人修羅×まどマギ まどマギにメガテン足して世界再構築   作:チャーシュー麺愉悦部

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381話 エゴから解放された魂

石畳の広場で囲まれているサマナー達と魔法少女達を襲うのはヤタガラスの精鋭部隊。

 

それらを率いる神々とはフツヌシとオモイカネであり、本気の戦いを仕掛けるだろう。

 

サマナー部隊を率いる女隊長はヤタガラスの使者と名乗る女であり、戦闘衣装を纏う姿。

 

御高祖頭巾(おこそずきん)の下はくノ一めいた戦闘服であり、胸元には複数の召喚管が刺さっている。

 

目元が見えなくとも口元は怒りの感情が溢れており、ワナワナ震わしながらこう言ってくる。

 

「裏切り者め…何が葛葉四天王ですか!貴様など恩を仇で返す卑劣漢ですよ…葛葉ライドウ!」

 

激怒してくる女はこの世界に流れてきたライドウにとっては世話役を任せてきた者。

 

それに彼女の先祖は大正時代のライドウの世話役でもあり、後ろめたい気持ちが沸き起こる。

 

雰囲気は大正時代のヤタガラスの使者そのものであり、裏切り者と呼ばれるのは辛いだろう。

 

「自分が裏切るよりも先に葛葉を裏切っていたのはヤタガラスだ…騙してきたのはそっちだ!」

 

「ヤタガラスは秦氏一族が支えた組織です!秦氏一族を優先して救うしか…なかったのです!」

 

「詭弁だ!貴様らは秦氏一族の末端さえ切り捨てている…末端の時女一族を焼いた連中だぞ!」

 

「我ら壬生とて秦氏の末端一族だ!だが冷遇されてきた…本家に近しい者しか利が無かった!」

 

「それが葛葉側に寝返った理由ですか…壬生一族の者達よ?貴様らも裏切り者として処分する」

 

「こういう連中だったというわけじゃな…忠義だの愛国だの甘言を刷り込んで躍らせおって!」

 

「ヤタガラスは大局を見据えて動く者達…大を生かす為に小を犠牲にする…同じですよね?」

 

「何が同じだというのだ…?」

 

「啓明結社を相手に戦争を起こした連中と同じです。彼らも大を生かす為に小を犠牲にする」

 

「そ、それは……」

 

「契約の天使、ヤタガラス、そして人修羅達でさえ大を生かす為に小を犠牲にする覚悟がある」

 

そう告げられた事でライドウは押し黙ってしまう。

 

末端を切り捨てるヤタガラスを責める行為は革命戦争で犠牲を敷く人修羅達さえ責める行為。

 

インキュベーターとかヤタガラスは責めるくせに、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

そんな風に言われてしまった気がするライドウは握り込んだ手を震わせる事しか出来ない。

 

「国津神や時女一族とて同じです。彼らも目的の為に犠牲を敷いてきた…我々と同じようにね」

 

「そうであろうな…我らもまたミイラになった者達であろう…その責任は果たさねばならん…」

 

「だからこそ人修羅は罪の十字架に磔にされる事を望む男だ…()()()()()()()()()()()()()()

 

「それは……その……」

 

「犠牲を敷く…これは自然な行為だろう。我々人間は弱い家畜に犠牲を敷いて喰らう存在だ」

 

「そうです…我々は命を犠牲にして生きる人間です。食事をした人間に責任を問うのですか?」

 

「命を食す…これは大自然の法則だ。だが大自然の中では…我々人間もまた食事となるだろう」

 

「狩ろうとした獣に襲われて人間も喰われる…その覚悟をもって犠牲を敷く者になれと…?」

 

「命を犠牲にするならば報復される覚悟でいるべきだ。それが嫌で我々を排除したいんだろ?」

 

今度はヤタガラスの使者が押し黙る番であり、ライドウの追及によって言い訳が浮かばない。

 

問題を彼ら側にすり替えようと狙っていた時、手を叩く音が響いてくる。

 

手を叩く者とはフツヌシであり、いい笑顔を浮かべながらライドウを賞賛するのだ。

 

「成長したな…14代目よ。サマナーとして我ら自然の神々と同じ目線の境地に達したか」

 

「フツヌシ…あの時に語ってくれた言葉をようやく理解した。だからこそ覚悟を問いたい」

 

「うむっ、我らもまた犠牲を敷いた命達への感謝だけでは足りんだろう。命を懸けねばならん」

 

「我らは皆…犠牲を敷いて生きる者達。だからこそ覚悟せよ…犠牲者は必ず報復する者だとな」

 

「命を食す消費者全てに伝えてやりたい言葉であるぞ…全力を持って貴様らの相手となろう」

 

「この戦いは大自然の中で行う狩人と獣の死闘だ。我らは悪魔の如き獣となり…修羅と化そう」

 

「我ら神、そして人、皆全て陰陽存在…狩人が獣を狩り、獣も狩人を狩る陰陽回転を行う者!」

 

ハイカラマントを両手で払い上げたライドウは陰陽葛葉を抜刀する。

 

「陰陽葛葉よ…我と共に立ち向かえ!命を犠牲にする者達の覚悟を問う剣となるがいい!!」

 

フツヌシもあぐら状態で浮遊するのを止め、両手に大和古剣を生み出して叫んでくる。

 

「陰陽こそ世界の在り様!どちらも同じと気が付く太極精神を忘れるでないぞ…サマナー!」

 

神や悪魔、復讐する者とされる者、正義と悪、どちらも陰陽回転によって立場がすり替わる。

 

悪を倒す者でさえ自分の戦いのせいで犠牲を生んだ場合は悪として倒される立場にすり替わる。

 

だからこそ回転を止めてやろうと考える者達は正義を利用し、自分だけ正しい事にするだろう。

 

故に勝った者が正義を名乗り、陰陽回転で立場がすり替わらないようにする()()()()()()()()

 

「「ハァァァァァァーーーーッッ!!!」」

 

激しい剣戟を始めたライドウ達に呼応するサマナー達も動き出す。

 

「フン!正義だの悪だのはいつもすり替わるもんだ。()()()()()()()()()()()()()()()()()!」

 

「その通り!貴様の相手は我が行おう…葛葉キョウジ。葛葉の異端児の力…我に示せ!!」

 

「お望みとあらばそうしてやろうか、オモイカネ!!」

 

召喚管を振るうキョウジが使役するのはバロンであり、雷撃を生み出す存在が攻撃を仕掛ける。

 

浮遊するオモイカネは空に上昇して雷撃を避け、風魔法を用いて反撃してくる。

 

「私は魔法少女共を仕留めてあげましょう。そして貴方達は葛葉と壬生の連中を殺しなさい」

 

背中の忍者刀を抜いたヤタガラスの使者の動きに合わせるようにしてサマナー部隊が抜刀する。

 

武器を構える魔法少女達は壬生一族の者達に対してこう叫んでくるのだ。

 

「壬生一族の道は私達が切り拓くわ!美樹さん達の両親を直ぐに保護して連れ出してあげて!」

 

「し、しかし……」

 

「行ってくれ!ここは葛葉一族と魔法少女達が受け持とう…我々の力を信じろ!!」

 

フツヌシと戦いながらも叫んでくるライドウの言葉に頷いたアヤメと長老達が突撃していく。

 

壬生の長老はランダを召喚し、プロミネンスの業火を用いた爆発攻撃を仕掛けて道を切り拓く。

 

包囲に穴を開けた者達が外に逃げ出すのだが背中を見せる者達にマシンガンを向けられる。

 

しかしマミが生み出したマスケット銃の連続射撃が襲い掛かり、サマナー部隊の銃を弾くのだ。

 

「さぁ、かかってこい!!あたし達が相手だぁ!!」

 

「見滝原の魔法少女を舐めんなよ!デビルサマナー共!!」

 

「やぁぁぁぁって、やるのですぅ!!」

 

さやか達も迫りくるヤタガラスサマナー達に斬り込んでいき、場内は激しい乱戦状態と化す。

 

召喚された悪魔も戦いに参加していき、激しい戦場を生み出す光景となるだろう。

 

さやかと杏子は背中を庇い合うような陣形で戦い、なぎさはマミの援護に徹していく。

 

そんな中、先程のやり取りについて思うところがあるのか、さやかがこんな話を持ち出すのだ。

 

「あたし…本当に狭い認識世界しか見てなかった…正義の味方は絶対に正しい側だと思ってた」

 

「あたしが前に語ったことがあるのを覚えてるか?食物連鎖の話だよ」

 

「覚えてるよ…魔法少女も狩人も変わらなかった…喰うか喰われるか、それだけの世界だった」

 

「正義の味方が絶対に正しくされるのは食物連鎖に勝ったからさ。負けたら悪者になっちまう」

 

「正義って…こんなにも意地汚い概念だったんだね…()()()()()()()()()()()()()()()()()…」

 

さやかが思い出してしまうのは人でなしのホストや幻影で生み出された男を突き落とした記憶。

 

あの時のさやかも自分は正義だと信じ込み、自分の暴力行為を正義で正当化しようとした者。

 

この世で最も暴力的になれるのは正義側であり、正しいと思うから加虐のブレーキが壊れる。

 

神浜魔法少女達を虐待した愚民と同じ心理状態であり、正義に盲従する者は中身など考えない。

 

大衆娯楽化した正義という概念に憧れていた自分の無知を彼女は心から恥じてしまうのだ。

 

「それが分かっただけ、さやかも大人になったんだよ。人間を形作るのはいつだって経験さ…」

 

「狭い経験だけの世界に引き籠ってちゃダメだよね…あたしはもっともっと…大人になるよ!」

 

「あたしもさやかと一緒に大人になっていきたい…だからこそ、負けられねーんだぁ!!」

 

飛び掛かってくる召喚悪魔に斬り込んでいく魔法少女達もまたサマナーに負けない意地を示す。

 

デビルサマナーも魔法少女も自然の一部であり、自然の法則に従う者。

 

我々が生きる世界はこんなにも広い知恵が広がっており、だからこそ知る経験が必要だった。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――

 

戦いはそれぞれの領域へと進んでいき、魔法少女達は神苑方面にまで追い詰められている。

 

彼女達と戦うのはくノ一めいた姿となったヤタガラスの使者であり、仲魔を使役してくる。

 

<<アァァァァーーーーッッ!!!>>

 

アメノウズメが放つ風魔法によって弾き飛ばされた者達が神苑の樹木に叩きつけられる。

 

天津神族を使役するヤタガラスの使者のサマナー実力は組織内でもトップクラスなのだろう。

 

「魔法少女達よ…我々の邪魔をする存在でなければ同じ日本人として…」

 

その先を語ることもなく口を閉じたヤタガラスの使者に対して傷ついた者達が叫んでくる。

 

「日本人なら救うっていうならさ…日本人全員を救ってみせなさいよ!」

 

「どうせあたしらは選民になれねーんだろ…?ほんと…何であたしらここにいるんだろうな?」

 

「私達だって…救えるのなら救いたい!それでもザイオンの許容人数は限られているんです!」

 

「貴女達がやってるのは大を殺して小を活かす行為よ!大勢が犠牲になってしまうわ!」

 

「世界はもう直ぐハルマゲドンを迎えるのです。天使の軍勢によって…地球は焼かれるんです」

 

「う…嘘だろ…?ヨハネ黙示録が現実になっちまうのかよ…?」

 

「聖書の内容を知る貴女なら…どうして世界が黙示録化したのか分かるはずです」

 

「そ…それは……」

 

「全ては人類の堕落が原因…金と快楽だけが価値基準にされたんです。金融民族共のせいでね」

 

聖書に記されたカナン族について知っているかと問われると、佐倉杏子は頷いてくれる。

 

「父さんから語られたカナン族はイスラエル崩壊の原因を生んだ…奴らはユダ族化したんだ」

 

「その通り…カナン族の宗教であるバアル崇拝の教義こそがイルミナティを導く羅針盤です」

 

そして秦氏は大陸から流れてきた元イスラエルの民であり、失われた10支族だと伝えられる。

 

神道にヘブライ文化が根付き、ネストリウス派キリスト教の景教の土台となったと伝えられる。

 

「どうりで神社はヘブライの痕跡が至る所にあるはずだ…大昔からキリスト教があったのか…」

 

「ヤタガラスの秦氏とは元々はイスラエル人…かつては唯一神を主として崇拝してきました…」

 

「プロテスタントの教会が実家のあたしも同じさ。けど…あたしは神様から見捨てられた女だ」

 

「我々秦氏も同じです…我らは神道の代表を務めながらも景教を信じ、救いを求めてきた…」

 

「だけど…救いの天使はやってこなかったようだな?」

 

「それどころか…我々を殲滅しに天使の軍勢まで現れました。そのせいで多くの犠牲を生んだ」

 

「お互いに神様から見捨てられちまったようだな?それで、あんた達はどうしたいんだい?」

 

「我々はもう…景教を信じるつもりはありません。神道の代表として天津神を讃えていきます」

 

「天津神族の信者として神様の命令に忠実に動く駒になったか…新たな救いを求めた末に?」

 

「その通り…我々人はあまりにも弱い…神に縋りつかなければ道を見失う子羊なのです…」

 

「あたしもそうさ…けど、どんなに祈っても神様は助けてくれねぇ…だから自分に頼るんだ」

 

頭上で槍を回転させた後、石突き部分を地面に打ち付けながら杏子が叫んでくる。

 

「神様の言葉なんかより自分の心に問いかけろ!お前の心はなんて叫んでるんだ!?」

 

「私の…心……?」

 

「秦氏連中だけを救いたいだけなのか!?本当はもっと救いたい連中がいるんだろ!?」

 

魔法少女の叫びによって思い出してしまうのは時女一族の魔法少女達の姿。

 

初めて出会えた日の記憶が巡り、明るく接してくれた広江ちはるを思い出す。

 

ザイオンの秘密に触れさえしなければ彼女を殺す理由もなかったし、時女一族だって同じ。

 

全てはイルミナティの下部機関に成り果てるまで落ちぶれたヤタガラスに縛られたせいなのだ。

 

口元がワナワナと揺れ出し、頭巾の下は怒りと無念が噴き上がったような顔となった女が叫ぶ。

 

「黙りなさい!!貴様らに分かるはずがない…私達秦氏の苦しみが…分かってたまるかぁ!!」

 

二本目の召喚管を抜いたヤタガラスの使者が使役するのは天津神のタジカラオである。

 

アマテラスが隠れた巨大な岩戸を力づくでこじ開けられる程の剛力を示すように両手を鳴らす。

 

「信仰心を失ったガキは自分勝手に生きてればいい。ただし、自由には責任が伴うぜ…」

 

10mはある巨体の男神に掴まれてしまえば最後、魔法少女の体などミンチにされるだろう。

 

「さぁ、神に頼らない力を示してみろよ…魔法少女共!俺がグチャグチャに潰してやろう!」

 

「私とタジカラオ、そしてヤタガラスの腕利きサマナーを相手に何処までやれるか見せなさい」

 

三体の強敵が仕掛けてくる状況の中、杏子に負けじとさやかも剣を頭上に掲げながら叫ぶ。

 

「大きなオジサンが相手でも、あたしにはもっと大きいあたしがいる!受けてみろぉ!!」

 

魔力を爆発させるさやかが使役したのは巨大な人魚の魔女であり、タジカラオの十倍はある。

 

百メートルサイズの人魚の魔女が振り下ろす巨大な斬撃に対してタジカラオが両手を掲げる。

 

しかしマミが放ったレガーレ・ヴァスタアリアの拘束リボンが全身に巻き付いて締め付ける。

 

「ウォォォォーーーーッッ!!!」

 

「そ、そんな……嘘でしょ!?」

 

リボン拘束など意に介さず動ける神の腕力で巨大な剣の一撃を真剣白刃取りしてくるのだ。

 

「くぅぅぅぅぅぅ……っ!!!」

 

剣を両手持ちにしながらタジカラオと力比べを行うオクタヴィアであるが、体が浮き上がる。

 

刀身ごと持ち上げられた人魚の魔女は豪快な投げ飛ばしで飛んでいき、庭園を砕いてしまう。

 

「ぬるいぜぇ!!天の岩戸の重さよりも軽い剣の一撃なんぞ…俺には通用しねぇ!!」

 

『会心の覇気』を纏い、タルカジャを用いて火力を一気に跳ね上げたタジカラオが拳を放つ。

 

地面を打ち付けて放つ一撃とは『ティタノマキア』であり、大地を砕く一撃とする。

 

放射状に広がる大地の跳ね上がり攻撃に対して、大きく跳躍しながら魔法少女達が斬り込む。

 

「まだまだ終わりじゃないよ!!これでもくらえーっ!!」

 

倒れ込んだオクタヴィアの周囲に生み出された巨大車輪が射出されていく。

 

迎え撃つのはアメノウズメであり、扇子を振るいながら真空刃を放ち、車輪の群れを斬り裂く。

 

その間に接近戦を挑もうとするさやかに対して攻め込むのはヤタガラスの使者である。

 

「くぅ!!」

 

忍者刀の一撃を受け止めたさやかは跳ね上げられた大岩の上で剣舞を行う状況となってしまう。

 

「さやか!?」

 

「余所見をするんじゃねぇ!!」

 

迫りくるタジカラオが放つ巨拳の一撃を跳躍して避けた杏子はマミ達と協力して戦っていく。

 

一方、接近戦の戦いを強いられるさやかは果敢に攻め込むが、年季の違いを見せつけられる。

 

「アァァァァーーーーッッ!!」

 

斬撃を放つ手を掴み取られたさやかは捩じり込まれながら腕を肩に背負われ、へし折られる。

 

右腕を折られた彼女に対してさらに肘打ちを打ち込み、そのまま背負い投げを放つ。

 

倒れ込んださやかにトドメの一撃を放つが、左手で忍者刀の刃を掴み取る。

 

「くっ……うぅ……!!」

 

手を斬られながらも首に突き立てられる刃を止めるさやかはこう叫んでくるのだ。

 

「一つの正しさに縛られちゃダメ…それに縛られたら貴女もあたしになる…皆を傷つけるの!」

 

「黙れ!私の家は代々ヤタガラスの使者を務めてきた一家…私の魂はヤタガラスと共にある!」

 

「運命を他人に委ねたら支配されちゃうの!本当の貴女が何を望んでるのか…言ってみて!」

 

「そ…それは……」

 

刀を押し込む力が緩んだ隙をつき、馬乗り状態のサマナーの腹を蹴り飛ばす。

 

倒れ込む前に宙返りを行って着地したサマナーに対してさやかは懸命に訴えかけるだろう。

 

「尚紀さんから全体主義の弊害を聞かされたの…全体が優先されたら個人の権利は消滅する!」

 

「私達ヤタガラス構成員は全体を支える働き蟻で十分です…支えた分だけ恩恵が得られる…」

 

「本当の恩恵は個人の権利だよ!権利が剥奪されたら…人情なんて欠片も無い集団になる!」

 

集団の機能性ばかりを追求された負の潔癖主義の末路こそがブラック企業社会や独裁国家社会。

 

株主・役員利益の為に働かされる社員は子供が生まれる日になっても企業全体に拘束される。

 

仕事が忙しいのに勝手な行動をして全体に迷惑をかける糞野郎だと罵倒される光景と化す。

 

そこには人情など欠片もなく、全体歯車としての価値しか存在しない無機質な集団となる。

 

独裁国家も同じであり、一党独裁の利益の為にのみ国民は動かされる破綻した社会が生まれる。

 

そんなブラック社会で唯一自由を行使出来る存在こそが独裁者連中なのだとさやかは叫ぶのだ。

 

「大事なのは皆で迷惑を許容する寛容さだよ!時には悪いことをしてでも人情を優先して!」

 

「出来ない!!そんな勝手をしたら…ヤタガラス全体に迷惑がかかる…絶対に出来ない!!」

 

「迷惑をかけない人間なんて存在しないと尚紀さんは言った!迷惑をかけるのが人間なの!」

 

「私は…私は…他人に迷惑をかける社会のクズになんてなりたくない!全体に忠を尽くす!」

 

社会を乱す悪党を責める態度で忍者刀を構えてくる女を見るさやかは自分の姿と重なってくる。

 

さやかもまた社会全体に迷惑をかける存在を許さず、正義の名の元に暴力制裁を実行した女。

 

社会全体を守ろうとする気持ちは尊くても、偏り過ぎれば人間性が喪失した無機質社会となる。

 

それこそがボルテクス時代のシジマのコトワリの弊害であり、ブラック社会の弊害。

 

末路は共食いの如き潰し合いであり、御上に逆らわず下の立場の者だけに不満の吐け口を望む。

 

これこそが虐めやパワハラの温床であり、全体主義の弊害で人間と社会が壊れた光景なのだ。

 

「変わってくれたな…さやか。昔のあいつは全体主義を振りかざしてあたしと争ったもんだ…」

 

「社会正義だけしか美樹さんに伝えられなかった…私の落ち度でもあるわね…」

 

「難しい話はワカラヌですけど、なぎさは周りに合わせるだけの人形にはなりたくねーのです」

 

「そうだな…その通りだ。だからこそ尚紀はあたし達に…自由の価値を説いてくれたんだ!!」

 

天津神との戦いでズタボロの杏子達であったが、さやかの叫びに呼応して奮い立っていく。

 

そんな彼女達に迫りくる天津神達を相手に果敢に攻め込む魔法少女達が一気に仕掛ける。

 

「全体主義の何が悪いのです!!全体が一枚岩となるからこそ強大な戦力となるのですよ!!」

 

「その通り!個人の権利が優先されれば集団は瓦解する…全体主義こそが集団の力なんだよ!」

 

「現場が見えないアホ役員が言いそうな理屈だな?働き蟻にされた連中を潰すだけの糞共だ!」

 

「社員を使い潰す無能上司や兵士を使い潰す無能指揮官と同じよ…()()()使()()()()()()()()!」

 

「ウォォォォーーーーッッ!!難しい話ばかりでなぎさは頭がパンクするのですーっ!!」

 

なぎさが上を向きながらお菓子の魔女を口から伸ばし、その巨体がタジカラオに絡みつく。

 

「ヌォォォォーーーーッッ!!!」

 

剛腕を用いて拘束を打ち破ろうとするが強力なゴムのような弾力性が邪魔して破れない。

 

タジカラオの剛力は斬撃属性ではなく、だからこそお菓子の魔女の体には通じないのだ。

 

「いくぜぇぇぇぇぇーーーーッッ!!」

 

両手を叩いた杏子の背後に巨大な槍が召喚され、龍のようにうねりながら刺突を狙う。

 

「そうはさせない!!」

 

アメノウズメが扇子を振りかぶり、かまいたちの雨を降らそうとした時、マミが動く。

 

「キャァァァァーーーーッッ!!?」

 

設置されたリボン拘束が飛来して全身を拘束されたアメノウズメに目掛けてマミは跳躍。

 

胸元のリボンタイを解き、それを振り抜きながら巨大な砲身を生み出した後、こう叫ぶ。

 

「ティロ・フィナーレェェェェーーーーッッ!!!」

 

咆哮を上げるように発射された榴弾砲が直撃したアメノウズメは爆発四散する末路を遂げる。

 

そして杏子が放つ巨大な槍も刀身を分割した後、巨大な炎を纏う龍と化しながら飛んでいく。

 

「バカな…俺達神が…魔法少女如きにぃぃぃぃーーッッ!!?」

 

盟神抉槍(くがたち)の一撃がタジカラオの頭部を貫き、大爆発しながら炎の柱を生み出す。

 

天津神達を倒された事に気が付いたヤタガラスの使者が振り向いた時、さやかも動くだろう。

 

「お互いに潔癖症過ぎると苦労するよね…だからこそ、時には悪い子になってもいいの!!」

 

左手に持たれたサーベルを構えた後、柄に備わった引き金を引く。

 

刀身が発射された事に気が付いたサマナーは忍者刀を用いて切り払うが、それは囮。

 

懐まで入り込んださやかは左手に持つ剣の柄を握り込んだまま顔面パンチを放つのだ。

 

「アァァァァーーーーッッ!!!」

 

殴り飛ばされたヤタガラスの使者が倒れ込んだ後、呻き声を上げながら目を開ける。

 

そこに立っていたのはさやかであり、新たに生み出したサーベルで喉元に刃を向けるのだ。

 

「殺しなさい…任務失敗した駒など…処分されて当然なんです…」

 

「どうして自分を大事に出来ないの…?全体主義に洗脳されたらそこまでおかしくなるの!」

 

「働き蟻にならなければ…一枚岩にはならない…戦国時代の軍勢と同じですよ…」

 

「そんな軍勢に参加させられた働き蟻は生活の為に死ぬ…()()()()()()()()()()()()だよ!」

 

これはブラック企業で働かされる労働者も同じであり、だからこそ使い捨てにされる。

 

終身雇用が崩壊したブラック国家日本の技術力は崩壊するばかりであり、皆が絶望していく。

 

終身雇用は社員の人生の安全を保障するからこそ社員は企業を愛し、練度と技術を高めている。

 

例を上げるなら東京の夢の国であり、かつては高かった社員の技術力はブラック化で低くなる。

 

ブラック企業を押し進める傀儡日本政府のせいで国の技術力と国民はここまで壊れていく。

 

だからこそ実力はあってもそれを活かせない環境のせいでヤタガラスの使者は負けたのだろう。

 

「もっと自分に素直になって!誰かの為に生きる必要はない…自分の為に生きていくの!!」

 

「私自身の為に…生きていく……?」

 

「やりたくない事はしなくていい!貴女は誰かの奴隷じゃない…人間の尊厳を求めなさいよ!」

 

人間の尊厳とは天賦人権論であり、人間一人一人には神が与えた権利があるとする。

 

自然権、生存権、自由権、幸福追求権、参政権や抵抗権という自由に生きていい権利。

 

アメリカ独立戦争の時にも叫ばれた概念であり、全ての人は奪い難い天賦の権利が付与される。

 

生命、自由および幸福の追求の含まれることを信ずるという内容こそ、個の確立精神。

 

神浜人権宣言の時に尚紀が叫んだ理念こそがヤタガラスの使者にも必要なのだとさやかは叫ぶ。

 

「自由とは責任の道…だから皆が恐れて自由を捨てる。貴女もそうなんでしょ…?」

 

「そうよ…私は生まれた時からヤタガラスしか知らない…寄る辺に頼らないと生きられない…」

 

「寄る辺を探す努力もしないまま諦めないで。貴女の実力なら他の生きる当ても探し出せるよ」

 

「ヤタガラスのために自分の名前さえ捨てた私なんかが…自由を…求める…」

 

「自由は本当に辛い道だけど…それでもそこには人間の幸福がある。だから可能性を信じて!」

 

「可能性に殺される末路になろうとも…その可能性を…見つけ出す…それが…人間の幸福…?」

 

「自分が間違ってると思ったら御上であっても反逆する!それが自分の幸福を守る権利だよ!」

 

さやかの説得が通じたのか、黒頭巾で隠れた目元から涙が溢れ出す。

 

心に噴き上がっていくのは頭巾の下に隠した女の本心であり、頭巾を脱ぎ捨ててしまう。

 

美しい黒髪の長髪を持った女が泣き喚きながら己の本心を叫んでくる。

 

「私…時女の魔法少女を殺したくなかった!私なんかを慕ってくれた子を騙すのが辛かった!」

 

霧峰村を焼き払いたくなんてなかったし、ユダヤ帝国の傀儡のヤタガラスも嫌いだったと叫ぶ。

 

己を曝け出す勇気を示せた女に対して剣を仕舞った後、回復魔法で治療した右腕を伸ばす。

 

手を差し伸べられた女はさやかの笑顔に触れた事で心が救われたような気持ちとなるだろう。

 

「やれば出来るじゃん♪あたしも意地っ張りだったけど…()()()()()()()()()()()()()()()

 

さやかの真心に触れた女サマナーも手を伸ばし、硬い握手を交わしてくれる。

 

見守る杏子とマミも顔を向け合いながら笑顔となり、なぎさは両手をオーバーに上げるだろう。

 

意地こそが人間を意固地にし、何が正しいのかも考えない視野狭窄に陥らせる呪縛。

 

マインドコントロールされた人間は意地という呪縛を自分に与えながら操り人形となるのだ。

 

その呪縛は誰にでも襲い掛かり、人修羅やライドウ、さやかやほむらにさえ襲い掛かる。

 

だからこそ潰し合いが生まれてしまう不幸が自分のせいでもたらされてしまうのだ。

 

()()()()()()であり、自分の劣等性を絶対に許さない嫉妬の心。

 

エゴを捨てる努力をした時こそ、人間の魂は呪縛から解放されるのであった。

 




人修羅やライドウでは成せなかった不殺系ヒーローの役割は魔法少女達が継いでくれる。
これこそクロスオーバー的な役割分担ですな。
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