人修羅×まどマギ まどマギにメガテン足して世界再構築 作:チャーシュー麺愉悦部
ペンタグラム決起のニュース報道によって世界中が騒然としていく。
国の機関やメディアよりも早く東京湾メガフロート地区の米軍制圧情報が飛び交っているのだ。
その力を発揮したのはスマホのSNSである。
建設作業員の一人の呟きが写真画像付きで投稿されたのがキッカケだ。
『助けてくれ!兵士達が俺達を拘束して連れて行く!!』
写真付きの情報は浸透性がとても高い。
写真や動画とは、それ程までに他人への影響力が大きいのだろう。
SNS情報はまたたく間に拡散され、メディアや国の機関は出遅れる形となったようだ。
「…情報統制というのも、中々に難しいものだ」
スマホでSNSを見ているのはチェンシーである。
後ろの魔方陣に振り返ると見えたのは、タワー中央を地上にまで貫通する程の光の柱。
天を貫き、光は宇宙にまで伸びている。
「美しい光景だ。まさに我々の聖なる塔…旧約聖書でいう
バベルとはアッカド語で神の門を表し、天を支配しようとした人類の業である。
「スゴイチカラ……アフレテクル」
光の柱内には瞑想座りで宙に浮かび上がるアイラがいる。
魔法陣を利用して龍神から魔力を吸い上げているのだ。
この星を包み込む程の巨大洗脳魔法陣を地球の外側に描く為にチャクラである魔力を練る。
「大丈夫か、アイラ?魔脈の制御はできているか?」
「ウン、シンジラレナイホド、チャクラガアフレテクルノ…」
「私達魔法少女が古の力を行使する日が戻ってきたな」
不意に聞こえてきたヘリの音に対して視線を向ける。
遠くの空を見れば国営放送局の報道ヘリが近づいてくるようだ。
「フッ…いいだろう。世界が我らペンタグラム…いや、人類の支配者を知るいい機会だ」
チェンシーはアイラに指示を出す。
アイラは左手を持ち上げ、ヘリの方に人差し指を向けるのだ。
報道ヘリはメガフロート都市を旋回するようにしながら飛び続けていく。
カメラマンとリポーターが都市の映像を中継している。
<<メガフロート都市はアメリカ軍と思われる部隊に占拠されているように見えます!>>
地上に見える米軍兵器や兵士達の光景をメディアに映し出す。
電気設備工事が進んでいたのか、明かりが都市に灯っていたので地上の光景が確認出来る。
<<リポーター!これはアメリカ軍の日本に対する侵略行為に見えますか!?>>
テレビ局の放送アナウンサーの声がリポーターに届けられると返事を返す。
<<分かりません!ですが建設作業員の方々は見つかりません!人質にされているのやも!>>
報道ヘリはワタツミタワーに向けて旋回していく。
<<あ…あれは……!?>>
<<カメラから見える…あの光の柱は一体!?これはアメリカ軍の新兵器!?>>
視線を向けていた先から念波の波動が空に広がっていく。
<<ウアアーーッ!!?>>
<<リポーター!どうしたんですか!?>>
<<……聞け!全人類よ!!我らはペンタグラム!!>>
<<リポーター!?一体何を言っているんですか!!>>
<<このメディアを通して世界に宣言する!世界は我ら魔法少女によって支配されるのだ!>>
<<ペンタグラム…?魔法少女…!?何を言っているんですか?リポーター!!>>
<<もはや貴様らは霊長類の長ではない!!我ら魔法少女こそが霊長類の長となる!!>>
<<魔法少女!?魔法少女と呼ばれる存在が…米軍の指揮を執っているのですか!?>>
<<世界の全てを我ら魔法少女が支配する!我らの名を女帝として脳に刻むがいい!!>>
リポーターの音声はここで途切れてしまう中、報道局に映像が戻る。
「リポーターが錯乱してましたが、この情報は我々メディアが言っているわけではありません」
速報ニュースをスマホで見ていたチェンシーが邪悪な笑みを浮かべていく。
「さぁ…支配を成し遂げるぞ。我々魔法少女が世界を支配するのだ!神の力を用いてな!!」
彼女達は世界を支配する光の塔を築き上げた光景こそバベルの塔の逸話と酷似する。
バベルの塔の物語は旧約聖書の創世記11章にあらわれる話なのだ。
そこにはこのような記述が残されている。
――さあ、煉瓦を作ろう、火で焼こう。
――さあ、我々の街と塔を作ろう。
――塔の先が天に届くほどの、あらゆる地に散って、消え去ることのないように。
――我々の為に、名をあげよう。
♦
警察庁の特殊急襲部隊SATを乗せた車列が進んでいく。
現場に向かう中、一台の車が猛スピードで後方から接近してくる。
「……邪魔だ」
一気に加速して車列を追い越していくのは悪魔が運転するスーパーカー。
ワタツミ大橋に向かう道路に向けてドリフト左折しながら駆け抜けていく。
車を運転する黒衣の悪魔が見た光景とは彼を迎え撃つ光景であろう。
「……やはり人間を盾にしてきたか」
軍用車をバリケードとしているのは兵士達の姿である。
<<
<<
<<
戦闘車両に備え付けられた機関砲や機銃が悪魔に向けられる。
海兵隊員達も整列して銃を構え、迎え討つ。
「
一斉に銃撃が開始された事で膨大な弾幕が張り巡らされていく。
「チッ!!」
身を屈めながらアクセルを踏み込み、ハンドル操作する。
蛇行運転で避けようとするが、面射撃によって車体に弾が被弾していく。
25mm機関砲が命中した事で爆発、炎上してしまう。
「
制圧射撃を止め、兵士達が警戒しながら車に近づこうとした時だった。
「
黒雲広がる夜空の上から迫ってくるのは跳躍回避した悪魔の姿。
兵員輸送車の屋根に飛び移ってきた者が即座に反撃を行っていくだろう。
「殺しはしないが、無力化させてもらう」
機銃を発射していた兵士を掴み上げ、片腕で海まで放り捨てる。
後ろに振り返る兵士達に向けて悪魔は跳躍する。
「
一人の兵士に飛び蹴りを喰らわす。
さらに回転を加え跳躍、連続の旋風脚を放ち、三人の兵士を同時に倒して白兵戦に持ち込む。
右側の相手の武器を払い、右フックを打ち込む。
後ろに二回転捻りこみの跳躍を行いながら、飛び後ろ回し蹴りを決める。
背後から銃を向けてくる兵士に対しては銃口を踵で蹴り飛ばす一回転蹴りを放つ。
着地と同時に敵兵士に振り返り、みぞおちに頂肘の肘打ちを打ち込む。
「
銃撃してくる相手に対し、左腕で顔を防ぎながら接敵していく。
ライフル銃を掴みながら相手の首に押し込んで銃撃を制すると同時に頭突きを打つ。
怯んだ相手を掴みながら背後に体を向かせ、右腕で相手の首を拘束する。
左腕の腕刀を相手の首に向けて背後から打ち込む形で打ち込んだ事で無力化させるのだ。
「
ナイフファイトを仕掛けてくる兵士に対して即座に体が反応する。
左手でナイフを持つ手首を、右手で相手の肩を同時に抑え込む。
右裏拳、右肘打ち、顔面膝蹴りと連続する攻撃を敵兵士に打ち込んで無力化させたようだ。
後ろを振り向き、歩兵戦闘車に駆け寄りながら右蹴り上げを車に放つ。
「
戦闘車は大きく蹴り上げられた事で宙を舞いながら橋から落ちていく。
黒衣の悪魔は明かりに照らされたワタツミ大橋を歩いていた時、夜風の中に砂を感じてしまう。
「この砂の風……懐かしいな」
遠くに見えるメガフロート都市にそびえ立つ光の柱を悪魔は見上げる。
人修羅の脳裏にはボルテクス界にそびえ立っていたオベリスク塔の記憶が過ぎったようだ。
「どうやら俺は……
風の応用魔法で一気に加速しながら死の橋を渡っていく。
かつてあった世界での決着の場所へと赴くようにして、悪魔は駆け抜けていった。
――――――――――――――――――――――――――――――――
ワタツミ大橋を見つめるチェンシーの無線機に駆逐艦から無線連絡が届く。
「…ドウシタノ、チェンシー?」
「どうやら、招かれざる客が来たようだ」
それに対処するためソウルジェムの念話を使って指令を与える。
<
そう念話を送ると巨大ヘリポート上空にワームホールが開く。
そこから飛び出してきたのは制空戦闘機であり、迎え撃つために空に向けて飛行していくのだ。
その頃、東京に向けて飛行してくる小松基地所属のF15J戦闘機編隊の群れ。
任務はアメリカ軍の占領部隊に見られる敵航空機への威嚇なのであろう。
同盟国の軍隊が相手のためか敵航空部隊の警戒と威嚇攻撃が精一杯の対応である。
現在の編隊は埼玉県雲取山上空を飛行する中、リーダー機からの無線が届く。
<<ドラゴン1より各機へ!メガフロート都市に現れた米軍部隊は突然現れたそうだ!>>
<<桂三佐!そんな情報、いくら何でも無茶苦茶ですよ!>>
<<揚陸艦の艦隊でもなければ、あれだけの規模の兵力を輸送出来ないです!>>
<<そうですよ!東京に突然出現するなんてありえません!>>
<<俺にも分からん!だが元に…この国の首都は今…米軍の驚異に晒されているんだ!>>
<<まさか同盟国と戦う日が来るだなんて…信じられない>>
<<俺達自衛隊に敵は選べない!攻めてきたならば、迎え撃つだけだ!!>>
その時、突然ミサイル警報装置が鳴り響く。
<<ミサイル警報!?全機ブレイク!!>>
編隊を解除して各機が急旋回していく。
前方空域から迫りくるのは6発の中距離空対空ミサイルの数々。
本来は射程圏外の中距離ミサイルなのだが、正確に攻撃してくる。
<<警告なしでいきなり撃ってきたぞ!?交戦規定なしかよ!!>>
<<糞っ!!早い!!>>
<<フレアを使え!!>>
チャフ・フレアディスペンサーからフレア(熱源囮)を撒き散らす。
火の玉の囮が雲を描きながら機体から射出されていく。
だがアクティブレーダーホーミングが使われているので熱源の囮が通用しない。
<<駄目だ!フレアが効かない!!>>
<<嘘だ!!こんなあっけなく…俺は終わるのか!?>>
<<息子がいるんだ!!やめてくれぇーーッ!!!>>
<<待て!待ってくれ!!まだ死にたくない!!!>>
<<うわぁぁぁーーーーーッッ!!!>>
旋回飛行、ループ飛行を繰り返しながらの回避行動を繰り返す。
しかしマッハ4で飛翔してくるミサイル相手では逃げ切れない。
アムラームミサイルが次々と命中し、夜空に爆煙が広がっていく。
生き残ったのはドラゴン1の桂三佐だけであったようだ。
<<長距離からのミサイル攻撃…まさかデータリンク!?それじゃ敵機は…!?>>
夜空の彼方から、それは飛来する。
鈍化した世界。
敵機と空で交差した瞬間に目視した桂三佐は入間基地司令部に無線で敵機の情報を伝える。
<<ドラゴン1より管制塔!敵機はアメリカ空軍のF22ラプターだ!!>>
<<アメリカのステルス戦闘機…そんなバカな!?やはり米軍の侵攻だったのか!>>
<<迎撃に入る!!俺以外は全員あの一機にやられちまった!!>>
<<待て、許可出来ない!!外交問題になるぞ!!>>
<<何を悠長な事を言ってる!!>>
<<先ずはアメリカ大使館に確認を…>>
<<馬鹿野郎!!仲間が殺されたんだぞ!!専守防衛が自衛隊だろうがぁ!!!>>
ジェットエンジンノズルが推力偏向によって傾き、ループ飛行を急速に行う。
敵機もループ飛行で反転しながら接敵してくる。
<<うぉぉぉぉーーーッッ!!!>>
互いの機体に備わった機関砲の射撃が夜空で交差していく。
第二次大戦後、初となるだろう本土上空でのドッグファイトが開始されるのであった。
――――――――――――――――――――――――――――――――
橋を一気に駆け抜ける悪魔が目指すのは次のバリケード。
後方からは装輪装甲車が迫りくる。
悪魔の背後から機銃掃射を仕掛けてくるが蛇行移動しながら避けていく。
対向車線に装甲車が入り込み、風魔法を纏いながら加速し続ける悪魔と並走してくる。
「
機銃台座を回転させ、横を走る悪魔に目掛けて撃ちまくる。
「くっ!!」
ばら撒かれる弾丸を側転回避し、勢いのまま対向車線側に跳躍宙返りし、車の上に飛び移る。
兵士を掴み上げ、頭突きを食らわせ後に海に投げ捨てる。
運転手をドアから引きずり降ろそうとした時、何かの滑空音が高速で近づいてくる。
「なんだっ!?」
直後、成形炸薬弾によって橋が爆発していき火の海と化す。
都市沿岸部に展開したM1エイブラムス隊から砲撃された一撃なのであろう。
「
横一列に隊列を組み、悪魔に目掛けて次々と砲弾を発射してくる。
「くそっ……」
大破した装輪装甲車から転げ落ちた悪魔の頭上からは休む間もなく砲弾の雨が降ってくる。
至近弾が爆発する業火の中から跳躍し、炎を掻い潜りながら走り続ける。
苛烈な攻撃が続けられる後方の空からはさらなる脅威が現れてしまう。
ワームホールから出現したのはステルス爆撃機B2スピリットであり空爆アプローチに入る。
左側ウェポンベイが開き、ボムラックに搭載された500ポンド爆弾を次々と投下していく。
無数の爆弾が落とされながら大橋が破壊されていく中を悪魔は突っ切るしかないだろう。
「くそっ…これでは向こう側に渡れない!」
後続から迫っていた警視庁特殊急襲部隊だったが爆撃のせいで戦場から分断されてしまう。
「奥からも上からも…派手にやりやがって!!」
空爆と砲撃によってワタツミ大橋が崩落していき、浮島に渡る道が崩れ落ちていく。
攻撃は見境なく、後方で倒れていた洗脳兵士達まで殺していくのだ。
「使い捨ての命はどうでもいいのか…ペンタグラム!!」
前方を守るバリケード部隊が見えるが、最早見境ない攻撃に巻き込まれるしかない。
それでもバリケードを死守する洗脳兵士達からの一斉射撃が迫りくる。
銃弾の雨を浴びながらも悪魔は加速を緩めない。
「うおおおーーーッ!!!」
バリケードに突撃しながら強引に装甲車を弾き飛ばして突破する。
突破された兵士達が銃を構えるが、頭上から降り注ぐ空爆によって次々と死ぬしかない。
「俺が甘かった!この戦いは…人間の犠牲を減らすだなんて…考える余裕すらない!!」
猛火に晒される悪魔が走りながらも復讐の業火を心で燃やし続ける。
「1秒でも早く…魔法少女共の命を終わらせる…待っていろッ!!」
今はただ、ひたすら走るしかなかったのであった。
――――――――――――――――――――――――――――――――
二機の戦闘機が激しい火花をぶつけ合うようにして飛び交う夜空。
<<逃がすかよ!!>>
F22に猛追しながら飛行するF15Jは上昇しながら捻りこみを行い、降下する。
ハイ・ヨー・ヨーと呼ばれる空中戦闘機動を行いながら上空からの機関砲攻撃。
しかし敵機は旋回しながら回避してくる。
<<優れたステルス戦闘機だろうが…目視出来る距離ならば勝算はある!!>>
F22制空戦闘機とは、一度も姿を見せずに敵機を撃墜する作戦には適している。
しかしインターセプトの間に戦闘が始まればそうはいかない。
レーダー反射断面積が優れていても、近距離戦闘であればレーダーに映る。
誘導ミサイルをお見舞いする事は可能なのだ。
<<アムラームは撃ち尽くしてる!後は側面のサイドワインダーだけだろうが!!>>
F15Jの最高速度は負けておらず、ミサイルや機関砲の搭載量においてもF22を上回る。
後はパイロットの技量次第であろう。
<<仲間達の仇は…取らせてもらうぞ!!>>
猛禽類の名を持つステルス戦闘機に対して一歩も引かない空中戦を日本の鷹は仕掛けていく。
<<背後をとった!>>
空対空誘導弾が二発発射され、敵機に向けて飛翔していく。
敵機は旋回しながら回避行動を取り、フレアを夜空にバラ撒いていく。
だが誘導弾の赤外線画像によって目標は補足され、フレア回避は出来ないだろう。
それを見越したのかF22が一気に降下飛行を行っていく。
山間を低空飛行しながら猛追するミサイルを避け続けてくるのだ。
回避行動を取り続けるがミサイルは直ぐ後ろまで迫ってくる中、前方には大きな橋。
川スレスレの低空飛行を行いながら橋の下を通過していく。
二次元推力偏向ノズルによる推力偏向が行われ、急速上昇を行ってくる。
ミサイルは橋に激突し、爆発に巻き込まれた事で後続のミサイルまで誘爆してしまう。
<<そう来ると思っていたぞ!!>>
上空から真下に向けて降下するのは日本の鷹であり、機関砲を放つ。
上昇するF22も機関砲を放つ。
弾の光がすれ違い、互いの機体が交差しながら上下に飛び越えていく。
<<野郎!?スレスレで避けやがった!!>>
F22はループの頂点で背面姿勢からロールし、水平飛行を行う。
F15Jは降下しながら逆宙返りで水平に戻り、敵機を追撃。
イーグルとラプター、雲を翼に掴む鋼鉄の鳥達の激しい空中戦は互いに一歩も譲らない。
アフターバーナーが噴き上がり、敵機の後ろに猛追を仕掛ける。
<<喰らいやがれ!!>>
F15Jがサイドワインダーを発射しようとした時、敵機が一気に仕掛けてくる。
<<何っ!!?>>
敵機が減速したかと思ったら、木の葉が舞うようなループを最短で行う戦闘機動。
スピードが出たF15Jは敵機を通り超え、背後に回り込まれてしまう。
<<クルビットか!!くそぉ!!!>>
日本の鷹も推力偏向を用いて機体機首を上に持ち上げていく。
機体全面で風を受けながら減速し、相手を前に押し出すコブラと呼ばれる戦闘機動を行う。
しかしF22のパイロットもコブラ機動を行ってくるのだ。
<<読まれていた!?>>
互いに減速したままの飛行を行う中、失速する前に互いが機首を戻し、旋回を繰り返す。
<<逃げ切れない!!>>
F15Jのコックピット内にはミサイルロックの警報が鳴り響く。
F22側面2箇所のウェポンベイに搭載されたサイドワインダーが発射される。
<<くそったれ!!>>
フレアをばら巻きながらハイGバレルロールで旋回を繰り返すが逃げ切れない。
ここは高度10000メートル以上の空域であり、遮蔽物を利用した回避行動はとれない。
<<……神よ!!>>
地上に機首を向けながらアフターバーナー全開で降下していく中、背後からはミサイルが迫る。
<<狙うのは地面ギリギリ…低空飛行で切り抜け、ミサイルを地面に激突させる!!>>
噴き上がるジェットエンジンによって機体が加速しながら落ちていく。
<<
<<
操縦桿操作で機首をギリギリで引き上げようとする。
「―――!!!!」
しかし機体は制御しきれず、地面に激突。
機体はパイロットを乗せたまま爆発してしまう最後を遂げてしまうのだ。
空自のパイロットが最後に何を叫んだのかは誰にも分からない。
日本の鷹を始末したのは米国が誇る猛禽類であり、勝者の如く夜空を舞う。
無慈悲な勝者は旋回しながら東京湾に向けて飛行していった。
――――――――――――――――――――――――――――――――
総理大臣公邸内の内閣総理大臣執務室では驚愕しながら慌てる首相がいる。
「これは一体どういうつもりですか!?」
電話を行っているのは日本の総理大臣である矢部総理の姿である。
「これは明らかに日本の首都に対する侵略行為だ!同盟国に対する明らかな裏切りですよ!?」
電話の向こう側にはアメリカ大統領なのであろう。
「我々アメリカは…この東京を占領している米軍に関しては一切関与をしていないのだ」
「百歩譲ってそれが事実だとします。では、事実なのだと説明出来る証拠が有りますか?」
「そちらに大使を向かわせた。これは我々の見せられない恥…トップシークレットを見せよう」
暫くすると大使が総理大臣執務室に訪れる。
タブレット端末を総理に渡し、大使は退出したようだ。
収められていた動画を見た総理は驚愕してしまう。
「ば、馬鹿な……映画の映像じゃないのか!?」
グアム基地に向かっていたB2ステルス爆撃機が前方空間に吸い込まれていく動画。
ホルムズ海峡に向かっていたアーレイ・バーク級ミサイル駆逐艦が船体ごと吸い込まれる動画。
任務を終え強襲揚陸艦に着艦しようとしたハリアーⅡの機体が吸い込まれていく動画。
アラスカ空軍基地所属のF22ラプターが滑走路に入る直前で飲み込まれていく動画。
アメリカ海兵隊基地に至っては巨大クレーターしか残っていない動画を次々と見せられる。
「こんな…こんな事が出来る存在は……まさかあの!?」
「リポーターが言っていたな…。まさか、米軍を手に入れてこのようなテロ行為に使うとは…」
「魔法少女…やはり実在していたのですね?」
「知っていたのかね?」
「私も総理大臣に初めて就任した時、
「日本の国家神道組織ヤタガラス…戦後解体されたと思っていたのだが」
「日本の秘密結社、ヤタガラスをご存知だったのですか?」
「噂は聞いている。霊的国防において歴史ある日本の組織だとな」
「半信半疑でしたが祖父達からも聞かされておりました…魔法を使う存在がいるという事を…」
「魔法少女は実在する。これ程の驚異をばら撒く事が出来る存在が世界中に隠れ潜んでる…」
「こんな事が明るみに出たら…世界中がパニックに陥りますよ!!」
「カバーストーリーを作り、事実を隠蔽するしかあるまい。協力してもらいますぞ、矢部総理」
「…貴国の軍隊について、アメリカの立場をお聞かせ下さい」
「沖縄の海兵隊と横須賀の海軍を合流させて鎮圧部隊を編成し、対処する」
「…我が国の自衛隊は?」
「自衛隊が米軍を鎮圧?貴国の世論は一気に反米に転じ、日米同盟は破壊される事になる」
「手出し無用という事ですね?」
「そうだ。これはアメリカの失態……必ず我が国が鎮圧してみせる」
「占拠している兵士達は自らの意思でテロリストとなったとお考えですか?」
「相手は魔法が使えるのだぞ?我々の常識など通用せん…洗脳されたと仮定して対処する」
「その魔法が使える相手に…貴国の軍隊は本当に勝てるのでしょうか?」
「衰えてもアメリカは世界最強の軍隊。誇りがある…任せてもらいたい」
「分かりました…大統領。お任せします」
電話を切り、首相は大きな溜息をつく。
執務室のテレビにはニュース映像音声が響いていたが、テレビの傍に立つ者がいたようだ。
「ヤタガラスの使者!?いつの間に現れたんだね!」
漆黒の
「此度のこの騒乱…この国を預かる総理大臣として如何様にするおつもりですか?」
肘を机に置き、手を重ねて思考を重ねる首相であったが迷った末に結論を出す。
「アメリカは…信用出来ない」
「私も同じ意見です」
「隠密で動けるか?超國家機関ヤタガラスの組織は?」
「我々は神武天皇時代からこの国の影となり、霊的国防を任せられてきました。お任せ下さい」
「ヤタガラス組織に魔法少女はいないのか?相手が魔法が使えるのならばこちらにも必要だ!」
「時女一族と呼ばれる魔法少女一族がヤタガラス傘下におりますが…彼女達は信用出来ません」
「どういうことだ?」
「時女一族神官の御子柴は…組織内の権力争いに固執しています」
この騒乱を利用し、ヤタガラス内部の影響力を増そうと政治工作してくると告げられる。
「ヤタガラスも一枚岩ではないのか…組織において信頼出来る霊的国防を行える一族は?」
「最強の退魔一族を使います。その一族の名は、葛葉一族です」
「その一族ならば、この騒乱を静められるのか?」
「時女一族や他の退魔一族の立場が組織で弱いのは、葛葉一族が最強の退魔一族だからです」
「女の退魔一族に嫉妬にされる…最強の退魔一族か。いいだろう、その者達を使ってくれ」
「かしこまりました、矢部総理」
「頼んだぞ……ん?」
TVの映像には黒衣を纏う少年の姿が映っている。
「この少年は米軍に襲われているのか!?それに…何なんだ、あの禍々しい姿は!?」
「この者は……まさか悪魔?」
映像を見つめる二人が見たのは軍隊の猛攻を受けながらも突き進む人物が映っていた。
♦
空爆と砲撃を掻い潜り、ついにメガフロート都市の入り口へと辿り着く。
後続から迫りくるステルス爆撃機の空爆はまだ終わらず迫っている。
ウェポンベイの右側が開き、残されていた2000ポンド級爆弾の投下体勢を行ってくる。
遠くに見えるワタツミタワーを睨む中、かつて仕留めたはずの魔法少女の気配を感じてしまう。
「この魔力は…アリスか!!」
タワー前の円形道路の上空に現れたのは巨大なワームホール。
そこから落下してきたアリスの新たなる姿を見た悪魔はおぞましい肉塊を目にするだろう。
「……なんだ、あの巨大な姿は?」
例えるなら肥満と呼ぶしかない見た目であり、巨大な肉塊が下にあった噴水を踏み潰す。
着地の衝撃と自重によって自ら下半身を潰してしまう。
肉塊上半身部位が暴れ狂いながらおぞましい叫びを上げてくる。
「
肉塊の頂上部分に見えるのはアリスの頭部。
片目は抉られ、片目の代わりにされたソウルジェムが禍々しく光る。
「…魔法少女にとって肉体は外付けHDD。どんな形をしていようとも…魔力で動かせるか」
変わり果てた魔法少女は体を改造され、麻薬漬けにされ、自我も奪われた傀儡と化す。
「Gaaaaaaaahhhh !!!!」
狂った魔法少女の周囲に無数のワームホールが開く。
武器を射出する一直線先には悪魔の姿。
アーレイ・バーク級ミサイル駆逐艦も動く。
ミサイル垂直発射システムの上空に広がっていくのは同じワームホール。
船首楼甲板上に搭載された艦砲の照準先にもワームホールが開く。
アリスの前方道路を塞ぐ形で並ぶのは二台のディーゼルトラック。
カーゴに搭載された対空機関砲ファランクスも照準を悪魔に向ける。
ワタツミタワーまで一直線に伸びる多目的ビルの屋上に見えるのは武装した兵士達。
屋上からはM249ミニミ軽機関銃を一斉に構え、下層の窓際にはM2HB重機関銃を三脚固定。
後ろの上空からは空爆を行おうとしてくるステルス爆撃機。
悪魔の両側に伸びる沿岸部道路から進軍してくるのはM1エイブラムス戦車隊。
ワタツミ大橋は破壊され、もはや逃げ場がない上で総攻撃を仕掛けようというのだろう。
「いいだろうアリス……ケリをつけようぜ!!」
ボロボロになった黒衣を掴みながら脱ぎ捨てる。
決着をつける道を切り開くために死地と化した戦場を駆け抜けていく。
ミサイルブザーの音と共にミサイル垂直発射システムが開き、煙と火柱が噴き上がる。
次々とトマホークミサイルが連続発射され、上空のワームホールに入り込む。
アリスの周りに開いたワームホールから次々と飛び出し、悪魔に向かって巡航飛翔する。
ミサイル側面にはアリスがペイントしたトランプ図柄が見えるだろう。
アリスが放った最後の一撃とは、槍を持ったトランプの兵隊を表すミサイルの数々なのだ。
「うおおぉぉぉーーーーーッッ!!!!」
疾走する悪魔に目掛けて周囲を囲むビルからも集中砲火が浴びせられていく。
後ろからは空爆の大爆発が迫りくる。
流れ弾と爆炎を浴びながらも、風を纏った悪魔は疾走する。
跳躍し、迫りくる巡航ミサイルの上に次々と飛び移っていく動きを見せるのだ。
滅茶苦茶に飛んでくるミサイルの槍を次々と高速跳躍しながら接敵していく。
「目標まで、800メートル」
上空のワームホールから地上目標に向かって艦砲の弾が次々と撃たれていく。
艦砲射撃、空爆、面射撃が地上に噴き荒れる地獄の如き戦場を悪魔は舞うように飛ぶ。
空爆の大爆発で戦車隊は破壊され、後ろの爆発に飲まれた巡航ミサイルも次々と爆発。
周囲の建物も倒壊し、展開していた洗脳兵士達は使い捨ての如く死んでいく。
まさに死の嵐が吹き荒れる戦場の地獄であろう。
「目標まで、600メートル」
「
艦砲の弾がビルに命中して外壁が崩れ、悪魔の眼前を塞ぐ。
鈍化した一瞬、壁となった外壁に6つの線が走る。
光剣によって焼き切った壁に飛び蹴りを放ち、蹴り砕きながら突き進む。
止まっている暇など1秒さえ許されない。
「目標まで、400メートル」
ファランクスの銃身が回転し、猛火の弾幕射撃を開始していく。
「くっ!!」
ミサイルを迎撃出来る正確な射撃が悪魔に撃ち込まれ続けるが、彼は怯まず突き進む。
痛みを感じている暇などありはしない。
地面からもワームホールが開き、真下から巡航ミサイルが現れる。
「チッ!!」
体を横倒しに回転させながらミサイルをギリギリで回避していく。
「目標まで……あと200メートル!!」
「
ファランクスの弾幕が飛翔していくミサイルに向けられる。
弾幕がミサイルを破壊し、大爆発が悪魔を襲う。
道路が爆発と爆炎で埋め尽くされたが悪魔の魔力は消えていない。
地獄から生還するが如く、全身焼け爛れながらも爆炎から飛び出してくるのだ。
「お前とのデスマッチは……」
悪魔の全身に『気合』が込められ、強大な力を右腕に収束する。
掌の中に小さな光が起こり、極限の魔力と化す。
小さな光を右手で握り込み、拳を固め、内側から光が溢れ出る。
鈍重な腕で悪魔を掴もうとするが間に合わず、アリスの頭部が繋がった肉塊の上に着地した。
「ここまでだぁぁーーーーッッ!!!」
アリスの頭部に放たれた極限の一撃によって頭部は爆ぜ、右拳が肉塊にめり込む。
気合によって飛躍的に高められた腕力と消滅を司る光が同時に肉塊を襲うのだ。
肥満肉体から無数の光が溢れ出ていき、そして周囲は光の大爆発現象を起こしてしまう。
地面を削り取る程の光の大爆発をタワー屋上から見つめるチェンシーの顔も戦慄している。
「この光が…旧約聖書においてソドムとゴモラの街を焼いた…神の雷霆(らいてい)…」
――メギドの火の威力なのか!?
悪魔の魔法において全てを超える万能属性魔法の一撃こそ『メギドラオン』と呼ばれている。
メギドラオンの光が収まったそこにはアリスの肉塊姿は何処にも見えない。
巨大な肉塊が占拠していた地面は巨大クレーターのように削られている。
ブロック最下層から跳躍して飛び出してきた悪魔の姿だけなのだ。
「チェンシー…俺は死の嵐を超えてきたぞ」
悪魔がタワー屋上を睨む中、宿敵の口元が不敵に笑う。
「いいぞ悪魔よ…血がたぎる!!さぁ…私の元まで来るがいい!!」
天を貫く光の塔こそが決着の場所であり、この塔が憎き仇の墓標となる。
「風華……あの世で見ているがいい」
――このデスバトルの結末をな。
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