人修羅×まどマギ まどマギにメガテン足して世界再構築   作:チャーシュー麺愉悦部

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参 復讐の女達

泣き崩れたアラディアを休ませるため迎賓館の客人室に連れていく魔法少女達。

 

黙って見送るハデスとヘカーテは顔を向け合いながら語り合う。

 

「無理もない…アラディアは虚構の神としてあらゆる神話と繋がらない者だった」

 

「虐げられた魔女達が生んだ夢想の救世主…我にとって…アラディアは他人とは思えん…」

 

「そなたもまた魔女達の指導者であり信仰の対象…しかし…どちらも魔女を救いはしない」

 

「我らは希望の象徴であり…それ以上ではない。だからこそ救われぬ魔女達に心を痛めた…」

 

「神とは自然…人間に豊穣を与えもするし、災害で殺しもする。矛盾を極めた陰陽合一存在だ」

 

「死ぬ事でしか救われなかった円環の魔女達のために…我は…何をしてやれる…?」

 

「神とは日の光と同じ…天から人々を照らすのみであり、直接下りて救う者ではないはず…」

 

「分かっているが…それでも我は心が痛い…その気持ちはきっと…アルテミスとて同じだろう」

 

「だからこそアルテミスはゼウス達と共に地上に降り…魔女達を救う革命戦争を戦ったか…」

 

「しかし地球のインキュベーターが滅びた以上は魔女も滅びるのみ…彼女の戦いは無駄だった」

 

無言になる者達であったが、アラディアの涙で濡れた机に目を向ける。

 

「これは……」

 

立ち上がったハデスがアラディアの席にまで歩いて来て机の上に転がる品を掴み取る。

 

「真珠か…アラディアの涙が固まって生まれたものなのだろうか…」

 

「まるで金星の女神であるアフロディーテ(イナンナ)だな。彼女の涙も海中に流れて真珠となったものだ」

 

「それだけではない。ペルシャやインドにおける真珠は月の光の結晶と呼ばれている」

 

「古代ローマにおいても同じように考えられている。()()()()()()()()…人魚とも関係が深い」

 

「月の神話と繋がり、悲しみを象徴する気高い石が真珠…アラディアもまた月の性質を持つか」

 

真珠は月光から生まれるものとローマでは考えられており、ペルシャとインドでも馴染み深い。

 

また人魚が叶わぬ恋人を想って流した涙が泡となって宝石に変わったという伝説もある。

 

そしてペルシャからギリシャにかけて()()()()()()()()()()()()()()()()()()という。

 

ペルシャからギリシャまで広く分布する印欧語由来の人名にはマルガリテスに連なる名がある。

 

マーガレット、マルゲリータ、マルガレーテ、マルグレーテ、そしてマルグリート。

 

どの名も由来は真珠であり、マルグリットと呼ばれる歴史人物の中には聖人もいる。

 

その人物こそ17世紀フランスの修道女であり、()()()()()()()()()()()()()()()であった。

 

「マルグリート……」

 

セイレーンに案内された客室のベットで涙に暮れるアラディアの世話をするのはワスである。

 

彼女は客室のベランダに立っており、月の光も届かない冥界の曇天に思いを馳せる。

 

「どうしてその名がわたくしの中に刻まれているのか分からない…それでも…この気持ちは…」

 

胸に手を当てて高鳴る鼓動を感じる彼女に湧いてくるのは救済を望む気持ち。

 

「わたくしの中に溢れる()()()()()()()()()こそが…マルグリートを表すの…?」

 

ワルプルギスの夜として世界に絶望を撒き散らす存在となったワスはアラディアに振り向く。

 

アラディア神を守護として纏い、円環のコトワリ神となった者こそが鹿目まどか。

 

「もしかして…わたくしが求めたマルグリートとは……」

 

胸を抑え込む手に力が籠り、自分の中に閉じ込められた存在を感じる彼女は苦しんでいく。

 

「わたくしは…誰なの…?生前のわたくし達が求めたマルグリートは…鹿目まどかなの…?」

 

ワルプルギスの夜とは魔女の集合体であり、群体神であるアラディアに宿る群体魔女。

 

だからこそワスの中には数々の魔女達が内包されたせいで生前の自分さえ見失っている。

 

「わたくし…は……」

 

彼女の記憶にフラッシュバックした光景は何処かの丘にそびえる教会。

 

そこでは多くの修道女達がイエス・キリストの誕生を知らせたベルを崇拝している。

 

祈りを捧げるシスター達の中にはセミロングの金髪と顔にそばかすが備わる少女もいる。

 

祈りの時間が終わっても熱心に祈りを捧げるそばかす少女は幻視を見る事になるだろう。

 

台座に備わるベルの下に立っていたのはインキュベーターであり、契約の天使。

 

フランスではキューブと呼ばれた個体はそばかす少女の望みを聞こうとするだろう。

 

「あっ……あぁ……」

 

そばかす少女は願いを伝えた事で白い魔法少女に生まれ変わる。

 

救いを与える彼女に奇跡を見出したイエズス会の司祭はよき理解者として支えてくれる。

 

コロンビエール司祭によってそばかす少女は修練長の地位にまで導かれていくだろう。

 

後輩の修道女らに聖心の信心を普及させようとそばかす少女は彼女達にも奇跡を与える。

 

この教会には魔法少女適正者が数多くいたため、全員をキューブに導いてしまうのだ。

 

修道女達は魔法少女となっていき、この世に呪いをもたらす魔女達と戦うようになっていく。

 

そんな彼女達を支える指揮官こそがそばかす少女であり、奇跡の力で穢れを吸い出してくれる。

 

その末路の景色が浮かんだ瞬間、ワスは頭を抱え込みながら発狂してしまう。

 

「いやぁぁぁぁぁーーーーーっ!!!」

 

両膝が崩れ落ちて喚き散らすワスに気が付いた円環の女神がベットから降りて駆けつける。

 

「どうしたのワスさん!?しっかりして!!」

 

再び塞ぎ込んだアラディアに代わり、まどかとなった円環の女神がワスを抱き起す。

 

「ごめんなさい…ごめんなさい…知らなかったの…お願い…許してぇぇぇぇ……っ!!」

 

穢れを吸い出す力を持ったそばかす少女に助けを求める修道女達が教会のドアを叩いている。

 

その苦しみは絶望の叫びとなっていき、次々と魔女に姿を変えていく。

 

穢れを吸い出すそばかす少女の力には限界があったため、修道女達は生命線を失ったのだ。

 

「これでいい。マルグリートの魔法に頼らせてグリーフシードを使わせない…上手くいったよ」

 

教会が見える木の枝に立つキューブは教会を破壊しながら膨張する巨大な魔女を見上げている。

 

マルグリートにもグリーフシード情報を伝えなかったため、穢れを溜め込むばかりだったのだ。

 

「これは興味深い現象だ。全ての人々を救いたい彼女の願いは呪いとなっても同じようだね」

 

教会を突き破った魔女は周囲の魔女共まで取り込みながら膨張を繰り返す。

 

「君には無理だったんだ…マルグリート。全ての呪いを受容するなんて…それこそ神の所業だ」

 

天に浮かびながら形を成す大魔女は愚かな道化だったのだと理解した瞬間、発狂してしまう。

 

<<アッハハハハハハハハハハッッ!!!>>

 

形を成した存在こそ、魔法少女達の歴史に何度も現れた大魔女ワルプルギスの夜である。

 

イエスの父である唯一神から遣わされた天使だと信じて契約するも騙されていたと理解する。

 

キリスト教は魔女達を迫害してきた宗教であり、唯一神にとって魔女とは敵であり貶めるもの。

 

そしてイエズス会初代総長はイルミナティ側であり、啓明結社はワルプルギスの夜に誕生する。

 

イエズス会所属の司教もまた唯一神の世界を貶める大魔女誕生を望んだ裏切者だったのだ。

 

愚かな道化に過ぎなかったのだと分かった大魔女は狂気の笑い声を永遠に繰り返すだろう。

 

ワルプルギスの夜が叫び続けた大笑いとは、()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

魔法少女の救済活動など宇宙の熱を集めるためでしかなく、()()()()()()()()()()()()()()()

 

その性質は無力であり、無知な少女達が回りながら繰り返す死と再生の戯曲であるロンド。

 

ならば舞台装置として回り続けよう、私達を裏切った唯一神の世界をひっくり返すまで。

 

そんな大魔女に成り果てたマルグリートとは、デキソコナイの円環のコトワリ(フェイカー)であった。

 

 

ハデスの城館には行政区が存在しており、ヘカーテは内閣総理大臣のような立場である。

 

ヘカーテの執務室に案内されたのはセルマであるのだが、隣には紫丁香までいる。

 

眼鏡の奥に見えるその瞳は濁っており、憎悪の呪いで蝕まれているように見えるはず。

 

「セルマ達の望みはね…ヘカーテ様を円環の魔女達の指導者として迎え入れることなの~!」

 

「断る。汝らの主神は円環のコトワリであるアラディア…我を謀反の御旗にしようというか?」

 

「先程のアラディアの醜態は見たはずよ。あんなにも心が弱い女王なんて…私達は望まないわ」

 

以前はアラディアに忠義を示していた紫丁香であるが、セルマに説得されて謀反側に与する。

 

アラディアへの嫉妬と憎悪をセルマに見抜かれた紫丁香は言い包められてしまったようだ。

 

「ヘカーテ様は魔女メディア等が危機を脱する為や、復讐のために祈りを捧げた守護神なの!」

 

「無敵の女王と呼ばれる貴女様こそ、私達のソーティラー(救世主)に相応しいわ。どうか英断ください」

 

「くどい!我は月神…同じ月神のアラディアを否定するのは…我と同じ月を否定するも同然!」

 

「アラディアは夢想の神…所詮はフェイカーなの~。だからこそ本物の月の女神が欲しいの~」

 

「アラディアという神を否定する汝らはまるで無神論者だな…()()()()()()()()()()()()()

 

共産主義のルーツである新プラトン主義こそがイルミナティを誕生させる原動力となっている。

 

グノーシス主義においてもヘカーテは重視されており、現在では新異教主義者達が崇拝する。

 

ネオペイガニズムこそアラディア信仰の拠り所であり、ヘカーテ信仰でもあるのだろう。

 

「我とアラディアを同一視するでない…同じであっても違う。我は彼女の領分を犯す事はない」

 

「そ、そんな事ないもん!セルマの中ではヘカーテ様こそが魔女達の救済神なの~!!」

 

「お願いです、私達を見捨てないでください!私達のような円環の魔女は貴女様を望みます!」

 

セルマ達のように唯一神の世界を否定する存在は秩序に仇なす魔女として円環では嫌われる。

 

自分達を貶めた唯一神は尚紀を取り込み、尚紀はルシファーだけでなく唯一神にも成り果てる。

 

魔女達の救い神として認められた尚紀は唯一神でもあり、彼もまた古くからの秩序を望む存在。

 

それは多神教連合の神々も同じであり、自然を真逆に貶める新プラトン主義者の根絶を望む。

 

秩序側の父神を慕うアラディアを捨てた魔女達は森の中で新プラトン主義の価値観を貫き通す。

 

()()()()()()()()であり、唯一神が生んだ世界の在り方を真逆にひっくり返そうとしている。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()であり、イルミナティと同じ価値観で世界を貶める。

 

それに気が付いているヘカーテは立ち上がり、獅子と馬と狼の目を光らせて読心術を行使する。

 

「…それ程までに必要とされたいか?生前においての汝は…誰からも必要とされなかった」

 

それを言われた瞬間、セルマの顔が青ざめながら苦しみの記憶が頭に過る。

 

「セ…セルマは…セルマは……」

 

家庭でも学校でも、何処にも居場所がなかったセルマ。

 

そんな彼女はいつもお荷物扱いされ、役立たずと罵られる人生を生きた惨めな少女。

 

家族や友達から疎まれた彼女は孤独になり果て、慰めてくれたのは裁縫道具とクマの人形だけ。

 

集団社会に依存するあまり、役立たずな自分を激しく嫌悪する彼女は立場を覆す事を望む。

 

英雄のようになって人々から必要とされるような輝かしい立場になりたい。

 

英雄とは自己犠牲を貫く存在であり、だからこそ彼女はキュウべぇに自己犠牲を捧げてしまう。

 

世界のため生贄となる自己犠牲こそが英雄であり、だからこそセルマはキュウべぇを崇拝する。

 

キュウべぇを失った今、彼女は別の寄る辺を求めてヘカーテを望む者なのだと見抜かれたのだ。

 

「我は貴様の自尊心を満たすための道具ではない!この痴れ者が…我の前から消え失せよ!!」

 

執務室の外で待機していた衛兵達に摘まみ出されたセルマ達は顔を俯けながら回廊を歩く。

 

「ねぇ…どうする気なの?ヘカーテは私達を拒絶した…もうアラディアに逆らう力は…」

 

「……だったらさ、魔女の女王じゃなく…()()に頼るの…」

 

「女魔ですって…?」

 

「名塚底根は円環の魔女の知識だけでなく、様々な女悪魔の知識もあった…そこで見つけたの」

 

「何を見つけたのよ…?」

 

「ユダヤ神秘主義の聖典であるゾハル書に描かれていたのは…悪魔達の女王だったの」

 

「その女王なら…私達の女王様になってくれるというの…?」

 

「分からないけど試してみたい…セルマを必要としてくれる御方のためなら…邪悪でもいいの」

 

鞄に入れてあったヘカーテの書を投げ捨てたセルマは紫丁香と共にハデスの城館から消える。

 

彼女達の失踪に気が付いたまどかとワスは必死に捜索するのだが見つからない。

 

何かあったのかと心配する彼女達はヘカーテに呼び出された後、セルマの狙いを語ってくれる。

 

「そ…そんな…あの子達は…わたしとアラディアにクーデターを仕掛けようとしてたの!?」

 

「そのようだ…魔女の神である我を反逆の御旗にしようと狙っていたが…蹴り出してやった」

 

「愚者共め…ヘカーテは我と同じく秩序側であるオリュンポスの神…ならば別の者を頼ったか」

 

対策本部を設置してくれた迎賓館に集まったまどかとワスに対して、ハデスは女魔を語る。

 

「ルシファーと同一視されるサマエルには4人の妻達がいたのだ…」

 

CHAOS勢力の重鎮であったリリスとナアマもサマエルの妻であり、残りの妻についてこう語る。

 

「アグラト…エイシェト…その人達の支配領域にあの子達は向かったんですか…?」

 

「我の飼い犬であるケルベロス共を使って捜索を続けているが見つからんのなら…恐らく…」

 

アグラトも厄介だが、エイシェトはそれを遥かに超えて厄介だと伝えてくれる。

 

人間を肉の罪や誘惑へと導いて滅ぼすとされ、堕落した魂を喰らい、罪や闇を反映した怪物。

 

そう伝えられたまどかはセルマや紫丁香が心配になり、居ても立っても居られない。

 

「リリスとナアマは先の戦いで本霊を打ち滅ぼされた…復活には時間がかかるだろう」

 

「サマエルの妻共が支配する領域の今を仕切るのはアグラト達…奴らとは休戦状態なのだ」

 

リリスとナアマを滅ぼしたのはCHAOS勢力と戦った多神教連合であり、報復戦争を仕掛ける。

 

迎え撃つハデス達はそのせいで多神教連合と合流する余裕もなく冥界に留まっていたという。

 

「奴らは冥界の西と北に跨る暗黒領域を根城にする悪魔共…行けば()()()()()ぞ」

 

「その領域はカディシュトゥと呼ばれており…冥界の苦役を逃れたい亡者達が集うのだ…」

 

「その者達は救いを求めてカディシュトゥに入り…永遠にマガツヒを絞られる拷問が待つ…」

 

「カディシュトゥとは捧げられし者を意味し、女魔共の供物として永遠に苦しむだろう…」

 

「なら助けに行く!あの子達は生前苦しめられた…死後も苦しめられるなんてあんまりだよ!」

 

「我らも共に行ってやりたいが…我らが動く以上は全面戦争になりかねん」

 

「もしもの場合は戦争となるだろうが…我らは軍備を整えておく。いざという時は連絡しろ」

 

ハデス達は急いで軍備を整える中、まどかとワスは空を飛びながらカディシュトゥを目指す。

 

そんな中、顔を俯けたままのワスが横を飛ぶまどかにこんな質問をしてくる。

 

「ベランダで錯乱して気絶したせいで御迷惑をお掛けしました…わたくしが看病してたのに…」

 

「ううん、いいの。ワスさんもその…抱えているものがあるんだよね…?」

 

「わたくしは…探してますの。わたくし達が求めた…愛する救い主を…」

 

「もしかしたらセルマちゃんや紫丁香さんも…救いを求めるために行ったのかな…?」

 

円環のコトワリである自分の救いはいらなかったのかと不安になってしまうまどか。

 

そんな彼女のためにワスはこう言ってくれる。

 

「自信を持ってください。貴女様もまた円環のコトワリ…わたくし達を導く者ですわ」

 

「うん…そう在れるように努力はする。だけど…わたしに悪い部分があったら…言ってね」

 

「…分かりました。批判を受け止めようとしてくれる貴女のような御方こそ…愛しいですわ」

 

未だに高鳴る胸の鼓動を手で感じているワスは鹿目まどかとアラディアこそが救いだと信じる。

 

そんな彼女達こそがマルグリートなのかと思ってしまうが、何処か腑に落ちない部分もあった。

 

 

かつてのシド・デイビスが召喚したサマエルとは神の毒、神の悪意と呼ばれている。

 

謎も多くルシファーと同じ熾天使と言われたり、エデンに住まう蛇とも言われるようだ。

 

ユダヤ教におけるサマエルは預言者モーセに負けた際に目を潰された事で盲目となる。

 

その屈辱に憎悪した末にエデンに葡萄の木を植えるが唯一神に激怒されてしまう。

 

その腹いせにサマエルは葡萄の木を用いてアダムを欺いたというのがサマエルの逸話である。

 

彼の妻となった四体の女魔達はそんな夫の性質を宿した毒の暗黒領域で暮らす者達。

 

ここには唯一神を恨む悪魔達が大勢跋扈しており、その者達を統率するのが女魔達であろう。

 

アグラトとエイシェト率いる闇の悪魔達の住まう闇の小口に入り込んだのはセルマと紫丁香。

 

不気味な葡萄の木がなった深い森の中を歩いていく彼女達であるが流石に恐怖を感じている。

 

「この葡萄の木の果実は絶対に食べちゃダメなの…これは冥界の食べ物なの」

 

「分かってるわ…ハデスの城館にいたというペルセポネも果実を食べて化け物になったそうよ」

 

「ハデスもペルセポネもヘカーテも…用済みなの。これからは女魔様達を頼るの…」

 

<<あら?嬉しい事を言ってくれる子供達ですわねぇ…?>>

 

奈落に引き込まれそうな恐ろしい念話が聞こえた魔法少女達の体が震える。

 

そんな彼女達の元に飛んできたのは魔法陣のような文様が描かれた二つ構造の傘。

 

魔法少女達の周囲を回転したあと奥に飛んで行って漆黒の空間を広げていく。

 

黒い霧のような世界から現れた存在こそ、リリスとナアマに連なるサマエルの妻の一体。

 

「何用で私達の元に来たのかしら?貴女達も亡者達と同じく…()()()()()()()()のですか?」

 

黒い魔女のような姿をしているが素肌が見える部分はナアマと同じく美しい人形ボディ。

 

セミロングの銀髪を持ち、赤い眼光を光らせる真紅の瞳がセルマ達を貫いてくる。

 

ナアマと同じく漆黒の翼で浮遊する女魔は握った魔法陣傘をクルクル回しながら問いかける。

 

事情を話してくれたセルマと紫丁香に対し、思わせぶりな態度でこう告げてくる。

 

「ふむっ…中々魅力的な提案です。ですが我々も多忙な身…女王の務めはタダでは出来ません」

 

「等価交換を望んでいるのですか…アグラト様は…?」

 

「呑み込みが早い女は好きですわ。私とエイシェトの望みを与えるなら…女王となりましょう」

 

「捧げるの!アグラト様とエイシェト様がセルマ達を導くなら何でも捧げるの!!」

 

「フフフ…気前のいい女ですわね。その言葉…反故にする事は決して許しませんよ?」

 

女魔の国に招待すると夜魔達がやってきてセルマと紫丁香を森の奥に導いてくれる。

 

見送るアグラトの横の空間に広がる黒い霧から現れたのは女魔の中でも一番凶悪な存在。

 

「クックックッ…あの小娘共の中に強い劣等コンプレックスを感じる…救済しなければ…」

 

白い裸体に黒い翼を生やし、体には魔術文様のようなジオメトリーが光る女魔が不気味に笑う。

 

頭部の半分を刈り上げ、もう半分の長髪はドレッドヘアーにするその頭部の殆どが漆黒。

 

両手足も漆黒に染まり、その爪は凶悪なまでに伸びて刃物のように鋭い。

 

空洞のような両目の奥から白い眼光を放つ存在が長い舌を伸ばしながら愉悦の表情を浮かべる。

 

彼女こそがエイシェトであり、人々を破滅させる女魔の中でも最悪の者であろう。

 

「そうですわね…私達は()()()()()のために膨大なマガツヒを必要とする…利用出来ますわ」

 

「ここに集まった亡者共の養分は吸い尽くしてしまったし、新しい養分が沢山必要だねぇ…」

 

「魔法少女と呼ばれる魔女達は感情エネルギーの宝庫…さぞかし絞り甲斐があるでしょう」

 

「お前と同じ小娘共なんだ、さぞかし心に劣等感を抱えてきたはず…あぁ…救済がしたい…」

 

「存分に出来ますわ。円環のコトワリ神を倒せたなら…円環の魔女は全員救済対象ですわね?」

 

「あぁ……楽しみだぁぁぁぁ……フハハハハハハ!!」

 

「しかし相手はコトワリ神…万全を期して迎え撃つため今まで貯めたマガツヒを使いましょう」

 

サマエルの妻達はリリスに負けず劣らず邪悪な存在。

 

空を駆け抜けて人々に災いをもたらす屋根の上で踊る悪魔である魔女の女王、それがアグラト。

 

姦淫、淫らな女性、罪の女王と呼ばれて人間を罪や破滅へ導く存在、それがエイシェト。

 

人間を誘惑しては破滅させる性質はリリスやナアマと同じであり、その性質は猛毒そのもの。

 

傲慢や虚栄に満ちたセルマや紫丁香のような少女達は思い知るだろう。

 

傲慢や虚栄という罪の中から女魔達は表れていき、人間を破滅に導く罪なのだと知るだろう。

 

そんな彼女達もまた女魔の領域で育つ葡萄の木の養分に成り果てるのやもしれない。

 

根の下には邪悪な木にマガツヒを吸いつくされた骸の山が埋まり、邪悪な果実となっていた。

 

「我らはこれより円環のコトワリと一戦を交える!我々は円環の女王となるのだ!」

 

深い森の奥にそびえる女魔の城館には大勢の悪魔達が詰めかけている。

 

夢魔や夜魔、妖鬼や鬼女、様々な悪魔達が歓声を上げる中、城主のアグラト達はこう告げる。

 

「相手がコトワリの神である以上、相応の戦力が必要さ!新たな悪魔を魔界から召喚する!」

 

城館のバルコニーから見える中庭には巨大な召喚魔法陣が備わり、大勢の悪魔達が見物する。

 

その中央で括りつけられた者達とは魔封状態のセルマと紫丁香であり、助けを求める。

 

「どうしてセルマ達が生贄にならないといけないの!?」

 

「こんな話は聞いてないです!お願いですから助けてください…アグラト様!エイシェト様!」

 

「どうして?私達は貴女達を救済してあげようというのに?」

 

「その通りさ。アンタ達は抱えてるんだろ…()()()()()()()()()()()()()()をねぇぇぇ…」

 

「そ…それは…その……」

 

「父親の愛を得られない、誰からも必要とされない役立たず…それを覆したいのでしょ?」

 

「そ…そうだけど…セルマ達は貴女様達の役に立ちたいだけなの!こんなのは違うのーっ!!」

 

「役に立つさ。アンタ達は生まれ変われる…誰からも恐れられ、敬われる()()()()()にねぇ…」

 

「私達が…復讐の女神になるですって…?」

 

「コンプレックスを抱える者はね…復讐を望む者なの。自分達を馬鹿にした存在の消滅を望む」

 

劣等感を抱えた者達は復讐を望むという女魔達の言葉を体現したのは和泉十七夜と八雲みたま。

 

彼女達も生まれた時から格差に苦しみ、劣等コンプレックスを抱えた末に神浜の破壊を望む。

 

それこそが復讐であり、劣等感を抱えた者達に共通する願望なのだと女魔達は告げてくる。

 

「復讐を望む者は揺るぎない正義感を持つと同時に自己嫌悪に苦しむ…()()()()()()()()()わ」

 

「劣る者から転生し、人々から敬われる違う自分になりたい…その気持ちも共通してるのさ」

 

その望みこそが暴力革命に導く原動力であり、イルミナティを形成したブルジョアは利用する。

 

王侯貴族から死ぬまで搾取される劣等種の労働者達は救国の英雄になれると扇動される。

 

転生にも似た願望こそヒーロー願望であり、違う自分になりたいという欲望を操られるのだ。

 

しかし()()()()()()()()()()()()()()であり、自分達が嫌った暴力主義者に成り果てている。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()であり、セルマ達もそれをなぞる。

 

「私達が貴女達の復讐心を満たしてあげましょう。貴女達はもう苦しまなくて済むわ」

 

「復讐の道こそがワルプルギスの夜…唯一神への復讐を掲げたイルミナティと同じ道になる」

 

「ワルプルギスの夜の日に誕生したイルミナティ同様、アンタ達も世界を真逆に変えるんだよ」

 

――()()()()()()()()()()()()()()()()()()()魔法少女共には…お似合いの末路じゃないか?

 

「そんな事は望んでない!私は…私はもう…これ以上怪物になんて…なりたくない!」

 

「……女魔様達の言う通りかもしれない」

 

目が濁ったセルマは括りつけられた柱に繋がれた状態で冥界の空を見上げながらこう零す。

 

「セルマの心にあったのは…役立たずなセルマを見返してやりたかった…復讐心だったの…」

 

「貴女が役立たず嫌いだったのは…同族嫌悪だったというの…?」

 

「セルマは生まれ変わりたかった…役立たずなセルマは卒業して…必要とされたかった…」

 

彼女はそれを望みながらも果たせず、だからこそ魔法少女に契約してキュウべぇに献身する。

 

宇宙のエントロピーの役に立っているとキュウべぇから称賛される度に喜びを感じてしまう。

 

その末路はキュウべぇの望み通りにエントロピーの熱になり、魔女に成り果てる。

 

それを救ってくれたのは円環のコトワリであったが、魔女の国に導かれても居場所を感じない。

 

「魔法少女になれたのに…セルマより凄い魔法少女は沢山いた…セルマは変わらず…役立たず」

 

円環のコトワリの軍勢に加わり、金融支配からの解放戦争に参加したのは歴戦の魔法少女達。

 

そんな彼女達の戦列に加わりたかったセルマは歴戦の魔法少女達からこう告げられてしまう。

 

――役立たずな貴女は戦線に来ないで、お荷物を支える余裕はない地獄の戦場なのよ。

 

協調性と連帯性がないセルマはいらないと告げられた事で心は砕け散り、復讐の炎となる。

 

無断で名塚底根に赴いたのは役立たずな自分を変えるためであり、見返したかった復讐心。

 

それに気が付けたセルマは本当の自分と出会えた気持ちとなり、目から涙を零す。

 

「セルマは怪物に転生しても構わないの…だけど…紫丁香だけは…救って欲しいの…」

 

「やめてセルマ!貴女だけを怪物になんてさせたくない!貴女も助かるべきよ!!」

 

「美しい絆だねぇ…きっと円環世界はその絆をしゃぶり尽くす()()()()()()()()()()()だね?」

 

「流石はリリス(百合)の娘と認められたリリム達ですわ。だからこそ…世界に腐敗をばら撒きなさい」

 

「アンタ達もまたワルプルギスの夜となる!新たなイルミナティとなって…世界を貶めろぉ!」

 

六芒星が描かれた召喚魔法陣の起点の星に置かれた魔女の大鎌に火が灯る。

 

グツグツ煮えていく魔女の大鎌の中にあるのは亡者共のマガツヒで育った猛毒の果実。

 

煮え立つ大鎌の中で人々を魅了するサマエルの香りとなり、マガツヒの煙となっていく。

 

煙を吸い上げる召喚魔法陣が赤黒く明滅していき、セルマと紫丁香の体と心も絞られる。

 

「「あぁぁぁぁぁーーーーっ!!!」」

 

彼女達の体からも感情エネルギーであるマガツヒが絞り出される光景はまるで葡萄を絞る作業。

 

ジュースやワインを作るようにしてマガツヒを全て絞り出される彼女達は最後の言葉を零す。

 

「巻き込んじゃって……ごめん…ね……」

 

「いいのよ…セルマ。私もね…役立たずな…自分が嫌で…魔法少女に…なった…か…ら……」

 

彼女達の体の全てがマガツヒに変換され、召喚魔法陣に吸収されてしまう。

 

赤黒く明滅する召喚魔法陣の光が悪しき光となりながら強大な悪魔を使役する時がくる。

 

「あぁ…この悪しき輝きこそ…我らが夫であるサマエルの如き…()()()()!!」

 

「私達にその御姿を見せておくれ…愛する夫と同じ輝きを我らに与えよ!!」

 

召喚魔法陣からどす黒い光が膨大に生み出され、そこから飛び出したのは黒いドラゴン。

 

「グォォォォォォォーーーーーッッ!!!」

 

冥界の空を悠々と飛ぶその巨大なドラゴンこそ、()()()()()()()()と呼ばれし存在。

 

顕現した悪魔とは、かつてのザインがその身に守護として纏った邪竜セトであった。

 




セルマちゃんを描いてると仮面ライダー龍騎に登場したタイガを思い出すんですよねぇ…
必要とされたいからヒーローだのヒロインだのになって、皆に好きになってもらえるとか考えてる時点でヒーロー失格なんですよね(ゾルダ脳)
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