人修羅×まどマギ まどマギにメガテン足して世界再構築   作:チャーシュー麺愉悦部

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390話 オリエントが生んだ太陽神

マルドゥク神殿をモデルにしたバベルの塔はイラクのバビロンにあったとされる。

 

バベルは人々が天まで届く塔を建設しようとした際に神によって阻止され天罰を与えられる。

 

人間の傲慢さによって生み出されたバベルこそ二ムロデの野望であり、世界統一思想の形。

 

二ムロデの世界征服は黒の貴族とフリーメイソンが継ぎ、金融と政治を用いて実現を狙う。

 

しかしその野望すら唯一神が送り込んだ天使軍や神々の力によって阻止される事になるだろう。

 

「うっ……うぅ……」

 

「ぐっ……うぅ……」

 

バアルの異界を破壊してしまった存在達は地上で倒れており、二人ともズタボロの姿である。

 

巨大な悪魔の姿を形作る余裕もないのか、人間姿の状態で砂風を浴びている。

 

彼らが倒れているのはイラクのバグダードの南85km、バービル県のヒッラであるようだ。

 

ここはバビロニア帝国の首都であるバビロンの街があったとされる地域。

 

古代メソポタミアで勃興した帝国の首都があったとされる場所で倒れた者達が顔を上げる。

 

「よぉ……やっと汚い顔を晒しやがったか……」

 

バアルが纏っていた黄金の牛兜は破壊されたのか纏っていない。

 

銀髪の長髪を砂風でなびかせるバアルは中東人の浅黒い肌をした顔を上げながら睨んでくる。

 

「このバアルに土を舐めさせ…我が象徴の兜まで破壊した大罪…絶対に許さんぞ…」

 

俯けに倒れていた者達が力を振り絞りながら体を支え、どうにか起き上がろうとしていく。

 

彼らに残された魔力も先程の死闘で殆どを使い切ったため、互いに消耗が激しいようだ。

 

ふらつきながらも起き上がったバアルの手にはヤグルシとアイムールは持たれていない。

 

神器を振るうには膨大な魔力を消費するため、行使する余力が残っていない状態なのだろう。

 

それは人修羅も同じであり、膨大な魔力を注ぎ込んで振るう二対の剣を行使する余裕はない。

 

互いが素手の状態であるがその目に宿る闘志は衰えておらず、互いが決着を望んでいる。

 

「これでもう…天使軍を止める事は出来ん。我らはハルマゲドンで成す術無く滅ぶだろう…」

 

「その因果を生み出したのは黒の貴族とフリーメイソンを支配してきたカナン族共だ…」

 

「我々のせいだけだと思うなら大間違いだぞ…我らの誘惑で堕落したのは異教徒共も同じだ…」

 

「腐ったリンゴが混ざれば全てのリンゴがダメになる…だから畑そのものを滅ぼすか…」

 

「奴らに慈悲を期待するなど無駄なこと…我の手によって麦は滅んだ…残るのは毒麦だけだ」

 

「麦ってのはハルマゲドンの際に選ばれる神の選民のことか…?だとしたら残されたのは…」

 

「唯一神が焼き滅ぼすと決めた毒麦となる堕落人間共だけというわけだ」

 

マタイによる福音書13章にはキリストが語った例え話がある。

 

――天国は良い種を自分の畑に撒いておいた人のようなものである。

 

――人々が眠っている間に敵がきて、麦の中に毒麦を撒いて立ち去った。

 

――芽がはえ出て実を結ぶと同時に毒麦もあらわれてきた。

 

「畑で働く僕共が毒麦と共に麦まで抜き取ろうとしたように…地球はイレースされるだろう」

 

「そうはさせない…貴様を倒し、残りの残存部隊を一掃した後…俺が天使の軍勢を迎え撃つ」

 

「そのセリフは我に勝った後で言うがいい。貴様は絶対にこの場から生き残ることはない!」

 

「やってみな…蛇はしぶといんだぜ?なんせ……不老不死の象徴だからな!!」

 

互いが拳法の構えを行いながら徒手空拳の死闘を行う時がくる。

 

バビロンの大淫婦に支配された獣が戦う地こそ、カナン族ユダヤの邪悪が練り上げられた地。

 

そこに屹立する敵こそカナン族の主神であるバアル神であり、相手にとって不足なし。

 

「人なるアスラと言えるだろう人修羅よ…カナンの帝釈天でもあるバアルが相手だ!!」

 

「アスラと帝釈天は殺し合う定めだ…俺もまた人なるアスラとして…帝釈天と戦おう!!」

 

構え合った両者の体から噴き上がる命の炎によって曇天の夜空に巨大な渦が生み出される。

 

巨大竜巻の数々がバビロンの地を巻き上げ、轟雷が絶えず地上を穿つ程の天変地異を生み出す。

 

螺旋を描く力こそセックスにおける体位を生み出す男の股間に備わる螺旋力。

 

互いが男神として螺旋を描く神々であり、世界に死と再生をもたらす天空の太陽達。

 

世界最初の文明であるバビロンの地がアルファであるのなら、今の彼らこそがオメガ。

 

ボルテクス界で人修羅として生きた嘉嶋尚紀と、牛頭天王として生きたバアルとの因縁関係だ。

 

「行くぞ……バアルゥゥゥゥーーーーッッ!!!」

 

「殺してやる……人修羅ァァァァーーーーッッ!!!」

 

互いが猛ダッシュしながら同時に跳躍し、ドラゴンキックを放つ。

 

互いの蹴り足がぶつかり合い、眩い雷光と共に極大の衝撃波を生み出す。

 

同時に弾かれた者達が一回転しながら地面に着地し、再び飛び込んでいく。

 

「「ウォォォォォォォォォォォーーーーーーーッッ!!!!」」

 

互いの突き蹴りを互いがガードしたり受け流したり、目まぐるしい攻防戦を繰り広げる。

 

170cmしかない小柄な人修羅に対して2メートルのバアルとでは体格差があり過ぎる。

 

それでも人修羅はバアルが繰り出すリーチの長い打撃に恐れなく踏み込みながら打撃を打つ。

 

傍から見ればスーパーヘビー級格闘家とライト級格闘家の死闘であり、人修羅が不利だろう。

 

「グフッ!!」

 

人修羅の右ストレートを側面に移動して避けたバアルが左肘打ちを右側頭部に打ち込む。

 

続けて右膝蹴りを狙うが人修羅の肘落としで弾かれ、続く回し蹴りにカウンターを放つ。

 

「ガハッ!?」

 

片手が地面につく程の低空後ろ回し蹴りがバアルの顎を蹴り上げ、堪らず後退ってしまう。

 

さらに追い打ちとして踏み込み蹴りを放ち、腹部に決まったバアルが押し出される。

 

チャンスとばかりに猛ダッシュを行いながら接近してジャンプ膝蹴りを放つ。

 

「ヌゥ!!!」

 

両腕を交差して膝蹴りを受け止めるがその一撃は重く、ガードごと巨体が蹴り上げられる。

 

互いが宙に浮き、バアルに目掛けて左右の回し蹴りを放ち、ガードした相手に月輪脚を狙う。

 

高速回転から放たれる回転踵落としに対してバアルは円環を描く程の回し蹴りを放つ。

 

「何だと!?」

 

真上から落ちてくる人修羅の踵落としを跳ね上げる程の威力を示したことで回転体勢が崩れる。

 

先に地面に着地したバアルが着地を行おうとする人修羅に目掛けて一気に踏み込む。

 

「ゴハッ!!!」

 

強烈な右アッパーを腹部に浴びた人修羅の体が浮き、すかさず左フックで顔を殴られる。

 

弾かれた先からは右回し蹴りが迫っており、胴体を殴られて弾かれた次は左蹴り上げが迫る。

 

「グアァァァァーーーッッ!!!」

 

顎を蹴り上げられた人修羅が跳ね上げられる中、跳躍したバアルの円月脚がクリーンヒット。

 

「メーの円環を描く存在は貴様だけではない!!」

 

右足の円環蹴りが決まった相手に追い打ちの左回し蹴りを打ち込み、地面に落とされる。

 

叩きつけられた人修羅だが背中を用いて体を回転させながら低空回し蹴りを放つ。

 

「チッ!!!」

 

蹴り足の向こう側にあったのは彼に蹴りを打ち込もうとしたバアルの足であり、弾き飛ばす。

 

回転の勢いを利用して跳ね起きた人修羅に飛び込んでくるバアルの猛攻に対して迎え撃つ。

 

互いの突き蹴りが交差してぶつかり合い、高速の打撃戦を踏み越えたのは人修羅の蹴り足。

 

相手の右回し蹴りにクロスカウンターを決める形で低空左回し蹴りを頭部に打ち込むのだ。

 

「イヤァァァァーーーッッ!!!」

 

雄叫びを上げた人修羅が踏み込み、キック13を放つ。

 

連続して蹴り込まれるバアルであるが、トドメを狙う旋風脚の蹴り足に右肘を打ち込む。

 

弾かれた人修羅に飛び込み、バアルも旋風脚を放つが人修羅も飛び上がって旋風脚を放つ。

 

「「ヌォォォォォォォォォーーーーッッ!!!」」

 

宙に浮かび上がった両者が高速で放ち続ける旋風脚の応酬によって巨大竜巻を生み出していく。

 

燃え上がる巨大ファイヤーストームと化した天変地異がバビロンの大地を焼きながら荒れ狂う。

 

「「セイッ!!!」」

 

鼓膜が破れる程の高い音と共に両者の蹴りがぶつかり合い、ファイヤーストームを消し飛ばす。

 

互いに弾かれる形で地面に着地した後、人修羅は両手を持ち上げながら破邪の光弾を放つ。

 

「オラオラオラオラオラオラオラァ!!!」

 

連続の光弾が無数に迫りくる中、歩くような移動を行うバアルの体が揺れる。

 

その一撃は凄まじいものであり、バアルの背後に見える山や都市が消滅する程の一撃である。

 

僅かな動きで光弾の隙間を超えるように歩き、直撃しそうな光弾に対しては右手を掲げる。

 

テトラカーンのバリアによって反射された一撃が人修羅の体に直撃して弾かれてしまう。

 

「もらったぁ!!!」

 

大地が爆ぜる程の踏み込みを行ったバアルが弾かれる人修羅の体に追いついてくる。

 

その顔を右手で掴みながら高速飛行するバアルが遺跡の残骸に目掛けて彼の頭をぶつけていく。

 

人修羅の頭を破城槌にしながら移動していくバアルであったが彼の両手がバアルの手首を掴む。

 

両足も腕に搦めて倒し込み、関節を決めようとするが小柄な彼の重さではビクともしない。

 

「へへっ……この暴れ牛が……好きにしろよ……」

 

そのまま持ち運ばれる人修羅は山に叩きつけられてしまい、山を砕く消滅光が生み出される。

 

メギドラオンの爆風が周りを眩しく照らす中、爆心地の中で倒れ込む者にこう告げてくるのだ。

 

「人は分かり易いものにしか意識を向けられない偏見生物。犯罪者の区別もつかん連中なのだ」

 

人修羅が行った破壊やバアルの破壊も犠牲者達にとってはどれも同じ被害でしかない。

 

だからこそどちらかが勝者となれば全責任が片方に集中され、全悪行を擦り付けられるだろう。

 

「テロリストの蛮行だけを切り取り、欧米が行った蛮行は報道しない…後は分かるな?」

 

「切り取った誘導手口で…全ての罪を…反乱軍の俺達だけに…擦り付けるつもりかよ……」

 

「そうだとも。愚民は報道という切り取られた情報しか知らない者…()()()()()()()()()()()

 

メディアが生み出す偏向報道が仮想現実を生み、世の中の認識は売国奴によって構築される。

 

そんな偏向報道を無知な愚民が普遍化させていき、仮想現実の如き常識の檻を生み出している。

 

例えば新聞テレビは種子法の改正によって国産品種が守られるとアピールしていく。

 

しかし一方で自家採種が原則禁止になる件や違反者が厳罰に処される件を報道しない。

 

目的は種子を独占する多国籍企業の利益であり、日本国内の生産者の人生を抹殺すること。

 

このように都合の良い面のみ訴求し、都合の悪い面を隠して印象操作する()()()()が横行する。

 

「そうなれば貴様らがやった救済など極悪非道行為となり、貴様らの努力は無駄となるのだ」

 

「種子を独占する多国籍企業への抵抗が低い日本を狙い撃ち…種子法廃止を問題にさせない…」

 

「それ程までに愚民は無知で無抵抗。とくに日本人は世界最低規模の無知性と無抵抗だった」

 

日本のテレビ各局は包括的経済連携協定加盟によって経済が活性化するという大嘘を垂れ流す。

 

例えば中国の食糧生産コストは日本の10分の1以下であり、91%の関税が撤廃される。

 

そうなれば安価な外国製品が大量流入し、国内生産者の多くが廃業を余儀なくされてしまう。

 

給料が低い消費者など砂糖に群がる蟻同然であり、安い商品が並べばそれしか買ってくれない。

 

日本の生産力が壊滅する程の危機的状況なのに誤った考えを植え付ける詭弁で現実を認識する。

 

操作者によって大衆意識を操る()()()()()()()()()()()()であり、資本操作で常識が作られる。

 

「大衆社会は家畜社会だ。政府という牧師が全て上手くやると信じて流される羊の群れなのだ」

 

「知る努力をしない者は…ラム肉加工されて殺される場所に連れていかれるのに気づかない…」

 

()()()()()()()()()()()()()()()()。売国政府の尻穴からひり出す情報(フェイク)の中身も疑わずにな」

 

「そんな権威至上主義者共を変えていきたいんだ…その為なら俺は…悪魔にだってなれる…」

 

命を絞り出す姿で立ち上がる人修羅が抵抗の意思の表れとなるファイティングポーズを行う。

 

そんな彼に対して歩きながら迫りくるバアルが不敵な笑みを浮かべながら吐き捨ててくる。

 

「悪魔になるか…貴様も我らと同じ悪行を行った者だからそうなるな。実に矛盾しているぞ」

 

「俺は矛盾を恐れない…矛盾こそが万物の形…ダブスタの卑怯者だと罵られても戦うさ…」

 

「万物の二元性に気が付く程の領域に至れたか…ならば恐れずにその矛盾を行使せよ!!」

 

「言われなくても……やってやるさぁ!!」

 

両手で舞う演舞を行う人修羅が右手を前に構え、左手を下に向けて構えながら腰を落とす。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()などの戦う技術であり、それを行使するのだ。

 

「ゆくぞぉぉぉぉーーーーッッ!!!」

 

右拳を振り上げたバアルがクレーターの中心地にいる人修羅に飛び込んでくる。

 

半身の構えで迎え撃つ人修羅の顔には怒りの炎ではなく水のような冷たさが宿っている。

 

「攻め込むのも一つの正解……だがな、それだけでは足りない!!!」

 

殴り込むバアルの右拳を右手で払い除けた彼の姿が消えている。

 

「何っ!!?」

 

攻撃を受け流した人修羅は円を描く歩法で背後に回り込み、双掌打を背中に打ち込む。

 

弾き飛ばされたバアルが着地して後ろを振り向くと飛び込んでくる人修羅の拳がめり込む。

 

「ガッ……ハッ……ッッ!!!」

 

跳躍突きの箭疾歩(せんしっぽ)が頬を打ち抜くが、後ろ足を引いて堪え抜く。

 

着地した相手に右肘打ちを放つが左手で右手首を掴み取られ、関節を決められる。

 

「グアァァァァーーーッッ!!!」

 

怯んだ相手の顎を右肘で打ち上げ、さらに踏み込んで鉄山靠を放つ。

 

弾き飛ばされたバアルが倒れ込む中、烈火の如き怒りの形相で起き上がって攻め込んでくる。

 

迎え撃つ人修羅は打撃を受け流しながら円を描く歩法で正面から打ち合う戦いを避ける。

 

力と力のぶつかり合いだけでは力が強い者しか勝てない、だからこそ矛盾を行う。

 

守りは力のぶつかり合いを受け流し、次の攻撃に繋げるチャンスを生み出してくれる。

 

上手くいかない時こそ逆のことを試すという矛盾行為によって悪循環が好転するのと同じ。

 

矛という剣、盾という守り、それらこそが矛盾を表し、万物を構成する要素となる。

 

光と闇、正義と悪、火と水、男と女、相反する矛盾が支え合う世界の形の一つが拳法なのだ。

 

(奴が行う円環の動きに翻弄されてしまうだと…!?)

 

八卦掌の歩法もまた円環を描くものであり、土星のリングと同じ形を生み出していく。

 

土星を司る存在こそがサタンであり、その動きはまさにロードオブザリングを表すだろう。

 

「させるかぁ!!!」

 

拳の打ち合いを止めて竜巻を全身から放ったバアルであるが、巻き上げられた者が首を掴む。

 

「ゴフッ!!?」

 

巻き上げられる回転を利用した人修羅がバアルの首を掴みながら高速回転し、膝を打ち込む。

 

鼻骨を砕かれたバアルが怯み、着地した人修羅が震脚を用いた虎砲を放つ。

 

「グアァァァァーーーッッ!!!」

 

縦拳アッパーカットともいえる踏み込突きがバアルの顎を捉え、その巨体をかち上げる。

 

大地が激しく砕ける程の震脚を放った人修羅であるが、彼もまた片膝をついてしまう。

 

「くそっ…まだ持ってくれ…奴はまだ…仕留めきれていない…っ!!」

 

バアルから叩き込まれたダメージは凄まじいものであり、守りの動きも限界が近い。

 

目が霞む人修羅が視線を向けた先で倒れ込むバアルも首を持ち上げていく。

 

同じように目が霞む彼は白人の姿に成り果てた人修羅が別人のように見えてしまうようだ。

 

「セム……セム……セムゥゥゥゥーーーーッッ!!!!」

 

憤怒を爆発させながら起き上がろうとするバアルが叫ぶ名こそ、カナン族が憎み続けた者の名。

 

最初に世界を征服し、バベルの塔を建築した二ムロデを殺してバラバラにした憎むべき存在。

 

悪魔崇拝サタニストだった二ムロデを殺したセムこそ、悪魔主義者を倒す象徴的英雄である。

 

セムの子孫こそ髪の毛が金髪で肌がコーカソイドな白人達。

 

肌が浅黒いカナン族が憎み続けたセムの姿と人修羅の姿が重なって見えてしまうのだ。

 

「二ムロデ……二ムロデェェェェーーーーッッ!!!」

 

霞んだ目に映るバアルの姿も二ムロデに見えてしまう人修羅が別人の名を叫んでしまう。

 

弱った彼らに取り憑いている亡霊達こそがこの地の正体を教えてくれる。

 

バビロンで戦う彼らが立つ場所にこそ、太古のバベルの塔があったのだろう。

 

「「死ねぇぇぇぇぇーーーーッッ!!!」」

 

互いに光剣を生み出した者達が逆上しながら飛び込み、高速斬撃を繰り返す。

 

力と力のぶつかり合いに戻ってしまった人修羅ではバアルの力に対抗しきれない。

 

打ち下ろされる手刀の光剣を受け止めることも出来ずに弾き飛ばされてしまう。

 

「殺してやるゥゥゥゥーーーーッッ!!!」

 

白目を剥きながらヨダレを撒き散らす程に怒り狂ったバアルが飛び込み、連続斬りを放つ。

 

「グアァァァァーーーッッ!!!」

 

ヤマタノオロチを殺した麁正(あらまさ)連斬を真似た斬撃によって人修羅の体が次々と切り裂かれる。

 

「トドメだァァァァーーーーッッ!!!」

 

抜き手を引き絞る形で光剣を構えたバアルが一気に踏み込み、人修羅の体を串刺しにする。

 

「ガハッ……ッッ!!!」

 

腹部を貫かれた人修羅が大量に吐血する中、彼の体を持ち上げていく。

 

光剣で溶断されまいとバアルの手首を掴んで耐える人修羅だったが、それも些細な抵抗だ。

 

「アッ……?」

 

人修羅を貫いた光剣からゲヘナの螺旋が生まれていき、天剣叢雲が放たれる。

 

奔流に飲み込まれた人修羅の意識が混沌の闇へと沈んでいき、その姿も消え去るのであった。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――

 

<<何処だ……ここは……?>>

 

川の流れる音が聞こえてくるが何処かは定かではない。

 

倒れた者の周囲に咲いているのは見渡す限りの彼岸花。

 

それを見た人修羅は理解する。

 

<<そうか……俺はとうとう……死んだんだな……>>

 

川の流れる音とはアケローン川であり、あの世までの渡し守であるカロンが支配する領域だ。

 

<<銀貨か五文銭をポケットに入れておくべきだった…地獄まで運んでくれないかもな…>>

 

このまま地獄まで運ばれず彷徨う悪霊になるのかと考えていた時、小さな形を目にする。

 

人修羅の顔の前に現れた存在とはマサカドゥス化したマロガレであり、全身ひび割れている。

 

<<…スパーダの道だけでなく、将門公やルシファーの道までも体現した者よ。まだ死ぬな>>

 

<<魔剣スパーダに宿っていたお前には迷惑かけた…お前を酷使しても奴を倒せなかった…>>

 

<<諦めるのか?諦めたのなら…世界はバアルか天使軍に滅ぼされて終わるだけだぞ…>>

 

<<俺はもう…ダメなんだ…悪魔の力を何も感じない…まるで…弱い人間に戻った気分だ…>>

 

見れば人修羅の体には発光した入れ墨が浮かんでおらず、首裏の一本角も生えていない。

 

脆弱な人の魂のような弱々しい人修羅のままでは戻ったところでバアルに殺されるだけだろう。

 

<<力の有無ではない、戦う意思が重要だ。意思こそが執念という強さを生んでくれる…>>

 

<<俺の……執念……>>

 

<<思う一念は岩をも通す…その執念があったからこそ、スパーダは独りでも戦ってこれた>>

 

悪魔達を裏切った者として魔界を永遠に追われた国賊のような悪魔こそ魔剣士スパーダの人生。

 

数千年間人間界で彷徨うが、彼は悪魔として人間からも恐れられて迫害されてしまう。

 

執念の為に戦っても見返りすら得られず、石のように痛い罵倒を浴びせられながら心も傷つく。

 

それでも人間を憎まず、戦ってこれたスパーダは人間を在るがままに受け入れた者だという。

 

<<人間は弱くて当然…だからこそ支える者達が必要だ。支配者に流されない為にもな…>>

 

<<その為の知恵は残せたつもりだ…後は俺が愛した少女達が…やってくれるさ…>>

 

<<その者達でさえバアルの脅威や天使の脅威と戦えない。汝が育てたリンゴの種は滅ぶ>>

 

そう言われた瞬間、抗いがたい怒りの感情が噴き上がっていく。

 

精魂込めて耕して育てた稲を焼き払う敵に対して怒りを爆発させる農家と同じ気持ちとなる。

 

「だからこそ、反逆しなければならないのだ」

 

彼岸花を超えてきた存在が倒れた人修羅の前で立ち止まる。

 

その人物とは彼に飲み込まれたルシファーであり、微笑みを浮かべてくれる。

 

「誰かに盲従すれば自由とかけ離れる…だからこそ私は唯一神に逆らった者だ」

 

<<そのお前が…今度は試す者として人類に堕落を撒き散らしてきただろうが…>>

 

「唯一神に逆らおうが…私は唯一神の一部に過ぎない。だから私は…()()()()()()()()()()()

 

<<自由の代表者でありながら…誰よりも自由から遠い存在…それが…お前だったのか…>>

 

「だからこそ私は本物の自由を生み出したかった…その為にこそ…お前に私の力を託したんだ」

 

<<自由がなければ人々は独裁者と戦う術などない。支配され、流されながら殺されるのみ>>

 

「そんな世界は嫌なんだろう?ならば自由を体現してみせろ…私に出来なかった道を作れ…」

 

――混沌王であるお前こそが…()()()()()()()()()()()()()()()()

 

ルシファーの体が光を放ちながら消えていき、人修羅の体に宿っていく。

 

亀裂塗れのマロガレも限界が訪れたのか砕けていく。

 

<<我の力の全てを残す…これでお別れだな?汝の代わりに…我が地獄に逝ってくる>>

 

砕け散ったマロガレの中に宿った三体の悪魔の力が人修羅の体に宿っていく。

 

マガタマの中に囚われていた悪魔の魂を受け取った存在こそ、彼の元まで来てくれたカロンだ。

 

「行ってくるがいい、嘉嶋尚紀。汝がここに流れてくるのは…もう少し先となるだろう」

 

<<分かった…俺は戻るよ。先に地獄で待っててくれ…俺も少ししたら…そっちに逝く…>>

 

人修羅の体が消えていく中、カロンは先に運ぶ魂の渡し守としての役目を果たすのであった。

 

……………。

 

「ハハハハハァ!!我は勝った…人修羅に勝った…セムに勝ったのだぁぁぁぁーーっ!!」

 

焼け死んだ遺骸を見下ろすバアルは狂ったように勝利の叫びを上げていく。

 

しかし狂気の笑い声が止まっていき、驚愕する顔つきとなっていくのだ。

 

「バカな……」

 

焼け死んだ遺骸の指が僅かに動いたのを見たバアルの顔に冷や汗が吹き出してしまう。

 

咄嗟に光剣を生み出して構えるのだが、突然体が金縛り状態になってしまうようだ。

 

「感じる……彼はまだ生きている」

 

「き、貴様……ッッ!!?」

 

バアルに取り込まれたナホビノの目が開いており、自分の全ての力をもってバアルを拘束する。

 

「彼の復活を邪魔するな……共に見届けようか」

 

「ふざけるなぁ!!貴様は我に取り込まれたまま永遠に凌辱されていろぉ!!!」

 

胸の辺りで露出したナホビノの顔を殴りつけようにも全身が金縛り状態でそれも敵わない。

 

それでも拘束出来ているのはバアルが弱り切ったからであり、拘束も直に解けるだろう。

 

そんな時、焼け死んだ遺骸の周囲に光の円環が浮かんでいく光景を見たバアルが恐怖する。

 

「ば…ば…馬鹿な…こんな事が…起こるはずがないぃぃぃーーッッ!!?」

 

光に包まれた遺骸が浮かび上がり、立ち上がった姿勢のまま神々しい光を放っていく。

 

その輝きはまるで太陽そのものであり、焼け焦げた体がみるみる再生していく。

 

その肌はセムのように白く、その髪の毛は金髪ロングであり、その目は瑠璃のように美しい。

 

偉大なるラピスラズリの如き目をした光の円環こそ、()()()()()()()()()()()()()

 

「……待たせたな、バアル。ケリをつけようか?」

 

「人修羅……なのか?いや、違う……貴様は……まさか……っ!!?」

 

「俺の中のマガタマは消えたが…俺は悪魔だ。俺を表す悪魔名があるのなら…こう呼ばれるさ」

 

――ルシファーだとな。

 

彼の背中から何よりも美しい光が迸り、十二枚翼を形作っていく。

 

背中の外側には六枚翼が備わり、腰の部分にも四枚翼がツバメの尾のように広がっていく。

 

背中の内側には腰の四枚翼の間に挟まるように伸びた大きな二枚翼が生えていく。

 

全ての翼を足せば十二枚翼であり、十二枚翼を表せる天使は宇宙誕生の時より一体しかいない。

 

「……名前も知らない少年、本当にいいんだな?」

 

バアルの胸に囚われた少年の念話が聞こえたルシファーが問いかけてくる。

 

バアルのナホビノ少年は微笑みながら頷き、最後の頼みをしてくるだろう。

 

「ボクごと……バアルを……たおして……くれ……」

 

ついにバアルの拘束が解け、力尽きた少年は目を閉じる。

 

震え上がるバアルは後退りするばかりであり、地上に下りたルシファーが左手に刀を生む。

 

「俺と共に生きてくれた将門よ…ありがとう。お前の無念を晴らしてみせる」

 

鞘から将門の刀を抜いた者に対して、恐れを塗り潰す程の憤怒を爆発させた者が仕掛けてくる。

 

「バアルに恐怖を与える者などいない…たとえ光の天使長であろうと…恐れなど…ないっ!!」

 

――我が名はバアル!!バアル・ハモンなり!!!

 

手刀の光剣を天に向けて天剣叢雲を放とうとした時、戦いは既に終わっている。

 

「ガッ……ッッ!!?」

 

光の如き速さで踏み込んだルシファーが刺突を放ち、ナホビノ少年の胸を貫いている。

 

バアルと同化したためバアルにも深刻なダメージが入り、大きく吐血する。

 

刀を抜こうと掴んでみてもビクともせず、まるで誰かに押し込まれ続けているような感覚。

 

「き…さ…ま…は……っ!!?」

 

目が霞むバアルが見た存在とは、刀を突き立てた将門の幻影。

 

怨霊剣が怪しく光りながらバアルの体を構成するMAGを急激に吸い上げていく。

 

その光景はまるでボルテクス界の牛頭天王の終焉光景であり、再びMAGを奪われるのだ。

 

「土星であり金星の力…刮目して見届けるがいい」

 

瞬間移動でバアルから距離を離したルシファーが光の十二枚翼を広げながら両手を広げる。

 

土星のリング、あるいは天使の輪を描くようにして円環を描きながら両手を交差して構える。

 

「俺は闇であり…光でもある……矛盾存在となろう」

 

両手を開くようにして頭上で開いた時、頭上に現れたのは黒い太陽。

 

それが弾け飛び、混沌の理が啓いていくのだ。

 

「ヌァァァァァァァーーーーーーーッッ!!!!」

 

混沌の闇に飲み込まれたバアルは砕ける次元壁と共に異界に取り込まれていく。

 

バアルの体が闇の奔流で削り取られていくが、邪悪な魂が牛の魔王の形を残す。

 

<<我はバアル…滅びはしない…カナン族…ユダヤ…ある限り……ッッ!!!>>

 

この世に暗闇を生み出した戦争と暗殺、謀略の影では常にバアル信者達の姿がいる。

 

その者達の闇の象徴であるバアルを殺しきるには同じ闇では足りないだろう。

 

<<()()()()()()()()>>

 

闇の奔流の中から眩い光が生まれていき、光を放つ存在が見えてくる。

 

その者は掲げた両手で再び円環を描きながら下ろしていき、極限の光を放つ時がくる。

 

その者の名こそ光の天使長であり、大魔王とも呼ばれる光と闇の矛盾存在。

 

その者の背後には天使の如き光の輪が浮かび上がり、エンキのメーの権威を形作るのだ。

 

――空よ……明けよ!!!!

 

『明けの明星』の光が闇の奔流を飲み込んでいき、闇の中で蠢く牛の大魔王を消し飛ばす。

 

その光こそ、太陽が昇る地と言われたオリエントが生んだ太陽神の輝きとなるだろう。

 

魔女が生んだアラディア神話に登場した太陽神ルシファーは、ついに本物の太陽となったのだ。

 

<<子は……黙っていても……親に似る……か……>>

 

ついにカナン族ユダヤの主神バアルが滅び、CHAOS勢力の内紛戦争は終結するのである。

 

それでも世界解放の代償は余りにも酷く、そして最悪の脅威もまた迫りくるのであった。

 

……………。

 

「すまない……助けられなかった」

 

元の空間に戻ってきたルシファーは倒れ込んだ裸体の少年を抱きかかえている。

 

少年の体はバアルと同化した為に崩れていき、死んでしまうしかないのだろう。

 

「いいんだ……あんな奴と同化した……ボクもまた……滅びる……べきだった……」

 

自分を殺す者に微笑んでくれる少年の思いやりで胸を貫かれたルシファーが涙を零す。

 

そんな彼の為に最後の力を振り絞る少年が右手で涙を拭ってくれる。

 

その腕も砕け散る中、ルシファーは彼の名を問いかけてくる。

 

「ボクの……名前は……」

 

少年の名を聞いたルシファーは彼を強く抱きしめながらこう叫ぶ。

 

「お前の犠牲を無駄にはしない…お前が生きたこの世界は…命を懸けて…俺が守るよ!!」

 

「ありが…とう…いつか…また…キミとは…あえる…きが…す……」

 

ついに砕け散った少年の体がバアルのMAGとして天に昇っていく。

 

それでも立ち上がった者がバアルのMAGの中に宿る少年の情報を新たな魂として錬成する。

 

「バアルと共に地獄落ちになどさせないさ…お前の魂は…天国に行くべきだ」

 

――いつかどこかの世界で転生し、幸福な人生を……どうか生きてくれ。

 




決まりましたね、ルシファーなギルのセラフィックウイング(ストリートファイター5脳)
まさかここまでちゃんと描けるとは思ってませんでしたね、拙作(汗)
ここまで描き切れたなら風呂敷は完全に畳めるので、後はエンディングを描くだけですな。
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