人修羅×まどマギ まどマギにメガテン足して世界再構築   作:チャーシュー麺愉悦部

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387話 CHAOSの最終決戦

夜が明ける頃、アメリカ革命戦争も終わりを告げる。

 

互いの陣営が大きな代償を支払う地獄となったが、勝者となったのは革命軍側である。

 

ワシントンの主要施設には革命を示す赤旗が風で揺れ動き、革命戦士達の歓声が上がっていく。

 

We did it! (俺達はやった!)We got our freedom back!(自由を取り戻せた!)

 

We embodied the spirit of the Statue of Liberty!(我々は自由の女神の精神を体現した!)

 

Blessed be the new Statue of Liberty!(新たな自由の女神に祝福あれ!)

 

Blessed be the Gods who have done justice!(正義を成した神々に祝福あれ!)

 

Blessed be the sun god who brings us freedom!(我らに自由をもたらす太陽神に祝福あれ!)

 

ホワイトハウスの前にある芝生広場の前ではまどかやオーディン達を囲む者達が歓声を上げる。

 

アメリカを救ってくれた円環の女神こそ自由の女神の化身なのだと歓喜してくれるのだろう。

 

エインヘリヤルとなった戦士達や円環の魔法少女達も鳴り止まぬ拍手を送り続けていく。

 

Our victory will lead to the liberation of Europe!(我らの勝利は欧州開放にも繋がる!)Well done everyone!(皆の者よくやった!)

 

オーディンがグングニルを掲げながら皆の勝利を激励するが、まどかは顔を俯けたまま。

 

そんな彼女の元に近寄って来るのはイズンとほむらであり、顔を上げたまどかが走ってくる。

 

「ほむらちゃん!良かった…無事だったんだね…本当に心配したんだから!」

 

「足を引っ張ってごめんなさい…死ぬしかないと諦めたけど…彼女が私を助けてくれたのよ」

 

「瀕死の重傷状態で高高度から大地に叩きつけられる前に私が間に合って良かったわ」

 

「あ、貴女は……?」

 

「私はアース神族のイズンだけど…この体は魔法少女がくれたもの。だから元魔法少女かな?」

 

「貴女も魔法少女だった人なんですね?ほむらちゃんを助けてくれて…本当に感謝してます!」

 

「いいのいいの♪私の中にいる牧野郁美の意思だと思ってくれていいからね♡」

 

まどか達の元に近寄って来るオーディンは戦後処理があるので失礼すると言ってくる。

 

まどかは円環の魔法少女の中で政治を取り扱った者達を用意し、オーディンの補佐を任せる。

 

彼女達は連戦による消耗を癒すためにホワイトハウスにあるゲストルームで休むようだ。

 

人間の姿に擬態し直したまどか達はベットに入ると消耗のせいで泥のように眠ってしまう。

 

次の日、占拠されたホワイトハウス内で軽い食事を済ませた彼女達は執務室に案内される。

 

大統領執務室に座っていたのは老人に擬態したオーディンであり、眼帯姿で正装している。

 

ソファーに座れと促されたまどか達は座り込み、オーディンの話に耳を傾けるようだ。

 

「イギリスの首都はゼウスの軍勢が制圧したのね?あれだけの軍事勢力よ…当然の結果ね」

 

「残す牙城は欧州とイスラエルのみ…欧州こそが黒の貴族が侵略したユダヤ帝国の中核なんだ」

 

「尚紀さんはそこで戦ってるんですね?欧米がユダヤ人に支配されてたなんて知らなかった…」

 

「無理もない…これはユダヤ共に隠蔽されてきた歴史だ。世界中の殆どの者が知らない話だな」

 

長くなる話であるが、まどかが聞きたいと言ってきたのでオーディンは語ってくれる。

 

「真のユダヤ史とは太古のカナン族より始まり、黒の貴族の支配によって築き上げられてきた」

 

ユダヤ史とはセムの白人に敵対する歴史であり、人間至上主義(ヒューマニズム)という悪魔価値観を世界に敷く。

 

その支配を完成させる原動力こそが金融・経済・政治であり、王侯貴族を支配する事だと語る。

 

「ベネチアの黒い貴族は英国支配層に食い込み、欧州の王侯貴族の血脈まで乗っ取ったのだ」

 

サヴォイ家9代目当主の姪が英国国王ヘンリー三世と結婚したのを機に黒の貴族も血脈を送る。

 

英国貴族のリンカーン伯と結婚させたり、大司教に任命されたりもする。

 

20世紀に続く欧州の王朝を築いた血脈の中には黒の貴族達の血筋の者達で溢れ返っていく。

 

「ハノーヴァー家の英国王が誕生した時、英国最初のフリーメイソンも築き上げられたものだ」

 

「イギリスはフリーメイソンやイルミナティの本拠地のような存在だったわね…」

 

1376年のロンドンで最初のロッジが設立された時にはこんな詩が民衆達に流行ったという。

 

――歴史が太古のおとぎ話でないとしたら、フリーメイソンはバベルの塔から来たそうな。

 

「バベルの塔を築いた二ムロデを崇拝する者となり、バアルやカイン崇拝を行う団体となった」

 

「イギリスでもバアル崇拝であるウィッカーマン儀式が行われて…子供が生贄になったのね…」

 

「酷過ぎるよ…そんな残酷な儀式が…わたし達も楽しんだハロウィンの正体だったなんて…」

 

この組織は1472年にヘンリー八世から紋章証書を受け、1677年には法人化される。

 

1717年には思弁的メイソンに引き継がれ、他の専門職メンバーも加わるようになる。

 

やがては王室の一員、またはバッキンガム宮殿と深い関りがある人がグランドマスターになる。

 

カンバーランド公爵、プリンス・オヴ・ウェールズ、サセックス公爵も名を連ねていく。

 

これが21世紀まで続く伝統化していき、英国ロッジがフリーメイソンの総本山となるのだ。

 

「イタリアと同じくイギリスはバアル崇拝の一大拠点となり、欧州にまで毒牙を広げていった」

 

サセックス公爵は国王ジョージ二世の息子であり、プロシア王の娘ルイザと結婚する。

 

しかし後に愛人との間に二人の子をもうけ、エステ家の家名はその二人に引き継がれていく。

 

ヴィクトリア女王も誇りとしてやまなかったエステ家はアッツォ二世に始まる家系。

 

エステ家のアルフォンソ一世はルクレツィア・ボルジアと結婚し、その血が英国を支配する。

 

エステ家の血が英国の支配家系に流れ込み、()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「英国王室こそ黒い貴族の最終的勝利とカナン人の支配欲の最たる象徴になっていったものだ」

 

「そいつらに逆らった存在はいなかったというの…?」

 

「いたぞ。彼らの最大の敵はホーエンシュタウフェン家であり、彼らはイタリアでも争った」

 

ドイツのホーエンシュタウフェン家は黒の貴族と戦争を起こすが商業的な力を持たない貴族。

 

気高いドイツ騎士軍団であろうが資金力にものを言わせる黒の貴族に勝てるはずがないのだ。

 

ホーエンシュタウフェン家と黒の貴族は第二次世界大戦でも争いを起こす原因となっていく。

 

彼らは皇帝派となり強力な中央支配と帝国権力を支持し、ドイツの第三帝国となっていく。

 

黒の貴族である英国側は()()()()()()()()()()()、この人権が後の黒の貴族の武器となる。

 

「結果は歴史で習った通りドイツの敗北となり、黒の貴族の敵対国は略奪の限りを尽くされた」

 

「人権を武器とする…まさに共産主義ね。博愛や平等で他国を乗っ取る植民地化を行ったわ…」

 

「その通り…分散主義は間接支配であり、日本を支配した手口と同じ代理支配をやらせてきた」

 

「共産主義って未だによく分からないけど…一体誰が生み出した政治思想だったんですか…?」

 

「共産主義…これを語るにはプラトンを知らねばならん。プラトンの発明から着眼を得たのだ」

 

プラトンは哲学者だけでなく政治家でもあり、ペルシャ帝国に反対する集団の指導者である。

 

地中海地方における政治支配権をギリシャに取り戻すため、エリート層の育成に着手していく。

 

今日に至るフリーメイソンも似たプログラムを行い、背後で影響力を行使する者となるだろう。

 

隠された計画に従事する秘密エリート集団を組織し、その計画原理は彼らだけしか知らせない。

 

プラトンもピタゴラスも神秘思想に好まれる魂の転生を信じた者達。

 

プラトンは人間至上主義発展に寄与した重要人物であり、バアル崇拝を哲学に変えた者。

 

邪神崇拝に基づく教義から哲学の一派に変容させ、エリート主義を生みだす祖となっていく。

 

「エリート主義こそ秘密主義…知る者と知らない者とで差が生まれ、人の奴隷化を正当化する」

 

グノースティック(知っている者)とみなす価値観が様々な神秘主義を生み、エジプトのトートに着目していく。

 

安名メルに宿ったトート神は知恵と学問の神であり、本来の名の意味は三倍武双するである。

 

他より多くの情報を持つ者はより大きな保護を受ける事を意味し、神秘主義の根拠となるのだ。

 

宇宙の生気についての理論は魔術基礎であり、錬金術は優秀さにおいて神秘主義と同等とする。

 

これにより欧州では様々な黒魔術や錬金術が行使され、神秘主義という弁証法となっていく。

 

そのためユダヤカバラが大きな力となり、唯一神がモーセに与えた掟の秘密を解く事を目指す。

 

これら神秘主義が秘教カルトの入口となっていき、バアル崇拝という哲学に導くのだと語る。

 

「スペインから追放されたユダヤ人が欧州全体にカバラを伝える伝道師となっていったのだ…」

 

その教義がルネサンス期の主流哲学、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

新プラトン主義は様々な派生を生み、宗教改革、啓蒙主義運動、革命時代を導き出す元になる。

 

カバラのゾハル書はこの世の悪魔は人と悪魔との間でセックスによって交わる事を教義とする。

 

リリスのような悪魔もそのように誕生したとし、カナン族伝統のセックス教義を力説している。

 

それ故に悪魔的儀式では常にセックスが重視され、新プラトン学派は酒池肉林を求めていく。

 

学派の生徒が嫌悪された原因とは、()()()()()()()()()()()()()()()()()()と語っていくのだ。

 

「私が求めた同性愛の正体とは…新プラトン主義に根差したユダヤカバラの内容だったのね…」

 

「ほむらちゃんはカバラを崇拝する性的倒錯者に唆されたから狂ってしまったんだね…」

 

「魔法少女が求めたフェミニズムもまた共産主義思想…共産主義を生んだ源流を教えてやろう」

 

新プラトン主義は神秘主義の著作をカバラ思想を背景に纏めたグノーシス主義と結びつける。

 

内なる光明(イルミネイト)を求めるグノーシス主義こそがドイツでイルミナティを発生させた原因なのだ。

 

このイルミナティ学派を利用したのがルネサンス期に最高権力を持った黒の貴族の長である。

 

イタリアのメディチ家のコジモは銀行家としての権力でフィレンツェにアカデミアを設立する。

 

プラトニカと呼ばれたアカデミアに資金を提供し、新プラトン主義を急速に発展させていく。

 

「ルネサンスの人間主義がユートピア思想となり…共産主義の基盤を生んでいったのだ」

 

新プラトン主義はルネサンス人間至上主義と呼ばれたり、クリスチャン・カバラとなっていく。

 

これらは唯一神への信仰を排斥し、不完全な世界を生み出した唯一神への復讐となってしまう。

 

この()()()()が不完全な世界を完全な世界に作り替える教義となり、ユートピア思想を生む。

 

国の完全さは独裁専制によって支えられなければならないとする()()()()()()()()を望むのだ。

 

「このような完璧な独裁体制が実現されたら…他の国々は消滅させられていくしかないのだ…」

 

「だけどソ連型社会主義である共産主義は失敗に終わったわ…グノーシス主義は負けたのよ」

 

「その通りだ。それこそが唯一神を含めた我々神々への復讐が如何に愚かかを証明している」

 

グノーシス主義である共産主義は世界を生んだ唯一神や神々への憎しみを原動力とする。

 

だからこそソ連においては6600万人もの人々が殺害され、中国でも大虐殺が起きてしまう。

 

人間至上主義は良心の呵責など一切感じない憎悪であり、理想に従わない人間を排除する我儘。

 

故にフェミニストは排他主義を極めており、他の左翼団体も同じようにおぞましい奴らばかり。

 

新プラトン主義の派生の一つとなってしまった魔法少女至上主義もまた同じ末路となっていく。

 

共産主義が他国を破壊する原因とはグノーシス主義であり、他民族の歴史と伝統を滅ぼす。

 

イルミナティの教義は共産党に継がれたという話の根拠はこのような歴史根拠だったのだろう。

 

「新プラトン主義という名の()()()()()()()()()()()だったように…水と油でしかなかった」

 

「間違った結婚は…一世代で種を消滅させると聖書の中でも記述があるわ。正しかったわね…」

 

「尚紀さんが戦おうとしている存在は余りにも大き過ぎるよ…彼が心配で堪らない…」

 

「人修羅は世界革命の為に生み出されたスイスを制圧する為に戦い続けている…任せてやれ」

 

ホワイトハウスの執務室から出て行く者達を見送ったオーディンは席を立ち上がり窓を見る。

 

片目を瞑った彼が望むのは人修羅の勝利であり、神々がグノーシス主義を倒す未来であった。

 

────────────────────────────────

 

<<ウワァァァァァァァーーーーッッ!!!>>

 

スイスに進軍を続ける多神教連合の悪魔の軍勢が次々と業火で焼き尽くされていく。

 

悪魔崇拝組織にとっては最後の砦ともいえるスイスを守護するのはシェルバーン家の当主だ。

 

「やらせはせん!やらせはせんぞぉ!ネビロスと我の夢を奪った貴様らは地獄すら生ぬるい!」

 

シェルバーン家の当主となった存在こそ赤き竜人となった者であり、魔王ベリアルと化す。

 

ベリアルの力は凄まじい規模であり、魔王の中ではベルゼブブと並ぶ強者なのだろう。

 

そのため度重なる進軍を続けても焼き払われるのみであり、多神教連合は攻めあぐねている。

 

「なんという化け物だ…っ!!」

 

「これが魔王ベリアルの力なのか……か、勝てない……ッッ!!」

 

全長300m規模の巨大な竜人に守られたスイスの守りは堅牢であり、他の魔王も戦っている。

 

「オーストリアを諦めてもスイスは譲れん!来るがいい反逆者共!ベリアル殿と我が相手だ!」

 

ベリアルと共に戦うのは七つの大罪の一つを司るマンモンであり、二つの鳥の頭が攻撃を放つ。

 

赤い鳥頭の魔王が放つウインドブレスが進軍する機甲師団を次々と薙ぎ払っていく。

 

残された堕天使達も二体の魔王に続くようにして多神教連合の軍勢に戦いを挑んでいく。

 

その光景を見つめているのはクリシュナであり、忌々しい表情をしている。

 

「チッ…厄介な魔王め。欧州各国を制圧したのはいいが駐留軍として残す戦力は裂けない…」

 

「僅かな手勢を用意し、攻め込んで落とせる程…堕天使勢力の守りは薄くないようですわ…」

 

「スイスこそ黒の貴族共の富を蓄える大金庫として生まれた国…容易い存在ではないね…」

 

ヒトラーですら攻め込む事が出来なかった永世中立国スイスの正体をクリシュナは語っていく。

 

「フランス革命とは英国の敵の排除であり、革命こそ世界支配の礎であり、スイスが鍵だった」

 

フランス革命のさらなる進展は人類支配の新技法であり、社会科学が世界に解き放たれる。

 

社会福祉という完璧な社会主義制度は多くの国家による押し付け社会主義の為の道具。

 

これを敷く恐怖政治はカナン族による異教徒虐殺に大きく貢献したがナポレオンに阻止される。

 

ナポレオンを憎んだユダヤは彼の失脚後も食事に少量の毒を盛り続けて毒殺したというのだ。

 

根拠は彼の死後150年後の検視によって遺髪が検査され、砒素が蓄積されていた発見だろう。

 

犯行はロスチャイルド家腹心の手先であり、この陰謀者はナポレオンの孫まで殺害したのだ。

 

「フランス革命は世界革命の為の略奪計画。()()()()()()()()()()()()()()()()()だった…」

 

ナポレオン戦争を利用して莫大な富を得たロスチャイルド家はウィーン会議を開いていく。

 

「ウィーン会議は征服者の会議。目的は()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()内容だ」

 

英国外相や英国全権大使の主導で行われたウィーン会議は英国ユダヤの独裁劇。

 

英国は勝者側だったから議会出席者の王侯貴族から英国の世界制海権を文句なしに承認される。

 

そしてスイスの永世中立国化まで認められ、スイスは世界革命を計画する地と成り果てる。

 

革命によって略奪された戦利品が持ち主に奪還される心配がない()()()()()()()()()()のだ。

 

「永世中立国など革命犯罪者が略奪品を奪還されないよう生んだもの…()()()()()()()()()()

 

「金融国のスイスとは犯罪者の総本山…だからスイスは独裁者の金庫番を果たしてきましたね」

 

「フランス革命などイギリスの敵を二度と歯向かえない程に痛めつける犯罪でしかなかった…」

 

「堕天使勢力にとってこの上なく悪魔の国…だからこそスイスを最後の砦にしたんでしょう…」

 

<<ならばこそ、略奪品を元の持ち主となるだろう国々に返還する為に俺達が略奪するのさ>>

 

スイス国境沿いに用意された多神教連合の本陣にいるクリシュナとラクシュミが空を見上げる。

 

空から現れたのはフランスを制圧したベルゼブブと日本を制圧した人修羅だったようだ。

 

「遅い到着だね?それよりいいのか?聞いた話だと君も犯罪国に預金してるそうじゃないか?」

 

「プライベートバンクを利用してきたがスイスを知る努力をした時…俺は見切りをつけたんだ」

 

尚紀やニコラスが預けていた証券はゴールドに両替して神浜の屋敷の地下大金庫にあるという。

 

「抜け目がない判断だね。なら残っているのは犯罪者共の財産だけというわけか」

 

「容赦なく殲滅し、スイスを略奪したいところなんですが…戦況は芳しくないのです…」

 

戦況を説明された彼らの表情も曇っていき、遠くで暴れるベリアル達の姿に顔を向けていく。

 

「ベリアルの奴は厄介だ…炎を無効化出来ない我では奴を倒しきる事は出来んやもしれん…」

 

「それに別の魔王の力も侮れないな…奴が七つの大罪の一つに数えられるマンモンか…」

 

「それだけが脅威ではない」

 

クリシュナ達と合流していたアスラ王やニュクス、それにリズもやってくる。

 

彼らの説明で聞かされた新手の悪魔の脅威に対してベルゼブブが驚愕してしまう。

 

「モロクの妻であるアナトまでこの世界に召喚されていたとはな…彼女も厄介な魔王だぞ…」

 

「知っている女悪魔なのか、ベルゼブブ?」

 

「我の愛する妻と言いたいところだが彼女は我など眼中にない…我は汚物扱いをされてきた…」

 

「彼女の力は凄まじいものよ…スカディの力を解放しても勝てなかったぐらいだし…」

 

「攻めきれないと判断した私はリズと共に戦線を後退させるしか選択肢が無かった程なの…」

 

「その判断のお陰で俺の部下の命が残されている。感謝するぞ、ニュクス」

 

作戦会議が行われていく中、人修羅達の表情に戦慄が走る。

 

イスラエルの方角から超高速で接近する魔王の魔力に感づいた者達が南東の空を見上げるのだ。

 

「現れやがったな……モロク!!」

 

戦場の炎で赤く照らされた空で停止した神こそ、ルシファーに代わり大魔王を務めるバアル神。

 

黄金の兜を下界に向けた時、兜の内側の素顔が怒りの形相となりながら念話で叫んでくる。

 

<堕天使達よ!!最後の一兵となるまで戦い抜くがいい!我もまた貴様らと共に戦おう!!>

 

大魔王の到着によってCHAOS勢力の悪魔達が歓声を上げていく。

 

多神教連合とアスラ神族によって士気を根こそぎ落とされてきた悪魔達が奮い立つ。

 

「流石はアタシの旦那様だ!劣勢になっても威風堂々としてるじゃないかぁ!」

 

男勝りな口調で旦那であり兄妹でもある存在を歓迎する者こそイシュタルをルーツとする悪魔。

 

バアル崇拝と同じように古代カナン人から崇拝されてきた夫婦神の片割れである。

 

【アナト】

 

フェニキアの死と再生を司る女神であり、豊饒神バアルの妻であり妹。

 

アスタルテ(アシュトレト)と同一視されたり姉妹とも解釈される姦淫儀式の邪神である。

 

牛の角を象徴として頭部にあしらわれた図案が残り、恐ろしい呪術を得意とする存在。

 

父である天界の神エルでさえも彼女の力を恐れ、冥界神モトを打ち倒した邪神でもある。

 

聖書においてはバアルと共に生贄儀式を司る邪神として描かれた極めて邪悪な悪魔であった。

 

「待たせたな、我が妻よ。カナンのイスラエルに攻撃を仕掛けてきたモトは始末しておいたぞ」

 

「アタシが始末しに行く必要もなかったなら…アンタは封印してた神器を使ったようだねぇ?」

 

「その通りだ。今の我はナホビノとして完成しており、神器も揃った完全体なのだ」

 

「フッ…やっと来てくれたか、バアル殿。その威光はまるで至高天の玉座にいた頃のようだ…」

 

「おお!我らの新たな大魔王閣下の御到着だ!皆の者!ここからが正念場だ!押し返せぇ!!」

 

<<ウォォォォォォォォォォォーーーーッッ!!!>>

 

一気に攻勢に出てきたため、多神教連合の悪魔達やアスラ神族の悪魔達が撃退させられていく。

 

バアルの出現によって重い腰を上げたクリシュナがヴィシュヌ化し、妻もラクシュミ化する。

 

「クリシュナ…いや、ヴィシュヌ。ここでケリをつけるぞ…これ以上兵力を裂く余裕は無い」

 

「奇遇だね、ボクもそのつもりさ。ボクと妻はベリアルの相手をしてやろうか」

 

「我がアナトを屠ってやろう。アスラの名にかけて…姦淫の象徴を許す事など出来ないからな」

 

「ニュクス、リズ、お前達はマンモンを狙え。ベルゼブブ、俺達はバアルを仕留めるぞ」

 

「その言葉が聞きたかったぞ!ついに憎きモロクを仕留める日がきた…これで我がバアルだ!」

 

広域念話を送ったヴィシュヌの撤退命令を受け取った反乱軍や革命悪魔達が撤退を始めていく。

 

彼らはスイス制圧に必要な人材であり、これ以上の消耗は許されないのだろう。

 

大将同士の一騎打ちによって世界革命に終止符を打つ覚悟を決めた者達が次々と悪魔化する。

 

「アラモを忘れるな!!俺達の戦いこそが金融支配からの独立を勝ち取る道となるだろう!!」

 

アラモを忘れるなという格言はテキサス独立戦争の時に叫ばれたスローガンである。

 

死を懸けてでも自由と独立を掴み取るため戦死した愛国者達の言葉を人修羅は引用するのだ。

 

天使と悪魔の六枚翼を広げた人修羅に続くようにして巨大化していくベルゼブブとアスラ王。

 

ニュクスとリズも悪魔化し、持てる力の全てをこの決戦に注ぎ込む戦いを示すだろう。

 

「行くぞォォォォーーーーッッ!!!」

 

本陣から出陣した反乱軍の大将達が次々と敵大将の首を狙うために戦いを仕掛けていく。

 

「来るがいいヴィシュヌ!!貴様を討ち取れば多神教連合は纏まらなくなるだろうな!!」

 

オールバックにした黒髪と二本角が生えた鉢金めいた頭防具を纏う竜人が雄たけびを上げる。

 

超巨大な三叉槍を構えながら背中の竜翼を広げたベリアルが前進しながら襲い掛かってくる。

 

「「フンッッ!!!」」

 

ベリアルの槍とヴィシュヌの棍棒が激しくぶつかり合い、同時に放つのはデスバウンド。

 

300mサイズのベリアルに対して3mサイズのヴィシュヌであるが体格差をものともしない。

 

これこそデーヴァの主神の力であり、その妻ラクシュミの支えがあれば鬼に金棒の戦力だろう。

 

「アタシの相手はアンタかい、でくの坊?その赤い巨体を血で染め上げたら愉快だろうねぇ?」

 

黒い蛇のようなラインが入った黄色いボディスーツを纏い、頭部は捩じれた二本角。

 

逆手に持つ短剣をクルクル回しているアナトが不気味な笑みを浮かべながら挑発してくる。

 

迫りくるアスラ王に対してアナトは宙に浮かび上がりながら両手を持ち上げていく。

 

短剣から迸るのはバアルと同じ力である雷撃であり、左手からは彼女の呪殺の闇が噴き上がる。

 

「来るがいい…売女の邪神。貴様のせいで数多の子供達が生贄となった…地獄すら生ぬるい!」

 

「アッハハハハ!生贄はアタシのせいじゃないねぇ?アタシの庇護が欲しい狂信者(カナン族)のせいさ!」

 

天魔撃砕を放つ構えを行うが、先に放たれたのはナルカミの一撃。

 

短剣から迸る雷がアスラ王の体を焼いていくが鬼神そのものとなったアスラは歩みを止めない。

 

背中の右側に生えた二本腕が正拳突きを放つと眩い衝撃波が放たれる。

 

ザオウゴンゲンが放った天魔撃砕クラスの広域破壊が起きていくがアナトの姿が見えない。

 

「アタシの呪いで殺されちまいなぁ!!」

 

瞬間移動で攻撃を避けたアナトは宙に浮きながら左手の呪殺魔法を行使する。

 

放たれた一撃とはメフィストが行使したワルプルギスの夜であり、極大の呪殺弾が迫りくる。

 

迎え撃つアスラ王は背中の左側に生えた二本腕を天に掲げながら破魔の魔法を行使。

 

赤く燃え上がる空から落ちてきた光の奔流とは『落光』であり、光の雨が呪殺弾を相殺する。

 

光と闇を司る存在達が死闘を繰り広げる中、スカディ化したリズとニュクスも果敢に攻め込む。

 

迎え撃つのはマンモンであるが、リズに対しては別の堕天使も攻撃を仕掛けてくる。

 

「チッ!?何者なのよ!!」

 

上空から放たれたアギダインを避けたリズが見上げればバアルの補佐官を務める堕天使がいる。

 

「裏切り者共め…貴様らのせいだ…貴様らのせいで…迫りくる天使軍に滅ぼされてしまう!!」

 

複数の頭部をもつダンタリアン達の顔は憤怒で歪む者もいれば恐怖で顔が引きつる者もいる。

 

瓦解した状態で迫りくるハルマゲドンに挑むしかない悪魔はやぶれかぶれ状態で仕掛けてくる。

 

「お前の相手は私よ!マンモン!!」

 

「来るがいい…夜の女神め!!貴様の裏切りにもっと早く気が付いていれば良かったぞぉ!!」

 

二対の鳥頭をした巨人が口を開けてウインドブレスを放ってくる。

 

ニュクスも両手を広げながら全身から絶対零度の豪風を生み出し、激しくぶつかり合うのだ。

 

そしてCHAOS勢力のトップを飾る者達は遥か上空で激戦を繰り広げていくだろう。

 

<<ウォォォォォォォォォォォーーーーッッ!!!>>

 

無数の死蠅を操るベルゼブブと三体の悪魔の力を行使する人修羅がバアルに仕掛ける。

 

その戦いの規模は地上の戦場など比べ物にならない神々の頂上決戦となるしかない。

 

世界の影で数千年間敵対民族を殺し続けた象徴概念との最後の決戦が幕を開けるのであった。

 




残す話数は10話を切ったので来月には拙作を完結させられそうですな。
完結させるのに6年もかかったのか…?(汗)
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