人修羅×まどマギ まどマギにメガテン足して世界再構築 作:チャーシュー麺愉悦部
45話 目覚めの違和感
「…もう何度目の目覚めなのかも分からない」
彼女はまた鹿目まどかを救えなかった女である。
耐えきれない重荷を背負い続けた覚醒の繰り返し。
悪夢からの目覚めか?
それとも繰り返される悪夢?
どれだけの時間渡航を繰り返した果てに彼女は報われるのだ?
「交わした約束…鹿目まどかとの約束…」
彼女は鹿目まどかに命を救われた者。
そして魔法少女という存在を知ることとなった者だ。
「魔法少女、それは世界に呪いと災いを振りまく魔女と呼ばれる存在と戦う少女達…」
彼女はかつて魔女に襲われた少女である。
命を落とす寸前、鹿目まどかと巴マミに命を救われた事があったという。
「漫画やアニメのような人達だったけど…目の前に現れたのなら…疑いようはなかったわ」
彼女達は見滝原を魔女の手から救うために日夜戦い続ける存在と聞かされる。
彼女は魔法少女の世界を知った者となったのだろう。
そして大魔女と呼ばれる存在が見滝原に現れようとしているのを巴マミから聞かされるのだ。
「ワルプルギスの夜と呼ばれる大魔女…私はその名を未来永劫呪うわ…」
現れたワルプルギスの夜の力は圧倒的。
巴マミだけでなく鹿目まどかさえ倒され、見滝原は強大な力による水害によって滅ぶだろう。
「その時だった…奴と出会ったのは…」
インキュベーターと呼ばれる存在とは魔法少女を生み出す妖精のような悪霊的存在だと語る。
「…呪わしいペテン師と出会ってしまった。私はその時、そいつの存在を何も知らなかった」
感情が叫ぶまま願い事をインキュベーターに伝えてしまった彼女はこう願う。
――鹿目まどかとの出会いをやり直したい。
彼女に守られる弱い自分じゃなくて、彼女を守る私になりたいと願ったようだ。
「そして私は…インキュベーターと…契約?」
長い沈黙が続く。
一瞬だが記憶にノイズがかかってしまう。
インキュベーターの姿が
「なぜ…?こんな記憶…今まで思い出した事もなかったのに…急にどうして?」
ベットから起き上がり、ぼやけた思考をただそうと洗面台で顔を洗ってみる。
「インキュベーターは魔法少女を生む存在…人間の少女から魂を抜き、ソウルジェムを生む…」
対価として一つだけ願い事を叶える奇跡を与えてくれる。
しかしその代償はあまりにも大きかったと女は語っていく。
「そして奴は…それを契約の前では絶対に語らなかったわ…」
魔法少女はソウルジェムが濁りきった果てに魔女となる。
インキュベーターとは少女達を悪魔の如き怪物に作り変える存在だと憎たらしげに語っていく。
「全ては宇宙延命の為の熱エネルギーを効率的に生み出す孵化装置…それが奴の正体よ…」
魔法少女を生み出し、同時に魔女も生み出す存在こそがインキュベーターである。
「今まで奴の策略の手によって見滝原の少女は騙された果に魔法少女となり、魔女となった…」
インキュベーターしか魔法少女は生み出せないはず。
何度も見てきた者として記憶を確かめるように何度もそう呟く。
自分の目的を忘れない為の独白中に生じた記憶ノイズがどうしても頭にちらついていく。
頭を振り、ソウルジェムを鏡に掲げて魔力を肉体に込めていく。
両目に淡い紫の光を感じ取った後、視力は強化されて眼鏡は必要なくなったようだ。
ルーチンワークをこなしている時、病院内の違和感に気が付いてしまう。
「…何?」
この病院は見滝原にある総合病院。
高層ビルほどの規模を持つ見滝原でも最大規模の病院である。
彼女はこの病院で心臓手術を受け、どうにか延命出来たひ弱な少女。
勿論入院しているのは彼女だけではない。
沢山の入院患者や看護師達の声が外から聞こえるのが当たり前だったはず、なのにおかしい。
「外からは…何も聞こえてこない。どうして?」
手早く着替えを終えた彼女は病室扉を開ける。
病院の高層部分の廊下に踏み出てみたら人の姿が見えないようだ。
右の廊下を見ても左の廊下を見ても人の影一つすら無い。
何度も時間渡航を繰り返した中でこんな出来事は今までなかったと彼女は考えていく。
「魔女の仕業?確かに病院は病魔の恐怖や苦痛に怯える負の感情エネルギーが渦巻く場所よ…」
油断しないようソウルジェムを用いて魔法少女に変身を行う。
慎重に歩みを進める女は病院内を捜査してみる事にしたのであった。
――――――――――――――――――――――――――――――――
廊下を歩き、階段を下り、下の階の長い廊下を歩くが誰もいない。
病室を開けてみてもそこには誰もいない。
「…ありえない光景よ、こんなの」
やはり魔女で無ければこのような大量誘拐など出来るはずがないと判断する。
魔力を探りながら総合病院ビルをくまなく探索していた時、不意にビルの窓に視線を向ける。
窓から外を覗き込んだ時、女の表情が愕然としていく。
「……うそっ?」
見滝原が丸い。
「なんで…!?」
まるで球体の内側世界に見える光景に戸惑いを隠せない。
「視力は強化したはず…こんな馬鹿げた現象が…見えるはずはないわ…!!」
下を見下ろせば人の姿も車の影も見えない。
明らかに異空間のようにしか感じられない異常光景であろう。
空も見上げると何かを見つけた彼女が発光する存在が気になるようだ。
「…球体世界の中央に浮かぶ…あの光の球体は何?」
<<暁の子よ、あれはコトワリを成就させる場所だ>>
暗く冷たい声が脳内に響く。
聞こえただけで全身に震えが走るほどの鮮烈な声が言葉を紡いでいく。
<<お前もまた、コトワリの神と巡り合う定めにある者だ>>
不意に人の気配のようなものを感じ取り、廊下に振り向く。
そこには黒衣のローブを身に纏う存在が立っているのだ。
<<お前もあの男と同じ定めにある者だ>>
190センチはあろうかという長身人物は口も開けず念話だけの会話を繰り返す。
「お…お前は!?」
全身が恐怖で震えていく。
喉から絞り出すように彼女は声を出すのだが、廊下に響き渡り終える前に謎の存在は消失する。
「あれが…この怪異現象を引き起こす張本人?でも、あれは魔女なんかじゃない…」
全身の震えはまだ収まらない。
恐ろしく冷たい声が脳内に響いたせいだけではない。
あの存在から感じ取れた余りにも強大過ぎる魔力こそが恐ろしさの原因なのだろう。
「…ありえない、あんな魔力…ありえない!」
ワルプルギスの夜の力など、あの人影に比べれば最小単位でしか感じられない程の差に思える。
まるで神か悪魔が現れたのかと錯覚してしまう程の強大な魔力だったのだ。
「動けなかった…蛇に睨まれた蛙のように…」
幽鬼のような存在もいなくなった事で震えも収まってくる。
「あの存在は…いいえ、先ずはこの病院の調査に戻りましょう…」
彼女を殺すだけならあの一瞬で簡単に出来たはず。
なのに殺さないのなら敵意はないのかもしれないと考えたくもなってくる。
そうであってくれなかったら彼女の長い旅はこの場で終わっていただろう。
エレベーターに向かい、病院の地下深くへと女は進んでいく。
「このエリアはたしか病院関係者も立ち入り禁止だったエリアよね…?」
少し歩いた先で見つけたのはガードマンの検問所と鉄の格子戸ゲートである。
「検問所は誰もいないし…ゲートも開いている…誰かがカードキーを使ったのかしら?」
何者かに導かれるようにして地下深くへと女は踏み込んでいく。
無機質な壁、薄暗い明かり、不気味な廊下が続く。
無機質な壁を飾り立てる品がさらに恐怖を煽ってしまう。
「何よ…この悪趣味極まった…絵画の数々は…!?」
異常小児性愛者が描いたとしか思えない卑猥な絵画が通路に並んでいる。
人体をバラバラにして食卓に美しく飾り、並べられた食肉パーティ絵画も沢山並んでいる。
禍々しい悪魔的絵画の次はエジプト神話で見かける
そしてもっとも嫌悪してしまう絵画を最後に見つけてしまうのだ。
「この人物…もしかして、この総合病院の院長先生…?」
あろうことか化粧をしてカツラを被り、ドレスで女装した気持ち悪い絵画に対してこう呟く。
「あの痩せた老人は……トラニーだったの?」
トラニーチェイサーのトラニー部分は蔑称であり、いわゆる変態異性装者を表す単語である。
またトランスジェンダーを表す単語としても知られているはずだ。
MtF(男性から女性に性移行を望む人)や、FtM(女性から男性に性移行を望む人)を表す。
またXジェンダー(男性や女性ではない性を望む人)を表す際にも使われるものだった。
「まるで狂気の女王を演じる狂った男よ…」
あまりにもおぞましい光景は魔女結界を超える程の悪意に対して女は吐き気さえ感じてしまう。
さらに先に進んでいくと言葉を失う程の禍々しい部屋に辿り着く。
「なっ…なんなの…ここは…?」
7つに枝分かれしたロウソクを備えた燭台が部屋の四方の隅に見える。
ロウソクの火で照らされていたのは薄暗い手術室。
出入り口の左右にはペンタグラムが描かれた旗。
地面には血文字で描いたかのような大ペンタクル。
壁は真紅のカーテンで無骨なタイル壁を覆い隠す。
「手術室というよりは…何かの儀式部屋ね…」
魔法陣中央に備えられた手術台と手術用の大型ライトに視線が移る。
「手術台の横に備えられた装置はたしか…瀉血を行う際に使われる血液吸引機械なの…?」
近寄れば鼻を突く臭いがしてくる。
「嗅ぎ慣れたこの臭いは…人間の血?」
何かの流血で汚れている手術台には両手足、胴体、頭部までを拘束する拘束具が備わる。
眼球を開かせる為の手術器具まで備え付けられているようだ。
「手術台拘束具のサイズから見て…小学生までの子供用といった感じね…」
吸引機械に繋げていた中身が入っていると思われる赤黒い血液袋に視線が移る。
その血液袋を手にとって見た女は袋に書かれている文字を読んでくれる。
「A113…アドレナクロム…?見ているだけで気分が悪くなるわ…」
こんな設備がこの病院にあったとは彼女が知るはずもない。
恐怖で震えていた時、再び黒衣の男の念話が響いてくる。
<<この世界には
脳内に声が響くと同時に背後に現れた人影に対して女はこう呟いてしまう。
「また貴方なの…?それに…悪魔崇拝者…ですって…?」
この恐怖光景に対して黒衣の人物はここで行われたのだろう儀式の正体を教えてくれる。
<<血の中傷、
「子供達の血…!?それじゃあ…これは…病院の犯罪行為じゃない!?」
驚愕する女に対して黒衣の人物はフードで隠れた赤い片目の瞳を向けくる。
右手を挙げてピースサインを作るその影が蝋燭の光で影を生みだす。
光に照らされた壁に見えたのは二本角が生えた悪魔の影なのだ。
<<これが世界の裏側だ。魔女だけが災いだと考えているなら…知識無き視野狭窄だな>>
そう言い残した黒い人影は再び消えてしまう。
残された女は顔を俯けながらこう呟くだろう。
「…こんな場所で何をしているのかなんて…考えたくもない」
明らかに異常過ぎる空間に対して恐怖心が抑えられない。
魔女結界とは明らかに違う恐怖を初体験させられたからだろう。
恐怖が堪えきれなくなった女は部屋から駆け足で出ていってしまう。
「他の部屋まで見るのは躊躇うわ…それでも…何が今起こっているのか…調べないと…」
意を決し次々に部屋を捜査すると美しいインテリアが施された食事部屋が出迎えてくれる。
鏡のアンティーク台の上に飾られた赤い革靴をおもむろに手にとってみる。
「この革靴から血の臭いを感じる。それに飾られた人間の歯は一体何なの…?」
横の部屋は調理場なのだが彼女は冷蔵庫の前で立ち止まったままこう口にしてしまう。
「…業務用冷蔵庫を開ける気には…なれないわね」
次の部屋は大きな寝室であり、部屋の至る所に飾られた設備は子供に見せられるものじゃない。
「…性的倒錯したパラフィリアの寝室かしら?」
見かけたのは拷問器具や大人の玩具の数々なのだ。
今度の部屋は肉のミートフックが並んだ屠畜場。
肉解体用の台の上にはグロテスクな文様が彫り込まれた肉解体用包丁も見える。
「この部屋で何を解体していたのかは…考えたくないわね」
最後に見つけた部屋は地下焼却場。
手術室に置かれたものと同じ二本角が生えた牛のブロンズ像が飾られているようだ。
「確か…
注意深く焼却設備を捜査していく。
焼却設備の扉が一つ開いており、そこで燃えカスになっていたモノを見た女は絶句する。
「……酷い!!」
大きさから見て子供の人骨であり、顔が青くなった女は狂気に耐えられなくなる。
「もう…この狂った地下にいるのは…私には耐えられない!」
あまりにもおぞましい秘密が隠されていた見滝原総合病院。
彼女はこの病院がおぞましくて堪らない気持ちになっていった。
――――――――――――――――――――――――――――――――
捜査を終えた彼女は最後に総合病院のビル屋上に行こうとする。
屋上のエレベーターが開き、眩い光が視界を覆う。
まるで街一つが岩盤から丸まりながら球体になった世界。
空を見上げれば空遠くに見えるのは街の光景のようだ。
空の中央部分には大きな光の球体。
空を見上げた首を下ろせば眼前には黒いローブの人影がいる。
しかし長身であったはずなのに今度は彼女と変わらない身長の女に見えるだろう。
「さっき現れた男とは違う…桁外れな魔力も感じない…それに今度は女性なの?」
<<素敵な場所でしょ?ここはボルテクス界と呼ばれる創生を行うための受胎世界の幻影よ>>
脳に響いてきた声は穏やかな女性の声。
しかし暗く冷たい恐怖を感じさせてくるのはあの男性の人影と同じである。
「ボルテクス界…?受胎…世界?」
<<
「言っている意味が分からない…貴女は何者なの!?」
威嚇するが魔力さえ感じない存在に対しても彼女は身動き一つとることさえ出来ない。
臆病でか弱い姿をした魔法少女を前にした謎の女が何処か懐かしそうな目で見つめてくる。
<<分からなくていい、貴女は受胎に導かれる定めではない…それでも…>>
屋上の端に立って外を見つめる黒衣の少女だったが彼女に振り向く。
発した言葉の雰囲気は少女の言葉ではなかったようだ。
「君に見てもらいたかったのだ。あの男が生きた同じ世界をね」
突然男性のような喋り方になる黒衣の少女。
気圧された魔法少女は後ろに引き下がっていく。
黒衣の人影が迫りながらこう語りかけてくる。
「コトワリの神、それは宇宙の規範…新たに生まれる宇宙の導き手」
「何なの…コトワリの神?宇宙の規範って何よ!」
「お前は失う事になる…あの男と同じように…最も親しい者を失う事に…」
「親しい者…?」
謎の存在の言葉で鹿目まどかの姿が脳裏に浮かんでしまう。
彼女の前で立ち止まり、黒衣の少女はその顔を近づけてくる。
「もし、君は運命というものがあるとしたら…許せるだろうか?」
「運命ですって…?」
「君の大切な親友は全ての世界から消えてしまう運命であったら?」
「…っ!」
「大切な親友の為を思って行動してきた道が…消滅をもたらす為の運命であったら?」
「馬鹿なこと…言わないで!?」
「君は宇宙の規範を生み出す為の運命というレールを敷いた存在を…許せるかね?」
「分からない…あなた、何が言いたいの?」
「あの男は許さなかった」
「あの…男って?」
「あの男は永遠をかけてでも大いなる神に復讐する事を誓い、魔界奥底の私の元に辿り着いた」
「魔界とか…あの男とか言われても…私には検討がつかないわよ」
「いずれその男も君に挨拶をしに現れるだろう。二人きりで話せる場所でな」
踵を返した黒衣の少女が屋上の端に歩いていく。
来るように促されたため動く事が出来なかった体が自然に動いていく。
二人で世界を見る光景とはボルテクス界と呼ばれた幻影世界である。
「あの男という存在は…この世界で何をやったの?」
「君と同じだ。大切な親友達と恩師、守りたい人々を守る為に強くなる道を選んだ」
「私と…同じ…」
「悪魔達が跋扈する地獄をのたうち回り、それでも誰一人として守る事など出来なかった男だ」
その言葉が彼女の胸の中に染み入ってくる。
名前も知らない男なのに彼の心の痛みが分かってしまう。
慟哭と怒りの感情まで分かってしまう自分に戸惑ってしまう。
(まるで
「君とまた話せて良かった。最後に一つ、君には朗報であると同時に最悪の悲報がある」
黒衣の人影は右手を持ち上げ、指を鳴らそうとする。
「君の長かった旅は、この世界で終わる」
指が鳴った音が耳に聞こえてきた瞬間、魔法少女の意識はホワイトアウトしていった。
――――――――――――――――――――――――――――――――
変わらぬ覚醒を迎えた少女がベットから起き上がる。
顔を洗い、視力を強化して着替えをする変わらぬルーチンをこなす。
「あの光景は夢だったの…?酷い悪夢だったわ…」
窓の外は変わらぬ見滝原の姿があり、車や人が行き交う日常が見える。
病室の外も患者や看護師の声が響いている変わらぬ光景が広がっている。
カレンダーを見れば病院からの退院日。
これからの住まいに向かい、見滝原中学校転入に備える事になるだろう。
「あの悪夢は正夢であったのか…それを確かめる必要性は私にはないわね」
彼女は法の番人ではない。
一つの目的だけを遂行する魔法少女。
鹿目まどかとの交わした約束を必ず果たす者。
「そう…交わした約束がある」
2つの大きなバックに私物を詰め込み終えた少女が両手に持ちながら病室を後にする。
病院のエントランスホールに向かいながらあの時の記憶を思い出していく。
鹿目まどかが彼女の命をもう一度救ってくれた世界線記憶に浸っていくのだろう。
「魔法少女の秘密を知り、インキュベーターに騙されていると伝えようとした時期だった…」
その世界において魔法少女達は同族が魔女になる光景を全員が目撃してしまう。
あの時生き残れたのは彼女と鹿目まどかと佐倉杏子と巴マミ。
「巴マミは魔法少女が魔女化するという現実に耐えきれず…壊れてしまった…」
時間停止魔法を使える者をいの一番に拘束し、杏子まで一瞬で殺す。
そして彼女まで殺そうとした悪夢の記憶のせいで顔が歪んでいく。
「あの時…まどかがいなかったらきっと…私は巴マミに殺されていた…」
まどかの攻撃によりマミはソウルジェムを砕かれて死亡する。
「魔法少女の呪われた真実に耐えきれたのは…私とまどかだけだった…」
二人は最後の生き残りとしてワルプルギスの夜に対して戦いを挑む。
そして末路は二人共倒れてしまった苦しい記憶で閉められている。
「このまま魔女になってもいい、そんな風に諦めていた時…まどかはまた命を救ってくれた…」
自分の魔力切れに構わず、残していたグリーフシードを行使してくれる。
そして彼女は魔女となる死に際に語りかけてくれるのだ。
――ほむらちゃん…過去に戻れるって言ってたよね?
――こんな終わり方にならないように…歴史を変えられるって。
――だからね…お願いがあるの。
――キュウべぇに騙される前のバカな私を…助けてあげてくれないかな?
二度も命を救ってくれた大切な仲間がかつていたのだろう。
友達以上の存在からの願いが託された少女は鹿目まどかとの約束を果たす誓いを持つだろう。
最後の力を絞り出すように、言葉を紡ぐ。
「私は鹿目まどかと約束を交わした…何度繰り返す事になっても、絶対に貴女を救ってみせる」
「まどか…あの時、貴女を介錯してしまった心の痛み…今でも消えないのよ…」
震えながら握りしめた銃。
まどかのソウルジェムに向けられる銃口。
魔女が今この瞬間にも生まれてしまう。
眉間にシワがよりきる程、ソウルジェムを睨む。
この呪われた魔法少女の運命の螺旋。
暁美ほむらと呼ばれた少女は心から憎悪する。
魔法少女の運命を憎悪し続けるだろう。
あの時の絶望と親友の命を終わらせた銃撃の音は永遠に忘れる事はない。
あの悲劇をもう繰り返させないためにこそ、暁美ほむらは魔法少女の運命に抗う道を進むのだ。
病院一階エントランスホールにエレベーターで到着したほむらが悪夢の病院から去っていく。
力強く前に踏み出し、外の光が流れ込む世界に向かう。
「もう、誰にも頼らない…」
魔法少女の真実には誰もが耐えられない。
「まどかには絶対に戦わせない、全ての魔女を私一人で片付ける」
何度でも繰り返す。
ワルプルギスの夜を倒す為なら何度でもほむらは時間渡航を繰り返す。
たった一人の友達を救う為に。
「まどかの為なら…永遠の迷路に閉じ込められても構わない」
悪夢で見た最後の言葉が頭に過る。
ほむらの長かった旅はこの世界で終わるのだろうか?
「ええ、終わらせてみせるわ。そして必ず彼女を…呪われた定めから救って見せる」
――交わした約束、忘れないよ。
これを最後とする事を誓った彼女は光の世界へと踏み出しながら白い光の中へと消えていった。
読んで頂き、有難うございます。
次の話は原作まどかマギカを知らない人の為に書いているので、原作物語の内容を知っている人は読み飛ばして貰って大丈夫です。