人修羅×まどマギ まどマギにメガテン足して世界再構築   作:チャーシュー麺愉悦部

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396話 ミームの継承者が築く未来

ハルマゲドンを迎えた魔法少女世界は死の試練を乗り越え、新たな再生の道を進む。

 

それを見届けてやる事が出来ない大正時代の者は21世紀を去る事になるだろう。

 

最後に別れの挨拶を行う為に葛葉の里に訪れた葛葉ライドウは御神木に対してこう告げる。

 

彼の前には彼と共に死線を超えてきた刀である陰陽葛葉が置かれており、ここに残すという。

 

<<そうか…汝は己を見つめ直す為に陰陽葛葉をこの時代に残して去るのだな?>>

 

「自分はまだ…陰陽を見極め切るには未熟と判断した。故に自分はこの時代にこれを残す」

 

<<陰陽を見極めるのは神々ですら難しい…我らとて今の選択を正しかったとは言い切れん>>

 

「生涯をかけて見極めるしかないのだろう…故に自分は己そのものを陰陽として生きていく」

 

<<あいわかった。生涯にかけて陰陽を見極める汝の為に…我らからも餞別の品を送ろう>>

 

葛葉一族の者が後ろからやってきて渡してくれたのは葛葉一族が振るってきた伝統的な刀。

 

赤口葛葉と呼ばれる刀を受け取ったライドウが振り返った後、今後の葛葉の道を問いかける。

 

<<それについては外で待つ時女一族の長に聞け。我は暫く瞑想する…己の陰陽を問う為に>>

 

「分かった…それでは自分はこの時代を去る。過去の時代の者を世話してくれた事…忘れない」

 

<<達者でな…14代目。汝の輝きを残す為…汝を継ぐ葛葉ライドウの育成を行っていこう>>

 

三本松が祭られた大広間を後にしたライドウが目にしたのは見送ってくれる多くの者達の姿。

 

葛葉の里に属するサマナー達だけでなく、時女一族や壬生一族の者達も集まってくれたようだ。

 

涙ぐむ静香達の元にまで来てくれたライドウに対して多くの者達が別れを惜しんでくれる。

 

「嘉嶋さんだけでなく…ライドウさんまで去っていく…私は…寂しい気持ちでいっぱいよ…」

 

「未来を託せる君達がいたからこそ尚紀は天に旅立った…自分も同じ気持ちで過去に旅立とう」

 

「大正時代に戻ったライドウさんは…どんな道を生きていくの?」

 

「ヤタガラスのサマナーに戻るだろうが自分はもうヤタガラスを信じない。彼らを改革したい」

 

「それがライドウさんの罪滅ぼしの道なのね…?」

 

「そうだ。ヤタガラスを変えるだけでなく、欧米にも向かい、カナン族と戦っていく覚悟だ」

 

「ライドウさんの道もまた嘉嶋さんと同じく修羅の道…帰れない戦いの人生となるわね…」

 

「これが…自分の贖罪だ。世直しの為とはいえ多くの命を奪った自分もまた…命を懸けるさ」

 

「ご武運を祈るわ…ライドウさん。時女一族の代表者として私は貴方の勝利を祈り続けるわ…」

 

固い握手を交わした後、抱きしめ合うライドウと静香に近寄るすなお達に顔を向けていく。

 

時女一族の今後については涙ぐんで嗚咽が止まらない静香に代わり、すなお達が語ってくれる。

 

「君達はそれでいいのか…?革命を成した一族として国の重役の立場になれるというのに…」

 

「軍のサマナー部隊に所属して国の財政に依存していては…国を見張る者にはなりえません」

 

「もしも国津神が暴走した時は…それを止める者が必要であります。我らがそれを担うのです」

 

「オオクニヌシ様もそれでいいと仰って下さいました。相互監視こそが独裁を止めるのだとね」

 

「あたしは暫くの間、全国行脚をして犠牲者の供養をするけど…いずれは時女一族に戻るさ」

 

「涼子ちゃんも時女一族を支えていく…ならわたしも…時女一族にずっといた方がいいかな?」

 

「そんなことはないわ、ちゃる。貴女には貴女の夢があるし、その夢は監視者の道でもあるの」

 

「そうであります。聖探偵事務所の所長殿も強制収容所から無事に解放されたでありますしね」

 

「未来の探偵さんは正義を愛する熱血漢。国が悪に堕ちるなら、逮捕するのが貴女の道です♪」

 

「みんな…グスッ…本当に有難う…わたし…尚紀先輩の分まで…立派な探偵に…なるから!!」

 

「君達の覚悟は分かったが…独立を保つにも活動資金の問題が浮上する。当てはあるのか?」

 

「実はですね、ヤタガラスを支えた秦氏経済界は指導者不在でして…静香が代表になるんです」

 

「そうか…時女一族も末端とはいえ秦氏一族だからな…秦氏の代表者として選ばれたわけか?」

 

「今後の時女一族を支える経済的なバックボーンとして、経済界の秦氏も役立ってくれますよ」

 

「我ら壬生一族は軍のサマナー部隊になる予定だが…国が民を裏切るなら時女一族側に移る」

 

「アヤメ…君達の家である壬生一族の繁栄を自分は心から祈ろう。達者でな…」

 

「お前と出会えて本当に良かった…大正時代のアヤメと出会った時は…よろしくな」

 

固い握手を交わし合うライドウとアヤメの元に葛葉一族の若手サマナー達もやってくる。

 

自分達葛葉一族も軍のサマナー部隊に入る予定だが、国を見張る覚悟で盲従はしないと誓う。

 

「その覚悟を忘れるな、烈士達よ。同じ葛葉一族として…自分は未来の葛葉をお前達に託そう」

 

<<はいっ!!!>>

 

大正時代に戻る時間となった事でライドウは儀式を行う為に再び大社殿に戻っていく。

 

別れの言葉を大声で背中に送ってくれる者達の優しさが嬉し過ぎて彼の目には大粒の涙が滲む。

 

そんな時、近くの木の枝に下り立ったカラスの存在が気になってライドウが顔を向ける。

 

下り立ったカラスの目は緑色をしており、ゴウトの姿と重なって見えてくるだろう。

 

「フッ……お前も生きててくれて何よりだ。達者でな……ゴウト」

 

「……さらばだ、14代目葛葉ライドウよ。うぬと再び旅が出来た思い出は…永遠に忘れん」

 

大社殿の中に戻ったライドウはあぐら座りとなり、両手を構える。

 

アカラナ回廊に至る術とは生霊送りの術と呼ばれるものであり、神道の祝詞を詠唱とする。

 

吐普加身(とほかみ) 依身多女(えみたま) 吐普加身(とほかみ) 依身多女(えみたま)…」

 

ライドウの周囲が赤黒く光り出し、地面から無数の怨念達の腕が伸びていく。

 

彼の体をアカラナ回廊に招き入れた事によって葛葉ライドウは21世紀の世界を旅立つだろう。

 

「さようなら…ライドウさん。私達も同じ罪を犯した者として…同じように贖罪の道を進むわ」

 

涙を腕で拭った静香が青空に顔を上げた後、新たな国を鼓舞する為に拳を突き上げる。

 

「さぁ、私達の新たな国の始まりよ!新たな国となった私達の地域こそ…()()()!!」

 

――神の国に甘んじる事無く、将来的には()()()()()()()()()()()()()()()()としていくわ!!

 

静香が叫んだ国名こそ太陽神であり嘉嶋尚紀だった者の望みであり、高尾裕子やザインの望み。

 

権威に盲従せず、自分達国民の力で国を築き上げる真の自由と自立精神を育んでいく。

 

その為には国民全てが愛国心と政治意識を持ち、生涯勉強していく厳しさを極めた道となる。

 

選挙で代表を選んでそいつらに面倒事を丸投げする道を廃絶し、直接民主主義国家とする。

 

選挙で選んだ議員や官僚の裏切りで国を滅ぼされるぐらいなら、国民が政治を執り行っていく。

 

それを可能とするまで国民を育てる道は過酷となるだろうが、多神教連合がその道を築くのだ。

 

それまでは神々が国民の父親代わりとなり、自立出来るようになれば国の政治を託すだろう。

 

それこそが本物の自由民主主義の形となり、自由の責任を果たす()()()()()()()であった。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――

 

「ねぇ、キョウジ。あんたは軍のサマナー部隊に入らないの?」

 

「レイと同じ意見よ。私立探偵事務所なんてやってるより、よっぽど稼げるんじゃないの?」

 

「俺の勝手だ。お前らも国の犬になりたいのなら、勝手に出て行くがいい」

 

葛葉探偵事務所に戻ってきたレイとナオミは所長席の椅子に座って煙草を吸う男に顔を向ける。

 

ブラインドから差し込む光に顔を向けたままのキョウジは誰かに飼われる犬を嫌う者なのだ。

 

「今まで通り私立探偵をやっていくにしても…経済を立て直すまではカツカツの生活よね…」

 

「そうでもないわ。悪魔被害はこれからも増え続ける…戦後の混乱期なら猶更よね」

 

「だからこそ、俺達のようなフリーのサマナーも食っていけるというわけだ」

 

「まぁ、あんたが宮仕えなんてするわけないし、これからもマリーの糞ババアに絞られるわね」

 

「その件なんだけど私を営業に回してみない?マリーのように仲介手数料をふんだくらないわ」

 

「それはいい案ね!あの糞ババアは手数料を大量にふんだくるから儲けは雀の涙だったのよ…」

 

「おい、所長の俺は許可を出してないぞ?」

 

「ミスターキョウジ、貴方のガンコレクションや退魔道具、事務所管理もタダではなくてよ?」

 

「うっ…それは…そうだが……」

 

「経営者としてコスト問題を無視していては会社が潰れるわ。私とレイの人生まで潰すわけ?」

 

「その通りよ。所員の人生を背負ってるんだし、ビジネスチャンスは逃さない、いいわね?」

 

「ぐっ…うぅ……勝手にするがいいさ」

 

レイだけでも厄介なのにナオミまで揃えば鬼に金棒であり、キョウジですらタジタジとなる。

 

和気あいあいと今後の経営方針について語り合うレイとナオミはもう憎しみ合う関係ではない。

 

新たな人生を生きるパートナー同士であり、キョウジもまた新たな生き方を模索するだろう。

 

タバコを再び咥えて火を点けるキョウジはブラインドを指で広げながらこう呟く。

 

「ジョーカーは…笑われながらも生き残るか。人修羅のお陰なのかもな……」

 

葛葉探偵事務所の新たなスタートが始まろうとしていた時、突然の訪問者が現れる。

 

依頼人が来たのかとレイが扉を開けてくれると抱き着いてきたのは美雨だったようだ。

 

「レイ姉さん!ナオミ姉さん!遊びに来たネ!」

 

「まぁ、美雨じゃない!よく来てくれたわ~、その手に持っているのはお土産かしら?」

 

「いらっしゃい、美雨。隣にいる子は……ま、まさか……」

 

「ウフフッ♪私も美雨さんに誘われて来ちゃいました♪」

 

「ラビだったかしら…?貴女も美雨と同じような包みを持ってるようだけど…?」

 

「私とラビがレイ姉さんとナオミ姉さんの為にお弁当を作てきたネ。いぱい食べるヨ♪」

 

「愛情を込めて作ってきました♪」

 

美雨からの弁当は有難く受け取るが、ラビの弁当を受け取るべきかを迷い抜く大人の女性達。

 

これを受け取ったら好意を受け取った事にされないかと心配なノンケ達に対して所長が怒鳴る。

 

「おい!なんで俺の事務所に魔法少女共が雪崩れ込んでくるんだ!?」

 

「あたしが美雨に住所を教えたからに決まってるでしょ?」

 

「私は美雨さんから住所を教えてもらったからこちらにお伺いしました♪」

 

「勘弁してくれ!レイとナオミだけでも手一杯なのに…これ以上女共に増えられたら…」

 

「さぁさぁ、あたし達の可愛い美雨のお弁当を試食しちゃいましょうか♪」

 

「私のお弁当はナオミお姉様が食べてくださいね♪」

 

「あ…有難く…受け取るけど…勘違いだけはしないでよね…ミス・ラビ…」

 

男の嘆きなどどこ吹く風か、女子会のような空気を生み出されてしまう。

 

顔に手を置くキョウジは今後の事務所運営の行方がどうなるか心配で堪らない顔つきであった。

 

……………。

 

戦後を乗り越え、新たな出発を始めた探偵事務所は他にもある。

 

国津神達が日本革命を成したお陰で強制収容所も解放され、聖丈二も帰還を果たす。

 

聖探偵事務所は尚紀の後を継いだクーフーリンのお陰で維持費を賄い、事務所を残している。

 

そこに帰ってきた丈二であるが見知った者達が誰もいない事務所を見た途端、悲嘆に暮れる。

 

黄昏た毎日を送っていた時、ウラベと再会したことで意気投合し、探偵活動を再開していく。

 

現在のウラベは業魔殿の警備任務から外れ、聖探偵事務所で探偵の仕事をしているようだ。

 

「尚紀のお陰で……ここを残せた。だからこそ俺はこの事務所を存続させていきたい」

 

「微力ながら協力してやるさ。尚紀程の悪魔探偵の代わりを努められるかは…微妙だがな」

 

「そんなことはないさ。デビルサマナーのアンタがいてくれたら鬼に金棒だ、宜しく頼むぜ」

 

つば広帽子の下はトレンチコートを纏うウラベが尚紀の席に座り、瑠偉の席には別の者が座る。

 

座っていた女事務員とは人間に擬態した悪魔であり、尚紀の仲魔だったネコマタの姿である。

 

「ネコマタちゃん…じゃ不味いよな?ニンベン師に依頼して偽造戸籍を用意させねーと…」

 

「そっちはもうクーフーリンが手配してくれたわ。私の人間名は学ぶ者と書いて嘉嶋マナよ」

 

「尚紀の苗字をもらったってわけだな?今ではあいつの家の家主をしてるんだろ?」

 

「まぁね…家主の尚紀はいなくなったけど…大切な場所なの。私が生きている限り残したいわ」

 

「同じ気持ちさ。尚紀がいてくれた大切なこの事務所を残したい…だから来てくれたんだろ?」

 

「ええ…ここに働きに来てた尚紀の背中を今でも覚えてる…帰ってきてくれると…信じてるわ」

 

「俺達も信じるさ。だから俺達でこの聖探偵事務所を残す為に…頑張って働こうぜ!」

 

「よし、やってくか!ここはちはるちゃんが帰ってくる場所でもある…所長として頑張るさ!」

 

戦後の混乱期ともなれば行方不明者の数は数知れず、だからこそ探偵業が儲かるだろう。

 

朝から電話が鳴り、事務員として働くネコマタが承った所在調査の為に探偵達が動き出す。

 

つば広帽子とトレンチコートを被った丈二が事務所の外に出てくると潮風が吹き抜ける。

 

ここで尚紀と共に働いてきた思い出が蘇った丈二は空を見上げながらこう口にするだろう。

 

「収容所に収監されたり戦争まで始まったり…空から天罰まで降りかけたし…ダメかと思った」

 

聖丈二は前世の罪を背負う咎人であり、唯一神から与えられた運命として観測者の役目がある。

 

この世界に転生したのも光と闇の最終戦争を見届ける為だったようだが最終戦争を生き残る。

 

観測者として天使軍の天罰で焼かれながら死ぬ定めを救ってくれたのは人修羅なのだろう。

 

それを言葉で伝えなくとも丈二には何となく分かるのか、心から尚紀に感謝を送ってくれる。

 

「だけど尚紀達のお陰で…世界はやり直せてる。有難う…お前のお陰で俺や世界は救われた」

 

帽子を目深く被り直す丈二の目元から一筋の涙が頬を伝う。

 

涙を拭った彼はウラベと共に探偵職務を行いに向かう光景はまるで尚紀と丈二の姿であった。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――

 

日本革命戦争の主戦場だった見滝原市は完全崩壊を迎えた事で元市民達は難民状態となる。

 

田舎から移り住んだ者達は故郷に引っ越す道もあるが見滝原市の地元住民は行く当てがない。

 

市の再開発の目処もつかない神政政府は神浜市の郊外に避難地区を建設する指示を出す。

 

見滝原市で暮らしてきたまどか達は神浜避難地区で暮らす者達となり、学校も変わるだろう。

 

まどか達は神浜市立大附属学校に転入する事になり、その後の余生を過ごしていく。

 

戦後復興大臣となった国津神のアラハバキの責務は計り知れないが、彼は国を立て直す。

 

尚紀が生きてくれた国を復興させ、いつか戻ってきても安心出来る国作りがしたかったのだ。

 

最終戦争の日から6年以上の月日が経ち、行方不明となった嘉嶋尚紀の死亡認定が決まる。

 

ペレネルとニコラス、そして尚紀が残した遺産は遺言書に従いクーフーリンが受け継ぐだろう。

 

彼は尚紀との約束を果たす為にその財産を使っていき、魔法少女達の人生を支える者となる。

 

そして彼から送られた手紙が届き、内容を見た魔法少女達は喪服を用意して準備を行う。

 

彼女達が準備したのは嘉嶋尚紀の葬式に参列するためのものだった。

 

……………。

 

「悪いね…尚紀。アンタは聖書の言葉が嫌いだったのに…弔う為に長々と聞かせちまって…」

 

尚紀と触れ合った者達が集まった場所とは尚紀が旅立った佐倉牧師の教会にある墓地。

 

この教会は再建され、尚紀がかつて暮らしていた頃と変わらない立派な外観に戻っている。

 

新しく赴任した牧師達のお陰で管理も行き届き、荒れた墓地も見違えるように整っている。

 

そんな場所に用意されたのは風華の墓の隣に用意された嘉嶋尚紀の墓。

 

行方不明のため火葬も出来ず、土葬を選んだことで棺桶には生前の尚紀の私物が納められる。

 

土の中に埋められていく棺桶を見つめる女性達は涙を流しながら尚紀の名を呟いていく。

 

その中には立派な大人の女性に成長してくれた杏子の姿やマミの姿もいてくれる。

 

それに尚紀と触れ合った神浜の魔法少女達も立派な大人の女性に成長してくれているようだ。

 

それでも少女の姿のまま参列している存在達もいる。

 

まどかやさやかやなぎさ、それに悪魔化した少女達は年齢を重ねられないままの姿でいる。

 

概念存在として精神だけが老いていく彼女達であるが、枯れない思いも抱えているようだ。

 

「尚紀さん……グスッ……尚紀さん……エッグ……」

 

喪服を着てトーク帽を纏うのは八雲みたまであり、今にも泣き崩れそうな体をももこが支える。

 

隣の十七夜と織莉子も泣き崩れそうであり、メルとキリカが支えてくれているようだ。

 

「自分や八雲の心は…グスッ…今だに夜明けが来ない…心の太陽が…昇ってくれない…」

 

「私達の太陽は…ヒック…尚紀さんなんです…エッグ…その太陽が…地中に埋められていく…」

 

「観鳥さんの心も…グスッ…常闇のままだ…観鳥さんの太陽が…暗闇に…堕ちていく…」

 

尚紀の事を心の底から敬愛してくれた悪魔少女達は嗚咽が止まらない程に泣いていく。

 

それは大人になった魔法少女達も同じであり、成長した女達が尚紀への思いを語ってくれる。

 

「尚紀…貴方のお陰で私は強く生きられてる…未来の知恵を育てる為に下宿屋も再会したの…」

 

「尚紀が万々歳を支えてくれたから…今でも店を残せてるよ…家族もちゃんと帰ってきたの…」

 

「知恵の大切さを貴女が私達に残してくれたから…私もちゃんと薬学部を卒業出来ました…」

 

「ウチの竹細工工房を残せたのは尚紀さんのお陰だよ…ウチね…男の人に今でも守られてる…」

 

「わたくし達姉妹の未来を築いた貴方は…わたくし達の心の太陽です…いつまでもずっと…」

 

「レナね…もう堕落してないわ。遊んでたら国を守れない…それをアンタが…教えてくれた」

 

「私ね…農業大学で勉強してるの…尚紀さんのお陰で国を耕す価値を見出せたから…」

 

「ランタン君とリパー君と一緒に教育漫画をわたしは描きたい…知恵を残す努力をしてるの…」

 

大人になった時女一族、それに常盤組や静海このは達姉妹、あすかにささらも思いを語る。

 

都ひなのや木崎衣美里や保澄雫、理子やみくら、てまりやせいらといった工匠組も語っていく。

 

造魔であり魔法少女のタルトや主人を残して生き残ってしまったリズも思いを口に出す。

 

「尚紀…魔法少女となった私はリズに守ってもらってます…貴方がリズを残してくれたから…」

 

「私も…貴方の御側にいたかった…だけど貴方が私に残してくれた光で…私は幸せよ…グスッ」

 

涙を零し続けるリズはクーフーリンの元へと帰り、今では彼を支える秘書の務めを果たす者。

 

屋敷はメイド長のタルトが今でも守っており、尚紀の屋敷の美しさを保ってくれる。

 

涙を流し続ける女達を見るのが辛いのは男悪魔達であり、ケルベロスが重い口を開きだす。

 

「ソウヤッテ人修羅ニスガリツイテイルト…奴モ安心シテネムレナイ…ソレグライニシテヤレ」

 

「そうだな…尚紀は個の確立を説いた男だ。彼がいない世界を託された以上、縋る必要はない」

 

「オイラはオイラなりに魔法少女を支えてやってるニャ…尚紀の仲魔として恥じないように…」

 

「私達にはもう弱さは認められない…個体差はあっても…強く在ろうとする意思が大事よね…」

 

「尚紀と再会出来た時、胸を張れる女で在れ。そうしてやった方が…尚紀もきっと…喜ぶさ」

 

人修羅の仲魔達の言葉で気を強く持った女達がハンカチで涙を拭きながら頷いてくれる。

 

尚紀を心から愛してくれた女達は尚紀のミームを継ぐ者となり、未来を再生させる道を進む。

 

「分かったわ…槍一郎さん。私の償いの道は死ぬまで終わらない…だから強く生きていく」

 

「自分も八雲と同じ気持ちだ…自分と美国君は銀子様と共に…彼が残した世界を支えよう」

 

「私達は悪魔です…いつか死んだらきっと…堕ちる先は魔界です。そうでしょ、鹿目さん?」

 

「それは…その…うん、そうなると思う…。わたしが救えるのは魔法少女だけだから…」

 

「だとしたらきっといつか…悪魔の私も魔界に堕ちるわ…その時には彼と再会出来るわね…」

 

「その言葉が真実だと願うわ。魔界に堕ちた時…胸を張って尚紀さんと再会したいから…」

 

「その時はアタシもお供するよ、みたま。ちゃんとみたまを守り切ったと伝えたいしね…」

 

「同じ気持ちさ…ももこ。やちよ達の人生を守り切ったと…胸を張って彼に伝えたい…」

 

「太陽は夜の世界に旅立つ星…だから私も夜の世界に旅立つ…時女の皆の思い出を語りに行く」

 

「悪魔のボク達しか尚紀さんと再会出来ないのは心苦しいですが…それでも嬉しいですね…」

 

「観鳥さんもジャーナリストに恥じない人生を生きる…いつか再会する人に褒められたいから」

 

彼女達なりに心の支えを自ら生み出し、強く在ろうとしてくれる。

 

それもまた個の確立であり、精神の支え程度ならば死んだ尚紀の負担にはならないだろう。

 

「尚紀…見てくれているか…彼女達は強くなっていく。お前の献身のお陰でな…」

 

風が吹き抜ける風見野市の空を見上げた者達が太陽が輝く青空の美しさに心が引き寄せられる。

 

尚紀はいと高き者のように天にいる、風に乗って私達の頬を撫でてくれる。

 

そんな風に思えた女達は自立する強さを示していくだろう。

 

「安心して…尚紀さん。みんな強くなっていく…これこそが貴方が望んだ…人類の革新だね…」

 

微笑んでくれるまどかの長い髪を撫でてくれるようにして、優しい風が吹き抜けていった。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――

 

八紘一宇(はっこういちう)ワンワールド思想(共産主義)を世界にばら撒いた国際金融資本家団体(ユダヤの啓明結社)は崩壊を迎える。

 

世界を一つの家にするなどという愚劣極まった支配思想を捨て、それぞれの地域()が独立する。

 

神武天皇が唱えた八紘一宇は戦争プロパガンダになり易く、これを語る者は資本家の犬なのだ。

 

それぞれの国々がそれぞれの家となり、それぞれの民族という家族が自分達の家を支えていく。

 

それぞれの家は経済的な繋がりだけを求める光景こそ、企業活動をする経済的な繋がりと同じ。

 

これこそ自然体であり、自然体でいるからこそ人々は争いごとを求めず安心して働けるだろう。

 

資本主義によって金の亡者共を利用しての共産主義世界建設を行った者達は全員地獄に落ちる。

 

カナン族ユダヤ共はアケローン川を埋め尽くす程の勢いで流れていき、地獄の底まで進むのだ。

 

「全く…とんでもない罪人共の量だな。地獄の入口が死者で詰まらないか心配になってくる」

 

どざえもんの如きカナン人の死体の群れが浮かぶ川を進むのはカロンが漕ぐ船である。

 

その船に乗っているのは霊体となった男女の姿。

 

一人は嘉嶋尚紀、もう一人は橘千晶であり、アリナ・グレイ。

 

先に死んだアリナは尚紀が来る事も分かっていたのか船に乗るのを待ってくれていたようだ。

 

「……ねぇ、尚紀君。貴方は覚えているかしら…?」

 

「……何をだ?」

 

ようやく口を開いたアリナの霊体は橘千晶として語り掛けてくる。

 

顔を上げた男もまたルシファーではなく人間時代の嘉嶋尚紀として接する態度を示すだろう。

 

「ボルテクス界で私が貴方に語った言葉よ」

 

どうして世界は滅び、ボルテクス界になったのか?

 

もう前の世界は不要な存在を許容出来なくなってたと千晶は尚紀に語っている。

 

「創り出す事もなく、何も無い時間が過ぎていくだけだった…それが愚民が築いた支配の檻だ」

 

「その通りよ…そのせいで人々は自分達の人生と直結する政治問題にすら無関心となったわ…」

 

「政治を語る者は空気が読めない邪魔者扱いをされ…娯楽という堕落しか共有出来なかった…」

 

「政治とは人々の人生を築く一番の手段なのに…人々は政治を知る知恵を求めなかったのよ…」

 

「だからこそ人々の人生を創り出す政治は生まれず…政治を丸投げしたエリートは腐ったんだ」

 

「私が貴方に語りたかった部分の本質はそこよ。だからこそ私は力の国を築きたかった…」

 

「弱肉強食…それもまた国作りに必要だと俺は知った。選民主義でしか同じ民族を救えない…」

 

「博愛や平等という漫画の主役が好みそうな価値観では自滅する…地域資源は限られてるから」

 

「地域という家が生む財産はその家の住人達のものだ…それを博愛や平等で奪われてきた…」

 

「負担を分かち合うという綺麗な化けの皮で気持ちよく騙され、家の財産を外国に奪われたの」

 

「詐欺師は常に化けの皮を利用するからな…それを見抜くには…知恵の力が必要だったんだ」

 

「私や勇君、それに尚紀君が生きたかつての世界に…その力の光景はあったかしら?」

 

「無かったな…話せる話題は常に娯楽や色恋沙汰やバラエティ…そんな腐った話題だけだ…」

 

「だから世界は腐り、政府や人々も腐ったの。世界を終わらせるのはいつだって人の腐敗ね…」

 

「その光景はボルテクス界ですら生まれた…人間のマネカタ共は変わらずに羊の群れだった…」

 

「自分で何かを決めようとせず、全体に流され、リーダー的な権威に流される…腐敗の光景よ」

 

ボルテクスのマネカタという堕落者共を殺戮した千晶を見た時、人修羅は結果論に支配される。

 

殺戮という結果だけで千晶を責め、千晶がどうして羊の群れを滅ぼしたのか理由を考えない。

 

だからこそ千晶と尚紀は決裂してしまったのだと気づいた時、後悔の念が生み出されていく。

 

「あの時は俺が悪かった…千晶。お前が行った殺戮という結果だけで…お前の全てだとした…」

 

「いいの…それを分かってくれただけで私は十分よ。それに貴方は…世界を強くしてくれた」

 

「弱さを許容させれば人は何処までも腐敗する獣共だ…だからこそ俺は弱さを許さない」

 

「個体差はあっても強さを求める純粋さこそ人類の革新ね…皆が二宮金次郎になって欲しい」

 

二宮尊徳と呼ばれた二宮金次郎は江戸時代後期の経世家、農政家、思想家である。

 

幼少時代から貧困に落ちた彼は重労働を行いながらも言い訳をせずに勉学に励んだ存在。

 

後に大成して農村復興政策を指導した農政家となった彼は勉学の模範的存在として像が残る。

 

重たい薪を背負いながらも片手には勉強本が持たれた彼の像こそ人類の革新の象徴となるべき。

 

そう信じた尚紀は知恵という力を求め、国作りという選民主義の為にヨスガを求める者となる。

 

「人の弱さを嘆いたのは千晶だけじゃない…裕子先生や氷川ですらも同じ憂いを抱えていた…」

 

「ヨスガもシジマも人類の堕落を憂いた点では同じ勢力…そんな私達を貴方は救ってくれたわ」

 

「俺が救うんじゃない、民の生涯に懸けた努力で救われるんだ。縋りつく奴らを俺は許さない」

 

「その通りよ。自由とは責任の道…自由を守りたいなら生涯勉強という責務を果たすべきよ」

 

「それが実現した時こそ千晶だけでなく、裕子先生の憂いも救われる。()()()()()()()()()()

 

「ありがとう…尚紀君。貴方こそが私のヨスガを完成させてくれた…裕子先生を救ってくれた」

 

千晶でありアリナの霊体が立ち上がった後、尚紀の霊体の横に座って頭を肩にもたれさせる。

 

彼の片腕を抱きしめる彼女は千晶ではなく、アリナとしての言葉も伝えてくれるようだ。

 

「千晶の気持ちや裕子ってティーチャーの気持ちはアリナと同じ。アリナも堕落を憎んできた」

 

「虐められたって言ってたな…弱い奴らは常に強者の足を引っ張りながら腐敗地獄に堕とす…」

 

「安らぎばかり求める連中の無責任で横暴な態度が大嫌いだった…それはハッピーじゃない…」

 

「現実逃避しているだけさ。そんな連中を変えたかったからこそ…俺は革命家になったのさ…」

 

「千晶達だけでなく、アリナのハートもアナタは救ってくれたカラ。本当に…感謝してる…」

 

ボルテクス時代のわだかまりを超えられた者達を運ぶカロンも顔を俯けてしまう。

 

せっかくわだかまりが解けても二人が堕ちる先は永遠の地獄となるだろう魔界の奥底。

 

そこに囚われた者は一切の希望を捨てねばならず、永遠に苦しむ魂の地獄に苛まれるだろう。

 

「……母が世話になった人修羅の魂を地獄の底に連れていくのは忍びないが…悪く思うなよ」

 

「構わないさ…俺達はそれだけの大罪を背負った者達だ。永遠の責め苦を俺達は望んでいる」

 

「アリナはアリナがデリートしてきた連中の数だけジェノサイドされ続けても構わないカラ」

 

「同じ気持ちだ。新たなルシファーという悪魔概念となった以上…()()()()()()()()()()()()

 

「そうか…分かった。では汝達は周りを流れるカナン族諸共…ジュデッカまで運んで進ぜよう」

 

神曲ダンテで描かれたコキュートス河の最下層こそがジュデッカと呼ばれる氷結地獄。

 

イエス・キリストを裏切った使徒のユダ、そして円の中心にはルシファーが落とされた領域。

 

醜く巨大なルシファーはその顎でユダを永遠に噛み殺し続けるとして神曲ダンテで描かれる。

 

「ジュデッカ…俺に相応しい領域だ。俺は永遠に殺し続けよう…カナン族化したユダ族共をな」

 

「ルシファーナオキがユダと同じネーム民族を永遠にジェノサイドする…ゾクゾクするヨネ♪」

 

「汝が選んだその道こそが…神曲ダンテで描かれたルシファーの姿となるだろう」

 

「ならば本望さ。同じ名を持ったデビルハンターと共にボルテクス界を超えた俺だからこそ…」

 

――()()()()()()()()()()

 




真女神転生3ドラマCD主人公名の嘉嶋尚紀は混沌王ルートに進まなかったキャラとして知られており、高尾裕子ルートに進んだ主役なんですよね。
つまり人修羅の嫁として名高いピクシーと共に覇道を生きる道を否定してピクシーを捨てた主役なわけなので、尚紀の嫁はピクシーにならなかったというわけですな(汗)
人間時代に戻れたなら千晶とくっつきそうだったので、千晶なアリナとくっつけてみました(汗)
次で最終話となります。
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