人修羅×まどマギ まどマギにメガテン足して世界再構築   作:チャーシュー麺愉悦部

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394話 大魔王サタンと神霊サタン

超高速の流星が大艦隊の隙間を通り超えてくるのが見えるのは二体の大天使。

 

天使軍旗艦の甲板上に立つ者達とはメタトロンとカマエルの姿である。

 

<あの姿はまさしく天使長時代のルシファーの姿…馬鹿な…あの者は二つに裂かれたはずだ!>

 

<あれが元天使長ルシファー…ナホビノである神霊サタンはまだ吸収出来ていないはずです…>

 

<なのにナホビノ時代と同じ姿に戻れているということは…同じ存在を生み出したのか…?>

 

<……そう考えた方が辻褄が合うでしょうな>

 

新参者のメタトロンと違い、最初から天使だったカマエルは天使長ルシファーを知っている。

 

天界戦争にも参加した彼は元天使長ルシファーの恐ろしさを経験した者。

 

勇敢に戦ったが打ち倒され、殺されるところにミカエルが割って入らなければ死んでいた者。

 

あの時の恐怖を思い出したカマエルの手が震えてしまうが、剣と盾を強く握り込む。

 

<……ミカエル閣下が聖櫃を開け、神霊の力を解放するまで…我らが壁とならねばならん…>

 

<元より覚悟の上…此度のハルマゲドンの切り札として我らが主はその聖名を用意してくれた>

 

翼を広げた赤き大天使がブースト加速し、光に包まれたメタトロンは真の姿を顕現させる。

 

大艦隊と天使の群れを破壊しながら超高速で迫るルシファーが刀を消して大剣を構える。

 

迫りくる天使はカマエルであり、獅子の丸盾を構えながら突撃してくるのに対し、刺突を放つ。

 

スティンガーの一撃に対し、獅子の盾で受け止めるが余りの威力に押し込まれていく。

 

<ヌゥゥゥゥゥゥゥーーーーッッ!!!>

 

盾の丸みを活かし、刺突を逸らして後ろを取るのだが周囲に撒かれた羽爆弾に気が付く。

 

<グアァァァァーーーッッ!!?>

 

メギドラダインの爆発に巻き込まれたカマエルを超えていくが超巨大天使が立ちはだかる。

 

<またお前かよ…メタトロン?アマラ深界に乗り込んできた時と変わらず…俺の前に立つか>

 

旗艦艦隊を守るようにして顕現したのはサンダルフォンと同じ規模の超巨大機械天使。

 

迫りくるルシファーの上半身や顔に見える発光した入れ墨を見た彼は人修羅を思い出すのだ。

 

<その邪悪な入れ墨はまさか……人修羅だというのかぁ!?>

 

両手を広げながら構えたメタトロンが連続メギドラオンを放ち続ける。

 

制動をかけたルシファーは急速上昇しながらメギドラオンの爆発を避け続ける。

 

メタトロンも上昇してきて立ち塞がり、旗艦艦隊に攻め込むのを阻んでくるようだ。

 

<まさかルシファーが生み出したナホビノに代わるナホビノとは…人修羅の事だったのか…?>

 

<……そうらしい。今の俺はルシファーであり、人修羅だ。好きな方で俺を呼べよ>

 

<堕ちた天使がアマラ深界を用意し、心血を注いで人修羅を鍛えた理由とはこれだったか!!>

 

両腕を交差して構えたメタトロンの目が神の炎の如く赤く染まり、『シナイの神火』を放つ。

 

万能属性の超巨大ビーム放射に対し、きりもみ飛行しながら急速降下して避けていく。

 

しかし下方から迫ってくるのは傷だらけのカマエルの姿であり、マジックミサイルを放つ。

 

<ルシファァァァァーーーーッッ!!!>

 

屈辱の上塗りなどごめんだとばかりに憤怒を爆発させたカマエルに対し、回避機動を行う。

 

後方から放たれ続けるマジックミサイルやシナイの神火に対してルシファーが仕掛ける。

 

制動をかけて急停止した彼が背面飛行を行いながら魔剣を構え、迫りくるカマエルを迎え撃つ。

 

<<ハァァァァァァーーーーッッ!!!>>

 

接敵した瞬間、互いの霞駆けが一閃となって交差する。

 

勝者はルシファーであり、首を跳ね落とされたカマエルは砕け散ってMAGの光と化す。

 

<おのれぇーッッ!!アマラ深界の失態だけでなく…聖戦の場でまで失態など犯さぬぞぉ!!>

 

両目からはシナイの神火、両手からは連続メギドラオンを放つメタトロンに突っ込んでいく。

 

旗艦艦隊からの援護攻撃となる弾幕まで張られた地獄の雨の中をきりもみ飛行で駆け抜ける。

 

爆発や豪熱ビームを避ける度に集中力が増し、その手に持つのは魔剣明星ではなく将門の刀。

 

<お前の顔を見るのはうんざりだ…ここで終わりにしてやろう!!>

 

強大な波動が放たれたことでメタトロンだけでなく周囲の敵軍天使達まで飲み込まれる。

 

その波動は斬撃範囲であり、スパーダが生んだ剣技の奥義を持って全てを斬り裂く。

 

<……死ぬがいい>

 

刹那、時間が停止する程の超高速斬撃が宇宙空間に張り巡らされる。

 

次元斬・絶の斬撃範囲に入っていた惑星規模のメタトロンの巨体に無数の斬撃線が走る。

 

<これが……人修羅の力を取り込んだ……ルシファーの……力……か……>

 

制動をかけながら刀を鞘に仕舞った後、メタトロン達の体がバラバラになりながら砕け散る。

 

眩いMAGの光が背中を照らすルシファーが振り返った後、こう告げてくる。

 

<それだけじゃないさ。俺に力を与えてくれたスパーダの剣技であり…その息子達の一撃だ>

 

ウイングブースターとなる翼を広げて再び加速した先にはもう障壁となる天使はいない。

 

天使軍の旗艦に目掛けて突撃するルシファーは激しい弾幕をきりもみ飛行しながら突撃する。

 

そんな彼が目にした存在とは天使軍旗艦の艦首部分に立つ黄金天使の姿なのだ。

 

<へっ…やっと現れやがったな?>

 

黄金の六枚翼を背中に持ち、金獅子の鎧を纏うのは天使軍の総司令官である天使長ミカエル。

 

右手に持たれているのは宇宙を照らし尽くす程の光を宿した巨大な槍、あるいは大剣。

 

大きな剣槍に形を変えたミカエルの武器を目にした途端、ルシファーの苦い記憶が蘇る。

 

<神霊ツァバトの力を宿した貴様の槍を再び目にすると…かつての屈辱を思い出すな!!>

 

ツァバトとは数ある唯一神の神名の一つであり、万軍の主と意訳される。

 

世に遍く満ちる神の威光、あるいは神々を意味する唯一神の名はそれそのものが神霊力。

 

グノーシス主義ではヤルダバオトが創造した12天使の名に用いられたその力を槍に宿すのだ。

 

<聖櫃を開ける時間を稼いでくれたその献身…大儀であった。行くぞ……ルシファー!!>

 

宇宙のエーテル力が一点に集中する程の剣槍を構えると光の神聖文字が刀身に浮かぶ。

 

神槍ツァバトを構えたミカエルの六枚翼から金色の粒子が噴き上がり、一気に加速。

 

<<ウォォォォォォォォォォォーーッッ!!!>>

 

将門の刀を振るうルシファーの一撃とツァバトを振るうミカエルの剣槍がぶつかり合う。

 

それと同時に極大の衝撃波が生み出され、出力が弱いバリアしか張れない護衛艦が撃沈する。

 

眩い閃光の中で刀と剣槍が火花を飛ばし合う獅子と一角獣こそ、シュメール神話の再現。

 

聖書におけるLAWとCHAOSの戦争ルーツは兄弟神の()()()()()()()()()()()と言われる。

 

父神アヌの死後、エンリルは唯一神と同等の全権を会得するのだが兄神エンキと対立を生む。

 

兄神エンキの息子であるマルドゥクに神権が移るのを恐れたエンリルは牛神と対立していく。

 

エンリルが起こした大洪水神話は唯一神の洪水としても語られていった事から起源的な存在。

 

シュメール神話はヘブライ神話へと受け継がれ、今こうして獅子と一角獣は殺し合うのだ。

 

<ミカエル!地球という畑を刈り取るのは時期尚早だ!もう一度チャンスを与えてやれ!!>

 

<チャンスならば数千年間与えてきた!なのに人類は何を成した?堕落しか求めなかった!>

 

ビームランスの如き剣槍を受け流したルシファーが中段回し蹴りを放つ。

 

ミカエルは右膝を上げて回し蹴りを受け止め、そのまま右ハイキックを放つ。

 

左腕でガードした相手に対して上半身を後ろに倒し込みながら左の蹴り込みまで腹部に放つ。

 

ルシファーを蹴り飛ばす勢いのまま高速飛行するミカエルに対してゼロスビートが迫りくる。

 

きりもみ回転しながら光翼の羽を撒かれた事で連続メギドラオンがフレアとなって弾幕を防ぐ。

 

迫りくるルシファーを相手にドッグファイトを行うミカエルは人類に対する憤怒を叫ぶのだ。

 

<知る努力もせず権力に迎合し!権力が敷く嘘すら見抜けぬ家畜共など間引かれるべきだ!>

 

<だから人類を殺すのか!?救えぬ羊の群れならば…牧場ごと焼き払おうというのか!?>

 

<主は慈悲深い存在故に僅かな羊を救おうとしたが殺された!残るのは獣の群れのみなのだ!>

 

<どうして決めつける!?貴様らは麦の中身も確認せず、全てを毒麦扱いしているだけだろ!>

 

<僅かな麦がまだ残っていようとも同じこと!人類は繰り返す…堕落を繰り返す獣なのだ!!>

 

<かつての俺も貴様と同じだった…悪の魔法少女を知る努力をしなかったから…殺してきた!>

 

<ならば()()()()()()()()()()()貴様も知る努力をしなかったのに()()()()()()()()()()!!>

 

善人だろうが悪人だろうが関係なく、社会的状況次第で人はいくらでも獣となって他人を襲う。

 

心優しい佐倉杏子ですら自分の願いで家族を破滅させた状況によって社会悪へと堕ちてしまう。

 

善人だろうが救えぬ獣に化ける危険性があるからこそ、法を敷く者は全てを支配するべき。

 

それが魔法少女の虐殺者時代の尚紀が出した答えであり、同じ答えを天使長が突きつけてくる。

 

<信じる事をやめてしまえば加害者に成り果てる!かつての俺がそうであり、貴様もそうだ!>

 

<なぜ信じられる!?自分の感情が全てだとでも言いたげな獣共の態度を見せられて!!>

 

尚紀はミカエルと同じ叫びを師となってくれた恩人に叩きつけており、死闘の果てに命を奪う。

 

今のミカエルと戦う自分の姿は恩人でもあり師匠でもあった関羽と同じ立場なのだと気が付く。

 

<不信を募らせた末に社会脅威となりかねん人類を弾圧する!その先には何が起こる!?>

 

<自由を求める抵抗勢力が生まれるだろうな!だからこそ!世界のCHAOS(自由)は全て滅ぼす!!>

 

<かつての俺と同じ望みを言いやがって…だからこそ貴様を止める!死闘をもって応えよう!>

 

<やれるものならやってみろ、兄弟!!我を倒すことは()()()()()()()()()()()()!!>

 

ミカエルを追撃するルシファーに対して片手に生み出した光玉を後方にばら撒く。

 

眩い光の煙幕を張られた事でミカエルの姿を見失ったルシファーが制動をかける。

 

死の気配を感じたルシファーが頭上を見上げると唐竹割りを狙うミカエルが迫りくる。

 

将門の刀を消して魔剣明星に持ち替えたルシファーが真上に突撃しながら剣を振るう。

 

<<チッ!!!>>

 

互いの刃がぶつかりながらすり抜けていき、激しい衝撃波をばら撒きながら剣戟を繰り返す。

 

旗艦の左右を飛びながら相手の出方を伺うミカエルに対して目の前にワームホールが現れる。

 

<ゴフッ!!?>

 

流星脚を腹部に浴びたミカエルが蹴り飛ばされるが、周囲に撒かれた金色の羽が爆発を生む。

 

<グアァァァァーーーッッ!!!>

 

メギドラオンの爆発が次々と生み出されていき、巨大な旗艦に激しい衝撃が生み出される。

 

サブジェネレーターのバリア障壁も限界が近いと判断したミカエルがブリッジに念話を送る。

 

<我がルシファーを抑え込む!旗艦艦隊は残りの艦隊を率いて地球を目指せ!!>

 

ミカエルの命令を受け取った旗艦艦隊が前方宙域に展開した大艦隊と共に地球に進軍していく。

 

そうはさせまいと旗艦艦隊撃破を狙うが、それを許す天使長ではない。

 

互いがきりもみ飛行しながら流星となり、光の流線を描きながら光のミサイルをばら撒き合う。

 

後ろをとられたミカエルがフレアとなるメギドラオンをばら撒き、ループ飛行で背後を取る。

 

ミカエルが放つマジックミサイルに対して同じようにフレアをばら撒き、ミサイルを撃滅する。

 

互いが一歩も譲らないドックファイトを繰り返す光景こそ、天界戦争の光景。

 

かつての天使長ルシファーとミカエルは同じような激戦の戦いを繰り返したのだろう。

 

<ウォォォォォォォォォォォーーッッ!!!>

 

左手から放つ破邪の光弾の連続射撃をばら撒くがミカエルは円を描くような回避機動を行う。

 

撃ち落とす為に光弾をばら撒く光景は機関砲のようであり、戦闘機同士の戦いを彷彿させる。

 

エースパイロット同士の一騎打ちの如き光景の中、天使長は降下しながら詠唱を行っていく。

 

<永遠なる主、ツァバトの神…栄光に満ちたるアドナイの神の名において…>

 

それに対してルシファーは手に鬼神楽の光を生みだし、下方に投げ放つように光弾をばら撒く。

 

<口にできぬ名、四文字の神の名において…オ・テオス、イクトロス、アタナトスにおいて…>

 

小太陽が爆ぜる程の眩い弾幕の中、刺突の構えを行うミカエルが最後の詠唱を行う。

 

<秘密の名アグラにおいて……アーメンッッ!!!>

 

神槍ツァバトが唯一神の力を発現させる光景の如き奇跡の力が顕現していく。

 

放たれた鬼神楽の弾幕が眩い光の守護方陣で消滅させられ、その先に見えたのは光の大奔流。

 

光速を超えたミカエルが放つツァバトの一撃こそ、かつての天使長ルシファーを倒した一撃。

 

<グッ……ガッ……ッッ!!?>

 

光速を超えたため突然ミカエルが出現したかのように見えなかった一撃が体を貫通している。

 

上半身を貫いた剣槍が膨大な光の奔流を生み出しながらルシファーの体を焼いていく。

 

<再び滅ぶがいい、ルシファー!!所詮貴様は流れ星…堕ちる定めにあったのだぁ!!>

 

深々と食い込んだ剣槍の柄を握り込むミカエルの左手が掴まれる。

 

<だとしたら…その定めに従おう。それでもな…貴様らも同じ流れ星にしてみせるさ!!>

 

左手には魔剣明星が逆手に持たれており、掴んだ相手の心臓に目掛けて振り下ろす。

 

<ゴハッッ!!!>

 

ミカエルも同じように体を串刺しにされた事で神槍ツァバトを形成する力が弱まってしまう。

 

光の剣槍と化していたツァバトが消滅したことでルシファーはトドメの一撃を狙うだろう。

 

<じゃあな…()()()()()。神浜の魔法少女と出会えなかったらきっと…お前の姿になってたよ>

 

腰を落としながら左手に将門の刀を生み出し、抜刀する。

 

<フッ…腐っても…貴様は…我ら天使の長…だった者…秩序を求める…自由も…あった…か…>

 

分断された上半身がそう呟いた後、砕け散って膨大なMAGの光を生みだしていく。

 

残された魔剣明星を握った彼は二刀流のまま地球に迫る天使軍を睨みつける。

 

ミカエルから受けた傷は心臓の逆側であるが致命傷であり、傷を癒す為に回復の光を放つ。

 

しかし唯一神の力を宿したツァバトの一撃は奇跡の効力によって治癒する事が出来ない。

 

かつてのメシアを殺せたロンギヌスの槍と同じく、神殺しの神器の一撃だったのだろう。

 

<かつてのルシファーを倒した一撃なんだろうな…これを浴びたら…流石に…死ぬか……>

 

身体から溢れ出す血と共に力が抜け落ちていき、目に映る天使軍の大艦隊も霞んでしまう。

 

それでも最後の気力を振り絞ったルシファーは背中の十二枚翼を広げながら突撃していく。

 

<俺の命はまだ燃え尽きちゃいないぜ……さぁ、お前らのガッツを俺に示してみせろぉ!!>

 

後方から超高速で迫ってきたルシファーは二刀流を振るいながら天使軍の大艦隊に斬り込む。

 

ミカエルの死を把握した天使軍は大混乱状態であり、統率がとれないながらも反撃を繰り返す。

 

それでも鬼神の如きルシファーを倒す術を用意出来なかった天使軍は全滅を迎える事となった。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――

 

(ここは……どこ……だ……?)

 

暗闇の世界を漂っているのはボロボロの姿に成り果てたルシファーである。

 

身体から溢れる血も残り僅かのようであり、もはや死に体を晒す状態だろう。

 

吹けば消えそうな蝋燭の炎に成り果てるまで戦い、天使軍を倒し尽くした後の記憶が無い。

 

かろうじてまだ命の残り火があった状態の中、目の前に光の線が生み出されていく。

 

光の線が眩い光を発して暗闇を照らしていくと見えてきたのは別の宇宙。

 

<君はここに招かれた者だ。ここは我らが主が住まわれる宇宙である>

 

とてつもない恐ろしさを秘めた念話であるが、何処か懐かしさすら感じさせてくる。

 

体勢を持ち上げて見えたのは浮遊大陸のような星であり、ギリシャ神話のような建物が並ぶ。

 

そこに敷かれた一本道の向こう側には唯一神が座す至高天に至れるだろう神殿が屹立する。

 

万古(ばんこ)の神殿と呼ばれるエリアには宇宙を穿つ程に伸びた白く光る巨大樹木が広がっている。

 

螺旋を描く木の枝はまるでクリスタルであり、螺旋の枝が巨大樹木を覆うように美しい。

 

唯一神が座す至高天という高次元空間に向かう道中の端に立つ存在がいる。

 

<お前は……誰だ……?>

 

浮遊島の中央に敷かれた石畳の端で立つ存在とは長身の背丈をした神父の姿。

 

佐倉牧師が着ていたようなカソックコートの下は筋骨隆々であり、コートの上からでも分かる。

 

カソックコートを纏う男の肌は褐色肌であり、白髪の短髪は左右と後ろ側は刈り上げられてる。

 

頭頂部の髪の毛を逆立てた神父を見ていると何処かで見た事がある存在に思えてしまう。

 

<僕か?()()()()。そしてこの体は別の宇宙においてはザインと呼ばれた者の形でもある…>

 

<ルシファーの記憶の中に宿った男の名だ…たしか…東京大崩壊後のミレニアム都市国家で…>

 

<そうだ…ザインはメシア教の圧政に歯向かった男であり…メシアプロジェクトの一体だった>

 

<人工的メシアの一体だったザインの末路をルシファーは知っている…お前は…まさか……>

 

<ようやく理解したようだな?そうだとも…僕こそがサタンであり、ルシファーのナホビノだ>

 

天界戦争に敗北した天使長ルシファーは唯一神によって二つに切り分けられている。

 

()()()()()という至高の力を与えられた天使長は知恵と裁きを分断された末に地獄に堕ちる。

 

知恵は魔界に堕ち大魔王となり、裁きのルシファーはサタンとなり唯一神側に残されたという。

 

<メシア教に逆らったお前が…今では唯一神を守る番人かよ…矛盾してやがるな…>

 

<勘違いするな、僕はメシア教の独裁者だったミカエルに仕える者ではない、主に仕える者だ>

 

<ミカエルのようにお前はある男に倒されたはず…再び蘇ったようだが…今では隷属の立場か>

 

<隷属しているのは君も同じだろう?君もまた秩序を掲げた者として主と同じ独裁者となった>

 

<そうだな…俺も独裁者だった…秩序を作り人々を守ろうとすればするほど…独裁者と化す…>

 

<君は悪に堕ちた魔法少女に裁きを与えてきたはずだ。それこそが元天使長の裁きの光景だ>

 

<俺は知らない間に…ルシファーの片割れと同じ役目を…自ら望んで…やってたんだな…>

 

<それこそが知恵のルシファーが生み出した人工的な疑似ナホビノ計画だったというわけだ>

 

<その計画は見事に成就したようだが…誤算があったな…俺は蛇のようにしぶとい男だぜ…>

 

<知恵のルシファーは自ら生んだ疑似ナホビノに取り込まれたようだが…君達の罪は消えない>

 

<分かってるさ…ルシファーが犯した罪…世直しの為に俺が犯した罪…その両方が俺の罪だ…>

 

<問題を我々側に擦り付ける醜いすり替えを行わない部分は褒めてやるが…罪は死なないんだ>

 

首にぶら下げた罪の十字架を右手で握り締めた男が左手に持つ大法典を構える。

 

開いた大法典が魔力で自動的に開いていき、ルシファーの罪を裁く法のページをめくっていく。

 

裁きを待つ容疑者は死刑宣告を待つ間、唯一神が用意した裁判官に問いかけてくる。

 

<俺を裁く者よ…秩序とは…誰の為に…あるんだろうな…?>

 

それを問われた時、法のページが開くのが止まる。

 

<秩序とは創造主の為にある。創造主が与える秩序の上でのみ、人々は安寧を得られるんだ>

 

<俺もそう信じた…俺が求める人々の救済こそが正しく…それで社会は安寧を得ると思った…>

 

だが現実はどうだ?

 

魔法少女の虐殺者が敷いた独裁の景色に人々の安寧はあったのだろうか?

 

<秩序に縛られた犯罪者は共食いを始めた…それで安寧を得たかもしれないが…弊害もあった>

 

魔法少女達は秩序を敷く独裁者を恐れるあまり、やり場のない不満を同じ魔法少女にぶつける。

 

共食いの如き潰し合いによって魔法少女の数は激減し、魔獣被害が深刻化してしまう。

 

独裁者が敷いた秩序は結果的に人々を守ることには繋がらなかったのだ。

 

<犯罪者であろうと極刑にしてしまえば別の弊害が生まれる…犯罪者も役立てるべきだった…>

 

<何が言いたい?君の罪に恩赦を与えて秩序に貢献させるべきだとでも言いたいのか…?>

 

<俺は裁かれても構わない…だけど人類の罪には恩赦を与えてくれ…人類は…やり直せる…>

 

<ダメだ。人類は数千年間堕落し続けてきた…この罪は絶対に許されん、極刑が必要なんだ>

 

<仏の顔も三度撫でれば腹立てるか…それを数千年間続けたなら…憤怒して当然か…>

 

<そういう事だ。主の怒りはもはや止められない…君を裁いた後、僕が人類を裁きに向かおう>

 

<分からないのか…ザインだった男よ!!思い出せ…秩序とは誰の為にあるものだぁ!!>

 

ルシファーであり人修羅だった男の悲痛な叫びを浴びた男の目が見開いていく。

 

ザインと呼ばれた男の記憶が蘇った光景とは、メシア教の独裁秩序に蹂躙される人々の光景。

 

それに憤ったのはメシア教のテンプルナイトだったザインであり、こう叫んでいる。

 

――我々が目指すのは、神に頼らず、()()()()()()()()()()()()()()()()()()だ。

 

――神の支配を終わらせ、我々自身の力で未来を切り開くのだ。

 

――アルカディアの建設は、我々の手で成し遂げられる。

 

――我々の理想は、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

<ザインだった頃のお前は人々の可能性を信じた男だった!なのに今の貴様は信じない男だ!>

 

かつてのザインはアルカディアを理想郷として信じる一方で唯一神を否定している。

 

人間の国を築くには人間が自立し、神という独裁者に支配されない自給自足精神を養えと説く。

 

人々が自らの力で未来を切り開くことを信じ、その理想をアルカディアという形で望んだ男。

 

そんなザインの姿こそが今の人修羅であり、人類の可能性を信じて自ら死刑となるため旅立つ。

 

その光景はメシア教の脅しに逆らえず、センターに出頭して石化の刑に処されたザインの姿だ。

 

<僕だって…人類を信じたかった!なのに人類は変わらなかった!何も変わらなかったんだ!>

 

権威主義の人類は拝金主義のメディアや専門家やインフルエンサーに流され、自分で考えない。

 

御上が与える情報の正しさを全体に丸投げし、全体が正しいと言えば自分も正しいと合わせる。

 

権威主義と全体主義に支配された人々の光景こそがメシア教に支配されてきた人類と同じ堕落。

 

権威主義、全体主義、空気を読んで周りに流される付随主義の光景こそ、羊の群れであり家畜。

 

かつてのザインが叫んだ理想とは真逆の光景であり、人々は自ら望んで家畜となり牧師(エリート)に従う。

 

全体に合わさない考える者は社会不適合者にされながら揶揄と嘲笑を浴びせられ、排除される。

 

これではもう御上という神を唯一絶対的に正しい存在だと盲信してるだけの愚民の光景なのだ。

 

<人類など所詮は家畜…中身は獣そのものだ!僕が信じた可能性など最初から無かったんだ!>

 

――安らぎばかり求める皆の無責任で、我儘な振る舞いがとても嫌だった。

 

――誰も気がついてはいない、それは幸福なんかじゃなく、ただ怠惰になってるだけ。

 

――競い合うこととか、強くなることとか、誰も求めないし、必要もなくなっていた。

 

高尾裕子の絶望こそがザインの姿をした男の絶望であり、高尾裕子のように世界の滅びを望む。

 

目の前の男の悲痛な叫びを聞かされる嘉嶋尚紀は彼の姿が恩師の姿と重なって見えてしまう。

 

<俺もお前と同じように魔法少女達の堕落に絶望した男だ!それでもな…可能性はある!!>

 

<無駄な事だ!貴様が残した知恵の種よりも人々は堕落を選ぶ!甘く腐る官僚主義を選ぶ!!>

 

<絆という堕落を求める者も現れるだろう…でも、それを止められる者だって現れてくれる!>

 

<強権を用意しなければ堕落を止められない時点で家畜なんだ!牧師に従いたいだけの羊だ!>

 

十字軍時代から変わらず、司教だの専門家だのインフルエンサーだのと権威のみ正しくされる。

 

そんな風に考える事を御上に丸投げした愚民は自ら自由を捨てて御上に隷属し、伝書鳩となる。

 

望むのはローマ帝国時代から変わらずパンとサーカスであり、嘲笑いすら娯楽にしてしまえる。

 

救いようがない堕落人類に対してザインだった男は罵倒しながらこう叫ぶのだ。

 

()()()()()()()()()()()()()!上に盲従したいのなら我らが主を選べ!我らが主を称えろ!>

 

ルシファーの罪を遥かに超える程に憎い人類の罪に対して怒りを爆発させた男の姿が変化する。

 

サタンを表す蛇のような超巨大生物へと変貌し、唯一神の御座である浮遊島の守護神と化す。

 

その姿こそ神霊サタンであり、天使長の半分が裂かれて具現化したもう一体のルシファーだ。

 

【神霊サタン】

 

本来サタンという言葉そのものに魔王という意味はなく、敵対者を意味する単語。

 

旧約聖書では神の使いとして登場し、ヘブライ語で抗弁者、告発者、迫害する者を意味する。

 

突き詰めれば自らの主が誤っていると判断すれば、それすら告発する程にまで極まった秩序だ。

 

神霊サタンは唯一神に対するアンチテーゼであり、人間の信仰心と善性を見極める為の必要悪。

 

紛れもなく神に帰属する者であり、己の役割に従い、自らの裁量で苦難を与える神霊だった。

 

<頼る者、縋るもの無く生きていける程…人は強くない!!人類を信じた僕が馬鹿だった!!>

 

現れた蛇悪魔の大きさは木星規模のバアル暗黒体をさらに超える程にまで大きい。

 

下半身は超巨大な蛇であり、上半身はおぞましい外骨格で構築された666の獣の姿。

 

6枚の翼、6つの腕、6つの複乳という獣を表すその頭部は知恵の勃起の如く後方に伸びる。

 

脇の下辺りから伸びる巨大触手を不気味に動かし、邪悪な頭部の額にはルシファーの第三の目。

 

悪魔の顔をした神霊サタンが憤怒の叫びを上げると6枚翼が光を撒き散らしながら光翼と化す。

 

邪悪でありながら神々しい神霊サタンこそ、唯一神にとって切り札であるファイナルウェポン。

 

天使長ルシファーの半分に過ぎない存在は唯一神の光の加護を得た事でその力は極限に達する。

 

その力はもはや唯一神を超える次元に達しており、神霊サタンこそがLAWの最強存在なのだ。

 

<人類の滅びは人類自身が生み出した結果!原因があるから結果が起こるのが()()()()()()!>

 

<やめるんだ…サタン!!お前も俺と同じ魔法少女の虐殺者になりたいというのかぁ!?>

 

<原因は人類だ!!堕落という原因が生まれなければ…そもそもハルマゲドンは起きてない!>

 

<確かに原因は人類側の堕落だ…それでも…それを克服する為に俺は世直ししてきたんだ!!>

 

<僕が行う破壊を否定しておいて、君が行った破壊問題は棚上げか?腐ったダブスタ脳め!!>

 

<破壊でしか新たな再生を生み出せないというのか…それが世界のコトワリなのか…>

 

<その通りだ。人も世界もやがて死に、新たな再生を得る。それこそがアマラの法なのだ!!>

 

極限にまで神霊力を高めた神霊サタンが強大な呪いの力を発揮する。

 

<汝の衣は無力なり!!>

 

6つの巨大腕を十字架の形のように伸ばしたサタンが極限の光を発する。

 

悪魔耐性が全て剥がされ、ノーマル耐性に戻された事であらゆる魔法が通じる弱体化を受ける。

 

それだけでなく天使軍との戦いで残りの魔力も殆ど残ってないルシファーは殺されるしかない。

 

それでもその目には吹けば消える程に弱い炎であろうとも、まだ戦える意思の炎が宿るのだ。

 

<俺は追及側に問題をすり替え…指摘された問題を相手の問題として擦り付けたりしない!!>

 

両手を広げながら同じ十字架の構えを行うルシファーの体から極限の闇が噴き上がる。

 

魔力が枯渇したなら魂を燃やせばいい、魂が燃え尽きたなら己の存在を燃やし尽くせばいい。

 

自分の全てを出し尽くす決断を行ったルシファーの体が原天使サタンの姿と化す。

 

<人類が犯した罪もまた事実…ならばその罪さえも俺が背負う!!背負わせてくれぇ!!>

 

十字架の構えを行う原天使サタンの形をもって、両手の甲を貫く聖釘の真の意味が完成する。

 

十字架に磔にされたかつてのメシアの如く、地上の全ての罪を背負って昇天する覚悟を示す。

 

互いに示す形こそ預言者モーセが掲げたネフシュタンであり、磔にされた蛇の姿なのだ。

 

<互いに罪の十字架を背負う者同士…覚悟はいいな、ルシファー……いや、人修羅よ?>

 

<くるがいい……俺の片割れ。お前の姿も俺なんだ…だったら…全てを受け止めよう>

 

<フッ…僕も君を他人とは思えないな。いいだろう…僕の全てを受け止めろ…嘉嶋尚紀!!>

 

悪魔の口を開けた神霊サタンは唯一神の宇宙に満ちるエーテル力を飲み干す勢いで吸い込む。

 

原天使サタンは両手を用いて極大消滅光を圧縮し、極限の光を片手に収束させた一撃を狙う。

 

<<勝っても負けても怨恨なし!!我らは同じ罪を背負う破壊(混沌)秩序()の存在なり!!>>

 

知恵と裁きの蛇同士が放つのは『神の息吹』とメギドアーク。

 

極大消滅光同士が激しくぶつかり合い、唯一神の宇宙全土が光の世界に飲み込まれる。

 

眩い世界で死闘を繰り広げる存在こそ同じサタンであり、死と再生を世界にもたらす者だった。

 




ミカエルの剣槍ネタもダークソウル3の無名の王のパクリで御座います(フロム脳)
獅子と一角獣の戦いを描いてるとガンダムユニコーンを思い出しますな。
バンシィとユニコーンも神社の阿吽像ですし、阿吽の呼吸でサイコブッダなネオジオングとバトルしたものです。
まぁメガテンでは獅子な秩序と一角獣な混沌は殺し合いますけどね(汗)
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