩れてしまう令。
それでも仲が良かった郁美と離れ離れになるのが嫌なのか、涙を流しながら叫んでしまう。
「行かないで…牧野チャン!東の人間だった観鳥さんに優しくしてくれた…大切な人なんだ!」
「それだけ思ってくれる友人に恵まれていた幸福よりも…あの子は夢を選んだの。さようなら」
モリーアンの翼によってイズンが包み込まれた瞬間、二体の女神は消え去ってしまう。
残された白い羽が舞う中、令は悔しさのあまり地面を殴りつけてしまうようだ。
「こんな事になったのは全部…全部…外国資本の傀儡になった売国政府のせいだ…許せない!」
無力な自分に絶望するしかない者の姿も既に遠く、海を飛翔する女神達は欧米に向かっていく。
多神教連合と合流しようとするのだが、イズンは胸を抑え込んでしまう。
「私の体の鼓動が高まってるのはきっと…郁美の感情のせいね。なんだか…悪い事したかも…」
「その娘の霊質の相性がそなたと良かったために…引き寄せられたのだろうな。済んだ事だ」
「この体を私にくれた牧野郁美は何を選びたいの…?神々の世界のアイドル?それとも……」
自分の中に眠ったかつての魔法少女に問いかけても、返事は返ってきてくれない。
女神の中で眠りについた女は夢の世界でまどろみながら神々のアイドルになる夢を見ていた。
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社会的に追い詰められた神浜魔法少女達はかなえ達から伝えられた駆け込み寺に向かっていく。
家出同然で逃げ込む事になるため、彼女達の目には辛さのあまり涙が溢れ出す者が多い。
そんな女達を屋敷の執務室から見つめるクーフーリンは目を瞑りながら無念の気持ちを表す。
「何ゆえ魔法少女達が苦しめられるのだ…唯一神から苦しめられ…悪魔からも苦しめられる…」
今ではメイド長の役割を務めているタルトも控えており、彼の無念が伝わるのか顔を俯ける。
「社会の皆が助けてくれたら彼女達も泣かずに済んだのに…社会の皆が彼女達を虐げる…」
「そんな連中は偽善者共だ。人の為と書いて偽と読む偽善に酔いしれ、彼女達を泣かす者だ…」
「結局は自分達だけが可愛い連中ですね…自分達に害を成すならどんな相手でも虐げてくる…」
「奴らに知性を求めるなどムダだ…奴らは上が示す答えだけを信じ、多角的に物事を捉えない」
「臨床試験は出来てたか…どうして僅かな期間でワクチンが生まれたか…それすら考えない…」
「それを考える者には同調圧力を仕掛けてくる。デマを信じて恥ずかしくないの?とかな…」
「権威主義と前提主義…何より善悪二元論によって…人々は操り人形に成り果てるんですね…」
「腹が立つな…相手の劣等性を捏造してくるのは己の正しさの担保にしたい卑劣な擦り付けだ」
「それが正しいかどうか皆で集まって議論すら許されない社会空気を押し付けてくるんです…」
「違う意見のぶつかり合いは分断工作だと決めつけ、異論反論を潰す悪辣なレトリックだな…」
「その光景はさながら…批判をした身内信者を袋叩きにするカルト宗教団体の光景ですね…」
相手国の民衆を無知にする衆愚政策は軍事面でも有効だと認められている。
アメリカ国務省では
相手国のテレビ局に働きかけ、アメリカに都合のいい法律を後押しする番組制作を求めてくる。
下品なお笑い番組が最たる例であり、相手国民の知性破壊が最も有効とする軍事理論に基づく。
これによって日本国憲法と日本人を踏み潰す最悪な条約進行すら気にならないというわけだ。
「アメリカの投資家共が日本人を低能にし、魔法少女達はバラエティのように嘲笑われたのだ」
「笑いは仲のいい人達との間でしか成立しません…それ以外は全部虐めなんですよ…」
「自分が知らない情報は全て嘘のレッテルを貼りつけてくる…
ラベリング理論は逸脱行動の研究から生まれ、逸脱行動とは社会規範に反する行動。
ラベリング理論では逸脱行動は
従来の逸脱理論によれば犯罪行為を行なったからその人は犯罪者となり、罰せられると考える。
しかしラベリング理論では、ある人を犯罪者として扱い、罰するという事が犯罪者を作り出す。
それこそが中世魔女狩りの歴史であり、神浜魔法少女達を犯罪者にしたのは愚民のせいなのだ。
平凡な女の子が些細な事で前科者にされ、前科者というラベルを貼られたせいで人生が終わる。
ラベリング理論は犯罪だと判断することで犯罪を犯した奴として扱うせいで二次的被害を生む。
「終末の世は…腐敗を極めた権力に操られるだけのカリプス達が生むのですね…」
自覚のない無知な民衆によって行なわれる国家の在り方、それが衆愚政治。
判断力が不十分な市民が意思決定に参加することで議論が停滞し、扇動者の詭弁に誘導される。
合理的ではない政策執行、知的訓練を受けた
刹那的で深い考えに基づかない怒りや恐怖、嫉妬、見せかけの正しさや大義、利己的な欲求。
様々な誘引に導かれて意思決定を行う事で、共同体全体が不利益を被る政治状況である。
「
「欧州最大の愚行と呼ばれた十字軍遠征も愚かな民意から始まりました…同じ状況ですね…」
「浅慮な愚民の大声を利用する売国奴はそれに迎合し…上手にワクチン接種をやらせたわけだ」
「それに気が付いた神浜魔法少女達に与える残酷な仕打ち…私は悔しさで憤慨しそうです!!」
「言い負かした方が勝ちという風潮のせいだ…
「このような現実を…日本の知識階級連中はどうして放置するのです!?バカげてます!!」
「世界の実態を追及する学識者とて…拝金主義者だったということさ…」
魔法少女でありながら科学者だった都ひなのは科学の本分についてこう語る。
現象の背後にある因果関係を探り、普遍法則を示すこと。
それによって将来起こり得る事態を予測し、啓蒙することなのだと魔法少女達に語っている。
彼女の言葉があったから魔法少女達は違法集会を開いてでも啓蒙活動を行ったのだろう。
そんな都ひなのに続いてくれる偉そうな肩書だけの知識人はいたか?いなかったのだ。
「このままでは日本はお終いだ…それを感じている魔法少女はいつ絶望死してもおかしくない」
「彼女達を受け入れた後のメンタルケアが重要ですね…」
「ネコマタ達もこちらに呼んでおく。もしもの時には彼女達の穢れを吸い出せるだろう…」
尚紀の代理人を懸命に勤めてくれるクーフーリンに一礼した後、タルトは魔法少女の元に行く。
再び深夜の景色に視線を向ける彼が大きな溜息をついた後、絶望の言葉を紡ぐのだ。
「文化も人間も腐り果てた…そんな世界でも…お前は人間の光を信じられるか…尚紀…?」
それは過去のことだと安心してはいけない。
世の中はこんなにもすり替えられていき、魔法少女達は絶望の坩堝に飲まれるのであった。
欲求に負け、また悪魔化魔法少女を生んでしまった(汗)
イズンちゃんはメガテン悪魔の中でも際立ってあざとい可愛さだからしゃーないんや…僕に人妻推しを与えた偉大な存在なんや…(汗)
ももみた百合カップルも悪魔化してるし、令くみ百合カップルも悪魔化すればバランスもいい(汗)