人修羅×まどマギ まどマギにメガテン足して世界再構築   作:チャーシュー麺愉悦部

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383話 三貴子の月神

奥の院に敷き詰められた石畳の上で立っている三人こそヤタガラスの指導者である三羽鳥。

 

裏天皇と呼ばれる女性達ではあるが、彼女達を補佐するお付きの者達の姿は見えない。

 

お付きの巫女達は既に脱出命令が下されており、三羽鳥は日本のザイオンを諦めている。

 

<<無限発電炉ヤマトを失った時点でザイオンは稼働させられない…我らは敗北した…>>

 

突然現れたマニトゥの暴走によってヤマトタケルとヤマト型発電炉を失った事で基盤を失う。

 

国家にとって重要なエネルギーを失えば食料プラントも稼働させられず、皆が飢え死にする。

 

これによって地下都市国家として築き上げるべき新たな平安京の夢は潰えることになるのだ。

 

<<後はハルマゲドンによって全てが滅びるのみ…ならば遅かれ早かれ…我らは滅ぶ…>>

 

死を覚悟した三羽鳥達は鳥居の向こうからやってくる者達に視線を向ける。

 

近寄って来るのは葛葉ライドウとスサノオの姿であり、離れた位置で立ち止まってくる。

 

睨み合う両雄であるが、先に口を開いたのは元ヤタガラス構成員のライドウのようだ。

 

「ヤタガラス…この末路こそ貴様らの自業自得の結果だ。それを分かっているのか?」

 

「ライドウの言う通り。組織の代表として資本家共に逆らってでも構成員を守るべきだったな」

 

<<…我らを雇われ店長扱いしてくるか、14代目葛葉ライドウ?>>

 

「首相や社長、秘密結社の長とて同じだ。命を懸けて尽くす構成員こそ優先するべきだった」

 

<<言うは易し。長としての経験すらない貴様には理解出来まい…資本主義の恐ろしさを>>

 

かつての里見太助が娘に語り聞かせた通り、この世は資本主義であり金は国家や組織の血液。

 

血液を司る存在こそが銀行組織を経営出来る程の巨大資本家達であり、だからこそ支配される。

 

金融はサイコパスの仕事だとキリスト教も判断するが、経済活動の為に金融を必要としていく。

 

これが現実であり、理想論では何一つ動かすことなど出来ないのだと語っていく。

 

<<秘密結社も企業も同じ人の集団…集団を動かすには資本が必要…だから支配されるのだ>>

 

「組織とは尽くす者達の為に在る!外野の資本家共の金儲け道具にされて悔しくないのか!!」

 

<<悔しいとも!!それでもな…従う以外に組織基盤を維持出来ない!これが現実なのだ!>>

 

ヤタガラスや秦氏の代表である三羽鳥といえども脆弱であり、多くの支えが必要である。

 

だからこそ経済界の秦氏達を優先するしかなく、末端の退魔師一族は切り捨てられたのだろう。

 

これは人修羅も同じであり、多くの者達の支えがなければ世界を相手に戦争など出来ない。

 

もし人修羅を支える者達に対して不利益を与えたなら、彼を支える者達などいなくなるのだ。

 

<<()()()()()()()()()()()()!それを支える裏の基盤こそが本物の支配者だったのだ!>>

 

「資本主義の末路は…資本家に全てを牛耳られる支配構造か…それは大正時代も同じだった…」

 

<<アクティビスト独裁者共の望む通りにしなければ代表など捨てられる…それが支配だ!>>

 

「どうして我らを頼らず経済界に縋りついた!?構成員達だって団体を支える事は出来る!」

 

<<我らの支援金に依存しなければ一族の維持すら出来ない連中が何を申す?現実を見よ>>

 

そう指摘された事で押し黙るライドウの目が見開き、ようやく現実を認識する。

 

ヤタガラスの支援金に依存した退魔師一族も経済界の支援金に依存したヤタガラスも同じ存在。

 

皆が金に支配される者であり、金こそが国家・組織・団体・人々の血液なのだと理解するのだ。

 

金が無ければ退魔師一族は自らが労働しなければ生きられず、退魔師活動を行う余裕も消える。

 

これは正義の魔法少女も同じであり、両親というスポンサーに支えられなければ生活出来ない。

 

佐倉杏子のように親を失った魔法少女は山賊と変わらない社会悪生活が待っている。

 

金儲けの為に魔法の力を売る状況だって生まれていき、金に支配される人生となるだろう。

 

金が供給されない人々はこれ程までの壊死を起こし、心臓が止まった体と同じ状況となるのだ。

 

<<起業する状況を想像せよ。集まった労働者達の蓄えだけで企業を支えられるのか?>>

 

「確かに…我ら退魔師一族だけでは巨額の資金は用意出来ない…だからこそ国民に頼るのだ!」

 

<<それが出来れば苦労はしない!悪魔召喚師や魔法少女の存在など…愚民は信じない!!>>

 

「戦後のヤタガラスは哀れなもんだな?かつては超國家機関として税金の運営が出来たのに…」

 

<<スサノオ…これが時代の変化だ。敗戦によって日の本も我らも終わってしまったのだ!>>

 

怒りと無念が体から噴き上がるようにして膨大なMAGを立ち上らせていく三羽鳥達。

 

仕掛けてくると判断したライドウとスサノオが武器を構える中、三羽鳥達の体に異変が起きる。

 

「ぐっ…うぅ……ッッ!!」

 

「あっ……あぁ……ッッ!!」

 

<<アァァァァァァァーーーーッッ!!!>>

 

身体から噴き上がるMAGの量が抑えられず、三羽鳥達が倒れ込んで苦しみ藻掻きだす。

 

<<我の三本足として動かしてきたこの者達も用済みだ…ヤタガラスと共に滅びるがいい>>

 

シワシワのミイラのようになっていく三羽鳥の女性達が絶命していき、巨大な人影を生み出す。

 

「へっ…そいつらから感じていたのはテメェの気配だけだ。化けの皮を脱ぎ捨てやがったか!」

 

現れた巨大な人影の存在に気付いた者達も石段を駆け上がっていく。

 

「な…な…何なんだよ…あの化け物みたいな存在は!?さやかの魔女よりもでかいぞぉ!?」

 

石段を登っていくのは杏子達であり、ライドウの援護に来てくれる。

 

しかし見上げる程の存在に対して戦慄したのか立ち止まってしまうのだ。

 

「人型に見えるけど人じゃない…それにあの巨大な体は…宇宙なの…?」

 

「円環のコトワリみたいに…体の中に宇宙が広がっているのです…」

 

青いローブを体に纏うが、ローブの内側は宇宙空間が広がっている。

 

人体を形成するのは巨大な両腕のみであり、頭部を覆うフードの奥さえも宇宙が広がっている。

 

冠として纏うのは神道の祭祀道具である神鏡の冠であり、神が宿る依り代を司る御神体。

 

また鏡は太陽を表し、光を反射して輝くことから世界に光をもたらす神器と言われる。

 

神器として残された八咫鏡同様、ヤタガラスを象徴する神器の冠を纏う存在が屹立するのだ。

 

「我が名はツクヨミ!ヤタガラスと天皇家を導き…大和王朝を影から支えた三貴子の一柱だ!」

 

【ツクヨミ】

 

月読命、または月弓尊と呼ばれる神として日本神話の三貴子に数えられる存在。

 

イザナギの禊の際に右目から生まれた月神であり、月の満ち欠けを読む事から暦を司る。

 

こうした働きは太古の農耕や政治に欠かせない機能であり、吉凶の占いを行う祭祀の神である。

 

月は潮の満ち引きや死と再生も関連する事から海神や鎮魂の神としても祀られる神だった。

 

「これが…弓月の君(ゆづきのきみ)と呼ばれる秦氏一族を導いてきた…ヤタガラスの正体だったのか…」

 

「ツクヨミの奴…半端じゃねぇMAGの量だ。MAGを溜め込む為に千年は寄生を繰り返したな…」

 

身体から膨大なMAGが噴き上がる巨大な人影の両腕が動き、印を結ぶ。

 

日本のザイオンそのものが異界化していき、人工的な空間に夜と三日月が生み出されていく。

 

屹立する巨大なツクヨミに対して、ライドウ達の元に駆けつける魔法少女達がやってくるのだ。

 

「ライドウさん!!あたし達も戦うよ!!」

 

「来るな!!!」

 

ライドウが後ろを振り向いた隙を逃さず、ツクヨミは極大の一撃を仕掛けようとする。

 

「チッ!!!」

 

ライドウ達の前に踏み出したスサノオが天叢雲剣を構えながら結界魔法を行使する。

 

結界魔法のスペシャリストである仲魔の力がライドウ達を覆うが、破壊する一撃が放たれる。

 

<<アァァァァァァァーーーーッッ!!!>>

 

身体を形成する宇宙空間から飛来してきたのは無数の氷塊の雨。

 

『月下氷霜』が隕石の雨の如く降り注いできたため、ライドウ達は地面ごと弾き飛ばされる。

 

被害はそれだけでは終わらず、総本山の中腹辺りで戦っていたサマナー達まで巻き添えを食う。

 

「くっ!!これがヤタガラスの親玉の力なのですか!?」

 

キョウジ達を異界から連れ戻したカルティケーヤも槍を用いて戦っていたが、咄嗟に逃げ出す。

 

韋駄天の如き俊敏さで迫りくる氷塊隕石を避けるが、サマナー達は潰されるしかない。

 

キョウジ達を死なせるわけにはいかないカルティケーヤは地上に下ろした孔雀の元に急ぐのだ。

 

ヤタガラス総本山が壊滅する程の被害規模となる中、印を結ぶ両手が解かれる。

 

「うっ……うぅ……」

 

ズタボロの状態で倒れ込むライドウとスサノオだけでなく、杏子達までズタズタの姿を晒す。

 

圧倒的な神の力を発揮する月神を照らす三日月こそ、ツクヨミに力を授けてくれる存在なのだ。

 

「大正時代の葛葉ライドウよ…あの頃から我らの戦いは続いている。欧米と長州閥との戦いだ」

 

「超力兵団事件の宗像も…欧米と戦うために超力兵団を生んだ…何故自分に…討伐させた…?」

 

「あの力を我ら天津神に向けられるわけにはいかなかったからだ。国津神は我らを憎む存在だ」

 

「自分達の秩序にばかり縋りつき…同じ憂国の神々を討伐させるとは…なんと傲慢な奴だ…!」

 

「何とでも言うがいい…我はヤタガラス代表として天津神と秦氏を優先するしかない者だった」

 

「過去形で語るという事は…もうヤタガラスや秦氏に縛られる身分は…辞めたのか…?」

 

「そうだとも…神であってもこの世に留まればこの世の理不尽に縛られる…我はもう…疲れた」

 

ツクヨミもツクヨミなりに国を憂い、欧米ユダヤ帝国やその手下の長州閥に抗おうとする。

 

それでも結果はついてこず、ツクヨミの心はついに折れてしまったのだろう。

 

「我に終わりを与えるか、我から終わりを与えられるか…試してみるがいい、反逆者共よ!!」

 

再び氷塊の雨を降らそうと印を結んでくる強敵に対し、ライドウは周囲に視線を向ける。

 

身体がボロボロなのは魔法少女達も同じであり、度重なる連戦で魔力の余裕もないだろう。

 

「ここは…自分達がやらねば……」

 

「応とも…小娘共を守れないようじゃ…三貴子の名折れってもんだ……」

 

ふらつきながらも立ち上がってくる者達に対して、再び隕石の雨が降り注いでくる。

 

「ライドウさん!!?」

 

叫ぶさやかであるがライドウ達の前で屹立した別の巨大悪魔の存在に驚愕する。

 

氷塊の隕石攻撃を焼き尽くして防いでくれたのは東京で使役されたマダであり、業火を放つ。

 

「無駄なことだ」

 

巨大な四本腕から放たれた業火であるが、ツクヨミの体を構成する宇宙空間に吸い込まれる。

 

「なんというトリック!この悪魔の体は…別次元を繋ぐ人型の門でありますぞ!!」

 

「つまりは…今見えているツクヨミの体はデコイ…本体は別にいるというのか!?」

 

「それが分かったところで何とする?貴様らはここで死ぬだろう…我に滅ぼされるがいい!」

 

宇宙空間を構成する体の中から発射されたのは至高の魔弾であり、マダが奔流に飲まれる。

 

「奴は…月の…神…それが…ヒント…後は…頼み…ます…よ……」

 

巨大な上半身が消し飛ばされ、下半身も後ろに倒れ込んで砕け散り、MAGの光と化す。

 

それでも立ち上がった者が果敢に攻め込むが、一体何処を攻撃すればいいのか分からない様子。

 

「くそっ!!暫く見ない間に面妖な存在になりやがって!!」

 

「ダメ!私の砲弾では宇宙空間に吸い込まれてしまう!攻撃が通じない!!」

 

「ローブを斬り付けても実体を感じさせねぇ!こんなの有りかよ!?」

 

「噛み付いても肉の感触すらないのです!コイツの体は生命とは根本的に違う存在なのです!」

 

「諦めちゃダメだよ!あたし達は魔法少女…神様にだって負けない希望の運び手なの!!」

 

果敢に攻め込むライドウと魔法少女達であったが、斬り付けたローブは直ぐに元に戻っていく。

 

「一体何が本体だと言うのだ…?このままでは……」

 

虫けらが足掻く光景を楽しんでいるように見えたが、それも空しくなったツクヨミが動く。

 

「希望の運び手と申したか…?ならば絶望に抗って見せよ…我は貴様らを試す絶望となろう」

 

ツクヨミが印を結ぶと巨大な体が分裂していく。

 

「そ……そんなことって……」

 

「これが…日本神話の三貴子に数えられる…月神の力なのかよ…」

 

「もう……ダメなのです……」

 

『実像分身』によって三体に分裂したツクヨミに対して戦う者達の顔が青ざめる。

 

一体だけでも勝ち目が見えないのにさらに数を増やされてはもうどうする事も出来ないだろう。

 

周囲を巨大なツクヨミ達に囲まれてしまった者達は背を向け合いながら武器を構える。

 

それでも万事休すを表すようにして武器を持つ手に力が入っていないのを月神は見抜くのだ。

 

「その程度で希望の運び手を名乗るな…愚か者共!我が味わった絶望は…もっと深かったぞ!」

 

それぞれが印を結んで放つのは『常世より舞う雪風』であり、氷結と疾風の嵐が生み出される。

 

<<アァァァァァァァーーーーッッ!!!>>

 

ツクヨミ達の中央に竜巻が生み出され、内部は極大のブリザード地獄と化していく。

 

咄嗟にマミと杏子がリボン結界と編み込み結界を生み出すが、容赦ない氷結暴風を防げない。

 

「すまねぇ…ここまで…みたいだ…」

 

「ごめんなさい…佐倉さん…美樹さん…なぎさちゃん…私達では…三貴子には勝てなかった…」

 

結界が破られ、魔法少女達の体は完全に氷結してしまい、動かない石像同然の姿となっていく。

 

ライドウはスサノオが生む防御結界で身を守られているが、スサノオですら防ぎきれていない。

 

「認めたくねーもんだ…ツクヨミなんぞに…後れを取るのはよぉ…」

 

防御結界の内側にまで氷結地獄が襲い掛かり、ライドウとスサノオの体まで凍り付いていく。

 

倒れ込んだライドウは息も絶え絶えになりながらも管を抜こうとするが落としてしまうのだ。

 

「ヤタガラスの長の力は…想像を絶する程だった…ここまで…なの…か……」

 

ついにスサノオの結界まで破られた時、猛烈なブリザード地獄は止まってくれる。

 

ライドウを守り抜いたスサノオまで体が氷結しているが、ライドウは体が氷結しきっていない。

 

それでも体を動かせる状態ではなく、身動き出来ない相手にトドメを刺すのは容易であろう。

 

「14代目葛葉ライドウ…貴様に探偵職をやらせたのは不味かった。秘密を嗅ぎ回る犬は死ね」

 

独裁国家やブラック企業やカルト宗教といった秘密主義団体が必要とする人材とは無知な者達。

 

御上を信じて疑わず、御上に逆らわず、御上に言われた事だけが絶対に正しいと信じて動く。

 

そんな羊の群れが築き上げる全体主義こそが強固な一枚岩を築き上げると考えるのは共通する。

 

それこそが天使軍と変わらないLAWの支配状態であり、構成員達はロボット化してしまう。

 

自分達が行う悪行を善行だと信じ抜く愚者達こそが秘密主義を掲げる悪者が必要とする人材。

 

御家という全体を守るサムライになれといった化けの皮で思考停止させ、働き蟻化を施すのだ。

 

「護国守護など…化けの皮だった…ヤタガラスが求めたものは…自分達の…安寧だけ…か…」

 

片手を持ち上げるツクヨミ達がライドウに向けて魔法攻撃を仕掛けようとする。

 

もはやここまでかと目を瞑った時、友の叫び声と世話になった女の叫び声が響き渡るのだ。

 

「そこまでにせよ!ヤタガラスの長よ!!」

 

「これ以上の戦いは無益です!どうか御怒りを鎮めて下さいませ……ツクヨミ様!!」

 

目が開いたライドウの元に駆けつけたのはゴウトとヤタガラスの使者として生きた女である。

 

視線を向けてくるツクヨミ達の表情は伺い知れず、黄泉の如き暗闇世界だけが覗くのであった。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――

 

「業斗童子…葛葉の禁忌を犯すだけでなく、ヤタガラスに反逆までしてきた罪人め…許し難い」

 

黒猫の姿をしたゴウトも元は人間であり、葛葉一族の退魔師だった存在。

 

葛葉一族の禁忌を犯した罪人として動物の姿にさせられ、従者としての運命を与えられた者。

 

その魂は呪われ、従者として体が滅びたところで転生しても従者にされる末路となった者だ。

 

「罪人を従者にするから葛葉のサマナーは惑わされ、同じ罪人となった…その責任を取らせる」

 

「我は確かに罪人…それでもな…一族という全体が間違ってると確信したから逆らった者だ!」

 

「彼は出過ぎた杭になってでも全体を正そうとした者です!それが大罪では理不尽過ぎます!」

 

「ヤタガラスの使者として名を捨ててきた一族の女よ…貴様まで我に逆らうというのか…?」

 

「たとえ社会悪にされようとも自分を貫く…自由の価値を伝えてくれたのが魔法少女達です!」

 

「貴様も惑わされた愚か者として処刑されに来たようだ…望み通りの末路を与えてやろう」

 

「ツクヨミ…うぬは自分の価値観だけの世界に閉じこもっている!井戸の中に映る月なのだ!」

 

「本当の貴方様は思慮深い大神と御見受けします!稲のように頭を垂れる事が出来る神です!」

 

三貴子のツクヨミは食の神ウケモチを斬り、五穀の起源を成したことから農耕神とも呼ばれる。

 

また生命の源泉である水や不老不死の生命力とも関係が深い神であり、水のように変化出来る。

 

ならば自分の価値観を変化させ、周囲の者達の考えも尊重出来る大神にもなれると伝えるのだ。

 

それでもプライドを傷つけられたツクヨミは表情が見えなくとも怒りの叫びを上げてくる。

 

「貴様らは三貴子である我に対して下々の者達に頭を下げろと申すか…?無礼であるぞ!!」

 

「実る程に頭を垂れる()()()()()()()()()()()()()()()!下々の者達を見下す傲慢者となる!」

 

「それでは日の本を支配してきた金融資本家共と同じです!エゴに囚われ搾取する者と化す!」

 

「アマテラスと同じ言葉を我に浴びせてくるなど…言語道断だ!その無礼は死罪に値する!!」

 

アマテラスはツクヨミを保食神ウケモチの元に派遣するが、そこでツクヨミは激怒してしまう。

 

口から米、鼻から魚、肛門から穀物をひり出すウケモチ神に嫌悪したため斬り殺している。

 

それに対してアマテラスは激怒し、自分の罪すら認められないツクヨミを隔離してしまう。

 

これによって太陽と月は別々の時間に存在するものとしたのが日本神話の内容なのだ。

 

「周りから悪とされた事に怒りを感じる必要はない!()()()()()()()調()()()()()()()()()!!」

 

自然界の調和と秩序、対立のバランスこそが陰陽調和。

 

アマテラスとツクヨミの対立、唯一神とルシファーの対立もまた世界にバランスを築いている。

 

宇宙の根本的な二元性と相補性を生み出す存在こそが善と悪、光と闇、太陽と月、男神と女神。

 

太陽がずっと昇っていたら労働者は寝る暇も無く働かされ、潮の満ち引きすら生まれない。

 

どちらかだけでは世界が破綻してしまうからこそ、世界には闇や悪もまた必要なのだと叫ぶ。

 

善悪二元論を利用して扇動する独裁国家を止めるのは社会悪にされてでも戦える悪者達なのだ。

 

「我はこれを国津神と時女一族から学んだ!故に我は罪人であることを誇りに思おう…」

 

――暴走した権力を止め、諫める事が出来るなら…我は闇となり悪となれる者で在りたい!

 

闇の象徴である漆黒の動物にしかなれないゴウトは自分の罪を甘受し、誇りさえ抱いてくれる。

 

その姿こそ漆黒の鎧を身に纏った将門であり、国賊にされてでも権力の暴走を諫める者となる。

 

それこそが陰陽精神であり、水の心であり、世界と調和する境地に達した者なのだ。

 

ゴウトの叫びが届いたのか、アマテラスに対して劣等コンプレックスを抱いた神が腕を下ろす。

 

「夜と闇を司る我もまた…世界は必要とする…だからこそアマテラスは…我を生かしたか…」

 

「これは全ての悪魔達にも言えることだ…だからこそデビルサマナーには陰陽が求められる!」

 

「私もサマナーとして偏らない者で在りたい!だからこそ…どうか御慈悲をお与え下さい!!」

 

「今更無駄な事だ!天使の軍勢はすぐそこまで来ている…我らは善悪二元論で…裁かれるのみ」

 

進退窮まったツクヨミはもう希望すら無く、迫りくる滅びを受け入れた絶望の神。

 

何がどう正しいかなど今更関係なく、再び自分の心の形を氷結させてしまう。

 

水のような変化を失った氷結の神が動き出し、ゴウトと女サマナーに攻撃を行おうとする。

 

「逃げろ…逃げてくれ……ゴウトォォォォーーーーッッ!!!」

 

叫ぶライドウの脳裏に巡るのは大正時代で失ってしまったゴウトの姿。

 

帝都を燃やす超力超神にエネルギー供給する人工衛星を滅ぼす為に命を使った者こそがゴウト。

 

そんな彼に手を伸ばすライドウに顔を向けるゴウトはあの時と同じ表情を浮かべてくれるのだ。

 

「ライドウ…自分を信じろ。二代目以降、全てのライドウを見てきた俺だから分かる……」

 

――お前が一番、見込みがあった。

 

巨大な氷塊が降り注いだことでゴウトと女サマナーの体が砕け散る。

 

黒猫の首だけが弾け飛んでいく光景を刮目しながら見つめることしか出来ないライドウ。

 

そんな彼に最後の念話が届いた瞬間、大粒の涙が浮かんでしまうのだ。

 

<後は…頼んだ…ぞ…我が名を継ぎし男…14代目…葛葉…ライ…ド…ウ……>

 

目の前に転がり落ちたゴウトの首も砕け散り、MAGの光となって消えていく。

 

「あっ……あぁ……あぁぁぁぁぁぁ……ッッ!!!」

 

走馬灯のように巡るのは21世紀時代のゴウトと出会えた時の記憶。

 

長居することになったため大正時代の頃よりも多く触れ合えた記憶。

 

未来に不慣れなライドウに対して色々と教授してくれたが、上手く理解出来なかった思い出。

 

そして啓明結社とヤタガラスとの戦いを共に潜り抜けてくれた戦友の思い出が溢れ出すのだ。

 

「所詮我は闇の神…その末路は絶望で締めくくられるのも…致し方なしか」

 

無念の叫びを上げ続けるライドウも同じ末路を辿らせようとする中、魔法攻撃が迫りくる。

 

「くっ!?何者だ!!」

 

マハザンダインが直撃したツクヨミ達が振り向けば、空から現れたのはカルティケーヤ。

 

それにバロンも山を駆け上りながら参上し、ショックウェーブを全身から放ち続ける。

 

彼らを率いるのは目を覚ました葛葉キョウジの姿であり、ライドウに対してこう叫ぶ。

 

「偽りの自分など脱ぎ捨てろ!在りのままの自分を曝け出し、()()()()()()()()()()()()()!」

 

護符を用いてマハラギオンを放ち続けるキョウジが囮となり、ライドウの時間を稼いでくれる。

 

立ち上がろうとするが全身が凍り付いており、立ち上がれない姿を晒すしかない。

 

そんな時に聞こえてきたのはヤタガラスの使者として生きた女の声。

 

顔を向けると上半身だけが転がっており、直ぐに彼女も死ぬのだがその前に伝えようとする。

 

「怒りの感情は…人々から疎まれる…だからヤタガラスに不満があっても…私は押し殺した…」

 

偽りの自分の殻に閉じこもったせいで彼女はヤタガラスという全体に流されるだけの羊となる。

 

これはブラック企業や独裁国家に従う者と同じであり、支配者共の暴走を止められなくなる。

 

自分の腰抜けさを酷く後悔している彼女だからこそ、怒る事の大切さを彼に説くのだろう。

 

「怒らない人が…優しいんじゃない…他人に期待も興味もない人でしか…ないんです…」

 

怒らない人は反省の機会を奪う人でしかなく、資本家や売国官僚、売国議員を増長させる。

 

沈黙・無関心こそが支配を完成させる原因であり、独裁者共は悪事の限りを尽くすだろう。

 

怒る程のエネルギーを示し、誰かの未来を守る事こそ本当の優しさなのだと伝えてくれるのだ。

 

「全力で怒る時は…どうしても譲れない…大切なもののため…だから今こそ…怒りなさい…」

 

「本気で怒るべき時とは……大切なもののため……」

 

「優しさを…履き違えては…いけない…私のようには…ならない…で……」

 

事切れてしまったヤタガラスの使者の言葉で覚醒を得たライドウの両目が大きく見開く。

 

ガチガチに凍った右手を震わせながら移動させ、学ランポケットの中から何かを取り出す。

 

取り出した物とはキョウジから受け取ったケースであり、危険極まりない丸薬が入っている。

 

それでも迷いを捨てた男はケースを開いて丸薬を手に取り、全て飲み込んでしまう覚悟を示す。

 

「鬼神となりてでも…我が信ずる護国守護を成す…立ちはだかる者よ…覚悟せよ!!」

 

蟲毒の丸薬を大量に摂取したライドウの体から膨大なMAGが噴き上がっていく。

 

MAGの光が体の氷結を打ち破り、立ち上がる程の気力を与えてくれるのだろう。

 

ライドウの様子に気が付いたキョウジの口元は微笑みを見せ、こう口にする。

 

「見せてみろ、14代目葛葉ライドウ。貴様の怒りの真価を…俺が見極めてやろう」

 

素早く召喚管を抜き、両手の指の間に挟み込みながら交差して構える。

 

吐普加身(とほかみ) 依身多女(えみたま) 吐普加身(とほかみ) 依身多女(えみたま)……」

 

ライドウの体から噴き上がる飢餓の感情エネルギーの正体とは力への渇望。

 

「あはりや 坐すと白さぬ(あそばすとまうさぬ) 朝座に(あさくらに) 気吹戸主と云ふ神(いぶきどぬしといふかみ) 降りましませ……」

 

力足りずに愛する友を失い、大切な人達を守れなかった非力な己への怒り。

 

「ひふみよいむなや こともちろらね……」

 

組織に所属しながら組織の魂胆を知る努力をせず、言われた事だけやってきた無関心への怒り。

 

聞こし食せと(ひこみひこと) 畏み(かしこみ) 畏みも(かいこみも) 白す(はくす)……」

 

自分の無知を指摘する者に対してエゴに囚われた己の未熟さに対する怒りが爆発するのだ。

 

布留部(ふるべ) 由良由良止(ゆらゆらと) 布留部(ふるべ)!!!」

 

神道の祝詞を詠唱として八体同時召喚を行う召喚管の蓋が一斉に開いていく。

 

「な…なんだとぉ!!?」

 

振り向いたツクヨミ達が見た存在とはライドウが使役する悪魔軍団。

 

刀の刃を向けてくるライドウの眉間のシワは寄り切っており、まるで鬼神の顔つきであった。

 




葛葉ライドウの最終決戦はやはり八体同時召喚がお約束ですよね!
ゴウトにゃんこの最後を描いてると、今週発売のライドウリマスターが楽しみになってくる!
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