人修羅×まどマギ まどマギにメガテン足して世界再構築   作:チャーシュー麺愉悦部

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350話 グレーを体現する陰陽の道

優しい人ほど業を背負う修羅となるもの。

 

業務鬱と同じであり、優しさを捨てて吹っ切れたらとんでもないパフォーマンスお化けと化す。

 

無敵の人にまで進化した人修羅は自分達がしでかす悪行という矛盾を乗り越える戦いを見せる。

 

「ハァァァァァァーーーーッッ!!」

 

峻厳の城の城門戦を超えた人修羅の軍勢は迫りくる悪魔の軍勢に対して果敢に攻め込む。

 

城の中は激しい戦場となり、神将達とヤクシャ達が次々と炎魔法を放って放火していく。

 

これは鎮魂の炎でもあり、バアルの犠牲となった子供達の遺骸を供養する炎でもあるのだろう。

 

「バアル様の城に放火する逆賊共め!!天の怒りを恐れぬ凶行を行うなど…狂った連中だ!!」

 

バアルの居館となる城の上層部を目指す人修羅達の前に現れたのは怒り狂った料理長。

 

魔法少女の人肉料理を人修羅に提供し続けた堕天使であり、少女を刻む事を何より楽しむ者だ。

 

【ニスロク】

 

アッシリアで崇拝されていた神であり、ミルトンの失楽園では大いなる鷲と呼ばれた存在。

 

地獄の辞典では地獄の栄養士にして料理人とされ、地獄の料理長イメージで語られる事が多い。

 

旧約聖書の列王紀においてはアッシリア兵を虐殺した存在として描かれた元権天使であった。

 

「私が調理した魔法少女の肉を喰ってきた貴様が何ゆえ反乱する!?贖罪のつもり…ガッ!?」

 

激怒しながら肉包丁を振り回す小柄なコック悪魔が喋りきるよりも先に飛んできたのは旗槍。

 

大口を開けて罵倒していた口内に突き刺さった勢いのまま壁に叩きつけられて縫い付けられる。

 

「そうだ…俺は魔法少女の命を喰ってきた鬼畜の魔王だ。正義を名乗るつもりなんてねーよ」

 

乱戦が繰り返される城内空間から恐ろしい形相をした人修羅が迫ってくる。

 

「俺の道もバアルと同じヨスガ…殺戮の上に殺戮を繰り返す道。ヒーローなんかじゃないんだ」

 

「アッ…アガッ!!今更善人ぶるな…貴様なんか…我らと変わらん…悪魔なんだぞ…ッッ!!」

 

「これは命のやり取り…俺の行動の是非善悪、妥当か否かを議論する場じゃない。地獄に帰れ」

 

旗槍の柄を握りながら踏み込み蹴りを放ち、壁を砕きながら料理長悪魔を蹴り潰す。

 

MAGの光と砕かれた壁の土煙が舞う中から人修羅が飛び出し、獲物を次々と刺し殺していく。

 

()()()()()()()()()()()…それを俺は喰い散らかしてきた。先に地獄で待ってろ…俺も逝く」

 

魔法少女だけでなく人間まで虐殺してきた者は己の罪を背負いながら地獄に向かって突き進む。

 

罪の十字架を背負おうとも、自分だけでなく悪魔と悪魔崇拝者全員を道連れにしようとする。

 

その気持ちは十七夜と織莉子も同じであり、均衡の城でも激しい戦闘が繰り返されていく。

 

<<小娘達に後れを取るな!!我らも続けぇ!!>>

 

均衡の城の玉座が存在する城の上部に位置する城館では苛烈な戦いが広がっている。

 

神将達に負けない活躍を示すのは吸血鬼姉妹達の戦いであり、次々と防衛悪魔を屠っていく。

 

「やめろぉぉぉぉーーーーッッ!!?」

 

両足を切断して倒れ込んだ悪魔を持ち上げるのは織莉子であり、力任せに上半身を引き千切る。

 

吸血鬼の剛力で体を引き裂かれた悪魔が砕け散り、MAGの光を放つ中、後ろから敵が迫りくる。

 

周囲に浮かべた蝙蝠翼の水晶を放つよりも先に仕掛けたのは吸血鬼の姉である十七夜の攻撃。

 

頭部を串刺しにする槍の投擲がヒットしたことで悪魔が倒れ込んで砕け散るのだ。

 

「ハァ!ハァ!油断するなよ美国君!先はまだ長い…飛ばし過ぎたら後に響くぞ!」

 

「ハァ…ハァ…ごめんなさい、和泉お姉様…貴女も戦闘で疲労してるのに迷惑かけて…」

 

「いいんだ、自分達は共に死地を超える仲魔なのだ。君の背中は自分に任せてくれ」

 

地面の旗槍を拾った十七夜であったが、迫りくる火球の群れに気が付いた彼女が槍を振り抜く。

 

ヒートウェイブの衝撃波が複数の火球を消し飛ばした後、怒りの叫びが響いてくる。

 

「貴様らァァァァーッッ!!よくも閣下を亡き者にしてくれたなぁ!!万死に値するぞぉ!!」

 

城館にある玉座へと続く巨大回廊の階段の踊り場に立っているのは大魔王の秘書官達。

 

ビフロンスが纏う髑髏めいた仮面の下は憤怒で歪み、隣のゴモリーも同様の怒りを示す。

 

「現実を直視する事も出来ない愚か者め!今の我らは天使軍を相手しなければならないのよ!」

 

「だからこそ仕掛けた。天使軍や多神教連合に気を引かれた状態の方が動きやすかったからな」

 

「世界を金融支配し、悪魔崇拝と生贄儀式をばら撒いた悪行も今日までです。覚悟しなさい」

 

「ぬかせ小娘吸血鬼共がぁ!!閣下の無念を晴らすのはこのビフロンスなのだぁ!!」

 

彼の怒りが表れるようにして燃え上がる燭台の蝋燭が次々と炎魔法を放っていく。

 

しかし彼女達は炎無効の悪魔耐性を手に入れた吸血鬼であるため炎が無効化されてしまう。

 

「ただの吸血鬼じゃないようね…ここは協力して戦うわよ、ビフロンス」

 

「ヌゥゥゥゥゥ…致し方ない。ぬかるなよ、ゴモリー!!」

 

燭台から雷が迸る中、ラクダに乗ったゴモリーが跳躍して回廊を駆け抜けていく。

 

「あのラクダ女は私が仕留めます!お姉様はあの髑髏執事を倒してください!!」

 

「了解した!!」

 

体が弾けて無数の白蝙蝠化した織莉子が駆け抜けるラクダを追い、十七夜も駆け抜ける。

 

踊り場から雷魔法を放ってくる相手に目掛けて一気に跳躍し、旗槍攻撃を仕掛けていく。

 

それぞれが激しい攻防戦を描く中、バベルを懸命に守ろうと足掻く勢力は戦い抜くのだ。

 

「おのれぇぇぇぇぇーーーーッッ!!!」

 

剛腕のぶつけ合いを行いながら激しい乱打を撃ち合いあうのはアルシエルとアスラ王。

 

残像が浮かぶ程の拳の動きがぶつかり合う度に闇の世界に激しい衝撃波が生まれていく。

 

巨神同士のぶつかり合いが続く中、互いが一気に仕掛けるときが訪れる。

 

「この至近距離ならば避けられまい!!我が奥義の一撃をもって…滅ぼしてくれるわぁ!!」

 

拳の打ち合いを行いながらもアルシエルは闇を吸い込んでおり、ソルニゲルを放とうとする。

 

全身から極大の爆発現象を生み出そうとした時、両肩から伸びる腕の合掌が解かれていく。

 

背中の四本腕だけでなく両肩から伸びる両腕から放たれるのはアスラ王の奥義。

 

「怨敵調伏!!オン、アビラウンケン、ソワカ!!」

 

光明真言を用いて放つ一撃とは『アカシャアーツ』であり、世界を構成する五行を拳に宿す。

 

全てを包み込む無限の空間である虚空へと誘う一撃がアルシエルの胴体に一瞬で打ち込まれる。

 

「グギャァァァァァーーーーッッ!!?」

 

みぞおちを起点として描かれる五芒星の一撃が光を放ち、悪鬼羅刹を封印する浄滅の光と化す。

 

地水火風空の陰陽五芒星によって闇の体の内側から光が溢れ出し、一気に炸裂する。

 

眩い大爆発によって滅ぼされたアルシエル空間の中で再び合掌するアスラ王はこう呟くのだ。

 

「オン、アロリキャ、ソワカ…泥の中より美しい蓮の花が咲くように…汝もやり直すがいい」

 

再びケテル城の城壁空間に戻ったアスラ王は擬態姿に戻っており、神将達の後を追う。

 

次々と討ち破られていく魔王達であるが、バベルの制御区画を任された魔王は一歩も譲らない。

 

「ヌォォォォーーーーッッ!!!」

 

迫りくる死蠅の軍勢を前にするルキフグスは苛烈な炎魔法を用いて自分の領域を守り抜く。

 

彼のクリフォト空間はまるでワシントンを彷彿させる場所であり、政治・行政・金融を司る。

 

地獄の総理大臣であるルキフグスが統括するクリフォトらしい光景だが今では見る影もない。

 

黒い雲の如き死蠅軍に群がられた空間にいたルキフグスの軍勢は死蠅によって呪殺されている。

 

ホワイトハウスのような見た目をしたルキフグスの宮殿以外は崩壊している被害規模なのだ。

 

「フン、流石は三大魔王を支えてきた六体の上級精霊に数えられてきたルキフグスだ」

 

死蠅軍の猛攻を見下ろす巨大な蠅こそ三大魔王に数えられてきたベルゼブブである。

 

自分よりも格上の魔王を相手に奮戦するしかないのだが、明らかに劣勢状況に陥っていく。

 

「何故ですか…ベルゼブブ殿!?貴方様は閣下の腹心を務めてきた魔界の副王だというのに!」

 

「副王…それこそが我にとっては屈辱の烙印!我を本物のバアルとして扱わない侮辱だった!」

 

聖書を読んでるとバアルの名は至る所に出てくる。

 

地名や王の名としての登場も多く、カナンの地で広く信仰された神なのだろう。

 

ユダヤ教はカナンでは異端として扱われ、移民のイスラエル人でさえバアルの影響を受ける。

 

イスラエルの王族ですらバアル信仰に容易く組する程にまで強力なカナン土着の宗教神なのだ。

 

聖書での扱いを見ていくと批判的ではあるけれど異教の神として敬意に近い表現をする。

 

列王記でも自分達の神の他に神はいないといいつつも神の如き存在だとバアルを表現している。

 

バアルとは異教の神ではあるが神として扱われてきたが、新約聖書の頃には貶められるのだ。

 

「マタイ、マルコ、ルカの福音書の頃には神の呼び名はベルゼブブとなり…()()()()()()!!」

 

神から悪霊に貶められる表現の中には尊敬も尊重もなく、糞山の蠅という定義にすり替わる。

 

もはやバアルからも切り離された存在として敬意もなくなっている感じが伝わってくるだろう。

 

「新約聖書が我という概念を生み出し、バアルの名を貶めた!それでも我はバアルなのだ!!」

 

バアルの発展形としてベルゼブブが生み出され、バアルは様々な悪魔の名として用いられる。

 

その最たるものがモロク信仰であり、カナンのバアル神で最も有名な存在となっていく。

 

ドルイド教にさえウイッカーマンというモロクの燃える像を真似た生贄儀式があったぐらいだ。

 

外国で暮らし、その地域の文化や宗教に染まるなと言う原理主義など通用しない。

 

結局イスラエルは南北に分断された末に滅びる末路をなぞるが如く、バアルもまた分断される。

 

「我こそ真のバアル神だ!!モロクになどバアルを名乗らせてたまるか…我こそ本物だぁ!!」

 

666の魔王として数えられるのはモロクではない、自分なのだとベルゼブブは叫んでくる。

 

劣等コンプレックスを爆発させる怒りを表すようにして右手に持つ髑髏の杖を掲げていく。

 

ルキフグスのクリフォト上空に雷雲が生み出されていき、マハジオダインを放つ。

 

「グワァァァァァーーーーッッ!!?」

 

天空神バアルの名残ともいえる魔法の力が直撃して怯んだせいで炎魔法の壁が消失。

 

炎魔法の壁に阻まれていた死蠅の軍勢が一気に動き、黒い雲に飲み込まれるようになっていく。

 

「こんなところで滅びるわけには!私はロスチャイルド本家の当主…世界の金融王なのだ!!」

 

倒れ込んだまま死蠅に喰い尽くされるルキフグスの断末魔に対してベルゼブブがこう告げる。

 

「ロスチャイルドなど黒の貴族から与えられた力で成り上がった一族…本当の支配者ではない」

 

「おのれぇぇぇぇぇ!!糞山の蠅めぇぇぇぇーーーーッッ!!!」

 

「その言葉…万死に値する!!我が軍勢に迎撃の用意あり!!」

 

ルキフグスの体内にまで進入して内臓を喰い尽くす死蠅達が雷光を放っていき、一気に炸裂。

 

<<アギャァァァァァーーーッッ!!!!>>

 

体の中で次々と炸裂した雷魔法の大爆発によってルキフグスが砕け散り、膨大なMAGと化す。

 

「……外の戦いは決着がついたようよ」

 

「ベルゼブブ様の力なら当然の結果ね。こっちも終わるわよ」

 

ベルゼブブとルキフグスの戦いのさなか、先に宮殿内に侵入していたのはニュクス達である。

 

バベルの制御を司るモニタールームに侵入したニュクスが端末操作を行いながら塔を掌握する。

 

<<クリシュナ、こちらは上手くやれたわ。バベルに張り巡らされた障壁を解除するわね>>

 

クレオパトラの念話を受け取った存在達がついにバベルの塔に突撃する時が訪れる。

 

東京湾に侵入するようにして海面から昇ってくる存在とは超巨大な蛇の怪物であった。

 

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<<我らも上に上がって武功を立てるべきだ!!何を迷っている!!?>>

 

魔王ほむらのクリフォトであるアィーアツブスではティタン神族の戦士達が騒いでいる。

 

巨大な兵士達が彼女の城に目掛けて大声を上げながら嘆願してくるが城主は動こうとしない。

 

バルコニーに出られる執務室の机の椅子に座りながら頭を抱え込むのは震え上がるほむらの姿。

 

バアルからの念話を聞いた瞬間、自分の土台が全て壊れてしまう程の衝撃に襲われたのだろう。

 

目の前には後ろ手を組みながら佇むクロノスがおり、細目を開けながらこう言ってくる。

 

「…閣下がお亡くなりになられた隙をつき、反乱軍が上で暴れておる。どうする気じゃ?」

 

「どうするもこうするもないわ…ルシファーが死んだのよ…私との約束はどうする気なの!?」

 

悪魔ほむらはルシファーの提案を承諾する形でCHAOS勢力に組した存在。

 

しかし肝心の大魔王が謀殺されたならば誰に縋りついてまどか達を守ればいいのか分からない。

 

イルミナティの指導者的な啓蒙神が亡くなったため、不安と恐怖で圧し潰されているのだろう。

 

「まどか達の未来を守るために私はここにいるの!!なのにまどか達の未来が脅かされてる!」

 

「ならばその脅威と戦うのが筋というもの…外の連中の叫びに応えてやるべきじゃろう?」

 

そう言われてもほむらは動こうとしないため、怪訝な顔つきを浮かべながらこう言ってくる。

 

「まさかお前さんは……手のひら返しをしようと考えておりゃせんか?」

 

「そんなことは考えてないわ…だって…人修羅達に組したって…私の望む世界は得られない…」

 

「魔法少女同士の恋愛が認められるレズビアン世界を築く…それは人修羅が望む世界ではない」

 

「だからこそ私はルシファー側に寝返ったのよ…なのに…私の理想の基盤が壊れたわ…っ!!」

 

「ならばお前さんがフェミニズムの世界を築け。閣下が望んだ理想を…お前さんが築くのじゃ」

 

「私なんかが…大魔王の意思を継げる程の存在になれると言ってくれるの…?」

 

「お前さんは世界のフェミニスト達の新たな象徴…お前さんが立ち止まれば皆が路頭に迷うぞ」

 

ほむらこそが新たなリリスであり百合の象徴なのだと言ってくれる言葉が彼女の心に炎を灯す。

 

体の震えが止まった彼女が顔を上げていき、迷いを振り払えた表情を浮かべてくれるのだ。

 

そんな時、ほむらの執務机に備わっているホログラム映像装置が起動してナアマが映る。

 

「大変よ!!バベルの下層領域が破壊されてるわ!!多神教連合が攻め込んできたのよ!!」

 

「な……なんですってぇ!!?」

 

「この勢いだと直ぐに私のクリフォトまで昇ってくる…援護に来て頂戴!!」

 

絶望に追い打ちをかける状態となったようだが、クロノスの口元には不気味な笑みが浮かぶ。

 

バベルの塔に迫ってきた巨大な蛇の怪物とはクリシュナであるヴィシュヌに仕える悪魔の一体。

 

かつてのアモン以上に巨大な全長を誇る超巨大な蛇こそ、シェーシャとも呼ばれるナーガの王。

 

【アナンタ】

 

ヒンズー神話においてヴィシュヌが瞑想する時に横たわるベッドの役をするナーガの王。

 

千もの頭を持つキングコブラの姿であり、その名は無限を意味する。

 

全てのナーガラジャの中において最も偉大とされ、創世と終末を象徴する存在。

 

創造神ブラフマーの命により地底で大地を支えているとも言われていた。

 

「クレオパトラ達は上手くやってくれたようだ。それじゃ、ボク達も城内にエントリーするか」

 

海の中からせり上がってきたのは複数の頭をもつ超巨大キングコブラであり、塔に迫っていく。

 

向かうのはバベルの塔を支える超巨大ドックであり、ドックの隔壁も操作されて開いている。

 

首の一つが悠々と伸びていき、ドック内に広がっている米軍基地に進軍してくるのだ。

 

この基地を警備するのはデモニカスーツを身に纏う者達であり、彼らには悪魔の姿が見える。

 

<<NOOOOOOO!!!>>

 

悲鳴を上げるデモニカ部隊を見下ろす超巨大蛇の口が開いていく。

 

舌の上に立っていたのは多神教連合の面々であり、先頭に立つのはアルテミスの姿。

 

「ハァァァァァァーーーー……ッッ」

 

腰を落としながら右拳を引き絞り、右腕に装備したクロスボウ型の神器が左右に展開される。

 

光が収束したクロスボウを射出しようとするアルテミスの体から莫大な魔力が噴き上がるのだ。

 

「銀河……烈星拳ッッ!!!」

 

拳を突き出した瞬間、クロスボウ型の神器からおびただしい光の奔流が発射されていく。

 

光の奔流が枝分かれして無数の光の矢と化していき、広大な米軍基地に次々と飛来する。

 

<<AAAAARRRRGGGG(ギャァァァァァーーッッ)!!!>>

 

発射された光の矢がホーミングレーザーの如き誘導によって次々と命を刈り取っていく。

 

米軍基地や潜水艦ドック、それに造船所などから次々と爆発が起き、完全に殲滅されるのだ。

 

「へっ!流石は俺様の娘だ!人間を殺すのに迷いは無いようで安心したぜ?」

 

後ろに控えているのはゼウスとオーディン、それにクリシュナとシヴァ、それに女性陣。

 

パールヴァティとラクシュミは燃える基地の光景を楽しんでいるが、イズンは顔を青くする。

 

凄惨な戦場を見るのが辛いからではない、アナンタの口内の臭いが耐えられないからだろう。

 

「うぷっ…早く外に出ようよ…私…もう…限界かも……」

 

「ウグゥ……ついでに私も外に出たいですぞ。昨日飲み過ぎたせいで違う嘔吐感がですね…」

 

ケミカルな肌色をしたディオニュソスまで二日酔いの影響なのかふらついている。

 

「だからお酒は控えるように言いましたのよ?自業自得ですわね」

 

「デメテル様…そうは言いますがね、酒の神である私は飲まねばパワーダウンするんですよ…」

 

大戦争を前にしても飲んだくれるディオニュソスに対してデメテルはオーバーに両手を上げる。

 

大慌てで外に飛び出したイズン達が燃え上がる海軍基地の淵に着地した後、海に走り寄るのだ。

 

「「おえぇえぇえぇえぇ……ッッ!!!」」

 

座り込んだまま虹色の吐瀉物を海に撒き散らす中、ラクシュミが二人の背中を擦ってくれる。

 

ゼウス達も海軍基地の敷地内に飛び降りたようだがクリシュナが何かを見つけたようだ。

 

「ほう…?この基地の中に見える巨大タンクの中にもMAGが沢山詰まっているな。丁度いい」

 

「これ以上の手勢の召喚は必要ないだろう。あのMAGはお前が全て喰らってしまえばいい」

 

「そうさせてもらうよ、シヴァ。クリシュナの姿のままだとボクは本気の力を出せないしねぇ」

 

「俺様は先に行くぜ。MAGならしこたま喰らってきたし、本調子に戻れた俺様には不要だなぁ」

 

「欲を言えば我々のナホビノをこの世界で探したい気持ちもあるが…そんな余裕も無さそうだ」

 

アナンタはバベルの塔の周囲にそびえ立つバリア発生装置を破壊するために外に出て行く。

 

クリシュナはMAGタンクが並んだエリアに向かう中、ゼウスは右拳に雷を収束させる。

 

「チマチマ上に上がっていくなんざ性に合わねぇ、一気に行くぞぉ!!」

 

貫く闘気を纏ったゼウスが一気に飛び上がり、超巨大ドックの天井にパンチを放つ。

 

豪快に砕けた天井を超え、勢いは止まらず次々とバベルの下層部を突き抜けていく。

 

「な、なんなのぉ!!?」

 

超高層ビルを居城とするナアマが外に目を向ければ貧民街の方角からゼウスが飛び出してくる。

 

勢いは止まらずにナアマのクリフォトの天井までぶち破り、ほむらのクリフォトに昇るのだ。

 

<<ば…バカなぁ!?反乱軍だけでなく…ゼウスまで現れたのかぁ!!?>>

 

ティタン神族の兵士達を見上げるゼウスは両手を腰に当てながら不敵な笑みを浮かべていく。

 

「イヨォォォォ…ティタン神族共。テメェらの魔力は感じてたからなぁ…来てやったぜ?」

 

ティタン神族の兵士から見れば3mサイズ程度のゼウスなど蟻に見えるだろうが恐れおののく。

 

小さな大巨人が両手をポキポキ鳴らしながら迫る中、後ろの大穴から娘達も飛び出してくる。

 

「フゥ、二日酔いは吐くとスッキリする。今の私はシラフの状態です!相手してあげますよ!」

 

「フフッ…またティタン神族と戦える日がきたか。第二次ティタノマキアを始めよう!!」

 

「ハーベストな実りを遺伝子組み換えで病気の元にし…民衆に食べさせた報いを与えますわ!」

 

アルテミス、ディオニュソス、デメテルもゼウスに続く中、城から叫び声が響いてくる。

 

「私のクリフォトを荒らしに来たようね!!その罪は重いわよ…覚悟なさい!!」

 

城のバルコニーには悪魔化したほむらが立ち、隣にはアダマスの大鎌を持ったクロノスがいる。

 

「皆の者!!魔王ほむらの意思は固まった!これより我らは逆賊共を全て打ち滅ぼすぞ!!」

 

<<オオォォォォォォーーーーーッッ!!!>>

 

雄叫びを上げながら巨大な剣を掲げるティタン神族の兵士達。

 

それでも内心には魔王ほむらに対する不満が蓄積しており、彼女の支配力は不安定となる。

 

しかしかつての宿敵を前にすれば不満など忘れる程の怒りと集中力を発揮していく。

 

「先ずは目の前の神々を滅ぼすわ!オリュンポスの神々との因縁を今日こそ清算しなさい!!」

 

<<その言葉を我らは待っていたァァァァーーッッ!!!>>

 

地響きを立てながら迫りくるティタン神族の兵士達に対して浮遊した神々が次々と襲い掛かる。

 

一方、下層のクリフォト内ではオーディンとイズンが後顧の憂いを断つために殲滅していく。

 

下層は金融資本家や世界政府を構築する官僚、そして警備のデモニカ部隊が占める人間エリア。

 

いくら束になってかかろうとも北欧の神々の敵ではないのだろう。

 

<<AAAAARRRRGGGG(グワァァァァァーーッッ)!!!>>

 

振り抜かれたグングニルから放たれた烈風波によってデモニカ部隊が挽き肉にされていく。

 

「欲深い権力者はいつだって永遠の命を求めるもの…その愚かさに破滅を与えてあげる!!」

 

掲げた右手から放つのはマハザンマであり、全体に放つ疾風魔法がデモニカ部隊を吹き飛ばす。

 

猛烈な暴風とかまいたちに飲まれた兵士達の体が次々とサイコロステーキと化す。

 

イズンと同化した牧野郁美は敵と認識した存在には慈悲を与えない恐ろしさを発揮する女神。

 

たとえ帰りを待つ妻や小さな子供や友達がいようとも、容赦なく敵を殺戮出来る存在なのだ。

 

それでも女神に肉体を与えた牧野郁美は魔法少女であっても今まで人間を殺さなかった女。

 

「……どうしたのだ?」

 

三メートル近い身長をしたオーディンがイズンに近寄っていき、肩に手を置いてくれる。

 

イズンの体は震えており、女神は悲しくなくても牧野郁美の感情が両目から溢れ出す。

 

「アハハ…おかしいよね…こんなの。私は全然悲しくないのに…何故か…涙が出ちゃうの…」

 

北欧の民族衣装風のメイド服に身を包む彼女が右腕で目元を擦る姿を主神は見つめるのみ。

 

(魔法少女の肉体と同化したと聞かされたが…精神は完全に融合したわけではないようだ…)

 

迷っている暇もなく、後続から迫りくるデモニカ部隊を前にした神々は再び戦いを始めていく。

 

「私もまた虐殺者…女神であり悪魔だよ。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()!」

 

下層エリアの戦いが激化するのだが、下層の上にあるクリフォトではナアマが迷い抜く。

 

「上からも下からも敵が押し寄せてくる…私は一体…どちらを相手に戦えばいいのよ…?」

 

挟み撃ちにされた状態では冷静な判断を下す余裕もなくなり、部下の淫魔達に指示を出せない。

 

そんな時、彼女のクリフォトで待機していた淫魔の軍勢が消し飛ばされる程の光が生まれる。

 

「あ、あぁぁぁぁぁ……ッッ!!?」

 

ゼウスが開けた大穴からせり上がってくるのは破壊神シヴァの御姿。

 

背中の両腕には角笛と太鼓、両手には戦を司るチャクラムと三又の宝戟が持たれている。

 

「その塔から出てくるがいい…邪悪な淫魔め。その塔を貴様の墓標にしたいのか?」

 

クリフォトのビルディングの屋上に着地したシヴァの挑発に対してナアマは激怒する。

 

「言ってくれるわね…破壊神!!貴方様を魅了出来たなら…私の武勇伝となるわよねぇ?」

 

悪魔姿のナアマが右手を掲げれば超高層ビルの執務室を覆う窓ガラスが砕け散る。

 

黒い翼を広げて浮遊してきた邪悪な淫魔に対して光輪と化したチャクラムを投擲しようとする。

 

「たとえヒンズー教の最高神であろうと男神に過ぎないわ。私の誘惑からは逃れられないのよ」

 

不気味な笑みを浮かべながら右手の人差し指を口元に向け、背後を見せてくる。

 

妖艶で美しいヒップラインを見せびらかしながら異形の左手で撫でまわし、男を誘ってくる。

 

これはナアマの色仕掛けであり、顔の左半分を覆う漆黒の仮面から覗く真紅の目が光っていく。

 

「ヌゥ!!?」

 

魔眼から放たれた邪悪な光の影響を受けたのかシヴァが片膝をついてしまう。

 

「フフッ……夢のような快楽を……あ・げ・る♡」

 

振り向いたナアマが妖艶な笑みを浮かべながら両手でハートマークのハンドサインを作る。

 

邪悪な魅了を解き放つようにして両手を広げる一撃こそ『歓喜への誘い』という魅了魔法。

 

敵全体に高い確率で魅了を付加し、能力上昇効果を消去する魔法がシヴァを蝕んでいく。

 

「オォォォ……なんという美しい女悪魔なのだ。是非とも我が側妻として迎え入れたい…」

 

クレオパトラの魔法に匹敵する程の一撃では精神無効耐性規模の悪魔耐性でないと防げない。

 

シヴァは高い精神耐性を持っているが無効とまではいかず、神話の中でも荒神の側面がある。

 

ナアマに精神を支配されてしまったようだが、今の彼には正妻が傍にいてくれるのだ。

 

「くっ!!?」

 

夜の闇とネオンの光に包まれたナアマの領域に広がったのは常世の祈りの光である。

 

味方の体力を全回復するだけでなく状態異常も全回復させる究極の回復魔法が行使されるのだ。

 

「アイタタタタ!!?」

 

シヴァの耳を引っ張るのはいつの間にか横にいたパールヴァティの姿である。

 

「……シヴァ様?わたくし、カーリーに戻ってもよろしいですか?」

 

怖い笑顔を浮かべるパールヴァティの体からはドゥルガーオーラが噴き上がっている。

 

冷や汗が全身から吹き出すシヴァは平謝りすることしか出来ないようだ。

 

「全く…殿方は男神であってもスケベですわね?私がいなかったらどうなってたことか…」

 

シヴァの背後にはクリシュナの妻であるラクシュミが立っており、彼女が回復してくれている。

 

「神や英雄が色を好むのは()()()()()()()()()()…高貴な神も人々と同じ平等性が求められ…」

 

「わたくしはそんな平等性など求めてませんわよ、愛しいシヴァ様?言い訳は結構ですの!!」

 

「わ、悪かった!謝るから勘弁してくれ!!我も修行が足りんな…またヨガを始めねば…」

 

「コラーッ!!つまらない夫婦漫才を披露しながら私を無視するんじゃないわよ!!」

 

激おこぷんぷん丸と化しているナアマに振り向いたヒンズー教の神々は不敵な笑みを見せる。

 

「せっかくだし、この戦いは私の夫に任せてみるのはどうですか?」

 

「フッ、それも良かろう。この胎動する強力な魔力…クリシュナは化身姿を超えたようだ」

 

ゼウスが開けた大穴からせり上がってくるのはシヴァと並ぶ程にまで神々しい主神の御姿。

 

「あっ…あぁぁぁぁ…あれが…ヴィシュヌなの…ッッ!!?」

 

黄金の肌をした長髪の青年の腕はシヴァと同じく四本であり、それぞれに特徴的な武器を持つ。

 

右手には棍棒型の神器、左手にはホラ貝の笛、背中の右腕にはチャクラム、左腕には蓮の花。

 

全身から噴き上がる力はゼウスに匹敵する程であり、ナアマの体には震えが走ってしまう。

 

「か…勝てない…ヒンズー教の主神と女神共が勢揃いされたら…勝てるわけがない…ッッ!!」

 

上のクリフォトにいるほむらに念話を送ってみるが返事を返せない程の激戦を強いられている。

 

「待たせたね、みんな。本来の力を取り戻したボクの力を…披露させてもらうよ」

 

燃え上がるバベルで暴れる悪魔達もまた神々であり、人間や魔法少女と同じくグレーな存在。

 

世界とは白黒だの善悪だの、正しさだの正しくないだので推し量れる程度の小ささではない。

 

複雑怪奇な世界の在り様を体現する存在こそが陰陽を司る神々であり、人間や魔法少女達。

 

彼らが生む歴史とは時に優しく、時に残酷さで彩られる光景こそが世界の陰陽なのであった。

 




真女神転生3のベルゼブブも666の魔王として表現されてるんですよね。
HPの最大値が666だし、ボス蠅王を倒した後の宝箱には666666マッカが拾えるし、真女神転生3は色々なところに獣の数字が使われてましたな。
そんな蠅王も聖書では形骸化して神扱いではなくなったのを拙作では劣等コンプレックスで表現しております。
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