人修羅×まどマギ まどマギにメガテン足して世界再構築   作:チャーシュー麺愉悦部

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57話 共に戦った武器

魔人との戦いから一週間が過ぎていく。

 

ほむらは重体のまま仲間達の治療を受け続け、学校に行く事さえ出来ない状況が続いている。

 

二人の献身的な回復魔法のおかげで彼女の身体もようやく動き始めた頃。

 

見滝原の空を大きな軍用輸送機が通り過ぎていき、飛行機雲が郊外にまで伸びていく。

 

目的地は見滝原市からそう離れていない郊外にある巨大な施設。

 

2009年頃に完成した在日米軍基地であり、地元の人達は見滝原米軍基地とも呼んでいる。

 

在日米軍基地とは日米安全保障条約および日米地位協定に基づき日本に駐留する軍事施設。

 

陸軍・海軍・空軍・海兵隊・沿岸警備隊の合衆国五軍全てが日本国内で展開している。

 

指揮系統としてはアメリカインド太平洋軍の傘下にあるようだ。

 

在日米軍司令官は第5空軍司令官が代々兼務しており、空軍中将が就く。

 

2019年2月には後任の新司令官が着任したというニュースを見た魔法少女もいるだろう。

 

この見滝原米軍基地は東京にある米軍基地施設機能全てを満たす程の規模を持つ。

 

東京の在日米軍基地機能の全てが現在では見滝原米軍基地に移動しているというのだ。

 

東京に残された在日米軍基地は僅かな事務官を残し、もぬけの殻と言ってもいいだろう。

 

東京の空軍基地の横田飛行場と同等の規模を有する空軍基地として大きな滑走路が特徴である。

 

その滑走路に着陸しようとアプローチに入るのは世界最大級の輸送機であるC5ギャラクシー。

 

戦車、大型輸送ヘリ、戦闘機に至るまで積み込めるその巨体はまさに圧巻だろう。

 

見滝原米軍基地内に駐機した輸送機の巨大ハッチが開き、積荷を作業員達が降ろしていく。

 

荷降ろしされた積荷は近くに待機してある大型トラックの荷台に運ばれていく光景が続く。

 

しかしその大型トラックは民間用の大型トラックであり、軍事車両などではない。

 

暫くして積荷を満載した複数の大型トラックが見滝原米軍基地のゲートを次々と出ていく。

 

見送るのは基地警備隊所属の日本人警備員達であり、怪訝そうな表情をしていた。

 

「なぁ?あの積み荷を運ぶトラックは…どうして軍用車両ではないんだろうな?」

 

「確かになぁ、あれじゃ偽装を施して基地の荷物を何処かに運んでいるようにしか見えないぞ」

 

「こういう案件はヤバいな。全く、自国に他国の軍が常駐してるのは()()()()もいいとこだぜ」

 

「そこで働かせてもらって食わせて頂いてるんだ。いらないことを詮索するのはやめようぜ」

 

複数の大型トラックは見滝原市内に向かって走行していき、住宅区を超えて政治行政区に入る。

 

使用目的さえ明らかでない商業施設ビルの前に複数の大型トラックは停車していく。

 

一台づつ荷物用大型カーリフトの入り口に入っていき、地下空間へと下降していく。

 

政治行政区で働く人達はその様子を怪訝そうな顔で見つめる事しか出来なかった。

 

 

「暁美さん、体はもういいの?」

 

「ええ、お陰様で持ち直したわ」

 

5月10日の午後、学校から帰宅したマミはほむらの容態を確認している。

 

体を動かしてソファーに座って窓を眺める光景を見た事で安堵した表情となったようだ。

 

「帰ったか?ほむらがいるから、開けてもらって上がらせてもらったぞ」

 

台所の冷蔵庫を開けて冷えたペットボトルのお茶を飲んでいるのは杏子である。

 

「お行儀が悪いわよ、佐倉さん」

 

「硬いこと言うなって。まぁ、見ての通り重症人の看護はもう大丈夫そうだな」

 

「二人とも…本当に世話になったわ。その、貴女達に冷たく接した私なんかのために…」

 

「水臭いこと言わないの、暁美さん。私達は見滝原を共に守る魔法少女仲間でしょ?」

 

「仲間…こんな私の事をまだ、そう言ってくれるのね」

 

「せっかく佐倉さんもいるんだし、温かい紅茶を私が淹れるわ。貴女に聞きたい事もあるし…」

 

ソファーの前に置かれた机に二人分の紅茶を淹れて自分の席に座った後、ほむらに向き直る。

 

「それで暁美さん…思い出したくもない話題になるだろうけど…」

 

「分かっているわ。私をさらった連中についてね」

 

「あいつらは魔獣じゃねぇ、そうだろ…ほむら?」

 

「その通り。あれは魔獣とは違い自らの意思を持ち、意思の疎通も出来る悪魔…魔人なのよ」

 

何処までを話せばいいかをほむらは思案する。

 

かつての世界の悪夢、この世界で見た白き夢、自分と瓜二つの金髪の少女との出会い。

 

夢物語やホラーのような話は伝わりにくいと判断し、彼女達も見た魔人達の話に集中する。

 

「あの四匹の馬を見て、実家が教会だった杏子なら…察しはつくんじゃないかしら?」

 

「…ヨハネ黙示録の四騎士か」

 

「そうよ、あの四体の魔人は自らを黙示録の四騎士と名乗りをあげ、私に襲いかかってきた…」

 

「第一の騎士、第二の騎士、第三の騎士、そして第四の騎士まで現れたってのかよ…」

 

「一体何を表してるか、聖書知識で何か分からない?私は神学をそこまで思い出せないの…」

 

「未来の苦難の予言…元キリスト教徒のあたし達家族は皆でそう考えていたんだ」

 

「そういえば私も牧師の資格を持つ先生からそう習った事があった気がするわね…」

 

「黙示録の騎士が世界に現れるのは未来の苦難…それと暁美さんが何故繋がるのかしら?」

 

「それは私が聞きたいぐらいよ、巴マミ」

 

「ほむらにも覚えがないんじゃ、あたしも連中がほむらを襲った理由なんて見当がつかねぇよ」

 

「四騎士の解釈については諸説あって、一概に答えは一つではないのよ」

 

「そうなのね…それにしても、黙示録の騎士達に襲われてよく生き残れたものね…」

 

「…殺されるしかない状況だったわ。私の力なんて…あの四騎士達の前では無力だった…」

 

「あたしら魔法少女の中でダントツのほむらが手も足もでない…考えたくもねぇ恐ろしさだな」

 

「魔力があっても技量はない。生き残って学んだのは…自分の武器さえ満足に扱えない現実よ」

 

「暁美さんの戦い方もそうね。弓の練度を感じない…大魔力放出による火力頼りという印象よ」

 

「返す言葉もないわね…」

 

「へぇ?素直に認められるぐらいには反省したんだな。まぁ、殺されかけたんだし無理ないか」

 

飲み終えたティーカップに紅茶のおかわりを注ぎ、これからの事を話し合っていく。

 

「暁美さんを見逃したとしても、魔人と呼ばれる悪魔が再び現れると考えた方が良さそうね…」

 

「6月12日の新月の夜、再び私を襲うと奴らは宣言したわ」

 

「まだ少しあるって事は…獲物の歯ごたえが欲しいのか?あくまで騎士道精神ってやつか?」

 

「佐倉さん、それ駄洒落?」

 

「ちげーよ。こんな空気でくだらねー事を言うキャラに見えるのか、あたし?」

 

「私は魔人との戦いの日まで弓の鍛錬をもっと積むつもりよ。今度こそ奴らを倒すために…」

 

「指導してあげたいけれど、戦闘での立ち回りは何も教える事はないし、問題は武器の扱いね」

 

「あたしにほむらの指導を振るなよ?弓なんて扱ったことねーし」

 

「私も弓は触った事がないし、困ったわ…美国さんのグループにも弓使いなんていないし…」

 

「弓の扱いは…独自に研究するわね」

 

「後は6月12日の夜のいつ、連中が襲いかかってくるかだな…」

 

「奴らは魔獣ではない。家に引き篭もろうが街から逃げ出そうが、地の果てまで追ってくる…」

 

「私達もその日は暁美さんの側を離れないわ、私達で備えましょう」

 

「奴らの獲物は私だけなのに…本当にいいの?黙示録の騎士達の恐ろしさは語った通りよ?」

 

「仲間放り出して見殺しにするなんて、あたしらには出来ねぇよ。さやかと同じ光景は沢山だ」

 

「過ちは繰り返さない、そう決めたものね。私と佐倉さんは…」

 

頷き合い、ほむらを見つめる仲間達を見ていると後悔の念が湧いてくる。

 

どうして大切な人達を遠ざけてしまったのだろうかと悔やんでしまう。

 

こんなにも分かりあえる頼れる関係を築く事が出来たなら、ワルプルギスの夜とも戦えたはず。

 

(…もしもを考えても仕方ないわね。今を大切にするわ)

 

ほむらはようやくまどかが残してくれた世界に少しだけ光を見出す事が出来たようだ。

 

魔獣との戦いだろうが悪魔達との戦いだろうが、仲間達と共に乗り越えてみせる。

 

きっとその先にある末路こそが、まどかとの笑顔の再会であるのだと信じたい。

 

来るべき日に備えて今まで世話になり続けたマミの家を後にし、自宅へと帰っていった。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――

 

次の日の学校は土曜日であり、休みの日。

 

昼が近い時間のほむらの部屋では机でうたた寝していたほむらが目を覚ます。

 

弓道やアーチェリーのサイトやSNSの動画などを遅くまで研究していたら寝ていたようだ。

 

手早く風呂を済ませて長い髪を乾かし、冷蔵庫の中身で軽い昼食をとろうと開く。

 

「……はぁ」

 

食べ物のストックはなく、買い出しを忘れていたとげんなりしながら溜息をつく。

 

私服に着替えて買い物に出かけようと玄関のドアを開ける。

 

玄関に鍵をかけようと後ろに振り向いた時、ドアに貼り付けられていた張り紙に気がつく。

 

「一体誰が…こんなものを?」

 

悪質な悪戯なのかとテープで止められた張り紙を剥ぎ取り、内容を確認する。

 

それを見たほむらの表情が険しくなっていき、近くを通るタクシーに手を上げて停車させる。

 

「ここに書かれている住所に向かって欲しいわ」

 

タクシーは発進し、住宅区から政治行政区に向かって移動していく。

 

たどり着いた場所は海沿いに立つ商業施設と思われるビルの前。

 

彼女は張り紙に書かれている指示通りにビルの中に入っていくと中はもぬけの殻で誰もいない。

 

指示された薄暗いエレベーターに入り、ボタンパネルの下の蓋を開ける。

 

中には地下に降りるボタンがあり、それを押して地下に降りるエレベーターは下降していく。

 

エレベータードアが開き、光が入り込むと見えた景色に対してほむらは息を呑み込んでしまう。

 

そこは米国で見られる巨大スーパーマーケットかと思われる程の広さを持つ大きな地下空間。

 

棚やラック、ショーケースに並べられた品々は日本で取り扱ってはならないだろう武器や装備。

 

米国、ドイツ、イスラエル、ベルギー、オーストリアなど、欧米の銃器が所狭しと並んでいる。

 

現代武器を利用してきたほむらは目を輝かせながら棚を物色するように歩き続ける。

 

弾薬コーナー、爆弾コーナー、ナイフコーナー、ガンアクセサリー、軍用装備品などなど。

 

彼女が戦いに欲しがる品々は全てこの空間に収められている光景に目移りするだろう。

 

「気に入ってもらえたかしら?」

 

背後から自分と同じ声が聞こえ、それが誰を意味しているか分かるほむらは後ろを振り向く。

 

あの時出会った金髪の少女と、長身の兵士のような姿の男がいつの間にか立っている。

 

ほむらと瓜二つの金髪少女の衣装は自身の魔法少女姿。

 

この姿でこの場所にあるような銃火器を用いて戦場を潜り抜けてきた過去が頭を過る。

 

それを思い出せとでも伝えたいのだろうか?

 

もう一人の長身の男は市街地、屋内戦を専門とする法執行機関の特殊部隊兵士のような黒装備。

 

頭を覆うスカルマスクの目出し帽の上に黒いフードを被り、サングラス風戦術ゴーグルを纏う。

 

「何処までも…私を小馬鹿にした姿で現れる奴ね?」

 

「魔人の洗礼、その体に刻まれた感想はどうだったかしら?」

 

「お陰様で…危うく死にかけたわ」

 

「それだけじゃないでしょ?自身が持つ技量は今の魔法武器では役に立たないと知ったはず」

 

「情報が早いわね。あの四騎士から聞いたのかしら?」

 

「私は貴女を観察する者。簡単に死んでもらいたくないし、贈り物をしてあげようと思ったの」

 

「あの張り紙は貴女が貼り付けて私をここまで誘導したわけね?贈り物って…まさか?」

 

「ええ。ここにある品々は全て貴女のために用意させた武器と装備品よ」

 

「この日本でこれだけの武器や装備品をどうやって…?」

 

「この国には治外法権が適用される土地がいくつもある。貴女はそこで盗みを行ってきたわ」

 

「在日米軍基地…貴女、まさか米国と繋がりがあるの…?」

 

「貴女が知るべきは私ではなく新たな技術たったのではないの?そのために彼を用意したわ」

 

魔法少女姿の金髪少女は隣の男を促し、ほむらの前に歩みを進めてくる。

 

「僅かな時間で付け焼き刃程度の弓の技量を求めたところで、あの四騎士には通用しない」

 

「貴方が私に弓の技術を教えてくれるというの?」

 

「そうだ。貴様を僅かな時間でモノにしてみせろと言われた」

 

「彼の弓の技術は私が保証するわ。奥まで付いて来て、ここの施設はまだあるの」

 

金髪少女の後ろをついていく。

 

武器や装備品エリア奥にある防弾ガラスドアが開き、中に入るとそこは大きな空間が広がる。

 

「政治行政区の地下深くに…こんな物騒な地下空間があるだなんて…」

 

500メートルはある奥域をもつ広大な屋内射撃場がほむらを出迎えてくれる。

 

ハンガーにあるターゲットを送り戻しするターゲット・リトリーバル・システムも見られる。

 

ハンガーを不規則に移動させる天井部位のレールも備わっているようだ。

 

「この射撃場も貴女が好きに使っていいわ」

 

「こんな施設を直ぐ作れるはずがない。私が必要とする事を前提として建造していたの?」

 

「そうよ」

 

この見滝原政治行政区はこの日本の国政、行政にとって新たな拠点となりえる場所。

 

そんな地下にこのような施設を建造するとなると日本政府とも繋がりがあると考えられる。

 

「…貴女は何者なの?世界規模の秘密結社でも従えてるわけ?」

 

「あら?いい線いってるわよ、勘がいい子ね」

 

「何にせよ、随分と私のために気前よく投資してくれるわね?」

 

「それだけ私達は貴女に期待しているということよ。貴女のためのこの施設、気に入った?」

 

「ええ。これだけの武器や装備品に設備…かつての世界であったなら…どれだけ救われたか」

 

射撃ブースの前にいる黒衣の兵士は黒革の矢筒と左手にコンパウンドボウを身に着けて立つ。

 

「彼の腕前を先に見せておくわ。貴女の教育者に相応しいか、その目で確認しなさい」

 

ブースのスイッチを押すと複数のハンガーが奥に向かって動き出す。

 

天井レールに沿って高速で流れながら不規則に流れていく。

 

(的の動きが早いし…不規則過ぎる動きね)

 

兵士は背中の矢筒から3本の矢を右手にとり、コンパウンドボウの弦に指を添える。

 

的に向けて放たれた矢は一本の線から三本に枝分かれするように広がり、全弾命中する。

 

スイッチを押し、ターゲットシートが戻ってきて確認したら全て的の中心点に命中していた。

 

「…見事なものね、恐れ入ったわ」

 

射抜かれた的を見ていると気のせいか魔人に射抜かれた傷跡が妙に疼く。

 

「最初に言っておく。現代兵士の武器程度では魔人を殺しきる事は出来ない」

 

「…そうかもしれない。奴らの力はあまりに桁外れよ」

 

「倒すならば…大きな魔力を宿らせたお前の弓矢の一撃が重要だ」

 

「まるでワルプルギスの夜ね…」

 

「そのために俺がいる。時間は僅かしかない、甘えや妥協は一切許さないから覚悟しておけ」

 

「望むところよ、6月12日の戦いの日まで宜しく頼むわ。あなたの名前は?」

 

「俺に名は無い。どうしても呼びたければ、()()()()とでも呼べ」

 

「その黒衣の見た目でホワイトねぇ…」

 

「皮肉が言える元気もそのうち無くなる。俺は甘くないぞ」

 

「武器、技量、全てを用いて魔人を倒しなさい。ここは毎日開いてるし彼もここにいさせるわ」

 

「貴女が仕掛けてきた戦いですもの。敵に塩を送った事を後悔させてあげるわ」

 

「施設の維持費は気にしないで。要りような物があったらカウンターの注文表に書いておいて」

 

「分かったわ」

 

「他に何かある?」

 

「いえ、後は……ん?」

 

そういえば何か忘れているような気がするとほむらは感じてしまう。

 

するとお腹の虫が盛大に鳴り出し、買い物に行く予定だったのを忘れていたことを思い出す。

 

冷ややかな視線を向けてくる二人に対し、ほむらは顔から火が出そうなぐらい真っ赤になる。

 

「……食料品や軍用レーションも用意させましょうか?」

 

「……いいえ、結構よ。食料は自分で買うし、米軍のレーションは不味いらしいし…」

 

「俺はここで待つ。飯をさっさと済ませてこい」

 

 

あの日から幾日も過ぎていき、ほむらは学校が終わった後や休日を使って施設を利用する。

 

この地下施設に入り浸りながら泊まり込み、トレーニングに励み続けるようだ。

 

屋内射撃場ではけたたましい銃声とマズルフラッシュが吹き上がり続ける。

 

高速で動き回る複数の的を遠距離戦に秀でる7.62mmNATO弾が射抜いていく。

 

跳ね上がりも大きいがレイルにフォアグリップを装備して左手で握り込み、射撃精度を保つ。

 

イヤーマフヘッドホンとシューティングサングラスを頭部に身につけ、薬莢をばら撒き続ける。

 

ほむらが纏う魔法少女衣装にも工夫が凝らしてある。

 

かつては盾の収納魔法に頼り切り、武器の量など考える必要もなくいつでも取り出せている。

 

しかし盾を失ってしまい、体に持てるだけの武器と弾薬の数も限られてしまっている。

 

これに対処するため彼女の上半身はまるで特殊部隊の装備かと思うほどの重装備。

 

ボディアーマーを兼ねたPALSシステム採用タクティカルベストを纏い、ポーチもカスタムする。

 

腰のガンベルトにはデザートイーグル用の大型ホルスターと別の銃のホルスターも見える。

 

これらは魔人との鍔迫り合いが起きた際、どちらの手で受けたとしても銃を抜く工夫であろう。

 

肘や膝にはプロテクトパットも装備され、弓兵に間接を狙われる守りを固めたようだ。

 

背中にはMOLLEシステムに対応したバックパックを背負い、プラスチック爆弾を収納する。

 

腰の多機能ポーチには起爆用のリモコン等も入れてあるのだろう。

 

バックパックの側面は魔法の杖を即座に取れるようにストラップベルトで固定する。

 

かなりの重量を上半身に背負う事になるが、魔法少女の体なら大きな負担にはならないだろう。

 

撃ち終えたプラスチックマガジンをブース内のトレイに素早く置く。

 

ボディアーマーのポーチからマガジンを取り出して素早く装填する練習も兼ねている。

 

この作業もかつての世界では魔法の盾のおかげでする必要もなかったのだろう。

 

使い辛さを最初は感じていたが、今では素早くマガジンを取り出せるようになったようだ。

 

ドイツの自動小銃であるHK417のチャンバー内に初弾を送り、構え直す。

 

レイルに取り付けたホロサイトとブースターで的を狙いながら撃ち続ける。

 

その光景を後ろで腕を組み、静かに見物しているホワイトと呼ばれる兵士の口が開く。

 

「よし、次は弓だ」

 

ブースのスイッチを押して複数のハンガーを引き戻し、成果も確認せず新しいものに交換する。

 

成果はどれも上々であり、やはり手に馴染む銃火器の射撃精度は衰えてはいなかったようだ。

 

「先ずは戦場の五射のうちの近距離弓射からだ」

 

スイッチを押し、不規則に動き始める的。

 

背中のバックパックから左手で素早く魔法の杖を取り出して魔法の弓に変化させて構える。

 

「いいか、撃つだけに集中するな。常に周りへの警戒も忘れるな」

 

「伏兵に備えろと言いたいんでしょ。分かってるわ」

 

姿勢を正し、息を整え、動き続ける的に集中する。

 

狙いは自分のブースから奥に向かって行った髑髏絵が描かれた的。

 

邪魔な的が退いた瞬間、的を射抜くチャンスに恵まれたことで放とうとした時だった。

 

「えっ……?」

 

突然自分の視界が天井に向かい、宙を浮いている感覚に襲われながら地面に倒れ込む。

 

「分かっていない!貴様は矢を放ち、当てる事しか考えてなかったぞ!」

 

足の関節が蹴り込まれたような痛みが遅れてやってくる。

 

どうやらホワイトに投げ飛ばされたのだと気がついたようだ。

 

「組討もありなわけ……?」

 

「当たり前だ!どんな状況だろうと、周りが止まってくれているとは考えるな」

 

「…分かったわ」

 

「後方の弓兵という立場の者は常に狙われる。死角を突かれた場合は…命を差し出すか?」

 

「そんなつもりはないわ!」

 

「ならば接近戦も常に頭に入れておけ。隙があれば…俺は容赦しないぞ」

 

ほむらの苛烈なトレーニングの日々は続いていく。

 

近距離弓射、遠距離弓射、多数の矢を連続して放つ弓射技術。

 

組討の格闘まで教わる事は時間も無く出来なかったので、ほむらは別の技術を磨く。

 

腰のホルスターに収められた拳銃の早撃ち技術も弓術と平行して磨き上げていく日々。

 

季節は流れて6月に入り、いよいよ強敵達との戦いの日も目前となる。

 

かつて共に戦った戦友の如き銃。

 

新たな世界で得ようともがく弓の技術。

 

因果の魔力だけでは勝てない魔人。

 

逃れられない死を超える暁美ほむらの道を開く鍵は揃っていく。

 

後は巨大な7つの試練の門前に立つのみとなるのであった。

 




読んで頂き、有難うございます。
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