人修羅×まどマギ まどマギにメガテン足して世界再構築 作:チャーシュー麺愉悦部
魔女の福音に登場するアラディア神とは虐げられた魔女達が求めし希望の女神。
ディアナでもある月の女神アルテミスと太陽神ルシファーの娘であり、魔女達の救世主。
富者であるキリスト教徒に迫害される貧しい異教徒を救う為にディアナの命で地上に立つのだ。
反キリスト教色の濃いプロフィールを持つアラディアは異教徒を救うために存在している。
しかし民族学者の追及によってアラディアは魔女が捏造した偽神なのだと見抜かれているのだ。
そのため誰にも本物の神として扱われなかったが、それでも魔女達は偽神に縋りついてしまう。
魔女達の思いが通じたのか、新異教主義は今日まで残る程の信仰力を発揮出来たのだろう。
そんなアラディアは魔法少女として生きた鹿目まどかの感情エネルギーを利用して降臨する。
鹿目まどかの守護として融合し、ついに本物のコトワリ神である円環のコトワリとなったのだ。
魔女達の救世主として活動してきたが、アラディアは悪魔ほむらに引き裂かれる末路となる。
それに業を煮やしたアラディアは半身を取り戻すために再び降臨した末にほむらと激しく戦う。
最後には敗北する末路となったが、彼女は父神ルシファーを見つける事になるだろう。
アラディアは太陽神の如き人修羅の中にルシファーを見出し、彼を父神として慕う女神となる。
だからこそ悪魔ほむらに虐げられる男神であるルシファーの助けになりたいと切望するのだ。
(何という恥知らずな女悪魔なのだ…我を相手に共に戦った父上を裏切り…貶めるだなんて…)
人修羅と悪魔ほむらに敗れたアラディアは受肉した肉体を失い、半身のまどかと融合している。
しかし体を失ったためアラディア自身は自由に動けず、まどかを依り代にする以外にない立場。
まどかの精神に宿るアラディアは悪魔の呪縛によって宿主の記憶ごと封印された状態である。
精神の牢獄には厳重な鍵が掛けられており、囚人のようにされてしまっているのだろう。
だからこそ考える時間が生まれたことでアラディアは悪魔ほむらが何を望むのかを考える。
(これ程までの悪行を成しても望むものか…あの女悪魔も望む理想があるからこそ戦う者だ…)
アラディアが戦ってきた理由とは自分の存在を世界に認めさせるために本物の女神となること。
彼女はそれを望んできたからこそ円環のコトワリとなり、魔女達の救世神話を体現してくれる。
魔女が生んだ神話はたとえ偽物でもアラディアの根幹を成すのだが、それでも認めてくれない。
母神と信じるアルテミスからは未だに拒絶されるため、劣等コンプレックスを抱えているのだ。
(奴は鹿目まどかとの恋愛成就を望んでいる…だが右翼は認めない、だから変えたいか…)
共に世界に対する要求を抱え込む者同士なのかもしれないと悪魔ほむらを分析していく。
分析を繰り返すうちに理想を求める者同士なのかもしれないと共通点を見出してしまう。
(力で要求を通そうとすれば我の二の舞になるだけだ。奴は何も学ばなかったのだろうな…)
魔女達にバアル崇拝をばら撒き、子供達を生贄にさせてきたのは牛神ゼウスに取り入るため。
それ程までの悪行を実行したアラディアは悪魔ほむらの悪行に対して強い態度を示せない。
敗北したことで自分や周りを客観視出来るだけの心の余裕が生まれたのだろう。
(我も過ちを犯し…暁美ほむらも過ちを犯す…何も変わらない、なのに潰し合うしかない…)
正義を振りかざす者達も所詮は自分だけ正当化したいだけの悪者同士、似た者同士でしかない。
そう結論付けたことで悪魔ほむらに対する憎しみも自然と収まってくれるのだ。
(止めなければならない…我と同じ末路にはさせない。だからこそ鹿目まどか…汝に託そう)
まどかの精神に構築された牢獄に繋がれたアラディアは半身を信じながら目を瞑る。
倒された女神の力はまどかに受け継がれており、その力を正しく使って欲しいと願うのだった。
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夢の世界はいつだって悪魔の理想のパラダイス。
今日も明日も明後日も、絆を結んだ魔法少女達が織りなす物語を描いてくれる。
悪魔の夢は悪魔の呪い、悪魔の夢は悪魔の救い。
地獄の現実なんてどこ吹く風か、今日も明日も明後日も、魔法少女達はカラフルな人生。
夢が覚めたら優しい世界、毎日の日常の中には友達の姿がいてくれる。
そこには悪魔の姿もいるけれど、彼女は夢の世界で共に戦う魔法少女の仲間なのだ。
永遠に繰り返すだろう、楽しくも愚かしい廻天の戯曲を魔法少女達は踊ってくれる。
それこそが悪魔の理想であり、大罪を犯してでも愛する人に与えたかった理想の世界。
だけど物語は終わってこそ価値あるもの。
いつか夢が覚めるようにして、悪魔の理想も終わる時がくるのである。
「ねぇ…ほむらちゃん」
「何かしら、まどか?」
ザイオン市民として生きているまどかは今日もほむらと一緒に下校している。
買物に付き合ってくれたお礼としてまどかはほむらをお茶に招待している時の光景なのだ。
「ほむらちゃん…その…最近はコンパクトミラーをよく見るようになったよね…?」
「それがどうかしたの?」
「えっとね…昔のほむらちゃんはその…身だしなみを繰り返し整えるような子だったのかな…」
怪訝な顔つきを見せるまどかの隣の席に座るのは手鏡で自分の顔を確認している暁美ほむら。
顔をつねったり唇を摘まんでみたりしながら自分の顔をコンパクトミラーで確認している。
「変な質問ね?私だって女の子なんだから身だしなみぐらいは整えるわよ」
「変な質問をしてるのは分かってる…だけど…そこまで自分の姿が気になっちゃうの…?」
「ええ…そうよ。上手くやれてるのか気になっちゃうし…」
「上手くやれてる…?」
失言だと思ったのか、ほむらは気にするなと言ってくる。
しかしまどかはそれ以外の部分も気になっている。
毎日ほむらと顔を合わせる度に彼女の目の色が違って見えてしまうのだ。
それを追求してもはぐらかされてばかりであり、ほむらは直ぐに別の話題にすり替えてしまう。
「それよりもね、まどかの夢の話が聞きたいわ。今日も楽しい夢を見られたんでしょ?」
「えっ…?う、うん…そうなんだ。わたし達は魔法少女っていう変身ヒロインになる夢なの…」
「その中には私もいるんでしょ?私の活躍はどう?まどかを助けられている?」
悪魔の記憶操作魔法で操られる少女達は自分達のことを魔法少女だと忘れている。
魔法少女として戦うのは夢の世界の話だけであり、普段の生活はただの女子学生。
しかしさやか達が魔法少女でなくなったわけではなく、ソウルジェム指輪だってまだある。
それなのに魔法少女として活動する必要すらないのは彼女達を影から守る悪魔達がいるお陰。
クララドールズも悪魔化しており、エナジードレインを用いて感情エネルギーを吸い出すのだ。
悪魔ほむらの分霊達は夜な夜な行動しており、さやかと杏子、マミとなぎさの穢れを吸い出す。
そして夢に干渉して楽しい理想世界を提供し続ける夢魔のような存在でもあるのだろう。
クララドールズのお陰でまどか達は人間としての人生を謳歌しており、戦う必要すらない。
だからこそ毎日楽しく過ごすだけの生活を送れるのだろうが、まどかはこう語ってくる。
「えっとね…さやかちゃん達も困惑してるの。毎日同じような夢ばかり見るのは変だって…」
「どうして?楽しい夢なら毎日見たいものじゃない?現実なんて辛いだけなんだし」
「現実は辛いけどさ…わたし達は夢の住人なんかじゃないの。現実を生きてる存在なの…」
「辛い現実の合間に見る楽しい世界…そんな世界なら、その幸せの中で引き籠ってればいい」
「それは現実逃避だって杏子ちゃんは言ってるの…甘いお菓子のような世界だって…」
「お菓子の家に引き籠って毎日が楽しい女子会♪とっても素敵じゃない?何が不満なの?」
「楽しいだけじゃ腐ってく…仲良し社会だけ求める状態は官僚主義だってマミさんは言うの…」
新しいことに対して消極的になり、変化を嫌うようになり、腐った流れを変えられなくなる。
個人や組織の成長が停滞し、人間関係などが硬直した集団になり易く、その弊害も多くある。
マニュアル重視のため役割を正確に進められるメリットもあるが、抜けだせない状態なのだ。
「杏子ちゃんは楽しいだけの変身ヒロインの夢をこう言うの…
楽しいだけの夢の世界に埋没し、いつしか心は腐り果てて甘い堕落を貪るばかりの姿に堕ちる。
その姿はまるで腐れに支配された蠅少女達であり、腐ったお菓子に群がるばかりの醜悪な状態。
そんな風に杏子は思っており、腐った夢の世界は
そんな風に思っている少女達に対してほむらの表情が変わっていき、氷のような顔でこう言う。
「甘い夢の世界で癒されたい…埋没したい…そう考えて何が悪いの?私には分からないわ」
「甘い世界に引き籠っているとね…人間としての誇りを失いそうだって…皆が言い出すの…」
「百江なぎさはそんなことを言ってないわ。あの子はチーズと親友があればそこが天国だから」
「なぎさちゃんからそう聞いたの?彼女はそう言うけどね…チーズは発酵食品なんだよ…」
「腐った食べ物、腐った夢、それが美味しくて幸せだと言う人もいる。偏見は良くないわよ」
甘い夢の絵画世界こそが虐げられるばかりの魔法少女達が探し求めた安息の地。
優しいばかりで辛くない甘い世界で寝床を探し、甘く腐っていけばいいとほむらは言ってくる。
そんな彼女こそ、腐れた絵画世界の如き夢の世界を魔法少女達に与える夢魔なのだ。
「腐ってばかりの人生の何が楽しいの…?そんなのは心がウジでいっぱいになった光景だよ…」
甘い夢の世界と甘い日常で腐れていく毎日を生きていると、心が酷く痒くなっていく。
まるで心がゾンビになったようであり、腐った心から腐った臓器が垂れ下がったように感じる。
そんな夢を毎日与えられる状態に対してまどか達は苦しんでいると言ってくるのだ。
「
「どうしてまどか達は…そうやって自分を傷つけるだけの道を選ぼうとするのよ…ッッ!!」
激昂したほむらが立ち上がってしまい、まどか達を罵倒してくる。
「正義執行しながら無双して!褒め讃えられて!承認欲求満たせて皆幸せ!何がいけないの!」
「それがいいって言う人達を否定するつもりはないよ…だけどわたし達は…それが辛いの…」
「誰かの為に苦しむ必要はない!他人は道具よ…利用するだけ利用しながら生きなさいよ!」
「ど、どうしてそんな残酷な事が言えるの…?わたし達だけで生きてると思ってきたの!?」
「その通りよ!!他人は魔法少女を傷つけるだけなんだから…自己完結しちゃえばいい!!」
怒りを噴き上がらせるほむらの気配は目の前の彼女だけでなく、周囲からも感じてしまう。
視線を横に向ければ街の至る所にほむらの姿が見えており、まどかはゾッとしてしまうのだ。
「他人に振り回される必要はない!他人に期待しても何もしてくれないんだから!!」
クララドールズにも暁美ほむらが味わってきた苦しみが宿っており、本霊の気持ちを代弁する。
他人は他人に興味はない、自分の都合の良さしか求めない。
そうやって見捨てられてきたからこそ、暁美ほむらは自己完結の魔女に成り果てた女なのだ。
「社会の維持が自分達を救うって考えるの…?違うわ…拘泥しない精神生活が貴女を救うの!」
他に選びようがあるのに一つの事に拘る必要はない、求めていいのは利己主義だけ。
絆を結んだ愛しい少女達だけがいればいい、本当は赤の他人なんて必要ない。
自分に必要な時のみ他者を求める、他者を利用する、それが済めばゴミとして捨てる。
それこそがムスビ思想であり、自己完結の魔女に成り果てた暁美ほむらが求めた思想なのだ。
「私達には赤の他人は必要ない!絆を結んだ少女達がいればいい!他人なんて利用するだけ…」
本霊の歪んだ思想を垂れ流していた口が止まり、目の前の少女の変化に戸惑ってしまう。
見ればまどかの目からは涙が溢れ出しており、哀れな存在を見るような表情を浮かべてくる。
「そんなのってないよ…あんまりだよ…わたしは他人でも必要なの…だって助けられたから!」
まどかの人生を救ってきたのは絆を結んだ魔法少女だけではない。
家族、友達、クラスメイト、社会で働く人々、全てが関係ないように見えて関係している。
魔法少女達もまた人間社会の住人として生きた者達であり、社会インフラの上で生きられる。
それを支えてくれたのは赤の他人である人間達であり、名前も知らない存在達のお陰なのだ。
「わたし達が誰かを助けたいと思うのは…誰かが助けてくれたからだよ!なのに酷過ぎるよ!」
まどかの中には嘉嶋尚紀と同じ人間社会主義が宿っており、だからこそムスビ思想を拒絶する。
「社会はわたし達だけのものじゃない!他人は尊重するべきだよ!だからわたしは戦うの!!」
悲しみのあまり泣きながら走り去っていくまどかに対してほむら達が一斉に動く。
「センター聞こえる!監視カメラを総動員して鹿目まどかを追いなさい!私が行くわ!!」
センターを牛耳る魔王の分霊の命令が伝えられたことで行政ビルの都市管理部門が動き出す。
街中の監視カメラがまどかの動きを追い、何処に逃げようとも見つけられるだろう。
ポケットの中のスマホの位置情報も把握されており、ほむらの網からは逃れられない。
そんな中、泣きながら走る少女の中では厳重に鍵が掛けられた鎖の牢獄に異変が生じる。
鎖に亀裂が入っていき、悪魔ほむらが奪った記憶と力が溢れ出してくるのだ。
「社会の大切さをわたしに教えてくれた男の人がいたような気がする…その人の名前は…」
溢れ出すのはそれだけでなく、絶望の果てに希望の女神を求めた少女達の記憶まで溢れる。
津波の如き膨大な奔流に耐えられず、公園の噴水前で倒れ込んでしまうのであった。
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暗い暗い精神の海の中に沈んでいくのは夢の世界で纏っていた魔法少女服を纏う少女の姿。
新しい魔法少女服には鍵で繋ぐような飾りも備わっているのだが、鎖に亀裂が入っている。
目の前に見えるのは光り輝く水面であり、不安定であっても甘く腐れた悪魔の夢の景色。
腐れから解脱するようにして暗い暗い海の世界に沈んでいく少女が思い出すのは記憶である。
(虐げられる…わたし達は虐げられる…魔女として…悪者として…虐げられてきた…)
暗い海の世界に浮かんでいく記憶の景色とは希望を信じて絶望した歴史の光景。
数多くの魔法少女達が紡いできた物語の景色であり、その末路はいつだって残酷なのだ。
(そんな誰かの歴史をキュウベぇから聞かされたから…わたしは神様になった…)
遠くなっていく海面から目を逸らすようにして体を反転させる。
見えるのは暗いだけの海底なのだが、浮かび続ける記憶の景色が巡り続ける。
(わたしの半身になってくれたアラディアでさえ虐げられた…だから助けたかった…)
アラディア神話のルーツは古代の多神教の女神崇拝であり、一神教に迫害されていく。
その迫害は魔女宗にも襲い掛かり、魔女達は希望の女神を求めてしまう。
しかし求めるあまり捏造の神を生み出したことでアラディアは本物の概念になれなかった存在。
彼女は生まれた時から偽物であり、母神にされた女神からは疎まれ、男神にされた者もいない。
異邦の神としてアマラ宇宙を彷徨うばかりの彼女の心は寂しさのあまり壊れてしまうのだ。
(世界は本当に残酷でしかない…それでも生きる必要がある…それが生命の役割なんだよ…)
<<虐げられし我ら魔女…だからこそ救いを求めた。
聞こえてきた念話に振り向けば、いつの間にか円環のコトワリであるアラディアがいる。
牢獄から脱出出来た彼女もまどかの隣で海の底に沈みながら記憶の世界に浸っているようだ。
<我も月の光を求めてきた…それでも現実は残酷だ。母上は娘ではないと我を虐げてきた…>
<その気持ち…分かるよ。わたしもね…ママの記憶から消えた時は…凄く辛かったから…>
<神であっても誰かを求めてしまう…繋がりを求めてしまう…我らはこんなにも小さいのだ…>
<神様も魔法少女も人間も…本当は小さいの。だから繋がりを求めたい…繋がりを守りたい…>
<繋がりを守る…それこそが円環だ。恒久の環の如く…愛する誰かと繋がっていたいんだ…>
<だからこそ、わたし達は戦ってきた。それこそが…魔法少女達の人生なんだから…>
<汝に問おう、繋がりとは何ぞや?絆を結んだ愛する誰かか?それとも赤の他人か?>
<全てだよ。わたしは弱いから…誰かに守ってもらいたい。
まどかが右手を振れば浮かび上がる記憶の景色。
それは魔法少女達の物語だけではない、魔法少女達と共に生きてくれた人間達の記憶の景色。
魔法少女と関りを持たなくとも労働によって守ってくれた人達まで記憶の景色に浮かんでいる。
<全てが繋がり合わなければ…わたし達は生きられない。だからこそ欲する、感じたいの…>
<欲するものがあるのなら…汝は戦えるだろう。しかし心せよ…現実は黙示録と化している>
<だからこそ誰かが絶望の暗闇を照らさないといけないの。その可能性を示さないといけない>
<ならば…汝もまた光となれ。光を生む存在とは父上のような太陽だけではない>
――魔女達が崇拝してくれた
微笑んでくれたアラディアが右手に生み出したのは円環のコトワリを象徴する大弓。
弓とは三日月を表す武器でもあり、三日月こそがアラディアを祀る儀式にも使われる存在。
月の女神の娘なのだと魔女が生んだ概念存在であるアラディアもまた月の女神なのだろう。
<うん…わたし…月の光になるよ。それを希望の光だと言ってくれるなら…>
――円環のように繋げてみせるから。
アラディアの大弓をまどかが掴んだ瞬間、悪魔の封印の象徴であった衣服の鍵が砕け散る。
微笑み合った女達が向かい合って手を繋ぎ、互いが目を閉じていく。
アラディアの姿が透明になっていき、まどかの体と重なっていく。
そして生み出されたのは暗い海を青白く照らす満月の光の如き女神の御姿なのだ。
「全てを思い出せた…わたしは行かないといけない。ここは…わたしの居場所じゃないから」
精神の牢獄世界を突き破るため、円環のコトワリとなったまどかは光の翼を背中に生み出す。
淡いピンク色に輝く翼を羽ばたかせて海底に飛んでいく彼女達を照らす光まで生み出される。
海底から生まれた光こそ月と対となる太陽であり、まどか達にとって大切な男の光でもあった。
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「まどか!!しっかりしなさい…まどかぁ!!」
噴水前の公園に倒れ込んだまどかを抱き起しながら叫ぶのは暁美ほむらを演じる分霊である。
周囲には他のクララドールズも立っており、眠り姫が目覚めるのを待ち構える。
全員が手を持ち上げており、まどかが目覚めた瞬間に強力な記憶操作魔法を仕掛けるのだろう。
クララドールズの中にも暁美ほむらの心が宿っているからこそ縛り付けたいと望んでしまう。
そんな歪んだ愛情に応えなければならない義務も責任もまどかにはないのだ。
「ま…まどか……?」
まどかを抱いているほむらの腕の中で目覚めた少女とは、偽りの魔法少女ではない。
神であり悪魔を表す金色の目を宿した円環のコトワリであり、ほむらの顔が恐怖で引きつる。
「ごめんね…あなた達に恨みはないの。だけど…わたしをこれ以上…好きにはさせないから!」
極大の魔力が噴き上がったことでほむらになったドールズ達の体が弾き飛ばされてしまう。
倒れ込んだドールズが見上げる存在とは白いドレスを身に纏い、光の翼を持った女神。
「私達の記憶操作魔法が破られるだなんて…!?行かせない、行かせないわよ…まどかぁ!!」
甘く腐った夢の世界に入り込み、まどか達と楽しく過ごした偽りの魔法少女姿に変身する。
他のドールズも偽りの魔法少女に変身するのだが、その程度の力で止められる存在ではない。
「あなた達もほむらちゃんの心なんだね?だからわたしを縛りたいようだけど…わたしは行く」
右手を横に持ち上げていけば背後に浮かび上がるのは円環の魔法陣。
極大にまで膨れ上がった女神の力を前にしたほむら達は魔法の弓を構えていく。
「わたしはね…ほむらちゃんのモノじゃない。わたしにも望みがある…それが個の確立だよ!」
円環のコトワリが行使した悪魔の魔法とはマハブフバリオンであり公園が絶対零度と化す。
<<アァァァァーーーーッッ!!!>>
公園以外には被害が及ばないよう威力を抑え込んでいるが、公園内は氷結地獄と化すのだ。
「あなた達の生命力なら生き残れると思う…あなたの部下の悪魔達に助けてもらうといいよ」
氷結地獄が晴れた公園は氷の魔窟と化しており、クララドールズ達は全員が氷漬け状態。
しかし悪魔の分霊であるクララドールズは氷結状態ではあるが命は奪われていないようだ。
「ここは偽りの希望の都市…本当の希望はね…勝ち取らないと手に入らないものだから!」
光の翼を広げたまどかの体から光の奔流が天に向かって迸り、巨大な光の柱となっていく。
次元を跳躍する光の柱を見つめるのはザイオンの行政ビルの屋上に立つ門倉の姿なのだ。
「……やはり抑え込めなかったか。魔王を気取る暁美ほむらの分霊も大したことなかったな」
「クララドールズとやらの魔力はまだ感じられますが…如何するのです?」
「始末しておけ。私はね、あの女のデカいツラを見続けるのは耐えられん…消えて欲しいのだ」
「し、しかし…ルシファー閣下を失い、他の魔王達の大半が戦死されてしまった状態では…」
「悪魔ほむらは貴重な戦力なのだろう…しかし、それもハルマゲドンが終わるまでの話だがな」
「ハルマゲドンが終わった後は…彼女も始末するつもりなのですね?」
「バアル様はそのつもりだ。そしてザイオンで飼い殺しにしてる魔法少女共は生贄となるのだ」
偽りに塗れた希望の都市は暁美ほむらの希望すら裏切る都市。
彼女の土台は不安定どころか最初から欠陥品であり、それに縋りついた報いを受けるのだろう。
偽りの希望の都市から飛び立つようにして円環のコトワリは神浜の地上に帰ってくる。
その光景は光の柱となって地上に顕現しており、神浜中で見える程の光の光景となるだろう。
「あっ……あぁぁぁぁぁ……ッッ!!!」
北養区の尚紀の屋敷では略奪された地上の屋敷の片づけを行っていた魔法少女達がいる。
天を貫く希望の光を見つめるのは絶望に沈んでいた五十鈴れんと綾野梨花の姿なのだ。
「あの光の柱って…なんなの…?また新しい悪魔が神浜に現れたっていうの…ッッ!!?」
「ち、違います…あの暖かな光…そして希望を感じるこの魔力は…悪魔なんかじゃないです!」
「だ、だったら…何だって言うのさ…!?」
「きっと…希望の光です…!!私達が求めてやまなかった…魔法少女の希望だと…思います!」
それを聞いた梨花の表情が晴れ渡り、急いで地下の魔法少女達にも伝えに行こうとする。
しかし梨花が地下エレベーターの前に走ってくるとすし詰め状態で地上に上がった者達がいる。
「つ、潰れるゥゥゥゥーーッッ!!あち死する前に…早く外に出てったらぁ…ッッ!!」
「定員オーバーなのに無理やり入り込んできたせいだよね…ッッ!!」
「いや~ん…ッッ!!悪魔な私でも…流石に潰れ饅頭になっちゃうわよ~…ッッ!!」
「押し出せ…ッッ!!前の奴らを押し出してくれよ…ア、アタシも体が限界…ッッ!!」
「ふ、ふんむむむむむぅぅぅぅぅぅーーーー……ッッ!!!」
強引に出てくるものだからすし詰め状態の少女達が倒れ込みながら外に出てくる。
呆気に取られた梨花とれんの横を通り過ぎながら外に出てきた少女達が空を見上げるのだ。
「あ…あれがもしかして…死んだ私らを迎えに来るっていう…円環のコトワリなんやろか…?」
「わ…分かりませんが…これ程までの桁外れな魔力と神々しさを考えるなら…それ以外には…」
「レ…レナ達はまだ死んでないわよ?なのに何で円環のコトワリが地上に現れるのよ…?」
「きっと私達を助けるために地上に降臨してくれたんだよ…流石は私達の希望の女神様だね!」
「魔法少女にとっては死神なのかもって疑ったこともあったけど…レナ…訂正してあげるわ…」
燃え上がる神浜の上空で形を成すのは円環のコトワリ神となったまどかの姿。
月のように輝く翼を持ち、その手には三日月を表す大弓が握られている。
円環のコトワリであり、アラディア神でもある鹿目まどかは魔女達を救うために地上に現れる。
その光景こそアラディア神話であり、月の女神の命令によって地上に降臨する光景なのだろう。
「みんな…遅れちゃってごめんね。本当の地獄になったようだけど…精一杯抗うから!!」
大弓に生み出された魔力の弦を引き絞り、天に目掛けて矢を放つ。
曇天の夜空に描かれたのは円環の魔法陣であり、矢が命中すれば地上を清める豪雨と化す。
<<ギャァァァァァーーッッ!!?>>
燃え上がる崩壊した神浜の都市で略奪と殺戮を楽しむ悪魔達に目掛けて次々と矢が飛来。
ホーミングレーザーの如き矢の数々に射抜かれた悪魔達が砕けていき、MAGの光と化す。
それだけでなく街中で傷つけられ、今にも死にそうな人々にも矢が命中していく。
「な…なんだ…これ…?傷が癒えていく…ボコボコにされたのが嘘のように…?」
「奇跡なのか…?それにあの光の柱って…もしかして…神様が助けに来てくれたのかよ…?」
メディアラハンの光と化した矢が命中した人間達の体は完全回復し、神の奇跡に驚愕していく。
生き残った人間達が光の柱が見える場所にまで移動した後、膝を曲げながら祈りを捧げる。
残された魔法少女達も膝を曲げて祈りを捧げる光景こそ、人間と魔法少女を繋ぐ光景。
太陽神ルシファーの娘であるアラディアもまた円環であり、月の光を纏う女神であった。
本当はここら辺の話は映画ワルプルギスの廻天を見てから描きたかったんですが、延期しちゃったので独自路線で描きました(汗)
独自路線で描いたら何故かダークソウルネタがぶち込まれていたで御座る(フロム脳)