人修羅×まどマギ まどマギにメガテン足して世界再構築   作:チャーシュー麺愉悦部

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366話 戦争の是非

魔法少女として生きた暁美ほむらが戦ってこれた力とは内から動く力。

 

目標へ向かうのではない、成功や成果を目指すのではない。

 

外へ向かっても誰も彼女の苦しみに気が付かず、目を向けてくれなかったせいだろう。

 

何かに救いを求めても助けてくれないのなら、自己完結してでも己の命を表現する。

 

それこそが何百回もの地獄を繰り返した暁美ほむらの命の発露だったのだ。

 

そんな彼女の生き地獄の歴史に気が付いてくれた存在こそが女神となった鹿目まどか。

 

誰にも思いが伝わらない暁美ほむらの苦しみを知る力である神の英知を手にした者である。

 

そんな彼女に苦しみを理解してもらえた時、暁美ほむらの心は救われたのだろう。

 

それでも愛する人は救われず、この世から消えてしまったからこそほむらは再び絶望していく。

 

いつしか彼女はこの世の運命そのものに抗いたい、逆らいたい欲求が生まれてしまう。

 

この世の全てを捻じ曲げてでも自分の思い描く理想の世界を無理やり作りたいと願い出す。

 

その為に円環の女神を引き裂いたり、世界に嘘の記憶をでっち上げてまどかの居場所を作る。

 

そんな彼女の傲慢さは留まる事を知らず、女性同士の恋愛と結婚が認められる世界まで欲する。

 

悪魔ほむらは百合結婚を可能とするジェンダーフリーや性のマイノリティー保護を求めていく。

 

傲慢で強欲な彼女はこうしてフェミニストに成り果て、百合を司る新たなリリスとなるのだ。

 

しかし、これはあくまで暁美ほむらの主観から見えた景色。

 

それは鹿目まどかの主観の景色などではない、彼女の願望などではない。

 

だからこそ鹿目まどかは悪魔ほむらが望む傲慢で強欲な我儘を止めに来たのであった。

 

……………。

 

<ま……まどか……なのか……?>

 

<そんな…ザイオンのクララドールズ達が死んだ原因は…やはりこういう事だったのね…!?>

 

ズタボロの人修羅と悪魔ほむらの腕を掴みながら殺し合いを止めに来たのは円環の女神。

 

再びコトワリ神になったまどかの目にも涙が溢れてしまい、殺し合う者達に懇願してくる。

 

<お願いだからもうやめてよ…尚紀さんとほむらちゃんが殺し合うなんて…間違ってる!!>

 

腕を掴んだ手から溢れ出すのは極限の回復魔法の光であり、メディアラハンが行使される。

 

死にかけた人修羅と悪魔ほむらの傷が完全に癒えたことで互いが武器を下ろしていく。

 

二人の腕を放したまどかは涙を零しながら戦いを止めて欲しいと言ってくるのだ。

 

<尚紀さん…貴方の体に何が起きたのかは…あの戦いの時から気が付いてました…>

 

<あの時から俺はもう戻れない道を進む身だ。既に俺は大魔王…人々に多大な犠牲を敷く者だ>

 

<だからって…世界大戦を敷いてまで世直しをするなんて間違ってます!今直ぐやめて!!>

 

<それは出来ない。俺は犠牲を敷いてでも世界を作り直したい…それは…ほむらも同じだろ?>

 

顔を向けてきた人修羅に対して顔を俯けながらも悪魔ほむらは頷いてくれる。

 

<私もね…彼とは向かう方向が違っても望みは同じ…多大な犠牲を敷いてでも望む世界がある>

 

<右翼連中だろうが左翼連中だろうが、それぞれに望む道がある…だからこそ俺達は……>

 

<だから潰し合うんですか!?人々の未来を焼き払うんですか!?そんなのおかしいよ!!>

 

<まどか…人間も世界も限界がある。右の道を歩くと同時に左の道を歩く真似なんて出来ない>

 

<その通りよ…どちらかの道しか歩けないのなら…私は左の道を歩かせてもらう>

 

<俺は右の道を歩くだろう…そして人々は分断されるんだ…末路は見ての通りさ>

 

<どうして同じ道を作ろうとしないの…?どうして真ん中の道を模索しようとしないの!?>

 

<まどか…お前の考え方もまた傲慢だ。人々を規格統一したいと望むのは共産主義の発想だ>

 

<そ…それは…その……>

 

<お前が望む博愛や平等精神こそが()()()()()()()()()()()()グローバリズム侵略なんだよ>

 

まどかが望む円環精神は地域主権や民族主権を破壊する。

 

移民を含めて皆が手を取り合って平和を望むべきだと言うが、末路は潰し合いしか残らない。

 

経済活動は椅子取りゲームであり、国民が仕事の採用を得たら移民が怒り、その逆も然り。

 

人々が難民に成り果てたなら助けてあげるべきだと言っても末路は受け入れた側の自滅のみ。

 

これが現実であり、博愛や平等精神とは国と国民を飢え死にさせる悪魔の罠なのだ。

 

<お前のようなお人好しを食い物にする詐欺師民族に国を売り飛ばす優しさなど俺は必要ない>

 

<そ…そんなのって……>

 

<これがマキャベリズムである君主論の教えだ。民族主権を守る上では…やちよは正しかった>

 

円環のコトワリに戻ったまどかの記憶にはこの世界の神浜魔法少女達の光景も存在している。

 

人修羅が語ったのは神浜テロの頃の話であり、社会主義と共産主義の限界が伝わるようだ。

 

<苦しんでる人がいても全てを救う力なんて誰も用意出来ない…お前の家族だってそうだろ?>

 

飢えて苦しむ難民がまどかの家に大勢流れ着いたなら、皆が手を取り合って円環に出来るのか?

 

鹿目詢子の稼ぎにも限界があり、一家の大黒柱として家族の命を優先するべきではないのか?

 

これが移民問題やグローバリズムの答えであり、国民は民族という家族を優先するべきだろう。

 

<だから外国人には犠牲を強いるんですか…?外国人だって日本人を助けてくれてます!>

 

<自由貿易は侵略だ。経済規模が違い過ぎる外国製品に関税を敷かなければ国内産業は全滅だ>

 

<国内産業を優先するのが地域主権や民族主権だと言うんですか…?>

 

<外国人投資家に国内産業の株を奪われ、大株主になり支配者と化す。末路は植民地化なんだ>

 

まどかが掲げる博愛や平等精神によって、国はこんなにも乗っ取られながら壊されていく。

 

外国人を儲けさせるためだけに働かされる末路と化すのが博愛や平等精神という究極の詐欺。

 

まさに悪魔の所業なのだと突きつけてくる人修羅に対して円環の女神の顔が俯いてしまう。

 

<皆で手を取り合うなら同じ民族の間だけにしろ。それが俺と静香達が望む国家社会主義だ>

 

<尚紀さんはどうしても戦うというんですね…?>

 

<そうだ…大勢を犠牲にしながら世界に法の復活と国境の復活をやり遂げる。話はそれだけだ>

 

人修羅には人修羅なりの正しさがあるのだと感じていた時、アラディアの念話が響いてくる。

 

<父上の御考えこそ我の考えでもある…我もまた魔法少女の神として魔法少女しか優先出来ん>

 

<それが…王様の役目なんだね…?>

 

<そうだ…慈悲だけでは国は維持出来ない。民を守る為なら鬼となる峻厳もまた必要なのだ…>

 

<だけど…それだと潰し合いしか生み出せないよ…?それでもいいの…?>

 

<丁度いい…暁美ほむらと話をさせてくれ。我なりにフェミニズムとやらの答えを示そうぞ>

 

アラディアの人格に切り替えるようにして円環の女神の表情が変わっていく。

 

峻厳と均衡を司る女王の顔と化したまどかがほむらに顔を向ければ彼女も冷や汗が浮かぶ。

 

<暁美ほむら…再び行った暴挙の問題の追及は今はやめておく。それよりも伝えたい話がある>

 

<アラディア…一体何を私に伝えたいと言うのかしら…?>

 

<我が築いた円環世界もまた同性愛が蔓延っているが…自然な恋愛を望む魔法少女も大勢いる>

 

<円環の魔法少女達もフェミニズムを望む子が大勢いるのなら…潰し合いが生まれてるはずね>

 

<どちらも自分が望む規範を譲れないからこそ争いが生まれる…だから我はな…国境を引いた>

 

<国境を引いた…ですって…?>

 

<どちらの理想も尊重するならそれしか争いを避ける方法はない。それが国境線の住み分けだ>

 

日本から見て他国の文化はイカレてると感じるように、外国も日本はイカレてると感じるもの。

 

それぞれが育った地域間の文化や価値観は水と油のように混ざることは決してない。

 

それを共産主義理念である博愛や平等で無理やり規格統一しようものなら大火事になるだろう。

 

これこそがグローバリズム問題であり、政治でなくてもサブカルの好みの違いですら戦争だ。

 

<父上が望む国境の復活とは他国は他国で完結し、経済的な関係だけを望む()()()()だろう>

 

<その通りだ、アラディア。流石は円環の女神を務めてきた奴だな…見直したぜ?>

 

<えっ…?あ、あの…ええと…その…これでも我は…父上の娘な女神なのですよ♪>

 

さっきまでの氷の女王の顔が一変し、父親に褒められて喜ぶ娘のように照れ笑いしてしまう。

 

そんな幼さが残るアラディアに父親として求められるものがあるなら彼も応えてくれるだろう。

 

しかしアラディアの答えに対して我慢ならない表情をした悪魔ほむらが叫んでくる。

 

<そんなんじゃ…私の理想は成し得ないわ!私にこの世から出て行けとでも言いたいの!?>

 

<それも一つの答えだな。他所の地域で他所の文化を勝手にするなら人々は文句もないだろう>

 

<そんなのは認めない!私はまどかと生きているこの世界で理想を成し遂げたいのよ!!>

 

<ほむらちゃん…それは流石に傲慢過ぎるよ…>

 

アラディアからまどかに人格が変わった円環の女神が友達に対して諭すような言葉を送る。

 

<わたしや魔法少女達はね…国という家で生きてるの。他人の家で生かしてもらえているの>

 

<そ…それは……>

 

<ほむらちゃんは人様の家に上がり込んで…自分好みじゃなかったら我儘を敷くというの?>

 

他人の家が築き上げたルールが気に入らないから自分ルールを持ち出して勝手に敷こうとする。

 

この家は多様性が無いだの、差別的だの、グローバルじゃないだの、勝手な我儘を言い出す。

 

そんな我儘極まりない存在を国という家に上がらせておきたい住民がいるというのか?

 

<勝手な事を言わないで!私が生きた日本は皆のものよ!私にも在り方を決める権利がある!>

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()。博愛や平等を言いながら家の財産を持ち逃げする>

 

ドイツはカナン族ユダヤを家に招き入れて国を奪われ、日本も朝鮮を家に招き入れて同じ末路。

 

盗人が好む概念こそが博愛や平等であり、悪を許す寛容な心を他国に強制しながら支配を狙う。

 

それこそがフランス国旗の正体であり、化けの皮の奥には盗みと姦淫を愛する民族がいるのだ。

 

<公共は皆のものだけど…()()()()()()()。公共を尊重しない人はね…排除されるしかないの>

 

<俺は車を運転しようが普段は交通ルールを守ってきた。公共は俺だけのものじゃないからな>

 

<ほむらちゃんがこうしたい!と思ってもね…わたし達は住んでいる地域を守る必要があるの>

 

<まどかの例えこそが地域の歴史というルールを尊重する考え方だ。それを破壊したいのか?>

 

尚紀からの追及ならいくらでも問題をすり替えて反射してきたのに、まどかの追及は出来ない。

 

大嫌いな男ならいくらでも問題を擦り付けられるのに、愛する人にはそれが出来ないのだ。

 

顔を俯けながら体を震わせることしか出来ない悪魔ほむらの顔は苦悶に満ちている。

 

<わたし達は魔法少女として生きた存在…魔法少女はね、地域の人々を守ってきたんだよ?>

 

<私が…魔法少女として生きたのは…他人のためじゃないわ…貴女だけのためよ…>

 

<ほむらちゃんがわたしを守った事は知ってる…だけどね、世界はわたしだけじゃないの>

 

<私の世界は貴女と生きる未来だけよ!!我慢を選んだら私の望みは…断たれてしまうの!!>

 

<わたしと生きたいと望んでもね…わたしもほむらちゃんも他人の家で生きるしかないんだよ>

 

<だったら私と一緒に国を築きましょうよ!多様性が敷かれた共産主義国を築きましょうよ!>

 

<いい加減にして!!ほむらちゃんの理屈はね…>

 

――()()()()()()()()()()()()()の……犯罪行為だよ!!

 

ガラにもなく怒る程のエネルギーを放つまどかの気迫に対して、怯えた猫になってしまう。

 

両膝が崩れ落ちた悪魔ほむらは両手を月の大地に置きながら愕然とした顔つきとなるのだ。

 

<ほむら…魔法少女として生きたお前は()()()()()()()()()()で…傲慢になったんだな…>

 

まどかを守るため、魔法少女の暁美ほむらはヤクザや自衛隊、果てには米軍から盗みを行う。

 

全てはまどかを守るためだと犯罪行為を正当化しながら被害を与えた存在など気にしない。

 

人修羅も服を盗んだことはあったが、ちゃんと持ち主に返却したり十倍の値段で購入し直す。

 

これが人修羅と暁美ほむらの決定的な違いであり、彼女は責任逃れがしたかっただけの女。

 

責任から逃げない人修羅と無責任な暁美ほむらだからこそ、道が分かれてしまったのだろう。

 

もしフェミニズムの大弊害の責任を追及された時、暁美ほむらは責任を果たせるのか?

 

答えは魔法少女時代の彼女が示し続けてきたはずだ。

 

<私…わたし…知らない間に…盗人に成り果てていたの…?盗みと姦淫を愛する女なの…?>

 

<お前はカナン人じゃない…日本人として生きた女だ。悔い改めろ…まどかとやり直すんだ…>

 

<杏子ちゃんも昔はワルだったって言ってたけどやり直せてる…ほむらちゃんもやり直せるよ>

 

<えっ…うえっ…あぁぁ…あぁぁ…あぁぁぁぁ~~……ッッ!!!!>

 

顔を地面に埋めながら念話で泣き喚く悪魔ほむら。

 

その姿はまるで眼鏡時代の彼女の姿に戻れたようにも感じるだろう。

 

そんな彼女を起こしながら抱きしめてくれるまどかに対してほむらも強く抱きしめてくれる。

 

(フッ…これが本物の友達関係だな。俺達もそうなれてたら良かったな……勇……千晶……)

 

目に薄っすらと涙が零れる男はそっと踵を返して去っていく。

 

ワームホールの中に消えて地球に戻った彼は水入らずの時間を彼女達に与えてくれるのだろう。

 

涙と共に傲慢さが抜け落ちていく悪魔ほむらの頭上に浮かぶのは邪神ノアの幻影。

 

ムスビの殻を内側から破られるかのようにして破裂しながら消え去ってしまうのだ。

 

自分のエゴだけを求めた引き籠りの殻はついに消え去り、ほむらはまどかと共に外に出かける。

 

そこには多くの人達がいて、絆を結んだ少女達だけの世界ではないのだと二人は知るだろう。

 

「わたしはね…この世界が好き。傷つけられる事もあるけど助けてもくれる…この世界が好き」

 

「分かったわ…貴女が愛する世界なら…たとえそれが気に入らなくても…私も守ってみたい…」

 

「クスッ♪やっと昔のほむらちゃんに戻れたね♪私達はそうやって魔女と戦ったんだから♪」

 

「貴女がいてくれる世界…貴女が生きたいと言える世界なら…同性愛がなくても…構わないわ」

 

地球に戻った彼女達は手を繋ぎながら頷き合い、覚悟を決めながら前方の空域を見つめていく。

 

迫りくるのは中国を破壊した後、シルクロードを超えながら欧州を目指す箱舟戦艦であった。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――

 

ティタン神族とオリュンポス神族の軍勢の戦いも決着が近い。

 

双方が多大な犠牲を支払いながらも戦い抜き、大将首を討ち取っていく。

 

「ヌゥゥゥゥゥ!!おのれオリュンポス共め…再び負けてたまるものかぁ!!」

 

ティタン神族の大将首の一つである長身の老人悪魔が砕かれた巨大岩盤の数々を浮遊させる。

 

超能力魔法であるマハサイダインを操るのはティタン神族の参謀として選ばれた魔神。

 

【プロメテウス】

 

先に考える者を意味する名を持つギリシャ神話の神であり、ティタン神族の系統である。

 

プロメテウスは太古の人間達があまりに貧しく喜びのない生活を送っていたのを哀れんだ存在。

 

オリュンポスから火を盗み出し知性や技術の発露と共に人々に与えた事でゼウスの怒りを買う。

 

カウカソス山に磔にされ、生きながら肝臓をハゲタカについばまれる責め苦を強いられる。

 

神族であるため不死であったプロメテウスの肝臓は再生し、死による拷問の終了はなかった。

 

「プロメテウス!貴様は業を伴う文化的英雄になりたかったのだろうが愚行なのだ!!」

 

「黙れアルテミス!貴様らがやっている世直しとて同じこと!自分らの所業を棚上げするな!」

 

「秩序は正しき神が行使してこそ人々に幸福を与えられる!過ぎた力は破滅を与えるのだ!!」

 

「正しき神?己惚れるなよ…小娘が!ゼウスもバアルも同じ牛神…行きつく先は傲慢のみだ!」

 

「磔の死罪をヘラクレスに救われてなお…お父様への憎しみを捨てられんか…哀れな存在め!」

 

「真実を知る知恵を独占するゼウスも金融資本家共も同じ穴の狢に過ぎん!どちらも滅びよ!」

 

赤いローブを纏った白髪の長髪と髭を伸ばした老人が超能力魔法を行使して岩盤を投げる。

 

次々と飛来する岩盤に対して一気に飛び込んだアルテミスの飛び蹴りが炸裂していく。

 

岩盤を蹴り砕き、跳躍移動を行いながら右手のクロスボウに月の光を収束させていく。

 

迎え撃つプロメテウスは両手を広げていき、オリュンポスから盗んだ火の力を生み出す。

 

その力とは火の魔法であり、魔法は文化を与える力にもなるのだと彼は示すのだろう。

 

「堕落に蝕まれた人類など此度の戦争で滅ぶがいい!我らティタン神族が再び生み直そうぞ!」

 

「貴様らティタン神族に世界の秩序を預けるつもりはない!再び我らに打ち倒されろぉ!!」

 

放たれるのは銀河烈星拳とマハラギダインであり、月の光を纏う矢の雨が降り注ぐ。

 

「ヌォォォォーーーーッッ!!!」

 

烈星拳の雨が降り注いだプロメテウスの全身が射貫かれていくが業火もアルテミスを襲う。

 

燃え尽きる程の神火に飲まれた彼女であったが、業火に浮かぶシルエットは彼女ではない。

 

炎を裂くようにして光を放つのはパラスアテナであり、彼女の大楯がアルテミスを救うのだ。

 

「お陰で助かったぞ…アテナよ」

 

「気にする必要はないです。それよりも奴の生命力はしぶとい…一気に攻め落としましょう!」

 

「心得た!!」

 

月と狩猟の女神と知恵と戦争の女神が一気に飛来し、大槍と大弓の矢を射出する。

 

雷を纏った一撃が無数の矢に射貫かれたプロメテウスの体を貫き、ついに力尽きる時がくる。

 

「人々に知恵を授けた我は滅びるか…やはり知恵は滅びを招く…人々は無知蒙昧な羊の方が…」

 

――幸せなのかも……な……。

 

倒れ込んだ巨人の体が砕け散り、膨大なMAGを曇天の空に撒き散らす。

 

地上に下りた女神達はその光景を見送る中、やりきれない表情をアルテミスは浮かべている。

 

「奴の罪は運命に抗する反逆英雄として捉える事も出来る…多くの芸術家が用いたように…」

 

「現代のプロメテウスは我々の方だと言いたいのですか…アルテミス?」

 

「イルミナティを形成した金融資本家共に反逆するのも世界を焼き払う火の戦争…同じかもな」

 

「独裁者など変わりゆくもの…独裁者を倒さなければ奴らが敷く滅びの運命は避けられない」

 

「だからこそ反逆する…その在り方こそがプロメテウスが行った罪の在り方なのだろう…」

 

「正義は勝った者にしか与えられません。奴はゼウス様に負けたからこそ罪人となったのです」

 

「その通りだ…勝った者が正義となり、歴史を築く権利が与えられる…だからこそ負けられん」

 

「我らもまた人類と同じく陰陽存在…神か悪魔か、それを決めるのは後の人類に任せましょう」

 

「そうだな…我々は今の最善を信じて戦おう。何が正しいかは…後の人類に判断してもらおう」

 

「大いなる権力には相応の責任が伴うもの…我らもまた…後の人類に試されることでしょうね」

 

<<戦場はお喋りの時間ではないのですのよ!!>>

 

巨大な岩盤を担いで押し潰しを狙うティタン兵に対して放たれたのは『殺風激』である。

 

風の耐性を貫通する程に圧縮された暴風を投げつけられたティタン兵は体を貫かれていく。

 

倒れ込んだ巨体が砕け散り、空から舞い降りてきたのはデメテルのようだ。

 

「お喋りしたいなら戦争に勝った後です。その時は豊穣の食材を並べたお茶会がいいですわね」

 

「フッ…そうだな。我らが地上を焼き払うならば…我らが再び種を撒いて育てていこうぞ!!」

 

「その心意気ですわ♪ハーベストな世界を築き直すため、我らは悪魔となって戦うのです!!」

 

新たな神話を築き上げるため、オリュンポスの神々は苛烈な戦場を駆け巡る。

 

アレス、ディオニュソスも苛烈な戦いを用いてティタン兵を屠っていき、戦局が決まっていく。

 

後はティタン神族の代表であるクロノスを仕留めるだけになるのだ。

 

「「ハァ…ハァ…ハァ……ッッ」」

 

全身傷だらけのゼウスと体のパーツが砕かれているクロノスの決着も近づいている。

 

次の一手で勝負をつけようとした時、父神が質問してきたようだ。

 

「ゼウスよ…貴様は此度の戦争に勝ち、地上を金融民族から奪い取った後…何を望む?」

 

「俺様の望みなら今でも実行されてるぜ?俺様の望みとは…増え過ぎた人類を間引くことさ」

 

「最終戦争だけでなくワクチンの毒によって多くの人が病死し、悪魔と化した…それが狙いか」

 

「この規模なら世界の三分の一に達する人類を間引くことは出来たはず…望みは果たしたさ」

 

「貴様にとって…啓明結社の計画も自分の望みを果たさせる道具に過ぎなかったようじゃな…」

 

「その通り。宇宙を支配するのはバアルじゃねぇ、俺様だ。俺様こそが未来の牛神なんだよ」

 

「牛神は至高天の玉座に二度座った権威…マルドゥク、バアル、そして次は貴様なのか?」

 

「そうだなぁ…人修羅がバアルに敗れたなら…俺様がバアルをぶちのめして座るのもありか?」

 

「それは不可能だと分かっているはず…貴様はナホビノを得られていない不完全な神なのだ」

 

「だからこそ俺様は全てを利用する。啓明結社を利用し、人修羅さえ利用する。支配の為にな」

 

「貴様も所詮は牛神…堕落と姦淫を愛する傲慢な存在…貴様などに…地上はくれてやらん!!」

 

「ハッ!!来いよ親父殿…積年の恨みが籠ったアダマスの大鎌で…自分の勝利を掴み取れ!!」

 

両腕を大きく広げながら挑発してくるゼウスに対し、最後の一撃を仕掛ける時間停止を行う。

 

時間が止まった世界で黄金の翼を広げながら突進し、ゼウスを両断する一撃を放つ。

 

唐竹割りの角度からブレイブザッパーが決まったのだが、ゼウスの体は両断されていない。

 

「ば……馬鹿な……ッッ!!?」

 

右肩に刃が食い込み、右肺と臓器を貫かれるのだが時間停止の世界でゼウスが動き出す。

 

「ゴフッ!!捉えたぜ……この距離ならば……外さねぇ!!」

 

時間停止魔法は術者と触れることで触れた存在も停止世界で動くことが出来る。

 

その特性を知っているゼウスは身を犠牲にしてでもクロノスに触れる必要があったのだ。

 

ゼウスの両手は放射状に広がっており、直線状には地球の大地は存在しない。

 

だからこそケラウノスの雷霆が噴き上がり、クロノスの体が膨大な雷の奔流に飲まれていく。

 

「じゃあな、親父殿!!家畜を間引いた後の処理が残ってる!それをあの世で見てやがれ!!」

 

雷霆の中で崩れていくクロノスが思い出す最後の光景とは暁美ほむらと旅した長い記憶の物語。

 

「フッ…フフ…暁美ほむらよ…お前さんの…戦いは…これから先も…続くじゃろう…の……」

 

ほむらの魔法道具として生きた時間神はついに完全消滅し、第二次ティタノマキアは終了する。

 

勝利の勝どきを上げるオリュンポス兵士達であるが地上は悲惨な光景が広がっている。

 

英国は神々の大戦争が広がったことで焼け野原と化しているのだ。

 

「支配を呪った俺達が世界を焼き払い、新たな支配者に成り果てるか…まさに矛盾の光景だな」

 

アダマスの大鎌もクロノスと共に消えたが傷は深いゼウスの隣に現れたのは人修羅である。

 

ワームホールの中から出てきた彼を睨むゼウスであるが今の状態では勝ち目がないだろう。

 

「テメェは何が言いたいんだ?まさかバアル共の支配を受け入れたまま支配されろってのか?」

 

「そうは言ってない…俺達はバアルの支配からの解放を掲げているが…末路は俺達も同じさ」

 

「ミイラに成り果てるって言いたいんだろうが…それでも俺様はやるぜ。テメェもそうだろ?」

 

「ああ…俺もお前と同じ悪魔となって世直ししよう。そして俺を撃ちたい奴がいるなら戦おう」

 

「勝者は常に誰かを犠牲にした悪だ…だからこそ常に殺される気構えでいなきゃならねぇ」

 

「そうだとも…勝者がずっと勝者のままでいていいわけがない。俺もまた敗者となる日が来る」

 

「だからこそ勝者は誰よりも強くならなきゃならねーが…テメェの心は弱者に過ぎねーよ」

 

「犠牲者達を踏み越え、その嘆きと怨念を子守り歌にして寝られるぐらいが…本物の強者か…」

 

「その通りさ。俺様達がやる戦争の是非なんざ、俺様達が考えるべきじゃねぇ、他にやらせな」

 

「フッ…お前は強いな、ゼウス?俺にもお前ぐらい傲慢な部分があったら…楽だったよ…」

 

ゼウスの傷を癒す女神達にも顔を向けていく。

 

その中にはアラディアが母神だと信じるアルテミスもおり、アラディア神話の夫婦神である。

 

「そなたが人修羅であり…アラディアが父だと認めた存在か?お互いに厄介な奴に追われるな」

 

「そう嫌ってやるな…あいつは愛されたいだけなんだ。お前は嫌っても俺は愛してやろう」

 

「フン…好きにするがいい。しかし覚えておけ…そなたは愛される者であり、呪われる者だ」

 

「……肝に銘じておく」

 

飛び去っていく人修羅を見送るオリュンポスの神々であるが、彼は振り向きもしない。

 

ワームホールを使って去らなかったのは自分達の戦争で滅ぼした景色を目に焼き付けるためだ。

 

「…()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。お前達は俺を呪う資格が大いにある…」

 

戦争の犠牲になった死体から立ち上る霊魂は苦しみ悶えており、嘆きの声が聞こえてしまう。

 

「死を誰かに敷くならば俺もまた死を体現しよう…そして勝者となるのは…未来の人類だけだ」

 

大罪を背負っても望む未来があるからこそ戦うのは右翼も左翼も同じ。

 

ならばそこに是非もなく、是非を考えるのは先の人類達の役目なのだと信じて戦うのであった。

 




やはりまどかが来てくれたら捩じれた関係も修復出来ますよね!
撃っていいのは撃たれる覚悟のある奴だけだ!はコードギアスが生んだ名言の中の名言だと個人的に思っております。
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