人修羅×まどマギ まどマギにメガテン足して世界再構築 作:チャーシュー麺愉悦部
「行くぞ…裏切り者の葛葉共!!貴様らに誅罰を下すのは…この壬生の戦士達だぁ!!」
「フン!俺だけでなく…全ての葛葉が今では裏切り者か!面白い世の中になったもんだ!!」
忍者めいた装備を纏う壬生の長老の右腕には手甲の上から鉤爪を装備している。
左手には小太刀が持たれており、相手の斬撃を受け流すよう逆手に持っている。
鉤爪が装備された右手は自由に動くため胸に備わった召喚管を抜いて悪魔を使役するのだ。
「そうはさせん!!」
先に仕掛けたのはキョウジであり、アサルトライフルから放たれたライフル弾が迫りくる。
しかし壬生の長老の前に顕現した邪悪な魔女が銃弾攻撃を反射してしまう。
「グハァ!!?」
反射された銃弾が体に命中したキョウジが倒れ込む。
「クックックッ!あたしに物理攻撃を仕掛ける敵はねぇ…皆そうなっちまうんだよぉ!!」
現れた魔女は醜悪であり、ボサボサの黒髪長髪の上半身と下半身は蛇と提灯で構成される。
【ランダ】
インドネシアのバリ島で独自に信仰されるバリ・ヒンドゥの悪の化身。
魔術を極めようとする者にとっては魅力的な美女として崇拝されているようだ。
人々に疫病や災害をもたらす存在であるため聖獣バロンが彼女と戦う存在となった。
「ぐっ…うぅ…徹甲弾だったらボディアーマーを貫通していたな…」
ランダの物理反射耐性によって銃弾を反射されたキョウジであるが一命を取り留めている。
白スーツの上着の下に纏うベスト型のボディアーマーが弾を受け止めた事で助かったようだ。
そんな彼に対して雷魔法を仕掛けようとするランダであるが、獰猛な眼が開きながら驚愕する。
「こ、この魔力は…!?アンタ…あたしの宿敵を使役するサマナーじゃないのかい!?」
「その通りだ。どうやらコイツもお前と戦いたいようだな…?いいだろう、出てくるがいい!」
立ち上がったキョウジが召喚管を振るえばMAGの光が噴き上がって聖獣を構築する。
彼の前に現れた存在こそがランダの宿敵であるのだ。
【バロン】
インドネシアのバリ島で独自に信仰されるバリ・ヒンドゥの大いなる聖獣であり、森の王。
白い体毛を具え、悪の象徴たる魔女ランダと果てのない戦いを繰り広げる存在だ。
善と悪の相克で世界を動かす活力は生み出されるのであり、両者は互いに必要な存在だった。
「ムゥ!ランダ…マタオマエカ!」
白い体毛をした獅子のようなバロンの頭部はたてがみのような王冠を纏っている。
愛嬌を感じさせる顔であるが怒りを表すように歪んでおり、ランダに対して憎しみを叫ぶ。
「そりゃこっちのセリフだよ、バロン!本当にしつこいねぇ!!」
獰猛に伸びた両手の爪を振り回しながら怒るランダに対してバロンはこう告げる。
「オマエ生キテルカギリ、オレサマ、何度デモアラワレル!」
「分かってるよ、それが互いの宿命だってね。けどねぇ…こうもしつこいと嫌になるのさ」
ひょっとしたら、バロンはランダを付け回してるだけの追っかけファンなのでは?
そんな風に問われたバロンは激おこぷんぷん丸と化してしまう。
「今まで何度となく戦ってきたせいであたしの事が忘れられないんだろ?」
「ムゥ!フザケルナ!オマエ、ウザイ、キモチワルイ!」
「ハァ!?そこまで言うかい!可愛げの欠片でも見せてみようって気はないのかい!」
「オレサマ、カワイクナイ!オレサマ、いけめん!カッコイイ!!」
「正義のヒーロー気取りかい?だったら結構だよ!悪のヒロインとして洒落込むだけさぁ!」
「オマエ、ひろいん、チガウ!オマエ、ババァ!!」
「本気で死にたいようだねぇぇぇぇーーッッ!!」
<<やかましい!!痴話喧嘩してないで加勢に来い!!>>
怒鳴られた者達が顔を向けた先ではキョウジと長老が鍔迫り合い状態で顔を向けている。
ばつが悪い状態になった両者が改めて因縁の戦いを始めることになるだろう。
他にも苛烈な戦いを繰り返す者達がいるため、戦況は予断を許さない。
「小娘にしては中々の手練れね!殺すには惜しいわ!」
「若輩者だからと舐めてかかるなら…死ぬのはお前の方だぞ、オバサン!!」
レイ・レイホゥに仕掛けてきたのは隻眼の女であり、三節棍を用いて連続突きを仕掛けてくる。
「オバサンですってぇ!?私はまだ20代前半なのよ!」
しかしレイもまた二対の槍であるブリューナクを用いて素早く受け流しながら体術を駆使する。
ナオミに挑むのは目隠れの和装サマナーであり、無数の針攻撃を次々と放つ。
ナオミは側転しながら針攻撃を避けていき、相手の針切れを狙っているようだ。
「音に聞こえたデビルサマナーの力…私が見極めてあげましょう!」
「この私を知っているうえで挑んでくるの?若さ故の過ちがあるというのを教授してあげる!」
ナオミは偃月刀を回転させながら針を弾き飛ばし、腰に備えたマシンピストルを抜く。
和装サマナーも背中に背負ったドラムマガジン付きのソ連時代の短機関銃を構えながら撃つ。
壬生のサマナー達が召喚したラクシャーサやナーガラジャも襲い掛かる中、苛烈な剣舞を行う。
この中で最も苛烈な戦いを繰り返すのがライドウと殺女の死闘であり、互いが一歩も譲らない。
「ハァァァァァァーーーーッッ!!」
鎖鎌の投擲攻撃に対してライドウは刀で刃を弾き、一気に接敵する。
鎖を引いて鎌を戻す殺女は鎖鎌をブンブン振り回して回転させる。
長い鎖を巧みに操り、体に鎖を纏わせながら長さを調節した斬撃を仕掛けていく。
横薙ぎに対して滑り込んで接敵したライドウが下半身を狙う横薙ぎを放つ。
しかし跳躍飛びで斬撃を避けた殺女が拳銃を抜いて射撃を狙う。
「チッ!!」
後ろにバク転しながら銃撃を避けるライドウに仕掛けようとするのはキクリヒメである。
「もらったぁ!!」
「そうはいかんぞぉ!!」
刃のように鋭い糸を放とうとするキクリヒメに突撃して体勢を崩すのはハヤタロウ。
馬乗りでのしかかった狂犬が喉元を食い千切ろうとするがキクリヒメは両手で頭部を掴む。
そのまま風魔法を放った事でハヤタロウの体が巻き上げられる中、体に糸が絡みつく。
「し、しまったぁ!!」
手に力を込めてバラバラにしようとした時、殺女と戦いながらも戦況を把握した者が動く。
「戻れ!ハヤタロウ!!」
召喚管を抜いてハヤタロウをMAGの光に戻し、収納した事でバラバラにされる末路を回避する。
しかしその隙を逃さない殺女が投げた鎖鎌の鎖がライドウの刀に絡みつく。
「その首…跳ね落とす!!」
「くぅ!!」
絡みついた鎖の先端に備わる曲刀の刃を用いて首を跳ねようとするがライドウの頭部が消える。
「ゴハッ!!?」
体勢を一回転させる浴びせ蹴りを用いて回避と同時に殺女の側頭部を蹴り込む動きを行う。
怯んだ彼女に目掛けて右切り上げを行うがバク転回避で避けられる。
殺女を援護するため再び刃の糸を射出しようと狙うキクリヒメであったが飛来物が現れる。
「ぐはぁ!!!」
飛んできたのはモコイブーメランであり、弾き飛ばされたキクリヒメの首がへし折れている。
「ボク、ちょっぴりセンチメンタル。サマナー君を救う為とはいえ、女を傷つけたくないっス」
隠し身の術を用いた伏兵としてモコイが配置されていたのに気づいた殺女が召喚管を抜く。
「戻れ!キクリヒメ!!」
「ごめ…なさ…い…アヤ…メ……」
体をMAGの光に戻して召喚管に戻ったことでキクリヒメは一命を取り留める。
その隙に踏み込んで一太刀浴びせる事も出来ただろうがライドウは刀を構えたままこう告げる。
「君も仲魔の命を大事に扱うサマナーのようだ。それなのに…どうしてヤタガラス側につく?」
「その質問…そのまま返す。ヤタガラスは所属する一族を見捨てない…なのになぜ裏切った!」
「自分が捜査して手に入れた情報は事実だ!ヤタガラスは尽くした一族を見捨てるつもりだ!」
「ならば今の状況をどう説明する?見捨てられるはずの我々はザイオンの選民になっている!」
「手駒として必要だっただけだ!本当に救う気があるのなら最初から救う算段をしてたろう!」
「黙れ!!貴様らの早とちりでヤタガラスを裏切り者扱いして反逆した者の言葉など聞かん!」
再び鎖鎌を操りながら苛烈な攻撃を仕掛ける殺女に対してライドウも剣舞を持って応える。
ライドウの一つ下ぐらいの女であろうと殺女の力は確かであり、剣士としての力量は拮抗する。
しかしデビルサマナーとしての力量には決定的な差があるようだ。
「ぐはぁ!!!」
殺女が放った踏み込み蹴りが腹部に決まったライドウが屋上から落ちていく。
息を切らせる殺女が下界を見下ろそうとした時、目の前に顕現した巨大な悪魔に戦慄する。
「これ程までに強力な悪魔を使役出来るのか…?流石は葛葉ライドウを襲名した男だな…」
召喚されたのはオオミツヌであり、巨大な武神の肩にはライドウが立っている。
「自分は君と殺し合いなどしたくないが…それでも刃を向けるというのなら…押し通るまでだ」
大きな両腕を帯電させて放つ一撃ならば殺女が立っているビルごと仕留められるだろう。
しかし不気味な笑い声を上げる殺女がライドウを見上げながら恐ろしい殺気を放つ。
「この殺女も甘くみられたものだ…情けをかけられる相手ではないのだと思い知らせてやる」
後ろに振り向いた殺女は壬生の長老に嘆願してくる。
彼女の願いを聞いた長老はキョウジと戦いながらも苦悶の表情を浮かべてしまうようだ。
「殺女よ…あの荒神を使役したら最後、その身も魂も荒神に取り込まれる…覚悟はあるのか?」
「勿論ですよ。私は壬生の女であり、大正時代の綾女を継いだ女…私情よりも大儀を選びます」
「すまぬ…殺女。ヤタガラスの為死ぬしかない我らであるが…お前には別の未来も欲しかった」
長老から許可をもらった殺女が召喚管を抜きながら膨大なMAGを体から放出させていく。
「
水平に召喚管を構えながら蓋がクルクル開いていき、怨霊じみた穢れたMAGが噴き上がる。
「あの悪魔はまさか…いかん!?背を向けて飛び降りろサマナー!!後ろを振り向くな!!」
召喚される悪魔を知っている素振りのオオミツヌを信じるライドウが慌てて隣のビルに飛ぶ。
オオミツヌは召喚される前に殺女を仕留めようと剛腕を振り上げていく。
しかし巨人の動きはどうしても緩慢になるせいで召喚を止める時間はない。
召喚管から漆黒のMAGが吹き荒れていき、殺女達が戦うビルに纏わりついていく。
「こ、この悪魔は何だぁ!?」
「クックックッ…恐れおののけ葛葉共。これこそが壬生の禁忌であり、ジョーカーなのじゃよ」
とぐろを巻く漆黒のMAGが形を成していき、オオミツヌを超える程の巨体を生み出す。
<<ギチギチギチギチギチギチギチギチギチギチ……>>
召喚されたのは巨大な蛇女であり、上半身は拘束具で拘束された異形の化け物であった。
――――――――――――――――――――――――――――――――
「やはり貴様か……ヤトノカミ!!」
オオミツヌが見上げる程の巨大な蛇の体は下半身が蛇で上半身は蛇の鱗を纏う角の生えた天女。
目元は巨大な布で覆われており、口にある金属製の猿ぐつわと繋がっている。
上半身には鎖が巻き付いており、腕を動かすことが出来ない姿はミシャグジさまを思わせる。
「もえるわ~……頭も身体ももえるわ~……」
おぞましい女の声をしたヤトノカミが不気味に笑う度に猿ぐつわからヨダレが垂れていく。
召喚者はヤトノカミの頭部に立っており、飛び降りながらヤトノカミの目を覆う布を斬る。
拘束の一部が解放された事で喜び勇むヤトノカミが一気に動き出す。
「ヌォォォォォォォォォーーーーッッ!!?」
オオミツヌの巨大な雷撃パンチを避けながら体に纏わりつかれた事で一気に押し潰されていく。
巨岩の如き巨人の頭上にはヤトノカミの上半身がそびえており、ゆっくりと目を開けていく。
<<死 亡 告 知>>
獰猛な瞬膜化したヤトノカミの目を見た瞬間、オオミツヌの口から膨大なMAGが溢れ出す。
身体を構築していた全てのMAGが抜き取られるかのようにして即死する末路となるのだ。
「あれが…姿を見た者は一族が根絶やしになると言われる程の…ヤトノカミの呪いか……」
オオミツヌの言葉が無ければ共に死んでいたライドウはヤトノカミの力に戦慄している。
しかし向こう側で悲鳴を上げる殺女の声に反応した彼は向こう側に視線を向けると目が見開く。
殺女は片膝をつきながら苦しんでおり、黒のレース手袋を脱いだその手は呪いに侵食される。
「わ…わ…私の…手がァァァーーーーッッ!!!」
悲鳴を上げる殺女の左手は鱗塗れとなっており、蛇の肌そのものと化している。
ヤトノカミを使役する者は荒神の呪いを浴びる事になり、力を使えば使う程に呪われる。
最終的にはヤトノカミと同じ蛇人間と化すことになるため、壬生の禁忌である悪魔召喚なのだ。
「も…もういい殺女!!直ぐにヤトノカミを仕舞うのじゃ!!」
自分の体が異形化した事に耐えられない女の姿を見かねた長老が叫ぶ。
直ぐ駆け寄ってやりたいが背中を見せたらキョウジは容赦なく殺す程の手練れのため動けない。
「まだだ…私の魂は…この程度では屈さない!!ヤトノカミよ…敵を呪い殺せぇーーッッ!!」
「ラキキキキ!そうこなくっちゃ…壬生の女とは呼べへんねぇ?遠慮なくいかせてもらうわ!」
オオミツヌを屠った巨体がライドウの方角に振り向こうとしてくる。
「くぅ!!」
陰陽葛葉を構えるライドウであるが業魔殿で錬剣術を行った時、精神無効耐性を選んでいる。
つまり呪殺に耐性がなく、死亡告知を放たれたらライドウであろうが即死するしかないだろう。
<<ライドウよ!某を出陣させろ!!>>
召喚管の中から念話を送ってきたハヤタロウを信じるライドウが管を構える。
振り抜かれて召喚された勢いのまま大きく跳躍したハヤタロウがヤトノカミの頭部に迫る。
「グギャァァァァァーーーーッッ!!?」
突撃しながら日輪の光を放ったことで目潰し状態となり、呪殺の魔眼が閉じられる。
頭部に突撃するハヤタロウは獰猛な顎を広げながら蛇の鼻部分に噛み付く勇敢さを示す。
「アギャァァァァァーーッッ!?うちの鼻に噛み付く狂犬めぇ!!離れろォォォォーッッ!!」
巨体を暴れさせながらビルを破壊していくヤトノカミであるがハヤタロウは果敢に抗う。
自分よりも巨大な化け物を恐れずに戦う姿こそが光前寺の霊犬ハヤタロウなのだ。
「頑張れハヤタロウ!!自分が召喚者を倒すまで持ちこたえてくれ!!」
モコイを召喚管に仕舞ったライドウはモー・ショボーを召喚して向こう側に飛び移る。
殺女も息が上がりながらも鎖鎌を構えてくるその気迫は呪いを浴びようと揺るがぬ覚悟がある。
「大事な女の体を台無しにしてまで…何故戦う!?君が戦う理由とは何だ!?」
年齢も変わらない者同士なのかライドウは殺女に対して戦いを止めてくれと叫んでくる。
それでも迷い無き目をした彼女はこう答えてくれるようだ。
「私情は交えず敵は殺す…それが壬生の女達だよ。全ては護国守護の為にこの命がある…」
「護国守護とは何だ!!御上という得体の知れない連中を守ることか…?断じて違う!!」
御上から馬車馬の如く酷使される労働者はヤタガラスに所属する者達とて変わらない。
サマナーだろうがサマナーでない一般兵だろうが命の危険という比重を背負わされる。
どうして指導者という経営者は所属する労働者を酷使するのか?
それは考える時間がないぐらい働かせた方が判断材料が得られない人間を騙し易いからである。
「命を懸けて働くべきは己の為であるべきだ!そうでなければ人生を機械として消費される!」
だからそいつらの給料を下げて馬車馬のように働かせて使い潰せる労働法無効の法律が欲しい。
そんな風に考えるのが御上という存在であり、拝金主義の恩恵は株主と取締役だけで独占する。
「ヤタガラスに仕えてもな…利を得るのは秦氏のエリート共だけだ!お前達は働き蟻なんだ!」
「だ…黙れぇ!!そんなことをするはずがない…ヤタガラスはそんな人達じゃない!!」
「現代の葛葉一族だってヤタガラスからの支援金は減らされてきた…壬生一族もそうだろ?」
「そ…それは…その……」
「なのにヤタガラスの総本山にいた連中の暮らしぶりは豪華絢爛だったのを自分は見てきた…」
ライドウの言葉によって激しい動揺を引き起こしてしまう壬生一族のサマナー達。
その隙をついたレイとナオミが一気に攻め込み、壬生の女サマナー達を制圧する。
「ミスターライドウの言葉こそがこの世の現実よ…貴女達は利用されてるだけなのよ」
「そ…そんなことはないです!ヤタガラスに献身を続けた我々はザイオンの民になれたのよ!」
「ヤタガラスを信じたい気持ちはあたしもそうだった…だけどヤタガラスはそれを踏み躙った」
「献身を続けても…報われなかったのか…?じゃあ…アタシ達は何のために働いてたんだ…?」
「護国救済だの忠義だのはね…
「そんな……ことって……」
完全に戦意を喪失した女サマナー達が長老に視線を向けてくる。
壬生の長老も激しい動揺に蝕まれており、キョウジが放ったワンインチパンチで弾き飛ぶ。
「ゴフッ…!!ヤタガラスに尽くせば…いつか報われると皆に説いてきた…なのに…なのに…」
「お駄賃という分かり易い褒美を持って一族が繁栄すると言ってきたのだろうが無駄なんだよ」
「ワシ達は懸命に尽くした…なのに支援金は増えるどころか減る一方…それが恐ろしかった…」
「ヤタガラスという企業に勤めた会社員の貴様らは株主に支配される連中を信じたバカなのさ」
「ヤタガラスの背骨となるのが秦氏で構成される経済界だ…ヤタガラスも…同じなのか…?」
「啓明結社もヤタガラスも同じだ。金融・経済界の重鎮共が余剰金で運営してるだけのもんさ」
「ワシは…一族の者達という大事な家族を…幸福にしたかったのじゃ…なのに…これでは…」
「その切実な気持ちを利用するのが独裁結社やブラック企業なんだ…だから
「くっ……うぅ……くそぉぉぉぉぉーーーーッッ!!!」
無念の余り泣き喚く長老の姿を見せられた事でついに殺女も武器を落として膝が崩れてしまう。
悔し涙が溢れ出す彼女の心にも無機質な操り人形ではない人間の血が通っている証なのだ。
「私達…壬生の女達は…一族という大事な家族を守るために…命を捧げる程に尽くしたのに…」
「献身には相応の見返りが必ず必要だ…それを与えない飼い主にはついて行く必要はない…」
「葛葉ライドウ…私を斬るがいい…私はもう疲れた…もう何を信じていいか…分からない…」
「サマナーだけでなく、労働者とは
「私の家族…壬生一族という…私の家族の為に働いていく……」
「国だのヤタガラスだの得体の知れない連中の為に命を使うな。大事な家族の為に使ってくれ」
震える体を壬生の女サマナー達に向けてみると、そこにはかつての幼馴染達の顔が蘇っている。
サマナー一族に生まれた少女であるが使命を与えられるまでは普通の友達関係だったのだろう。
「ごめんね……ごめんね……アヤメちゃん……」
「アタシ…止められなかった…一族という全体を守る為に…アヤメちゃんを見捨ててた!!」
溢れる涙を零しながら駆け寄ってきた少女達が抱きしめ合い、涙を流して叫んでいく。
その表情は先程までの冷徹な殺人機械ではない、十代の少女の顔に相応しいものに見えるはず。
学帽を目深く被り直すライドウの口元に微笑みが浮かぶのだが、足元のゴウトがこう告げる。
「ライドウ、まだ終わりではない」
「……ああ、分かっているさ」
再び戦士の顔つきになったライドウが振り向いた先から迫ってくるのは暴走したヤトノカミ。
鼻に噛み付きながら懸命に目潰しを放ってきたが蛇の舌で絡み取られて丸呑みにされている。
それが分かるライドウの顔には怒りが宿っており、怨敵に対してこう叫ぶ。
「ヤトノカミ…貴様こそが壬生一族が繰り返した犠牲の象徴だ。これからの壬生一族には……」
――貴様はもういらない。
召喚管を抜いたライドウごとビルの屋上にいる連中を呪殺しようと魔眼を開けようとする。
「今更壬生とは離れへん!!ずっと一緒やでぇ…さぁ、早くうちの中に入るんや…殺女!!」
獰猛な蛇人間の手で身体を鷲掴みされる感覚に陥るアヤメが諦めの表情を浮かべてしまう。
「殺す女として生きてきた私は…呪いからは解放されないのか…それも…いいだろう…」
「呪いとは自らにも降りかかるもの…正義や復讐を執行する者と同じくな。だからこそ…」
死亡告知を放つヤトノカミの呪いに対して真っ向から挑むライドウが召喚管を振り抜く。
噴き上がるMAGが形を成す存在こそ、呪殺どころかあらゆる魔法を反射する仲魔の姿。
「君はもう…正義の為に戦うな。己の為に…生きてくれ」
召喚された仲魔とは、かつてのマヨーネが使役していたムラサキカガミである。
<<アギャァァァァァーーーーッッ!!?>>
身体のMAGが口から放出していくヤトノカミは自らが振りまく呪いによって体が崩壊する。
「マヨーネちゃんも良かったけど、やっぱり美丈夫がええね!おばちゃん青春しちゃうで!!」
大鏡の姿をしたムラサキカガミは浮遊しながら振り向いてきて鏡の中で笑顔を浮かべる。
そんな新たな仲魔の働きを頷きながら認めるライドウの横に立つのはアヤメの姿。
再び行使された呪いのせいで左腕の殆どが蛇人間化してしまうが後悔は微塵もなさそうだ。
「ヤトノカミの呪いの連関は…私の世代までだ。それでいいですよね…長老?」
彼女の横にまでふらつきながら歩いてきたのは長老であり、頷きながら微笑んでくれる。
「ヤトノカミに生贄を捧げる風習は国とヤタガラスへの献身だったが…それももう終わりじゃ」
「これからは国やヤタガラスに頼らない退魔師一族の道を模索するしかないですね…」
「アヤメちゃんと一緒ならまたやり直せますよ!」
「そうだね…アタシもその一助になる。また昔みたいに一緒に暮らせる未来を築いていこうね」
長老が懐から取り出したのは信号弾であり、空に向かって撃つ。
壬生一族の撤退信号が生み出されたことで葛葉のサマナー達との戦いは終わりを告げるだろう。
「こういう戦いの終わらせ方も悪くないわね…やっぱり分かり合えるって…素晴らしいわ♪」
「本当よね♪拳で解決するよりも、ナオミとやり直せる今の素晴らしさの方があたしも好き♪」
「戦いが有耶無耶に終わっちまったけど…あたしらもやり直す道でも模索するかい、バロン?」
「ムゥ!オレサマ、オマエきらい!カレイシュウガヒドイシ!」
「やっぱりアンタとは分かり合えそうにないねぇ!!表に出なぁ!!」
「フン、くだらん」
崩壊しながらMAGの光を撒き散らすヤトノカミから解放された無数の魂達が天に昇っていく。
「あの魂は…まさか……」
アヤメが目にした存在は大正時代の綾女の姿であり、ヤトノカミに取り込まれていたのだろう。
不甲斐ない自分の姿を怒られるのかと顔を俯けてしまうが、優しい声が響いてくる。
<<アンタはアンタでいいんだよ。私になり切る必要はない…これからの壬生をよろしく…>>
ヤタガラスに尽くして命を落とす壬生の女として生きた綾女から送られたのは個の確立の教え。
ヤトノカミに取り込まれた魂として壬生の女を全体主義の生贄にする事を否定してくれる。
未来ある若者には若者達の幸せがあればいいと願いながら天に旅立ってくれるのだろう。
「こんな場所で道草を食ってる場合じゃないぞ、俺達も早くヤタガラスの総本山へ……っ!?」
突然の地響きと共に轟音が響いてきたためその場にいた全員が轟音の方角に視線を向ける。
「あ……あれは何なの……?」
轟音が響いてきたのはホワイトメン達が制圧しに行ったザイオン発電施設である。
大地を砕いて伸び出すのは巨大な触手の数々であり、恐ろしく強大な悪魔の霊圧を感じさせる。
「…私達が行くわ。貴女達はヤタガラスの総本山を目指しなさい」
「ナオミにばかりいいカッコはさせないよ。死ぬ時は一緒…もう離れないからね?」
「壬生の者達はまだ戦える、総本山に攻め込むならば我らの情報が役に立つぞ」
「了解した、協力に感謝する。レイ、ナオミ……絶対に死ぬなよ」
「そういう事だ。貴様らには高い給料を払ってきたのだから、支払いが終わるまで働いて貰う」
「ハイハイ、あんたは本当に口が悪いし態度も悪い嫌な上司だけど…必ず帰って来るわ」
「私達が帰れる場所は貴方の元よ…これからも帰れる家になりなさいね、ミスターキョウジ」
それぞれが散会して戦場に向かっていく。
壬生一族の者達と分かり合えたライドウの心の中には強い信念と確信が生まれているようだ。
(愛国者とは国や政府に忠を尽くす者ではない…
ヤタガラスから与えられた護国守護という役割だけを全うするだけでは愛国になどならない。
それぞれが考えるために勉強し、間違っていると確信したなら御上であろうが反逆する。
それこそが本物の愛国精神なのだと葛葉ライドウは21世紀の世界で学ぶ事となった。
漫画デビルサマナー葛葉ライドウ対コドクノマレビトでは冷徹な戦闘機械として殉職する末路になったアヤメさんの丸パクリオリキャラですが、命を残す展開を描けて良かったです。
せっかくのライドウクロスオーバーですし、人情話があってこそライドウさんの物語ですよね!