人修羅×まどマギ まどマギにメガテン足して世界再構築   作:チャーシュー麺愉悦部

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380話 憂国の落ち武者

レイとナオミは神浜魔法少女達をザイオンに放置するわけにもいかず、連れ出していく。

 

侵入に使った物資搬入用の列車は脱出手段であり、再び利用するのだろう。

 

車内に入った魔法少女達を地上に連れ出す役割を果たす中、色々な話を聞かせてくれる。

 

話の内容とは彼女達が如何にして絶望的状況に追い込まれたのかという話だ。

 

「私達サマナーもね…真実なんて語れなかった。私達の事情を知らない人には話が通じないの」

 

「でしょうね…悪魔召喚師がいるだなんて話しても…頭がおかしい重傷者だと笑われるわ…」

 

「誰もが狭い経験と感情だけの檻に閉じこもって生きてる…だから知恵を求める者は孤独なの」

 

「その気持ち…僕も分かる。オタクも色々な知恵に手を出すせいで…頭がおかしい奴にされる」

 

「サブカル界隈はよく知らないけど…レッテル張りをされる苦しみは同じ状況よね…」

 

「オタクってだけでロリコンだの性犯罪者だの社会悪にする。陰謀論者が悪者になるように…」

 

「その急先鋒こそフェミニスト共よ…水樹は電気街でそいつらに虐げられたと聞かされたわ…」

 

「水樹のように現実では危害を加えられると考えたからネットを利用したけど…同じ末路よ…」

 

「門倉に寄生した悪魔も言ってたわよね…ネットは人間性の粗悪な記号化しか生まないと…」

 

「それにヒトラー扇動術を行使し易い匿名性がある…絡んでくる連中の数の暴力で潰されるわ」

 

生前のヒトラーが残した扇動のコツとは、大量のバカをけしかけて考える者達を潰せとある。

 

ネットの匿名性ならば複数アカウントを利用して大量の嫌がらせコメントを送れるだろう。

 

戦前でも戦争反対と言えば非国民扱いする愚民が大量に現れて啓蒙活動者は潰されたものだ。

 

「これは日本でも古株の掲示板に投稿された元ネット工作員の手口よ。教えてあげる」

 

天皇はじめ宗教、日本の伝統に文句を言う奴は全て共産主義者と決めつけろ、手間が省ける。

 

お前は日本会議、朝鮮教会信者かと訊かれたら流すか、無神論は外国で相手にされないと脅せ。

 

コテを名乗るな、コテを使う誘惑に負けてはいけない。

 

掲示板は議論の場ではなく、我々の宣伝、啓蒙、入信勧誘の場と割り切れ。

 

長文を書く奴には一行レスで相手しろ、こっちは頭も体力も使わず、相手に使わせろ。

 

左翼に面倒な議論は吹っ掛けられるな。

 

そうした時は中韓、北朝鮮、朝日、決まり切った内容を書きなぐれ。

 

左右を入れ替えてオウム返しでいい、後は在日認定だ。

 

攻撃対象を()()()()()()()()()()()()()()()、自らの主張に()()()()()()()()()調()()()

 

都合の悪い事柄を隠蔽、または捏造だと強調する。

 

その事柄が世の中の傾向であるように宣伝する奴らが増殖してるが中身は似非保守の戯言。

 

工作員は無知なネトウヨを騙し、中国・朝鮮にヘイトを向けさせながら日本を米国に売る。

 

扇動も手品誘導も同じであり、意識操作と印象操作だけで人々を騙して言い負かせるのだ。

 

「右翼の街宣車すら朝鮮の便衣兵だと見抜けない日本人よ…ネットの似非保守さえ見抜けない」

 

「そんな無知なネトウヨが私にも絡んできた…話してくれた内容通り…私を在日認定してきた」

 

「それでも古町は懸命に啓蒙活動をしたわ…だけどネトウヨでなくても彼女を嫌う者ばかり…」

 

「聞きたくもない話を持ち出すと…人は認知的不協和心理に陥る。だから嫌悪してくるのよ…」

 

「嫌悪されたら怒り出し…議論は成立しない。話せる内容は相手を不快にさせないものだけね」

 

「僕達オタクも周囲の人と話せる内容は全体が話してる内容だけ…伝えたい話も出来なかった」

 

「だからこそ相互理解も得られず、全体に流されるだけの羊牧場と化す…それが支配の檻よ…」

 

「世の中の認識は全て御上が与えるメディア情報だけ…それしか話せないでは何も知りえない」

 

「何も知らない連中だからこそ…知らない話をベラベラ話すだけで異常者扱いしてくるのよ」

 

「やっぱり…魔法少女の真実を個人で発信しても無駄だったのね。やり方が間違っていた…」

 

「だからこそナオキは人々の権威主義を利用し、貴女達の真実を世界に残してくれるの」

 

「彼らが勝利してくれたなら…貴女が味わった苦しみは報われるわ。だから希望を持ってね」

 

偏見に支配されない大人の女性の優しさに触れたラビの目に薄っすらと嬉し涙が浮かんでくる。

 

そして東京での敗北を見ただけで尚紀の可能性を判断していた己の浅はかさを恥じるのだろう。

 

「私…尚紀さんと出会えたら謝りたい。貴方を信じられなかったから世界を滅ぼしかけたと…」

 

「皆が自分の信念を信じて戦い続けている…そんな人達が残す世界を…一緒に生きましょうね」

 

「……はい、レイお姉様、ナオミお姉様♪」

 

「「お、お姉様ぁ!?」」

 

敬愛の眼差しを向けてくるラビに対して大人の女性達は冷や汗が吹き出してしまう。

 

(ねぇ…魔法少女界隈はレズビアン社会だって噂…本当なんじゃないの…?)

 

(だからフェミニスト魔法少女が生まれたのね…この子達の環境が改善されるのを願うわ…)

 

ノンケなサマナー達は苦笑いしつつもラビから遠ざかり、隣の車両からザイオンに顔を向ける。

 

魔法少女達の未来を変えてくれる力となるだろう、男達の奮戦を心から望んでくれるのだ。

 

一方、ヤタガラス総本山に先行して現れたミシャグジさまは苛烈な戦いを繰り返す。

 

大門となる鳥居を超えた先にある様々な殿がある広場において防衛部隊と交戦を続けるのだ。

 

「邪魔をするでない!!貴様ら雑兵になど用はない…出てこいタケミカヅチーーッッ!!」

 

ヤタガラスの防衛部隊を雷魔法で焼き払いながら前進していき、ライドウ達の道を切り拓く。

 

この騒ぎによって総本山は蜂の巣をつついたような騒ぎとなり、独房の者達もざわついていく。

 

「おい!開けてくれよ!外から恐ろしい悪魔の魔力が近づいてんだ!殺されちまうぞ!!」

 

座敷牢の中で騒ぐ杏子とさやか達に対して看守を務める男は上からの連絡を待っている。

 

許可が下りなければ牢屋からは出せないと言われてしまう中、マミが一計を仕掛けようとする。

 

「うぐぅ!?く…苦しいのです…お腹が突然痛くなって…助けてなのですーっ!!」

 

「ここを開けて頂戴!なぎさちゃんを医務室に連れて行かないと死んじゃうわ!!」

 

座敷牢の中で転がり回るなぎさを心配する者達に対して、看守の男もついに折れてしまう。

 

慌てて牢屋を開けた途端、杏子とさやかが飛び出してきて看守を羽交い絞めにしていく。

 

「やっちまえ!マミ!!」

 

「決めちゃってください!マミさん!!」

 

「騙したなぁ!?何をする気だ…貴様らーーっ!!?」

 

「女の子を監禁した罰を与えるに決まってるわよ!!」

 

踏み込んできたマミが放つのは黄金の美脚の一撃であり、ステップキックが看守に炸裂する。

 

「ゴフゥーーーーッッ!!!」

 

壁に激突した男は倒れ込み、グルグル目のまま失神する程の一撃となるのである。

 

「ハァァァァァァ……フン!フン!アタァーーッッ!!」

 

回し蹴りを繰り返しながらカンフー演舞を行うマミに対してさやかと杏子が冷や汗を垂らす。

 

「勘弁してやるのです…座敷牢の中でカンフー映画のDVDを視聴してた影響なのです…」

 

「マミはいつも形から入る奴だからなぁ…」

 

「そんな事してる場合じゃないでしょ!?早くここから脱出しないとですぞーっ!!」

 

机の上に置かれていたソウルジェム指輪を身に着けた者達が魔法少女姿に変身していく。

 

「ここにはあたしのパパとママも捕らえられてると思うけど…どう説明したらいいんだろ…?」

 

「しょうがねぇ…あたしの幻惑魔法を使った後、眠らせてから運び出すしかないよな…」

 

「うぅ…娘の正体は愛と正義の変身ヒロインでした!なんて…言えるわけないしねぇ…」

 

「こことは違う場所の座敷牢に囚われてると思うけど…外に出て探すしかなさそうね…」

 

「なぎさは…なぎさ達を捕らえた連中をぶちのめしたら直ぐにお風呂に入りたいのです…」

 

「そうよね…お湯とタオルと水のいらないシャンプーぐらいしか提供してもらえなかったし」

 

「そんだけ利用させてくれただけ十分過ぎるだろ…テレビと映画まで用意してもらったし…」

 

「でも食事の時に紅茶を用意してくれなかったわ!私は美味しい紅茶が飲みたいのよ!」

 

「チーズも用意してくれなかったのです!なぎさは煎餅と緑茶程度では満足出来んのです!」

 

「お前ら我儘過ぎるだろ!?」

 

「アハハ…なんか緊張感が足りないパーティだけど…まぁいっか!気合入れていこーっ!!」

 

牢屋から脱出した魔法少女達は迫りくる警備兵を相手に奮戦していく。

 

外と内からの挟撃によって混乱を極めるヤタガラス総本山の奥には奥の院が存在する。

 

奥の院から現れるのは三羽鳥と天津神族であり、鳥居の前には武装したサマナー部隊がいる。

 

<<賊共め…我らが手にした平安京を焼いてくれた礼は高くつくぞ…皆殺しにせよ!!>>

 

三羽鳥の命令を受け取った武装サマナー部隊が石段を駆け下りていく中、タケミカヅチも動く。

 

「ふもとで暴れているのはタケミナカタが零落した姿だな…決着を付けに来たのだろうよ…」

 

「葛葉ライドウ共も迫って来ているようだ…如何する?」

 

「我はタケミナカタの相手をしてやろう。今度は両腕だけでなく、残した足と首も跳ね落とす」

 

「それだけでなく魔法少女共も内部で暴れているようだ。我はそちらを排除した後、合流する」

 

<<行くがいい、天津神族の御柱達よ。ヤタガラスに歯向かう逆賊共に誅罰を下せ>>

 

タケミカヅチ、フツヌシ、オモイカネも動き出す中、三羽鳥の頭上に現れる人影がこう呟く。

 

<<新たな日の本を築き上げるのは誰なのかを思い知らせてやる…待っていろ、国津神共め>>

 

ヤタガラスを構成する秦氏とそれらを導く天津神族は日本の支配者は誰かを決める戦いを望む。

 

同じように国を愛する右翼団体であるはずなのに、権力を競い合う潰し合いを行うのだろう。

 

これこそが暴力革命の歴史であり、同じ思想団体ですら潰し合いが起きてしまうのであった。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――

 

ミシャグジさまを相手に苛烈な戦いが繰り広げられる総本山前を迂回する者達がいる。

 

人工的に築かれた人工山に備わっている防空壕トンネルを利用するのはライドウ達のようだ。

 

「ここは緊急時に使うように設計された防空壕だ。ここを進めば総本山の内部に入れる」

 

「壬生一族よ、協力に感謝する。葛葉一族が送り込んだ密偵はトンネルに気が付いてなかった」

 

「あの男を殺したのは私だ…すまない。彼が残した警告をもっと真剣に考えるべきだった…」

 

「済んだことを追求するつもりはないぞ、アヤメよ。過ちは誰でも起こす…悔い改めればいい」

 

「フッ…ゴウトも学んだようだな?人間はやり直せる存在なんだと?」

 

「レイを許したうぬより学んだ事だ。悪者は殺せばいいでは償いなど生みようがないからな…」

 

「フン、それよりも大丈夫なのか?こういう一本道だと出入り口に罠を仕掛けやすいものだぞ」

 

「葛葉キョウジ、お主も感じているじゃろう…総本山内で暴れている悪魔の気配をな」

 

「ミシャグジが先行していたようだな…先走りやがって。まぁ…囮としては丁度いい」

 

「もう一つ気になる事がある。この先から魔法少女の魔力まで感じる…この魔力はたしか…?」

 

防空壕トンネルの出入り口にまでやってきた者達が光の向こう側へと進み出る。

 

銃を構えながら警戒しつつ外に出てみると、目が点になってしまう光景が広がっているのだ。

 

「ホアチャーーーーッッ!!」

 

敵を相手に大立ち回りをするのはマミであり、マスケット銃とは違う武器が握られている。

 

持たれているのはマジカルヌンチャクであり、燃えよドラゴンめいた動きで頭をしばきあげる。

 

「いいですぞーマミさん!燃え上がっちゃってますねー!!」

 

「これだからマミと一緒にアクション映画を見るのは嫌なんだよ!技の練習台にされちまう!」

 

「マミには負けないのですーっ!!ウォォォーーッッ!オレサマ、オマエ、マルカジリ!!」

 

「あいたたたたた!!頭に噛み付くなぁぁぁーーーっ!!?」

 

見滝原魔法少女達を敵に回したヤタガラス警備兵達はボコボコにされていく。

 

それでも不殺の戦いを仕掛ける彼女達は全員を昏倒させて制圧する戦いを披露するだろう。

 

「フン!フン!フン!フン!フン!フン!」

 

ヌンチャクを巧みに振り回しながら演舞を行うマミであったが、慣れない道具は怪我の元だ。

 

「グフッ!!?」

 

後頭部にヌンチャクの棒が当たってしまったマミは死ぬほど痛い怪我を負うであろう。

 

白目を剥いて倒れたマミの心には男の子と同じような遊び心と情熱が宿ってるのやもしれない。

 

「だから言わんこっちゃねぇ…こりゃ暫く起きれそうにねーぞ」

 

「それに家族の居場所を吐かせる前に敵を倒しちゃったのも不味かったよね…」

 

「そ、そんな事より見るのです!なぎさ達を捕らえた女サマナーがいるのですよ!?」

 

増援部隊が現れたのかと武器を向けてくる魔法少女達に対して、アヤメがこう告げてくれる。

 

「武器を仕舞え!お前達を傷つけた事は謝る…今の我々はヤタガラスを離反した者達だ!」

 

「そうやって油断を誘う気だろ!騙されねーぞ!」

 

「私を見くびるな!本気で戦うつもりなら、そんな姑息な手を使わずとも勝って見せる!」

 

「見くびってるのはそっちの方だよ!今度は手加減しないからね…かかってこい!!」

 

「なぎさ達は負けないのです!行くのですよ、杏子!さやか!」

 

「ま、待て!君達はもしかして…尚紀が語ってくれた美樹さやかと義妹の佐倉杏子か!?」

 

尚紀の名を伝えたライドウの言葉で踏み止まったさやか達が困惑してしまう。

 

見滝原の魔法少女達とは面識がないライドウでも、尚紀を通して繋がりを生む事は出来る。

 

「時代がかったハイカラマントのとんがりモミアゲ野郎…尚紀の居場所を知ってるのか!?」

 

酷い言われようをされるライドウは頭に冷や汗が浮かんでしまうが頷いてくれる。

 

駆け寄ってきた者達に事情を説明すると杏子とさやかは尚紀の自己犠牲に対して辛い顔となる。

 

「尚紀のバカ野郎…あたしと別れちまったのは…世界と戦争をするためだったなんて…」

 

「それ程までの犠牲を敷かないと倒せない存在だったんだね…イルミナティって…」

 

「彼も苦渋の決断だった…それでも世界の金融支配を終わらせる為には…人柱が必要なんだ」

 

「そんなのあたしは認めない!お前も尚紀に加担してるなら…絶対にあいつを連れ戻せよ!」

 

「そうだよ!あたしも尚紀さんを引っぱたいてやりたい…彼を大事に思う人は大勢いるの!」

 

「それでも…彼は戻らないだろう。彼は自分の罪を甘受し、楽園を捨てて罪の十字架を背負う」

 

「そ…そんな……ことって……」

 

「彼にはルシファーが宿ってる…知恵の蛇として楽園を追放され…モーセが磔にした蛇となる」

 

「尚紀はゴルゴダの丘を登る気なのかよ…そんな自己犠牲が出来るなんて…まるでメシアだ…」

 

「自分とて…本当に辛い。それでも自分は尚紀を支えてやりたいんだ…心の友としてな…」

 

両膝が崩れてしまった杏子の脳裏に浮かぶのはかつての記憶。

 

尚紀と共に暮らしていた頃の記憶であり、彼をサタンと罵って殺し合った惨劇の記憶である。

 

「あたしの家に来てくれたのはサタンなんかじゃなかった…本物の…キリストだった……」

 

とめどなく溢れる涙を堪えきれない杏子を抱きしめるさやかの気持ちを汲み取った者が動く。

 

気絶から目覚めたマミの元に向かい、事情を聴くと協力を申し出てくれるのだろう。

 

「彼女達の両親を探し出すのは我々壬生に任せてもらおう。色々と迷惑をかけたからな…」

 

「そうしてくれたら助かるわ。私達魔法少女の秘密は親にも語れないものだから…」

 

「昨日の敵は今日の友なのです?なぎさはまぁ構わないのですけど…」

 

「それに私だってヤタガラスって連中には借りがあるし、御礼参りはさせて欲しいわ」

 

「くだらない長話をやってる暇があるのか?御礼参りどころか…殲滅されかねんぞ…」

 

キョウジの言葉に反応した者達が武器を構える。

 

周囲を囲んでいるのは武装したサマナー達であり、その中にはヤタガラスの使者の姿もあった。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――

 

ヤタガラス総本山のふもとでの戦いに勝利したミシャグジさまであるが、辺りを警戒する。

 

「……来るか」

 

石段を踏みしめながら下りてくる存在とは日本神話の武神であり、雷を司る神。

 

タケミナカタを投げ飛ばした逸話から相撲の祖であり、オオクニヌシ相手に交渉を挑んだ存在。

 

イザナギがヒノカグツチを斬った血から生まれ、アメノオハバリの息子のような武神である。

 

「タケミナカタ…随分と姿が様変わりしたようだな?まるで()()()()()()()()ではないか…?」

 

不気味な笑みを浮かべながらふもとまで下りてきた武神は完全武装であり、雷の剣を生む。

 

タケミカヅチの姿を見た途端、蛇の口がワナワナと揺れ動き、激しい怒りを表すだろう。

 

「タケミカヅチィィィィ……ッッ!!!」

 

今にも飛び掛かって来そうな復讐鬼を相手にしても余裕の態度でやってくる。

 

ミシャグジさまの巨体を見上げながら立ち止まった後、このような話を持ち出してくるのだ。

 

「貴様の父神であるオオクニヌシは子らに国を譲るかの判断を委ねたが…貴様は歯向かったな」

 

「ワシはコトシロヌシのような腰抜けではない…天津神族という侵略軍に国譲りなど許さん…」

 

「貴様は戦いを挑んできたが両腕を切り落としてやった。貴様は蛇のように逃げ出したものだ」

 

「手づかみの試合で…手をつららや剣に変身させてきた卑怯者が何を言うか!!」

 

「ハッハッハッ!そうだったか?まぁいい…今度は諏訪湖の中にバラバラの体を捨ててやる」

 

「貴様の剣であるフツノミタマとなるフツヌシはどうした?横にいないようじゃが…?」

 

「敗北した落ち武者相手に我の剣を使用する事もあるまい?我の力だけで十分勝てるぞ」

 

何処までも舐め腐る宿敵に対して憎悪が噴き上がる中、タケミナカタはこんな話を持ち出す。

 

「江戸時代の頃、黒船がやってきた光景を見た時…ワシにはアメノトリフネに見えたもんじゃ」

 

「我の船と欧米ユダヤ帝国の船を同列に語ってくるか……無礼であるぞ!!」

 

「同じじゃよ。理不尽な要求を突きつけ、逆らう力が無ければ不平等な条約で国を乗っ取る」

 

「奴らは我ら天津神の国を侵略しに来た連中だ!我らが耕し、我らが育てた国を略奪した!」

 

「酷いブーメランな理屈じゃのぉ?我ら国津神が耕し、育てた国を奪い取った貴様らなのに?」

 

「我らはこの国を育てる努力をしてきた…秦氏と共にな!ユダヤ共は略奪しかしなかった!!」

 

「その点については評価しよう。ユダヤ共は国を耕すという発想そのものが無い寄生虫共じゃ」

 

「奴らは金持ち犯罪者共だ!手を汚して国を耕す農民をバカにする為に…()()()()()()()()!」

 

右翼政党の歴史的な代表格であるナチスの語源のナチとはユダヤ用語である。

 

NAZI(Nationalsozialist)と読み、国家社会党員を表す。

 

ナチという言葉はユダヤが考えて広めた()()であり、国家社会主義党が自称したわけじゃない。

 

バイエルン地方やオーストリアで農民の子供に対して一般に付けられた差別用語である。

 

田舎者やノロマを表すIgnatzを縮めてNaziとし、国家社会主義者を()()()()()()()()()とする。

 

こいつら国家社会主義者は単にナチ(ノロマ)の集まりだという蔑称として後の時代に普及させたのだ。

 

「奴らは子供の頃から選民として職業を厳選される!農民や製造業には決して就かせない!」

 

「農民や製造業などの産業は金融に支配される者達の職業として嘲笑う連中じゃからのぉ…」

 

「奴らは金融や起業家のような支配階級になれる職しか興味が無い…頭が寄生虫そのものだ!」

 

「お主達は違うというのか?我らが耕した国を乗っ取った貴様らも十分ワシらに寄生しとるぞ」

 

「我らは国を耕す者達を嘲笑いはしない!嘲笑う神ならば…草薙の剣など用意はしない!!」

 

「秦氏は日本酒技術を発展させた者達…酒は米より生まれるもの…富の象徴の農民を守る者か」

 

「だからこそ秦氏とヤタガラスは国家社会主義団体だ!ナチ(田舎者)と蔑まれても誇りを持ってきた!」

 

たとえ国津神から国を奪った神だとしても、天津神族もまた土地に根を下ろせる価値観をもつ。

 

国津神の中にも天津神だった者も多く、だからこそ根っこの部分は同じ価値観があるのだろう。

 

天津神が農業を愛する気持ちは時女一族と同じであり、霧峰村を焼いたのも断腸の思いがある。

 

「我らだってな…欧米ユダヤ共に従いたくなど無かった!戦争に負けたから支配されてきた!」

 

「その思いはワシら国津神と同じじゃな。戦争に負けて国を奪われた我らの無念…分かるか?」

 

「……分かるとも。我らもまた侵略者であろう…それでも我らは貴様らに代わり…国を耕した」

 

共通の敵を抱える者達として先程まで続いた因縁に縛られし怒りの炎が鎮火していく。

 

並行世界を渡り歩いても消えなかった憎しみの炎を飲み込んででも、復讐鬼が提案してくる。

 

「天津神族よ…いったん戦争は止めんか?我らの敵は欧米を支配するバアルとユダヤ共じゃ…」

 

「貴様の腕を斬り落とした我と轡を共にしたいと申すか…?それでいいのか…タケミナカタ?」

 

「今でも貴様が憎い気持ちに変わりはないが…それでも共通の敵を滅ぼした後でも…構わんぞ」

 

目を瞑って考え込むタケミカヅチであるが、目を開けた彼の首は横を振ってしまう。

 

「我ら天津神と国津神は道を違えてしまった…今更後戻りは出来ん…行くとこまで行こうぞ」

 

「そうか…残念じゃよ。我らは共に土地と民を愛せる神々だったが…決着をつけるしかないな」

 

雷の剣で霞の構えを行ってくるタケミカヅチに対してタケミナカタも動く。

 

ミシャグジさまの体を構成していた蛇神の体から膨大な魔力が噴き上がっていき、姿を隠す。

 

魔力の奔流が柱の如く噴き上がる中、奔流の中から現れたのはミシャグジさまの姿ではない。

 

「その姿は……まさか……」

 

今のタケミナカタは蛇神にまで零落してしまった姿ではない。

 

両腕を斬り落とされてなお国を憂う者であり、戦い続ける魂を宿す存在。

 

「人間だろうが悪魔だろうが、誇りと憂いを忘れちまった輩共は……オレが斬る」

 

蛇の鱗や骨格を身にまとう異形だが、どこか特撮ヒーロー然とした姿に変化している。

 

斬り落とされた両腕は浮遊し、その手には二刀流の刀を携えており、両肩の球体が操るだろう。

 

「先にあの世へ()って待ってな。日本を売ってきた売国奴共も直ぐに後を追わせてやるぜ」

 

「貴様は…コウガサブロウだな?蛇の侍として挑んでくるか…面白い!受けて立とう!!」

 

「国を憂いて幾星霜…落ち武者になっちまってもオレの心は燃えてるぜ…憂国の炎がな!!」

 

石畳が爆ぜる程の踏み込みを行いながら互いが飛び込んでいき、激しい剣舞を行っていく。

 

この光景こそ葦原中国(あしはらのなかつくに)平定の再来であり、国を担うはどちらの神々かを決める死闘となった。

 




真女神転生4であんまり過ぎる扱いをされたコウガサブロウをようやく登場させられました。
天津神族を取り扱ってきたのもライドウやコウガサブロウを動かしたかった部分もあるんですよねぇ。
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