人修羅×まどマギ まどマギにメガテン足して世界再構築   作:チャーシュー麺愉悦部

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386話 力の求道者の最後

フランスの人類学者は欧米が押し付けるグローバリズムについてこのように述べている。

 

グローバリズムは合理性と効率性の原理であり、個別的具体性の一切を破壊してしまうと語る。

 

地域的・社会的・宗教的・民族的なものが全て壊される状態こそが自由貿易と経済特区政策。

 

それらに絡め取られた日本のような国は復興不可能な程にまで荒廃するのは目に見えている。

 

TPP・FTA・EPA・RCEPなどの自由貿易協定が国家の憲法の上に置かれ、日本人が殺される。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()であり、この不平等条約を望んだ連中こそ金融資本家達だ。

 

しかし米国の人々とて国際金融資本家に搾取され、殺される政策を押し付けられた者達。

 

国際金融資本家は為政者とグルになり、各国政府は投資家の配当を第一として民の未来を売る。

 

格差や貧困に苦しむ人々への共感や救済の意思など欠片もなく、政府は民より金を選んでいく。

 

国民に奉仕する政府の第一目的を奪い取った存在こそが各国ディープステート政府である。

 

それに気が付いた時、世界の憂国の戦士達が雄叫びを上げ、武器を手に取り政府と戦うだろう。

 

そうでなければ世界中の人々は悪魔的金融民族が敷くカナン教義で殺される末路しか残らない。

 

武器を取れ、国を焼いてでも戦おう。

 

下々の人々の未来を殺す敵とは、多国籍企業と資本家の傀儡であるディープステートであった。

 

……………。

 

「この世を金勘定でしか認識出来ない者こそが悪魔です!私は拝金主義者を絶対に許さない!」

 

円環のフランス魔法少女達の指揮を執るオリジナルのタルトが米軍兵に対して斬り込んでいく。

 

魔女の馬に乗った彼女がクロヴィスの剣を振るえば斬撃波が生まれ、兵士達が挽き肉と化す。

 

「金儲けの為なら平気で民を騙し!己の悪行を下々の問題にすり替えて擦り付ける悪魔です!」

 

魔女の馬を巧みに操り、戦車や装甲車の攻撃を飛ぶような跳躍移動で躱していく。

 

タルトと共に突撃する騎士魔法少女達も魔女の馬を操りながら敵機甲師団を殲滅するのだ。

 

「下々の人々も勝ち組負け組概念に騙されてきた!マタイ福音書の6章こそが正しいのです!」

 

マタイによる福音書6章19節~21節。

 

――あなたがたは地上に富を積んではならない。

 

――そこでは虫が食ったり、錆び付いたりするし、また盗人が忍び込んで盗み出したりする。

 

――()()()()()()()()()

 

――そこでは虫が食う事も錆び付く事もなく、また盗人が忍び込む事も盗み出す事もない。

 

――あなたの富のあるところに、あなたの心もあるのだ。

 

「天に宝の徳を蓄える道が出来ない悪魔共こそが秘密主義に走り!人を騙して金儲けをする!」

 

悪を行う者はみな光を憎み、その行いが民衆の明るみに出される事を恐れて光の方に来ない。

 

その在り方こそが秘密主義エリートであり、秘密結社であり、ディープステートなのだと叫ぶ。

 

イザヤ書に書かれた内容通り、谷間や岩の裂け目となる秘密会議場で民を屠る悪を練り上げる。

 

多国籍企業と株主資本家達が国々の主幹事となり、練り上げた悪によって国民の未来を殺す。

 

「真理を行う者はその行いが神にあって成された事が明らかになるよう光の方に来るのです!」

 

聖書の一節を叫びながら戦うタルトに続くのはオリジナルのリズであるが、顔が俯いている。

 

タルトが叫ぶ聖書の内容が彼女の心を苦しめてしまうのだろう。

 

黒マントに備わるホークウッド家の紋章を握り込むその手も震えていく。

 

リズのホークウッド家とは金の為なら人々の命すら平気で殺せてきた傭兵一族なのだ。

 

「私の生まれた家も…タルトと同じ農家だったなら…どれだけ幸福だったのかしら…」

 

自分の家を大きくしたジョン・ホークウッドは金の為なら鬼畜の所業も平気で行ってきた者。

 

彼は金儲けの為なら雇用主など平気で裏切り、両方の勢力から金を騙し取る事も行ってきた者。

 

また教皇や枢機卿の命令で数千人規模の大虐殺も行い、先頭に立って虐殺の指揮を執っている。

 

その金で城を買ったりフィレンツェ市民権を会得するなど、強欲の限りを尽くした戦争犯罪者。

 

その在り方はまるでユダヤであり、だからこそ金融民族とも繋がりが生まれてくるだろう。

 

「ギャーギャーウルセーンダヨォ!!堕天使ノオレサマ達ノ前デ聖書ヲカタルンジャネェ!!」

 

不快な叫びを上げているタルトに対して怒りを隠せない獣が透明な姿を解除して巨体を晒す。

 

ビルの上で地上を見下ろすのはグラシャラボラスの一体であり、黄金仮面の口が開いていく。

 

ガチガチと不快な音を鳴らしながら威嚇してくる獣悪魔に対してタルトが剣を向けるのだ。

 

「堕天使悪魔め!たとえ魔女と呼ばれ…天使様から襲われようと…神の教えが私の道です!」

 

「円環ノ魔女ナノニ聖女キドリカァ?大マヌケナ奴ダゼ!ギャッハハハハハ!!!」

 

「黙りなさい!ジャンヌ・ダルクとして生きた私は魔女として滅んでも尊い教えは守ります!」

 

「テメェガジャンヌ・ダルクダッテノカァ?ダッタラ隣ニイルノハ…ホークウッドカァ?」

 

リズに振り向いた獣悪魔が視線を黒マントの紋章に向けた時、大笑いを始めていく。

 

「ハッハッハァ!コイツハ傑作ダ!黒ノ貴族共ノ汚レ仕事デ儲ケタ一族ノ奴ガ聖女トイルゼ!」

 

「な…なんですって…?私の家が…黒の貴族共の汚れ仕事までやってきたというの!?」

 

「オウトモ!ジョン・ホークウッドハ金儲ケノ為ナラ幾ラデモ虐殺デキル奴ダッタカラナァ!」

 

イタリアこそカナン族ユダヤ発展の地であり、黒の貴族の総本山として栄えた地。

 

金の為なら幾らでも汚れ仕事を請け負えるなら、ユダヤ商人と取引出来ても不思議じゃない。

 

「リ…リズ……?」

 

ガタガタと体を震わすリズの顔は真っ青になっており、自分の生まれた家の罪に苦しみだす。

 

「傭兵軍ヲ動カスニモ金ガカカルモンダ。ソンナ時ニ頼ルノガ…ユダヤノ金貸シダッタノサ!」

 

日本とて日露戦争の時は戦費捻出のためにユダヤ財閥のロスチャイルドから借金している。

 

戦争は経済活動と同じであり、経済活動とは金融があって機能するものだと言ってくる。

 

「いや…いやよ…私の家が…ユダヤの金欲しさに…犯罪行為に手を染めてただなんて…」

 

「借リル者ハ貸ス人ノ奴隷トナルッテ聖書ニモカカレテルンダロォ?ソノ通リダッタナァ?」

 

「母方のヴィスコンティ家が絶縁するはずよ…悪魔のホークウッドの血が…私にも流れてる…」

 

「テメェノ一族ノヨウナ連中ガディープステート構成員ダ!徳ヨリモ金儲ケガスベテナノサ!」

 

拝金主義、それこそが他民族をユダヤと同じ寄生虫に作り替える価値観のすり替え手口。

 

金持ちになりなさい、それが()()()()()()()の金科玉条だと堕天使は言ってくる。

 

「テメェノ血筋ノヨウナ拝金主義者共ガウミダシタ価値観コソガ融資ニ利息ヲ課スモノサ!!」

 

16世紀の英国において強大な影響力をもったカルヴィニズムは金に大きな関心を寄せる。

 

そのため新興の商人組織や黒い貴族に取り入り、それ以前の宗教的価値観を転覆させていく。

 

質素と清貧の誓いを破壊し、富を蓄える事こそが主の御心に適う行為だと価値をすり替える。

 

裕福になることを神から望まれているという価値観は黒の貴族達に気に入られることになる。

 

この新たな啓示が21世紀まで続く拝金主義へと繋がり、グローバル帝国主義となっていく。

 

グローバリズムで他国を滅ぼす資本家の価値観とはカルヴィン主義に根差した独裁行為なのだ。

 

「ソンナテメェガ聖書ノ徳ヲ叫ブ聖女様ノ御供ヲシテヤガル!チャンチャラオカシイゼェ!!」

 

恥知らずの大バカ者を嘲笑う堕天使の言葉にショックを隠せないリズの目に涙が溢れ出す。

 

「そうよ…私の家はユダヤと同じぐらい卑しい一族よ…だから私は胸を張れる希望を望んだ!」

 

ホークウッド家の劣等性はエゴを超える程にまでおぞましく、だから幼少時代から苦しみ抜く。

 

自分の劣等性の原因は傭兵稼業で成り上がったホークウッドのせいであり、故に英雄を求める。

 

自分の願いで救国の英雄を生み出せたなら、人の生き血で金儲けをしてきた自分も救われる。

 

そう願ってリズは魔法少女となり、ジャンヌ・ダルクを生み出す一助となった者なのだろう。

 

「私はホークウッドの劣等性を認めるわ!人を騙したり殺したりして儲ける金に価値はない!」

 

「自分ガ何ヲイッテルノカワカッテルノカ?テメェハテメェノ家ノ繁栄ヲ否定シテルンダゾ!」

 

「その通りよ!私の家の始祖のような価値観こそ悪魔の価値観よ…この世から消えて欲しい!」

 

「リズは悔い改める事が出来る人です!悔い改めず、問題を追及側にすり替える者ではない!」

 

「今更無駄ナンダヨ!テメェノ血肉ハ人ヲ殺戮シテ稼イダ金デ得タ食料デ形作ラレテルノサ!」

 

「呪われた運命だとしても…私は贖罪がしたい!この時代まで続く拝金主義を終わらせたい!」

 

かねかねかね、全てを金勘定でしか認識出来ないのは日本人も欧米人も変わらない。

 

騙しと搾取の仕組みで気持ちよく騙されたい愚者から金を巻き上げることしか考えてくれない。

 

ソシャゲ界隈、パチンコ業界、あらゆる界隈で蔓延るカルヴィン主義が人を悪魔に変えていく。

 

そんな呪われた価値観が勝ち組負け組概念を生み、学歴だけで人の価値を決める地獄を生む。

 

負け組にされた下々の者を嘲笑い、人生を殺す事さえ娯楽にしてしまう悪魔世界が生まれる。

 

弱肉強食資本主義時代の象徴国家の一つであるアメリカの解放こそ、リズの贖罪だと叫ぶのだ。

 

「カルヴィンハ、ユダヤ人ヲ祝福シタ!ソノ啓示コソ人間至上主義ノ完成ダ!破壊サセンゾ!」

 

タルトとリズに飛び掛かろうとした時、側面から迫った砲弾が直撃する。

 

ビルの屋上から弾き飛ばされた獣から顔を逸らすと大きな魔砲を構えるエリザがいるのだ。

 

「私達セムの白人達もユダヤと共に悪魔の価値観を世界にばら撒いた…その償いはしますわ」

 

地面に倒れ込んだグラシャラボラスの元に飛来した消滅の戦槌に対して跳躍しながら避ける。

 

地面に着地した獣悪魔に視線を向けるのはエリザの従者となったメリッサの姿である。

 

「私達欧州人がユダヤ支配に無関心だったせいで…今の地獄がある。だからこそ終わらせます」

 

リズと共に罪を背負ってくれる仲間達を見た彼女の表情も晴れていき、タルトも頷いてくれる。

 

「罪は皆で背負うもの…だから私も立ち上がれたんです。私も魔女として焼かれた罪人ですよ」

 

「グスッ…皆が私と同じ苦しみを共有してくれる…だから私も…立ち上がってみせるわ!!」

 

「罪を犯さない人間など地球にいません!胸を張って光の道を歩みましょう…ホークウッド!」

 

「ええ!フランスの光となった貴女が私の罪を照らしてくれるなら…何処までもついて行く!」

 

魔女の馬の腹を蹴り込んで突撃するリズは影のハルバートを両手持ちで構えながら振りかぶる。

 

タルトも手綱を打ち、リズと共にグラシャラボラスを討たんと駆け抜けていく。

 

フランスの騎士魔法少女達も駆けつけるのだが、獣悪魔が雄叫びを上げれば増援が現れる。

 

二体のグラシャラボラスが追加された事で欧州の魔法少女達は激戦を繰り広げていくのだ。

 

北欧の神々も獣悪魔達を駆逐していき、革命軍もまた米軍の首都防衛部隊を制圧していく。

 

地上の戦いは雌雄を決しようとしていく中、空で戦う女神と魔王の戦いも後に続くのであった。

 

────────────────────────────────

 

「流石は円環の女神なんですケド!アリナのヴェノムでデリート出来ないタフガールだヨネ!」

 

高度二万メートル辺りで死闘を繰り広げるのは魔王化したイナンナと円環の女神である。

 

大蛇に生まれ変わったパズスが吐き出す毒ガスが充満する毒々しい空で戦闘が繰り広げられる。

 

今のイナンナはもはや魔王アスタロトそのものであり、死を撒き散らす悪魔となっているのだ。

 

【アスタロト】

 

ソロモン王の72柱の魔神であり、40の軍団を率いる魔界の公爵である恐怖公。

 

巨大な蛇に跨り、右手に毒蛇を持ち、口元を血で濡らした堕天使の姿で現れるという。

 

悪魔学では座天使だが、ルーツはオリエントの女神アシュトレト(イナンナ)と考えられている。

 

創造と共に血や破壊の属性を併せ持つところからイスラエルの民から貶められたのだろう。

 

ルシファー、ベルゼブブ、アスタロトこそ三大魔王と呼ばれておりCHAOS勢力トップであった。

 

「もうやめて…アリナさん!悪魔になってまで求めるものの為に死を撒き散らさないで!!」

 

人修羅のマサカドゥスと同等の悪魔耐性を持つ円環の女神は魔力属性の毒を無効化している。

 

竜巻の如き毒ガスブレスをものともしない女神に対し、魔王は9つのデスマスクを生み出す。

 

死の経過を表す九相図であり、彼女の9つの悪魔耐性を表す魔法道具が四属性魔法の光を放つ。

 

「アリナが求めるものは昔から変わらない!デス&リバースの先にある高みに昇るんだカラ!」

 

放たれた魔法攻撃とは敵単体に浴びせる大威力の属性攻撃であり、相性を無視して貫通する。

 

トリスアギオンの炎熱線、ナルカミの轟雷放射、殺風激の圧縮弾を回避するが氷結が直撃する。

 

「アァァァァーーーーッッ!!!」

 

『アイスエイジ』が直撃したまどかは耐性が貫かれたため全身が氷結していく。

 

それでも極限の回復魔法で体を回復させていき、巨大な蛇の周囲を旋回しながら魔法を放つ。

 

しかしアリナの耐性も凄まじく、物理と万能以外は無効化してくる為に魔法が通じないようだ。

 

互いが魔法攻撃を仕掛け合い、眩い光の爆発を連続で生み出しながらも叫んでいく。

 

「アリナの高みはヨスガの高み!弱肉強食を築き!その頂きに立つ最高のアートになるワケ!」

 

「そんな世界は悲しいだけだよ!共食いの世界なんてあんまりだよ!」

 

「共食いワールドこそ資本主義なんですケド!人を蹴落とし、強い者だけが全てを奪える!」

 

「弱い人達だって強い人達を支えてくれてるの!どうしてそれが分からないの!?」

 

「20世紀まではそうだったけど、21世紀からはAIとロボットが代わるから問題ないワケ!」

 

「だからこんな地獄の世界を生み出して人々を間引いたんだね…絶対に許さないから!!」

 

「弱者なんかを優先するから皆が腐っていく!強くなる事を忘れて堕落だけを求めていく!!」

 

アリナと彼女に宿った千晶が叫ぶ内容とはニーチェのニヒリズムである。

 

人生は苦しみの連続、生きていることそのものが苦しい。

 

だからサブカルだのスポーツだのギャンブルだのと娯楽に現を抜かし、現実から逃げていく。

 

そんなものは現実逃避のロマン主義であり、真の喜びなど得られない。

 

己に誠実に生きるのが強さだが弱い連中はそれを否定し、連帯して強者を引き摺り下ろす。

 

絆という印象操作で堕落の毎日を誤魔化し、堕落者達に流されるだけの腐敗の毎日が始まる。

 

それこそが学生時代のアリナと千晶が経験してきた腐敗を極めた人々の堕落だったと叫ぶのだ。

 

「そんなのはハッピーじゃない!堕落しか求めない連中なんて!アリナがデリートしてやる!」

 

「私もそんな人達の輪の中で埋没してきた…だけどね、人は変わっていける存在なの!!」

 

「だったら今すぐフールなヒューマン共に英知を授けてみせるワケ!出来るもんならね!!」

 

複数の竜巻を周囲に生み出し、豪風がぶつかり合う谷間で円環の女神の動きを拘束する。

 

両手を放射状に構えるアリナと大口を開ける大蛇が放つのは至高の魔弾。

 

二発の万能属性ビーム攻撃が迫りくる中、まどかが纏うスカートの宇宙空間が広がる。

 

「チッ!アリナ達の魔法を流し込める結界が使えるなんて…生意気なんですケド」

 

宇宙空間に放射された至高の魔弾が消え去る中、アリナは別の魔力を感じ取る。

 

下の空域から放たれたのは悪魔ほむらの攻撃であり、無数の鴉の矢が迫りくる。

 

アリナは咄嗟に反応し、右手に攻撃用ブラックキューブを生み出しながら分割して解き放つ。

 

大蛇の下から迫りくる鴉の矢の群れに飛んでいったキューブの破片が次々と炸裂する。

 

連続メギドラオンの光を生みだす中、ほむらに気を取られたアリナに対してまどかが攻め込む。

 

「人々の自立を求めるのは今は難しいよ!だけどね…失敗を続けても育てる事が大事なの!!」

 

高速で飛来してきた円環の女神が大弓を振りかぶりながら殴打を狙う。

 

まどかの言葉がアリナの心に動揺を生み出し、脳裏に浮かぶのは学生時代の記憶。

 

「ガハッ!!?」

 

何度も失敗する出来の悪い後輩を育てていく事の愛しさを思い出したアリナが弾き飛ばされる。

 

蛇の背の上を転がっていくが、鱗を掴んだ彼女が落下を防ぐ。

 

鹿の皮を被るようなベールが脱げ落ちた彼女の頭からは血か絵具かも分からない汁が零れる。

 

それを指で掬い取ったアリナは赤い口紅を塗るようにして口に塗りたくっていくのだ。

 

「御園かりんのような素直な連中ばかりだったら…育てていくのも悪くなかったヨネ…」

 

それが不可能なぐらい人々は自分勝手であり、間違いを指摘する者を異常者にして嘲笑う。

 

相手の指摘を間違いだと前提にしたり、大袈裟に騒ぎ立てるアホのような印象操作をしてくる。

 

堕落を指摘しただけで虐められた学生時代の記憶まで蘇った彼女の左手には仮面が生まれる。

 

怒れる鬼のような山羊の二本角が生えた仮面を目元に纏いながらアリナは叫んでくるのだ。

 

「だけどね…堕落しか求めない連中にはアナタの思いは届かない!アリナの言葉も届かない!」

 

右手に生み出すのは魔王アスタロトの槍であり、高速回転させる演舞を行いながら構えてくる。

 

槍の柄は蛇の胴体を表し、蛇の口から矛が伸び出たような形の魔槍を構えながら叫ぶ。

 

「期待に応えさせる義務も責任も用意出来ないなら皆動かない!だから家畜でしかないワケ!」

 

アリナの苦しみの叫びは千晶の苦しみでもあり、千晶も同じ責め苦を学生時代に経験する。

 

だからこそ千晶は堕落しか求めなかったかつての世界を捨て、力のコトワリを啓いたのだろう。

 

「堕落しか求めない連中なんて家畜同然なワケ!プライドもディグニティ(尊厳)も必要ないカラ!!」

 

大蛇の道の如き背の上に着地した悪魔ほむらも大弓を構えて接近戦を挑む。

 

前後を挟む形で迫りくるまどかとほむらに対し、邪悪な笑みを浮かべたアリナが叫ぶ。

 

「カモン、ベイビー!!喰うか喰われるか…それしかワールドにないなら…アリナが喰らう!」

 

大上段の構えで槍を向けてくるアリナに対し、大弓を杖に変化させたまどかが光剣を生み出す。

 

薔薇の杖から伸びる光剣を下段で構えるまどかは心の中で自分を信じる言葉を呟く。

 

(大丈夫…わたしならやれる。ママも自分の決断を信じた…わたしも自分の決断を信じる!)

 

悪魔ほむらも大弓に魔力を送り込み、鳥打部分を双剣のようにしながら構える。

 

「行くわよ…イナンナ。お前との決着を…今日ここでつけるわ!!」

 

一気に踏み込んだまどかが先手を仕掛ける。

 

横薙ぎを仕掛けるまどかに対し、頭上で一回転させながら魔力を槍に纏わせ、斬撃を弾く。

 

続けて後ろから迫るほむらに対し、斬撃を打ち払った勢いを用いた槍を振るって弾き返す。

 

囲まれないよう巧みに魔力の槍を振るい、次々と斬撃を仕掛けるまどかとほむらをいなす。

 

「ゴフッ!?」

 

槍の石突き部分で『貫通撃』を放たれたまどかが弾かれ、続くほむらの袈裟斬りを打ち落とす。

 

「グフッ!?」

 

打ち払った槍を回転させながら遠心力を加えさせ、そのまま横薙ぎを放ってほむらの頭を打つ。

 

アリナは十七夜と暮らしていた時期があり、彼女と共にサマナー達から槍術も学んできた者。

 

元々天賦の才があったアリナは十七夜よりも抜きんでた才があったのだが彼女は槍を使わない。

 

性に合わないとしてキューブ型の道具を使ってきたが、槍を持たせたらここまで実力がある。

 

「ヒューマンを信じたい気持ちなんて無駄だカラ!連中の価値観はね…かねかねかねだカラ!」

 

他者に見せつける不必要な金を欲し、金で用意した豪華な様式で暮らし、優越感に浸っていく。

 

これが勝ち組モデルにされたならば人々は拝金主義こそ正しいのだと惑わされてしまうだろう。

 

「自分を高めるのは全て金儲けのため!ご褒美をぶら下げなければ努力すら出来ないカラ!」

 

「そんなことはないよ!人が強くなろうとするのは誰かを守ろうとする気持ちだよ!」

 

「大噓なんですケド!ファミリーを築いた大人だって子供時代と変わらない堕落を好むワケ!」

 

「皆が狭い関心事に埋没していく…だから気が付いた時には未来が手遅れになってしまう…」

 

「そんなヒューマンばかり量産されるから子供も同質的に培養される!堕落の未来しかない!」

 

アリナと千晶の憂いこそ、尚紀や千晶の恩師である高尾裕子の憂いの内容。

 

安らぎばかり求める皆の無責任で、我儘な振る舞いがとても嫌だった。

 

誰も気がついてはいない、それは幸福なんかじゃなく、ただ怠惰になってるだけ。

 

競い合うこととか、強くなることとか、誰も求めないし、必要もなくなっていた。

 

「パワーを失くした連中に未来なんてないワケ!御上が与える嘘に酔いながら滅びればいい!」

 

強くなって競い合う事は嫌だと言いながら堕落を求め、堕落仲間とつるみながら楽に過ごす。

 

面倒な事は学歴エリート共に丸投げし、そいつらが示す答えに従って生きていけばいい。

 

エリート牧師に従うだけの羊の群れに成り果てた愚民こそ、ヨスガが滅ぼすべき堕落の象徴。

 

ボルテクス界のマネカタも同じであり、指導者に未来を丸投げしながら破滅する末路となる。

 

エリートや指導者がどのような思惑で動いているのか誰も関心を持たない、だから騙される。

 

根拠のないバイアスに流される人間や人のマネカタは御上を信じながら破滅に導かれるのだ。

 

「アリナはね…ヒューマンなんて大嫌い!飢えたビーストの方がよほど生きるパワーがある!」

 

「だから強者に全てを食べさせてしまうの!?思い出して…貴女にも大切な人がいるんだよ!」

 

「御園かりんもイートされる立場になるならそれまでの女だカラ!弱肉強食が全てなワケ!!」

 

「弱肉強食だけで片付けられる程にまで価値がない存在なの…?御園かりんちゃんは!!?」

 

まどかの斬撃に弾かれたアリナが後退りながら立ち止まる。

 

彼女の言葉で自分を慕ってくれた後輩との思い出が生まれていき、目に涙が溜まっていく。

 

「しょうがないカラ…御園かりんは自分のロードを進んだ…アリナもマイウェイを歩む!!」

 

槍を回転させながら刺突の構えを行った時、気配を消していた悪魔ほむらが動く。

 

「アァァァァァァァーーーーッッ!!?」

 

背後から振り下ろされた斬撃によって再び右腕が切断されたことでアリナが悲鳴を上げる。

 

倒れ込んで転がる彼女は纏う仮面と槍を落としてしまい、蛇の背は大量の血が染みついていく。

 

「貴女も魔法少女だった女でしょ!?孤独な人生を支えてくれた人が誰かを思い出しなさい!」

 

大量の血を撒き散らしながらも起き上がるアリナに目掛けてトドメの斬撃を放とうとする。

 

その時、悪魔ほむらの背中に冷たい感触が走っていく。

 

(この女……何なの!!?)

 

彼女に恐怖を植え付ける程の迫力を感じさせてくる存在とはアリナであってアリナじゃない。

 

「絆だの何だの…弱い連中はいつだって…他人に寄生しないと生きられない惰弱な者よ!!」

 

アリナの金髪ロングが白髪へと豹変し、髪の毛の先端が針金のように鋭く広がる。

 

切断された腕から一気に伸びたのは膨大な触手であり、肩を通じて首から顔までを侵食する。

 

「アガァァァァァーーーーッッ!!?」

 

伸び出た触手が一瞬で編み上げられ、醜く巨大な右腕となったことでほむらが掴み取られる。

 

巨人に掴まれて握り込まれる程の力で悪魔ほむらの全身の骨を砕き、内臓も破裂させてしまう。

 

「ほむらちゃぁぁぁぁーーーん!!?」

 

大量に吐血する親友の姿に悲鳴を上げるまどかに対して魔丞となった女が振り向く。

 

どす黒く侵食された頭部は口元までを覆い尽くし、まどかと同じ金色の目が彼女を鋭く射貫く。

 

「失う悲しみに囚われるから人は強くなれないの…絆という病気に侵された連中は弱者なの!」

 

「あ…貴女は誰なの…?アリナさんの雰囲気じゃないよ!?」

 

「私はアリナと一つになったヨスガの指導者…橘千晶。私の夢は死なない…この世界で果たす」

 

「貴女もアラディアと同じボルテクス界から現れた存在なの…?貴女の夢って何なの!?」

 

「私の夢は弱肉強食世界をさらに先鋭化させること…エリートさえも共食いさせて強くさせる」

 

「ヨスガの世界は狂ってるよ…そんな選民主義を掲げたら…独りぼっちになっちゃうよ!」

 

「尚紀君と同じ理屈を掲げたところで無駄よ。どうあっても世界は選民主義だと彼も気づいた」

 

地域主権、民族主権こそが選民主義であり、国家という家は誰が住んでいいのかを決めるもの。

 

そこには博愛や平等など関係なく、その家を切り盛りしてきた選民こそが柱として支えるもの。

 

極右民族のユダヤが掲げた選民主義もまた歴史や伝統を守る為に必要な価値観だと言ってくる。

 

「誰かに依存するのは外国に依存するのと同じ。その末路は他人に支配されて搾取されるだけ」

 

堕落仲間に依存し、遊び惚けながら一つしかない命の時間を他人に搾取されて人生を棒に振る。

 

そんな在り方を千晶とアリナは呪い続け、独立した力の国を望むヨスガを掲げた者達だ。

 

「尚紀さんも民族主権の大切さを教えてくれた…ヨスガにもこの世の正しさがあるんだね…」

 

「その通り…私は他人に依存しない力の国を築きたい。兵糧攻めされても落ちない城が欲しい」

 

「自給自足の完成…それが真の力だというのは認めるよ…だけどそれだって人々の力がいる!」

 

「王の臣下はそれ程多くはいらない…真の強者で満たされた美しい世界の邪魔をするなら……」

 

――貴女もかつての人修羅と同じように、殺してあげるわ!!

 

瀕死のほむらを投げ捨てた千晶が巨大な右腕を振り上げながらアイアンクロウを放とうとする。

 

弾かれるようにして飛び出したまどかも薔薇の光剣を両手持ちで構えながら突撃する。

 

鈍化した世界。

 

振り下ろされる触手の鉤爪を左切り上げで切断し、刃を返して逆袈裟斬りを放つ。

 

「ガッ……ッッ!!!」

 

千晶でありアリナの体は真っ二つに切断され、地面を構成していた大蛇の体まで切断する。

 

「グギャァァァァァーーーーッッ!!!」

 

主と共に殺される末路を遂げた大蛇の巨体が砕け散り、膨大なMAGとなって空を昇る。

 

地上に落ちていくアリナの上半身もまた砕けていくのだが、どこかホッとした顔をしている。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()…そうでしょ…千晶……?」

 

――何かを求めるなら…代償を…支払う…。

 

――それが支払える…存在こそが…本物の…ストロングマン…だ…カ…ラ……。

 

アリナの体も砕け散り、大蛇のMAGと共に天に昇っていく。

 

天の女主人であるイナンナとして生きたアリナが求めた力の道も潰える事になるのであった。

 




やはり決めるところでは決めちゃえるのが鹿目まどかちゃんの強さなのやもしれませんな。
アリナもいいキャラだったんですが、最後はやはり討ち死にですな。
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