人修羅×まどマギ まどマギにメガテン足して世界再構築   作:チャーシュー麺愉悦部

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382話 ヤタガラスの三本柱

オモイカネとの戦いを繰り返すキョウジであるが深追いし過ぎた為に異界に飲まれる。

 

「チッ…引きずり込まれちまったか」

 

古戦場のような異界に引きずり込まれたキョウジは銃を構えながら辺りを警戒する。

 

「気ヲツケロ、サマナー!ドウヤラ、カコマレチマッタヨウダ」

 

「そんなことぐらい分かっている」

 

唸り声を上げながら辺りに顔を向けるバロンが見つけ出したのは森に潜む魔物達の影。

 

木々の中に潜んでいるのはカラスの群れであり、赤い眼光を光らせながら叫び出す。

 

その首元にはマガタマの首飾りが備わっており、カラスの足は三本で構成されるのだ。

 

<<最高の戦略とは戦わずして勝つこと…敵を罠に嵌め、身動きすらさせずに滅ぼすが上策>>

 

アマテラスの相談役であり策士でもあるオモイカネは姿を見せず、代わりの者達が動き出す。

 

「腰抜けが…策士は策に頼り過ぎるということを…この俺が教えてやろう!!」

 

<<知りて痴れたる愚か者なら、オヌシは死を知らしめられよ!!>>

 

バロンと共に古戦場の森の中を駆け巡るキョウジに目掛けて使い魔達が飛び出していく。

 

【ヤタガラス】

 

神武天皇の熊野・吉野の山中での行軍を導いたとされる神鳥であり記紀神話で登場する。

 

三本足として語られる事が多いが、これは中国の太陽の中に住まう三本足の火烏に由来する。

 

三は陰陽五行思想で陽数とされ、陰数である二よりも太陽の象徴に相応しいという。

 

神武天皇の行軍を導いたのが特定の政治的集団ともなっていき、秘密結社ヤタガラスとなった。

 

「くるがいいヤタガラス共!貴様らに蔑まれてきた恨み…今日晴らしてくれよう!!」

 

迫りくるヤタガラスの群れが放つのは『ヤブサメショット』であり、羽を弾丸として射出する。

 

木の裏に隠れて羽の弾丸を避けるキョウジは遮蔽物を活かしながら銃撃を行っていく。

 

しかしヤタガラスの群れの動きは早く、森の中を縦横無尽に飛びながら魔法攻撃を仕掛ける。

 

バロンも破魔の雷光を用いて反撃を行うが破魔属性無効のヤタガラスには効果が無い。

 

包囲された者達が次々と攻撃を浴びる中、遠くの山の上から森を見下ろす者がこう告げる。

 

「逃げ込むがいい…森の奥へとな」

 

葛葉キョウジの力は侮れず、直接戦うよりは罠にかけた状態で一網打尽を狙うが吉。

 

そう判断した知将のオモイカネは自らは動かず、手下を使った策を用いる戦いを仕掛ける。

 

「マズイゾ、サマナー!」

 

「チッ…行き止まりか…」

 

森の奥地にある崖で追い詰められたキョウジとバロンに対し、ヤタガラスが迫りくる。

 

後ろは断罪絶壁であり、奈落に落ちればいくらキョウジであろうが助からないだろう。

 

「勝機!!我が飼い鳥達よ!火を放てぇ!!」

 

オモイカネが杖をかざして光を放てば、それを合図に森の至るところから火の手が上がる。

 

燃え上がる業火はキョウジ達が逃げ込んだ周囲を完全に囲んでおり、退路は無い。

 

燃え上がる炎は魔法の炎であり、氷結魔法程度では消せない程の勢いを与えている。

 

その炎を生み出した鳥悪魔達が飛び立ち、森に対してさらなる業火を放ち続けるのだ。

 

火烏(かう)

 

中国神話で太陽そのもの、もしくは太陽の化身を指し、ヤタガラスのモデルとなった存在。

 

天帝の子であり、西王母に仕えているという説もある。

 

火烏は口から火を吐いて太陽になるとも、太陽を背に運ぶともされる神鳥だった。

 

「焼討ちか…姿を見せずに俺を仕留めたい策士野郎が使ってきそうな手口だぜ…」

 

「モノスゴイ火ノ勢イダ!!オレサマ達ヲマルヤキニシテモ、ウマクナイゾ!!」

 

大火災に巻き込まれる前にヤタガラス達も飛び立ち、火鳥と共に上空から睨みを効かせる。

 

空を飛べる悪魔を使役した場合は高く昇る前に魔法の一斉攻撃を仕掛けてくる構えなのだろう。

 

絶体絶命の状況となった者達を見下ろすオモイカネは勝利を確信するだろう。

 

「善く兵を用うる者は、道を修めて法を保つ。無法者の異端児よ…冥途でそう語るがいい」

 

燃焼によって酸素を消費し、二酸化炭素を大量に生み出す火災地獄で倒れ込むキョウジ達。

 

「くそっ…ガスマスクを持ってくるべきだったか…だが…どの道…焼け死ぬだろう…な…」

 

「ランダニヤラレルヨリモ…悔シイゾ…ウマクヤレナカッタラ…ウラム…カラ…ナ…」

 

神の千里眼を用いてキョウジ達が死ぬ瞬間を見届けようとした時だった。

 

「ガハッ……ッッ!!?」

 

触手や巻物で無理やり人型を構築しているオモイカネが下に向くと胸に槍が刺さっている。

 

投擲された方角に目を向けると伏兵として忍んでいた悪魔が上空を飛んでいる。

 

「勝って兜の緒を締めよ。策士のようですが…策に溺れて死ぬ愚か者は古今東西同じですね」

 

大きな孔雀の首に乗る青年悪魔こそ、シヴァとパールヴァティの息子の一人。

 

キョウジもまた二体同時召喚が出来るようになれた者であり、自分とバロンを囮にしたのだ。

 

【カルティケーヤ】

 

シヴァ神の息子である軍神であり、名はプレアデス星団と関わるクリティカーに由来する。

 

槍を手にし、神速で飛ぶ孔雀パラヴァニにまたがった美少年の姿で描かれる事が多い。

 

仏教にも取り込まれて韋駄天とも呼ばれている破壊神であった。

 

「我が千軍の槍に宿りし風よ……弾け飛べ!!」

 

風の加護が宿る槍の柄に収縮されていた風魔法がオモイカネの体内で一気に炸裂する。

 

「グアァァァァーーーッッ!!!」

 

身体が弾け飛んだオモイカネの頭部は最後にこんな言葉を残すだろう。

 

「知識も…知恵も…すべては…民の…幸せに…オヌシ達は…この国を…どう…成す…か…?」

 

頭部も砕け散ったことにより異界の空に膨大なMAGが昇っていく。

 

主を倒された事でヤタガラスと火鳥の群れが浮足立つ隙をカルティケーヤは逃さない。

 

一気に飛翔してきた孔雀の翼から噴き上がる『極彩の疾風』が竜巻を生み出して敵を切り刻む。

 

次々とバラバラになった敵の群れが生み出すMAGの光を背にした者が地上に下りていく。

 

キョウジの元に駆けつけたカルティケーヤが孔雀から飛び降りて彼を抱き起こすのだ。

 

「全く…貴方は無茶な作戦ばかり用いる。敵を引き付けられるなら…自分さえ囮にしてしまう」

 

「俺は…そういう男なんだよ…。よくやった…カルティ…ケーヤ……」

 

気を失ったキョウジとバロンを孔雀の背に乗せたカルティケーヤが再び空に飛び立っていく。

 

オモイカネを失い異界が消失する中、カルティケーヤの眼前には次の戦場が見えるのであった。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――

 

「「ハァァァァァァーーーーッッ!!!」」

 

因縁の対決となるタケミカヅチとコウガサブロウ化したタケミナカタは激しい剣舞を繰り返す。

 

雷の剣を両手持ちで振るうタケミカヅチに対してコウガサブロウは浮遊させた両腕を用いる。

 

浮遊した両腕に持たれた二刀流の刀を用いてタケミカヅチの雷の剣を切り払っていくのだ。

 

「面妖な戦い方を覚えたものだな…タケミナカタ!!」

 

「貴様に斬り落とされた両腕の傷が疼くぜぇ…貴様の五体をバラバラにしたいってよぉ!!」

 

互いの袈裟斬り、逆袈裟を打ち払い、タケミカヅチが仕掛ける切り上げを二刀流で受け止める。

 

受け止められたタケミカヅチは剣を蹴り上げて払い飛ばし、そのまま一回転の横薙ぎを放つ。

 

コウガサブロウは浮遊させた腕の刀で横薙ぎを受け止め、すかさず前掃腿を放つ。

 

「ぐぅ!?」

 

身体をバラバラに動かせるコウガサブロウの奇襲蹴りで両足を刈り取られた者が倒れ込む。

 

上から叩きつけられる斬撃の数々を転がりながら避けるタケミカヅチが片手を地面に打つ。

 

きりもみ回転しながら地面から跳ね起きたタケミカヅチに迫りくるのは強力な一撃。

 

「グハァァァァーーーッッ!!!」

 

飛び込んできたコウガサブロウが跳躍しながら放つのは体を一回転させる飛び蹴り攻撃。

 

『ハードヒット』が顔面に炸裂したタケミカヅチは鼻骨を砕かれながら弾き飛ばされる。

 

一回転から放つドロップキック体勢から地面に着地したコウガサブロウは刀を構えてこう叫ぶ。

 

「オレに雷は通用しねーよ。いつまで本気を出さねーんだ?フツヌシを呼びやがれ!!」

 

「フン…フツヌシの奴は忙しいようでな…貴様の相手を我に一任してきたのだ…」

 

「フツヌシ程の奴を抑え込める存在がいるようだな?まさか…ライドウの奴かよ?」

 

「その通りだ。フツヌシもまた命懸けの戦いを強いられている…我もフツヌシに続こうぞ」

 

「へっ…仲魔から離れちまったオレなのに支えてくれるのか…いい奴だよ、ライドウはな」

 

浮遊させた両腕を用いて二刀流の刀を回転させながら迫りくるコウガサブロウ。

 

迎え撃つタケミカヅチは雷の剣に魔力を大きく注ぎ込み、激しい輝きを生みだしていく。

 

大剣になる程にまで大きくなった雷の剣の威力はナルカミクラスであり、雷耐性を貫通する。

 

それを肌で感じているコウガサブロウではあるが、死を恐れない勇敢な戦いを示すだろう。

 

「ゆくぞぉ!!タケミナカタァァァーーーーッッ!!」

 

「今のオレは…コウガサブロウだぁぁぁぁーーーーッッ!!」

 

一気に仕掛けてきたタケミカヅチが雷の大剣を用いた唐竹割りを仕掛けてくる。

 

迎え撃つコウガサブロウは二刀流を用いて一撃を受け止めようとするが、それは罠。

 

「何っ!!?」

 

眩く輝く雷の剣に意識を奪われていた隙をつき、雷の剣を消失させたタケミカヅチが回り込む。

 

両腕の向こう側にいるコウガサブロウに組み付いたタケミカヅチが仕掛けるのは相撲なのだ。

 

「我が八十二手!!耐えきれる者などおらんわぁ!!」

 

組み付いた相手に鯖折りを仕掛け、腰にダメージを負ったコウガサブロウが膝をつく。

 

さらに持ち上げて担ぎ上げ、撞木反りを仕掛けて後ろに反り倒す。

 

うつ伏せ状態のコウガサブロウの両足を持ち、居反り状態から一気に持ち上げて叩きつける。

 

「グアァァァァーーーッッ!!!」

 

大地が激しく砕ける程にまで叩きつけられたコウガサブロウが纏う仮面に亀裂が入る。

 

何度も背中を叩きつけられた後、豪快な投げ飛ばしで飛んでいった者が地面に倒れ込む。

 

「まだまだぁぁぁぁーーーーッッ!!!」

 

相撲の祖と呼ばれるタケミカヅチがトドメを狙いに仕掛けてきた時、倒れた者が反撃を行う。

 

背中を用いて体勢を回転させながら両足を回転させ、掴もうとする手を蹴り飛ばす。

 

勢いのまま立ち上がったコウガサブロウではあるがダメージが大きいのか片膝をついてしまう。

 

「へっ…へへ…懐かしい痛みだぜ…大昔に投げ飛ばされた時の屈辱が蘇ってきたよ…」

 

「バラバラになるまで投げ飛ばしてやろうかと思ったが…我の雷撃で終わりたいようだな?」

 

再びナルカミの剣を生み出したタケミカヅチに対し、ふらつきながらも立ち上がる。

 

再び両腕を浮遊させる者に対して雄叫びを上げながら迫りくるのは侍大将の如き武神の姿。

 

それに対して、蛇の侍もまた魂の雄叫びを上げながら突撃していくのだ。

 

「「オォォォォォォォーーーーッッ!!!」」

 

斬撃を放つタケミカヅチの攻撃を受け止める度に膨大な雷を浴びせられていく。

 

それでもコウガサブロウは果敢に飛び込み、飛び回し蹴りを行うがそれはフェイント。

 

背中に周り込む形で倒れ込みながら両足で胴体を挟み込み、タケミカヅチの体を一回転させる。

 

倒し込んだタケミカヅチの頭上で浮遊する刀が刺突を狙うが片足を持ち上げながら蹴り飛ばす。

 

互いに立ち上がりながらも苛烈な剣舞と体術を駆使し、侍同士の一騎打ちが繰り返される。

 

互いの剣や拳がぶつかり合う度に激しい衝撃波が生み出され、周囲の社殿を破壊していく。

 

魔法少女の動体視力でさえ動きを掴み切れない神々の戦こそ、日本神話の光景なのだ。

 

「ハハハ!!国津神よ…我らは同じく日の本の為に戦う戦士!なのに何をしてるのだろうな…」

 

「へっ…全くだぜ!どちらも日本の未来の為に戦う同士だってのに…意地っ張りなもんだぜ!」

 

「これはもう大儀など関係ない戦いだ!男神として生まれた者同士、譲れぬ誇りの戦いだ!!」

 

「応よ!!こいつは私的な喧嘩ってもんだ!男神として生まれたなら…最後まで付き合えよ!」

 

殺し合いのさなかであっても互いの顔には不敵な笑みが浮かんでおり、互いの力を賞賛する。

 

並ぶ程にまで強い武神だったからこそ、かつての戦いでは卑怯な手口に縋ってしまう。

 

それでも今のタケミカヅチは天津神の代表として交渉役を任された者ではない。

 

武神としてかつての宿敵との決着を求める者であり、今度は不正を行わずに戦い抜く。

 

それで勝ったならば今度こそタケミナカタは敗北を認めるしかないからこそ死力を尽くす。

 

「「ぐふっ!!!」」

 

互いの回し蹴りが側頭部に決まった事でふらつきながら後ろに下がっていく。

 

タケミカヅチの蹴りによってコウガサブロウの仮面の一部は砕け散り、素顔の一部が露出する。

 

目元までは見えないが露出した口元は笑っており、それは宿敵も同じであろう。

 

「アマテラス殿より任された責務…それに縛られた我はあの時…卑怯者になってしまった…」

 

「どうだい…オレの真の力は?これが国を耕してきた国津神の喧嘩の強さってもんよ…」

 

「認めてやろう…国津神よ。貴様らもまた日の本を任せられる程の豪傑達なのだとな…」

 

「テメェらも今まで日本を守ってくれた豪傑達だ…日本の神に恥じない存在だったのさ…」

 

「勝っても負けても怨みっこなし…此度の戦いで負けたなら…もう化けて出てくるなよ」

 

「そうさせてもらうぜ…互いに卑怯な手口を使わない潔い喧嘩だ…こんな花道はねーよ!」

 

勝負を仕掛けるコウガサブロウの気持ちに応えるタケミカヅチも最後の勝負を受けて立つ。

 

浮遊する腕から放つ二刀流の斬撃を避けるが、避ける位置を読んでいた蹴り技が迫る。

 

後ろ回し蹴りが炸裂するも踏み止まるが、さらに跳躍からの二連脚が打ち込まれて倒れ込む。

 

それでも起き上がるタケミカヅチの気迫に対し、真っ向から受けて立つ覚悟を示すだろう。

 

「ウォォォォーーーーッッ!!!」

 

袈裟斬り、逆袈裟、横薙ぎとナルカミの剣を振り抜くが、横薙ぎを放つ手に蹴りが決まる。

 

持ち手が弾かれた相手の腹を蹴り、続けて顎を蹴り、仰け反った上半身に踵落としを放つ。

 

連続蹴りが炸裂した事で倒れ込み、さらにきりもみ回転跳躍を加えた追い打ちが迫りくる。

 

ジャンプ膝落としを転がって避けたタケミカヅチは立ち上がった相手の回し蹴りに踏み込む。

 

足と腰を掴み取ったことで投げ飛ばされたコウガサブロウに唐竹割りを放つが避けられる。

 

立ち上がる彼と仕掛ける敵との間で苛烈な剣舞が続く中、タケミカヅチは勝負を仕掛けるのだ。

 

「グアァァァァーーーッッ!!?」

 

全身からショックウェーブの放電を放ってきた事でコウガサブロウの全身が感電していく。

 

既にタケミカヅチの雷撃の全てがナルカミクラスの一撃となっているため耐性を貫通してくる。

 

激しい雷撃によって浮遊した両腕を操る両肩の水晶が砕け散り、腕が地面に転がり落ちるのだ。

 

「勝機!!」

 

再び両腕を失った状態に追い込まれたタケミナカタに対して攻め込んでくるタケミカヅチ。

 

それでもコウガサブロウの目には諦めは浮かんでおらず、己の全てを出し尽くすだろう。

 

「今度は……逃げねーよ!!」

 

ナルカミの剣の斬撃を上半身を振りながら避け、横薙ぎを仕掛ける相手の懐に踏み込む。

 

上半身を倒し込んだまま相手の腹部に体当たりを仕掛け、背中に乗った相手の上半身を投げる。

 

倒れ込んだタケミカヅチの顔面に踏み蹴りを狙うが、両足を持ち上げる攻撃で首を挟まれる。

 

そのまま投げられて倒れ込んだ両者が起き上がり、激しい剣戟と蹴り技の応酬を繰り返す。

 

それでもコウガサブロウの蹴り足に肘打ちを打ち込まれ、右足を覆うスーツの足甲が砕け散る。

 

更に逆回転を加えた左肘打ちもコウガサブロウの顎に決まり、怯んだ相手にトドメを放つ。

 

「ゴフッ!!!」

 

ナルカミの剣の刺突が腹部に決まって体を貫き通し、さらに極大の雷龍撃が全身を焼き尽くす。

 

「往生しろ!!タケミナカタァァァーーーーッッ!!」

 

剣を引き抜いた後、後退る相手に目掛けて放つのは360度回転を加えた飛び込み蹴り。

 

大きく蹴り飛ばされたコウガサブロウは地面に転がった自身の腕の近くで倒れ込むのだ。

 

「へっ…へへ…やっぱり…強いじゃねーか…卑劣な手口なんて使わなくても…十分強いぜ…」

 

吐血しながらも立ち上がってくる豪傑に対し、せめて最後は苦しませないようトドメを狙う。

 

「さらばだ…我が宿敵よ!!国津神の名に恥じぬ益荒男であったぞぉ!!」

 

跳躍からの唐竹割りで真っ二つを狙う中、タケミカヅチが何かに気が付く。

 

コウガサブロウの砕けた足甲から覗く素足の指が握り込んでいるのは腕から転がる己の刀。

 

迫りくる唐竹割りの一撃に対し、最後の抵抗として低空後ろ回し蹴りを放つ。

 

「なん…だと……っ!!?」

 

唐竹割りを放とうとしたタケミカヅチの両腕が足指で支えるだけの刀の横薙ぎで両断される。

 

タケミナカタと同じく両腕を失ったまま着地した相手に目掛けてトドメの一撃を放つ。

 

「これでお相子様だな…?それでもな…屈辱は利息を付けて…支払わせてもらうぜぇ!!」

 

後ろ回し蹴りを放った後、さらに跳躍から放つのは飛び後ろ回し蹴りの一撃。

 

後退る相手の首に届く程にまで迫りくる指先の刀の刃がついにタケミカヅチを仕留めるのだ。

 

「み……ご……と……だ……」

 

首が跳ね落ちた死体が倒れ込み、砕け散って膨大なMAGとなっていく。

 

立ち上る光を見上げるコウガサブロウの脳裏に浮かぶのは屈辱に塗れたかつての世界の記憶。

 

人間が悪魔化してコウガサブロウと化すのだが、人間の意識が残っていたため苦悩する。

 

人間と悪魔の間に挟まれ、自分の存在意義や居場所を深く悩む人物として生きていく。

 

そんな彼の運命は他人に支配されたものであり、阿修羅会の手下にされる屈辱に苛まれたのだ。

 

「自分で目的を考え…自分の意思で戦える…誰かに運命を委ねない…これが…自由の幸福だ…」

 

勝者となったタケミナカタではあるが限界であり、両膝が崩れた彼の体にも亀裂が入っていく。

 

「ようやく…報われた気がする…それを助けてくれたのはライドウだ…礼を…言う…ぜ……」

 

割れた仮面の内側から流れ落ちていくのは嬉し涙であり、ようやく呪縛から解放されていく。

 

この喜びは勝利した事で味わえるものであり、フツヌシと合流されてたら敗北していただろう。

 

かつての悪夢の記憶やライドウの仲魔として生きた記憶、また時女一族と過ごした記憶も巡る。

 

屈辱に苛まれる苦しみが世界からもたらされても、幸福を感じられる経験もまた与えてくれる。

 

「神や悪魔…人間や魔法少女…皆が…世界と同じさ…陰陽の…コトワリの上で…生きている…」

 

――苦しみだけでなく…喜びさえも…与えてくれる…それが…世界…だっ…た……。

 

倒れ込んだコウガサブロウも砕け散り、変身していたタケミナカタのMAGも立ち上っていく。

 

その感情エネルギーの光は穏やかに明滅していき、彼の報われた気持ちが表れるのであった。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――

 

ライドウとフツヌシの戦いはヤタガラス総本山の奥の院に昇る石段の上で繰り返される。

 

息を切らせながら刀を構えるライドウに対し、仲魔達の死を感じ取ったフツヌシがこう呟く。

 

「オモイカネ…タケミカヅチ…汝らは逝ってしまったか…儂も続く時が訪れるだろう…」

 

召喚する隙さえ与えてくれなかった豪傑に隙が生まれているのを利用したライドウが管を抜く。

 

「感じたぞミシャグジ…いや、タケミナカタ…お前が生んでくれたこの勝機…モノにする!!」

 

膨大なMAGが噴き上がる召喚管を振り抜いて召喚されたのは天津神であり国津神でもある存在。

 

「フツヌシィィィィ…そこを退きやがれ。オレは兄弟を今直ぐぶちのめしに行きたいんだよ…」

 

現れた仲魔とはスサノオであり、天叢雲剣を振りかざしながらフツヌシを威嚇してくる。

 

「…押し通るがいい、スサノオ殿。我が主の兄弟神であろうとも…この道は譲れんぞ」

 

スサノオとフツヌシはどちらも武道や守護の面で崇拝される神々であり、荒々しい武神。

 

だからこそ互いがぶつかり合えばどちらかが死ぬ程の戦になることなら互いに承知している。

 

「あいつに義理立てする程の価値があるのか?あいつは千数百年間日本を支配した独裁者だぞ」

 

「それは偏見じゃ。ヤタガラスの代表であるあの御方は祭祀の神として天皇家を守護してきた」

 

「その天皇家ですら明治維新のせいで血が断絶し、長州閥テロリストに乗っ取られたろうが?」

 

「あの時の無念は今でも忘れておらん…だからこそ断固たる決意で欧米と朝鮮を駆逐するのだ」

 

「祭祀を司る団体だけで終われば良かったのに…その復讐心が極右政治団体化を生んだわけか」

 

「我ら天津神は大和王朝を守護する…たとえアマテラスの血が途絶えても…その矜持は捨てん」

 

「情けねぇな…血筋が途絶えて滅んだ王朝に縋りつくなんざ…()()()()()()()()()()()()()()

 

天叢雲剣を肩に担ぐようにして構えるスサノオに対し、眉間にシワを寄せたフツヌシが動く。

 

周囲に生み出すのは無数の大和古剣であり、浮遊させながら両手の剣と共に構えてくる。

 

「神の血筋が日の本を導いてきた!それを否定するのは神を否定する行為であるぞ!!」

 

「民衆が必要とするのは神という概念じゃねーよ…民衆を活かすのはいつだって生活だぁ!!」

 

ライドウと共に踏み込んできたスサノオに対し、無数の大和古剣を操るフツヌシも仕掛ける。

 

スサノオが無数の大和古剣の斬撃を弾き飛ばし、ライドウはフツヌシの斬撃を抑え込む。

 

激しい斬撃の応酬による衝撃波が石段の周囲を覆う木を吹き飛ばす中、激戦が繰り広げられる。

 

「何かに縋りついた時…人は自由とかけ離れる!神であれ御上であれ…自由を奪い取られる!」

 

「それこそが民族アイデンティティを生み出す!カナン族がバアルに縋りつくのと同じくな!」

 

「それでは人は神の奴隷でしかない!神が暴走した時…人々は神という独裁者の供物となる!」

 

「我ら天津神は民を愛せる神だ!天皇家も秦氏も民衆あってこそ存続出来たと知る神だぁ!!」

 

「ならば人々を見守るだけの神で良かろう!人々の可能性を見守る守護者で良かろう!」

 

「人々にその強さを求めるのは愚かじゃ!太古の時代より人々は子羊…導く神が必要じゃ!!」

 

「その考え方がカナン族のエリート主義なのだ!神は牧師にあらず…人々の自立を求めよ!!」

 

「ならば今直ぐ人類に英知を授けてみせよ…14代目葛葉ライドウッッ!!!」

 

「信じることを止めた時…誰もが加害者に成り果てる!その末路を嘉嶋尚紀から学べ!!」

 

勝負を仕掛けるフツヌシは浮遊させた大和古剣を周囲に展開させながら一気に回転させる。

 

『雄渾撃』の回転斬撃がライドウの刀にぶつかり、ノコギリのように切断を狙ってくる。

 

「くっ……うぅ……ッッ!!」

 

抑え込まれるようにして力比べを強いられる状態ではいずれ力が尽きて真っ二つとなるだろう。

 

そんな時、襲い掛かる大和古剣の群れを切り払いながら迫る巨体とはスサノオなのだ。

 

「オレは人間を信じてる!だから天叢雲剣を託したんだ!テメェもちっとは人を信じやがれ!」

 

放つのは刹那五月雨斬りであり、無数の斬撃を全て斬り払ってノコギリ回転を止めてくれる。

 

この一撃こそがヤマタノオロチの首を一瞬で跳ね落とした荒神の御業なのだろう。

 

フツヌシへの道が開かれた事でライドウが石段を蹴り込み、勝負を仕掛けるのだ。

 

「くっ!!?」

 

大きく跳躍して的殺を避けるフツヌシが石段に着地して下の方を見るとライドウの姿がいない。

 

彼の姿は大きく跳躍しており、ヨシツネの八艘飛びを行いながら月面宙返りを行う。

 

フツヌシの背後に着地したライドウの刀からMAGの光が噴き上がり、放つのは極大の一撃。

 

「自分は…神や悪魔を信じられる!お前達神々も…人間の可能性を…信じてくれぇ!!」

 

MAGの光が刀身を変化させ、両手斧の形となりながら放つのは磁霊金剛壊(じれいこんごうかい)である。

 

振り下ろされる巨大な斧の一撃に対し、振り向きざまに二刀流の剣を構えながら受け止める。

 

「愚民など信じられるものか!情報の真贋すら自分で判断出来ない連中など家畜そのものだ!」

 

<<そんなんだから、ヤタガラスは構成員を家畜のように消費するだけの連中だったのさ>>

 

スサノオの声が響いた瞬間、フツヌシの体を背中から貫く刃が飛び出してくる。

 

天叢雲剣に貫かれたフツヌシは大きく吐血し、それでもライドウとスサノオを切り払う。

 

息を切らせるフツヌシではあるが、スサノオから伝えられた言葉が頭から離れない。

 

「儂らは…神と民を守る者…その為には犠牲が生まれる…家畜を消費して…生きるように…」

 

「日本の神と民の未来を守る為なら組織に所属する人間達は消耗品か?それこそ傲慢だぜ…」

 

「この時代でいうブラック企業とやらと同じだ…それに気がつけなかったからこそ崩壊した」

 

彼らの説得が通じたのか、フツヌシが握る大和古剣が落ちてしまう。

 

右手で白ハチマキを解いて見つめるフツヌシに見えたのはハチマキに描かれた陰陽太極図。

 

握り込んだ拳を震わせながらフツヌシは後悔の言葉を呟いてしまう。

 

「儂らは…傾いていたのか…?陰陽を俯瞰し、均衡を保つためのハチマキであったのに…」

 

「陰陽のバランスを保つのは一生の課題だ…だからこそ知情意を統一する程に磨かねばならん」

 

NEUTRAL(中庸精神)の道は神々ですら渡り歩くのは困難じゃ…だからこそ我らは綱渡りから転落した」

 

身体がひび割れながらも何処かホッとした表情を浮かべるフツヌシがライドウに振り向く。

 

微笑みを浮かべてくれる彼の表情は大正時代を共に生きた仲魔の顔そのものであろう。

 

「お陰で気が付くことが出来た…礼を言うぞ、14代目よ…」

 

「自分とて修行者だ…いずれは精神が傾き、お前のように奈落に落ちる時も来るかもしれない」

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、そのバランスを考えよ…儂らと同じになるぞ…」

 

秩序を守るヤタガラスは秩序に縋りついたせいで攻め込まれ、敗北していくことになる。

 

攻め込むだけの者では国賊テロリストに過ぎず、新たな国の秩序を生む守りもまた必要になる。

 

そのバランスを考えよと伝えてくれたフツヌシの体が砕け散り、膨大なMAGが立ち上っていく。

 

「道徳の開祖が残した言葉通り…()()()()()()()()()()()()()()()()という問いかけ通りだ…」

 

心の中庸を保つために剣を振るう矛盾を抱えつつも、刀を仕舞ったライドウが上を見上げる。

 

奥の院はすぐそこであり、決意を胸に秘めたライドウとスサノオは力強く石段を踏みしめる。

 

ヤタガラスを支えた三本の御柱であった神々は討ち倒され、残されたのは三羽鳥だけだった。

 




敵組織の三本柱幹部とのバトルを描いてるとゲームの龍が如く0の堂島組3幹部バトルを思い出してしまう(龍が如く脳)
秘密結社もマフィアも同じ秘密主義団体だから龍が如くのノリがよく似合うと個人的には思います(汗)
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