人修羅×まどマギ まどマギにメガテン足して世界再構築   作:チャーシュー麺愉悦部

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最終話 また会う日まで

魔法少女の世界で生きた記憶も遥か昔か、昨日の事か、それすら分からない領域がある。

 

それこそがあの世であり、地獄に落ちた嘉嶋尚紀はコキュートスのジュデッカで封印される。

 

その地において封印された存在とは原天使サタンの姿であり、超巨大な氷海の中央に座す。

 

下半身が氷漬けのサタンが行うのは7つの頭部のうち、6つの口を用いた殺戮行為。

 

<<ギャァァァァァーーッッ!!!>>

 

カナン族ユダヤという大罪人達の霊体はサタンの顎で噛み砕かれていく。

 

しかし霊体は不滅であり、食い殺され続けても蘇り、再び殺される罰を永遠に与えられる。

 

氷海の下には億単位のカナン族ユダヤ共が氷漬けであり、地獄の裁判官の極刑を浴びるのだ。

 

その光景を見上げている存在とはダブルボタンスーツ姿のルシファーである。

 

裁きの暗黒体と知恵の悪魔体を切り分けられてしまったルシファーは一体誰なのか?

 

裁きの人修羅か?それとも知恵のルシファーか?

 

「ルシファー閣下……で、あらせられますよね…?」

 

背後に現れた存在とは滅びて魔界に戻されたルキフグスの巨体である。

 

背中を向けたまま無言を貫くルシファーであるが、自分が誰なのかを語らずに口を開きだす。

 

「…そう呼びたければそう呼ぶがいい。何用だ?私は大魔王の地位を蠅王に譲った立場だぞ?」

 

「その件で遥々ジュデッカまでお伺いする羽目になりまして……」

 

かつて人修羅として在ったルシファーはベルゼブブに大魔王の座を譲ると宣言している。

 

その為魔界に堕ちた悪魔達の代表者として名乗りを上げたのは蠅王であり、その統治が始まる。

 

しかし蠅王はバラバラにされた二ムロデを起源に持つ魔王であり、他にも肉片魔王がいるのだ。

 

「ベルゼブブ殿が大魔王になれるなら、自分達も大魔王になれるとベルの戦争が始まりました」

 

成り上がり者のベルゼブブ側に組した魔王は少なく、多くの魔王達が攻め込んでくる。

 

それを迎え撃つ大魔王ベルゼブブの戦争のせいで魔界は戦国時代に逆戻りしたというのだ。

 

「暴食を司る蠅王は己の欲望を満たす暴食しか行えなかったか…私の読み通りであったな…」

 

「魔界にお戻りください…ルシファー閣下。貴方様はこのような牢獄で終わる御方ではない」

 

権威や権力に対して全く興味を示さない態度のルシファーは顔も向けずに沈黙している。

 

そんな時に近寄ってきたのはアリナ・イナンナであり、不気味な笑顔を浮かべてこう告げる。

 

「いいんじゃない?ユダ族の絶叫を聞きながらアートするばかりじゃ…単調な毎日だったし」

 

ルシファーと共にジュデッカ牢獄に囚われたアリナが繰り返したのは氷のアート制作である。

 

ユダ族共が悶え苦しむ姿を九相図で表現した氷の彫刻ばかりが並ぶ牢獄空間になったようだ。

 

「刺激に飢えているのか?」

 

「イグザクトリー♪刺激があるからデビル人生は楽しい……そうでしょ?」

 

「フッ……そうだな」

 

踵を返したルシファーの背中についていく忠臣達であるが彼の態度は不気味そのもの。

 

かつての尚紀のような態度を見せず、大魔王ルシファーとしての態度を繰り返す。

 

(一体彼は…誰だというのだ…?かつてのルシファー閣下なのか…?それとも……)

 

正体不明のルシファーはイナンナとルキフグスを連れながらジュデッカを去っていく。

 

残されたのはユダ族を永遠に裁くサタンの姿だけであり、その存在は既に独立魔王であった。

 

……………。

 

魔界戦争を制覇したルシファーはベルゼブブ軍を打ち倒すのだが、彼は選択を持ちかける。

 

このまま放逐されて何処かの島に幽閉されるか、再び副王として忠を尽くすか選ばされる。

 

迷い抜いたベルゼブブであったが惨めな島流しよりはマシだと大魔王の座を譲り渡す。

 

こうしてルシファーは再び大魔王の地位に返り咲くこととなり、ケテル城の城主に戻る。

 

それから一体どれ程の年月が過ぎたのか誰も分からない時間が過ぎた頃。

 

「……そうか、ようやく見つかったか」

 

大魔王の玉座に座るルシファーの元に訪れたのは忠臣のイナンナとルキフグスの姿。

 

ルキフグスは未だに目の前の存在に恐怖を感じており、何者なのかを疑ってしまう。

 

(見た目や態度はかつての閣下そのものだ…ならばこのまま…ついて行くべきだろうか…?)

 

ルキフグスの目に映るルシファーはかつての大魔王の姿そのもの。

 

しかしアリナと千晶の目に映るルシファーの姿は嘉嶋尚紀に見えている。

 

ルシファーは概念存在であり、概念を観測する者によってその形は変わって見えてくる。

 

唯一神を至高神として称える信者もいれば、邪神だとするグノーシス主義者がいるのと同じだ。

 

(ほんと…アリナも含めてどいつもこいつも…見たいものしか、見ないヨネ…)

 

何が正しいかは人それぞれの解釈があり、ルシファーの正しさもそれぞれの解釈で決まる。

 

虫人の天斗共がルシファーを見ればベルゼブブに見えたりもする不安定な概念存在となるのだ。

 

「この宇宙の地球はアナタがヒューマンとして生きた宇宙と同じ条件だと思うワケ」

 

右手にブラックキューブを生み出したアリナがキューブを分解しながら浮遊させる。

 

浮遊したキューブが映し出すアマラ宇宙の地球の日本を見た時、ルシファーが立ち上がる。

 

「自分と似たドッペルゲンガーは2人いるというが…当たっていたようだ…」

 

映像に映し出された存在とは嘉嶋尚紀と瓜二つの姿をした少年である。

 

隣には橘千晶と瓜二つの姿をした少女や新田勇と瓜二つの姿をした少年もいる。

 

「名前までは同じじゃないと思うケド…こいつらで試してみる?」

 

「この世界も腐敗を極め、ボルテクス界化しようとしております。再び繰り返すのですね…?」

 

「うむっ、この宇宙を試してみよう。上手くいけば…再び混沌王を生み出せるやもしれん」

 

「閣下は唯一神に取り込まれた為に唯一神の一部となり…自由の存在ではなくなりました…」

 

「私は真の混沌を体現する者には…もうなり得ない。だからこそ…継承が必要なのだ」

 

「今度こそ唯一神を倒し、至高天を制する…そうでなければ唯一神はいくらでも蘇れる…」

 

「我々CHAOS勢力の新たな黒き希望を築き上げよう。その為の準備をお前達は行うがいい」

 

準備を任せたルシファーが玉座を離れていく。

 

背中に声を掛けるアリナに対して振り返った彼がこう告げる。

 

「昔の女仲魔と会ってくる。彼女にも…果たして欲しい大事な役目があるんだ」

 

「あっそ、ちゃんと準備しておくから行ってくるワケ。それと…浮気したらデリートするカラ」

 

「……俺達って、恋人関係だったっけ?」

 

とぼけた顔を浮かべるルシファーに対し、アリナは全身から怨念オーラを噴き上がらせてくる。

 

大慌てしながら去っていく大魔王を見送るルキフグスは一層不安になってくるのであった。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――

 

何処かの宇宙がアマラの法に従い、ボルテクス界となる末路を迎えていく。

 

東京受胎に巻き込まれた少年は死を迎えるのだが、高尾裕子と瓜二つの女の力で救われる。

 

しかし人間の少年がボルテクス界に放り込まれたところで殺されるしかないだろう。

 

死にかけた少年は暗黒領域に囚われており、上半身は裸にされている。

 

彼を見下ろすようにして立つのは喪服を着た金髪ロングの少年と喪服を着た老婆の姿。

 

そして彼らを見守る存在とは白スーツを纏った金髪ロングの老人と車椅子を支える喪服淑女。

 

嘉嶋尚紀が人修羅となった時と同じ光景を生む存在同士が顔を向け合い、念話を送る。

 

<表と裏……どっちに賭ける?>

 

喪服の金髪少年は尚紀が化けた姿であり、白スーツの老人は彼に取り込まれたルシファーの姿。

 

自分自身に語り掛けるようにして問われた答えを白スーツの老人は返してくれる。

 

<……表だ。私の全てを賭けようじゃないか>

 

<それでこそ俺の半身だ。俺も表に全賭けだ>

 

喪服の少年が右手を持ち上げ、掌の上に浮遊させたのは己の力の結晶であるマガタマ。

 

喪服の老婆が闇の世界で浮かんだ尚紀と瓜二つの少年を両手で抑え込む。

 

「動いてはいけません……痛いのは一瞬だけです」

 

マロガレの世界から新たな人修羅を生み出す願いを込めた金髪の少年がこう告げる。

 

「これでキミは……悪魔になるんだ」

 

指で摘まんだマガタマのマロガレが少年に寄生した途端、少年が絶叫していく。

 

「グギャァァァァァァァーーーーーーーッッ!!!!」

 

死ぬ程痛い地獄の苦しみの中で彼の体は悪魔の姿に変化させられていく。

 

その姿こそ人修羅の姿であり、かつての嘉嶋尚紀の姿でもあるだろう。

 

新たな悪魔を創造した者達は新生人修羅を祝福し、ボルテクス界に送り出す。

 

役目を終えた白スーツの老人と喪服の淑女が消え去り、喪服の老婆が正体を表す。

 

喪服の老婆に変身していたのは嘉嶋尚紀の最初の仲魔としてボルテクス界を旅した妖精だ。

 

「……もうお別れなんだね、尚紀?」

 

顔を俯けながら無言となる金髪の少年であるが、ゆっくりと頷いてくる。

 

「人修羅としての俺の全ては…あいつに継承させられたと思う。後はもう…あいつ次第だ…」

 

「一緒にいさせてよ…だってあたしは尚紀のパートナーとして最初から旅した仲魔だよ…」

 

「だからこそお前に頼みたい。最初の俺と出会った仲魔だからこそ…あいつを見届けてやれ…」

 

ルシファーとして滅ぼされていく末路を選んだ尚紀はかつてのピクシーを巻き込まない者。

 

大切な仲魔だからこそ、罪人として永遠に滅ぼされる末路にさせたくない思いがあるのだ。

 

「いつかあいつは俺の元まで攻め込んでくるだろう…その時は容赦なく…俺を倒してくれ」

 

再び右手に生み出したマガタマは『アンク』であり、ピクシーに託してくれる。

 

「俺と共にボルテクス界を超えたマガタマを俺は撒くだろう…あいつの力となるはずだ」

 

「尚紀……」

 

「俺の力はあいつに継承させられた…あいつはもう一人の俺となるんだ…寂しくはないさ」

 

大粒の涙を零し続けるピクシーに振り向いた尚紀が一指し指で頭を優しく撫でてくれる。

 

今生の別れにはならないと言ってくれた金髪の少年の頬に抱き着いた妖精は泣き崩れていく。

 

そんな彼女を片手で抱きしめる尚紀はルシファーとしての運命を全うする者となるだろう。

 

そして新たなボルテクス界の旅路が再び始まっていくのだ。

 

「君は……何なんだ?妖精……なのか……?」

 

新宿衛生病院を彷徨っていた人修羅と出会った存在こそ、かつてのボルテクス界を超えた妖精。

 

ピクシーは力と正体を隠しながらも笑顔を浮かべながら新たな人修羅に語り掛けてくる。

 

「……へぇ、見ない顔の悪魔ね?あなたもなにか探し物?」

 

「う…うん…色々と探してる…説明し辛いけどさ…」

 

「ねぇ、その探し物だけど…あたしが仲魔になって一緒に探してあげようか?」

 

「君が…俺の仲魔になってくれるのか…?」

 

「あたしもちょうど探してたところなの。ヨヨギ公園に行くのに手を貸してくれる悪魔をね」

 

しげしげと新たな人修羅を見つめてくるピクシーは不安そうな顔を浮かべてくる。

 

この人修羅を見ていると最初の弱々しい人修羅尚紀を思い出すのか寂しそうな顔を浮かべる。

 

「たいして強そうじゃないけど…あなたで我慢してあげる。どう、あたしを仲魔にする?」

 

「分かった、仲魔にするよ」

 

かつての尚紀のように即答してくれたのが嬉しかったのか、笑顔を浮かべて宙返りを行う。

 

新たな人修羅に尚紀の面影を感じつつも尚紀との約束を果たすピクシーはこう告げるだろう。

 

「…あたしは、妖精ピクシー。今後ともヨロシク、ね」

 

最初の仲魔を手にした新たな人修羅はボルテクス界を旅する者となる。

 

その過程でアマラ深界にも導かれ、ルシファーに誘惑された末に魔人の試練も受ける者となる。

 

魔人の試練の中には魔人でない存在もいると伝えられた人修羅はマントラ軍本営前に辿り着く。

 

「……なんだ?」

 

ボルテクス界を流れる砂の風が凍り付く程にまで恐ろしい殺気を感じてしまう。

 

後ろを振り返ると、階段の上に立っている者達がいる。

 

「お…お前は……」

 

階段に立っていたのは、漆黒のハイカラマントを靡かせる書生と黒猫。

 

書生の目元は目深く被った学帽によって伺えない。

 

風になびくマントの裏側は完全武装をしているようだ。

 

その人物こそ魔法少女世界で人修羅と戦い、共に革命を成した14代目葛葉ライドウの姿。

 

足元に立つ黒猫のゴウトは大正時代のゴウトであり、未来のゴウトではない様子。

 

そんなゴウトが新たな人修羅を見つめながらも不敵な笑みを浮かべながらこう告げる。

 

「……人修羅とやら、まずはその力を見極めさせてもらうぞ!」

 

仕掛けてくると判断した人修羅が構えるが、隣のライドウは動こうとしない。

 

怪訝な顔を向けるゴウトが戦いを促すのだが、ライドウは顔を上げながら人修羅を見つめる。

 

懐かしい友を見つめるような顔を向けたライドウがこう質問してくるのだ。

 

「君……名前はなんだ?悪魔の名ではない…人間としての君の名を……教えてくれ」

 

優しい表情を浮かべる男に敵意を感じなくなった人修羅は自分の人間名を伝えてくれる。

 

「シン……()()()()だ」

 

「間薙シンか……君はどんな男に成長していくのか…見極めさせてもらおう!!」

 

かつての友から依頼の電話を受けたライドウはピクシーと同じく新たな人修羅を託される。

 

試す者として戦いを挑んでくるライドウに対し、人修羅もまた光剣を生み出す。

 

「タァァァーーーッッ!!」

 

「くっ!?」

 

仕掛けてきたライドウの赤口葛葉と人修羅の光剣がぶつかり合う。

 

鍔ぜり合う両者であるが人修羅はライドウの態度が不思議なのかこう叫んでくる。

 

「お前は俺を知っているのか!?」

 

「お前とよく似た男は知っているが…その男を継ぐ者となれるかどうか…自分に力を示せ!!」

 

「俺とよく似た男だと…?訳の分からないことを言うなぁ!!」

 

デビルサマナー葛葉ライドウの力は圧倒的であり、今の弱い人修羅では太刀打ちできない。

 

辛くも生き残れる程度の力を示せた事でライドウは刀を仕舞ってくれたようだ。

 

去っていく男達の姿を見送る人修羅はボルテクス界だけでなくアマラ深界でも彼と出くわす。

 

尚紀の頼みを聞き入れたライドウは間薙シンを試す者となり、支える者にもなるだろう。

 

シンとライドウはボルテクス界を共に超える仲魔となった光景こそ、尚紀とダンテの光景。

 

彼らはかつての尚紀と同じような苦しみを超え、カグツチ塔を昇る時が訪れるはずだ。

 

千晶と似た別人の少女、勇と似た別人の少年、氷川と似た別人の男性は既にコトワリの神。

 

それぞれのコトワリを懸けた戦争が行われるカグツチ塔をシンもまた昇っていく。

 

既に彼はアマラ深界を制した混沌王であり、かつての尚紀のように人の心を失っている。

 

尚紀のようにボルテクス界を超えたシンは尚紀が撒いたマガタマを手に入れ、力をつける。

 

その力はいずれマサカドゥスを手に入れられる次元にまで達していくだろう。

 

コトワリの神々を超えたシンは無限光カグツチさえも打ち倒し、再びボルテクスを破壊する。

 

生まれるはずだった世界は再び滅び、原初の混沌だけが広がる空間でシンを呼ぶ声が響く。

 

<俺とルシファーの賭けは勝ったな。間薙シン…お前こそが俺を継ぐ者だ>

 

シンの前に現れたのは彼を悪魔に変えた喪服の少年と白スーツの老人。

 

彼らは尚紀でありルシファーとしてシンに最後の試練を与える者となるだろう。

 

最高の闇の力として屹立したのは暗黒体ルシファーの巨体であり、シンに死闘を挑んでくる。

 

尚紀と同じように苛烈な戦いを挑んでくるシンに対して、尚紀は心から喜びを感じていく。

 

(全くよぉ…鏡と戦う気分だぜ。お前の道もまた俺が進んだ道…お前なら…やり遂げられるさ)

 

唯一神に戦いを挑めるだけの人修羅として十分完成したと判断したルシファーが姿を変える。

 

その姿は人修羅を継承したせいで発光する入れ墨や首裏の一本角を失ったルシファーである。

 

一本角の代わりに牛のような二本角が生え、背中には光り輝く十二枚翼が広がっているようだ。

 

「有難う…ピクシー、ライドウ…お前達の協力のお陰で…俺は新たな俺を完成させられた」

 

「友の頼みなら時代どころか次元さえも自分は超えてやる。頼ってくれて嬉しかったぞ…尚紀」

 

頷いてくれたライドウに手をかざし、大正時代に帰らせる為にワームホールを開いてくれる。

 

ワームホールから現れた天輪鼓を回したライドウがゴウトと共に消失していく。

 

シンに別れを告げたライドウとゴウトは依頼を果たした者として自分達の道に進むだろう。

 

残されたピクシーはシンの肩に座りながら光り輝くルシファー尚紀に対して微笑んでくれる。

 

「あんたが期待したシンはちゃんと尚紀になってくれた…これからはあたしの旦那さんだよ♪」

 

「フッ…お似合いのカップル成立を祝いたいところだが、俺達は倒すべき敵を抱えてるんだ」

 

ルシファーが指を指す方角には天使軍が展開した唯一神の御座の光が見えている。

 

黒い鳥の姿に変化したルシファーの導きの元、シンは歩みを進めていく。

 

その瞳は悪魔の如き真紅の目であり、彼の後ろにはCHAOSの堕天使軍が現れていく。

 

かつての尚紀が混沌王としてLAWに戦いを挑みに行く光景が再び生み出されていくのであった。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――

 

「裕子先生の憂いを解消出来る魔法少女世界を残し…シンと共に唯一神も倒す事が出来た…」

 

新たなハルマゲドンはCHAOS勢力の勝利となり、LAWの勢力は敗残兵となり散っていく。

 

生き残った大天使達を狩り殺す為の軍備を整える為に魔界に帰った尚紀は玉座に座り込む。

 

それに対して不服なのはアリナ・イナンナであり、座る場所を間違えていると言ってくる。

 

「アナタはヤハウェを倒せた…なのにどうしてアナタは至高天の椅子に座らないワケ?」

 

「俺は唯一神の一部だと言っただろ?俺の中にはルシファーだけでなく…唯一神もいるんだ」

 

「そんなアナタが至高天の玉座に座ったらヤハウェと同じ宇宙しかクリエイト出来ないワケ?」

 

「だからこそ俺は別のナホビノに至高天の玉座を譲る。まどかに断られた以上は別の誰かが…」

 

「間薙シンも玉座に座るのを拒んだわけだし、また無意味な時間だけが過ぎていくんですケド」

 

玉座を託すに相応しい者を考えた時、頭に浮かんだのは牛神バアルに取り込まれた少年の姿。

 

いつかあの少年も別の宇宙で神か悪魔になるのなら、試してみたいと尚紀は思っている。

 

「俺は相応しいナホビノが現れるまでは至高天の玉座を守る管理人となるだろう」

 

「神霊サタンの代わりを務めるのは…大魔王サタンってワケ?」

 

「そういう事だ。俺もザインと同じ道を進んだ者…だからこそザインの役目を果たしてやろう」

 

「悠長に構えている余裕はないんですケド。アナタからオンリーゴッドが蘇るかもしれないし」

 

「その時は俺の首を跳ね落とせ。俺も可能な限り…俺の中の唯一神を抑え込んでいこう」

 

ケテル城の城主としての役目を代わらせる者としてルシファーはアリナ・イナンナを指名する。

 

「ベルゼブブには求心力が足りない…だからこそアリナ、お前がCHAOS勢力のトップとなれ」

 

「まるでエンキの権威がイナンナであるアリナに移り変わる神話のような展開なんですケド?」

 

「シュメール神話は権威が移り変わっていく内容だ。最古の神話はあらゆる神話に影響する」

 

「オーケー、引き受けてあげる。エリドゥからウルクへ権威が移るように…メー(権威)を引き継ぐ」

 

「俺の判断を良しとしない魔王連中は必ず現れるだろう…お前の舵取りは過酷となるな」

 

「アリナの足元を掬いにやってくるデーモンロードなんて、デリートしてイートするカラ♪」

 

「お前ならやりかねないな…その恐ろしさが逆に頼もしい。宜しく頼むぞ…アリナ」

 

「引き受けるけど…偶には魔界に帰って来て欲しいんですケド?じゃないと……寂しいカラ」

 

「……分かった分かった、そんな泣きそうな顔するなよ。偶には帰ってやるからさ」

 

ケテル城の上層部にある城館バルコニーに立つ二人が別れを惜しむように抱きしめ合う。

 

アリナはルシファーの変化に薄々気が付いており、帰らない者になりそうな怖さを抱えている。

 

「唯一神に喰われ…まどかとほむらに滅ぼされた俺の中には唯一神の知恵が宿っちまった…」

 

「ヤハウェと同化し、ヤハウェの知恵を手に入れたナオキは…宇宙の法則を理解した者だヨネ」

 

「故に俺は悪魔というよりは神だろう…いずれは…()()()()()()()()()()()()……」

 

「だからこそ…アリナの前から消えてしまうよりも先に…やり残した事を果たして欲しいワケ」

 

「やり残した事だと…?大魔王の引継ぎ以外に何かやり残した事があったかな……?」

 

「ハァァァァァァ……この朴念仁!!鈍感!!女たらし事象のダメ男!!」

 

強烈な平手打ちを喰らったルシファーがバルコニーから転落し、頭から地面に落ちてしまう。

 

「ややっ!?ルシファー閣下が天から堕ちてきた!?まぁいつもの事だが…しっかりいたせ!」

 

体が地面に埋まった大魔王の元まで駆けつけたのはデカラビアであり、大根抜きで救出する。

 

「いたたたた…アリナにぶん殴られたお陰で…やり残した事を思い出しちまったな…」

 

「やり残した事ですと?」

 

「デカラビア…ケテル城に近づいてくる連中の強大な魔力に気が付いてないのか?」

 

「むっ!?こ、この魔力はまさか…魔剣士スパーダ!?しかも二体分感じさせてくる!?」

 

「フフッ…俺が天に消えるよりも先に来てくれたようだ…盛大に歓迎してやろうじゃないか」

 

魔界の奥底にそびえるケテル城の城壁に近寄ってくる存在とは巨大な大剣と刀を持った男達。

 

赤いコートと下は灰色ポロシャツに黒い革パン、頭はセミロングの白髪男は無精髭塗れ。

 

隣の男は青みがかった黒い貴族コートとベストを纏い、頭の白髪はオールバックに纏めている。

 

どちらも同じ顔つきに見える事から兄弟なのだと推測出来るはずだ。

 

「魔界の悪魔共の親玉が住んでるっていう城はここか?随分と人間臭い見た目の城だよな?」

 

「人間臭い大魔王が住んでいるというわけか?人間文化が捨てきれん貴様好みの城だろうな」

 

「さて、そんな大魔王の城に喧嘩を売りに行くんだ。今まで以上に楽しめそうだぜ」

 

「そうでなければ足を運んでやった価値が無い。俺を楽しませない悪魔共なら切り捨ててやる」

 

「楽しませたって、お前は切り捨てる奴だろ、バージル?」

 

「フン…そういう貴様も銃弾をたらふく喰わせてきただろうが、ダンテ?」

 

赤いコートの男は神曲ダンテと同じ名であり、バージルは神曲ダンテに登場する道先案内人。

 

バージルと共にダンテは魔界に現れ、そしてルシファーの元へとついに辿り着く時がくる。

 

<<よく来やがったな、ダンテ。隣の奴は……バージルか?>>

 

巨大城壁の城門の上に着地したのは大魔王ルシファーであり、不敵な笑みを浮かべてくる。

 

「テメェがルシファーか?それより…何処かで会ったか?俺を知っているような口ぶりだな?」

 

「ああ、俺がルシファーだ。そしてかつてはお前と共にボルテクスを超えた男の成れの果てさ」

 

そう言われた瞬間、ダンテの頭の中には人修羅として生きた嘉嶋尚紀の姿が浮かんでいく。

 

「尚紀だってのかよ…?随分と見た目が変わったようだな?」

 

「アンタも変わったようだ…年老いたお前でもその強さは変わりないか…俺が見極めてやる」

 

「話を勝手に進めるな。貴様が魔界の親玉ならば…俺を楽しませられるか試させてもらおう」

 

「バージル…お前の話はダンテから聞かされてきた。会えて嬉しいぜ…俺の刀もそう叫んでる」

 

ダブルボタンスーツを掴んだルシファーが上着を投げ捨て、背中から十二枚翼を出現させる。

 

頭の左右からは二本角が生え、左手には将門の刀が握られている。

 

鞘ごと刀を持ち上げながら構えてくるその佇まいを見たバージルは彼の流派を一瞬で見抜く。

 

「その構えはスパーダの剣技か?魔界時代の奴は弟子を何人か鍛えていたとは聞かされたが…」

 

「バージル、奴は俺達の親父の弟子じゃねぇ…なのに親父の剣技を何処で覚えやがった…?」

 

「俺の胸を魔剣スパーダで貫いてくれたお前のお陰さ。魔剣の欠片は実にお喋りだったぜ?」

 

「成程…親父の魔剣から直々に剣技を仕込んでもらえたようだ…こいつは厄介だな」

 

「猿真似程度でスパーダの剣技を体得したと己惚れるなよ…本物の剣技を俺が見せてやる」

 

「そういう意味じゃねーよ…尚紀の奴…とんでもない成長をしてやがる…あいつの目を見ろ」

 

「奴の目だと……?」

 

貫くような尚紀の眼差しを見た途端、バージルの目が見開いていく。

 

「バカな……奴の目は……スパーダと同じ……」

 

人類を救う為なら悪魔さえ裏切り、悪魔の軍勢と戦う孤独な戦士になれる。

 

それだけでなく天使の軍勢とも命懸けで戦った末に命を散らす自己犠牲までも体現出来る。

 

守りたい人類から社会悪にされてでも己を貫く男の眼差しこそ、魔剣士スパーダと同じ目だ。

 

「親父と同じぐらい強い男の目になれるまで成長してやがる…なんか俺、ワクワクしてきた」

 

「俺までワクワクさせられる…スパーダと同じ程の高みに至れる奴と戦いたかったんだ…」

 

バージルもルシファーと同じ構えを行いながら親指で鍔を弾き、閻魔刀(ヤマト)の刃が煌めきを見せる。

 

ダンテは背中のホルスターから二丁拳銃のエボニー&アイボリーを抜いて構えてくる。

 

不敵な笑みを浮かべた者達の体から極限の魔力が噴き上がっていき、背後に悪魔の姿を生む。

 

ダンテの背後に浮かぶのは赤き悪魔であり、真魔人化と呼ばれる形態。

 

衣服を取り込んだ魔人の姿は赤いスパーダのようであり、赤い四枚翼を羽ばたかせる。

 

その手にはダンテが新たに生み出した魔剣ダンテが握られており、体は漆黒の甲殻鎧だ。

 

バージルの背後に浮かぶのは青き悪魔であり、真魔人化と呼ばれる形態。

 

衣服を取り込んだ魔人の姿は青いスパーダのようであり、青黒い四枚翼を羽ばたかせる。

 

銀騎士めいた姿の肘は青い角の如きオーラを噴出させ、頭の左右からも角のように噴き上がる。

 

ルシファーの背後に浮かぶのは暗黒体ルシファーであり、互いが極限の魔力を爆発させていく。

 

「本気で行くぜ、ダンテ、バージル。これがルシファーであり嘉嶋尚紀の…最後の戦いだ!!」

 

「いいぜ…かかってきな、尚紀!!あの時の決着を…俺もつけたかったんだ!!」

 

「貴様を倒せばスパーダを超えられるやもしれん!それ程の悪魔と出会えた俺は幸福だな!!」

 

<<ショータイムってワケ?だったらアリナ達も混ぜて欲しいんですケドォ!!>>

 

「「「へっ?」」」

 

後ろを振り返ると黄金の翼を羽ばたかせながら飛んできたアリナやデカラビア達がやってくる。

 

城門の向こう側にはCHAOS堕天使達が勢揃いしており、魔王達は城門よりも大きく巨大化する。

 

ブラックキューブを生み出したアリナは横のルシファーに顔を向けながらウインクするのだ。

 

「パーティタイムは派手にやった方がより一層楽しめるんですケド?皆はどうなワケ?」

 

<<我ら堕天使はルシファー様と共に在り!大魔王閣下の城に攻め込む賊共は排除する!!>>

 

巨大城門が開いていき、おびただしい数の堕天使悪魔達が展開して武器を一斉に構える。

 

せっかくの楽しい決着を邪魔しに来た者達に対して調子が崩れた尚紀が頭を掻いていく。

 

「慕われるのは悪い気分じゃないが、時と場所を考えて欲しいな……どうする、お前ら?」

 

「へっ!パーティの飛び入り参加は大歓迎だ!久しぶりに狂っちまえるぐらい楽しめそうだ!」

 

「バカ騒ぎが好きな貴様に合わせてやるか…何人で来ようが…勝つのは俺達だ!!」

 

「悪魔同士の祭りってやつだな?さぁ……派手に踊ろうか、ダンテ、バージル!!」

 

「レディース、エーン、ジェントルメン!!アーユーレディ?」

 

<<イェア!!!!!>>

 

十二枚翼でブースト飛行してきたルシファーと同時に魔王や悪魔達が一斉に攻め込んでくる。

 

迎え撃つスパーダの息子達は真魔人化を行いながら激しい戦いを楽しく愉快に踊る者となる。

 

これこそがダンテと共にボルテクス界を超えた人修羅にとっては涙が出る程に嬉しい光景。

 

事象に成り果てる前に最高のライバルともう一度戦えるなら、もう思い残す事はない。

 

自分の全てをダンテに叩きつけながら戦う尚紀はダンテと共にバカ騒ぎに興じていく。

 

バージルの幻影剣をブラックキューブで防ぎながら戦うアリナもバカ騒ぎを楽しんでいく。

 

城壁では悪魔達が激しく楽器を演奏し、悪魔の凶宴は始まりから終わりまでクライマックス。

 

(ダンテとまた再会出来る奇跡が起こるなら…何度だって奇跡は起こせるさ)

 

奇跡と魔法が織りなす魔法少女世界に舞い降りた嘉嶋尚紀は奇跡を信じる者となる。

 

いつか何処かで絆を結んだ魔法少女達と再会出来る日を夢見ながらお祭りを楽しむのであった。

 

 

真・女神転生 Magica nocturne record

 

 

The End




新たな人修羅の物語は嘉嶋尚紀から間薙シンに受け継がれ、そして真女神転生5へと至るという流れで拙作は終了とさせて頂きます。
真女神転生3は主人公だけでなく登場人物達の名前も変更出来るという設定を活かし、違う人修羅物語へと継承させるというマルチバース展開に出来たというわけですな。
6年間という長期連載となりましたが、ここまで読んでくださった方々、本当に有難う御座いました!
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