人修羅×まどマギ まどマギにメガテン足して世界再構築   作:チャーシュー麺愉悦部

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52話 白い魔法少女

4月も終わりが近づいていた頃。

 

夜の見滝原市では3人の魔法少女達が今日も魔獣相手に奮戦している。

 

しかし2人の魔法少女は動揺しているようだ。

 

「なぁ、マミ…この魔獣の数は何なんだよ!?」

 

「少し前に比べても、爆発的に繁殖している…。何が原因でこんな自体に?」

 

丁度ほむらがこの世界に流れ着いた頃から始まっている光景であり、異常事態であろう。

 

「ぼやいたって仕方がないわ…行くわよ、杏子、巴マミ」

 

湧き出し続ける魔獣の軍勢を前にしても怯むことなく、ほむらはビルの上から跳躍する。

 

「確かに、ぼやいたって戦う事には変わりないよな」

 

「私達も行きましょう」

 

魔獣は大した力をもたない個体の群れ。

 

攻撃手段は体の周りを覆う複数の四角いポリゴンを使ってくる。

 

四角いポリゴンから放つ魔力のレーザー以外は特に攻撃手段はもたない。

 

動きも緩慢であり、手練の魔法少女ならばカカシも同然であろう。

 

「動きさえ止まらなきゃ、そんなトロい攻撃に当たるかよ!!」

 

跳躍移動を繰り返し、レーザーを避けながら接近していく。

 

長槍パルチザンのような魔法槍の刃で魔獣を切断し、魔獣の隊列内に杏子は着地する。

 

槍の持ち手部分を使い、体の左右に大きく回転させながら武器を変形させていく。

 

柄部分が次々と分離していく光景は中国武具の多節棍・多節鞭を思わせるだろう。

 

内蔵された鉄の鞭を振るい、周囲の魔獣を殴打していく。

 

破壊されていく魔獣だが次々に現れ始めるようだ。

 

「次から次にきりがない…まぁ、取り分が増えるから文句はねーよ」

 

杏子の背後に出現した魔獣達がレーザーを放つ構えを見せた時、味方の援護が入る。

 

「やらせないわ!」

 

魔獣の周囲に目掛けて空から銃弾が降り注ぐ。

 

マスケット銃の弾は魔獣の足元に着弾し、芽が伸びるように丈夫なリボンが大量に溢れ出す。

 

地面を覆う根のように飛び出し、次々と魔獣に襲いかかっていく。

 

「レガーレ・ヴァスタアリア!!」

 

複数の魔獣はリボンによって拘束されてしまい、バインド状態となるだろう。

 

「ヘッ、手間かけさせたね!」

 

背後に振り返るように柄を繋いだ魔法槍の一閃が繰り出される。

 

背後の魔獣達が一度に切断される光景こそ、杏子の戦い方なのだろう。

 

マミの固有魔法は命を繋ぐ願いによって生み出され、リボン魔法として彼女の力となるだろう。

 

ただのリボンであるが魔法の応用技術によって様々な武器に編み上げる錬成を使いこなす。

 

構造が簡単なマスケット銃や大砲。

 

丸い弾丸や大砲の榴弾を好んで錬成していたようだ。

 

空から現れ、杏子の後ろに着地したマミは油断なく両手を左右斜め上に向けて開く。

 

「ハァッ!!」

 

掌から生み出されたリボンで小さな大砲を錬成する。

 

装飾された砲身から榴弾が発射され、魔獣達を爆殺。

 

爆発の光でマミと杏子の姿は魔獣結界世界に照らされる光景が広がるだろう。

 

「はっ!相変わらず必殺技を叫ぶ癖は治らないよな、マミ?」

 

「これは戦場での気持ちの問題よ。自分を奮い立たせて敵を倒すと願掛けしてるようなものね」

 

「まぁ、あたしは足を引っ張らなきゃ何でもいいけどな?」

 

「あら、佐倉さん?私の連携は何点貰えるのかしら?」

 

「昔と変わらねーよ、百点満点だ!」

 

2人はかつて共に見滝原で戦った魔法少女達。

 

家の悲惨な末路さえなければ杏子とマミが離れ離れになる理由などなかった関係性をもつ。

 

(離れていた時期があっても、やっぱり戦場のマミは信頼出来るよ)

 

道路の向こう側からは、おびただしい数の魔獣が次から次に現れてくる。

 

「あらかたコロニーは潰したはずなのに、まだどっかにあるんだろうな」

 

「ええ、それを潰さない限り魔獣は際限なく現れてくるわ」

 

「なら、こいつらが発生する場を辿りながら…コロニーに向かうだけさ!」

 

杏子は油断なく魔獣の集団に向けて槍を構える。

 

マミは頭の帽子を掴んで投げる。

 

魔力で帽子を回転させながらキャッチして被り直す。

 

回転する帽子の中から複数のマスケット銃が生み出され、地面に固定して拾い上げる。

 

広い道路に一直線上に展開した魔獣は隊列を組み、レーザー攻撃を放とうとした時だった。

 

<二人共、避けなさい>

 

ほむらの念話が突然聞こえた事で後ろを振り返った杏子とマミであったが驚きを隠せない。

 

「おいおい!?」

 

「私達がいるのよ!?」

 

血相を変えながらリボンと槍の鞭を街灯に絡み付けて跳躍回避を行う。

 

後方のビルの屋上に描かれたのは巨大魔法陣。

 

かつての世界において、まどかが生み出した魔法陣と酷似している。

 

菱形が幾重にも重なり合う魔法陣が複数に広がり、光の糸で繋がり合う。

 

ビルの屋上で弓を構えたほむらは目の前の敵の群れにしか意識が向いていないようだ。

 

「まとめて倒す」

 

前方に描いた魔法陣に目掛けて光の矢を放つ。

 

魔法陣を貫いた瞬間、菱形魔法陣からも無数の光の矢が生み出される。

 

魔人の直線隊列に向けて飛び交い、矢は形を変えていき紫の鴉めいた矢と化すのだ。

 

魔獣の隊列に雨のように降り注ぎ、魔獣の軍勢は一網打尽にされた末に消滅していく。

 

(…扱い辛い。今まで使ってきた現代武器じゃないものね…)

 

彼女の武器と魔法は新しい世界においては形を変えられている。

 

(弓を使った事もない私にはハンデとなる…。そこは魔力で補うしかないわ)

 

敵を倒したほむらはビルの上から飛び降り、地上に着地すると罵声を浴びせられてしまう。

 

「おいコラァ!!あたしらも殺す気かよぉー!!」

 

巻き添え被害で殺されかけたのだから罵声を浴びせられるのは当然だろう。

 

「暁美さん、今のタイミングは最悪よ。もっと状況判断してくれないと…」

 

「状況判断が出来てないのは貴女よ。あの隊列ならば魔法攻撃で殲滅出来るチャンスだったわ」

 

「だからぁ!あたしらがいるのが見えてなかったのかって!?」

 

「警告はしたはずよ?貴女達なら問題なく避けれると判断したまでね」

 

「打ち合わせならまだしも、いきなりだぞ!一言ぐらい謝ったって…」

 

「その必要はないわ」

 

「ぐっ…いい度胸してるよ、お前って」

 

お前も何か言えとマミに視線を移すが、頑ななほむらの態度に呆れて首を振ってくる。

 

(暁美さんとの戦闘陣形を考え直さないと…危ういわね)

 

魔獣に接近戦を行う杏子と中距離から補佐して支援を行うマミ。

 

後方から状況判断して遠距離射撃を行うほむら。

 

後方の高台で戦況を観察しなければならない彼女は責任も大きく、責められるのも無理はない。

 

「暁美さん、魔力の使い方だって…あんな魔力行使を続けていては…」

 

「問題ないわ。グリーフキューブなら沢山拾えたのでしょう?」

 

「それは、まぁ…」

 

「私の取り分を渡して、杏子」

 

グリーフシードに目ざとかった杏子は新世界でもグリーフキューブを重要視している。

 

文句を言いに来る前に沢山拾っていた分を何個か摘まむ。

 

「おい、取り過ぎだろ!」

 

「つべこべ言わないの」

 

彼女はソウルジェムにかざして汚れを吸い出す。

 

いつの間にか足元にはキュウべぇの姿もいるようだ。

 

「グリーフキューブ頼りで大火力行使を続けていては、いざという時に底を尽きてしまうよ」

 

「あなたに私の戦い方を指図される言われはないわ」

 

穢れを吸い出したグリーフキューブをキュウべぇに目掛けて投げてくる。

 

「もっとマシな投げ方出来ないのかい?」

 

乱暴に投げられた事で地面を歩き回りながら回収していったようだ。

 

二人の間を割るように歩みを進めていくほむらは敵が潜む場所を求めている。

 

「魔獣のコロニーは今夜中にカタをつけましょう」

 

ビルに大きく跳躍し、屋上を飛び越えながら移動していく。

 

「やれやれ、ほむらの戦い方は余裕を感じないね」

 

「そうね…」

 

「類を見ない魔力保有者ではあるけれど、あれでは先はないよ」

 

「暁美さんは何を背負って…あんな自己完結した戦い方をするの?」

 

杏子はグリーフキューブを服のポケットに仕舞い、何個かで魔力を回復させる。

 

彼女の視線は遠いほむらの背中に向かうが、心配するような顔つきで呟いてしまう。

 

「まるであいつ…()()()()()()()()ようにしか、あたしには見えねぇよ」

 

 

オフィス街を超えて商業区から南西に向かう魔法少女達。

 

住宅区の公園郡を超え、河川で仕切られる橋を渡った先にあるのが海沿い区画。

 

そこはこの街の開発の頃から他の区画とは一線を引くような地区であろう。

 

見滝原政治行政区と地元住民から呼ばれる場所だった。

 

「見滝原政治行政区ねぇ…行った事ないけど、どんなのがあるんだ?」

 

「国会議事堂並の巨大議事堂や、公邸、諸々の政党本部に代わる政党ビルがあるらしいの」

 

「まるで霞が関ビルディングじゃねーか?この街の海沿いにそんな場所があったなんてなぁ」

 

「あの街のランドマークタワーなら、商業区からでも見えた事があるでしょ?」

 

「台湾にある台北101みたいなビルだろ?デカイよなー」

 

「高さは500メートルを超えているそうよ。この街ならどこでも見えるわね」

 

「なんでそんなビルを政治行政区って場所に建てたんだろな?」

 

「あそこは日本合同庁舎ビルと呼ばれてるの」

 

「なんだそりゃ?」

 

「日本の行政機関が入る予定だと言われているけれど…私も詳しい事は知らないの」

 

「何にしろ、この国の首都に代われる程の街を作るなんて…何考えてんだろな?」

 

「そうね…どうしてこの国は見滝原市や隣の神浜市という新興都市を計画したのかしら」

 

「2人とも、無駄話もそこまでにしなさい。国の事情なんて魔法少女には関係ないわ」

 

川に近いビルの上に3人は到着すると住宅区と政治行政区を繋ぐ橋が見える。

 

「どうやら、この橋の向こうから魔獣共は流れてくるようだな」

 

「この先は私も立ち入った事がないのよ」

 

「関係ないわ。現にあの橋を超えて次々とこちら側に魔獣が流れてきている」

 

「つーことは、あの街に魔獣のコロニーがあるってわけだ」

 

「でもこの先の街は…」

 

「見なさい、渡ってくる魔獣達が人間達から感情を奪い取っているわ」

 

橋を往来している車列は止まっている。

 

人間達も倒れているのを確認したほむらが動く。

 

ビルの上から飛び降り、落下中に空に向けて光の矢を放つ。

 

橋の上に矢は飛来し、地上に向かって魔法陣が生みだされる。

 

菱形魔法陣から次々と光の雨が降り注ぎ、魔獣の群れを一掃しながら突き進む。

 

「マミ、確か前に言ってたよな?」

 

「ええ。この先は…もう一つの魔法少女グループが活動しているエリアなの」

 

「美国織莉子だっけか?」

 

「行きましょう、佐倉さん。美国さんや呉さん、それに浅古さんが危険だわ」

 

「へっ、うちのトラブルメーカーが連中と絡む前に…どうにかするか!」

 

3人は橋の向こう側へと向かいながら現れる魔獣共を切り払い、撃ち払い、突き進む。

 

程なくして国会議事堂を思わせる大きな議事堂の前に到着する。

 

「見つけたわ」

 

衆議院や参議院を思わせる屋根の上に座り込む巨大な人影。

 

おびただしい瘴気を放つ存在とはコロニーを生み出す魔獣達だ。

 

「ここが魔獣のコロニーだったか!」

 

「暁美さん、飛ばし過ぎよ。後は私達が…」

 

「見くびらないで。この程度で引き下がる私じゃないわ」

 

ほむらは魔力の回復作業も行わない強行軍を己に敷いている。

 

戦場を突破したのはいいが、魔力残量は心もとない。

 

それでも彼女は意に介さず、国会議事堂を思わせる建物に目掛けて弓を構えたその時だった。

 

――オラクルレイ。

 

魔獣達の背後の上空から飛来した光が無数の光線となって魔獣達を貫通していく。

 

コロニーを形成していた魔獣達は声も出せずに消失していく光景が広がっていくのだ。

 

3人の前方にまで飛来した光線は足場に被弾し、ほむら達は飛び退いて回避を行う。

 

「この魔法攻撃…まさか!」

 

まるでここから先は自分達の領域だと線引きするかのような一撃の跡が残っている。

 

夜空にかかっていた雲も晴れていき、月明かりが出始める。

 

議事堂の中央塔に目を向けたほむらの目が憎しみの炎を宿していく。

 

「やはり…」

 

月明かりを上空にして夜の光に照らされているのは白い魔法少女。

 

その横には黒い魔法少女の姿と青い魔法少女の姿。

 

奥歯に音が鳴る程まで噛み締められ、ほむらの顔つきは怒りに染まっていく。

 

「美国…織莉子…ッッ!!!」

 

織莉子と呼ばれた少女は暁美ほむらに目を向けながら優しく微笑んでくるのであった。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――

 

ほむらの弓が議事堂中央塔に向けられ、そして引き絞られる。

 

光の矢を弓につがえた瞬間、割って入る者達が現れるだろう。

 

「くっ!?」

 

槍とマスケット銃が交差するように迫り、放たれる矢を空に目掛けて叩き上げてしまう。

 

放たれた一撃が燃え上がる巨大カラスの如き姿と化し、天高く消えていく。

 

明らかに殺意が込められている一撃であったのだろう。

 

「何考えてんだ…ほむらぁ!!あたしらは魔法少女同士の殺し合いに来たのかよ!?」

 

「そうよ暁美さん!魔法少女は魔獣を相手に手を取り合って戦う仲間達じゃない!!」

 

「黙りなさい!!あの女だけは許さない!!」

 

「随分と、うちの織莉子に恨みを持ってるようだねぇ?」

 

背後から感じたのは黒い魔法少女の気配。

 

「織莉子はいい子だから、魔法少女に恨まれる事はないんだけど?」

 

いつの間にか背後に移動していた黒い魔法少女の武器がほむらに向けられている。

 

手が見えない程に長い袖から現れた武器とは何本にも束ねた赤黒く光る複数の鎌。

 

鎌はほむらの背後から伸び、彼女の心臓に尖端が向けられていたようだ。

 

「…速度低下魔法ね、呉キリカ」

 

「へぇ?私だけでなく、私の固有魔法まで知ってるんだ?」

 

「ええ…その恐ろしさは身を持って経験したわ」

 

「おかしいな~、君と私は初対面のはずなのに?」

 

「一定範囲内の敵の速度を低下させる補助魔法でしょ?」

 

「ご名答。相対的に味方全体の速度を加速させられるのさ。…やっぱり何処かであった?」

 

「会ったわ…最悪の出会いでね。あの美国織莉子共々に…!」

 

「私の記憶にはないけど…君、もしかして酷い妄想癖があるタイプ?」

 

「美国織莉子…呉キリカ…私はお前達を許さない!!」

 

<<ちょっと、そこの根暗ロン毛な女ぁ!!>>

 

威勢のいい少女の声が議事堂方面から響く。

 

「喧嘩売りに来たなら、私が買ってあげるわよ!」

 

議事堂方面から織莉子と共に歩いてくる魔法少女の声であろう。

 

青い長髪をした魔法少女は直情的な怒りを隠さない態度でほむらに怒りを向けてくる。

 

(誰なの…?かつての世界の美国織莉子は、こんな奴を従えてはいなかったわ…)

 

白と藍をした近代欧州騎士の装束を上半身に纏い、下半身は白いミニスカートとロングブーツ。

 

斧柄を背中に固定する為の胸と腰のベルト部位も備わっている。

 

左胸のベルト部位に見える飾り物がソウルジェムだと思われる。

 

(あんな巨大な斧を振り回すの…あの魔法少女?)

 

長い柄を右手に握り、柄背を右肩に乗せた魔法武器は見る者に恐怖を与えるだろう。

 

いつでも片手で振り抜ける構えを見せるのは十字架の装飾があるポールアックスなのだ。

 

(あの女の固有魔法は分からない…迂闊に攻められないわね)

 

織莉子、キリカ、そして未知の敵。

 

それに加えて杏子やマミも止めようとするこの状況である。

 

「小巻さん、落ち着いて」

 

「だって美国!こいつの方から喧嘩売ってきたわよ!?」

 

「私達は戦う為に出会ったのではない。そうですね、巴さん?」

 

「ええ、美国さん。私達は貴女達に敵対する意思はないわ」

 

「貴女達に無くても私には…!」

 

「いい加減にしろ!隠し事ばかりしやがって!」

 

周りから見れば突然興奮して暴れる患者のように見られているかもしれない。

 

事情を周りに説明する事さえ出来ない立場のせいで責められるのは暁美ほむらばかり。

 

「一体こいつらに何の恨みがあるのか、言ってみろよ!」

 

(…言えるはずがない)

 

ほむらの脳裏に浮かぶのはかつてあった世界の記憶。

 

魔女と呼ばれる存在がいた世界において美国織莉子と呉キリカが見滝原中学校を襲った事件。

 

そこで行われた無差別テロ行為とも言える惨状は今でもほむらは覚えている。

 

(先生は呉キリカの使い魔に喰われ、生徒達も喰われた…忘れられない地獄絵図よ…)

 

彼女達の目的は世界を終わらせる魔女と化す鹿目まどかを抹殺すること。

 

それを許すほむらではなく、二人に戦いを挑む事となった過去を持っていた。

 

(あの2人は死に際に…まどかを殺した)

 

それでも、かつての世界の出来事を証明する方法などない。

 

(頭では分かっている…この世界の美国織莉子と敵対する理由なんてない…)

 

鹿目まどかが存在しない世界なら美国織莉子がまどかを襲う事態も起こらない。

 

それでも感情の起伏が激しいほむらは怒りを制御する事が出来ない。

 

大好きな親友の命を奪った存在と同じ姿と形をしている存在がいるだけで許せない。

 

「…初めましてかしら?暁美ほむら」

 

「…なぜ、私の名前を?」

 

「予知で今日の光景は知ってました。貴女が私とキリカに敵意を向けてくる事もね」

 

「そうね…貴女って、そういう女だったわね」

 

「私達は…何処かで会いました?」

 

「…………」

 

「貴女が襲いかかってくる動機までは分かりません。なぜ、私を殺そうとするんです?」

 

(傍から見れば…突然襲いかかる狂人なのかしら?今の私の…行動は…?)

 

自分を客観視出来る冷静さが戻ってきた事で矛を収めてくれる。

 

「帰るわ…杏子、グリーフキューブは貰うわよ」

 

「突然怒ったり、クールダウンしたり…忙しい奴だなって!?」

 

ポケットに詰め込まれたグリーフキューブを強引に掴み取られてしまう。

 

「取り過ぎだぞ…オイ!!」

 

怒る仲間は無視する彼女は政治行政区を離れていったようだ。

 

「本当にごめんなさい…美国さん」

 

「いいえ、私は気にしてないから」

 

「私は気にしてるっつーの!!何よ…あのウルトラコミュ症!!スーパー根暗女!!」

 

「小巻はファイナルガキ大将だけどねぇ~?」

 

「うるさいわよ、呉!!」

 

「さやかよりも濃い青髪してるせいか、さやか以上に性格キツイな…こいつ?」

 

「うちの小巻は性格キツイよ~?白女の嫌味な良家組が、しっぽ巻いて逃げるぐらいにさ」

 

「この八重歯コンビ…!?売られた喧嘩なら…私は逃げないーっ!!」

 

大騒ぎしだす光景が広がり、根が子供な者達を見ながらマミと織莉子は微笑んでくれる。

 

微笑んでいた顔つきが変わった織莉子はマミに視線を向けながら質問してくるようだ。

 

「ある日を境に…魔獣が異常繁殖を繰り返す。巴さんは何か掴めてます?」

 

「いいえ。私も佐倉さんも…突然過ぎる自体に戸惑ってるわ。何が原因でこんな自体に?」

 

「予知魔法で掴んだ情報では、暁美ほむらがこの街に現れた頃と魔獣の増殖が一致するんです」

 

「まさか…暁美さんに原因が?」

 

「確証はまだありません…ですが、偶然にしては…」

 

「そうね…暁美さんは私達に隠し事が多過ぎるわ。彼女は一体何者なのかしら?」

 

「並の魔法少女を遥かに超える莫大な魔力量…ただの魔法少女とは思えませんね」

 

「もう一つ私も気になるの…例の()()()()の件ね」

 

「通常の魔獣とは異なる強大な魔力がこの街に現れた事には気がついてます」

 

「大物魔獣については、何か情報は得られたの?」

 

「いいえ…予知でもその正体を掴めてません」

 

「暁美さんの出現に合わせた魔獣の増殖、それに大物魔獣の出現…」

 

「この街に…何が起こっているんでしょうね…」

 

こちらの緊張感もつゆ知らない3人娘はプロレスごっこをしてしまう。

 

<<ギャーーッッ!!ゴリラ女ーッッ!!!>>

 

<<オラーーッッ!!どう?参ったか八重歯コンビーッッ!?>>

 

窒息させられかけた杏子とキリカを見た2人は慌てて止めに入るのであった。

 

 

魔法少女の変身を解き、歩道を歩いて帰るほむらの姿を街灯が照らす。

 

歩道に倒れていた人間達の意識が戻っていく中、彼女は織莉子のことを思い出すようだ。

 

「まどかを救えなかった時間軸を捨て、次の世界に流れた時に…あの女の身辺を洗ったわ」

 

汚職議員の娘であり、世間からは疎まれた存在。

 

見滝原市内にあるお嬢様学校に通う白羽女学院3年生の女子生徒。

 

「見滝原郊外に作られた高級住宅街にある屋敷にあの女は住んでいると突き止めた」

 

かつての世界で目的は聞かされているのなら、まどかの守護者はこうするだろう。

 

「インキュベーター以外の驚異が生まれた…だからこそ私はあの女を…先に殺す必要が出来た」

 

一体どれだけの平行世界で暁美ほむらは美国織莉子を殺したのだろうか?

 

「銃殺…事故死…寝静まった部屋に上がり込んで自作のナパーム弾で焼き殺したりもしたわね」

 

予知魔法があろうがキリカと合流されなければ勝利は揺るがなかったのだろう。

 

「何十人?百人?いいえ、もっと殺した…だってあいつは…まどかを殺す者だから」

 

織莉子を殺していく過程を繰り返し、今では眉一つ動かさずに人を殺せるようになってしまう。

 

交わした約束の為ならば、()()()()()()()()()()()()()こそが暁美ほむらの在り方。

 

死の上に死を築く道の姿はどこか魔法少女の虐殺者と呼ばれた()()()()()()()()だろう。

 

殺戮の過去に浸りながら歩道を歩くほむらであるが、まだ気がついていない。

 

射抜くように鋭い視線を送ってくる者がいるという事に気が付けない程の距離から監視される。

 

住宅区を超えた商業区にある高層ビル屋上からそれは向けられていたようだ。

 

「アノ小娘ハ弓ノ素人カ。無様ナ戦イブリダッタゾ」

 

その姿は魔獣などではない。

 

白き馬に跨り手綱を握るのは長身の黒い人影であり、裾がボロボロの黒いローブを纏う。

 

手綱を握る手甲から察するにローブの下は騎士甲冑を纏っているのだろう。

 

黒いフードを被った頭部に見えるのはフードの上から被る()()()()()

 

フードの奥に隠れたその顔は人ではない、髑髏そのものだ。

 

この存在を象徴するかのように握られた武器も見える。

 

黒いベルトで背中に背負った矢筒の矢と、手綱を持つ別の手に握られていたのは()()

 

このような存在は決して魔法少女達が戦う魔獣と呼べる存在ではなかろう。

 

「今ノ貴様デハ、コノ先ニ訪レルダロウ…逃レラレヌ死ニ抗ウ術ハナイゾ」

 

弓兵である主人を乗せている白き馬が彼女との距離を測るように鼻ラッパをブルルと鳴らす。

 

白く長い馬の毛をもち、前髪で隠れている馬の瞳は悪魔を表す真紅の瞳。

 

「マダ時デハナイ。他ノ騎士達ガ集マル時、アノ小娘ト相見エヨウゾ」

 

馬を操り踵を返し、屋上を走り抜ける白馬が正体を表す。

 

白い体に表れて開いていくのは無数の瞳。

 

首から下は獲物を追い求める死角無き()()()()()()()()()であったのだ。

 

騎士は馬に乗ったまま屋上から一気に跳躍する。

 

馬の足から噴き上がる白煙が濃度を増し、それは天駆ける橋となっていく。

 

夜空を駆けていった騎士こそ黙示録に記された存在。

 

彼の者の名は()()()()()()()()()()()()()

 

いずれ暁美ほむらに逃れられぬ死を与える魔人の一体となる存在であった。

 

 




読んで頂き、有難うございます。
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