人修羅×まどマギ まどマギにメガテン足して世界再構築 作:チャーシュー麺愉悦部
「そ…そんな…エイシェトのみならず…邪神セトまで倒されるだなんて!!?」
空の上で驚愕しているのはハデスとヘカーテの軍勢を相手に劣勢となったアグラト。
援軍を頼む念話を送ってもエイシェトは応えないため、隙を見て舞い戻っている。
しかしエイシェトとセトは円環の女神とワスに打ち倒された光景を前にして愕然とする。
「…貴女も我々と戦いますか?わたくしは一向に構いませんわよ?」
現れたアグラトに対してワスは不敵な笑みを浮かべながら挑発してくる。
それに対してエイシェトを殺した怨敵に向けて憎しみの眼差しを送りながらこう叫ぶ。
「どうして女魔を受け入れないのです!?私達の望む世界と魔法少女の望む世界は同じはず!」
「魔法少女達は世界の秩序をひっくり返す反キリスト主義を望んでいるというのですか…?」
「そうですわ!魔法少女も男神である唯一神に虐げられた女達…男の世界を貶めたいはず!!」
「…かつてのわたくしも唯一神を憎みました。世界をひっくり返す大魔女にまで堕ちる程に…」
「それなのに…どうして私達と貴女は手を取り合えないのです!?理解出来ませんわ!!」
「わたくしは男神に騙されて貶められた…だけど…同じ男神がわたくしの心を照らしてくれた」
遠くに刺さった魔剣に顔を向けるワスは啓蒙の光の中に唯一神と同じ輝きも見出している。
ルシファーとなった尚紀の中には唯一神の光も宿っているのだと理解しているのだろう。
「男神とは矛盾の塊ですわね…貶めたりするし…救ってもくれる。だから偏見は捨てましたわ」
男神の使いとしてやってきた男のインキュベーターもまた矛盾の塊であろう。
魔法少女を貶めて殺したいだけなら悪魔のように最初から凌辱の限りを尽くして喰らえばいい。
なのに契約を交わせば対価として奇跡と魔法の力を授けてくれる。
それによって死ぬはずだった少女達は命を繋ぎ留め、今を懸命に
奇跡と魔法の代償は宇宙の熱としての破滅であろうとも、僅かな命を残してくれた存在なのだ。
「結果という一面だけで他人の全てを決めつける…だからわたくしは憎しみに支配された…」
――本当の敵とは、感情が導く偏見にしか意識を向けられなかった…自分自身だったのです。
不快な感情に支配された自分を自己批判しない、自分に都合がいい感情しかいらない。
そんな偏見を仏教では無明と呼び、これは左翼主義を掲げたフェミニスト連中にも当て嵌まる。
「目を覚ましなさい!貴女は男に貶められたのよ!男を排除するために世界を貶めるのです!」
「貴女も男の一面だけで男の価値を決めつける偏見至上主義者ですわ…自分こそが敵なのです」
「ワスさんの言う通りだよ」
ワスの横に飛んできたのは遠くで突き刺さった魔剣明星を拾ってきた円環の女神である。
「キュウべぇは酷い部分もあるけど魔法少女を救ってもくれた。これは男の人だって同じだよ」
神浜の東に根付いた男尊女卑の伝統を憎む叫びを上げたのは東地区で暮らした天音月咲。
家事を押し付けられて男に自由を奪われたと被害妄想を繰り返し、一面だけで男社会を憎む。
しかしそんな彼女は男の献身である労働によって生かされてきた人間でもあろう。
自分の我儘で父親は冤罪に貶められて工房の評判は地に堕ち、自分の首を絞める末路になる。
キュウべぇはいらないと殺していたら人間時代の巴マミや五十鈴れんの命も残らないのと同じ。
「男という存在を一面だけで判断しないで…切り取った偏見だけでレッテルを張らないで!!」
「どうして…どうしてそこまで…同じ女だというのに…どうして男に味方するのですか!!?」
女性の劣等生は絶対に認めないエゴイストのアグラトは怒りと憎悪の魔力を爆発させる。
ワスとまどかも魔力を増幅させながら互いに睨み合う。
怒り狂ったアグラトであるが力の差は歴然だと判断出来るぐらいの冷静さは残っている。
憎悪の魔力を抑え込んだアグラトは睨みながらも負けを認めてくれるようだ。
「来度の戦は我々の敗北ですが…私達女魔は再び蘇り…男神の世界を貶めましょう」
「そこまで男を憎む貴女の望みは何だと言うのです…?」
「女魔の望みは女が神として男を支配する世界…
心理学者のカール・ユングは女性の無意識の中にある男性的要素をアニムスと表現する。
ラテン語で魂や精神を表し、理性や意志、意見や力強さといった男性的な側面であろう。
女性が特定の男性に強く惹かれる時、自分の中にあるアニムスをその男性に投影している。
女魔達の望みとは女が望む男性の権威を奪い取り、女の中に宿る男性要素を引き延ばす。
イナンナが男神の権威であるエンキのメーを奪った神話のように、イナンナを目指すのだ。
「アニムスを望むべきは男ではなく自らであるべき…男ではなく女こそが理想であるべきです」
「まさにフェミニズムですわね…その思想こそが…貴女達のような女魔の望みなのですね…?」
「この思想をかつての閣下がお与えくださった時…魔女として虐げられた私は救われましたわ」
「貴女は自分の中のアニムスを履き違えてるだけだよ!アニムスを求めるべきは男性なの!」
「そう思い込みたいだけでは?だって…円環の魔法少女達はレズビアンばかりですわよね?」
「そ…それは…その……」
「その子達も
二層構造の魔法陣傘を振るえば転送魔法陣が生み出され、アグラトは魔法陣に入っていく。
「今度相まみえる時こそ女魔の復讐計画を成就させてみせます…世界をひっくり返してみせる」
「世界を貶める憎悪を望んだわたくしに資格があるかは分かりませんが…止めてみせます」
「さようなら、円環のコトワリ…精々男という幻想に溺れながら…裏切られるがいい」
姿を消したアグラトの向こう側からやってくるのはハデスの軍勢である。
「ワガハイも流石に不死の大蛇を食いきる事は叶わなかった…脇見の壺が無ければ死んでたな」
ボロボロの体のまま空を見上げるオーカスに見えたのは脇見の壺を抱えたハデス。
ベリアルクラスの魔王ですら封印する力を宿した壺を切り札として持ってきていたようだ。
オーカスの隣を歩くヘカーテは上空を見上げながら微笑んでくれる。
「どうやら彼女達は女魔の誘惑には屈しなかったようだ…それでこそ我と同じく秩序の魔女だ」
「感情に踊らされる小娘にしては中々に気骨がある者のようだ!ワガハイと祝杯を上げよう!」
「やめてやれ…汝の宴会に付き合わされたら彼女達の腹が破裂する程に食わされる」
「残念だのぉ…天界から食える食べ物を沢山持ち込んでやったというのに…」
反逆の六枚翼が消えていくワスの前まで飛んできたハデスは無事を確認した後こう語る。
「どうやら…探し人達はダメだったようだな?」
「悪魔に取り込まれた彼女達の感情から記憶を抽出して魂を錬成したけど…そうなんです…」
「悪魔と同化した魂のコピーを生み出そうともクローンに過ぎない…本物の魂は地獄に堕ちる」
「わたしが救えたのは存在だけ…彼女達の存在しか救えなかった…」
「神や悪魔とて万能ではない…全てを背負う必要はないのだ。それでもそなたは優し過ぎる…」
魔女を救う神として自信を失いそうなまどかに対し、ヘカーテの念話が届く。
<人は死して忘れる魂をもつ、悪魔は死せず学ばぬ魂をもつ…円環の魔女はどちらであろうな>
<彼女達は死んでも生前の呪縛に囚われていた…円環の魔法少女達も…悪魔と同じだね…>
<それ程までの感情を宿す人間という生物もまた悪魔であり…
<人の心が生んだ感情という悪魔に成り果てた彼女達は…これからも悪魔として生きていく…>
<それこそが選択であり、責任の道…自らを由とする道は因果そのものだな…アラディア?>
<その通りだ…その道こそが魔法少女であり…父上とて…同じであった…>
右手に握った魔剣明星を持ち上げる円環の女神の頭に父神となった男の念話が届く。
<<それでいい…俺もまた魔法少女と同じく、自らの因果を背負って堕ちただけなのさ>>
「父上…我は寂しい…貴方様を失って…心が張り裂けそうです!お願いです…帰ってきて!」
<<それは出来ない。自らの選択の責任を背負う魔法少女達同様…俺もまた地獄で生きよう>>
「父上ぇぇぇぇぇ……」
子供のような顔つきで涙を零す円環の女神のために啓蒙神は最後の言葉を送ってくれる。
<<親父として何もしてやれなくてすまない…だからこそ俺の魂の一部をお前に託そう>>
「父上が振るったこの魔剣を…我に譲ってくれるのですか…?」
<<お前は円環の女神…俺と同じロードオブザリング。自らに反逆する大切さを伝えていけ>>
自らを由とする自由を履き違える者達に啓蒙を伝える伝道者として円環の女神は選ばれる。
我儘を自由という権利に結び付ける勘違いした愚者を止めるためにその剣を振るえというのだ。
<<
「我に出来るのですか…?父上のような啓蒙の光を魔法少女達に残せるのですか…?」
<<何言ってんだ?お前は俺の自慢の娘になってくれた女だぞ?出来るに決まっている>>
太陽と月は切っても切れない関係であり、表裏一体の存在。
魔女の神とは月を表し、ヘカーテやアルテミスと同じく円環の女神もまた月神。
だからこそ太陽は月と共にあるのだと言ってくれたアラディアは魔剣明星を抱きかかえる。
「父上…愛してます…心から愛する貴方様のために…頑張って…いきます……っ!!」
<<俺も愛している……さようなら、我が娘よ。そして彼女を支えてやれ……マルグリート>>
ワスにも念話が届いた事で深々とお辞儀をした後、彼女は自分の決意を語ってくれる。
「わたくしに啓蒙の光を与えてくれた貴方様のためにも…円環の女神を支えていきますわ」
冥界に赴いた円環の魔法少女と円環の女神はそれぞれに見つけたかったモノを見つける。
セルマと紫丁香は本当の自分を見つけ出し、
そして円環の女神は失った父親の形見となる魔剣を手に入れ、啓蒙の言葉を賜るだろう。
それぞれが帰路につく中、絶対に後ろを振り返るなと言葉を送るハデス達が見送ってくれる。
名塚底根に帰っていくワスとまどかは冥界に赴いた事で大きく成長するのであった。
♦
「えいっ!」
すごろくのダイスを振るったセルマが元気よく盤上にサイコロを投げる。
出た数字は6であり、駒を動かしながらゴールインと叫んだようだ。
「やったのーっ!これでケーキの獲得権をセルマが得たの~!」
「イカサマダイスを使ったりしてないわよねぇ…?」
「そんなのしてないの。盤上ゲームの専門家のアマリュリスはどう思う?」
「確認しても不審な点は見当たらないわ。持って生まれた彼女の強運に負けちゃいました~…」
円環の宮殿に備わるテラス席では食後のデザートを賭けたボードゲームを楽しむ者達がいる。
死んだ魔法少女達はお腹など空かないのだが、煙草と同じ嗜好品として食事も行うようだ。
笑顔を浮かべるのは再び形を得たセルマと紫丁香であり、アマリュリスも楽しそうにしている。
そんな彼女達を辛そうに見つめているのは円環の女神とワスであり、踵を返して去って行く。
アラディアの城館に戻っていく回廊で再び形を得たセルマと紫丁香への思いを語り出す。
「再び形を成したあの子達は…何も覚えていないのですね…」
「うん…あの子達の魂を錬成した時…名塚底根に記録されていた記憶を大部分で使ったの…」
「だからあの子達は円環で生活していた頃の記憶のまま生み出されたというわけですね…」
「本物の魂は悪魔に取り込まれたまま…いずれ自我すらなくなって本物の邪神に成り果てる…」
「それが彼女達の因果だったのでしょう…ですが…わたくしは罪悪感に蝕まれてます…」
名塚底根に赴きたいと賛成したのはワスも同じであり、自分が止めていたらと後悔している。
マルグリートを止められなかった過ちを再び繰り返した気分になる彼女は酷く落ち込む。
そんな彼女を元気付けるためにまどかは円環世界を見下ろせるベランダまで案内してくれる。
城館の天守閣のような場所のベランダに立つ者達は広大に広がる魔女の世界に目を通す。
風で長髪が揺れ動く中、まどかはこう告げてくる。
「罪を背負いながら…生きてもいいって思う。わたしも罪人だから…罪を背負って生きている」
「先の大戦に参加した貴女様は大勢の罪なき兵士達を殺害された…その罪はあまりに重い…」
「自責の念は未だにわたしの心を縛り上げてる…それでも…みたまさんがこう言ってくれたの」
報復という極端な正義を実行したとしても、
自責に縛られるあまり不幸になりたいなんて考えないで、
自分で自分を不幸にしたら
「贖罪のために不幸になりたいだなんて…ただの言い訳。みたまさんはそう言ってくれたの…」
「では…罪を犯した女達は…どのように生きていけばいいのですか…?」
「被害者が加害者に求めるべき願いとはね…今度こそ周りを支えられる人間になれって事だよ」
男の尚紀もまた断罪者として魔法少女を殺害してきた罪人。
だからこそ罪を認めて背負い、魔法少女達が生きる世界を変えるためにその命を使い果たす。
それこそが贖罪の道であり、
「生きてこそ…贖罪が出来る……」
胸を抑え込むワスは自分の罪を自覚して感受し、罪の十字架を背負う覚悟を宿すだろう。
彼女の頭に備わるカチューシャの形は十字架を横に向けた形であり、このままでは逆になる。
だからこそバランスをとるために再びひっくり返し、自分を許せる愛の形にも出来るだろう。
「わたし達は大罪を犯しても世界を立て直す償いをしなきゃいけない…それこそが贖罪なの」
「現世では未だに愚民共から人殺しのテロリストって…罵声を浴びせられてるそうですね…?」
「それもわたし達が背負わないといけない十字架…それでもね…一生背負って生きていくよ」
まどかの力強い眼差しを見つめるワスは自分もそうなれるかと聞いてくる。
振り向いてくるまどかは笑顔を浮かべながらワスの両手を握り込んでこう語ってくる。
「勿論だよ、マルグリートさん!」
「大魔女として大勢を殺戮したわたくしなんかが…聖人と同じ名を語ってもいいんですか…?」
「円環のタルトさんも戦争で大勢を殺戮した人…だけど彼女は後世で聖人として残ってるよ」
「その時々の時代では悪者だとしても…いつか必ず…報われる時代が訪れるのですね…?」
「悪者として生きるのも悪くはない…そう言ってくれた尚紀さんも…いつかは神様になれるよ」
大魔女ワルプルギスの夜としての
自分の悪しき概念がひっくり返った事でワスの体が光に包まれていく。
光の中から生み出された新たなる概念存在とは白い魔法少女服を纏ったそばかす少女。
セミロングの髪をしたマルグリートは笑顔を浮かべながらまどかに抱き着いてくる。
「有難う…わたくしの心を照らしてくれて。貴女様もまた…
「おかえりなさい…マルグリートさん。これからも一緒に…罪を背負って生きようね…」
「……はいっ♪」
ワルプルギスの夜とは魔女の集合体であり、ワスと呼ばれた少女の中には大勢の少女が宿る。
そんな彼女達はついに自分達を許せる日が訪れた事で次々とその形を取り戻していく。
円環の魔法少女マルグリートになれた彼女の後ろには涙を零す大勢の魔法少女達が現れる。
号泣しながらまどかに抱き着いていく彼女達を救う者こそ、啓蒙の光を継いだ円環の女神様。
月と太陽の性質を併せ持つ円環の女神が暮らす宮殿には宝物庫が存在している。
宝物庫の一番奥にはレッドカーペットが敷かれた玉座めいた空間が備わっているようだ。
玉座を守るように置かれるのはアスラ神族の銅像であり、男神の献身を魔女達は称えてくれる。
玉座の上に置かれたモニュメントとは、
その中央に突き立てられた魔剣明星はこれからも円環の魔女達を見守る御柱として存在する。
太陽と月が合わさったそのモニュメントの形こそ、太陽神ルシファーと月神アラディアの形。
組み合わさった太陽と三日月の形はまるで
真・女神転生 Magica nocturne record
The definitive end.
映画ワルプルギスの廻天を見終えた後、即興で思いついた番外編もこれで終わりです。
これにて拙作は完全終了となりますので、ご縁があった方々は本当に読んでくれて有難う御座いました。