人修羅×まどマギ まどマギにメガテン足して世界再構築   作:チャーシュー麺愉悦部

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60話 記憶の回廊

自身の顔の周り以外は暗闇が支配する空間。

 

何故魔人との戦いを超えた自分がこんな場所に立っているのか分からない。

 

「魔人から受けた傷も無い・・・まるで悪夢から別の悪夢に流れ着いたみたいね・・・」

 

出口はあるのか?悪魔は潜んでいるのか?

 

恐ろしい魔女空間を超え続けてきた筈なのに、見えない暗闇に心が恐怖で握りつぶされそうだ。

 

暗闇が支配する空間そのものが、ほむらを不安にさせていく。

 

夜が恐ろしいと感じるのは、暗闇ゆえに其処に何がいるのかと自分で考えてしまう想像力事態が恐ろしさを増幅させている。

 

それ故に暗闇は、悪魔や妖怪を産み出す領域なのは古今東西同じであろう。

 

「杏子!!巴さん!!」

 

返事は何処からも帰っては来ない。

 

ソウルジェムを左手に出して二人の魔力を探そうとするが・・・。

 

「えっ・・・・・?」

 

左手の中指にいつもある指輪の感触が存在しない事に気がついた。

 

「どうして!?何故私のソウルジェムが消えているの!?」

 

これでは魔法少女に変身して悪魔と戦えない・・・どころではない。

 

魔法少女の本体は魂が宿ったソウルジェムという石ころ。

 

外部の肉体など、魔力で操り生命活動を行わせているだけの外付けハードディスク。

 

ソウルジェムがその肉体を動かせる範囲は100メートル以内。

 

悪魔に奪われていたとしたら、一体今の自分は『どれだけ動く』事が許される?

 

「分からない事だらけよ・・・何故私が・・・こんな目に・・・・」

 

心細さの余り愚痴が出てしまうが、じっとしていてもこの悪夢は終わらないのは分かる。

 

意を決してメノラーの灯りを前にし、壁伝いで回廊の奥に向かい歩き続ける。

 

いつ自分が超えてはならない領域を超えてしまうかという恐怖、足取りも重い。

 

彼女には殆ど見えないが、大きな宮殿の回廊かと思うほど直線に伸びた豪華な廊下。

 

壁際に見える大きな窓ガラスの向こう側さえ見通せない。

 

不意に窓ガラスを超えた横にある壁を見る。

 

「・・・・・写真?いいえ、油彩画?」

 

『銀とガラス』で作られた大きな額縁に収められた写真かと見紛う程美しい油彩画。

 

メノラーを掲げれば大きな絵の半分以上は確認出来る。

 

「これは・・・・・まどか?」

 

優しい微笑みで佇む、かつての世界で鹿目まどかと呼ばれた少女の絵。

 

今の世界では誰も覚えてさえいない、存在しない者の姿。

 

それを覚えているのは暁美ほむらと、悪魔と名乗る者達ぐらい。

 

「何の意味があってまどかの絵を・・・・・」

 

悪魔の罠だと疑いたくもなるが、それでもこの絵の世界を見ていると心細さが消えていく。

 

この絵の世界こそ、自分が『夢見た世界』のように思えるから。

 

回廊を歩き続ける度に壁際で見つけるまどかの油彩画。

 

そのどれもがほむらが夢の世界で思い描いた理想の光景。

 

『まどかがいて、ほむらがいる記憶の絵』

 

本当はこの絵に描かれた世界を、かつての世界で望んでいたのではないのか?

 

思い出の世界に入り込んでいたほむらはハッと気が付き、顔を振り迷いを晴らす。

 

「これは悪魔の罠よ・・・私から魔法少女としての使命を忘れさせようと狙っているのね」

 

今の自分は全ての魔獣を倒す者、それ以上でもそれ以下でもない。

 

鹿目まどかが守ろうとした世界の人々を救うために戦う、魔獣を穿つ魔法少女。

 

「そう・・・私はそうあるべきなのよ、私はそれを覚えて・・・・」

 

様々なアマラ宇宙を超えて旅し、まどかが人々を守ろうとした戦いの光景を思い出す。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・?

 

「あ・・・れ・・・・・?思い出せない・・・・・・?」

 

もうどれだけ遠い記憶になったのか分からない程昔に思える周回時期の記憶故だろうか、上手く思い出せない自分に動揺する。

 

あれだけ強く思っていた人の大切な記憶を思い出せないなんて、あってはならない筈なのに。

 

記憶が朧げならば、自分で信じる根拠さえ失っていくも同然。

 

「・・・先を進みましょう。私は覚えている・・・筈よ」

 

思い出せないのはど忘れであり、いずれ思い出すと信じて前に進む。

 

ほむらが後にしたまどかの油彩画。

 

よく見ると、端の方が徐々にではあるが・・・暗闇に戻った世界で亀裂が入っていった。

 

―――ウソツキ

 

突然背後から誰かの声が聞こえてメノラーを後ろに掲げ振り向く。

 

「だ・・・・・誰なの!?」

 

魔法少女の力さえ発揮出来ない状態で悪魔と思われる存在との遭遇。

 

ほむらの心臓の鼓動は張り裂けんばかりに、高鳴っていった。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――

 

暗闇が広がる背後の回廊。

 

だがメノラーに灯るたった一つの灯り程度では奥まで見通せる筈がない。

 

「こ・・・来ないで・・・・・!」

 

戦う力どころか魔力による身体強化さえ無くなっている今のほむらなど、眼鏡をかけていた頃に体育の授業ですら貧血で休む病弱だった頃の姿同然。

 

震え上がりながら後ろに下がる彼女の背後から、また同じ声が。

 

―――オクビョウ

 

その声に身体が大げさに反応して後ろを振り向き、灯りを前に向けるが相手の姿は見えない。

 

まるで夜の森の中で狼達に狙われる子羊にでもなった気分になっていく。

 

「嫌・・・使命も果たせずこんな場所で死にたくない・・・誰か助けて・・・」

 

―――ネクラ

 

また背後に回り込まれている。

 

「いや・・・嫌ぁぁーーーーッ!!!!」

 

無力な頃に戻り果てたのか、ついに恐怖に耐えきれなくなったほむらは我を忘れて走り出す。

 

素足のまま白黒モザイクで彩られた大理石の床を駆ける速度は魔法少女ではなく病弱な娘そのもの。

 

―――ノロマ

 

息もすぐに上がり激しい呼吸を続けながらも逃げ続ける。

 

それでも背後からの気配は消え去るどころか、一定の距離を保ったまま。

 

―――アハハハハハハハハハハ

 

無様な姿のほむらがおかしいのか、狂ったような笑い声が響く。

 

命を鷲掴みされた気分に陥り目元は涙で潤んでいく。

 

メノラーの灯りを前に向けながら走っていたら、ついに回廊の奥にまでたどり着いたのか豪華で重厚な雰囲気の両開きドアまで走りきれた。

 

直様扉を開けて中に入り込み、扉を閉める。

 

鍵をかける場所も見つからず、必死に扉を抑え込む。

 

何度か叩く音が向こう側から響く、やはり何者かが潜んでいたのだ。

 

「お願い・・・お願いだから何処かに消えて・・・!!」

 

しつこく扉を叩く音もしなくなり、諦めたのか気配も遠ざかっていった。

 

力なく両膝が崩れ地面につく。

 

過呼吸になっていた息をどうにか整え直し、彼女は立ち上がり早く奴がまた来る前にここから脱出しなければと、逃げ込んだ空間を振り向いた。

 

「・・・・・ここは?」

 

暗闇の空間が続いたが、この部屋は薄暗いが天井の豪華なシャンデリアにある蝋燭の灯りのお陰で僅かに光を感じられる空間。

 

暖炉や絵画、絨毯や椅子等が並ぶ豪華な空間はまるで王の控えの間。

 

巨大シャンデリラの下、部屋の中央にはアンティーク台座が備えられていた。

 

突然右手のメノラーから振動を感じる。

 

「・・・・・ここに置けってわけ?」

 

まるでメノラーに促されるように、ほむらは台座にメノラーを置く。

 

すると、たった一つの灯りが大きくなっていく。

 

部屋を明るくしてくれる光に安堵の心が芽生えたのか、その灯りに魅入られてしまった。

 

その時、その灯りの中に『金髪の少女』の視線を感じた。

 

「な・・・・・何っ!?」

 

意識が炎の中に引きずり込まれていく。

 

まるで自分の視界が血管内の穿孔トンネルをうねるように落下してく感覚。

 

気がついたらほむらの視界は、生物体内にある細胞壁の隙間のような覗き窓。

 

覗き窓の向こう側の空間。

 

そこは広大な縦に広がる巨大血管内のように見える真紅の広間。

 

同じ細胞壁の隙間のような覗き窓からは、恐ろしい真紅の眼光がこちらを無数に見ている。

 

真紅の空間中央、血管に溜まった血の湖の上に浮かぶのは、オペラ劇場の舞台。

 

真紅の舞台カーテンの前で腕を組んで立つ、喪服の淑女姿。

 

その隣にはステージの主舞台の邪魔にならない端に備えられた自然木のとまり木に立つ梟。

 

淑女の方は見た感じ整った顔立ちに見えるが、年齢を重ねた三十代半ば程の見た目。

 

梟はアメリカワシミミズクのような見た目の印象を持つ。

 

<<・・・ここは、何処・・・?>>

 

ほむらが心の中で疑問に思うが、声は響かない。

 

だが喪服の女性には聞こえていたのか、その口が開いた。

 

「よぉ、また会えたねお嬢ちゃん。前に夕日の堤防で出会えた時以来かな?」

 

何処かで聞き覚えがあったが・・・いや、この声をほむらが間違える筈がない。

 

<<鹿目・・・詢子さん!?>>

 

葬儀のトーク帽を被る喪服姿をした、かつて鹿目まどかの母親だった人物がこの場所にいる。

 

眼前で起こる現象が何も理解出来ないほむらのいる覗き窓に、詢子は微笑んでみせた。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――

 

<<どうして・・・どうして貴女がこんな場所に!?それにその姿は・・・>>

 

声は響かないが、詢子にはほむらの心の声が聞こえているようだ。

 

「これかい?この世から消えて亡くなった娘のために、喪に服してるのさ」

 

まどかの母の言葉がどれだけほむらの心を引き裂き、責め苦を与えたか。

 

まるで愛する娘を守れなかった者に見せびらかし、その罪の重圧を思い知らせるかのようだ。

 

だが・・・その一言で一つだけ理解出来た。

 

<<お前は・・・・・鹿目詢子さんじゃないわね?>>

 

かつての世界において、鹿目まどかは女神という概念存在となり全世界で消滅した。

 

むろんこの新しい世界でも始まりも終わりも存在しない。

 

鹿目まどかの母だった人物も、あの夕日の堤防でまどかの事を知りもしなかった。

 

この世界でまどかの存在を覚えているのは、ほむらと・・・。

 

<<悪魔め!!何故そんな姿で現れたのよ!?そんなに私の無力さを嘲笑いたいの!!>>

 

激昂するほむらの心の声に我慢出来ず、笑いが出てしまった鹿目詢子の姿をした謎の人物。

 

すると隣のとまり木にいる梟が甲高い鳴き声を出し、喪服の淑女の方に向く。

 

「ああごめんごめん、悪ノリが過ぎたよアモン。我が主の御前だったね」

 

喪服の淑女はアモンと呼んだ梟の反対側ステージに歩き、主舞台に向き直りお辞儀。

 

真紅の舞台カーテンが上がっていき、主舞台となるステージがついに姿を見せた。

 

王の書斎のような豪華な主舞台、そこにいた人物とは・・・。

 

<<・・・やはりお前だったのね?私をこんな悪夢の世界に引きずり込んだのは!>>

 

アンティークキングチェアに座っているのは、見滝原制服を着たほむらと瓜二つ姿の金髪の少女。

 

手には山羊の形をした銀の飾り杖を持ち、よく見えないが左耳にはアクセサリーも見えた。

 

「第一の魔人を倒せたわね暁美ほむら。私の期待を裏切らない努力を続けて欲しいわ」

 

<<お前達は何故私をこんな場所に閉じ込めるの!?早くここから出しなさい!!>>

 

「フフ・・・まるで深い森に迷った迷子の娘ね。ここが何処かを説明してあげなさい」

 

主の元に歩き寄った喪服の淑女は、ほむらの覗き窓に向き直る。

 

「ここは、かつて人修羅と呼ばれた魔人のために用意されたアマラの果て・・・アマラ深界」

 

<<アマラ深界ですって・・・?人修羅のために用意された・・・・・?>>

 

「人の身に分かり易く言えば、魔界と呼んでくれていいよ。宿命があんたをここに呼び寄せた」

 

魔界と呼ばれる言葉をほむらが聞いたのは、かつてあった世界で見た悪夢のボルテクス界。

 

<<魔界・・・なら、ここから見えるあの者達は・・・全員悪魔・・・?>>

 

「感じている通り、ここには神に貶められた悪魔達が潜んでる。ここを仮初めの住処とし、飛び立つ事を望んでいる」

 

同じ細胞壁の隙間のような覗き窓から真紅の眼光を自分に向けてくる恐ろしき住人達。

 

「既にかつての世界において、飛び立つ刻を一度は迎えた。でも、我が主はもう一度だけ身を潜め・・・試したい存在のために、再びこの世界を用意したんだよ」

 

<<それが・・・私に魔人共をけしかけて来る理由・・・?>>

 

「そうだね。我が主は最強の切り札をかつての世界で手に入れたけど、さらに手札が欲しくなったわけさ。終の決戦の地として選んだ、この世界でね」

 

<<私にお前達悪魔がやりたい何かの戦争に加担でもしろっていうわけ?冗談じゃないわ!!>>

 

「それを決めるのは、世界の真実を知ってからでも遅くはないね」

 

主人の方を振り向き、金髪の少女も伝える事を許可するように頷く。

 

「魔人を倒せし者。あんたに世界の真実の一つを・・・主に代わり、あたしが語るわ」

 

――――――――――――――――――――――――――――――――

 

「順を追って説明しないとね。先ずは、あんたがかつての世界で見た悪夢の世界から話すよ」

 

<<ボルテクス界・・・それに受胎世界って何なの?>>

 

「時間渡航者だったあんたなら分かるんじゃない?この宇宙が、一つだけでは無いという事が」

 

<<無限に連なる宇宙・・・確かに私は時間操作魔法を使って、数多の世界を歩いてきた>>

 

「宇宙とは無限に連なる大螺旋。あたし達悪魔はそれを、アマラ宇宙と呼んでいるんだよ」

 

<<アマラ宇宙・・・私が超えてきた数多の世界・・・>>

 

「ボルテクス界とは、そんな数多ある宇宙の何処かで死んだ宇宙に誕生した、創生世界」

 

<<宇宙の死・・・宇宙の創生・・・?>>

 

「それが受胎儀式。新しい宇宙を産み出す生殖活動。それには人間と同じく莫大な熱が必要ね」

 

<<莫大な熱・・・ボルテクス界で見た、あの巨大な光の球体・・・・?>>

 

「そう、あれが創生をもたらす光・・・無限光カグツチ。あれにコトワリを示した者が新宇宙を導く規範になるんだよ」

 

<<コトワリですって!?>>

 

「食いついたね?そういえば、あたしの娘もコトワリを示した者であったはず」

 

<<黙りなさい偽物!まどかとコトワリ、それに創生や受胎が何で関係があるのよ!?>>

 

「あんたが生きた世界は死滅する運命ではなかった。それでも受胎と同じ現象をもたらした存在がいたわね」

 

ほむらの脳裏にかつての世界で円環のコトワリとなったまどかの姿が浮かぶ。

 

「受胎が起こらない運命の世界で発生してしまったイレギュラーによる創生。それを行った人物は、イレギュラーでありながらも宇宙の規範となれたんだよ」

 

<<それが円環のコトワリとなった、私達魔法少女の救い神たる・・・まどか>>

 

「本来こんな事はあってはならない。創生はボルテクス界において、その時々でカグツチが選んだ人間の手によって成されなければならなかった筈なのにね」

 

<<宇宙を導く規範って何なの・・・?まどかは一体どうなってしまったの!?>>

 

「鹿目まどかには無尽蔵に束ねられてしまった因果の力があった。それを用いてあの子は創生を行ったのさ。無限光を自らの内に用意し、コトワリさえ自らが思想した」

 

<<まどかが創生を・・・他の宇宙で今まで行われた受胎と同じ創生をやり遂げた・・・?>>

 

「フフ・・・まるで処女受胎だよね?宇宙の身体を形作る元となるコトワリと、宇宙を産み出す無限光を自らが用意したわけ」

 

<<まどかが・・・それ程までの事を・・・・>>

 

「出来るようにしたのは・・・あんたのせいじゃなかった?」

 

<<・・・・・・・まどかは、これからどうなってしまうの?>>

 

「あの契約の天使に聞いたとおり、始まりも終わりもない存在として、永遠を彷徨うんだよ」

 

―――大いなる神のせいでね。

 

<<何故まどかだけが地獄の苦しみを背負わされるの!?まどかはそんなの望んでなかった!何処にでもいる平凡な子供だった!私だってそんなの望んでなかった!!>>

 

「良いところに気がついたね。仕組みがあったんだよ、あの子が永遠の地獄に苦しむ仕組みがね」

 

<<仕組み・・・?>>

 

「大いなる神は、鹿目まどかをコトワリの神にするつもりなどなかった。それでも自らが産み出した宇宙の法のため、やむを得ず選ばざるを得なかった」

 

<<仕組み・・・神の法・・・・>>

 

「それが・・・アマラの摂理。大いなる神が、無限に連なる宇宙を産み続ける創生を永遠に続けるために用意した仕組みさ」

 

<<アマラの摂理・・・・・そんなものがあったからまどかは・・・>>

 

「あんたのせいとは言え、アマラの摂理が無ければ、彼女はコトワリの神になどなれなかった」

 

<<それを産み出した存在・・・それが大いなる神・・・・・>>

 

「鹿目まどかは大いなる神が産み出したアマラの摂理によって、永遠に苦しみ続ける」

 

<<・・・・・・・・・・・・・・>>

 

「あんたは自責の念で苦しみ、家族は娘の死を悲しむ事も許されず、鹿目まどかは家族や友達と永遠に会えない苦しみにのたうち回る」

 

―――アマラの摂理のせいで、それを産み出した者のせいで。

 

<<・・・・・・許せない>>

 

「良い答えだ。あんたの今言った言葉と同じ言葉をここで言ったのが、人修羅と呼ばれた悪魔」

 

<<人修羅も同じ答えを・・・?あの男は、アマラの摂理を憎んでいたのね>>

 

「あたし達も同じさ。我が主はこのアマラの摂理を破壊しようと考えておられるんだ」

 

<<だから私にも加担しろと?>>

 

「答えは急がなくていい。でも、今感じた心の怒りを大切にしな。嘘偽りの無いあんたの感情さ」

 

伝えるべき事を伝え終えたのか、主に一礼を行う。

 

<<待って!まだお前達悪魔の事を聞かされていないわ!!>>

 

「それはあんたが残りの魔人を倒す度に教えてあげる。あんたは記憶の回廊と、このアマラ深界からは逃れられないよ」

 

真紅の舞台カーテンが下がっていく。

 

ほむらの意識もまた急速に遠のいていくのが分かる。

 

意識だけが魔界に訪れていた感覚も無くなっていく。

 

魔界の住人達を力の限り睨みつけながら、ほむらの意識はブラックアウトしていった。

 

「出だしは順調といった感じですね閣下」

 

「暁美ほむらが全ての死を乗り越えられるかどうか・・・見せてもらおうか」

 

「それにしてもアモン。あんたまであの小娘を見物しに来るとは思わなかったよ」

 

今まで沈黙を保っていたカーテンの向こう側の梟に語りかける。

 

ほむらには梟の鳴き声に聞こえただろうが、悪魔達にはアモンの声の内容は届いていた。

 

「・・・吾輩が気にしてはおかしいかね?」

 

「おかしくはないねぇ。だってあんたもまた、イルミナティの守護神だし」

 

「あの小娘は閣下にとって特別であり、イルミナティにとっても特別である。吾輩には事の顛末を見守る義務があるのだ」

 

「過保護だねぇ。まぁ・・・イルミナティにとって無理もないか」

 

―――だってあんた達イルミナティは・・・暁美ほむらの育ての親も同然だしね。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――

 

6月12日

 

「それじゃあ、朝のHRを始めます。6月に予定をされてます・・・」

 

担任教師の和子先生による朝のHRが進んでいく。

 

教室の中に聞こえる伝達事項の中、一人の生徒は机に顔を伏せたまま眠っている。

 

「コラー暁美さん。学校はお昼寝をする場所じゃありませんよ~?」

 

和子先生に声をかけられ大げさに身体を反応させながら、ほむらは顔を上げた。

 

「寝る前にスマホでも弄ってたんですか?寝不足は女性の敵ですよ」

 

「え・・・?あの・・・・えっと・・・・ごめんなさい」

 

事態が何も掴めないまま、いつも凛としている態度の暁美ほむららしからぬ姿に皆が苦笑い。

 

何事もなかったかのようにHRが続いていく中、ほむらは違和感を感じ取った。

 

この違和感はかつての世界では当たり前だった現象。

 

(・・・同じ日が、ループしている!?)

 

かつての世界でほむらは繰り返される一ヶ月間を過ごしてきた故に、HRの内容が毎度同じであったのが当たり前であったのだが・・・ここは違う世界。

 

時間操作魔法を失っている筈なのに、かつての世界と同じ現象が起きている。

 

昼休みの屋上でマミと忍び込んだ杏子と3人で魔法少女会議を行う。

 

「無事だったのね・・・杏子、巴さん」

 

「何言ってんだよほむら?まだ魔人と戦ってもいねーのに?」

 

「えっ・・・・・?」

 

「あら?いつもはフルネームで堅苦しかったのに、変わってくれて嬉しいわ暁美さん」

 

(覚えてるのは私だけ?どういう事なの・・・・・これは?)

 

今宵は月の無い新月の夜。

 

再び黙示録の騎士達は獲物を狩りに現れるだろう。

 

ほむらは逃れる事が出来なくなってしまったのだと理解した。

 

新月の夜に出くわす、己の死からは。

 




マギレコでさえ語られない、暁美ほむらの両親って何者なんでしょうね?
存在が確認出来ないなら、いないも同然と思います。(それでいて金に困らん)
都合が良いのでほむらちゃんを曇らせるネタに使う(使命感)

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