人修羅×まどマギ まどマギにメガテン足して世界再構築 作:チャーシュー麺愉悦部
謀略渦巻くバベルの塔の最上部に存在するトライアングルキャッスルこそがケテル城。
至高天の柱をイメージさせる頂上部位であり、峻厳の城、均衡の城、慈悲の城で構成される。
三つの城は巨大城壁で連結されており、内部は移動通路だけでなく要塞のような内部構造だ。
いずれ宇宙軍時代となり、宇宙を航行する船舶時代となれば宇宙港としても機能するだろう。
そんな巨大城壁内部を歩いていくのは人修羅の姿とお供を務める参謀補佐の姿である。
参謀補佐を務める十七夜の顔は酷く青ざめており、峻厳の城の恐ろしさに震えていく。
峻厳の城を支配する存在こそがバアルであり、今日も人修羅は凶宴に付き合わされたようだ。
「はぁっ…はぁ…くっ…ふっ、ふふ…なんという腐臭だ…。峻厳の城だけは耐えられない…」
自分の在り方に峻厳を貫く凶神の城の恐ろしさこそ、女として身の毛のよだつ程の地獄。
性の凶宴を司るバアル城のインテリアは全てバラバラにされた子供達の死骸で作られている。
美少女も美男子も関係なく建造物や彫刻を死体で飾り立て、悪趣味改築を施した魔境なのだ。
何千人の子供達が犯され、殺され、バラバラにされて飾り立てられてるのか分からない。
そんな場所に行くお供をする必要はないと人修羅は言っても、彼女はついてくるのだろう。
「……うっ、うぅ……ッッ!!」
立ち止まった人修羅がぐらついていき、倒れそうになる彼の体を十七夜が抱き留めてくれる。
「もうやめてくれ…あんな地獄の凶宴に付き合わされ続けたら…体も心も壊れてしまう!!」
「ダメだ…今はまだ…慎重に事を進めなければならない時期だ…不審に思われるわけには…」
「ならばせめて…地獄の付き合いは影武者にやらせることは出来ないのか!?」
「これは俺が始めた戦い…俺が背負わなければならない業なんだ…俺に背負わせろ…いいな?」
「嘉嶋さんは自分に厳し過ぎる…どうか…自分を労わってくれ……」
彼の腕を肩に乗せた十七夜が急いで慈悲の城に連れ帰ろうとしていく。
早歩きで急ぐ彼女が思い出してしまうのは地獄の凶宴の光景である。
「ハハハ!!もっと叫べ!喚け!音楽隊の音色に負けないぐらいの絶叫を上げ続けろぉ!!」
峻厳の城の奥にある宴会場では狂気の宴が行われていく。
四肢切断された魔法少女を肉便器にする雄悪魔、バラバラにした肉塊に陰茎を突っ込む雄悪魔。
そんな地獄のサバト光景を楽しむ上座にいるのは肉料理を食べさせられている人修羅である。
「こ……ろ……し……て……」
円卓席の中央で拘束された肉塊魔法少女はまだ生きており、人肉しゃぶしゃぶにされている。
中国や朝鮮の
豪快な人肉料理を好まない人修羅のために薄い肉を自分で切らせて喰わせられているのだろう。
それなのに眉一つ動かさない覚悟で青龍刀を握り、魔法少女の肉を刻んでいき、食べていく。
<<ギャァァァァァーーッッ!!!>>
切られる度に絶叫を上げるのはバアルが彼女のソウルジェムを操り、痛覚を与えるからだろう。
人修羅は目の前の凶神に監視されており、少しでもおかしな態度を見せれば容赦されないのだ。
「強者は弱者を喰らう者か…自然なことだな。神は人を喰い…人は動物を喰い…動物も然りだ」
「その通りだ。この超自然な在り方を認める思想こそがヨスガであり、我が求めたコトワリだ」
「俺の力も多くの悪魔や魔法少女を屠って手に入れたもの…自然を否定するのは己の否定だな」
「ヨスガの人修羅よ、大いに宴を楽しんでくれ。そうでなければ弱者の命が無駄になるからな」
「そうしよう。貴様ら!もっと弱者を犯せ!殺せ!俺を満足させるまで痛めつけるがいい!!」
<<サタン様万歳!!バアル様万歳!!>>
立ち上がった人修羅はソウルジェムが入った盃を掲げながら狂気の悪魔達を激励してくれる。
そんな彼の姿を沈黙しながら見守るバアルであったが、黄金牛の兜内で不気味な笑みを見せる。
ソウルジェムごと盃の酒を飲み干し、弱者を喰らうヨスガの人修羅を体現するのだろう。
傍に控えている十七夜の体は震え抜き、気が遠くなるのを必死に抑え込むだけで精一杯だった。
――――――――――――――――――――――――――――――――
慈悲の城に入った十七夜達が空中庭園の如き庭の回廊を超えていき、エレベーターに乗り込む。
城主の執務室の隣に用意された豪華な寝室に運ばれていき、アンティークソファーに座らせる。
暖炉と蝋燭の光で彩られた美しい寝室には山羊頭も飾られており、青白い水槽には魚が泳ぐ。
これらは
黄道十二星座の山羊座を象徴する怪物、カプリコルヌスとなったようだ。
「傍から見れば俺はもう…怪物だろうな。逆五芒星を象徴する山羊の怪物そのものだ…」
「そ…そんなことなど……」
「俺の傍に控えてきた女として正直に言ってくれ…俺を恐ろしいと思ったはずだろ…?」
そう問われた十七夜は迷う表情を浮かべながらも重い沈黙のまま頷いてくれる。
「俺はもう…ルシファーなんだろうな。本当の俺は…こんな存在になりたかったわけじゃない」
座ったまま左手に生み出したのは将門の刀であり、石突を地面に置き、刀の頭に両手を置く。
遠い表情をしながら見つめるのは赤き旗に描かれた双頭の竜であり、昔話を語ってくれる。
「人間だった俺がボルテクス界で彷徨い、悪魔として生きていた頃…赤い狩人と出会ったよ…」
「赤い狩人とは…誰なのだ…?」
「その男はデビルハンターであり…悪魔の俺を狩る者として…俺の前に現れた…」
――会えてうれしいぜ、少年。おまえもそう思うだろ?
――10分だ、その間に考えな。カンオケかゴミバコか……自分の行き先をな!
……………。
マントラ軍本営ビルの前で激戦を繰り広げる人修羅達であったが、赤き狩人は余裕の表情。
「くっ…くそ……強過ぎる……お前は…何なんだよ……?」
片膝をつきながらもデビルハンターを睨めるだけのガッツはある悪魔だと男は認めてくれる。
「悪くない…気に入ったぜ。見た目は悪魔だが…成程ね、完全な悪魔ってわけでもないらしい」
二丁拳銃を指で回転させながらホルスターに仕舞った後、名乗りを上げてくる。
「俺の名はダンテ、ちょっとした商売をしている。デビルハンターってやつをな」
「デビルハンターだと…?俺みたいな無名な悪魔を狩ったところで…名声にはならねーぞ…」
「ある老紳士の依頼でお前みたいな奴らを狩りに来たんだが……まぁいい」
背中に背負った魔剣リベリオンの柄を握った後、人修羅に目掛けて先端を掲げてくる。
「とりあえず今の勝負はチャラだ。ジジィの魂胆が気になる、調べてみる必要もありそうだ」
「……俺を生かしておいていいのか?デビルハンターなんだろ…?」
「まぁ…事と次第によっちゃ、もう一度会う事になるだろう。それまで精々生きてろよ」
掲げる大剣を揺らしながら人修羅を挑発する男が不敵な笑みを浮かべながらこう告げる。
「オマエを殺すのは俺かもしれないだろ?」
背中に剣を仕舞いながら後ろに振り向き、片手をゆっくり下ろしながら別れを告げる。
「デビルハンターのダンテ…キザったらしい奴だ。だけどあいつの戦い方は…カッコよかった」
……………。
「ボルテクス時代の嘉嶋さんを手玉にとれる程の男だったのか…ダンテと名乗った男の力は…」
「その後は紆余曲折を得て俺の仲魔となり…アイツの生い立ちを聞かせてもらえたんだ…」
デビルメイクライという便利屋をする男であるが、本業は悪魔を狩ることを生業とする男。
赤を基調としたロングコートを身に纏い、背負った巨大な剣リベリオンと二丁拳銃を操る狩人。
悪魔であるスパーダと人間の女性のエヴァとの間に生まれた半人半魔の宿命を持つ存在だ。
「いつだって余裕たっぷりで強敵だろうが挑発する姿勢を崩さない…キザったらしい男だった」
「そういう男は苦手だな…近寄りたくないタイプだ…」
「あいつのキザな態度は他人を遠ざけるためなんだ。それだけの悲劇を…あいつは経験した…」
ダンテの父親は魔界最強の剣士スパーダであり、自分だけで魔帝とその軍勢を相手にした悪魔。
魔界の悪魔にとっては裏切り者であり、その復讐心は彼の家族まで巻き込むことになるだろう。
ある日を境に行方不明になったスパーダの隙を突き、家族を虐殺しようとする。
妻のエヴァは子供達を匿うために犠牲となり、帰らぬ人となってしまう。
生き残ったダンテは悪魔への憎しみと悪魔の血が流れる自分への劣等感と共に生きていく。
復讐心だけで悪魔を狩っていた時、生き別れた兄であるバージルと出会い、思想を違える。
完全な悪魔になる道を選んだ兄と死闘を繰り返すうちに父親が何を残したかったのかに気づく。
スパーダは息子達に力だけでなく、誇り高き魂を継いでほしかったと気が付いたのだろう。
「あいつは親父の魂を継ぎ、悪魔と戦ってきたが…あいつも悪魔だ。大勢から呪われたんだ…」
悪魔は時と場所を選ばずにダンテに襲い掛かり、その過程で無関係な人々も巻き添えになる。
人々に不幸をもたらした災厄としてダンテの自己犠牲は呪われ、人々から排除されてきたのだ。
それを聞かされた女は俯いてしまい、ダンテの悲しみがどれ程深かったのか分かってしまう。
「ダンテの苦しみは東の魔法少女の苦しみだ…自分達がいくら人々を助けても…差別された…」
「そんな真似をしてくる連中なら憎むのが自然だ…それでもな、ダンテは人々を憎まなかった」
「どうしてそこまで優しくなれる!?自分達は許せなかった…差別した連中が許せなかった!」
「他人に期待せず、見返りを求めなかったからさ。
そう言われてしまったことで十七夜は己のエゴに気が付き、顔を俯けながら恥じてしまう。
「あいつの善行は見返りを求める企業ボランティアじゃない、親父の魂を継ぐ為の戦いだった」
人間を含む生物は押しなべて利己的であり、自己の成功率を他者よりも高めたい欲深き存在。
相互利他の精神で連帯を深めても、自分の取り分が増える事を期待する。
「共生の中の利己的な弱肉強食…周りに合わせる損に耐えるのは将来の自己利益のため…」
異世界転生英雄様がヒロインを助けたい本音とは、ヒロインをものにしてセックスしたい利益。
そんな薄汚れた価値観で人助けをしようものなら、他人がいうことをきかなければ癇癪を起す。
「ダンテはそんな薄汚れたエゴイストじゃない、悪者と罵られても戦えた親父の魂があるんだ」
「ダンテと呼ばれる男は…それ程の存在だったか。もしかして嘉嶋さんがなりたかったのは…」
「そうだ…俺はダンテのようになりたかった。だけどな…あの頃の俺の魂は…
ボルテクス界で知り合えた人達の命を守ろうと足掻いたのは皆と一緒に幸せになりたい気持ち。
そんな欲深さがあったせいで自分の献身が無駄だったと分かった時、彼もまた酷い癇癪を起す。
こんな理不尽な運命を敷いた唯一神を憎み、破壊の霊としてアマラ深界最奥まで堕ちたのだ。
「俺は力だけを求める存在に成り果てた…それでもダンテは…俺の背中を押してくれた…」
――お前の道を進め。
――人には勝手な事を言わせておけ。
「たとえ地獄の道になろうと突き進んでいいと言ってくれたダンテこそ…俺の目標だった…」
遠い世界に浸るように両目を瞑りながら顔を俯けていく。
眠りにつこうとしていると判断した十七夜はそっと部屋から出て行ってくれる。
扉が閉まる音も遠くなる程、かつてのダンテの姿を思っていく。
「俺な…アンタの背中を一生懸命追いかけたんだ…
アマラ深界で戦ったり、共に旅をする仲魔になってくれたり、多くの出来事を思い出す。
それを思い出す度に光の世界で輝くダンテの赤い背中がハッキリと見えてしまう。
ダンテの背中に辿り着きたいとボルテクス時代の頃から人修羅は駆け抜けてきた男。
それでも努力しても努力してもダンテの背中が遠くなっていく程の壁を感じていたのだろう。
「いつからかさ…アンタの背中を追いかけてたんじゃ辿り着けないって…思うようになったよ」
ダンテを追いかけるのではなく、人修羅は人修羅なりに自分の道を見つけて走っていく。
自分なりに力を求め、感じて、欲していく男になっていく。
自分に息づく無限の力、それに気がつこうとした瞬間、人生が変わってくれる。
目標へ向かうのではない、成功や成果を目指すのではない、外へ向かわず、内から動く。
「何かのために命があるんじゃない…命を表現するために世界がある…」
ダンテも命、人修羅も命、そこに差などありはしない。
あなた達は命、あなた達はそれぞれの力そのもの。
「目標でもない、成功や成果でもない、外に求めず、内に求めるもの…それこそが…」
――ダンテ…お前が求めた……
世界を救ってヒーローになる目標などいらない。
人々から褒めちぎられる程の成功や成果もいらない。
外に求めず、自分の魂を貫き通し、その結果を享受する、本物の強さを求めたい。
「えっ……?」
いつの間にか自分も光の世界に立っており、姿もボルテクス時代の頃になっている。
光の世界に視線を向ければ見渡す限りの地平線が広がっているのだ。
<<フッ……やっとここまで来てくれたか?少年……いや、尚紀?>>
懐かしい声が響き渡った瞬間、人修羅として生きた嘉嶋尚紀の目に涙が溢れ出す。
ゆっくりと横に振りむけば、そこにいたのは微笑んでくれている懐かしき目標の姿がある。
<<
「ダンテ……ダンテ……ダンテェェェェ……」
<<過去の無数の自分達がお前の中を今も一緒に生きている。それを忘れなければ戦えるさ>>
「俺……おれ……やっとここまで……来れた気がする……」
<<お前の道を進め、人には勝手な事を言わせておけ。
光の世界で消えていく赤きデビルハンターの姿。
たとえその姿を見失おうとも、人修羅の中で永遠に生き続けるだろう。
その魂を守り、その在り方を貫く道こそがダンテの道であり、人修羅の道にもなるのだ。
「いつか言ってたよな…まるで俺は兄貴のようだって。それでもいいさ…俺は悪者で在ろう」
人々から呪われる在り方しか出来なくとも、それでも剣を振るい続ける道こそがスパーダの道。
その道はダンテの道となり、いずれはバージルの道にもなり、そして人修羅の道にもなるのだ。
カッと両目が開いた人修羅の体から、かつてない程の力強き魂の輝きが放たれていく。
深碧に輝く魔力が背後に生み出す悪魔の影こそ、虐殺者として在った魔人バージルの影。
同じ虐殺者として生きてしまった人修羅であろうとも、バージルと同じ虐殺者になろうとも。
「俺達は自分を信じて戦い続けるんだ。誰の為でもなく、自分の為に戦い、結果を享受する…」
――それこそが
黙示録の赤き獣となった人修羅はついに赤き背中の横に辿り着き、赤き旗を纏う者となる。
彼の背中も赤くなり、いつか背中に続いてくれる人達に道を示せるよう、戦い抜く者となった。
――――――――――――――――――――――――――――――――
大魔王ルシファーが支配する均衡の城の玉座では城主となるルシファーが座っている。
人修羅が支配する慈悲の城の玉座と同じく明けの明星を表す巨大な飾りが玉座の後ろにある。
城主が何かを待っていた時、何者かの念話が聞こえてきたようだ。
<…奴の精神は既にボロボロだ。そろそろ赤い林檎の収穫時期だろう>
<フッ…ここまでよく持ち堪えたものだ。では…その体と精神を頂くとしよう>
彼の脳裏に聞こえてきたのは夫婦のように結束が固いバアル神モロクの念話である。
目を瞑った後、大魔王との融合現象が止まらない人修羅の精神にアクセスするのだろう。
魔法少女達のコネクト魔法の如き現象が起き、大魔王の精神体が人修羅の精神に送られる。
その姿は天女の姿をした藍家ひめなであり、羽衣を風で揺らしながらゆっくりと下りていく。
「ここが人修羅の精神世界…?クスッ♪心は未だボルテクス界に囚われてるようだね」
巨大な丸い球体で構築された砂漠の東京、それがかつてのボルテクス界。
その景色は未だ人修羅の心に焼き付いており、心象風景となっている。
球体世界の中央に在ったはずのカグツチの光は無く、混沌の闇しか残っていない。
人修羅が破壊したカグツチの破片が球体世界全土に突き刺さっており、崩壊した世界のようだ。
カグツチは崩壊し、宇宙卵のような球体は内側から砕けており、半分しか残っていない。
闇で覆い尽くされた景色であるが、突き刺さったカグツチの破片の群れが僅かな光を残すのだ。
崩れたビルディングを砂が埋め尽くし、僅かな光が街を照らす東京砂漠をひめなは飛んでいく。
「…地獄と天国の間の景色みたい。混沌と夜が支配する…
大魔王でさえ寒々しい気持ちにさせられる混沌世界を進むのは恐怖心を感じてしまう。
その深淵に呑み込まれたら最後、跡形も無くなる危険性があると考えてしまうのだ。
まるでミルトンが描いた失楽園の景色であり、そこに奇しくもルシファーが現れる。
失楽園においては天の唯一神に逆らうか地獄の環境に適応するかで魔王達の意見が分かれる。
そんな中、サタンが会議前に洩らしていたある計画をベルゼブブが同胞に述べているのだ。
それは神がサタンの叛逆後に創造したとされる人間の住む地に赴き、復讐を果たすこと。
神が寵愛する彼らを消し去るか、追放するか、誘惑して仲間にするかして貶めようとしたのだ。
魔王達は賛同するが、しかし神に挑むにしても再びあの雷霆によって堕とされるかもしれない。
ただこれにはひとつ問題があり、それはまず初めに誰がそこへ向かうかであった。
「……見つけた」
ひめなが辿り着いた場所とはボルテクス界のビシャモンテンが守護を担った北の寺院。
鬼門の玉を手に入れた人修羅が寺院の封印を破り、ビシャモンテンと戦った場所。
マガタマであるグンダリを手に入れた地であり、グンダリとは軍荼利明王を表す。
密教の明王のひとつであり、宝生如来の教令輪身とされる尊格。
様々な障碍を除くとされ、甘露軍荼利菩薩とも呼ばれるアムリタ・クンダリンである。
アムリタは不死の霊薬、クンダリンは水瓶、あるいは
「随分とおしゃんな戦国軍旗で飾られた寺院だよね?赤い旗には三つ巴紋…革命旗のつもり?」
混沌王と呼ばれる人修羅が掲げてきた赤い旗となるのぼり旗には三つ巴紋が備わっている。
三つ巴紋は渦巻きを表し、とぐろを巻いた螺旋の蛇を表す666の人修羅を象徴する紋所。
赤い戦国軍旗で飾られた参道を飛び越え、寺院の前に着地する。
「……いかつい鬼神像まで並べちゃって、アナタの精神世界は密教空間になっちゃったの?」
北の寺院が奥に見える広場に並んでいたのは人修羅に忠誠を誓う十二神将達の像の群れ。
寺院の奥には巨大なアスラ王とアタバクの鬼神像もあり、アスラ神族が侵入者を威圧する。
「……最初からこれが狙いだったのか、ルシファー?」
寺院に昇る階段に座り込んでいるのは魔法少女の虐殺者時代の姿をした人修羅である。
パーカーフードがついたウィザードローブと黒い革パンを纏う者が立ち上がり、階段を降りる。
黒いフードの奥に隠れた人修羅の顔は白人の姿ではなく、東京で戦った頃に戻っているようだ。
不敵な笑みを浮かべるひめなはその通りだと言い、自分の本当の狙いを語っていく。
「私チャンがアナタ達の謀略に気が付いていなかったと思ったの?あえて泳がせてたんだから」
「なるほど…俺達が貴様らを騙せていると安心させておいて、それを逆手に取ってたわけか…」
「所詮アナタ達は
「最初から俺だけを狙うつもりだったんだな…反逆の旗である俺を潰せば全てが瓦解する…」
「その為に魔王達をけしかけてアナタの精神を削り取ったわけ。金剛不壊の門を壊すようにね」
失楽園においては地獄と混沌・夜の境には九重の金剛不壊の門がある。
門の周辺は焔で囲まれて落ち、さらに門の前には異形の姿をした二体の門番がいる。
それは罪と死であり、罪は地獄の門を開ける鍵が握られ、死の手には殺戮の槍があるという。
「アナタの精神は擦り切れている、少し力を加えたら折れる程に脆い、だからここに来たの」
「たとえ俺が貴様に敗れようと、俺の魂は他の者達の精神にも宿っている。戦いは終わらない」
「そう思いたいだけでしょ?神だろうが人だろうが導き手を必要とする…イコンを求めるのよ」
象徴は何と捉えるかで戦争継続が分かれてしまうもの。
日本では殿のために戦うため殿が象徴となり、欧州では国のために戦うため国が象徴となる。
人修羅は星条旗のような旗であり、殿として家臣を引き連れる、それを潰せば戦争は終わる。
「所詮は羊の群れに過ぎない…導く牧師こそが全てを支配する。それを私チャン達は利用した」
奴隷精神を注入するスローガンこそが民を誘導し、そして支配出来る。
三密を避けよう!等がそうであり、しかしこれはマナーを喚起しているのではない。
反政府集会や抗議デモなどを開催するのはもっての外だと潜在意識に規範を叩きこむ。
国民は無自覚なままそれに従い、民主的な権利の消失を見過ごしていくだろう。
或る発話の裏に仕組まれた政治的な企図や真意は
権威に逆らうな、考えるな、従え、テレビやスマホを視ろ、支配的な発話で溢れ返っていく。
洗脳の言葉をシャワーのように人々は浴びていき、規律権力を強化して服従現象を生む。
「これはアナタ達の為なんだ、私はアナタ達の味方だ。権威がこれを言えば魔法が完成する」
「人の為と書いて偽と読む文字通りだな…その裏で金融資本家が国民生活を略奪し尽くす…」
「イルミナティの狙いとは金儲けと人口削減。その通りに事が進んでいったわけだよ♪」
情報の真贋を見分ける力など愚民は所有しないし、求めない事は権力者にとって周知の事実。
国債は国民の資産である!というMMTインチキでさえ信じ込み、疑似財政論を鵜呑みにする。
日本の国会は野党だけ悪者などという似非保守便衣兵のネット誘導に未だ引っ掛かる者もいる。
問題が複雑化し、理解の範疇を超えてしまえば資本で飼われた御上に全部丸投げするのだ。
「蒙昧主義を掲げながらパンとサーカスだけの世界に引き籠る。
蒙昧主義とは他人から啓蒙されるのを嫌い、自分と異なる異論反論を潰す考え方や態度。
愚民を表す概念であり、御上万歳な態度でマヌケな啓蒙魔法少女を虐げる娯楽だけを求める。
「…それは否定しない。勇が掲げたムスビのコトワリなど…既に世界で完成していたんだ…」
「皆が自分に都合のいいフィルターで引き籠り、自己完結する。暁美ほむらもそんな一人だよ」
「ほむらが求める欲望を利用し、CHAOS勢力に引き込んだわけかよ…」
「彼女はかつてのムスビ同様、自分に都合のいい世界を私チャンと共に作る。邪魔はさせない」
「いいだろう…ならば俺は…ほむらだろうがルシファーだろうが踏み越える。それが俺の道だ」
互いが歩み寄っていき、十二神将像の中央辺りで睨み合う。
人修羅のフードが首裏の一本角で押し上がりながら素顔を晒す中、藍家ひめなの姿が変質する。
啓蒙の光を体から発した存在が変化し、現れた新たな人物とは栗栖アレクサンドラの姿なのだ。
ロシア人とのハーフの彼女は喪服を着た金髪の少年のように美しい金髪ロングをしている。
その目も同じように瑠璃色に輝き、その威圧感はかつての喪服の少年と同じ程の圧迫感を放つ。
「セカイとひきかえに、うまれたアクマ…こんなにすばらしいアクマはいないね」
カグツチに呪われた人修羅であろうが、金髪の少年の姿をしたかつてのルシファーは祝福する。
「もう、キミのうえにはヒカリはない。だけど、
「その通りだ。上の光を求める者こそが権威主義者であり、羊の群れ…ならば俺は闇となろう」
「キミはやみをチカラとしていきていける…やみのなかでジブンのこたえをさがしだすモノさ」
「権威や全体に平伏さず、己の権利を戦ってでも勝ち取る在り方を…俺が示してみせる」
――それこそが自由民主主義精神である……
望まずも戦場に立つしかないならば、反逆の剣となる程の意思を貫き、戦い抜く覚悟。
それこそが個の確立であり、かつてのダンテが貫き通した自分の在り方。
たとえ社会悪にされようとも、変わらない世界に反逆する者としての戦いを示そう。
「それじゃ、おわかれだ。ボクはいかなくてはならない……だからこそ、キミをとりこもう」
「貴様が敷く運命も、唯一神が敷く運命も、独裁に過ぎない。ならば俺は……剣を抜く!!」
漆黒のウィザードコートが一気に弾けながら悪魔の二枚翼と天使の二枚翼を背中に展開する。
左手には将門の刀が握られ、刀の鍔を指で押し上げる。
栗栖アレクサンドラでありルシファーでもある存在も背中から悪魔の六枚翼を展開する。
極限にまで高まり合う混沌王と大魔王の魔力振動によってボルテクス界が激しく揺れ動くのだ。
黙示録の赤き獣は今こそ己を支配し続けたバビロンの大淫婦を相手に反逆するだろう。
この戦いこそ赤き背中を見せてくれたダンテの意思になると信じ、貫き通すのであった。
やっとここまで描けたんだなぁ…と感慨深くなってきた。
キラ・ヤマト准将閣下とアームストロング上院議員流の剣と拳のマニュフェストを大魔王に叩きつける時がきましたね。