人修羅×まどマギ まどマギにメガテン足して世界再構築   作:チャーシュー麺愉悦部

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64話 薄れゆく記憶

今回の暗闇の回廊も曲がり角だらけで迷い込んだ暁美ほむらを迷わしてくる。

 

最初のように真っ直ぐ進んでも回廊の壁と出くわし、左右の道のどちらかを選ばされる状況だ。

 

壁伝いに左に進もうとした時、壁に飾られているまどかの油彩画を見つめてしまう。

 

「え…っ?あの時は写真のように美しかったのに…こんなにボロかった?」

 

素人でも分かるぐらいに酷い画面の汚れや絵具の亀裂、それに剥落が目立っている。

 

「何故こんな風になってしまったのかしら…?」

 

銀とガラスの額縁に収められているのは、この世界には存在しない人物の記憶の絵。

 

そのどれもがまどかとほむらがいる光景であり、彼女にとっては理想の世界。

 

その絵が色褪せるように傷んでいる光景を見ていると暗闇の心細さも増していく。

 

「私はこの絵に描かれている人を覚えている……はずよ」

 

絵が傷んでいる光景がまるで自分の記憶の綻びのように思えた彼女は鹿目まどかを思う。

 

あの子と出会い、あの子を救うためにすれ違っていった悲しい記憶を思い出す。

 

あれは確か巴マミがお菓子の魔女に食い殺された時、自分がまどかを救った頃の記憶である。

 

「あの時の私は…魔法少女の世界の現実を突きつけ、まどかを元の世界に押し戻そうと…」

 

厳しい態度を示し、さやかにも罵倒されたあの時の自分の記憶。

 

だがあの時、自分がまどか達に伝えた言葉の内容さえ、今(・)と(・)な(・)っ(・)て(・)は(・)思(・)い(・)出(・)せ(・)な(・)い(・)。

 

壁の油彩画の痛みが進み、亀裂や剥落が増していく。

 

「あの時の態度は…あの子達にはどう見えたの?私はまどかに…どんな酷い言葉を言ったの?」

 

彼女は思い出せなくても、あの時のほむらは客観的に見て紛れもなくグリーフシードの略奪者。

 

高圧的な態度で二人を突き放したその姿を美樹さやかならこう言うだろう。

 

――イバリ。

 

右奥の暗闇から微かに聞こえてくるのは自分と同じく素足が冷たい大理石を歩く小さな足音。

 

――レイケツ。

 

声の距離はどんどん近づいてくる。

 

「こ……来ないでぇ!!」

 

恐怖によって錯乱したほむらは直様左の回廊に向かいながら走り抜ける。

 

暗闇の中で逃げ続けるが明かりが増した分、暗闇の世界に潜む者から獲物が見えやすい。

 

距離が詰められる中、意を決して見つけた部屋の中へと逃げ込んでしまう。

 

その部屋は前回のような彼女の記憶を象った部屋ではない。

 

豪華な装飾で飾られた部屋内は王の寝室のような光景なのだ。

 

扉を音が出ないようゆっくりと閉めていき、向こう側の気配に集中する。

 

歩く音が向こう側へと進んでいく音に安堵したほむらは大きな溜息を吐き出してしまう。

 

「あの存在も悪魔なの…?それとも…別の何か…?」

 

息も絶え絶えで走ってきた病弱の少女は息を整えるために王の寝室内を歩きだす。

 

一休みとばかりに見つけたソファーに座り込む。

 

奥の空間には王が眠るのに相応しい天幕付きの豪華なベットが見えるようだ。

 

「暗闇に潜む者の声…まるで私を蔑むような意味に聞こえてくる…」

 

じっとしていてもいずれ見つかるのは分かっているが、外に出るのがどうしても恐ろしい。

 

動かなければならないが、出くわす可能性を考えながら部屋の中でいつまでも過ごしてしまう。

 

気がつけば床に転がっている人形を1(・)4(・)体(・)分数え終え、ボーッと過ごしているようだ。

 

そんな時、暗闇の中で不意に気配を感じ取る。

 

恐怖のせいでおおげさに体が反応し、気配を感じ取った豪華なベットに振り向く。

 

光量が増したメノラーをベットの方に向けてみると天幕付きベットが揺れ動く。

 

見えたのは白(・)い(・)布(・)団(・)シ(・)ー(・)ツ(・)を(・)ヴ(・)ェ(・)ー(・)ル(・)の(・)よ(・)う(・)に(・)被(・)る(・)者(・)の姿であり、暗闇の中に浮かび上がる。

 

――ナマケ。

 

気がつくと床に転がっている14体の人形達までカタカタと動き出す。

 

「イヤァァァァァーーーーッッ!!!」

 

部屋の中で怠けていた自分を呪いながら外の回廊へとほむらは駆け出す。

 

背後から追ってくるのが分かる彼女は涙目で振り向きながら追手に対して叫んでしまう。

 

「来ないでって言ってるでしょ!!」

 

回廊の端に飾られたアンティークな割れ物を次々と手で払い除けながら床にばら撒いていく。

 

相手が自分と同じ素足で歩いてきているのは気がついているため、割れた破片を武器とする。

 

鋭利な破片だらけになれば追ってこれないと考え、手で掴んでは後方の地面に投げつけていく。

 

しかし追手は立ち止まらず、不気味な笑い声を響かせてくるばかりなのだ。

 

――アハハハハハハハハハハ。

 

相手の速度は落ちてなどいない。

 

まるで足元の破片で傷つきながらも気にせず迫ってくるようだ。

 

「ハァ!ハァ!お願い…早くあの部屋に…辿り着いて!!」

 

息切れで座り込みそうな自分の体に鞭を打ちながら回廊を走り続ける。

 

回廊の一番奥に見えたのは目的の両開き扉であろう。

 

すぐさま扉の中に入り込み、入り込もうと迫る追手を阻もうと抑え込む。

 

しかし無理やり入ってこようと乱暴にドアノブを回してくることがないようだ。

 

「あれ…?入り込もうとしてこない…?」

 

気配を近くに感じ取れないため、諦めてくれたのかと考えてしまう。

 

「はぁ……良かった」

 

踵を返し、背中を扉にもたれさせながら安堵の溜息をつく。

 

その時だった。

 

「きゃあぁぁぁぁぁーーーっ!!?」

 

扉を貫通してきたのは投げ槍めいた飛来物。

 

それはほむらの左頭部の直ぐ横に固定されるように刺さったままの光景が生まれている。

 

潜む者が突然示した明確な殺意に対して恐怖で金縛り状態になってしまう。

 

ほむらは横の貫いてきたモノに対してさび付いたゼンマイめいた鈍さで首を向けていく。

 

巨大であるが編(・)み(・)物(・)に(・)使(・)う(・)道(・)具(・)で(・)あ(・)る(・)黒(・)い(・)色(・)を(・)し(・)た(・)編(・)み(・)針(・)が扉を貫通している。

 

そして次の一撃がほむらの右頭部近くを貫通していく。

 

「ひぃぃぃぃぃーーーーーっ!!!」

 

ほむらは腰を抜かして地面に倒れ込み、左手で頭を抑え込みながら伏せ状態となってしまう。

 

両開きの豪華な扉に飛来物が次々と飛んできては貫通する音が響き、ガタガタ震えるばかり。

 

14発の巨大な編み針が突き刺さった両開き扉の向こう側から潜む者の声が響く。

 

――マヌケ。

 

安堵していた彼女を嘲笑うかのように吐き捨てた言葉のように聞こえてくる。

 

潜む者の周囲にも複数の気配を感じるが、はっきり分からず、いるようでいない。

 

潜む者が踵を返して去っていく足音が微かに聞こえてきたようだ。

 

「やっぱり悪魔よ…あの潜む者は…無力な私を…この世界で殺しに来る悪魔よ…」

 

腰が抜けて立てないまま地面を這っていき、王の控えの間のメノラー台座に向かう。

 

力を込めて上体を起こし、右手のメノラーを台座の上に置く。

 

三つの灯りが大きくなっていくのが地面に倒れ込んだ姿勢のほむらにも分かるだろう。

 

蝋燭の灯火が部屋を明るくする空間の中で金髪の少女の視線を感じ取る。

 

ほむらの視界が血管内の穿孔トンネルをうねるように落下していく同じ感覚が襲ってくる。

 

気がついたらほむらの視界は生物体内にある細胞壁の隙間のような覗き窓にあるだろう。

 

ここはアマラの果であるアマラ深界なのだ。

 

<<私を嬲り殺しにでもするつもりなの!?出てきなさいよ…悪魔共!!>>

 

真紅の空間の中央、血管に溜まった血の湖の上に浮かぶのはオペラ劇場の舞台。

 

ほむらの心の怒りに反応するかのように真紅の舞台カーテンが上がっていく。

 

ステージの主舞台にいたのは変わらない面々であった。

 

♦

 

王の書斎のような豪華な主舞台。

 

アンティークキングチェアに座っているのは、山羊頭の形の飾り杖を手で握る金髪の少女。

 

その両隣には喪服姿の鹿目詢子に化けた悪魔とアモンと呼ばれた梟がいる。

 

<<どうあっても…私にまどかを救えなかった罪の烙印を押したいようね…>>

 

「理解したようだね?この喪服を着た鹿目詢子の姿は…お前の罪そのものなのさ」

 

<<否定は……出来ないわ>>

 

「あたしもこの人物を演じるのが意外と楽しくなってきていたところさ。いい反応を貰える」

 

<<この悪魔め!!>>

 

隣の梟の姿をしたアモンの鳴き声が響き、細目のまま喪服の淑女に首を向ける。

 

「はいはい、分かってるよ、アモン。我が主の御前でふざけた態度をするなでしょ?」

 

喪服の淑女は主人の方に振り向き、主人は許可を出すように目を閉じたまま頷く。

 

「魔人を倒せし者。あんたに世界の真実の一つを…主に代わり、あたしが語るわ」

 

<<インキュベーターとは違う天使と出会ったわ。あれが…お前達が憎む存在なの?>>

 

「そう、あれが唯一神の手先である神の使い。インキュベーターや女性の姿ばかりではない」

 

<<私達を魔女と罵り、殺し、宇宙の熱に変える事を躊躇わない…冷酷な者達だった…>>

 

「神の使いは時に人々の信仰心を試すべく神に遣わされる。誘惑や破壊を司る天使もいるんだ」

 

<<私達魔法少女を貶めてきた…悪魔のレッテルを貼り…貶めた神々みたいに…>>

 

「最も今の人間の世では神に言われるまま人間の守護者となる概念存在として語られてるわね」

 

<<私達と戦った天使は兵士のような姿をしていた…天使は他にもいるの?>>

 

「天使は階級に分かれ、それぞれの役割の姿となる。契約の天使は愛らしい姿をしてたろ?」

 

<<あのインキュベーターの愛らしい姿に…考える力のない子がどれだけ騙された事か…>>

 

「その天使達を束ねる高位階級の天使達を熾天使と呼ぶのさ。四大天使ぐらいは知ってる?」

 

<<ミカエル、ガブリエル、ラファエル、ウリエルね。フィクションの世界でも人気者よ>>

 

人間達から愛され、信仰される存在こそがヘブライの天使達。

 

四大天使を含めて三体の天使が加わり七大天使と呼ばれる者達もいる。

 

それこそが天使評議会の長達であり、唯一神の隣に立つ事が許される光の化身だと聞かされる。

 

<<七大天使…7つのラッパ…黙示録…>>

 

「神学校出身者なら…神の三位一体の思想ぐらいは分かるだろ?」

 

<<父と子と精霊…三つは分離した存在ではなく、一つであると牧師の先生から教わったわ>>

 

信仰すべき神、信仰する善なる人、信仰の裏づけとしての奇跡。

 

奇跡を担う天使は精霊であり神という大きな存在の末端。

 

バラけてるようでいて、全ては一つの群体神こそが唯一神なのだと伝えられたようだ。

 

<<インキュベーターも唯一神の一部?どうりで奇跡なんて力を私達に与えられるはずよね>>

 

「三位一体、唯一なる神。それじゃあ、この大いなる神について…深く語ってあげる」

 

――――――――――――――――――――――――――――――――

 

【唯一神】

 

イスラエル民族が崇拝する旧約聖書の最高神として知られる大いなる神。

 

テトラグラマトンである神聖四文字や多くの別名を持つ並ぶ者無き神霊である。

 

最初にして最後となり、新たなる最初となるアイン・ソフ・オウル(無限光)である創世神。

 

原初の混沌から産み出され、光を持って神々・悪魔・星・動物・人間を生み出した全ての父親。

 

宇宙の光の秩序を司るが、同時に混沌そのものでもある創造と破壊の二面性を持つ。

 

神秘学体系の生命の樹においては10のセフィロトを司るなど独立した別神霊となる時もある。

 

その名をみだりに唱える事は許されず、人間のみならず神々でさえも発音をする事が出来ない。

 

その名を唱えていい存在は唯一神のみである事から妬みの神と表される程に嫉妬深い。

 

人類を自らの作品として愛し、人類は内面を大いなる神に似せて造られたことが伺える。

 

人類が大いなる神に似ていることは宇宙空間全体の事象に帰納出来るだろう。

 

歴史において最も重要視された神であったが、産業革命等により宗教権威も形骸化していく。

 

「いずれ世界に起こるんだよ…神の信仰を忘れた存在達に与えられる旧約聖書の裁きがね…」

 

<<大いなる光の神は…どうして私達魔法少女という存在を生み出したの?>>

 

「契約の天使が語った通り、宇宙の熱は減り続ける。エネルギー消費に追いつかず熱が消える」

 

<<宇宙の光を司る大いなる神自身が宇宙の熱を生み出し続ける事は出来なかったの…?>>

 

無限の光は全ての宇宙を膨張させては産み出し続け、多次元宇宙を構築する。

 

しかし全ての管理そのものまでには唯一神でさえも行き届かない。

 

だからこそ一つ一つの宇宙には管理者が必要だったのだとほむらは伝えられる。

 

<<それが契約の天使…インキュベーターの存在だったのね…>>

 

インキュベーターが以下にして宇宙を延命させる熱を生み出し続けたかは知っての通り。

 

しかし、その方法も既に過去のものにした存在こそが円環のコトワリであろう。

 

<<まどかは全ての宇宙から…宇宙を生かす光の熱を奪い取った者だと…言いたいの?>>

 

「お陰さんで全ての宇宙は遠い未来の果てに消滅を繰り返し、いずれ世界は闇に閉ざされる」

 

<<そんな…事って…>>

 

「インキュベーターという悪者をやっつけて終わりなハッピーエンド物語でも考えてたわけ?」

 

「そ、それは…その…」

 

「鹿目まどかがやった事はね…宇宙にとっては紛れもない悪魔の所業なのさ」

 

<<違う!!まどかは私達魔法少女の希望のために…>>

 

「それは都合の悪い部分を棚上げする都(・)合(・)の(・)い(・)い(・)主(・)観(・)論(・)だね」

 

魔法少女と関係無い者達が見た客観論を喪服の淑女は残酷に伝えてくる。

 

円環のコトワリは我儘によって世界を滅ぼす悪魔そのもの。

 

それが円環のコトワリの正体なのだと突きつけてくる。

 

<<黙りなさい…人を唆す悪魔め!!まどかは…まどかは…崇高で神聖な存在よ!!>>

 

「好みの存在だけ持ち上げ、批判意見は都合が悪いから封殺かい?善(・)悪(・)二(・)元(・)論(・)を(・)悪(・)用(・)し(・)て(・)さ(・)?」

 

<<そ…それは…>>

 

「そこが善悪二元論の恐ろしさなんだよねぇ…」

 

正義と悪という二元論的概念は善人達であっても都合が悪い存在を貶めるために使いたがる。

 

あまりにも使い安過ぎる印象操作術であり、問題の擦り付けでしかないと突きつけてくる。

 

<<私が…あの天使達みたいに…悪(・)の(・)レ(・)ッ(・)テ(・)ル(・)貼(・)り(・)を(・)…(・)望(・)ん(・)で(・)い(・)る(・)の…?>>

 

ゾロアスター教が生み出した善悪二元論はユダヤ・キリスト教に取り込まれて世界に普及する。

 

今ではフィクション等のサブカル界隈でも当たり前にして使われているだろう。

 

その恐ろしさを考えもせず表面しか見ない、考えない、都合が悪いものは棚上げしていく。

 

都合の悪い存在達のみ悪者にして自分達の悪行のみ正当化する主人公物語だらけではないのか?

 

「でも否定はしない。それでこそ愚かな人間であり、悪魔と近い存在にはお似合いの姿だから」

 

<<悪魔と人間…それに魔法少女も…似た者同士だと言いたいわけ…?>>

 

「だから共に歩めた時代を一時は築けたのかも…しれないねぇ」

 

伝えるべき事を伝え終えたのか、主に振り向いて一礼を行う。

 

<<待って!!まどかの内側に宿ったコトワリ神という存在は何者なの!?>>

 

「レッドライダーはそこまで語ってたのかい?なら…その神の名を教えてあげるよ」

 

――円環のコトワリの神名とは、魔女の希望であり救い神…アラディアさ。

 

真紅の舞台カーテンが下がっていき、ほむらの意識もまた急速に遠のいていくのが分かる。

 

意識だけが魔界に訪れていた感覚も無くなっていくだろう。

 

(魔女の希望であり…救い神…それが円環のコトワリ神…アラディア…)

 

コトワリの神という存在を初めて知ったほむらは意識を失いながらもこう思ってしまう。

 

そんな存在がいなければ、鹿目まどかはこの世の外側に連れ去られなかったのではないかと。

 

ほむらの覗き窓の気配が無くなった後、真紅の舞台カーテンの裏側にいる者達が口を開く。

 

「フッ…善悪二元論か。懐かしい概念だ」

 

「閣下やあたし達…そして魔法少女達にとってさえ…逃れられない人間の呪いですね」

 

「吾輩達もかつては神と呼ばれて慕われたし…魔法少女も英雄と呼ばれて慕われたものだ…」

 

「なのに人間は自分の都合の悪い存在を貶める…傲慢で、無責任で、自分勝手な愚か者共よ…」

 

「だからこそ…私は愚かな人類を愛している」

 

――傲慢というCHAOS(自由)こそ…我が喜びだよ。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――

 

666日。

 

「それじゃあ、朝のHRを始めます。6月に予定をされてます…」

 

担任の和子先生による朝のHRが進んでいく。

 

教室の中に聞こえる伝達事項の中、一人の生徒は机に顔を伏せたまま眠っているようだ。

 

「コラー、暁美さん。学校はお昼寝をする場所じゃありませんよ~?」

 

和子先生に声をかけられ大げさに体を反応させながら彼女は顔を上げてくれる。

 

「寝る前にスマホでも弄ってたんですか?寝不足は女性の敵ですよ」

 

変わらぬループ現象が起こる中、彼女は同じ反応を返す事しか出来ない。

 

「すいません…先生。夜遅くまで勉強していたので…」

 

変わらぬその場の取り繕いによって何事もなかったかのようにしながらHRは続いていく。

 

昼休みの屋上に早めに辿り着き、見滝原市を眺める。

 

ループ現象によってあの地獄のような惨状は嘘のように消えているようだ。

 

「よぉ、ほむら。随分と早く来てるじゃねーか?」

 

天使に殺されて亡くなったはずの杏子も変わらずに生きている。

 

「二人とも早いわね?それじゃあ、魔法少女会議を始めましょう」

 

マミも変わらぬ元気な姿を見せてくれた時、ほむらの迷いが表面化していく。

 

「二人とも…その…私のために…無理をしてまで魔人と戦ってくれなくても…いいのよ?」

 

「暁美さん…急にどうしたの?」

 

「あたし達に仲間を見捨てろって言いたいのかよ?」

 

「魔人との戦いは魔獣とは比べ物にならない程の激戦となるわ…貴女達が生き残れる保証は…」

 

「命の保証なんてあった戦いなんて、あたしは知らないねぇ」

 

「そうよ。力が強い弱いに関係なく、殺し合いに命の保証を求める考えは驕りなのよ」

 

「でも…もし犠牲者が出てしまったら…」

 

「あたし達の力を疑ってるのかよ?」

 

「そういう訳じゃ…」

 

「心配してくれるのは嬉しいけど、私達は仲間を見捨てるぐらいなら死んだほうがマシよ」

 

仲間を思う二人の強い想いは嬉しいが、その強過ぎる優しい気持ちが悲劇を生む。

 

仲間を失う苦しみをまたどちらかに与えるのか?

 

あるいは自分のみとなるか、不安で仕方ない気持ちに支配されていく。

 

「たとえほむらが嫌がっても、あたしは魔人の戦いに首を突っ込むぜ」

 

「分かったわ…もう何も言わない。本当にありがとう…貴女達の気持ちは…嬉しいわ」

 

いよいよ残す騎士はあと一人。

 

ほむらにはその騎士が何処に潜んでいるのかも見当がついている。

 

(私が二人を守らないと…)

 

それをやり遂げる事が難し過ぎる事ぐらい、何度も殺されかけた自分が一番知っている。

 

それでもやらねばならない。

 

二人が自分の戦いのせいで悲しみに絶望する姿を、もう見たくはないのだから。

 

これはほむらにとっては知るための戦い。

 

そして仲間達にとっては魔法少女の使命とは何一つ関係がない問題。

 

無意味な殺し合いによる犠牲でしかないのであった。

 




読んで頂き、有難うございます。
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