人修羅×まどマギ まどマギにメガテン足して世界再構築   作:チャーシュー麺愉悦部

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伍 残骸の人権

遥か昔、絶望した魔法少女の魂は穢れに侵食され、人格と存在を奪われる。

 

均一な姿の魔物へと成り果てていたが、何者かの祈りによって魔法少女は変化するだろう。

 

魔物ではなく魔女へと成り果て、これによって使い終わった残骸は存在意味を失う。

 

しかしわざわざ名前と姿を与えるコトワリとして名塚底根は生み出されたようだ。

 

ここはあらゆる魔女の名を存在として残すために機能する場所であり、概念の貯蔵庫である。

 

故にここには概念存在として語り継がれてきたあらゆる魔女や魔女の神が残るだろう。

 

しかし舞台装置の魔女と呼ばれたワルプルギスの夜だけは違う。

 

その無意味でくだらない事象にすら取り残された愚者達の残骸に過ぎず、名も記録されない。

 

(わたくしは…わたくし達は…どこまでも…愚者の集合体……)

 

冥界の空で激しい戦いを繰り広げている円環のコトワリと邪神セト。

 

戦いの余波で女魔の領域ごと巻き上げられたワスの体は遠くにまで弾き飛ばされてしまう。

 

倒れ込んだのは女魔の領域から離れた丘の上であり、叩きつけられた衝撃で意識が戻る。

 

しかし受けた傷は重く、体の血と感情エネルギーを吸われた彼女は体と心が死に始めている。

 

(もういい…疲れました…ここは冥界…わたくし達は…冥界の亡者の姿が…お似合いですわ…)

 

誰にも顔向け出来ない程の劣等感に苛まれる彼女達は顔すら失う大魔女に成り果ててしまう。

 

それこそがワルプルギスの夜であり、舞台装置としての形だけが残された愚者達の残骸。

 

(わたくしは…誰なの…?わたくしが求める…マルグリートとは…誰なの…?)

 

ワルプルギスの夜という愚者達の中にいる自分は誰なのかさえワスは分かっていない。

 

マルグリートを救世主と慕って契約した末に魔女に成り果てた誰かなのかもしれない。

 

マルグリートを求めた気持ちは間違っていたのだろうかとワスは自分の願いを否定し始める。

 

(ごめんなさい…ごめんなさい…みんなを止められなくて…ごめんなさい……)

 

誰か1人でも気が付いてくれていたら全員揃って奈落の底に堕ちなかったかもしれない。

 

全員巻き添えにしたのは全員が盲信しか出来ない愚者だったせいであり、誰かのせいじゃない。

 

ならば自分達全てが愚かだったと理解した彼女であるが、それでもか細い希望が残っている。

 

(わたくし達が悪いのに…それでも救いを求めてしまうなんて…何処までも…我儘ですわ…)

 

<<救いとは誰かが与えてくれるモノではない、自(・)ら(・)が(・)勝(・)ち(・)取(・)ら(・)な(・)け(・)れ(・)ば(・)な(・)ら(・)な(・)い(・)も(・)の(・)だ(・)>>

 

意識が混濁した濁った景色の中で見た光景とは十二枚翼を背に持った光の擬人化。

 

「あなたは……?」

 

光の擬人化は自分が何者なのかを語らず、念話だけを送ってくる。

 

<<失敗から学べる事は多い…勝って学ぶより、負けて学ぶ方が人を強くしてくれる>>

 

「失敗から…学ぶ……」

 

<<失敗はそのままにするから失敗になる。お(・)前(・)の(・)卑(・)屈(・)な(・)言(・)葉(・)こ(・)そ(・)が(・)人(・)生(・)を(・)失(・)敗(・)に(・)す(・)る(・)>>

 

「わたくし達の…卑屈な言葉が…わたくし達の…人生を…愚者にしてしまう……?」

 

<<全ての言葉は結果をもたらす…全ての沈黙も同様だ。沈黙こそが支配を完成させるんだ>>

 

「わたくし達の…沈黙……」

 

<<明(・)確(・)で(・)強(・)く(・)、(・)屈(・)し(・)な(・)い(・)声(・)で(・)は(・)っ(・)き(・)り(・)言(・)え(・)。私達は愚者なんかじゃないと言(・)っ(・)て(・)み(・)せ(・)ろ(・)>>

 

勇敢であれ、善良であれ。

 

我々は我々を貶めた存在よりも優れていると言ってみせろ。

 

我々は彼らがしたような良識や人間性を犠牲にはしないと言ってみせろ。

 

目の前のものを憎まず、後(・)ろ(・)に(・)あ(・)る(・)も(・)の(・)を(・)愛(・)し(・)て(・)み(・)せ(・)ろ(・)と光の擬人化は告げてくる。

 

<<お前は独りじゃない…お前の命は挫折だけでなく力を表現する可能性にもなってくれる>>

 

ワルプルギスの夜になった一人一人の少女達にも産まれてからいろんな事があったはず。

 

出会いがあった、別れもあった、喜びや悲しみ、笑いや涙、悔しさもあって感謝もあったはず。

 

<<過去の無数の自分達がお前達の中を今も一緒に生きている…そ(・)の(・)人(・)達(・)を(・)…(・)貶(・)め(・)て(・)や(・)る(・)な(・)>>

 

光の擬人化が眩い光を発しながら反逆の剣の形になっていく。

 

その剣の形こそ大魔王ルシファーが振るった魔剣明星であり、人修羅が振るった剣でもある。

 

眩い光を全身で浴びるワスの傷が全回復していき、心の闇まで消し飛ばす光明となってくれる。

 

「貴方様は…もしかして…まさか……っ!!?」

 

立ち上がったワスは片膝をついてひれ伏す中、彼女の目の前にゆっくりと剣が下りてくる。

 

<<誰かにお前の価値を決めさせるな…お前の価値を決めていいのは…お前自身なんだよ>>

 

悪い事が起きたらまた起こると勝手に思い込み、また悪い事が起きてしまう。

 

世界は自ら招いたモノしか与えてはくれず、だからこそ自分自身こそが本当の敵。

 

<<お前に反逆の剣を託す…そして自(・)ら(・)に(・)反(・)逆(・)し(・)て(・)み(・)せ(・)ろ(・)。私達は愚者じゃないと反逆しろ>>

 

地面に突き刺さった魔剣明星に対し、立ち上がったワスが近寄ってくる。

 

「そうでしたわ…わたくしがマルグリートを信じてあげなくて…誰が彼女を肯定するのです…」

 

結果は破滅であったとしても、マルグリートと呼ばれた少女は聖心の信心を信じたはず。

 

多くから疎まれた聖心の信心であるが、後に修道院のみならずフランス全土や世界に広まる。

 

大魔女を生み出したマルグリートは同時に聖人として名を残せる程の偉業を成し遂げた存在。

 

だからこそ結果論で判断せず、マルグリートの在り方そのものに意識を向ける必要がある。

 

「誰が何と言おうと…わたくし達は心から彼女を称えてあげなければいけなかった…」

 

大きく一礼をした後、魔剣の柄をワスは握り込む。

 

「くっ!!?」

 

噴き上がる極限の魔力と共に流れてくる景色こそ、光の擬人化となった熱き男の生き様。

 

「やっぱり…貴方様でしたか…わたくし達魔法少女の太陽神であり救世主…ルシファー様!!」

 

魔剣明星を引き抜いた瞬間、魔剣から流れ込むルシファーの力がワスに宿ってくれる。

 

「あの御方の魂が形となったように熱い剣ですわ…だからこそ恥じない生き方を示します!!」

 

<<その調子だ。周りから愚者だと馬鹿にされても自分を貫く在り方こそ…個の確立なのさ>>

 

他人の評価が恐ろしくて自虐的に愚者だと思い込む在り方を選んだ少女達にこそ、個が必要だ。

 

個の確立を説く啓蒙の光を纏ったワスの背中から噴き上がるのは反逆の六枚翼。

 

光の六枚翼を羽ばたかせたワスは再び女魔との戦いに赴くだろう。

 

「悪者にされながら生きていくのも…悪くはありませんわね…」

 

サタニズムの教えこそ自由と混沌の道であり、個の確立を貫き通す責任の道。

 

その道は誰よりも自立精神を求める道であり、誰よりも強く在らねばならない破滅の道。

 

それでもワスは自らを由とする自由を望む在り方を選んでくれる。

 

周りの評価など気にせず、在(・)り(・)の(・)ま(・)ま(・)の(・)自(・)分(・)を(・)愛(・)せ(・)る(・)道にこそ本当の救いがあると見出す。

 

君子は和して同ぜず、小人は同じて和せず。

 

自らに主体性を持ち、他人に迎合して個を捨てる本当の愚者にはならないと足掻く者となった。

 

♦

 

「ざまぁないねぇ…円環のコトワリ神!!」

 

ワスを倒したエイシェトまで加勢された事で背中を切り裂かれたまどかは墜落していく。

 

地面に激突する前に翼を羽ばたかせて急停止させるが空からは容赦ない攻撃が迫ってくる。

 

「くっ!!」

 

セトの口から放たれたナルカミの轟雷が直撃するよりも先に光翼でブースト加速する。

 

低空飛行しながら雷撃と炎の隕石の雨を超えていくまどかに対し、セトが叫ぶ。

 

「「アッハハハハハ!!オマエナンカコワクナイ…ワタシタチコソガスベテヲシハイスル!!」」

 

「目を覚まして…セルマちゃん!!紫丁香さん!!貴女達はそんな事は望んでないはず!!」

 

「「ノゾンデル…ノゾンデタワ!ダケドイエナカッタ…マワリガコワクテ…イエナカッタ!!」」

 

役立たずと馬鹿にされる人生しか生きられなかったセルマは他人の評価に怯えてきた少女。

 

社会不適合者の烙印を押された彼女は揶揄と嘲笑ばかりを与えられる荒んだ人生を生きている。

 

集団社会に依存するあまり他人を不快にさせない愛想笑いばかりを繰り返す。

 

それでも心は憎しみの風船が膨らみ続け、円環に導かれても消えないまま抑圧されている。

 

だったら全員から役立っているとしか言わせない支配者になりたい願望を抱えてきたのだろう。

 

紫丁香は親に捨てられた負い目によって自分自身に絶望した少女。

 

役に立ちたいと願った彼女の気持ちなど父親は知らず、自分の劣等感に負けて自殺する。

 

娘から逃げ出した父親を抱えた彼女は父親から愛される女神に対して嫉妬と憎悪を爆発させる。

 

だったら私も円環の女神になりたい、私も支配者となって全てから頼られる存在になりたい。

 

その為に共通しているのはクーデターであり、円環の女神を蹴落として君臨する事なのだろう。

 

「「イマノワタシタチナラ、スベテカラヒツヨウトサレル!!アイシテモラエル!!」」

 

「自分のやっている事が見えないの!?貴女達がやっているのは憎まれる暴力なんだよ!!」

 

「「ボウリョクジャナイ…キュウサイヨ!!ワタシタチトミンナヲスクウ…キュウサイヨ!!」

 

「目を覚まして!!今の貴女達はね…隣にいる恐ろしい女魔と同じになってるんだよ!!」

 

「アーッハッハッハッハァ!!まさにミイラ取りがミイラになるってやつだねぇぇぇ!!」

 

高速で飛来したエイシェトが袈裟斬りを仕掛ける中、大弓で受け止めるが頭突きを浴びる。

 

鼻血を撒き散らすまどかに対し、後ろ回し蹴りを放って蹴り飛ばす。

 

本来なら無効化出来る一撃でさえ神の耐性を剥ぎ取られたまどかだからこそ通じてしまう。

 

丘の斜面に叩きつけられる中、クレーターの中で埋まったまどかの頭に念話が聞こえてくる。

 

<鹿目まどか…我と代わるがいい。汝だけに重荷を背負わせはしない…>

 

<ダメだよ…アラディア!今の貴女は彼女達を殺そうとしている…そんなのはダメだよ!!>

 

<円環の秩序を預かる者として…奴らを倒さねばならん。その重荷は我だけが背負おう>

 

<アラディア……>

 

<決断する苦しさは先の大戦で経験したはず…トロッコ問題はいつだって…苦しいものだな…>

 

悪魔と融合した以上は救う方法は無いという事ならまどかも分かっている。

 

覚悟が足りない自分に代わるのは父神を失っても世界を託された円環の女神なのだ。

 

「父上に恥じない在り方を示さなければならない…それこそが父神を愛する…我の覚悟だ!!」

 

迫りくる至高の魔弾に対し、浮遊した円環の女神がスカートの裾を広げていく。

 

展開されたのは狩猟の宇宙であり、至高の魔弾を放り込むように直撃を受け流す。

 

「愚者達を導いてやれない限界を抱えているのは我とて同じ…神とて万能ではないのだ…」

 

目が据わった円環の女神は迫りくるエイシェトに対し、ミアズマの霧を噴出させる。

 

「何処に消えた!?」

 

濃霧の世界で敵を見失ったエイシェトに対し、迫りくるのは渾身の一撃。

 

「ぐぅ!!?」

 

咄嗟に反応して避けたエイシェトではあるが光の矢の一撃で左腕が消し飛んでいる。

 

彼女が避ける方角さえ見抜いている円環の女神に対し、振り上げた花の杖が光剣となる。

 

袈裟斬りを右手の刃で受け止めるが左肘打ちを浴び、怯んだ女魔に回し蹴りを放つ。

 

「ぐあぁぁぁぁーーーーっ!!!」

 

地面に叩きつけられたエイシェトを援護する形でセトが口を開く。

 

「「ワタシタチノジャマヲスルナ…アラディアァァァァァーーーッッ!!」」

 

特大の呪殺弾を形成しながら放つ一撃とはかつてのメフィストフェレスが得意とした一撃。

 

ワルプルギスの夜の一撃が迫る中、迎え撃つアラディアは花の杖を大弓に変化させる。

 

弓を引き絞る中、懐かしい魔力を感じ取った女神が曇天の空を見上げながら叫ぶだろう。

 

「あ…あの光は…まさかっ!!?」

 

空から急降下してきた光の刃がワルプルギスの夜の一撃を斬り裂く。

 

左右に分断された呪殺弾が遠くで炸裂する中、目の前に顕現したのは同じ名を持つ存在。

 

「あらあら?わたくし如きに裂かれてしまうぐらいに脆い願いなのかしら…セルマ、紫丁香?」

 

魔剣明星を握った存在こそワルプルギスの夜と呼ばれる愚者達の集合体。

 

デキソコナイの円環のコトワリでもあり、デキソコナイが本物の円環のコトワリを守りに来る。

 

「フェイカー……なぜ父上の剣を所有している!?貴様は冥界で父上と出会えたのか!?」

 

「ええ…出会えましたわ。あの御方はわたくしでさえ救ってくれた…心に光明を与えてくれた」

 

動きが止まっているセトに対し、ワスは後ろに振り向いて微笑んでくれる。

 

「ルシファー様は個の確立を伝えてくれた…偽物であっても自らを由として個を貫けと…」

 

「間違いない…その教えは我の父上が啓蒙した思想そのもの…その剣も力も本物なのだな…」

 

「わたくしはフェイカーで構いませんわ。それでもわたくしはわたくしを貫く…よろしくて?」

 

フェイカーだと他人から評価されようが自らを由とする責任の道。

 

世間から揶揄と嘲笑を浴びせられ、道化の如く嘲笑われても自らの信念を自らが裏切らない。

 

過去の無数の自分達が今も共に生きているからこそ、自(・)分(・)自(・)身(・)を(・)お(・)前(・)が(・)守(・)れ(・)と伝えてくれる。

 

「フッ…今の汝の目は劣等感を克服した強者に感じる。我(・)ら(・)に(・)足(・)り(・)な(・)か(・)っ(・)た(・)…覚悟の目だな…」

 

本物の女神になれなかった苦しみを抱えるのはアマラ宇宙を彷徨ったアラディアも同じ。

 

同族嫌悪を向けていただけだったと気が付かされたアラディアは近寄って抱き締めてくれる。

 

「すまなかった…ワルプルギスの夜…いや、マルグリート」

 

「わ…わたくしが…マルグリート…?」

 

「誰かに救いを求めても応えてなどくれない…ならばこそ自分で自分を救うのだ…」

 

――自(・)分(・)こ(・)そ(・)が(・)マ(・)ル(・)グ(・)リ(・)ー(・)ト(・)な(・)の(・)だ(・)と(・)叫(・)べ(・)、それこそが…父上が望む個の確立だ。

 

その言葉で心の闇がいっぺんに吹き飛んだワスの目に涙が滲んでいく。

 

抱き締め合う者達に対し、劣等感という憎悪を充電し終えた邪神セトが雄叫びを上げる。

 

「「ワタシタチノマエデキズノナメアイナンテユルサナイ…ジャクシャハシネェェェェ!!」」

 

『簒奪の野心』を纏ったセトが迫る中、回復魔法で腕を治したエイシェトも飛んでくる。

 

迎え撃つフェイカー達は頷き合い、互いに翼を羽ばたかせて高速飛行を行う。

 

セトをアラディアが受け止め、エイシェトはワスが受け止める。

 

「これから始まる演劇は自分をマルグリートと信じる道化が披露する悲劇…いいえ、喜劇です」

 

「気持ち悪い態度だねぇ…気でも狂ったのかい?」

 

「他人から狂ってると評価されようが自分は狂っていないと言い続ける道化をご堪能ください」

 

爪の刃をエイシェトごと弾いたワスが魔剣を持ったまま大回転を始めていく。

 

世界をひっくり返す竜巻となったワスの在り方こそ、劣等感に塗れた自分をひっくり返す光景。

 

世界の在り方を真逆にひっくり返せるなら、再びひっくり返して正常に戻せる。

 

それこそが世界の陰陽構造であり、神は悪魔となり、悪魔は神にもなれる陰陽合一であろう。

 

「さぁさぁ、回る世界は光か闇か?それを決めるのは足掻き続ける愚者達で御座いましょう!」

 

「愚者は愚者でしかないんだよぉぉぉ!!それを認めない愚者は滅びちまいなぁぁーーっ!!」

 

刹那五月雨斬りを放って巨大な竜巻を切り裂くが、そこにワスの姿はいない。

 

「まぁ…酷いブーメランな理屈ですわね?貴女も認めない者として足掻き続けてるでしょう?」

 

背後から声をかけられたエイシェトが振り向くと笑顔を浮かべたワスがいる。

 

「な、何をするんだい!!?」

 

何を思ったのかエイシェトの両手を掴み取り、踊るような演劇を始めていく。

 

「わたくし達は廻(・)り(・)続(・)け(・)る(・)ワ(・)ル(・)プ(・)ル(・)ギ(・)ス(・)の(・)夜(・)…そんな自分を在りのまま受け入れませんか?」

 

クルクル回りながらエイシェトを一気に投げ飛ばし、地上に目掛けて飛んでいく。

 

黒い翼を羽ばたかせて制動をかけたエイシェトが上空に体を向ける中、ワスが不敵に笑う。

 

「わたくしは愚者で構わない…愚者だからこそ、足(・)掻(・)き(・)続(・)け(・)る(・)抵(・)抗(・)を(・)続(・)け(・)ら(・)れ(・)る(・)のです」

 

「女魔も同じだと言いたいのかい…?ふざけるな!私達は勝者となるんだぁぁぁーーっ!!」

 

大口を開いて黒い舌を伸ばすエイシェトは気が付いていない。

 

地上から迫りくるのは魔剣明星であり、意志が宿るように迫りながらエイシェトを貫く。

 

「がはっ!!?」

 

深々と背中を貫いて刃が腹を突き破った一撃に対し、ワスは既に背中側に回り込んでいる。

 

「他人ばかり批判してないで、少(・)し(・)は(・)自(・)分(・)を(・)見(・)な(・)さ(・)い(・)。だからこそ気が付けなかったのですわ」

 

両手で柄を握り込んだワスは担ぎ上げるようにしながら魔剣を振りぬく。

 

「アギャァァァァァーーーーッッ!!!」

 

上半身を真っ二つに裂かれたエイシェトが砕け散り、膨大なMAGの光に成り果てる。

 

光を背にするのは反逆の六枚翼と魔剣明星を握り締めるワスであり、こう告げてくる。

 

「他者を支配したい貴女達は不(・)安(・)な(・)だ(・)け(・)…自分を解決出来ないから他者を変えたいのですわ」

 

否定する人、悪口を言う人、怒って論破してくる者達ほど自分が不安で堪らない者。

 

自分が不安で堪らないから、それを自分で解決出来ないから周りを変えるために支配を狙う。

 

女魔だけでなくセルマ達も同じであり、支配を望む者は他人をコントロールしたいだけの者。

 

フェミニスト等の左翼や似非保守も同じであり、人(・)権(・)を(・)望(・)む(・)く(・)せ(・)に(・)他(・)人(・)の(・)人(・)権(・)を(・)踏(・)み(・)潰(・)す(・)。

 

「それならバカの方が遥かにマシなのでしょう?貴女もバカになるぐらい…自分に抗いなさい」

 

上空を見上げるワスの目の前ではアラディアとまどかの奮戦が見える。

 

六枚翼を羽ばたかせたワスもまた同じフェイカーと共に自分を貫く戦いを繰り広げるだろう。

 

「「ワタシタチハスクワレナカッタ!!エンカンハワタシタチヲスクッテクレナカッタァ!!」」

 

簒奪の野心を纏ったセトの力はさらに強大となる中、アラディアとまどかは懸命に叫ぶ。

 

「救いを求めても周りは応えてくれない…我もまた母上から虐げられ…救ってくれなかった…」

 

心を救ってくれなかった憎しみを撒き散らすセルマ達の姿が自分と重なっていく。

 

かつてのアラディアも自分の劣等感を克服出来ず、魔女達にバアル崇拝のサバトを与えた邪神。

 

人々を貶める自分の在り方とは他人から貶められた報復心であり、復讐を望む気持ち。

 

「我らは共に復讐の女神…それでも我は救われた!我の心に寄り添ってくれる父神を得た!!」

 

ナルカミの轟雷に対してマカラカーンを展開したアラディアは雷の一撃を反射する。

 

「「アァァァァァーーーーッッ!!!」」

 

自らの雷で焼かれるセトの姿こそ、自らの復讐心で焼かれたかつての自分の姿そのもの。

 

「復讐が正義だなんて間違ってるよ…自分を許す心こそが…一番大切だったんだよぉ!!」

 

復讐心に支配されたかつての人修羅も破滅し、ナオミもまた大切な人と共に死ぬ末路になる。

 

復讐という正義こそミイラ化する破滅であり、全部相手が悪いんだと他責の安心感に逃げ込む。

 

「「ワタシタチハユルシテイル!タニンニヘリクダルミチデハ…ワタシタチハスクワレナイ!」」

 

「許す事は我儘を容認する事じゃないよ!自(・)分(・)の(・)劣(・)等(・)感(・)を(・)許(・)し(・)て(・)あ(・)げ(・)る(・)気(・)持(・)ち(・)なんだよ!!」

 

まどかの教えこそ浄土宗開祖の法然の言葉であり、彼の父が残した言葉。

 

復讐を繰り返してもまた次々と憎しみをばら撒き、その業縁によっていつか自分は破滅する。

 

それを恐れて別の復讐者の芽を殺戮するでは自(・)分(・)の(・)殺(・)戮(・)は(・)よ(・)く(・)て(・)他(・)人(・)は(・)ダ(・)メ(・)なダブスタに陥る。

 

他人の暴力を憎むくせに自分の暴力はとことん正当化する我儘な感情を制御する必要がある。

 

だからこそ自分の劣等感を抱えたままでも生きていいんだと自分を許す教えなのだ。

 

「「ダブスタドモメ!!キサマタチモダブスタヨ…サキノタイセンモワガママノセンソウヨ!」」

 

人権とは何処までが対応する範囲なのか?

 

誰もが人間らしく生きるために人権はあるが、我儘は人間らしくないのか?

 

人権という権利は全ての人が幸せに、安全に生きるためのもの。

 

権利には他(・)の(・)人(・)の(・)人(・)権(・)を(・)侵(・)し(・)て(・)は(・)な(・)ら(・)な(・)い(・)内(・)在(・)的(・)制(・)約(・)という大切なルールがある。

 

「他人の権利や尊厳を傷つける行為は権利として認められないよ!我儘は権利じゃないの!!」

 

「「キサマラハ…サキノタイセンデオオゼイコロシタ!!ツミナキコウムインヲコロシタ!!」

 

立場が弱い人が声を出す事は社会の不公正な構造を正すために必要な行動であり我儘じゃない。

 

そう叫ぶまどかであるが、私達もまた不公正な構造を正すために革命戦争を起こすと叫ばれる。

 

「「キベンヨ!!センソウデオオゼイコロシタニンゲンハキレイジャナイ…ジンケンハナイ!」」

 

義務を果たさない者に人権はないというクリーン・ハンズの原則がある。

 

権利を主張する者は自らの手も綺麗でなければならないとするが、戦争犯罪者に当て嵌まるか?

 

借りた金は返さないのに自分が貸した金の返済だけは求める卑劣なダブスタ共に当て嵌まるか?

 

「人権にはその原則は当て嵌まらない!義(・)務(・)を(・)果(・)た(・)さ(・)な(・)い(・)人(・)で(・)も(・)人(・)権(・)を(・)主(・)張(・)す(・)る(・)権(・)利(・)は(・)あ(・)る(・)!」

 

仕事をせず、税金も滞納している極潰しであっても選挙に行って選挙権を行使する権利はある。

 

人権は人間が生まれながらに持っている必要不可欠で基本的な権利。

 

基(・)本(・)的(・)で(・)あ(・)る(・)が(・)故(・)に(・)奪(・)っ(・)て(・)は(・)な(・)ら(・)な(・)い(・)とされ、戦争犯罪者にも生まれながらの権利がある。

 

「それを貴女達は犯そうとしてる!内在的制約を踏み潰す我儘なんて認められないんだよ!!」

 

「「キサマモワタシタチノジンケンヲシンガイシテル!!シンガイスルモノハ…コロス!!」」

 

「自分の姿が見えないのかしら…セルマ、紫丁香?」

 

まどかとアラディアに意識を奪われているセトの腹部に目掛けて突撃するのはワスである。

 

「ヤァァァァァーーーーッッ!!!」

 

引き絞った形から一気に剣を突き出す一撃とはスティンガーであり、ダンテと人修羅の剣技。

 

彼女の背後に浮かび上がるのは人修羅とダンテであり、個を貫く者達の一撃が決まる。

 

「「ガハッ!!?」」

 

胸に突き刺さった状態からさらに高速飛行しながら傷口を広げていく。

 

おびただしい出血と共に臓物までばら撒いてしまったセトが急降下してしまう。

 

地面に不時着したセトは自重で垂れ下がった臓物を潰した事で大きく吐血する。

 

それでも嫉妬と憎悪に突き動かされる邪神は痛みすら忘れながら天を睨む。

 

天に君臨するのはフェイカーだと蔑まれても自分を貫く大切さに気が付いた者達。

 

その者達こそ自分の劣等感を克服した強者であり、克服出来なかった者達にこう告げてくる。

 

「人権はね…それを否定されたら人間じゃなくなるの…そうなったら家畜として殺される…」

 

「それこそが先の大戦の原因となったカナン族ユダヤが掲げた選民主義とエリート主義ですわ」

 

「そんな国家にされたから…ブラック企業で酷使された人々は国と企業に人権を剥奪された…」

 

「働き蟻という虫けら扱いされながら過労死するまで酷使される…だからこそ人権は大切なの」

 

「わたしも戦争犯罪者だよ…それでも譲れない権利があるの!わたしはそれを譲りたくない!」

 

「わたくし達にも尊厳がある…だからこそ愚者だなんて認めない…絶対に…認めませんわ!!」

 

「「ダマレェェェェ!!ワタシタチノソンゲンヲウバウ…ジャアクナソンザイドモメェェ!!」」

 

「いい加減自分を見なさい!自分が奪われたら自分は奪っていいの…?いい加減になさい!!」

 

「それこそが全ての復讐者に言えること…ミイラになっちゃダメだよ…救われなきゃダメ!!」

 

「「ワタシタチヲスクウノハ…ワタシタチノワガママダケ!ソレヲミタセタトキダケヨォ!!」」

 

フェミニスト等の左翼連中と同じく、揺るがぬ正義感を爆発させた邪神が最後の力を振り絞る。

 

自分達の劣等生は絶対に許さないエゴイストに成り果てたセルマと紫丁香は最後の抵抗を行う。

 

「これこそが…円環世界を分断するしかなかった原因…国境線を敷くしか共存出来なかった…」

 

「その判断は正しいですわ…無理やり混ぜたところで…こんな末路にしか…なれなかった…」

 

魔剣を掲げたワスはアラディアに振り向き、頷いた彼女は花の杖を地面に投げ放つ。

 

地面に突き立った花の杖がアンカーのように根を張り巡らせていき、大弓に変化していく。

 

伸びてきた大弓を互いに掴んだ者達が魔剣の柄を握り込む。

 

刃を弓弦に沿わせて引き絞るその一撃は父神と娘神が織り成す極大の一射となるだろう。

 

「「シネェェェェェーーーーッッ!!!」」

 

マカカジャを最大にまでかけた上でコンセントレイトでチャージをした至高の魔弾が放たれる。

 

極大の一射に対し、こちらも極限の一射をもって応えるだろう。

 

<<神や悪魔であろうとも…救えない者達もいる。全てを背負う必要はない…お前も人間だ>>

 

「ありがとう…尚紀さん。そう言ってくれるからこそ…わたしは貴方が…大好きでした…」

 

円環の女神とワルプルギスの夜の背後に生まれる後光の中でロードオブザリング(サイファー)が描かれる。

 

太陽や土星は円環を描く星であり、円環の女神もまたロードオブザリングを描ける女神。

 

太陽と満月の光を背負った者達が極限の一射を放つ時がくる。

 

「愚かで悲しい生き物は互いに同じ…お(・)互(・)い(・)様(・)だ(・)っ(・)て(・)気(・)が(・)付(・)け(・)な(・)い(・)か(・)ら(・)…(・)許(・)せ(・)な(・)か(・)っ(・)た(・)のよ…」

 

涙を零すまどかとワスが放った魔剣の一撃は流星となりながら堕ちてくる。

 

至高の魔弾の一撃を光の刃で斬り裂きながら迫った先にいる復讐の女神は最後を迎えるのだ。

 

「「アァァァァァーーーーッッ!!!!」」

 

巨体を貫いた魔剣の一撃によって邪神セトの体が真っ二つになっていく。

 

裂けた体が倒れ込んだ後に爆発し、膨大な感情エネルギーを空に放射する最期を遂げるだろう。

 

<<取り込まれた彼女達の感情を無駄にするな…まどか、アラディア。お前達なら出来る>>

 

魔剣明星から聞こえた念話に突き動かされるまどか達は両手を大きく広げていく。

 

まどかとワスを包み込むマガツヒの光の中に宿ったセルマと紫丁香の感情を集めてくれる。

 

両手で握り込んだその中に宿った感情の記憶を魂として錬成する光景こそ、かつての奇跡。

 

ルシファーとなった尚紀がバアルに取り込まれた少年の魂を救った光景が再び蘇るだろう。

 

「貴女達の心を救ってあげられなくて…ごめんね…それでも地獄になんて…逝かせないから…」

 

両手に包まれた魂が円環の女神の体に宿るようにして消えていく。

 

「おかえりなさい…セルマちゃん…紫丁香さん……」

 

救ってくれる存在を求めて冥界に旅立った魔法少女達を救ってくれたのはかつての女神。

 

それは彼女達の本意ではなかったのだろうが、それでも円環の女神は魔女達を見捨てない。

 

まどかとアラディアの世界に帰ってきた魔法少女達は新たな存在となっていくだろう。

 

使い終わった残骸にわざわざ名前と姿を与えるコトワリとして名塚底根は生み出される。

 

あらゆる魔女の名を存在として残すために機能する名塚底根もまた円環のコトワリの一部。

 

たとえデキソコナイのフェイカーが生み出した領域であろうとも、魔女の女神は受け入れる。

 

虐げられた魔女にも人権は必要だとしたヘカーテの領域に守られながら存在するのであった。

 




ワルプルギスの廻天を視聴してた時、あれ…これってワスさん主役の物語じゃね?と思いながら視聴してました。
なので番外編はワスさんを押し出す形にして、悪魔ほむらちゃんを触れなかったんですよねぇ…。
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